JP4304064B2 - 遺伝子修飾された環状ヌクレオチド作動性イオンチャンネル及びその使用方法 - Google Patents

遺伝子修飾された環状ヌクレオチド作動性イオンチャンネル及びその使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、環状ヌクレオチド作動性イオンチャネル(CNGチャネル)をコードする遺伝子修飾された核酸、有利にはDNA及び対応するタンパク質並びにそれらの使用方法に関する。
化学物質、例えばホルモン又は神経伝達物質は、いわゆる「ファーストメッセンジャー」(リガンド)として細胞の膜に結合し、かつそれによって多岐にわたる生化学的−生理学的な反応を細胞内部に引き起こし、この反応により細胞はその環境に反応することができる。このプロセスは、リガンドが特異的かつ直接的に結合できる多数の膜局在受容体によって媒介される。このプロセスは部分的に極めて複雑な種々のシグナル伝達カスケードの始まりに位置する。このようなカスケードにわたり前記受容体は種々の細胞性タンパク質(エフェクタータンパク質)の活性を制御し、かつ調節する。このエフェクタータンパク質自体は、細胞内メッセンジャー、いわゆる「セカンドメッセンジャー」の濃度を調節することができる。このようなセカンドメッセンジャーによって初めて、多くの生理学的反応、例えばホルモン及び神経伝達物質の合成及び放出、細胞分裂及び細胞増殖並びに神経細胞の興奮及び興奮性が制御される。特に重要なセカンドメッセンジャーには、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)及びCa2+イオンが該当する。
セカンドメッセンジャーの細胞内濃度は、まずシグナル伝達カスケードによって調節され、このカスケードでは細胞の膜中のGタンパク質共役型レセプター(GPCR)が細胞外シグナルを感知し、次いで相応するGタンパク質を活性化し、かつこのGタンパク質は再び相応のエフェクタータンパク質の活性を刺激するか、又は阻害する(Morris, A.J.及びMalbon, C.C.著 (1999):“Physiological regulation of G protein−linked signaling”, Physiol Rev., 79, 1373−1430)。更にそれぞれ個々の成分の活性は多様なフィードバック機構の枠組みの中で他のタンパク質によって調節することができる。
リガンドの生理学的に正常な濃度の偏移又はシグナル伝達カスケードの経路における、例えばそれに関連する成分の機能欠失によって引き起こされる障害は重度の疾患を引き起こすことがある。GPCRは細胞の細胞外及び細胞内の媒体間の特に重要な接点であるので、GPCRは多数の生体固有(内因性)及び生体異種(外因性)の化学物質の結合部位もしくは攻撃箇所として用いられ、更に極めて多彩にほぼ全ての生命に重要な器官又は組織で重要な生理学的プロセスを制御することで、これらは医学−薬理学的な介入のために重要な関心が持たれている。特に重要な適用分野は中枢及び末梢神経系の疾患、心臓−循環器系の疾患及び内部器官の疾患である。
医薬品産業の治療学的目標は、標的タンパク質を活性化する薬理学的作用物質(アゴニスト)、標的タンパク質を阻害する薬理学的作用物質(アンタゴニスト)又は標的タンパク質をその活性において調節する薬理学的作用物質を開発することである。このことは、更に相応の標的タンパク質の詳細な機能的な特性決定を必要とする。そのために近年では、明らかに部分的に柔軟性において、また得られた結果の表現力においても、かつ頑丈さ及び速度、作業費用及びコストの面での効率において異なる種々の方法が開発されている。
こうしたなか多くのレセプターの相補的DNAがクローニングされ、このレセプター細胞系において機能的に発現させることができた後で、この研究は主に異種発現されるレセプターで実施される。使用されるストラテジー及び方法並びにその使用に関する先行技術は、例えば文献Hertzberg, R.P.及びPope, A.J.著 (2000):“High−throughput screening:new technology for the 21st century”, Curr. Opin. Chem. Biol., 4, 445−451; Howard, A.D., Mac Allister, G., Feighner, S.D., Liu, Q., Nargund, R.P., von der Ploeg, L.H.及びPatchett, A.A.著, (2001):“Orphan G−proteincoupled receptors and natural ligand discovery”, Trends Pharmacol.Sci., 22, 132−140, Civelli, O., Nothacker, H.P, Saito, Y., Wang, Z., Lin, S.H及びRemscheid, R.K.著 (2001):“Novel neurotransmitters as natural ligands of orphan G−protein−coupled receptors”, Trends Neurosci., 24, 230−237並びにそこに挙げられる刊行物である。
公知の60%を上回るGPCRは、セカンドメッセンジャーのcAMPの細胞内濃度を調節する。このようなGPCR及び相応のエフェクタータンパク質に対する化学物質の作用の研究のために種々の方法が存在する。
前記の方法の幾つかは、たいてい細胞内cAMP濃度の放射化学的な直接的測定に基づくものである。このために、例えば細胞を刺激し、規定の時間後に生化学的に破壊し、かつcAMP濃度の変化を測定する。前記の測定法は確かに非常に高感度であるが、大抵は本来緩慢であり、高価であり、かつ時間のかかるものである。更に細胞内cAMP濃度の変化は実時間内で観察できない。重要な特性、例えば活性又は阻害の速度及び過程は、相当の付加的な費用を伴って多数の付加的な測定によってのみ測定できるにすぎない。この方法の利点は、GPCRに対する作用物質の効果を調査できることだけでなく、細胞内cAMP濃度を調節するエフェクタータンパク質に対する作用物質の効果も測定できることである。
cAMP濃度もしくはcGMP濃度の細胞内変化の測定が可能な更なる方法により膜局在CNGチャネルの特性が利用可能となった。環状ヌクレオチド作動性イオンチャネル(CNG)は以下に記載される特徴及び特性を有する膜局在タンパク質である(Finn, J.T., Grunwald, M.E及びYau, K.W.著 (1996):“Cyclic nucleotide−gated ion channels:an extended family with diverse functions”, Annu. Rev. Physio., 58, 395−426; Richards, M.J.及びGordon, S.E.著 (2000):“Cooperativity and cooperation in cyclic nucleotide−gated ion channels”, Biochemistry, 39, 14003−14011)。CNGチャネルは、(1)おそらく4又は5個のサブユニット(α−サブユニット及び/又はβ−サブユニット)からなり、(2)それぞれ6回膜貫通し、かつ(3)カルボキシ末端の細胞内端部にそれぞれ1つの環状ヌクレオチドのための結合部位を有する。CNGチャネルは(4)cAMP又はcGMPによって直接的にかつ用量依存的に活性化され、(5)一価のカチオンについて僅かな選択的伝導性のみを有するにすぎない膜に水性のポアを形成し、(6)二価のカチオン、例えばCa2+イオンについても同様に透過性である。
「環状ヌクレオチドのための結合部位」とは、環状ヌクレオチドcAMP及びcGMPが用量依存的に結合できるCNGチャネル−サブユニット中の断片を表す。前記の断片のアミノ酸配列はcAMPもしくはcGMPに関するCNGチャネルの感度(感受性)を決定的に規定する。
「伝導性」とは、細胞外部からの細胞内部へのイオンの程度に差はあるが選択的な流入又は細胞内部から外部へのイオンの流出を可能にするイオンチャネルの特性を表す。このためにイオンチャネルは膜中に開口部(水性ポア)を形成し、それを通してチャネルの活性化状態に依存してイオンをその濃度勾配に相応し流入又は流出することができる。
異種発現系においては、同一のα−サブユニット(Homooligomere; Kaupp UB, Niidome T, Tanabe T, Terada S, Boenigk W, Stuehmer W. Cook NJ, Kanagawa K, Matsuo H, Hirose T, Miyata T,及びNuma S,著(1989) Primary structure and functional expression from complementary DNA of the rod photoreceptor cyclic GMP−gated channel.Nature, 342, 762−766)、異なるα−サブユニット(Heterooligomere; Bradley J, Li J, Davidson N, Lester HA,及びZinn K.著(1994) Heteromeric olfactory cyclic nucleotide−gated channels:a subunit that confers increased sensitivity to cAMP. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 8890−8894.; Liman ER及びBuck LB.著(1994) A second subunit of the olfactory cyclic nucleotide−gated channel confers high sensitivity to cAMP.Neuron 13, 611−621)並びにヘテロオリゴマーとしてα−サブユニット及びβ−サブユニットからなる(Chen TY, Peng YW, Dhallan RS, Ahamed B, Reed RR,及びYau KW.著(1993) A new subunit of the cyclic nucleotide−gated cation channel in retinal rods.Nature, 362, 764−767)機能的なCNGチャネルを発現することが可能である。β−サブユニット単独は機能的なチャネルを形成できず、専らヘテロオリゴマーCNGチャネルにおける調節機能を有するのみである(Chen TY, Peng YW, Dhallan RS, Ahamed B, Reed RR,及びYau KW.著(1993) A new subunit of the cyclic nucleotide−gated cation channel in retinal rods.Nature, 362, 764−767)。cAMP又はcGMPがCNGチャネルに結合すると、このチャネルは用量依存的に開放して、イオンが細胞内に流れ込む。CNGチャネルの活性化は生理学的条件下に、高められたチャネルのCa2+伝導性を引き起こし、従って細胞内Ca2+濃度の上昇をもたらす。かかる濃度変化は光学的なCa2+測定法で測定できる。これらのイオンチャネルは従って原則的に、細胞内cAMP濃度を調節する全てのレセプターと細胞内タンパク質の調査及び特性決定のための細胞内cAMPセンサとして使用できる。直接的なcAMP測定と比較して、前記の方法は非常に迅速であり、効率的であり、かつ廉価である。この方法は1日あたりに高いスループット(ハイスループット)の試験を可能にし、かつ実時間内での測定を可能にする。従って原則的に前記の方法は薬理学的な作用物質のスクリーニングのために特に十分に適している。
米国特許第6,001,581号明細書及び国際公開98/58074号パンフレット並びにGotzes, F.著 (1995):“Dissertation”, ISSN 0944−2952の文献には、鼻の鼻上皮由来のα3−サブユニットからなるCNGチャネルのcAMPセンサとしての使用が記載されている。しかしながらこのようなCNGチャネルは、このチャネルを医薬品作用物質のスクリーニングにおいて細胞性cAMPセンサとして使用する場合に多くの決定的な欠点を有する。これらのCNGチャネルは、cGMPに関しては2μMによって既に半値活性化(最大活性の半分(halbmaximal)まで活性化)されるが、cAMPに関しては80μMによってようやく半値活性化される(Dhallan RS, Yau KW, Schrader KA及びReed RR.著(1990) Primary structure and functional expression of a cyclic nucleotide−activated channel from olfactory neurons.Nature, 347, 184−187; Ludwig J, Margalit T, Eismann E, Lancet D及びKaupp UB.著(1990) Primary structure of cAMP−gated channel from bovine olfactory epithelium.FEBS Lett., 270, 24−29)。しかしながら細胞内cAMP濃度の変化は通常、数μMにすぎないので、このようなCNGチャネルは基本的にcGMPセンサとしては確かに適しているが、cAMPセンサとしては不十分であるにすぎない。更にcAMP濃度の測定は僅かな細胞内cGMP濃度の変動によっても妨害されることがある。
それに対してα3−サブユニット、α4−サブユニット及びβ1b−サブユニットからなるヘテロオリゴマーのCNGチャネルは約4μMのcAMP濃度でも半値活性化(K1/2値)されるが、他方でcGMPについてのK1/2値はホモオリゴマーのチャネルと比較して実質的にあまり変化しない(Boenigk W, Bradley J, Mueller F, Sesti F, Boekhoff I, Ronnett GV, Kaupp UB及びFrings S.著, (1999) The native rat olfactory cyclic nucleotide−gated channel is composed of three distinct subunits. J. Neurosci., 19, 5332−5347)。原則的にこのようなCNGチャネルは細胞性cAMPセンサとして非常に適している。しかしながら異種細胞系でのこのようなチャネルの発現は、非常に作業に費用がかかり、かつ時間がかかるのが欠点である。更に細胞内cGMP濃度の僅かな変動はcAMPセンサとしての機能を妨げることがある。
α−サブユニットのみからなるが、それでもcAMPに関して高い感受性を有するCNGチャネルは分子生物学的方法によっても製造でき、位置537のトレオニンがセリンに交換(T537S)されたウシ由来のCNGチャネルの遺伝子修飾されたα3−サブユニットが記載されている(Altenhofen W, Ludwig J, Eismann E, Kraus W, Boenigk W及びKaupp UB.著(1991) Control of ligand specificity in cyclic nucleotide−gated channel from rod photoreceptors and olfactory epithelium. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 9868−9872)。前記のサブユニットはCNGチャネルを形成し、このチャネルは14μMのcAMPで半値活性化される。トレオニンT537は、環状ヌクレオチドの結合に決定的に関与しているα3−サブユニットの配列断片中に存在する。明らかに前記の位置のアミノ酸はCNGチャネルの感受性のために特に重要である(Altenhofen W, Ludwig J, Eismann E, Kraus W, Boenigk W,及びKaupp UB.著(1991) Control of ligand specificity in cyclic nucleotide−gated channel from rod photoreceptors and olfactory epithelium. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 9868−9872.)。確かに前記の突然変異T537SでcGMPに関するチャネルの感受性も増大する(K1/2=0.7μM)。このようなチャネル(T537S突然変異体)は確かに廉価で異種発現させることができるが、このチャネルはcAMPセンサとして、ヘテロオリゴマーのチャネルよりも更に細胞内cGMP濃度の僅かな変動に妨害を受けやすい。更にcAMPの感受性は、細胞内cAMP濃度の僅かな変動も確実に感知するためには依然としてあまり満足のできるものではない。
更にcAMPに関する感受性を高め、更にcGMPに関する感受性を低減させるCNGチャネルのα3−サブユニット中の突然変異は公知である(Rich TC, Tse TE, Rohan DG, Schaack J及びKarpen JW.著(2001) In−vivo−assessment of local phosphodiesterase activity using tailored cyclic nuclotide−gated channels as cAMP sensors.J Gen Physol., 118; 63−78)。ラットのα3−サブユニットからなり、その位置460のシステイン(C460)がトリプトファン(W)に交換され、更に位置583のグルタミン酸(E583)がメチオニン(M)に交換(C460W/E583M−突然変異体)されているCNGチャネルは約1.2μMのcAMPによって半値活性化されるが、12μMのcGMPによって初めて半値活性化される。
本発明の課題は、cAMPもしくはcGMPに関するC460W/E583M−突然変異体と類似の感受性を有するが、1つの位置だけが遺伝子修飾されているcAMPセンサとしてのCNGチャネルを開発することであった。このようなチャネルは簡単かつ迅速な細胞性測定系において効率的かつ汎用的に医薬品作用物質のスクリーニングのために使用できるが、また薬理学的な標的タンパク質又は潜在的に薬理学的な標的タンパク質の特性決定のためにも使用できる。
前記課題は、ウシ由来のα3−サブユニット中のトレオニンT537に相当する位置で、SEQ ID NO1及び2による野生型と比較してcGMPに対する、より高いcAMPに関する感受性及び/又はより高いcAMPに関する選択性を有するように修飾されているα3−サブユニットからなるCNGチャネルによって解決される。
これらのイオンチャネルは、C460W/E583M−突然変異体と類似のcAMPもしくはcGMPに関する感受性を有する。
本発明の対象は更に前記のCNGチャネルの製造方法である。また本発明の対象は、修飾されたCNGチャネルのための核酸を含有する発現ベクターである。同様に本発明の対象は、前記の発現ベクターで形質転換され、かつこのCNGチャネルを発現できる細胞株である。GPCR、アデニル酸シクラーゼ、ホスホジエステラーゼ又は細胞内cAMP濃度を調節する別のタンパク質を、修飾されたCNGチャネルと一緒に異種共発現できる細胞株が特に有利である。
更に本発明の対象は、発現ベクターを用いて形質転換を実施する前記の細胞株の製造方法である。本発明によれば、有利にはこのタンパク質のための遺伝子を発現ベクターにクローニングし、引き続き細胞株に形質転換を実施する。
本発明によれば、有利にはα3−サブユニットからなるCNGチャネルが使用される。しかしながらウシ由来又は別の生物由来の別のサブユニットも挙げられる。
本発明により使用されるサブユニットでは、有利にはウシのα3−サブユニット中の位置のトレオニンT537に相当するアミノ酸は、セリンとは異なる別のアミノ酸によって置換されている。この際、トレオニンがメチオニン又はバリンによって置換されているサブユニットが特に有利である。SEQ ID NO3及び4もしくはSEQ ID NO5及び6において、前記のように修飾されたサブユニットをウシ由来のα3−サブユニットの例として示している。
本発明によるイオンチャネルは、とりわけ細胞内cAMP濃度の測定のための細胞性cAMPセンサとして適している。同様にこのイオンチャネルは、細胞内cAMP濃度を調節するGタンパク質結合型レセプター(GPCR)に対するリガンド、アゴニスト及びアンタゴニストの作用の測定に適している。更にこのイオンチャネルは、細胞内cAMP濃度を調節するアデニル酸シクラーゼ及びホスホジエステラーゼ(エフェクタータンパク質)に対するアクチベーター及びインヒビターの作用を測定するために使用できる。
更に本発明は、細胞内cAMP濃度を直接的又は間接的に調節する細胞成分の活性に影響を及ぼす化学物質の作用の測定のために、核酸及び相応のタンパク質を有する細胞性測定系を使用することに関する。
前記の細胞性測定系は医薬品作用物質のスクリーニング及び作用物質の特性決定のため並びに薬理学的に関連するタンパク質の特性決定のためにcAMPセンサとして汎用かつ柔軟に使用できる。測定されるものは、全てのGタンパク質結合型レセプター、アデニル酸シクラーゼ、ホスホジエステラーゼ並びにcAMPシグナル経路に関連している全ての別のタンパク質を含む。
細胞性cAMPセンサとして、T537M突然変異体又はC460W/E583M−突然変異体の代わりに、
(i)cAMPに関する類似の高い又はより高い感受性、
(ii)cAMPに関する類似の高い又はより高い感受性又は
(iii)cAMPに関する類似の高い又はより高い感受性及び付加的に高い又はより高い選択性
を有する別の遺伝子修飾されたCNGチャネルを製造でき、かつ使用できる。
このようなCNGチャネルは(1)別の生物のα3−サブユニット、(2)ウシ又は別の生物由来の別のCNGチャネル−サブユニットを含み、並びに(3)これらのサブユニットからなるホモオリゴマーもしくはヘテロオリゴマーの構造を有することができる。これらのサブユニットは(4)ウシ由来のCNGチャネルのα3−サブユニット中の位置T537に相当する位置でそれぞれ遺伝子修飾されていてよい。前記の位置でトレオニンはメチオニン又はバリンによって置換されていてよいが、又は別のアミノ酸(セリンを除く)によって置換されていてもよい。このようなサブユニットは(5)別の位置に更なる遺伝子修飾を有することができる。更にこれらのCNGチャネルは(6)前記の位置で同様に遺伝子修飾されているキメラサブユニットを有することができる。
「ウシ由来のCNGチャネルのα3−サブユニット中の位置T537に相当する位置で遺伝子修飾された」は以下のことを意味する:CNGチャネルの種々のサブユニット(例えばα1、α2、α3及びα4)もしくは種々の生物由来のCNGチャネルの同じサブユニット、例えばウシ由来のα3−サブユニット及びラット由来のα3−サブユニットは互いに高い配列類似性を有する。それでも構造的及び機能的に重要な断片の位置はサブユニットのアミノ酸配列中でたいてい僅かに異なる。しかしながら当業者は互いに相応する配列断片もしくはアミノ酸を配列の比較によって同定することができる。ウシ由来のα3−サブユニット中の環状ヌクレオチドのための結合部位におけるトレオニンT537は、例えばウシ由来のα3−サブユニット中のトレオニンT539又はウシ由来のα1−サブユニット中のトレオニンT560に相当する。
「他の遺伝子修飾」とは、本発明による修飾の他に少なくとも1つの別の位置で1つのアミノ酸が別の1つのアミノ酸に交換されているか、又は少なくとも1つの別の位置で1つのアミノ酸が欠失又は付加されていることを意味する。
「キメラサブユニット」として、少なくとも2つの異なる部分のサブユニットから構成されている係るCNGチャネル−サブユニット、従って例えばα1−サブユニットのアミノ末端部及びα3−サブユニットからのカルボキシ末端部から構成されているサブユニットを表す。このようなキメラは当業者によって分子生物学的手法で容易に製造でき、かつあるタンパク質の一定の特性を別のタンパク質の特性と組み合わせるか、又は一定の特性を別のタンパク質に移すか、又は一定の特性を野生型タンパク質に対して変化させるためにしばしば利用される。種々のCNGチャネル−サブユニットからなるキメラは既に記載されている(Seifert R, Eismann E, Ludwig J, Baumann A及びKaupp, UB.著(1999) Molecular determinants of a Ca2+−binding site in the pore of cyclic nucleotide−gated channels:S5/S6 segments control affinity of intrapore glutamates.EMBO J., 18, 119−130)。
脊椎動物においてCNGチャネルのサブユニットに関する6つの遺伝子が公知である(α1〜α4、β1、β2)。付加的に前記のサブユニットの種々のアイソフォームが存在する(Sautter A, Zonh X, Hofmann F及びBiel M.著(1998) An isoform of the rod photoreceptor cyclic nucleotide−gated channel beta subunit expressed in olfactory neurons.Proc Natl Acad Sci USA, 95, 4696−4701; Boenigk W, Bradley J, Mueller F, Sesti F, Boekhoff I, Ronnett GV, Kaupp UB及びFrings S.著 (1999) The native rat olfactory cycloc nucleotide−gated channel is composed of three distinct subunits.J Neurosci., 19, 5332−5347)。最初に発見されたのは、網膜の桿体におけるα1−サブユニット(Kaupp UB, Niidome T, Tanabe T, Terada S, Boenigk W, Stuehmer W, Cook NJ, Kangawa K, Matsuo H, Hirose T, Miyata T及びNuma S. (1989) Primary structure and functional expression from complementary DNA of the rod photoreceptor cyclic GMP−gated channel.Nature, 342, 762−766.)及びβ1−サブユニット(Chen TY, Peng YW, Dhallam RS, Ahamed B, Reed RR及びYau KW著(1993) A new subunit of the cyclic nucleotide−gated cation channel in retinal rods.Nature, 362, 764−767; Koerschen HG, Illing M, Seifert R, Sesti F, Williams A, Gotzes S. Colville C, Mueller F, Dose A, Godde M, Molday L, Kaupp UB及びMolday RS.著(1995) A 240−kDa−protein represents the complete beta subunit of the cyclic nucleotide−gated cation channel from rod photoreceptor.Neuron, 15, 627−636)、及び網膜の錐体におけるα2−サブユニット(Boenigk W, Altenhofen W, Mueller F, Dose A, Illing M, Molday RS及びKaupp UB.著(1993) Rod and cone photoreceptor cells express distinct genes for cGMP−gated channels.Neuron, 10, 865−877)及びβ2−サブユニット(Gerstner A, Zong X, Hofmann F及びBiel M.著 (2000) Molecular cloning and functional characterization of a new modulatory cyclic nucleotide−gated channel subunit from mouse retina.J Neurosci., 20, 1324−1332)並びに鼻の嗅細胞におけるα3−サブユニット(Dhallan RS, Yau KW, Schrader KA及びReed RR.著(1990) Primary structure and functional expression of a cyclic nucleotide−activated channel from olfactory neurons.Nature, 347, 184−187; Ludwig J, Margalit T, Eismann E, Lancet D及びKaupp UB.著(1990) Primary structure of cAMP− gated channel from bovine olfactory epithelium.FEBS Lett., 270, 24−29)及びα4−サブユニット(Bradley J, Li J, Davidson N, Lester HA及びZinn K.著 (1994) Heteromeric olfactory cyclic nucleotide−gated channels:a subunit that confers increased sensitivity to cAMP. Proc. natl. Acad. Sci. USA, 91, 8890−8894; Liman ER and Buck LB.(1994) A second subunit of the olfactory cyclic nucleotide−gated channel confers high sensitivity to cAMP.Neuron, 13, 611−621)である。
前記のサブユニットからなるCNGチャネルは更にニューロン細胞及び非ニューロン細胞並びに組織中で検出された(Richards MJ及びGordon SE.著(2000) Cooperativity and cooperation in cyclic nucleotide−gated ion channels.Biochemistry, 39, 14003−14011)。更にCNGチャネルは脊椎動物で見いだされるだけでなく、同様に無脊椎動物、例えばドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)(Baumann A, Frings S, Godde M, Seifert R及びKaupp UB.著(1994) Primary structure and functional expression of a Drosophila cyclic nucleotide− gated channel present in eyes and antennae.EMBO J., 13, 5040−5050)及び植物(Leng Q, Mercier RW, Yao W及びBerkowitz GA.著(1999) Cloning and first functional characterization of a plant cyclic nucleotide−gated cation channel.Plant Physiol., 121, 753−761)中でも見いだされる。原則的に前記の及び全ての別のCNGチャネルのサブユニットは本発明により修飾できる。
遺伝子修飾されたCNGチャネルは細胞性テストシステムにおいて薬理学的調査のためのcAMPセンサとして
(i)リガンド、アゴニスト及びアンタゴニストの、細胞内cAMP濃度を調節する膜局在のGタンパク質結合型受容体(GPCR)に対する作用を調査するため
(ii)アクチベーター及びインヒビターの、cAMPを合成又は加水分解するエフェクタータンパク質(酵素)に対する作用を調査するため
(iii)アクチベーター及びインヒビターの、同様に調節されてcAMP−シグナル伝達カスケードに連動する別のタンパク質に対する作用を調査するため、また
(iv)GPCR、エフェクタータンパク質又はcAMP−シグナル伝達カスケードに関連している別のタンパク質の特性を調査するために使用できる。
本発明によれば「膜局在のGタンパク質結合型レセプター」(GPCR)といわれるタンパク質は、系統発生的に極めて多様な、非常に多岐にわたる膜局在レセプターのファミリー(概略文献:Morris AJ及びMalbon CC.著(1999) Physiological regulation of G−protein−linked signaling.Physio Rev., 79, 1373−1430)に属する。GPCRのファミリーは恐らく、その配列類似性をもとに(Probst WC, Snyder LA, Schuster DI, Brosius J及びSealfon SC.著(1992) Sequence alignment of the G−protein coupled receptor superfamily.DNA Cell Biol., 11, 1−20)又はその本来のリガンドの化学的性質に基づいて分類できる1000を上回る種々のメンバを含む。今まで知られているGPCRの一覧及び分類は、例えば「GPCRDB」データバンク(Horn F, Weare J, Beukers MW, Horsch S, Bairoch A, Chen W, Edvardsen O, Campagne F及びVriend G.著(1998) GPCRDB:an Information system for G protein−coupled receptors.Nucleic Acids Res., 26, 275−279)中に見いだされる。以下に概略として個々のクラスの幾つかの代表を挙げる。クラスA(「ロドプシン様」)には、ロドプシン自体及びそれらの本来のリガンドをもとに分類される配列類似の種々のレセプターが該当する。これには(1)生体原アミンのためのレセプター、例えばムスカリン性アセチルコリンレセプター、アドレナリンレセプター、ドパミンレセプター、ヒスタミンレセプター、セロトニンレセプター、オクトパミンレセプター、(2)ペプチドのためのレセプター、例えばアンギオテンシンレセプター、ケモカインレセプター、エンドセリンレセプター、神経ペプチドレセプター、(3)ホルモンタンパク質のためのレセプター、例えばFSHレセプター、(4)臭い物質のためのレセプター、(5)プロスタノイドのためのレセプター、例えばプロスタグランジンレセプター又は(6)ヌクレオチドのためのレセプター、例えばアデノシンレセプターが該当する。クラスB(「セクレチン様」)には、セクレチンレセプター自体並びに、例えばカルシトニン、グルカゴン、利尿ホルモン又はCRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)が該当する。クラスC(「代謝型グルタミン酸/フェロモン」)には代謝型レセプター自体並びにGABA−Bレセプターなどが該当する。他のクラスは植物、菌類、昆虫、細菌由来のレセプターを含む。全てのクラスは、機能が今までまだ不明であるかもしくは本来のリガンドが分かっていないレセプター(オーファンレセプター)を含む。約200の種々のGPCR型について、それぞれ本来のリガンドが知られており、他の約100のGPCR型はオーファンGPCRである。700以上のGPCRは恐らく臭い物質又は味覚物質によって活性化される。原則的に、細胞内cAMP濃度を調節する全てのGPCRを異種発現系において、本発明による遺伝子修飾されたCNGチャネルと一緒にcAMPセンサとして共発現させ、リガンド、アゴニスト及びアンタゴニストの作用を薬理学的に調査することができる。
また通常、促進性又は抑制性Gタンパク質を介さずに細胞内cAMP濃度を調節するGCRPを調査することもできる。このようなGPCRを遺伝子修飾によって、このレセプターがcAMPシグナル経路に連結されるように修飾することができる。遺伝子修飾は、例えばキメラ−GCRPの製造によって行うことができる(Liu J, Conklin BR, Blin N, Yun J及びWess J.著(1995) Identification of a receptor/G−protein contact site critical for signaling specificity and G−protein activation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 11642−11646)。
「アゴニスト」及び「リガンド」として、GCRPを活性化する物質を表す。
それに対して「アンタゴニスト」として、GCRPに結合するが、活性化させることができない物質を表す。リガンド又はアゴニストの作用はアンタゴニストによって用量依存的に阻害される。
細胞内cAMP濃度を直接調節する「エフェクタータンパク質」として、アデニル酸シクラーゼ及びホスホジエステラーゼを表す。
活性がGPCRを媒介して制御される「アデニル酸シクラーゼ」は、Mg2+−アデノシン三リン酸からのcAMPの形成を触媒し、かつヒトの身体の殆どの細胞、組織及び器官に存在する大きな膜局在の酵素である(Tang WJ及びHurley JH.著(1998) Catalytic mechanism and regulation of mammalian adenylyl cyclases.Mol Pharmacol., 54, 231−240)。全体として9種の異なるクラスの前記アデニル酸シクラーゼが知られている。このようなアデニル酸シクラーゼは本発明による細胞性テストシステムにおいても内在的に発現され、かつ異種発現されたGPCRによって活性化することができる。従ってこれらのアデニル酸シクラーゼはテストシステムの機能化に決定的に重要な役割を果たす。他のクラスは、活性が恐らくGPCRを媒介せずに調節される可溶性のアデニル酸シクラーゼを含む(Buck J, Sinclair ML, Schapal L, Cann MJ及びLevin LR.著(2000) Cytosolic adenylyl cyclase defines a unique signaling molecule in mammals. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 79−84)。原則的に全てのアデニル酸シクラーゼを異種発現系において、本発明による遺伝子修飾されたCNGチャネルと一緒にcAMPセンサとして共発現させ、かつインヒビター及びアクチベーターの作用を薬理学的に調査することができる。
「ホスホジエステラーゼ」(PDE)は、cAMP及びcGMPをアデノシン一リン酸(AMP)もしくはグアノシン一リン酸(GMP)に加水分解する細胞内部の酵素である(Francis SH, Turko IV及びCorbin JD.著(2000) Cyclic nucleotide phosphodiesterases:relating structure and function. Proc. Nucleic. Acid. Res. Mol. Biol., 65, 1−52)。全体として11種の異なる型のPDEが知られている。相当数のPDEは特異的にcGMPを、一方で特異的にcAMPを加水分解し、他方でcAMPもcGMPも加水分解する。GPCR及びアデニル酸シクラーゼと同様に、PDEはヒトの生体の殆どの細胞、組織及び器官で発現される。アデニル酸シクラーゼと対照的に、光レセプターに特異的なPDE6だけがGPCRを媒介して活性化される。別のPDEの活性はその代わりに種々の別の機構によって調節される。原則的に、cAMPを加水分解する全てのPDEを異種発現系において、本発明による遺伝子修飾されたCNGチャネルと一緒にcAMPセンサとして共発現させ、かつインヒビター及びアクチベーターの作用を薬理学的に調査することができる。
「アクチベーター」として、アデニル酸シクラーゼ又はPDEと直接的に相互作用し、かつそれによって酵素活性が増大する物質を表す。
それに対して、「インヒビター」として、同様にアデニル酸シクラーゼ又はPDEと直接的に相互作用するが、その活性が低下する物質を表す。
原則的に、細胞内cAMP濃度を調節する全てのタンパク質を異種発現系において、本発明による遺伝子修飾されたCNGチャネルと一緒にcAMPセンサとして共発現させ、薬理学的に調査することができる。
調査すべきタンパク質は異種発現系において一過性に又は、有利には安定に発現させることができる。
「一過性発現」とは、異種発現されるタンパク質が発現系の細胞から規定の時間にわたってのみ発現されることを意味する。
「安定発現」とは、導入された遺伝子が異種発現系の細胞のゲノム中に安定に組み込まれることを意味する。こうして作成される新規の細胞株は各々の後継の細胞世代において相応のタンパク質を発現する。
発現のためには、調査されるべきタンパク質をコードするcDNAを発現ベクターにクローニングし、かつ好適な発現系の細胞に形質転換する。
「発現ベクター」として、相応の細胞株にcDNAを導入(「形質転換」)でき、かつ相応のタンパク質をそこで機能的に発現できる(「異種発現」)全てのベクターを表す。形質転換は、有利にはpcDNA−ベクター(Invitrogen)を用いて実施できる。
「異種発現系」として、原則的に全ての真核細胞、例えば酵母細胞、アスペルギルス細胞、昆虫細胞、脊椎動物細胞及び、特に哺乳動物細胞が適している。好適な細胞株は、例えばCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、例えばPro−5変異体(ATCC CRL 1781)を含むK1系統(ATCC CCL 61)、COS細胞(アフリカミドリザル)、例えばCOS−1変異体(ATCC CRL 1650)及びCOS−7変異体(ATCC 1651)を含むCV−1系統(ATCC CCL 70)、BHK細胞(ハムスター胎児腎臓)、例えばBHK−21系統(ATCC CCL 10)、MRC−5(ATCC CCL 171)、マウスL細胞、マウスNIH/3T3細胞(ATCC CRL 1658)、マウスC127細胞(ATCC CRL−1616)、ヒト癌腫細胞、例えばHeLa系統(ATCC CCL 2)、IMR−32系統の神経芽細胞腫細胞(ATCC CCL 127)、神経2A細胞(ATCC CLL 131)、SK−N−MC細胞(ATCC HTB 10)及びSK−N−SH細胞(ATCC HTB 11)、PC12細胞(ATCC CRL 1721)並びにSf9細胞(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))(ATCC CRL 1711)である。有利にSF変異体(ATCC 1573.1)を含むHEK293細胞(ヒト胚腎臓)(ATCC CRL 1573)が使用される。本発明により製造される細胞株DSM ACC2516が特に有利である。
試験物質の、調査されるべきタンパク質に対する作用は蛍光光学的測定法によって実施できる。
調査されるべきタンパク質を細胞性テストシステムにおいて本発明によるcAMPセンサと一緒に異種発現させ、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、アクチベーター又はインヒビターで活性化もしくは阻害する。cAMPセンサはcAMP濃度の変化を感知し、かつCa2+イオンはより大規模に又はより小規模に細胞中に流入する。
「蛍光光学的測定法」とは、細胞内Ca2+濃度の変化を、蛍光を発するCa2+指示薬で可視化させることを意味する。こうした中、多数の種々のCa2+指示薬が知られている(Haugland RP,著(1996) Handbook of fluorescent probes and research chemicals.Molecular Probes Inc.)。この指示薬には、例えばFluo−3、カルシウムグリーン、Fura−2及び本発明により有利なFluo−4(Molecular Probes)が該当する。このような指示薬は通常水溶性であり、かつ従って細胞の疎水性の脂質膜を通過できないので、この指示薬はその代わりにアセトキシメチルエステル化合物の形で適用される(Tsien RY.著(1981) A non−disruptive technique for loading calcium buffers and indicators into cell.Nature, 290, 527−528)。それに対して前記のエステル化化合物は疎水性であり、かつ細胞によって取り込まれる。細胞内部で、このエステル結合は内因性の細胞内エステラーゼによって分解され、かつこの指示薬は再びその水溶性形で存在する。前記の形において、指示薬は細胞内部に残留し、細胞内部に集積し、かつ従って細胞内Ca2+指示薬として使用できる。これらの指示薬を次いで好適な波長を有する光で励起すると、細胞内Ca2+濃度に依存する蛍光を示す。蛍光の程度(規模)と時間的経過(キネティック)は調査されるタンパク質の活性の程度及び経過と相関し、かつ蛍光検出器を用いて実時間内に非常に良好なシグナル/ノイズ比(信号/雑音比)で観察され、かつ好適なソフトウェアで図示できる。
細胞内Ca2+濃度の測定のために、同様にアポエクオリン及び発色団コファクターのセレンテラジンからなるイクオリン−タンパク質複合体又は匹敵する複合体をCa2+指示薬として使用することができる(Brini M, Pinton P, Pozzan T及びRizzuto R.著(1999) Targeted recombinant aequorins:tools for monitoring (Ca) in the various compartments of a living cell.Micrsc Res Tech., 46, 380−389)。このためにアポエクオリンを本発明によるcAMPセンサ及び調査されるべきタンパク質と一緒に細胞性テストシステムにおいて異種発現させなければならない。この測定の前に、細胞をセレンテラジンと一緒に、アポエクオリンとセレンテラジンが活性イクオリン複合体に会合できるようにインキュベートせねばならない。細胞内Ca2+濃度が上昇する場合に、セレンテラジンがセレンテラミドに酸化される。この過程でCOが形成し、発光が放出される。前記の過程が不可逆的であることは欠点である。その発光は好適な光学検出装置で確認できる(発光光学的測定法)。前記の光学的測定法は蛍光光学的測定法と同様に高感度であるが、実時間内の反応の経過を観察する測定のためにはあまり適していない。
本発明によるテストシステムによる蛍光光学的測定法又は発光光学的測定はキュベット測定装置、Ca2+イメージング顕微鏡又は蛍光リーダもしくは発光リーダにおいて実施できる。
本発明によれば有利には測定はプラスチック容器(マルチウェルプレート)のウェルにおいて蛍光リーダ中で実施される。細胞は懸濁液中で又は、有利にはウェルの底部に付着されて存在することができる。種々の数のウェルを有するマルチウェルプレート、例えば96、384、1536又はそれ以上のウェルを有するマルチウェルプレートを使用することができる。マルチウェルプレートにより、ただ一つのプレートにおいて多数の同じ又は異なる測定を実施することができる。
「蛍光リーダ」もしくは「発光リーダ」は、蛍光もしくは発光をマルチウェルプレートにおいて測定できる非常に高感度な光学的測定装置である。このような装置においてリガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、アクチベーター又はインヒビターの作用を非常に迅速にかつ高いスループットで調査することができる。
本発明によれば、GPCR、エフェクタータンパク質又はcAMPシグナル伝達カスケードに関連する別のタンパク質の特性を、蛍光−又は発光光学的測定によって定量的に調査することができる。
しかしながら本発明によれば原則的に測定は1日あたりに高いスループット(ハイスループット)で試験を実施することができる。従って新規の薬理学的作用物質のスクリーニングが可能である。この場合、100000個までの物質を1日あたりに(ハイスループット−スクリーニング、HTS−スクリーニング)もしくは100000個を上回る物質を1日あたりに(超HTS−スクリーニング、UHTS−スクリーニング)試験することができる。
例えばFLIPR384−蛍光リーダ(Molecular Devices)を用いて、384種の互いに無関係な測定を同時に実施でき、かつ蛍光は実時間内で観察できる。
以下に本発明を実施例及び添付図面を用いて詳細に説明する。
(実施例1〜4)
野生型チャネルのトレオニンT537の代わりにメチオニン(T537M)もしくはバリン(T537V)を配列中に有する遺伝子修飾されたホモオリゴマーのウシ由来のα3−CNGチャネルを製造した。
そのために、ウシ由来のCNGチャネルのα3−サブユニットをコードする核酸(SEQ ID NO1)を部位特異的突然変異による分子生物学的手法で、T537M−突然変異体をコードする核酸(SEQ ID NO3)とT537V−突然変異体をコードするもう一つの核酸(SEQ ID NO5)が生じるように修飾(「遺伝子修飾」)させた(方法を参照)。
SEQ ID NO2、4及び6は、野生型チャネル、T537M−突然変異体もしくはT537V−突然変異体のアミノ酸配列を示している。
T537M−突然変異体及びT537V−突然変異体のcAMP及びcGMPに対する感受性及び選択性を電気生理学的方法で測定し(方法を参照)、野生型チャネルの特性と比較した。そのために相応の核酸を発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)中にクローニングした(方法を参照)。この発現構築物で次いでヒト胚腎臓細胞株293(HEK293細胞)の細胞を形質転換させ、かつ相応のタンパク質を細胞中で機能的に一過性又は安定にいずれかで発現させた(方法を参照)。調査の結果を図1〜4に示す。
図1A、2A、3A及び4Aは、それぞれ種々の濃度のcAMP(1A、3A)もしくはcGMP(2A、4A)の存在下での異種発現された遺伝子修飾されたCNGチャネルの電流−電圧(IV)関係を示している。これらは、それぞれcAMPもしくはcGMPの存在下でのCNGチャネルに典型的な電流−電圧関係を示し、かつこのチャネルがHEK293細胞において機能的に発現されていることを裏付けている。
平均電流のcAMP濃度もしくはcGMP濃度に対する依存性を、図1〜4Bにそれぞれ用量−作用関係の形で示す。これらの測定の結果は、cAMPもしくはcGMPに関するCNGチャネルの感受性を計算するために利用した。チャネルが最大の可能な電流の半分を流すVm=+100mVにおけるcAMPもしくはcGMPの濃度(K1/2値)をCNGチャネルの感受性のための尺度として利用した。K1/2値が低ければ低いほど、相応の環状ヌクレオチドに関するチャネルの感受性は高い。
図1B(T537M−突然変異体)及び3B(T537V−突然変異体)は、それぞれcAMPに関する用量−作用関係を示し、図2B(T537M−突然変異体)及び4B(T537V−突然変異体)はそれに対してそれぞれcGMPに関する用量−作用関係を示している。図1C(T537M−突然変異体)及び3C(T537V−突然変異体)においては、それぞれ突然変異体の規格化された用量−作用関係をcAMPに関するα3−野生型チャネルのそれと比較し、図2C(T537M−突然変異体)及び4C(T537V−突然変異体)においてはそれに対して、それぞれ規格化された用量−作用関係をcGMPに関するα3−野生型チャネルのそれと比較している。
次に記載する表は遺伝子修飾されたCNGチャネルと野生型チャネルの感受性特性をまとめている。cAMP及びcGMPに関するK1/2値が列記されている。
Figure 0004304064



T537M−突然変異体を2.7μMのcAMPによって(図1C)、T537V−突然変異体を34μMのcAMPによって(図3C)、かつ野生型を80μMのcAMPによって(図1C、3C)半値活性化させる。野生型と比較して、T537M−突然変異体はcAMPに関して約30倍だけ、T537V−突然変異体はcAMPに関して約3倍だけ感受性である。T537S−突然変異体と比較してT537M−突然変異体はcAMPに関して約5倍だけ感受性であり、一方でT537V−突然変異体はcAMPに関してT537S−突然変異体よりも約2.5倍だけ感受性が低い。
T537M−突然変異体を14.9μMのcGMPによって(図2C)、T537V−突然変異体を241μMのcGMPによって(図4C)、かつ野生型を1.6μMのcAMPによって(図2C、4C)半値活性化させる。野生型と比較して、T537M−突然変異体はcGMPに関して約9倍だけ、T537V−突然変異体はcGMPに関して約150倍だけ感受性が低い。T537S−突然変異体と比較して、T537M−突然変異体はcGMPに関して約21倍だけ、T537V−突然変異体はそれどころかcGMPに関して約350倍だけ感受性が低い。
cAMPもしくはcGMPに関するCNGチャネルの選択性はK1/2値の比較により判明する。実施例:T537M−突然変異体はcAMPに関して2.7μMのK1/2値を有し、cGMPに関して14.9μMのK1/2値を有する。このことは、この突然変異体が既に2.7μMのcAMPによって半値活性化されるが、14.9μMのcGMPによって初めて半値活性化されることを意味する。この突然変異体は従ってcAMPに関して、cGMPに関するよりも明らかに感受性である。商(14.9μM/2.7μM)は相対選択性を示す。T537M−突然変異体は従ってcAMPに関して約6倍高い選択性を有する。T537V−突然変異体は同様にcAMPに関して約6倍選択性である。それに対してT537S−突然変異体はcGMPに関して20倍高い選択性を有し、かつ野生型チャネルはそれだけでなくcGMPに関して約50倍高い選択性を有する。
測定の結果を以下に示す:(1)野生型チャネルよりも極めて高い絶対的なcAMP感受性を有し、(2)cAMP及びcGMPに関する選択性が逆になったCNGチャネル突然変異体を作成し、かつ同定した。遺伝子修飾によって、前記のCNGチャネルはcAMPに関する非常に高い選択的な感受性を獲得する。付加的に両方の遺伝子修飾されたCNGチャネルは、より大きな細胞内cGMP濃度の変化でさえもcAMP濃度の測定を妨げないほどcGMPに関して非感受性である。特に本発明により有利なT537M−突然変異体は、細胞性cAMPセンサとして特に適している。この突然変異体は、例えば細胞内テストシステムにおいて細胞内cAMP濃度に影響を及ぼしうる物質の作用の調査のために使用でき、このようなテストシステムを初めて実用可能にする。このようなセンサを用いて更に、例えばGPCRの活性化によって引き起こされるような細胞内cAMP濃度の僅かな変化も非常に良好な信号/雑音比で確実に確認でき、実時間内で観察できる。
方法
遺伝的に活発化された(genetisch motivierter)CNGチャネルの部位特異的突然変異誘発による製造
ウシ由来のCNGチャネルのα3−サブユニットに関するcDNAを適当な制限エンドヌクレアーゼ(EcoRV及びNsiI)を用いてプラスミドpCHOLF102(Altenhofen W, Ludwig J, Eismann E, Kraus W, Boenigk W und Kaupp UB.(1991) Control of ligand specificity in cyclic nucleotide−gated channels from rod photoreceptors and olfactory epithelium. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 9868−9872)から切り出し、pcDNAlamp(Invitrogen)中にクローニングした。このプラスミドをpcA−bolfと表す。このcDNA断片を次いでEcoRV及びXbaIを介してpcDNA3誘導体中にクローニングした。このプラスミドをpc3−bolfと表す。
遺伝子修飾されたCNGチャネルのα3−サブユニットの製造を部位特異的突然変異誘発によって実施した(Herlitze, S. and Koenen, M. (1990).A general and rapid mutagenisis method using polymerase chain reaction.Gene, 91, 143−147)。
T537M−α3−サブユニットの製造のための突然変異誘発プライマーは以下の配列(SEQ ID NO7)を有していた:
5′−CGACGCATGGCGAACATCCGCAGTCT−3′
T537V−α3−サブユニットの製造のための突然変異誘発プライマーは以下の配列(SEQ ID NO8)を有していた:
5′−CGACGCGTCGCGAACATCCGTCT−3′
まず前記の突然変異誘発プライマー及びリバースプライマー#1817(5′−TTGGCTGCAGCTATTATGGCTTCTCGGCAG−3′)(SEQ ID NO9)でのPCRをpc3−bolf上で実施した。100μlのPCR混合物は10ngの鋳型DNA、1.5mMのMgClを含むTaqポリメラーゼ用の1×PCRバッファー、200μMのdNTP、1UのTaqポリメラーゼ及びそれぞれ150ngの両者のプライマーを含有していた。PCR条件は以下の通りである:94℃での2分間の変性、引き続き94℃で45秒、46℃で45秒、72℃で45秒を25サイクル。
404塩基対の大きさの断片を精製し、かつ重複する666塩基対の大きさのSmaI/PvuII−制限断片と一緒に更なるPCRのための鋳型として使用した。増幅のために両側からのプライマー(die flankierenden Primer)#1813(5′−GTCGGATCCTCCACACTCAAGAAAGTG−3′)(SEQ ID NO10)及び#1817を使用した。このPCR混合物は前記に示したのと同じ組成を有するが、その際、10ngのプラスミドDNAの代わりに鋳型として250ngの第一のPCR断片及び10ngの制限断片を使用した。このPCR断片をBsrGIで切断し、かつpc3−bolfにおいて相応の断片と交換した。修飾されたDNA断片の配列を配列決定によって調査した。
cDNAクローンの単離
CRFレセプターのクローニングのためにプライマー#843(5′−AGCGGGATCCACCATGGGACGGCGCCCGCA−3′)(SEQ ID NO11)及び#842(5′−GGCCTGGAGCTCACACTG−3′)(SEQ ID NO12)でのPCRをラット下垂体の第一鎖cDNA上で実施した。100μlのPCR混合物は10ngの第一鎖cDNA、1.5mMのMgClを含むTaqポリメラーゼ用の1×PCRバッファー、200μMのdNTP、1UのTaqポリメラーゼ及びそれぞれ150ngの両者のプライマーを含有していた。PCR条件は以下の通りである:94℃での2分間の変性、引き続き94℃で45秒、56℃で45秒、72℃で75秒を44サイクル。
1271塩基対の大きさの断片をBamHI及びSacIを介してpBluescriptSK−中にクローニングした(pBCRFR1)。この配列は公表された配列L25438(Chang, CP, Pearse RVII, O’Connel S及びRosenfed MG著(1993). Identification of a seven transmembrane helix receptor for corticotropin−releasing factor and sauvagine in mammalian brain.Neuron, 11, 1187−1195)と一致した。異種発現のためにこのcDNAをpcDNA誘導体中に再クローニングした(pCRFR1)。
ドロソフィラ由来のドパミンレセプターのcDNA(Gotzes F, Balfanz S及びBaumann A.著(1994) Primary structure and functional characterization of a Drosophila dopamine receptor with high homology to human D1/5 receptors.Receptors Channels, 2, 131−141)を含有するプラスミドpcKMはF.Gotzesの好意により提供された。
HEK293細胞における異種発現及び安定な細胞株の製造
HEK293細胞における一過性発現をBaumann A, Frings S, Godde M, Seifert R及びKaupp UB.著(1994) Primary structure and functional expression of a Drosophila cyclic nucleotide−gated channel present in eyes and antennae.EMBO J., 13, 5040−5050に記載されるように実施した。電気生理学的特性決定のために、これらの細胞をトランスフェクションの翌日に、ポリ−L−リシンで被覆されているガラスプレート上に移した。電気生理学的調査を次いでその翌日に実施した。
安定な細胞株の製造のために細胞を同様にトランスフェクションさせた。所望の遺伝子を安定に発現する細胞クローンの選択のためにトランスフェクションの翌日に2×10 個の細胞を9cmの細胞培養皿上に播種した。この細胞を20日間培養し、その際、細胞培養培地にG418(800μg/ml)(Calbiochem)、ゼオシン(100μg/ml)(Invitrogen)又はハイグロマイシン(100μg/ml)(Invitrogen)のいずれかを添加した。20日後に、耐性遺伝子を発現する細胞クローンを単離し、かつCNGチャネル遺伝子もしくはレセプター遺伝子の発現をウェスタンブロット及び機能的調査(電気生理学的測定及び蛍光光学的測定)によって調査した。ウェスタンブロット分析のために、細胞を溶解バッファー中に均質化し(10mMのHepes、1mMのDTT及び1mMのEDTA、pH7.4)、5回急速冷凍(液体窒素中)し、かつ最後に55000rpmで10分間遠心分離した。膜ペレットを溶解バッファー中に再懸濁(150mMのNaCl、1mMのMgCl、20mMのHepes、pH7.5、0.1mMのEGTA及び0.5%のトライトンX−100)した。それぞれ3μgの膜タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、イモビロン(Immobilon)膜上に移し、かつ特異抗体で標識した。免疫活性をECL−検出キット(Amersham)を用いて可視化させた。
二重安定細胞株の製造のために、CNGチャネル遺伝子又はレセプター遺伝子のいずれかを安定して発現する細胞クローンを更に培養し、かつそれぞれ別のcDNAによるトランスフェクションのために使用した。セレクション及び細胞クローンの選択は前記に記載のように実施した。
蛍光光学的測定のために部分的に、CNGチャネルの遺伝子修飾されたα3−サブユニットを安定に、かつドロソフィラ由来のドパミンレセプターを一過性に発現する細胞を使用した。このために安定なT537M−細胞株の細胞をBaumann A, Frings S, Godde M, Seifert R und Kaupp UB.(1994) Primary structure and functional expression of a Drosophila cyclic nucleotide−gated channel present in eyes and antennae.EMBO J., 13, 5040−5050に記載されるようにトランスフェクションした。トランスフェクションの翌日にこれらの細胞を96個のウェルを有するマルチウェルプレートに播種した。ウェルあたりの細胞密度は2×10細胞であった。
安定な細胞株の蛍光光学的測定のために、これらの細胞を測定の1〜2日前に96個のウェルを有するマルチウェルプレートに播種した。細胞密度は1.5〜4×10細胞であった。
電気生理学
遺伝子修飾されたCNGチャネル及び野生型のCNGチャネルをそれぞれHEK293細胞中で異種発現させた(Baumann A, Frings S, Godde M, Seifert R und Kaupp UB.(1994) Primary structure and functional expression of a Drosophila cyclic nucleotide−gated channel present in eyes and antennae.EMBO J., 13, 5040−5050)。遺伝子修飾されたCNGチャネルの電気生理学的特性決定を電圧クランプ条件下にパッチ−クランプ法で実施した。チャネルの活性化特性を測定し、かつ野生型のチャネルの特性と比較した(図1〜4):
遺伝子修飾されたCNGチャネル又は野生型のCNGチャネルを安定に発現する細胞からインサイドアウト−パッチを切り取った。この膜パッチを浴溶液(Badloesung)中の種々の濃度の環状ヌクレオチドで洗浄(umspuelt)した。このパッチ上に、0mVの保持電圧(保持電位)から出発して、−100mV〜+100mV間のいくつかの試験電圧に20mVのステップ幅で、電圧ジャンプ(Spannungsspruenge)を施した。電流を標準的方法で検知し、かつ分析した。
図1Aはウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示している。種々の濃度のcAMPにおける電圧(Vm)に対する平均電流(I)がプロットされている:0μM(塗りつぶしの丸)、0.3μM(白抜きの丸)、1μM(塗りつぶしの三角)、3μM(白抜きの三角)、10μM(塗りつぶしの正方形)、30μM(白抜きの正方形)、100μM(塗りつぶしの菱形)。
図1Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニットについての、平均電流のcAMP濃度に対する依存性を示している(塗りつぶしの方形)。実線はヒル式 I=(Imax−Imin)c/(K+c)+Imin(I:電流、Imax:最大電流、Imin:最小電流、K1/2:チャネルが半値活性化されている濃度、n:ヒル係数、c:cAMP濃度)に従って以下のパラメータを用いて計算されている:Imax=328pA、Imin=24pA、K1/2=2.9μM、n=2.4。
図1Cは+100mVでの、ウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示している。実線並びに点線は、規格化されたヒル式 Inorm=c/(c+K)に従って、以下の平均的パラメータを用いて計算されている:(塗りつぶしの線:K1/2=2.7μM、n=2.4、点線:K1/2=80μM、n=2.0)。
図2Aはウシ由来のCNGチャネルの異種発現されたT537M−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示している。種々の濃度のcGMPにおける電圧(Vm)に対する平均電流(I)がプロットされている:0μM(塗りつぶしの丸)、1μM(白抜きの丸)、3μM(塗りつぶしの三角)、10μM(白抜きの三角)、30μM(塗りつぶしの正方形)、100μM(白抜きの正方形)、300μM(塗りつぶしの菱形)、2000μM(白抜きの菱形)。
図2Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニットに関する、平均電流のcGMP濃度に対する依存性を示している(塗りつぶしの方形)。実線はヒル式 I=(Imax−Imin)c/(K+c)+Imin(I:電流、Imax:最大電流、Imin:最小電流、K1/2:チャネルが半値活性化されている濃度、n:ヒル係数、c:cGMP濃度)に従って以下のパラメータを用いて計算されている:Imax=167pA、Imin=11pA、K1/2=12.0μM、n=2.0。
図2Cは+100mVでの、ウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示している。実線並びに点線は、規格化されたヒル式 Inorm=c/(c+K)に従って、以下の平均的パラメータを用いて計算されている:(塗りつぶしの線:K1/2=14.9μM、n=1.9、点線:K1/2=1.6μM、n=2.0)。
図3Aはウシ由来のCNGチャネルの異種発現されたT537V−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示している。種々の濃度のcAMPにおける電圧(Vm)に対する平均電流(I)がプロットされている:0μM(塗りつぶしの丸)、3μM(白抜きの丸)、10μM(塗りつぶしの三角)、30μM(白抜きの三角)、100μM(塗りつぶしの正方形)、300μM(白抜きの正方形)、1000μM(塗りつぶしの菱形)。
図3Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537V−α3−サブユニットに関する、平均電流のcAMP濃度に対する依存性を示している(塗りつぶしの方形)。実線はヒル式 I=(Imax−Imin)c/(K+c)+Imin(I:電流、Imax:最大電流、Imin:最小電流、K1/2:チャネルが半値活性化されている濃度、n:ヒル係数、c:cAMP濃度)に従って以下のパラメータを用いて計算されている:Imax=181pA、Imin=11pA、K1/2=23.4μM、n=2.2。
図3Cは+100mVでの、ウシ由来のCNGチャネルのT537V−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示している。実線並びに点線は、規格化されたヒル式 Inorm=c/(c+K)に従って、以下の平均的パラメータを用いて計算されている:(塗りつぶしの線:K=34μM、n=1.5、点線:K1/2=80μM、n=2.0)。
図4Aはウシ由来のCNGチャネルの異種発現されたT537V−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示している。種々の濃度のcGMPにおける電圧(Vm)に対する平均電流(I)がプロットされている:0μM(塗りつぶしの丸)、30μM(白抜きの丸)、100μM(塗りつぶしの三角)、300μM(白抜きの三角)、1000μM(塗りつぶしの正方形)、2000μM(白抜きの正方形)。
図4Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537V−α3−サブユニットに関する、平均電流のcGMP濃度に対する依存性を示している(塗りつぶしの方形)。実線はヒル式 I=(Imax−Imin)c/(K+c)+Imin(I:電流、Imax:最大電流、Imin:最小電流、K1/2:チャネルが半値活性化されている濃度、n:ヒル係数、c:cGMP濃度)に従って以下のパラメータを用いて計算されている:Imax=1389pA、Imin=13pA、K1/2=255.2μM、n=2.2。
図4Cは+100mVでの、ウシ由来のT537V−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示している。実線並びに点線は、規格化されたヒル式 Inorm=c/(c+K)に従って、以下の平均的パラメータを用いて計算されている:(塗りつぶしの線:K=241μM、n=2.1、点線:K1/2=1.6μM、n=2.0)。
蛍光光学的測定
細胞内Ca2+濃度の蛍光測定を96個のウェルを有するマルチウェル中で実施した(図5A〜5G)。細胞を測定の1時間前にCa2+感受性蛍光色素Fluo−4で負荷した。負荷溶液は120mMのNaCl、3mMのKCl、50mMのグルコース、10mMのHepes(pH7.4)、3mMのMgCl及び4μMのFluo4−AM(Molecular Probes)を含有していた。測定溶液は120mMのNaCl、3mMのKCl、50mMのグルコース、10mMのHepes(pH7.4)及び3mMのCaClを含有していた。アゴニスト、アンタゴニスト、酵素アクチベーター又は酵素インヒビターの添加後に蛍光強度の経時変化を蛍光リーダ(FLUOstar、BMG−Labtechnologies)で確認した。励起波長は485nmであった。発光波長は520nmであった。
図5Aは、ドロソフィラ由来のドパミンレセプター(DR)(Gotzes, F., Balfanz, S. and Baumann, A. (1994):“Primary structure and functional characterization of a Drosophila dopamine receptor with high homology to human D1/5 receptors”, Receptors Channels, 2, 131−141)を一過性に、かつα3−CNGチャネルのT537M突然変異体を安定に発現する細胞における細胞内Ca2+濃度の蛍光測定された変化を示している。種々の濃度のアゴニストのドパミンによる細胞の刺激後の蛍光強度(RFU:相対蛍光単位)の時間的過程を示している。矢印は細胞をドパミンで刺激した時点を示している。ドパミンレセプターのドパミンに誘導される活性化は細胞中にまず刺激性Gタンパク質の活性化をもたらし、かつ最終的にcAMPを合成するアデニル酸シクラーゼの活性化をもたらす。cAMPの結合によってCNGチャネルが開放し、かつCa2+イオンが細胞内に流入する。Ca2+濃度の変化の速度及び程度はドパミン濃度に依存する。ドパミン濃度は25nM(塗りつぶしの丸)、50nM(白抜きの丸)、400nM(塗りつぶしの三角)又は600nM(白抜きの三角)であった。比較のために、ドパミンレセプターを発現しない細胞を25nMのドパミンで刺激した(塗りつぶしの四角)。
図5Bは、副腎皮質ホルモン放出因子(CRF)レセプターとα3−CNGチャネルのT537M突然変異体のいずれも安定に発現する細胞中の細胞内Ca2+濃度の蛍光測定された変化を示している。アゴニストのCRFでの細胞の刺激の後の蛍光強度の時間的過程を示している。矢印は細胞をCRFで刺激した時点を示している。CRFレセプターのCRFに誘導される活性化は、細胞中にまず刺激性Gタンパク質の活性化をもたらし、かつ最終的にcAMPを合成するアデニル酸シクラーゼの活性化をもたらす(例えばEckart K, Radulovic J, Radulovic M, Jahn O, Blank T, Stiedl O. and Spiess J. (1999) Actions of CRF and its analogs.Curr Med Chem., 6, 1035−1053; Perrin, M.H and Vale, W.W (1999).Corticotropin releasing factor receptors and their ligand family. Ann. N. Y. Acad. Sci., 885, 312−328を参照)。cAMPの結合によってCNGチャネルが開放し、かつCa2+イオンが細胞内に流入する。Ca2+濃度の変化の速度及び程度はCRF濃度に依存する。CRF濃度は100pM(塗りつぶしの三角)、300pM(白抜きの丸)又は1000pM(塗りつぶしの丸)であった。
図5A及び5Bは、例えば刺激性Gタンパク質に結合する2つの異なるGCRPに関して、本発明による方法によってこのGCRPに対するアゴニストの作用を高い感度で測定できることを示している。この方法は同様に、刺激性Gタンパク質に結合する全ての別のGCRPのために適当である。図5A及び5Bからの例は、本発明による方法に関して、異種発現されるタンパク質(遺伝子修飾されたCNGチャネルのα−サブユニット及びGCRP)を細胞内で一過性にも安定にも発現できることを示している。
図5Cは、この方法が種々のアンタゴニストの作用を定量的に測定するために適している。副腎皮質ホルモン放出因子(CRF)レセプター及びα3−CNGチャネルのT537M−突然変異体を安定に発現する細胞をヘリックス型(helikalen)のアンタゴニスト9−41(Rivier J, Rivier C. and Vale, W.W. (1984) Synthetic competitive antagonists of corticotropin−releasing factor:effect on ACTH secretion in the rat.Science, 224, 889−891)で処理し、それからCRF(1nM)で刺激した。蛍光強度の時間的過程を示している。矢印は細胞をCRFで刺激した時点を示している。同じCRF濃度ではCa2+濃度の変化の速度及び程度はアンタゴニストの濃度に依存する。アンタゴニストの濃度は0nM(塗りつぶしの丸)、10nM(白抜きの丸)又は100nM(塗りつぶしの三角)であった。
図5Dは、この方法が一定の酵素アクチベーターの作用を測定するために適していることを示している。細胞内Ca2+濃度の変化に対するアデニル酸シクラーゼ(AC)のアクチベーターの効果を示している。α3−CNGチャネルのT537M−突然変異体を安定に発現する細胞を種々の濃度のACアクチベーターのフォルスコリンで刺激した。蛍光強度の時間的過程を示している。矢印は細胞をフォルスコリンで刺激した時点を示している。
フォルスコリンは細胞の内因性アデニル酸シクラーゼを直接的に活性化する(Seamon, K.B.及びDaly, J.W.著(1981) Forskolin:a unique diterpene activator of cyclic AMP−generating systems. J. Cyclic. Nucleotide Res., 7, 201−224)。
細胞内Ca2+濃度の変化の速度及び程度はACアクチベーター濃度に依存する。フォルスコリンの濃度は0.5μM(白抜きの三角)、0.75μM(塗りつぶしの三角)、2μM(白抜きの丸)又は4μM(塗りつぶしの丸)であった。
図5Eは、この方法が規定の酵素インヒビターの作用を測定するために適していることを示している。細胞内Ca2+濃度のフォルスコリンに誘導される変化に対するホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビターの効果を示している。α3−CNGチャネルのT537M−突然変異体を安定に発現する細胞を、まず種々の濃度のPDEインヒビターのIBMXで処理し、次いで5μMのフォルスコリンで刺激した。蛍光強度の時間的過程がプロットされている。矢印は細胞をフォルスコリンで刺激した時点を示している。PDEインヒビターは内因性PDEの活性を阻害し、かつそれによって内因性ACの刺激によって合成されるcAMPの分解を低減させる。細胞内Ca2+濃度の変化の程度はPDEインヒビターの濃度に依存する。IBMX濃度は0μM(塗りつぶしの丸)、10μM(白抜きの丸)、50μM(塗りつぶしの三角)又は100μM(白抜きの三角)であった。
この例は、この方法がPDEインヒビターの作用を高感度で測定するために適していることを示している。内因性PDEのインヒビター、また異種発現されたPDEのインヒビターを調査できる。
本発明による方法は、阻害性Gタンパク質のGに結合するGCRPの活性の測定のためにも適している。このようなGCRPが活性化されると、細胞中のcAMP濃度が低下する。それというのもACが阻害されるからである。本発明による方法のために、細胞をまずcAMP合成のために刺激し(例えばACアクチベーターのフォルスコリン)、それから次いでアゴニストの活性を測定することができる。アンタゴニスト及びアゴニストの同時の又は連続的な適用によって、このようなGCRPについてのアンタゴニストの作用を試験できる。
この方法は同様に、何らかの様式で細胞内のcAMP濃度を高める又は低めることができる全ての物質の測定のために適している。前記の物質(例えばGCRP又は酵素)の直接的な攻撃点は細胞中に内在的に存在するか、又は遺伝子修飾されたCNGチャネルと一緒に細胞内で一過性に又は安定に発現することができる。
図5F(1)は、この方法によって定量分析も可能であることを示している。内因性アデノシンレセプター(Cooper, J., Hill, S.J.及びAlexander, S.P.著(1997):“An endogenous A2B adenosine receptor coupled to cyclic AMP generation in human embryonic kidney (HEK 293) cells”, Br. J. Pharmacol., 122, 546−550)及びα3−CNGチャネルのT537M−突然変異体を安定に発現する細胞を種々の濃度のアデノシンで刺激した。蛍光強度の時間的過程を示している。矢印は細胞をアデノシンで刺激した時点を示している。アデノシンレセプターのアデノシンに誘導される活性化は細胞中にまず刺激性Gタンパク質の活性化をもたらし、かつ最終的にcAMPを合成するアデニル酸シクラーゼの活性化をもたらす。cAMPの結合によってCNGチャネルが開放し、かつCa2+イオンが細胞内に流入する。細胞内Ca2+濃度の変化の速度及び程度はアデノシン濃度に依存する。アデノシン濃度は0.9μM(塗りつぶしの丸)及び1.5μM(白抜きの丸)、3μM(塗りつぶしの三角)、6μM(白抜きの三角)、25μM(塗りつぶしの四角)又は37.5μM(白抜きの四角)であった。
図5F(2)はアデノシンについての用量−作用関係を示している。アデノシンの添加後に蛍光が変化する速度(初期速度)はアデノシンの濃度に相関する。初期速度はアデノシン濃度に対してプロットされている。実線はヒル式:初期勾配(Anfangssteigung)=a×c/(K+c(c=アデノシン濃度、K:初期速度が最大値の半分に達する濃度、n:ヒル係数、a=最大初期勾配)に従って以下のパラメータを用いて計算されている:a=1403RFU/秒、K=5.15μM、n=2.16)。こうして計算されたK1/2値は文献に挙げられる5μMの値と非常に良好に一致する(Peakman, M.C.及びHill, S.J.著 (1994) Adenosine A2B−receptor−mediated cyclic AMP accumulation in primary rat atrocytes. Br. J. Pharmacol., 111, 191−198)。
図5Gはα3−CNGチャネルの修飾されたサブユニットの使用による測定系の感度の相当の改善を裏付けている。α3−CNGチャネルのT537M−突然変異体を安定に発現する細胞は3μMのアデノシン(白抜きの丸)で最大刺激の半分(halbmaximal)まで刺激され、又は25μMのアデノシン(塗りつぶしの丸)で最大刺激された。細胞内Ca2+濃度(蛍光シグナル)の変化の程度は時間に対してプロットされた。矢印は細胞をアデノシンで刺激した時点を示している。最大刺激の半分を示すアデノシン濃度による刺激の後に、すでに蛍光シグナルの明らかな上昇が観察できる。それに対して、野生型のα3−CNGチャネルを安定に発現する細胞は25μMのアデノシンでの最大の刺激の後でさえも、蛍光シグナル(塗りつぶしの三角)の増大を示さない。比較するとα3−CNGチャネルのT537S−突然変異体を安定に発現する細胞も刺激された。内因性のアデノシンレセプターの最大刺激の後に、非常に僅かな蛍光シグナルの上昇だけが観察できる(塗りつぶしの四角)。
本発明による遺伝子修飾されたサブユニットの使用によって、cAMPシグナル経路に影響を及ぼす物質の作用の調査のための細胞内テストシステムの感度はかなり増大し、かつそれによって初めて実用可能になる。このシグナルは定量分析も可能にするほど非常に大きく、かつ信号/雑音比もこうして非常に良好である。
本発明による細胞株(HEK293細胞だけでなく)、細胞培養で培養可能な原則的に全ての真核細胞の製造のために適当である。接着増殖された細胞も懸濁液で増殖された細胞も使用可能である。
図1Aはウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示す。 図1Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニットについての、平均電流のcAMP濃度に対する依存性を示す。 図1Cは+100mVでの、ウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示す。 図2Aはウシ由来のCNGチャネルの異種発現されたT537M−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示す。 図2Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニットに関する、平均電流のcGMP濃度に対する依存性を示す(塗りつぶしの方形)。 図2Cは+100mVでの、ウシ由来のCNGチャネルのT537M−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示す。 図3Aはウシ由来のCNGチャネルの異種発現されたT537V−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示す。 図3Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537V−α3−サブユニットに関する、平均電流のcAMP濃度に対する依存性を示す(塗りつぶしの方形)。 図3Cは+100mVでの、ウシ由来のCNGチャネルのT537V−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示す。 図4Aはウシ由来のCNGチャネルの異種発現されたT537V−α3−サブユニットの電流−電圧(IV)関係を示す。 図4Bは、+100mVの電圧でのウシ由来のCNGチャネルのT537V−α3−サブユニットに関する、平均電流のcGMP濃度に対する依存性を示す(塗りつぶしの方形)。 図4Cは+100mVでの、ウシ由来のT537V−α3−サブユニット(塗りつぶしの線)及びウシ由来の野生型のα3−サブユニット(点線)の規格化された用量−作用関係を示す。 図5Aは、細胞内Ca2+濃度の蛍光測定された変化を示す。 図5Bは、細胞内Ca2+濃度の蛍光測定された変化を示す。 図5Cは、この方法が種々のアゴニストの作用を定量的に測定するために適することを示す。 図5Dは、この方法が規定の酵素アクチベーターの作用を測定するために適していることを示す。 図5Eは、この方法が規定の酵素インヒビターの作用を測定するために適していることを示す。 図5F(1)は、この方法によって定量分析も可能であることを示す。 図5F(2)はアデノシンについての用量−作用関係を示す。 図5Gはα3−CNGチャネルの修飾されたサブユニットの使用による測定系の感度の相当の改善を示す。
配列表
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Claims (33)

  1. SEQ ID NO2による野生型と比較して、cGMPに対するよりも、cAMPに対する高い感受性及び/又はcAMPに対する高い選択性を有するように、ウシ由来のα3−サブユニット中のトレオニンT537に相当する位置におけるアミノ酸がメチオニン又はバリンによって置換されているサブユニットからなる遺伝子修飾された環状ヌクレオチド作動性イオンチャネル(CNGチャネル)。
  2. ウシ及び/又は別の生物由来のCNGチャネルのサブユニットを有することを特徴とする、請求項1記載の遺伝子修飾されたCNGチャネル。
  3. 同じサブユニットからなるホモオリゴマー構造又は種々のサブユニットからなるヘテロオリゴマー構造を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の遺伝子修飾されたCNGチャネル。
  4. 少なくとも1つの他の遺伝子修飾を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の遺伝子修飾されたCNGチャネル。
  5. キメラサブユニットを含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の遺伝子修飾されたCNGチャネル。
  6. サブユニットにおいて、ウシ由来のα3−サブユニット中のトレオニンT537に相当するアミノ酸をメチオニン又はバリンで置換することを特徴とする、CNGチャネルの製造方法。
  7. 細胞内cAMP濃度の測定のための、請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネルの使用方法。
  8. リガンド、アゴニスト及びアンタゴニストの、Gタンパク質結合型レセプターに対する作用並びにアクチベーター及びインヒビターの、細胞内cAMP濃度を調節する別のタンパク質に対する作用の測定のための、請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネルの使用方法。
  9. 請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネルのサブユニットをコードすることを特徴とする、修飾された核酸。
  10. 請求項9記載の核酸を含有することを特徴とする、発現ベクター。
  11. 請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネル、請求項9記載の修飾された核酸又は請求項10記載の発現ベクターを含有することを特徴とする、細胞株。
  12. 請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネルを発現できることを特徴とする、請求項11記載の細胞株。
  13. 細胞内cAMP濃度を調節するタンパク質を、請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネルと一緒に異種共発現できることを特徴とする、請求項11又は12記載の細胞株。
  14. Gタンパク質結合型レセプター、ホスホジエステラーゼ、アデニル酸シクラーゼを、請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネルと一緒に異種共発現できることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項記載の細胞株。
  15. 請求項10記載の発現ベクターで形質転換させることを特徴とする、細胞株の製造方法。
  16. 請求項1から5までのいずれか1項記載のCNGチャネルの遺伝子を発現ベクターにクローニングし、引き続き細胞株の形質転換を実施することを特徴とする、請求項15記載の製造方法。
  17. 真核生物のCHO細胞株、COS細胞株又はSF9細胞株を異種発現系として使用することを特徴とする、請求項15又は16記載の製造方法。
  18. ヒト胚腎臓(HEK)293細胞株を異種発現系として使用することを特徴とする、請求項15又は16記載の製造方法。
  19. 請求項10記載の発現ベクターで形質転換させることを含み、タンパク質安定に又は一過性に発現させることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか1項記載の細胞株の製造方法。
  20. 請求項10記載の発現ベクターで形質転換させることを含み、タンパク質の1つ安定に発現させ、かつ別のタンパク質一過性に発現させることを特徴とする、請求項13又は14記載の細胞株の製造方法。
  21. 細胞内Ca2+濃度の測定のための、請求項11から14までのいずれか1項記載の細胞株の使用方法。
  22. 蛍光光学的方法による測定を実施することを特徴とする、請求項21記載の使用方法。
  23. 蛍光を発するCa2+指示薬を使用することを特徴とする、請求項21又は22記載の使用方法。
  24. 発光光学的方法による測定を実施することを特徴とする、請求項21記載の使用方法。
  25. 発光するアポエクオリン又はそのアイソフォームを使用すること特徴とする、請求項21又は24記載の使用方法。
  26. Ca2+濃度の測定をキュベット測定装置又はCa2+イメージング装置中で実施することを特徴とする、請求項21から25までのいずれか1項記載の使用方法。
  27. Ca2+濃度の測定を蛍光リーダもしくは発光リーダ中で実施することを特徴とする、請求項21から26までのいずれか1項記載の使用方法。
  28. マルチウェルプレートを使用することを特徴とする、請求項21から27までのいずれか1項記載の使用方法。
  29. 接着性細胞又は懸濁液中の細胞を使用することを特徴とする、請求項21から28までのいずれか1項記載の使用方法。
  30. 細胞内cAMP濃度を高める又は低下させる医薬品作用物質又は薬理物質の特性決定のための、請求項21から29までのいずれか1項記載の使用方法。
  31. GPCR、アデニル酸シクラーゼ、ホスホジエステラーゼ又は細胞内cAMP濃度を調節する別のタンパク質の特性決定のための、請求項21から29までのいずれか1項記載の使用方法。
  32. 高スループット(HTS)又は超高スループット(UHTS)で作業することを特徴とする、請求項30又は31記載の使用方法。
  33. 実時間内での測定を実施することを特徴とする、請求項21から32までのいずれか1項記載の使用方法。
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