JP2006524333A - 動的核分極プロセスを起こす化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 試料の動的核分極(DNP)に用いられるラジカル並びに該ラジカルを含む混合物の動的核分極法の提供。【解決手段】 試料の動的核分極プロセスに使用するためのラジカルであって、ラジカル前駆体から原位置で発生し、約5K〜約273Kの温度で非ラジカル種に分解するラジカル。DNP温度は概して非常に低いので、本発明に係るラジカルはDNPプロセスに際して安定である。また、試料のNMR分析は概してDNP温度よりも高い温度で実施されるので、NMR分析の際には試料にラジカルは存在しない。したがって、NMR信号の広がり、感度の低下、スペクトルの低解像度及び分極の急速な消失などのラジカルの存在による問題を回避することができる。

Description

本発明は、試料の動的核分極(DNP)に用いられるラジカルに関する。本発明は、さらにこれらのラジカルを含む混合物の動的核分極に関する。
動的核分極(DNP)プロセスは、NMR活性核種を含む試料のNMR信号を増大させるために用いられ、もってDNP剤(つまり常磁性化合物)によって試料の分極を引き起こす。DNPプロセスでは、エネルギーを通常はマイクロ波放射線の形態で与え、これによって最初に常磁性種を励起させる。基底状態に遷移する際に、常磁性化合物の不対電子から試料のNMR活性核種へ分極が移動する。一般に、DNPプロセスでは、中程度の磁場又は高磁場と非常に低い温度が用いられ、例えば液体ヘリウム中約1T以上の磁場でDNPプロセスを実施できる。別法として、十分な分極の増大が達成される温度と中程度の磁場を使用し得る。DNPプロセスは、例えば、国際公開第98/58272号及び同第01/96895号に記載されており、これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
DNPプロセスの常磁性化合物としてフリーラジカルを好適に使用し得る。国際公開第98/58272号には、DNPプロセスでは固有ESR線幅の狭いラジカルが好ましいこと、及びかかるラジカルをラジカル前駆体から原位置で調製できることが記載されている。かかるラジカルの例は、トリアリールメチルラジカル、窒素中心ラジカル、安定炭素中心ラジカル及び不対電子を有する金属イオンである。しかし、このような比較的安定なラジカルの存在は、分極プロセス後の試料のNMR分析で問題を生じる。即ち、スピン−核相互作用によって、NMR信号の広がりを生じ、ひいては感度が低下してしまう。場合によっては、スペクトルの解像度は予想よりも低くなる。さらに、分析すべき核種の緩和時間が、ラジカルの存在のために短くなることもある。その結果、分極が減少し、NMR分析で得られる信号が弱くなる。
国際公開第00/23797号には、ラジカル前駆体としてHBr及びHIを使用すること、並びにこれらの化合物から紫外線照射によってラジカルを発生させることが記載されている。これらのラジカルは129Xeの動的核分極に用いられる。分極完了後、光誘起ラジカルが消滅すると記載されている。
国際公開第98/58272号パンフレット 国際公開第01/96895号パンフレット 国際公開第00/23797号パンフレット 国際公開第02/36005号パンフレット
そこで、DNPプロセスに使用するための常磁性化合物であって、上述の悪影響を起こさずに、試料の高い分極を生じせしめる常磁性化合物が必要とされている。
今般、ラジカル前駆体から原位置で発生し、約5K〜約273Kの温度で非ラジカル種に分解するラジカルを使用すると、試料の動的核分極及びその後のNMR分析に特に有用であることが判明した。
本発明は、試料の動的核分極に使用するためのラジカルであって、ラジカル前駆体から原位置(in situ)で発生し、約5K〜約273Kの温度で非ラジカル種に分解するラジカルを提供する。
DNP温度は概して非常に低く、好ましくは略液体ヘリウムの温度(4.2K)以下、さらに好ましくは1.5K以下、特に好ましくは1K以下であるので、本発明に係るラジカルはDNPプロセスに際して安定である。試料のNMR分析は概してDNP温度よりも高い温度、好ましくは273K超、特に好ましくは室温で実施されるので、NMR分析の際には試料にラジカルは存在しない。したがって、NMR信号の広がり、感度の低下、スペクトルの低解像度及び分極の急速な消失などの、ラジカルの存在による問題を回避することができる。
好ましい実施形態では、本発明に係るラジカルは、約50K〜約253Kの温度、特に好ましくは約77Kよりも高い温度で非ラジカル種に分解する。
好ましい実施形態では、本発明に係るラジカルの発生に用いられるラジカル前駆体は、光不安定(photolabile)有機化合物又は光不安定基を含む有機化合物であり、光分解によってラジカルを発生させる。
好ましい光不安定有機化合物は、R−X、R−S−R、R−Se−R、R−N=N−R、R−O−O−R、R−ONO、R−OX及びRCO−O−O−CORからなる群から選択される化合物である。式中、R及びRは同一又は異なる直鎖又は枝分れアルキル、アリール又はアラルキル基であり、XはCl、Br又はIである。R及びR基は未置換であってもよい。或いは、R及びR基は、OH、CN、NO、OR及びFなどの1以上の有機残基で置換されていてもよいし、並びに/或いはO又はNなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、R及びRは同一である。
好ましい光不安定基は、−R−X、−R−S−R、R−S−R−、−R−Se−R、R−Se−R−、−R−N=N−R、R−N=N−R−、−R−O−O−R、R−O−O−R−、−R−ONO、−R−OX、RCO−O−O−R−、−RCO−O−O−COR及びRCO−O−O−COR−からなる基から選択される。式中、R及びRは同一又は異なる直鎖又は枝分れアルキル、アリール又はアラルキル基であり、XはCl、Br又はIである。R及びR基は未置換であってもよい。或いは、R及びR基はOH、CN、NO、OR及びFなどの1以上の有機残基で置換されていてもよいし、並びに/或いはO又はNなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、R及びRは同一である。
光不安定化合物の具体例は以下の通りである。
Figure 2006524333
一般に光分解は可視光又は紫外線もしくはさらに短波長の光を用いて実施される。光分解のための波長の選択は、光不安定有機化合物又は光不安定基の性状によって左右される。光分解には、好ましくは約200〜300nmの範囲の波長が選択される。
及びR基の選択の幅が広いことが、前段落に記載したラジカル前駆体の利点である。これらの基の性状によって、前駆体から発生するラジカルの寿命が決まる。寿命が比較的長いラジカルの場合、DNPプロセスで必要とされるラジカル濃度は、短寿命ラジ
カルで必要とされるラジカル濃度よりも低い。したがって、DNPプロセスにおけるラジカル濃度の調整が可能となる。R及びR基の性状はラジカル前駆体のEPR(電子常磁性共鳴)スペクトルにも影響し、DNP効果の最適化に利用できる。所与の試料のDNP効果を予測するのは容易でなく、結果はラジカルの構造によって大きく左右される。そこで、R及びR基の種々異なるラジカル前駆体を使用することによって、所与の試料についてDNP効果を最適化するために特定のR及びR基を有するラジカル前駆体を「仕立てる」ことが可能になる。
特に好ましい光不安定有機化合物又は光不安定基を含む有機化合物は、アゾビスイソブチロニトリル、亜硝酸t−ブチル、次亜塩素酸t−ブチル、過酸化ジベンゾイル及びジ−t−ブチルペルオキシドである。
別の好ましい実施形態では、本発明に係るラジカルの発生に用いられるラジカル前駆体は有機溶媒であり、高エネルギー放射線を用いてラジカルを発生させる。
好ましい溶媒は、水、アルコール、エーテル、ヒドロキシル化エーテル及びヒドロキシル化エステルからなる群から選択される。
本発明のラジカルを発生させるラジカル前駆体として溶媒を使用する利点は、DNP混合物に存在する化合物を試料と溶媒に限定できることである。しかし、溶媒を高エネルギーで照射すると、幾つかの異なるラジカル種が同時に発生することが多く、そのためDNPプロセスの実施が難しくなることがある。DNPプロセスは既知の明確なEPRスペクトルをもつラジカルの使用に依拠しているからである。したがって、高エネルギー放射線で単一ラジカルを生ずる溶媒を使用するのが特に好ましい。特に好ましい溶媒の例としては、水、メタノール、1,2−プロパンジオール、メトキシエタノール、グリコール及びグリセロールが挙げられる。例えば、高エネルギー放射線によって、水からヒドロキシルラジカルが発生し、メタノールからヒドロキシメチルラジカルが発生する。1,2−プロパンジオール、グリコール及びグリセロールはガラス形成化合物であり、これは、これらが低温で結晶化しないことを意味する。DNPプロセスにかかるガラス形成化合物が存在すると、凍結混合物中でのラジカル及び試料の均質な分布が確保されるが、これは高いDNP効果の達成に重要である。
一般に、高エネルギー放射線はガンマ線又はX線を用いて実施できる。
特に好ましい実施形態では、本発明に係るラジカルの発生に使用されるラジカル前駆体は、光不安定有機化合物又は光不安定基を含む有機化合物であり、ラジカルは光分解によって発生する。
ラジカルの量は少量であり、概して分極させる試料の量よりも少ない。
ラジカルの発生は、DNPプロセスの前に、DNP温度よりも高い温度のDNP磁石の外部又は適切なDNP温度のDNP磁石の内部で実施し得る。
DNP温度よりも高い温度で十分な安定性を有するラジカル、例えば5Kよりも高い温度で安定なラジカルについては、ラジカルの発生は好ましくはDNP磁石の外部でDNPプロセスの前に実施される。一般に、試料とラジカル前駆体を含む混合物は、前駆体からのラジカルの発生に有用であり、ラジカルが非ラジカル種に分解する分解温度よりも低い所定の温度に保持される。ラジカル発生後、混合物をDNP磁石に移し、DNP温度まで冷却してから分極プロセスを実施する。混合物を所定温度に保持する方法には、例えば、氷上或いは液体空気、液体窒素又は液体ヘリウムを用いた混合物の冷却など、当技術分野で公知の幾つかの方法がある。
本発明の好ましい実施形態では、ラジカルは、液体窒素温度の約77Kよりも高い温度で非ラジカル種に分解する。一実施形態では、ラジカルは、液体窒素中で凍結させた、試料と光不安定化合物又は光不安定基を含む有機化合物とを含む混合物の光分解によってDNP磁石の外部で発生させる。光分解後、混合物をDNP磁石に移し、DNP温度まで冷却してから分極プロセスを実施する。別の実施形態では、試料と溶媒を含む混合物を液体窒素中で凍結させ、凍結混合物に高エネルギー放射線を照射することによって、DNPの外部でラジカルを発生させる。ラジカル発生後、混合物をDNP磁石に移し、DNP温度まで冷却してから分極プロセスを実施する。
特に好ましい実施形態では、ラジカルは、液体窒素中で凍結させた試料と光不安定化合物又は光不安定基を含む有機化合物を含む混合物の光分解によってDNP磁石の外部で発生させる。
好ましい光不安定有機化合物及び光不安定基は、本願の原文第3頁(段落)に記載されている。ラジカル前駆体としてこれらの化合物を使用する利点は、これらの化合物から生ずるラジカルの安定性を左右するR及びR基の選択の幅が広いことである。したがって、約77Kの温度で安定なラジカルを発生させることができる前駆体を「仕立てる」ことができる。
別の実施形態では、本発明に係るラジカルの発生は、適切なDNP温度のDNP磁石の内部で実施される。一般に、DNPシステムは、最適な低温保持時間を達成するため低損失クライオスタット中に置かれた磁場強度0.1〜25T以上の磁石を備える。約2Tを超える磁場については、磁石は超伝導とすることができる。低磁場では、もっと単純な磁石が適している。特に好ましいDNPシステムは、磁場強度2〜25Tに設計された超伝導磁石からなる。磁石は、最適な低温保持時間が達成されるように超低損失クライオスタット中に設けられる。必要な磁場均一度は試料によって左右されるが、通例試料容積全体で±0.2mTとすべきである。これは、大型試料にも磁場シムを設けることによって達成できる。それに応じて、分極時の磁場の安定性は均一度の基準よりも良くなる筈である。即ち、磁場ドリフトは不均一度よりも小さくなる筈である。磁石は試料冷却のための低温スペースが確保されるように設計される。好ましい超伝導磁石クライオスタットは好ましくは注入ヘリウム浴又は少なくとも低温スペースを磁石のボア内に備える。ヘリウム浴は、磁石のヘリウムタンクから断熱(例えば真空断熱)されているが磁石のヘリウムタンクから充填できるようにキャピラリーでヘリウムタンクと接続したチューブ内に収容すればよい。低温スペースは、下端部が閉鎖された単なるシリンダー(薄肉ステンレス鋼又は銅その他の非磁性材料或いはこれらの組合せで作られたもの)であってもよい。できるだけ低い温度及び最小の極低温消費を達成するため、低温スペースは超伝導磁石のヘリウム缶内部の真空に置くのが好ましく、低温シリンダーはボア内の適切な場所、例えばヘリウム蒸気冷却シールド及び液体窒素冷却シールドなどに熱的に固定できるのが好ましい。低温シリンダーは、好ましくはその基部でキャピラリーを介してヘリウム缶に接続する。ヘリウムの流れは、手動又はコンピュータ制御手段などで自動的に外部から調節するニードルバルブで制御し得る。ヘリウム浴へのヘリウムの流れは、電動式ニードルバルブで制御してもよい。液体の水準は例えばAllen Bradley製炭素抵抗計で監視することができ、手動又は自動制御ニードルバルブで一定水準に保つことができる。1Kのオーダーの低温(He)を得るには、浴にヘリウムを送り、例えば絶対キャパシタンス変換器又はピラニ真空計で測定したヘリウム蒸気圧で浴温を確認すればよい。ガス冷却の場合、温度測定を用いてニードルバルブを制御すればよい。寒剤を外部タンクから供給してもよい。磁石の冷却及び低温スペースの冷却のいずれについても閉サイクル冷凍機(「クライオジェンフリー」)も想定できる。かかるDNPシステムは当技術分野で公知であり、例えば国際公開第02/36005号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
試料は適切な周波数のマイクロ波照射で分極される。照射にはマイクロ波装置が用いられる。マイクロ波装置は幾つかの方式で実施できる。低周波数(約200GHz未満)には、導波管を使用してマイクロ波を試料スペースへと導くことができる。高周波には、準光学的方法を用いることができる。試料スペースは、マイクロ波共振構造体として構築するのが好ましい。マイクロ波構造体は好ましくは、設置と試料の交換が容易で、しかも試料を効率的に冷却できるように構成される。
本発明に係るラジカルをDNP磁石の内部で発生させる場合は、国際公開第02/36005号の図1に記載のDNPシステムを使用するのが好ましい。簡単に説明すると、かかるシステムは、分極手段(好ましくはマイクロ波源と導波路で接続したマイクロ波チャンバからなるもの)を有するクライオスタットを、超伝導磁石などの磁場発生手段で囲まれた中心ボア内に備える。取出し可能な試料運搬チューブのような試料導入手段を好ましくはボア内に収容し、試料保持カップを好ましくは試料運搬チューブの下端部に取り付ける。このシステムは、さらに光又は高エネルギー放射線を試料保持カップ内の試料に照射する手段を備える。好ましい実施形態では、光は、DNPシステム(つまりクライオスタット)の外部に装着した光源から試料に照射し、光は光源から試料保持カップへ延在する光ファイバーを通して試料に照射される。
DNP磁石内のラジカル前駆体から本発明に係るラジカルを発生させるため、試料とラジカル前駆体の混合物を試料保持カップ内に入れて、DNPシステム内に導入する。次の段階で、光又は高エネルギー放射線を照射する手段を付勢して、光又は高エネルギー放射線を混合物に照射し、混合物中に存在する前駆体からラジカルを発生させる。
DNPプロセスに用いる混合物は、本発明に係るラジカルと試料に加えて、他の化合物を含んでもよい。適当な他の化合物は、例えばガラス形成化合物つまり混合物が凍結したときに非晶質ガラスを形成する化合物、又は溶媒である。
グリセロール、プロパンジオール又はグリコールのようなガラス形成化合物によって凍結混合物中でのラジカルと試料の均一な分布が担保されるが、これは高いDNP効果を達成するのに重要である。
分極試料がインビトロ用に用いられる場合、好ましくは溶媒を用いる。リガンド及び/又は標的化合物等の分極試料を用いたNMRアッセイは、創薬プロセスにおけるリガンド−標的相互作用の研究に用いることができる。試料からのNMR信号が分極プロセスによって増大するので、かかるアッセイは非常に感度が高い。したがって、DNPプロセスでは、試料の使用量をごく少量にすることができる。ただし、その後のNMR分析では、使用量を増やす必要があり、そのため分極プロセス後に溶媒を添加するよりも分極プロセスで溶媒を使用するのが好ましい。適切な溶媒は、例えば、分極試料と1種以上の他の分子との相互作用の研究に有用な溶媒である。かかる溶媒の例としては、重水素化又は非重水素化水性緩衝液が挙げられ、少量のDMSO、メタノールその他のアルコール又は酢酸のようなカルボン酸などの有機溶媒を含んでいてもよい。しかし、試料をインビボ用途、例えば磁気共鳴画像用造影剤として使用する場合は、溶媒の使用は好ましくない。この場合は、試料をそれ以上希釈するのは望ましくないし、溶媒の使用は安全面での問題を生じかねない。
DNPプロセスに用いられる磁場強度はできるだけ高いのが望ましく、望ましくは0.1T超、好ましくは1T超、さらに好ましくは5T以上、特に好ましくは15T以上、最も好ましくは20T以上である。好ましくは分極は1%以上とすべきであり、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは25%以上、最も好ましくは50%以上である。
DNPプロセス後、試料をDNP磁石から取り出す。分極試料のNMR分析は好ましくは液相で実施され、したがって、試料を溶融又は適切な溶媒に溶解しなければな
らない。溶融又は溶解は、分極ができるだけ失われないように速やかに実施するのが好ましい。試料の適切な溶解法は国際公開第02/36005号に記載されている。
別の態様では、本発明は、試料とラジカルを含む混合物の動的核分極(DNP)であって、ラジカルがラジカル前駆体から原位置で発生し、約5K〜約273Kの温度で非ラジカル種に分解する、動的核分極に関する。好ましい実施形態では、混合物はさらに溶媒及び/又はガラス形成化合物を含む。
別の好ましい実施形態では、ラジカルの発生はDNP磁石の外部で実施され、ラジカル発生後に混合物をDNP磁石に移す。好ましくは、液体窒素中で凍結させた混合物の光分解によってラジカルを発生させる。混合物は、試料と光不安定有機化合物又は光不安定基含有有機化合物を含む。別の好ましい実施形態では、試料と溶媒を含む混合物を液体窒素中で凍結させ、凍結混合物に高エネルギー放射線を照射することによってラジカルを発生させる。
実施例1 グリセロール(0.15ml)、水(0.05ml)、1−13C−グリシン(0.75mg、0.01ミリモル)及び過酸化ベンゾイル(0.24mg、0.001ミリモル)から溶液を調製し、この溶液を液体窒素中で液滴状に凍結する。次いで、液滴をプローブ温度1.2Kの磁石(3.5T)に移す。磁石は、試料にマイクロ波を照射する手段と紫外線を照射する手段とを備えている。(光源のエネルギーに応じた)所定の時間、紫外線(254nm)を試料に照射し、紫外線を切り、次いでマイクロ波(約94GHz)の照射を開始して試料を分極させる。13C標識試料の分極を所定期間行った後、マイクロ波照射を切り、温水を注入して試料を溶解し、速やかにNMR装置に移して分析する。得られた信号増大は、分極を行わない試料の信号の5〜500倍である。

Claims (18)

  1. 試料の動的核分極プロセスに使用するためのラジカルであって、ラジカル前駆体から原位置で発生し、約5K〜約273Kの温度で非ラジカル種に分解するラジカル。
  2. 約50K〜約253Kの温度で非ラジカル種に分解する、請求項1記載のラジカル。
  3. 約77Kよりも高い温度で非ラジカル種に分解する、請求項1又は請求項2記載のラジカル。
  4. 前記ラジカル前駆体が光不安定有機化合物又は光不安定基を含む有機化合物であり、ラジカルが光分解で発生する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のラジカル。
  5. 前記ラジカル前駆体がR−X、R−S−R、R−Se−R、R−N=N−R、R−O−O−R、R−ONO、R−OX及びRCO−O−O−CORからなる群から選択される光不安定有機化合物である(式中、R及びRは同一又は異なる直鎖又は枝分れアルキル、アリール又はアラルキル基であり、XはCl、Br又はIである。)、請求項4記載のラジカル。
  6. 前記ラジカル前駆体が光不安定基を含む有機化合物であり、光不安定基が−R−X、−R−S−R、R−S−R−、−R−Se−R、R−Se−R−、−R−N=N−R、R−N=N−R−、−R−O−O−R、R−O−O−R−、−R−ONO、−R−OX、RCO−O−O−R−、−RCO−O−O−COR及びRCO−O−O−COR−からなる基から選択される(式中、R及びRは同一又は異なる直鎖又は枝分れアルキル、アリール又はアラルキル基であり、XはCl、Br又はIである。)、請求項4記載のラジカル。
  7. 及びRが同一である、請求項4乃至請求項6のいずれか1項記載のラジカル。
  8. 前記ラジカル前駆体が、アゾビスイソブチロニトリル、亜硝酸t−ブチル、次亜塩素酸t−ブチル、過酸化ジベンゾイル及びジ−t−ブチルペルオキシドからなる群から選択される、請求項4乃至請求項7のいずれか1項記載のラジカル。
  9. 前記光分解が約200〜300nmの範囲の波長で実施される、請求項4乃至請求項8のいずれか1項記載のラジカル。
  10. 前記ラジカル前駆体が溶媒であり、ラジカルは高エネルギー放射線を用いて原位置で調製する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のラジカル。
  11. 前記ラジカル前駆体が水、メタノール、1,2−プロパンジオール、グリコール及びグリセロールからなる群から選択される、請求項10記載のラジカル。
  12. 前記高エネルギー放射線がX線又はガンマ線である、請求項10又は請求項11記載のラジカル。
  13. 試料とラジカルを含む混合物の動的核分極(DNP)であって、ラジカルがラジカル前駆体から原位置で発生し、約5K〜約273Kの温度で非ラジカル種に分解する、動的核分極。
  14. ラジカルの発生をDNP磁石の外部で行い、ラジカル発生後、混合物をDNP磁石に移す、請求項13記載の動的核分極。
  15. 液体窒素中で凍結させた、試料と光不安定化合物又は光不安定基を含む有機化合物とを含む混合物の光分解によってラジカルを発生させる、請求項14記載の動的核分極。
  16. 試料と溶媒とを含む混合物を液体窒素中で凍結させ、凍結混合物に高エネルギー放射線を照射することによってラジカルを発生させる、請求項14記載の動的核分極。
  17. 前記混合物がさらに溶媒を含む、請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載の動的核分極。
  18. 前記混合物がさらにガラス形成化合物を含む、請求項13乃至請求項16のいずれか1項記載の動的核分極。
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