JP2006526982A - Gタンパク質共役型受容体に依存する細胞シグナリング経路のアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするためのキメラタンパク質 - Google Patents

Gタンパク質共役型受容体に依存する細胞シグナリング経路のアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするためのキメラタンパク質 Download PDF

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Abstract

本発明は、高閾値カルシウムチャネルに由来し、かつα1サブユニットのI-IIループまたは少なくともAIDドメインを含むその断片を、NH2またはCOOH末端に融合した少なくとも1つのβサブユニットまたは少なくともBIDドメインを含むその断片からなることを特徴とするキメラタンパク質に関する。本発明はまた、該タンパク質の、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)に依存する細胞シグナリング経路の研究、およびGタンパク質の活性を調節する化合物の同定における適用に関する。

Description

本発明は、高閾値カルシウムチャネルのα1およびβサブユニットに由来する組換えキメラタンパク質、ならびにGタンパク質共役型受容体(GPCR)依存性の細胞シグナリング経路を研究し、かつGタンパク質活性を調節する化合物を同定するためのその適用に関する。
GPCRクラスは、脊椎動物のゲノムのコードする可能性の2〜5%を示す遺伝子によりエンコードされる、1000を超える同定された要素を含む(El FarおよびBetz、Biochem. J.、2002、365、329〜336)。Gαサブユニットをエンコードする27個の遺伝子、Gβサブユニットをエンコードする5個、およびGγサブユニットをエンコードする14個がある(AlbertおよびRobillard、Cell、2002、14、407〜418)。
シナプス調節、ホルモンおよびフェロモンに対する応答、細胞誘導(cell guiding、化学誘引または化学斥力)または視力(vision)のような多くの生物プロセスは、Gタンパク質共役型受容体(G-protein coupled receptor)を含む。実際に、GPCRは、アミノ酸(グルタミン酸など)、ペプチド(アンジオテンシン、ニューロテンシン、ソマトスタチンなど)、タンパク質(甲状腺刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)など)、アミン類(アセチルコリン、アドレナリン、セロトニンなど)、脂質(プロスタグランジン、ロイコトリエンなど)、核酸およびヌクレオシド(アデノシンまたはATP)のもののような多様なメッセージの認識および翻訳を提供することができる。イオン(Ca++)、嗅覚および味覚分子、光子およびフェロモンも、GPCRにより認識される細胞外シグナルの一部である(参考としてGether、Endocrine reviews、2000、21、90〜113および上記のAlbertおよびRobillardを参照)。
細胞外シグナルは、細胞の内部で、グアニルヌクレオチド(GDPおよびGTP)に結合する、Gα、Gβ、Gγとよばれるサブユニットからつくられるヘテロ三量体のGタンパク質により変換される。GPCRによる細胞外シグナルの認識は、Gタンパク質の活性化を導き、これがGαとGβγへのヘテロ三量体の解離、およびGαサブユニットのGTPへの結合をもたらす。
いくつかの細胞内エフェクターは、Gタンパク質の種々のGαおよびGβγサブユニットの活性化を通して、直接または間接的に調節され得る。Gαサブユニットにより制御されるエフェクターは、酵素(ホスホリパーゼA2およびC、アデニル-およびグアニル-シクラーゼ、c-junキナーゼ、チロシンホスファターゼ(SH-PTP2)など)であることができ、この活性化は、産生または放出された多くのセカンドメッセンジャー(ホスホイノシチドおよびジアシルグリセロール、Ca++、cAMP、cGMPなど)、チャネル(カリウム-、カルシウム-、ナトリウム-または塩素-伝導性)、イオン交換体(ナトリウム/プロトン)、またはより最近ではキナーゼ(Btkチロシンキナーゼ(Brutonのチロシンキナーゼ)、MAPキナーゼ(ミトゲン活性化タンパク質キナーゼ(mitogen-activated protein kinase)))に影響する(上記のAlbertおよびRobillard)。
Gβγも、Gαにより調節されるものと少なくとも同じぐらい多数のエフェクターの活性化を調節できる。すなわち、チャネル(電圧依存ナトリウム-伝導性またはカルシウム-伝導性チャネル(NおよびP/Q)または内向き整流カリウムチャネル(GIRK:Gタンパク質内向き整流K+チャネル)など)、「通常の」酵素(ホスホリパーゼA2およびC、アデニルシクラーゼI、IIおよびIV、チロシンホスファターゼ(SH-PTP1)など)、ならびに非常に多くのキナーゼ(ホスホイノシチド3-キナーゼ、β-アドレナリン性受容体キナーゼ、c-junキナーゼ、MAPキナーゼ、BtkチロシンキナーゼおよびT細胞特異的キナーゼ(Tsk))である(参考として、上記のAlbertおよびRobillardを参照)。
よって、これらのシグナリング経路の研究およびこれらのシグナリング経路に作用する薬剤の探索は、新規な医薬品の探索における大きな治療的な興味である。
上記のことから、Gタンパク質の活性化、およびこのGαとGβγサブユニットへの解離は、多数の細胞シグナリングおよび調節経路のための交差点であることがわかる。結果として、これらのGタンパク質の活性化の分析により、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリング経路を研究し、これらのシグナリング経路のアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングすることが可能になる。
Gタンパク質の活性化を分析するために、Janetopoulosら(Science、2001、291、2408〜2411)は、Gα-Gβ相互作用のインビボでのリアルタイムモニタリングのための技術を記載している。アメーバDictyostelium discoideumにおいて開発されたこの技術は、2つの蛍光キメラタンパク質:Gβ-YFPおよびGα2-CFPをエンコードする2つの構築物の同時トランスフェクション(cotransfection)に基づく。2つのキメラの間の相互作用は、蛍光転移プロセス(FRET)を誘発し、これにより、リアルタイムで、生細胞内のそれらの相互作用を追跡することが可能になる。Janetopoulosらにより構築された2つのキメラは、cAMP受容体と機能的に相互作用し、かつGTPγSにより活性化され得る複合体を形成することができる。蛍光を用いるこの技術は、ハイスループットスクリーニングアプローチに適合できる。しかし、FRETプロセスを抑制する内因性のGαまたはGβγサブユニットとの競合のために、このアプローチは、細胞の内因性の等価なGタンパク質を遺伝的に欠失させた細胞においてのみ機能することができる。これに加えて、脊椎動物では、種々のGPCR型受容体の活性化の応答に、Gタンパク質の種々のイソ型が関係する。つまり、Janetopoulosらのアプローチは、キメラ、および研究したGタンパク質の各イソ型について特異的に欠失させた細胞株の構築を想定している。
上記のことから、真核生物細胞においてGタンパク質の活性化を評価するための使用が簡易な、広く普及したツールがないことが明らかである。
カルシウムチャネルは、弱い脱分極により活性化される低閾値チャネルと、強い脱分極により活性化される高閾値チャネルとを含む。高閾値チャネルは、ヘテロ多量体複合体であるα1α2δβとγを有し、ここで、それ自体でチャネルを構成し、膜に結合したα1サブユニットは、その相互作用ドメイン(AIDドメイン(alpha interaction domain))を介して細胞内調節性βサブユニット(またはCavβ)と結合するが、AIDドメインは保存モチーフQQ-E--L-GY--WI---E (一文字表記: - はいずれのアミノ酸も表す;Pragnellら、Nature、1994、368、67〜70、図1)を有し、ここで残基Y392、W395およびI396はβサブユニットとの結合に必須である(De Waardら、FEBS、1996、380、272〜276)。調節性βサブユニットは、そのBIDドメイン(β相互作用ドメイン(beta interaction domain);De Waardら、J. Biol. Chem.、1995、270、12056〜12064)によりAIDドメインに結合し、BIDドメインはGK様ドメインに含まれる(Hanlonら、FEBS、1999、445、366〜370)。
7つのα1サブユニットが同定されている:α1A(Cavα2.1)、α1B (Cavα2.2)、α1E (Cavα2.3) (これらはそれぞれ、Gタンパク質により制御されるP/QおよびN型のニューロンチャネルおよびR型のチャネルを形成する(Gタンパク質感受性チャネル))、およびα1S (Cavα1.1)、α1c (Cavα1.2)、α1d (Cavα1.3)およびα1f (Cavα1.4) (これらは、心臓血管性チャネル(α1c)および骨格チャネル(α1S)を含むGタンパク質非感受性L型チャネルを形成する) (Loryら、m/s、2001、10、979〜988)。
中枢神経系において、N型およびP/Q型高閾値カルシウムチャネルは、シナプス機能の誘発に直接関係する。活動電位の影響の下でのその開放は、シナプス前終末へのカルシウムの移入を誘導する。このシグナルは、シナプス間隙へのグルタメートのような神経伝達物質の分泌と、それによりシナプス後樹状突起への神経流入の伝播を誘発する。NおよびP/Qチャネルは、クラスIII代謝刺激性(metabotropic)グルタメート受容体(参考のために:上記のEl FarおよびBetz)のような三量体のGタンパク質共役型受容体(GPCR)、またはノルアドレナリン作動性、ムスカリン作動性、GABA作動性(GABA:5-γ-アミノ酪酸)、セロトニン作動性もしくはドーパミン作動性の受容体と、オピエート受容体(参考のために:Hille、Trends NeuroSci.、1994、17、531〜536)とにより制御される。Gβγサブ複合体が、α1サブユニットの膜ドメインIおよびIIを連結する細胞質内ループ(ループI-II)へのGβγの直接の結合に起因する、P/Qチャネルの活性化の阻害を直接担うことが示されている(De Waardら、Nature、1997、385、446〜450)。結果として、このループは、Gβγとの相互作用の複数の部位を有し、これはCavβ調節性サブユニット結合ドメイン(AIDドメイン、図1)とオーバーラップし、AIDドメインに含まれるその保存モチーフQQ--R-L-GYは、Gβγの結合のために必須である(図1;De Waardら、Nature 1997、385、446〜450;Zamponiら、Nature、1997、385、442〜446)。さらに、Cavβ調節性サブユニットは、Gタンパク質の機能的効果に反対しているようである(Bourinetら、P.N.A.S.、1996、93、1486〜1491)。つまり、この拮抗作用は、I-IIループのAID領域でのCavβサブユニットとGβγサブユニットとの間の物理的競合に関係していると考えられる(Dolphinら、J. Physiol.、1998、506、3〜11)。
本発明者らは:
(i) Gタンパク質感受性または非感受性高閾値カルシウムチャネルのα1サブユニットのI-IIループ (それぞれ、P/Q型ニューロンチャネルを構成するα1AまたはCavα2.1、およびL型心臓血管性チャネルを構成するα1cまたはCavα1.2)、あるいはそれらの断片;該ループは、Cavα2.1サブユニットの配列についての位置367〜487に相当し、カルシウムチャネル(またはAIDドメイン)のβサブユニットへの結合のためのドメイン、およびGタンパク質のGβサブユニットへの結合のための部位を含む(図1)、ならびに
(ii) α1サブユニットの該断片に結合可能な高閾値カルシウムチャネルのβサブユニット
のNH2-および/またはCOOH-末端融合によりキメラタンパク質を構築した。
本発明者らは、Gタンパク質感受性もしくは非感受性カルシウムチャネル由来のα1サブユニットのI-IIループまたは少なくともAIDドメインを含むその断片を含む、全ての得られたキメラタンパク質が、カルシウムチャネルのα1サブユニットとβサブユニットとの間の分子内相互作用の驚くべき特性を有し、これが、α1サブユニットのAIDドメインへのキメラの結合を妨げることを示した。彼らは、βサブユニットの結合ドメインのこのマスキングが、実際、AIDドメインとのその分子内相互作用によることを確認した。なぜなら、キメラからのAIDドメインの欠失が、この結合を回復させたからである。彼らはまた、「Gタンパク質感受性」α1AサブユニットのI-IIループを含むキメラの、α1サブユニット相互作用ドメインへの結合が、Gβγの添加により回復することを示した。この結果は、Cy3型蛍光体で標識された組換えβサブユニットの、α1Aサブユニットの蛍光キメラ(GFP-α1A)との相互作用を、共焦点顕微鏡を用いる蛍光転移(FRET)測定によりエクスビボで証明することにより確認された。これらの特性により、彼らは、予期せぬことに、P/Qチャネルの制御が、Gβγ複合体による、カルシウムチャネルの調節性βサブユニットとαサブユニットの間の相互作用の置き換え(displacement)に関係し、以前に提案されていたようなその阻害ではないことを証明することが可能であった。
より明確には、本発明者らは、Gタンパク質感受性α1サブユニット由来キメラタンパク質は、GβモノマーもしくはGβγヘテロダイマーの形のいずれかでα1サブユニットの該断片に結合可能なGβサブユニットの不在または存在下に、それぞれ「閉鎖」または「開放」の2つの形で存在することを示した。Gβ(またはGβγ)の不在下では、キメラタンパク質は、それ自体で折り畳まれることが可能であり、よってカルシウムチャネルのα1およびβサブユニットの相互作用ドメインが、安定分子内結合により結合することを許容する(閉鎖型)。Gβ(またはGβγ)の存在下では、分子内結合がなくなり、カルシウムチャネルのα1およびβサブユニットの相互作用ドメインが解離し(開放型)、よって各ドメインが、それぞれGβ(α1相互作用ドメイン:AIDドメイン)および/またはカルシウムチャネルのα1サブユニット(βサブユニット相互作用ドメイン:BIDドメイン)と相互作用することを許容する。
同様に、Gタンパク質非感受性α1サブユニット由来キメラタンパク質は、それ自体で折り畳まれることができ、よってカルシウムチャネルのα1およびβサブユニットの相互作用ドメインが、安定分子内結合により結合することを許容する(閉鎖型)。つまり、GβまたはGβγ以外のこの結合のアンタゴニストの存在下では、分子内結合が破壊されることができ、カルシウムチャネルのα1およびβサブユニットの相互作用ドメインが解離し(開放型)、よって各ドメインが、それぞれGβまたはGβγ以外の該アンタゴニスト(α1サブユニット相互作用ドメイン:AIDドメイン)および/またはカルシウムチャネルのα1サブユニット(βサブユニット相互作用ドメイン:BIDドメイン)と相互作用することを許容する。
したがって、遊離のGβまたはGβγサブユニット、あるいはα1サブユニットとβサブユニットとの間の相互作用のその他のアンタゴニストの存在下でのこれらの構造の再構築(閉鎖型から開放型への変化)によって、高閾値カルシウムチャネルのα1およびβサブユニット由来のキメラタンパク質は、使用が簡易な敏感で特異的なツールであり、次の適用に有用である:
- Gタンパク質感受性α1サブユニット由来キメラタンパク質(例えば:α1A、α1Bおよびα1E)は、細胞内濃度における遊離のGβγサブユニットの変動を、エクスビボでリアルタイムに測定し、それにより細胞でのGタンパク質の活性化を測定することを可能にする。このようなキメラタンパク質は、Gタンパク質活性化についての遍在のバイオセンサを表し、これは、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路の研究、ならびに細胞内の遊離のGβγサブユニットの濃度を増加または減少させ、それによりこれらのGタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路の活性の調節を可能にする、これらのシグナリング経路のアゴニスト/アンタゴニストのスクリーニングのために非常に適する;
- Gタンパク質感受性または抵抗性α1サブユニット由来キメラタンパク質(例えば:α1A、α1B、α1E、α1c、α1d、α1Sおよびα1f)は、α1サブユニットとβサブユニットとの間の相互作用のアンタゴニストをスクリーニングするために非常に適切な、単純で敏感で特異的なツールであり、これらは全ての高閾値カルシウムチャネルを調節することが可能である;
- 上記で規定される高閾値カルシウムチャネルのα1サブユニットおよびβサブユニット由来のキメラタンパク質は、フェーズIにおける新規な医薬品の系統的な薬物毒理学的コントロール、およびオーファン受容体の天然のアゴニストの探索にも有用である。実際に、ヒトゲノムのクローニングにより、約350種のGPCR受容体を同定することが可能になった。これらのうち、200種だけが同定されたリガンドを有する。オーファン受容体とよばれるその他のものは、新規な細胞シグナリングおよび調節経路の同定のための鍵となる標的を潜在的に構成する。よって、これらの受容体のアゴニストおよびアンタゴニストの探索は、基礎研究の観点および治療的観点の両方から、大きい興味である。
よって、本発明の主題は、α1サブユニットのI-IIループまたは少なくともAIDドメインを含むその断片を、NH2またはCOOH末端に融合した少なくとも1つのβサブユニットまたは少なくともBIDドメインを含むβサブユニットの断片を含むことを特徴とする高閾値カルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質である。
本発明によると、AIDおよびBIDドメインは、上記で規定したとおりであり;α1サブユニットのI-IIループは、βサブユニットに結合するためのAIDドメインと、Gタンパク質のGβサブユニットに結合するための部位とを含み、このAIDドメインに含まれる保存結合部位を含む。これらの種々のドメインを、図1に示す。
本発明は、脊椎動物、特にヒトまたはヒト以外の哺乳動物のα1およびβサブユニット、および無脊椎動物のそれらのオルトログ(orthologs)に由来するキメラタンパク質を包含する。
本発明によるキメラタンパク質は、特に:
- そのNH2またはCOOH末端に、α1サブユニットのI-IIループが融合されたβサブユニット、および
- そのNH2またはCOOH末端に、α1サブユニットのI-IIループが融合された、BIDドメインを含むβサブユニット(上記のHanlonら)のGK-様ドメイン
により代表される。
本発明によると、I-IIループまたはその断片は、βサブユニットまたはその断片のNH2またはCOOH末端に直接融合されるか、あるいは2つの配列が、スペーサーペプチドで分離されるかのいずれかである。該スペーサーペプチドのサイズおよびアミノ酸配列は、該スペーサーを含有するキメラタンパク質のAIDおよびBIDドメインが、アンタゴニストの存在下で置き換えられる分子内結合(閉鎖型から開放型への変化)を形成するように相互作用できるようなものである。このようなスペーサーペプチドは、特にポリグリシン配列により表される。
該キメラタンパク質の有利な実施形態によると、これはGタンパク質感受性高閾値カルシウムチャネルに由来する。
本実施形態の有利な規定によると、該キメラタンパク質は、α1A、α1Bおよびα1Eから選択されるα1サブユニットの断片を含む。
該キメラタンパク質の別の有利な実施形態によると、該βユニットは、β1、β2、β3およびβ4からなる群より選択される。
本発明は、上記で規定する配列と機能的に等しい配列からなるキメラタンパク質も包含し、すなわちここで、βサブユニットおよびα1サブユニットのI-IIループまたは上記で規定するそれらの断片は、それらの相互作用ドメインにより細胞内結合を形成できる。該結合は、遊離のGβまたはGβγサブユニット、あるいはα1サブユニットとβサブユニットとの間の相互作用の他のアンタゴニストの存在下に、任意に破壊される(「開放型」)。
これらの配列のうち、例えば:
- 上記で規定される配列の1以上のアミノ酸の突然変異(置換および/または欠失および/または付加)、
- 上記で規定されるキメラタンパク質のペプチド鎖を少なくとも1つの-CO-NH-ペプチド結合の、特に-CO-NH-結合ではない結合(メチレンアミノ、カルバ、ケトメチレン、チオアミドなど)での置換またはレトロタイプもしくはレトロ-インバーソタイプの結合の導入による修飾、および/または
- 上記で規定されるキメラタンパク質のペプチド鎖の少なくとも1つのアミノ酸の、非タンパク質由来(nonproteinogenic)アミノ酸残基での置換
による上記の配列に由来する配列を挙げることができる。
「非タンパク質由来アミノ酸残基」の用語は、天然のタンパク質またはペプチドの構成要素の部分ではないいずれのアミノ酸、特に天然のペプチド鎖中の-CO-と-NH-との間に位置する側鎖Rを有する炭素、つまり-CHR-基が、天然のタンパク質またはペプチドの構成要素の部分でないモチーフで置換されたいずれのアミノ酸を意味することを意図する。
本発明の主題は、特に、βサブユニットおよび/またはα1サブユニットのI-IIループの配列の少なくとも1つのアミノ酸の突然変異を有することを特徴とする、上記で規定されるキメラタンパク質に由来する変異キメラタンパク質である。
該キメラタンパク質の別の有利な実施形態によると、該変異体は、α1サブユニットのI-IIループに対するβサブユニットの親和性、および/またはその逆を修飾する突然変異を有する。このような突然変異は、遊離のGβまたはGβγサブユニットの濃度により多くまたはより少なく感受性であるキメラタンパク質を得ることを可能にする。
これらの突然変異のうち、上記のPragnellら、およびDe Waardら、FEBS、1996、380、272〜276に記載のα1サブユニットのI-IIループのAIDドメインの突然変異、すなわち:Q383A、Q384A、E386D、E386S、L389H、G391R、Y392S、Y392F、W395A、I396AおよびE400Aが挙げられる。
該キメラタンパク質またはその変異体の別の有利な実施形態によると、それはタンパク質の検出および/または精製および/または固定化を許容する少なくとも1種の適切な標識、例えば:抗原エピトープ、ポリヒスチジン型タグ、または発光化合物(GFPのような蛍光体またはその変異体の1つ:CFP、YFPおよびBFP)、放射活性化合物もしくは酵素化合物に、好ましくは共有結合で結合している。
本発明によると、該結合は、いずれの適切な手段により、特にペプチド鎖のCOOH-および/またはNH2-末端官能基によるペプチド結合を介するか、あるいは別の共有結合、例えば:エステル、エーテル、チオエーテルまたはチオエステル結合を介して、ペプチド鎖のアミノ酸の側鎖の反応性官能基により、行われる。
本発明の有利な規定によると、該キメラタンパク質は、受容または供与蛍光体を、それぞれそのNH2および/またはCOOH末端に含む。
受容蛍光体、例えばCFPまたはBFPは、キメラタンパク質のNH2またはCOOH末端での区別なく結合でき、供与蛍光体、例えばCFPまたはYFPは、該キメラタンパク質の反対の末端に融合される。このようなキメラタンパク質は、蛍光転移(FRET)の測定によるGタンパク質活性化のリアルタイムエクスビボ研究、およびこの活性化を調節可能な分子のスクリーニングに有用である。
実際に、発光化合物での標識化は、酵素標識化の場合と同様に、他の試薬の存在を必要としない局在化シグナルを得るという利点を有する。このタイプの標識化は、種々の機構:共鳴エネルギー転移、放射性エネルギー転移(受容体は、供与体が放射した光を吸収する)および電子転移により起こり得るエネルギー転移のような現象を用いることを可能にする。
発光「供与」化合物(D)と発光または非発光「受容」化合物(A)との間の、AとDとの間の距離に依存するこのエネルギー転移は、多くのアッセイを行うのに用いられている。キメラタンパク質の各末端に、BIDおよびAIDドメインの間の細胞内相互作用(閉鎖型)が起こったときのみエネルギー転移が起こるように結合したDおよびAが選択される。この現象は、Dが励起されたとき、Dの発光の減少または消滅、およびAが発光性である場合にAからの発光の放射をもたらす。これらのアッセイの間、Aの発光の変動またはDの発光の変動のいずれかを測定するが、ここでAおよびDの性質は変動可能である。例えば、Aの発光の変動を測定するために、2種の蛍光タンパク質を供与体および受容体として用いることができるか、あるいは希土類金属(ユーロピウム、テルビウム)のキレートとの複合体、クリプテートまたは大環状化合物を供与体として、そして蛍光タンパク質を受容体として用いることができる。Dの発光の変動の測定は、化合物(A)の、別の化合物(D)の発光を、これらが充分に近いときに減少または消滅させる能力に基づく(「消光(quench)」)。よって、用い得る分子Aの範囲はより広く、重金属、重原子のような非発光化合物、化学分子、例えばメチルレッド、Nanoprobes社(USA)によりNanogold (登録商標)の名称で販売されているもののようなナノ粒子、またはDABCYL (登録商標)(Eurogentec、ベルギー)、QSY Dyes (Molecular Probes Inc., USA)、ElleQuencher (登録商標)(Oswell/Eurogentec)またはBlack Hole Quenchers (登録商標)(Biosearch Technologies Inc., USA)の名称で販売されている分子を含む。
本発明の主題は、上記で規定されるβサブユニットおよびα1サブユニットのI-IIループまたはそれらの断片の接合部に位置する、上記で規定されるキメラタンパク質の配列の少なくとも7つのアミノ酸の断片を含むことを特徴とするペプチドであり;そのようなペプチドは、特に、本発明によるキメラタンパク質に特異的な抗体を産生することを可能にする。
本発明の主題は、上記で規定されるキメラタンパク質またはペプチドに指向されたことを特徴とする抗体でもある。
本発明によると、該抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかである。
これらの抗体は、該タンパク質またはペプチドに指向された抗体を動物に製造させるために、特に、本発明によるタンパク質またはペプチドで動物を免疫することを含む、それら自体で知られている通常の方法により得ることができる。
このような抗体は、固体支持体上にキメラタンパク質を固定化し、それを精製するかまたは検出するために、特に有用である。
本発明の主題は、上記で規定されるキメラタンパク質またはペプチドをエンコードする配列と、センスまたはアンチセンスであり得る上記の配列に相補的な配列とからなる群より選択されることを特徴とする核酸分子でもある。
本発明の主題は、上記で規定されるβサブユニットおよびα1サブユニットのI-IIループ、またはそれらの断片の接合部に位置する配列に対応する約10〜30ヌクレオチドの配列を含むことを特徴とするプローブまたはプライマーでもある。これらのプローブおよびプライマーは、本発明によるキメラタンパク質をエンコードする該核酸分子を特異的に検出/増幅することを可能にする。
本発明の主題は、配列番号1、2、4、6、7、8および9の配列からなる群より選択されることを特徴とする、上記で規定されるβサブユニットおよび/またはα1サブユニットのI-IIループあるいはそれらの断片を特異的に増幅するための、他のプライマーでもある。
本発明による核酸分子は、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL、2000、Wiley and son Inc, Library of Congress、USA)に記載されるもののような標準的なプロトコルに従う、それら自体で知られている通常の方法により得られる。
本発明によるキメラタンパク質をエンコードする配列は、適切なプライマーの対を用いるPCRまたはRT-PCRによる核酸配列の増幅によるか、あるいは相同プローブとのハイブリダイゼーションによるゲノムDNAのスクリーニングにより得ることができる。
本発明によるキメラタンパク質の変異体をエンコードする派生した核酸分子は、上記の標準的なプロトコルに従う、それら自体で知られている、核酸配列中に突然変異を導入するための通常の方法により得られる。例えば、本発明によるキメラタンパク質の変異体をエンコードする配列は、Kunkelら(P.N.A.S.、1985、82、488〜492)の方法に従う部位特異的突然変異誘発により得ることができる。
本発明の主題は、上記で規定されるキメラタンパク質をエンコードする核酸分子からなる挿入断片を含むことを特徴とする組換え真核生物または原核生物ベクターでもある。
好ましくは、該組換えベクターは、該核酸分子またはその断片が、転写および翻訳のための適切な調節要素の制御下に位置する発現ベクターである。さらに、該ベクターは、該挿入断片の5'および/または3'末端とフレーム内で融合された配列であって、該ベクターから発現されたタンパク質を固定化および/または検出および/または精製するために有用な配列を含み得る。興味のある核酸分子を、それを導入し、かつ真核生物または原核生物宿主細胞内で保持するために、その中に挿入することができる多くのベクターがそれら自体で知られている。適切なベクターの選択は、このベクターについて考えられる使用(例えば、興味のある配列の複製、この配列の発現、この配列の染色体外の形での保持または宿主の染色体物質への組み込み)、および宿主細胞の性質に依存する。例えば、プラスミドのようなウイルスまたはウイルス以外のベクターを用い得る。
これらのベクターは、それら自体で知られている、通常の組換えDNAおよび遺伝子工学手法により、構築され、宿主細胞内へ導入される。
該組換えベクターのある実施形態によると、それは配列番号5および配列番号10の配列からなる群より選択される配列を有する真核生物発現ベクターである。配列番号5のプラスミドは、CMVプロモーターの制御下にあり、ラットCavβ3サブユニットのC-末端に融合されたウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループを含有し、配列番号10のプラスミドは、5'から3'への、次の配列:配列GAP-43、EGFP (蛍光供与体)をエンコードするcDNA、ラットCavβ3サブユニットのGK様ドメイン、ウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループ、およびCFP (蛍光受容体)をエンコードするcDNAのフレーム内融合からなる挿入断片を含有する。
本発明の主題は、上記で規定されるキメラタンパク質、核酸分子または組換えベクターで修飾された細胞でもある。
本発明の有利な実施形態によると、該細胞は真核生物細胞である。
本実施形態の有利な規定によると、該細胞は、少なくとも1つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)を発現する。該細胞は、少なくとも1つのGPCRを構成的に発現する細胞、または組換えGPCRを発現する修飾された細胞のいずれかである。
本発明による修飾された細胞は、それら自体で知られている、宿主細胞内に核酸分子またはタンパク質を導入するためのいずれの方法により得ることができる。例えば、動物細胞の場合、その中に興味のある配列を予め挿入した、特にアデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスおよびAAVのようなウイルスベクターを用いることができる。該ヌクレオチド配列(単離またはプラスミドベクター内に挿入)またはペプチド配列は、それが宿主細胞膜を通過するのを許容する物質、例えばリポソーム、脂質またはカチオンポリマーの調製物と組み合わせることもできるか、または宿主細胞に直接注入することもできる。
本発明の主題は、その全てまたは一部の細胞が、本発明による核酸分子で形質転換されたことを特徴とするヒト以外のトランスジェニック動物、特に哺乳動物である。これらは、例えば本発明によるキメラタンパク質をエンコードする配列が、転写および翻訳に適切な調節要素の制御下で、導入された動物である。このようなトランスジェニック動物は、特に、i) 一次スクリーニングで同定された、GPCRまたはカルシウムチャネルに対して活性な分子を標的とする細胞あるいは組織でさえも評価するため、ii) そのような分子の生物学的利用能を研究するため、およびiii) 最初のアプローチとして、そのような分子の潜在的な副作用を調査するための二次スクリーニング工程のために有用である。
本発明の主題は、上記で規定されるキメラタンパク質、核酸分子、組換えベクター、修飾された細胞、およびヒト以外のトランスジェニック哺乳動物からなる群より選択される物質の、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路の研究のための使用でもある。
本発明の主題は、上記で規定されるキメラタンパク質、核酸分子、組換えベクター、修飾された細胞、およびヒト以外のトランスジェニック哺乳動物からなる群より選択される物質の、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路のアゴニストおよび/またはアンタゴニストをスクリーニングするための使用でもある。
本発明の主題は、上記で規定されるキメラタンパク質、核酸分子、組換えベクター、修飾された細胞、およびヒト以外のトランスジェニック哺乳動物からなる群より選択される物質の、高閾値カルシウムチャネルのα1サブユニットとβサブユニットとの間の相互作用のアンタゴニストをスクリーニングするための使用でもある。このようなアンタゴニストは、全ての高閾値カルシウムチャネルの活性を調節するために有用であり、よってカルシウムホメオスタシスの機能不全に関連する疾患、およびカルシウムの移入の調節が細胞の不全を補うことができる疾患、特に癲癇、運動失調症、偏頭痛、筋肉における低カルシウム血症および高カルシウム血症、糖尿病ならびに心臓血管性疾患の治療に用い得る医薬品を表す。
本発明の有利な実施形態によると、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路の研究は、少なくとも次の工程:
a1) Gタンパク質感受性カルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質と、Gタンパク質共役型受容体とを発現する上記で規定される修飾された細胞を培養する工程、
b1) 該Gタンパク質共役型受容体を介して、いずれの適切な手段によりシグナルを変換する工程、および
c1) いずれの適切な手段により、細胞において発現されたキメラタンパク質のGβγサブユニットに結合した割合を測定する工程
を含む方法により行われる。
このような測定は、遊離のGβγサブユニットの細胞濃度における変動を評価し、よって細胞内でのGタンパク質の活性化を測定することを可能にする。
本発明の有利な実施形態によると、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路のアゴニスト/アンタゴニストのスクリーニングは、少なくとも次の工程:
a2) 上記で規定されるGタンパク質感受性カルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質と、Gタンパク質共役型受容体とを発現する修飾された細胞を培養する工程、
b2) Gタンパク質共役型受容体を介して、いずれの適切な手段によりシグナルを変換する工程、
c2) いずれの適切な手段により、細胞において発現されたキメラタンパク質のGβγサブユニットに結合した割合を、該細胞をb2)において、試験される分子と接触させる前と後とで比較測定(comparative determination)する工程、ならびに
d2) 遊離のGβγサブユニットの細胞濃度をそれぞれ増加および減少させ得るものに相当する、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路のアゴニスト/アンタゴニストである分子を同定する工程
を含む方法により行われる。
有利には、a1)またはa2)における修飾された細胞は、そのNH2またはCOOH末端において、それぞれ蛍光供与蛍光体および蛍光受容蛍光体と結合した上記で規定するキメラタンパク質を発現し、c1)またはc2)における測定が、蛍光転移(FRET)法により行われる。
本発明の有利な実施形態によると、高閾値カルシウムチャネルのα1サブユニットとβサブユニットの間の相互作用のアンタゴニストのスクリーニングは、少なくとも次の工程:
a3) 試験する分子を、上記で規定されるGタンパク質感受性または非感受性のカルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質、およびGタンパク質非感受性α1サブユニットのAIDドメインを含むペプチドと接触させる工程、
b3) いずれの適切な手段により、該キメラタンパク質の該ペプチドへの結合を測定する工程、ならびに
c3) それを用いて該キメラタンパク質の該ペプチドへの結合が観察されるものに相当する、α1サブユニットとβサブユニットとの間の相互作用のアンタゴニストを同定する工程
を含む方法により行われる。
該方法の有利な実施形態によると、AIDドメインを含む該ペプチドは、固体支持体上に固定化され、該キメラタンパク質は、上記で規定されるb3)における該結合を測定するための標識、特に蛍光体に結合する。
本発明の主題は、次の物質:上記で規定されるキメラタンパク質、抗体、組換えベクター、修飾された細胞、またはヒト以外のトランスジェニック哺乳動物の少なくとも1つを含むことを特徴とする、上記で規定される方法を実行するためのキットでもある。
本発明のキメラタンパク質は、次の利点を有する:
- Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路のリアルタイムでの研究、ならびにそれらを調節し得る分子の系統的スクリーニング(ハイスループットスクリーニング)に適する内因性の遊離のGβγサブユニットについての遍在のバイオセンサーを構成し、これはこれらの経路の機能不全が観察される疾患、特に免疫系の病理(参考のために:Lombardiら、Crit. Rev. Immunology、2002、22、141〜163;OnufferおよびHoruk、Trends in Pharmacol、2002、23、459〜467参照)、ならびに神経精神および心臓血管の病理(SeifertおよびWenzel-Seifert、Naumyn-Schmeideberg's Arch. Pharmacol.、2002、366、381〜416)の治療のための医薬品として用いることができる可能性がある。さらに、その使用は、化学量論の問題を部分的に除くことができる限りにおいて単純である。なぜならその使用は、従来技術の方法の3つのパートナー(Cavα/Cavβ/Gβγ)の代わりに、2つの分子(Cavβ/Cavα-Gβγ)だけを含むからである;
- 高閾値カルシウムチャネルの活性を調節し得る分子の系統的スクリーニング(ハイスループットスクリーニング)に適し、これは、上記で規定される、カルシウムホメオスタシスの機能不全が観察される疾患、およびカルシウム移入の調節が細胞の機能不全を補うことができる病理の治療のための医薬品として用いることができる可能性がある。
上記の規定に加えて、本発明は、本発明の主題であるキメラタンパク質に使用の実施例および添付の図面について言及する以下の記載から明らかになる他の規定も含む。添付の図において:
- 図1は、Cavα2.1サブユニットのI-IIループにおける、βサブユニット(AIDドメイン)およびGβγ複合体に結合するためのドメインのオーバーラップを示す。AIDドメインは、黒のボックスにより表される(位置383〜400)。Gβ(Gβγ)サブユニットのための結合部位は、斜線を引いたボックスにより表される。Gβ(Gβγ)サブユニットの結合に必須な中央の位置の部位(QQ--R-L-GY)は、AIDドメインに含まれる。
- 図2および3は、Gタンパク質Gβγ複合体によるCavα2.1-Cavβ相互作用の置き換えを示す:
- 図2aは、β3サブユニット(1〜3 pM)の、GST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメイン(1μM)との結合を表す。
- 図2bは、β3サブユニットの、α2.1サブユニットのI-IIループとの融合(Cavβ3-I-II2.1キメラ)が、そのGST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメインとの結合を妨げることを示す。
- 図2cは、AID2.1ドメインの18アミノ酸の欠失(Cavβ3-I-II2.1ΔAIDキメラ)が、β3サブユニットの、GST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメインとの結合を回復させることを示す。
- 図3は、Gβγ複合体の添加が、Cavβサブユニットと、Cavβ3-I-II2.1キメラのα2.1サブユニットのI-IIループとの間の分子内相互作用を置き換え、よってβ3サブユニットがGST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメインと結合することを許容することを示す。CavβサブユニットとAID2.1ドメインとの間の結合を50%置き換え得るGβγの濃度(IC50)は、160 nMである。
- 図4〜7は、Gβγ複合体により誘導されるP/Qカルシウムチャネルの分解のFRET分析を示す:
- 図4aは、精製His-Cavβ3サブユニットのCy3標識を示す。CB:SDS-PAGEゲルのクマシーブルー染色、タンパク質の純度を示す。FS = 非染色ゲルの蛍光の記録、タンパク質の共有結合標識を示す。
- 図4bは、ツメガエルの卵母細胞において発現されたCavα2.1チャネルの電流−電圧の関係における、蛍光色素に結合したCavβ3サブユニット(Cy3-Cavβ3)の影響を、未標識のCavβ3サブユニット(cRNAの注入)との比較により示す。
- 図5aは、Cavα2.1およびCy3-Cavβ3を含有するツメガエルの卵母細胞の2つの区別される領域の共焦点顕微鏡による観察を示す。T = 透過、F = 蛍光。
- 図5bは、GFP-Cavα2.1、Cy3-Cavβ3および(GFP-Cavα2.1 + Cy3-Cavβ3)についての蛍光放射スペクトルを示す。
- 図6は、100 nMのGβγの注入により誘導される蛍光転移における減少の速度論を示す。上側の区画:蛍光放射スペクトルにおける変動、下側の区画:585 nmおよび525 nmでの蛍光強度(Rf)の比における変動。
- 図7は、非注入卵母細胞(-)、Gβγを注入した卵母細胞(100 nM)または熱不活性化Gβγを注入した卵母細胞(HI-Gβγ)のRf値を示す。
- 図8 (a〜c)は、CMVプロモーターの制御下にある、ラットCavβ3サブユニットのC-末端に融合されたウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループを含有するプラスミドpcDNA3Cavβ3-I-II2.1 (配列番号5)を示す。
- 図9 (a〜c)は、ベクターpEYFPmemb. (CLONTECH)に由来し、5'から3'への、次の配列:GAP-43配列、EGFP (蛍光供与体)をエンコードするcDNA、ラットCavβ3サブユニットのGK様ドメイン、ウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループ、およびCFP (蛍光受容体)をエンコードするcDNAのフレーム内融合からなる挿入断片を含有するプラスミドpCHIC (配列番号10)の配列を示す。
しかしながら、これらの実施例は、本発明の主題の説明のためだけに与えられるものであり、これらはいずれの様式によっても限定を構成しないことが明確に理解されるべきである。
実施例1:組換えキメラタンパク質Cavβ3-I-II2.1の構築
1) 材料および方法
PCR増幅および組換えDNAのクローニングは、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL、2000、Wiley and son Inc, Library of Congress、USA)に記載されるもののような標準的なプロトコルに従う、当業者に公知の通常の技術により行われる。
ラットβ3サブユニットの、ウサギα1サブユニットのI-II細胞内ループとのC-末端融合からなる、本発明によるキメラタンパク質をエンコードするcDNAを含有する発現プラスミドを、次の方法で構築した。
ラットCavβ3サブユニットのcDNA (Genbank配列M88755の位置98〜1545に相当)を、次のセンスおよびアンチセンスプライマーを用いてPCRにより増幅する:
- 5'-TTTGGTACCATGGATGACGACTCCTACGTGCCCGGGTTTGAGGACTCGGAGGCGGGTT-3' (配列番号1)、および
- 5'-GCGGAATTCGTAGCTGTCCTTAGGCCAAGGCCGGTTACGCTGCCAGTT-3' (配列番号2)。
このようにして得られた断片を、発現プラスミド(pcDNA3、Invitrogen)のKpn IおよびEcoR Iの間の部位にクローニングして、組換えプラスミドpcDNA3-Cavβ3を得た。
その配列が図1に示されるウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループに対応するcDNA断片(Genbank配列X57477の位置1383〜1754)を、次のセンスおよびアンチセンスプライマーを用いてPCRにより増幅した:
- 5'-GGGGAATTCGCCAAAGAAAGGGAGCGGGTGGAGAAC-3' (配列番号3;上記のDe Waardら、およびBichetら、Neuron、2001、25、177〜190)、および
- 5'-TTTGAATTCTTACTGAGTTTTGACCATGCGACGGATGTAGAAACGCATTCT-3' (配列番号4)。
得られた断片を、プラスミドpcDNA3-Cavβ3のEcoR I部位にクローニングして、組換えプラスミドpcDNA3-Cavβ3-I-II2.1を得た。
ラットβ3サブユニットの、AIDドメインが欠失されたウサギCavα2.1サブユニットのI-II細胞内ループとのC-末端融合からなるキメラタンパク質をエンコードするcDNAを含むコントロールプラスミドを、同様の方法で構築した;このようにして得られた組換えプラスミドを、pcDNA3-Cavβ3-I-II2.1ΔAIDという。
2) 結果
組換えプラスミドpcDNA3-Cavβ3-I-II2.1は、配列番号5の配列を有する。プラスミドpcDNA3-Cavβ3-I-II2.1へクローニングした挿入断片の自動配列決定により得られたヌクレオチド配列から引き出されるペプチド配列は、本発明によるキメラタンパク質に予期される配列を有する。同様にして、プラスミドpcDNA3-Cavβ3-I-II2.1ΔAIDにクローニングされた挿入断片の自動配列決定により、得られたヌクレオチドから引き出されるペプチド配列は、AIDドメインが欠失されたキメラタンパク質に予期されるものに対応する。
実施例2:Gタンパク質Gβγ複合体による、Cavα2.1-Cavβ相互作用の置き換えのインビトロでの証明
1) 材料および方法
組換えDNAの発現および組換えタンパク質の分析は、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL、2000、Wiley and son Inc, Library of Congress、USA)およびCurrent protocols in Immunology (John E. Coligan、2000、Wiley and son Inc, Library of Congress、USA)に記載されたもののような標準的なプロトコルに従う、当業者に公知の通常の方法により行われる。
a) 組換えキメラタンパク質およびGST-AID 1.2 融合体の発現
キメラタンパク質Cavβ3-I-II2.1およびCavβ3-I-II2.1ΔAID、ならびにCavβ3サブユニットは、[35S]-メチオニンの存在下に、実施例1に記載のようなプラスミドから、供給業者の使用説明書に従ってPromega TNTシステムキットを用いて、インビトロで転写および翻訳される。
Pragnellらに記載のGST-AID1.2融合タンパク質を、上記の著者らにより記載されるようにして産生および精製する。同じ条件下で産生および精製されたGSTタンパク質を、コントロールとして用いる。
b) Gタンパク質Gβγ複合体による、Ca v α 2.1 -Ca v β相互作用の調節のインビトロ分析
Gタンパク質Gβγ複合体による、Cavα2.1-Cavβ相互作用の調節のインビトロ分析を、De Waardら、Nature、1997、385、446〜450に記載されたプロトコルに従って行う。より明確には、標識β3サブユニットおよび標識キメラタンパク質([35S] Cavβ3、[35S] Cavβ3-I-II2.1および[35S] Cavβ3-I-II2.1ΔAID)を、GST-AID1.2融合タンパク質またはGSTタンパク質の存在下または非存在下に、および任意に、量が増加するGβγ(10〜900 nM、Calbiochem)の存在下にインキュベートする。
インキュベーション産物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離して、ゲルの放射能写真を撮影する。
2) 結果
図2および3に示す結果は、次のとおりである:
- 図2aは、β3サブユニット(1〜3 pM)が、GST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメイン(1μM)と結合することを示す。
- 図2bは、β3サブユニットの、α2.1サブユニットのI-IIループとの融合(Cavβ3-I-II2.1キメラ)が、そのGST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメインとの結合を妨げることを示す。
- 図2cは、AID2.1ドメインの18アミノ酸の欠失(Cavβ3-I-II2.1ΔAIDキメラ)が、β3サブユニットの、GST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメインとの結合を回復させることを示す。
- 図3は、Gβγ複合体の添加が、Cavβサブユニットと、Cavβ3-I-II2.1キメラのα2.1サブユニットのI-IIループとの間の分子内相互作用を置き換え、よってβ3サブユニットが、GST-AID1.2融合タンパク質のAID1.2ドメインと結合することを許容することを示す。30℃で30分間インキュベーションした後の、CavβサブユニットとAID2.1ドメインとの間の結合を50%置き換え得るGβγの濃度IC50は、160 nMである。この値は、以前(De Waardら、Nature、1997、385、446〜450)に報告されたGβγの、I-II2.1ループについての親和性に関するものより2〜3倍高い。
実施例3:Gタンパク質Gβγ複合体による、Cavα2.1-Cavβ相互作用の置き換えのエクスビボでの証明
1) 材料および方法
a) 精製His-Ca v β 3 組換えタンパク質のCy3標識
精製His-Cavβ3組換えタンパク質(Geibら、Biochem J.、2002、364、285〜292;Fathallahら、Eur. J. Neurosci.、2002、16、219〜228)を、単反応性Cy3マレイミドと、供給業者(Amersham Pharmacia Biotech)の使用説明書に従って結合させる。
b) ツメガエル卵母細胞の注入および電気生理学的記録
調製、ツメガエル卵母細胞の注入および電気生理学的記録は、上記のGeibらに記載のようにして行う。Gβγ複合体の電流−電圧の関係に対する影響、および平衡状態の不活性化を、注入の30分後に分析する。
c) 蛍光転移(FRET)測定
卵母細胞を、共焦点顕微鏡(Leica TCS-SP2顕微鏡、"XYλ"モードで)により、注入の4〜7日後に分析する。
蛍光放射を、488 nmの励起波長のアルゴンレーザおよびダイクロイックミラー(488/543/633)を用いて記録する。蛍光を、放射スペクトルを再構築するようにして14のフィルター(厚さ10 nm)を通して測定する。各測定について、測定の再現性を確実にするために2つの異なる領域を分析する。FRETのレベルを、585 nmでの蛍光(Cy3受容体放射ピーク)の525 nmでの蛍光(GFP供与体放射ピーク)に対する比(585/525)により評価する。
2) 結果
- Cy3に結合したCavβ3サブユニット (図4a)は、ツメガエル卵母細胞において発現したCavα2.1チャネルの調節に対するCavβ3サブユニット(図4b)と同様に活性である。
- Cy3-Cavβ3またはCFP-Cavα2.1タンパク質、または該タンパク質をエンコードするcDNAの、単独あるいは組み合わせでの注入は、細胞質膜における高い蛍光シグナルの放射をもたらす(図5a)。
488 nmでの励起の後の500〜640 nmの間の蛍光放射の分析(図5b)は、GFP-Cavα2.1が最大525 nmでの高いシグナルを発生するが、Cy3-Cavβ3のみでは、相対的に励起されず、最大585 nmでの弱いシグナルを発生する。卵母細胞内に2種のタンパク質がある場合、525 nmで放射されるシグナルは大きく減少するが、585 nmでのものは有意に増加する。これらの変化は、585 nmおよび525 nmでの蛍光シグナルの比 (GFP-Cavα2.1 (n=3)についてRf = 0.34±0.03、Cy3-Cavβ3 (n=3)についてRf = 1.9±0.10、およびGFP-Cavα2.1 + Cy3-Cavβ3 (n=7)についてRf = 3.9±0.22)を測定することにより、容易に定量可能である。かなりの蛍光転移に起因するこのような大きい変化は、GFP-Cavα2.1とCy3-Cavβ3の蛍光色素が近いことを示す。
- Gβγの、GFP-Cavα2.1とCy3-Cavβ3との両方を含有する卵母細胞への注入は、蛍光転移の迅速な消滅を誘導する(図6)。これに対して、Gβγの注入は、GFP-Cavα2.1またはCy3-Cavβ3のみを含有する細胞において何の影響も有さない。
蛍光シグナルの最終的な比(0.82±0.06、n=7)は、GFP-Cavα2.1またはCy3-Cavβ3のみを含有する卵母細胞において観察されるものと同じ程度であり、このことはCy3-Cavβ3チャネルの解離がかなりのものであることを示す(図7)。これに対して、熱不活性化Gβγの注入は、何の影響も有さない(Rf = 3.74±0.4、n=3)。
これらの結果は、Gβγは、Cavβ3サブユニットを、その結合のための部位からCavα2.1チャネルへエクスビボで置き換えができることを証明する。
実施例4:FRET法によりGタンパク質の活性を測定するためのバイオセンサの構築
そのNH2末端に蛍光供与蛍光体 (EGFP)を、およびそのCOOH末端に蛍光受容蛍光体(CFP)を含有するキメラタンパク質を、ベクターpEYFPmemb (Clontech)から構築する。このベクターは:
- そのNH2末端を介して細胞質膜にキメラをアンカーすることを可能にするGAP-43配列。膜へのアンカーは、第一にタンパク質を膜に保持すること、および第二にキメラタンパク質と、パルミトイル化タイプの結合を介して膜にそれ自身がアンカーされているそのGβγリガンドとが遭遇する可能性を増加させることという利点を有する;ならびに
- GAP-43の下流のEYFP配列
を有する利点を有する。
構築は、2つの工程で行う:
- 第一のクローニング工程
α1サブユニットのI-IIループに融合されたβサブユニットのGK様ドメインをエンコードするDNA断片(Hanlonら、FEBS、1999、445、366〜370)を、PCRにより、プラスミドpcDNA3-Cavβ3-I-II2.1 (実施例1)から増幅し、EYFP遺伝子の3'にクローニングする。
より明確には、PCR増幅を、次のセンスおよびアンチセンスプライマーを用いて行う:
Figure 2006526982
得られたPCR産物を、プラスミドpEYFPmembのBsiW IとHpa Iとの間の部位にクローニングして、プラスミドpEYFmemChimBeta3I-IIを得る。
- 第二のクローニング工程
ECFPをエンコードするcDNAを、PCRにより増幅し、次いで上記のプラスミド中で、β3-I-II挿入断片の3'にクローニングする。
より明確には、ECFPを、PCRにより、ベクターpECFP (Clontech)から、次のセンスおよびアンチセンスプライマーを用いて増幅する:
Spe I
- 5'-GGGACTAGTATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTG-3' (配列番号8)
Hpa I
- 5'-CCCGTTAACTGCCGAGAGTGATCCCGGCGGCGGT-3' (配列番号9)
得られたPCR産物を、プラスミドpEYFmemChimBeta3I-IIのSpe IとHpa Iの間の部位にクローニングして、配列番号10の配列に相当するプラスミドpCHICを得る。
図1は、Cavα2.1サブユニットのI-IIループにおける、βサブユニット(AIDドメイン)およびGβγ複合体に結合するためのドメインのオーバーラップを示す。 図2は、Gタンパク質Gβγ複合体によるCavα2.1-Cavβ相互作用の置き換えを示す。 図3は、Gタンパク質Gβγ複合体によるCavα2.1-Cavβ相互作用の置き換えを示す。 図4は、Gβγ複合体により誘導されるP/Qカルシウムチャネルの分解のFRET分析を示す。 図5は、Gβγ複合体により誘導されるP/Qカルシウムチャネルの分解のFRET分析を示す。 図6は、Gβγ複合体により誘導されるP/Qカルシウムチャネルの分解のFRET分析を示す。 図7は、Gβγ複合体により誘導されるP/Qカルシウムチャネルの分解のFRET分析を示す。 図8aは、CMVプロモーターの制御下にある、ラットCavβ3サブユニットのC-末端に融合されたウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループを含有するプラスミドpcDNA3Cavβ3-I-II2.1 (配列番号5)を示す。 図8bは、CMVプロモーターの制御下にある、ラットCavβ3サブユニットのC-末端に融合されたウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループを含有するプラスミドpcDNA3Cavβ3-I-II2.1 (配列番号5)を示す。 図8cは、CMVプロモーターの制御下にある、ラットCavβ3サブユニットのC-末端に融合されたウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループを含有するプラスミドpcDNA3Cavβ3-I-II2.1 (配列番号5)を示す。 図9aは、ベクターpEYFPmemb. (CLONTECH)に由来し、5'から3'への、次の配列:GAP-43配列、EGFP (蛍光供与体)をエンコードするcDNA、ラットCavβ3サブユニットのGK様ドメイン、ウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループ、およびCFP (蛍光受容体)をエンコードするcDNAのフレーム内融合からなる挿入断片を含有するプラスミドpCHIC (配列番号10)の配列を示す。 図9bは、ベクターpEYFPmemb. (CLONTECH)に由来し、5'から3'への、次の配列:GAP-43配列、EGFP (蛍光供与体)をエンコードするcDNA、ラットCavβ3サブユニットのGK様ドメイン、ウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループ、およびCFP (蛍光受容体)をエンコードするcDNAのフレーム内融合からなる挿入断片を含有するプラスミドpCHIC (配列番号10)の配列を示す。 図9cは、ベクターpEYFPmemb. (CLONTECH)に由来し、5'から3'への、次の配列:GAP-43配列、EGFP (蛍光供与体)をエンコードするcDNA、ラットCavβ3サブユニットのGK様ドメイン、ウサギCavα2.1サブユニットのI-IIループ、およびCFP (蛍光受容体)をエンコードするcDNAのフレーム内融合からなる挿入断片を含有するプラスミドpCHIC (配列番号10)の配列を示す。

Claims (33)

  1. α1サブユニットのI-IIループまたは少なくともAIDドメインを含むその断片を、NH2またはCOOH末端に融合した少なくとも1つのβサブユニットまたは少なくともBIDドメインを含むβサブユニットの断片を含むことを特徴とする高閾値カルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質。
  2. α1サブユニットのI-IIループを、NH2またはCOOH末端に融合したβサブユニットからなることを特徴とする請求項1に記載のキメラタンパク質。
  3. α1サブユニットのI-IIループを、NH2またはCOOH末端に融合したβサブユニットのGK様ドメインからなることを特徴とする請求項1に記載のキメラタンパク質。
  4. βサブユニットまたはその断片と、I-IIループまたはその断片とが、スペーサーペプチドで分離されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のタンパク質。
  5. Gタンパク質感受性高閾値カルシウムチャネルに由来することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のキメラタンパク質。
  6. α1A、α1Bおよびα1Eから選択されるα1サブユニットのI-IIループ、またはその断片を含むことを特徴とする請求項5に記載のキメラタンパク質。
  7. β1、β2、β3およびβ4からなる群より選択されるβサブユニット、またはその断片を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のキメラタンパク質。
  8. βサブユニットおよび/またはα1サブユニットのI-IIループの配列の少なくとも1つのアミノ酸の突然変異を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のキメラタンパク質に由来する変異キメラタンパク質。
  9. 突然変異が、α1サブユニットのI-IIループの断片に対するβサブユニットの親和性、および/またはその逆を修飾することを特徴とする請求項8に記載の変異キメラタンパク質。
  10. 突然変異が、α1サブユニットのI-IIループのAIDドメインの次の突然変異:Q383A、Q384A、E386D、E386S、L389H、G391R、Y392S、Y392F、W395A、I396AおよびE400Aから選択されることを特徴とする請求項8または9に記載の変異キメラタンパク質。
  11. 当該タンパク質の検出および/または精製および/または固定化を許容する少なくとも1種の適切な標識に、好ましくは共有結合で結合していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載のキメラタンパク質。
  12. そのNH2および/またはCOOH末端に、それぞれ受容または供与蛍光体を含むことを特徴とする請求項11に記載のキメラタンパク質。
  13. 受容蛍光体が、蛍光タンパク質CFPまたはBFPであり、供与蛍光体が蛍光タンパク質GFPまたはYFPであることを特徴とする請求項12に記載のキメラタンパク質。
  14. 請求項1で規定されるβサブユニットおよびカルシウムチャネルのα1サブユニットのI-IIループまたはそれらの断片の接合部に位置する、請求項1〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質の配列の少なくとも7つのアミノ酸の断片を含むことを特徴とするペプチド。
  15. 請求項1〜13のいずれか1つに記載のタンパク質、または請求項14に記載のペプチドに指向していることを特徴とする抗体。
  16. 請求項1〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質または請求項14に記載のペプチドをエンコードする配列と、センスまたはアンチセンスであり得る該配列に相補的な配列とからなる群より選択されることを特徴とする核酸分子。
  17. 請求項1で規定されるβサブユニット、およびカルシウムチャネルのα1サブユニットのI-IIループ、またはそれらの断片の接合部に位置する配列に対応する約10〜30ヌクレオチドの配列を含むことを特徴とするプローブまたはプライマー。
  18. 配列番号1、2、4、6、7、8および9の配列からなる群より選択されることを特徴とする、βサブユニットおよび/またはカルシウムチャネルのα1サブユニットのI-IIループあるいは請求項1で規定されるそれらの断片を増幅可能なプライマー。
  19. 請求項16に記載の核酸分子からなる群より選択される挿入断片を含むことを特徴とする組換えベクター。
  20. 配列番号5および配列番号10の配列からなる群より選択される配列を有する真核生物発現ベクターであることを特徴とする、請求項19に記載の組換えベクター。
  21. 請求項19もしくは20に記載の組換えベクターで修飾されたか、請求項16に記載の核酸分子で修飾されたか、または請求項1〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質で修飾された細胞。
  22. 真核生物細胞であることを特徴とする請求項21に記載の修飾された細胞。
  23. Gタンパク質と共役可能な少なくとも1つの受容体を発現することを特徴とする請求項21または22に記載の修飾された細胞。
  24. その全てまたは一部の細胞が、請求項16に記載の核酸分子で形質転換されたことを特徴とするヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
  25. 請求項1〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質、請求項16に記載の核酸分子、請求項19または20に記載の組換えベクター、請求項21〜23のいずれか1つに記載の修飾された細胞、および請求項24に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物からなる群より選択される物質の、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路の研究のための使用。
  26. 請求項1〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質、請求項16に記載の核酸分子、請求項19または20に記載の組換えベクター、請求項21〜23のいずれか1つに記載の修飾された細胞、および請求項24に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物からなる群より選択される物質の、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路のアゴニストおよび/またはアンタゴニストをスクリーニングするための使用。
  27. 請求項1〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質、請求項16に記載の核酸分子、請求項19または20に記載の組換えベクター、請求項21〜23のいずれか1つに記載の修飾された細胞、および請求項24に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物からなる群より選択される物質の、高閾値カルシウムチャネルのα1サブユニットとβサブユニットとの間の相互作用のアンタゴニストをスクリーニングするための使用。
  28. Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路を研究するための、少なくとも次の工程:
    a1) Gタンパク質感受性カルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質と、Gタンパク質共役型受容体とを発現する請求項23に記載の修飾された細胞を培養する工程、
    b1) 該Gタンパク質共役型受容体を介して、いずれの適切な手段によりシグナルを変換する工程、および
    c1) いずれの適切な手段により、細胞において発現されたキメラタンパク質のGβγサブユニットに結合した割合を測定する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  29. Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路のアゴニストおよび/またはアンタゴニストをスクリーニングするための、少なくとも次の工程:
    a2) Gタンパク質感受性カルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質と、Gタンパク質共役型受容体とを発現する請求項23に記載の修飾された細胞を培養する工程、
    b2) Gタンパク質共役型受容体を介して、いずれの適切な手段によりシグナルを変換する工程、
    c2) いずれの適切な手段により、細胞において発現されたキメラタンパク質のGβγサブユニットに結合した割合を、該細胞をb2)において、試験される分子と接触させる前と後とで比較測定する工程、ならびに
    d2) 遊離のGβγサブユニットの細胞濃度をそれぞれ増加および減少させ得るものに相当する、Gタンパク質共役型受容体依存性細胞シグナリングおよび調節経路のアゴニスト/アンタゴニストである分子を同定する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  30. a1)またはa2)における修飾された細胞が、そのNH2またはCOOH末端において、それぞれ蛍光供与蛍光体および蛍光受容蛍光体と結合したキメラタンパク質を発現し、c1)またはc2)における測定が、蛍光転移(FRET)法により行われることを特徴とする請求項28または29に記載の方法。
  31. 高閾値カルシウムチャネルのα1サブユニットとβサブユニットの間の相互作用のアンタゴニストをスクリーニングするための、少なくとも次の工程:
    a3) 試験する分子を、請求項1〜13のいずれか1つに記載のGタンパク質感受性または非感受性のカルシウムチャネルに由来するキメラタンパク質、およびGタンパク質非感受性α1サブユニットのAIDドメインを含むペプチドと接触させる工程、
    b3) いずれの適切な手段により、該キメラタンパク質の該ペプチドへの結合を測定する工程、ならびに
    c3) それを用いて該キメラタンパク質の該ペプチドへの結合が観察されるものに相当する、α1サブユニットとβサブユニットとの間の相互作用のアンタゴニストを同定する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  32. AIDドメインを含むペプチドが、固体支持体に固定化され、キメラタンパク質が、請求項11〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質であることを特徴とする請求項31に記載のスクリーニングする方法。
  33. 請求項1〜13のいずれか1つに記載のキメラタンパク質、請求項16に記載の核酸分子、請求項19または20に記載の組換えベクター、請求項21〜23のいずれか1つに記載の修飾された細胞、および請求項24に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、請求項28〜32のいずれか1つに記載の方法を実行するためのキット。
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