JP2006521088A - 抗活性化ras抗体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、細胞内環境内で機能する抗体に関する。特に、本発明は、活性型RASに結合することを本発明者らが示した特定の抗体に関する。このような抗体の使用についても記載される。

Description

本発明は、細胞内環境内で機能する抗体に関する。特に、本発明は、活性型RASに結合することを本発明者らが示した特定の抗体に関する。このような抗体の使用についても記載される。
細胞内抗体(intracellular antibody)、すなわち細胞内発現抗体(intrabody)は、高等生物の細胞中での抗原認識において機能することが実証された(Cattaneo, A. & Biocca, S. (1997) Intracellular Antibodies: Development and Applications. Landes and Springer-Verlagの総説)。この相互作用は、細胞質、核または分泌経路においてうまく阻害される細胞タンパク質の機能に影響を及ぼし得る。この効力は、植物バイオテクノロジーにおける耐ウイルス性によって実証され(Tavladoraki, P.等 (1993) Nature 366: 469〜472)、HIVウイルスタンパク質(Mhashilkar, A.M.等 (1995) EMBO J 14: 1542〜51;Duan, L. & Pomerantz, R.J. (1994) Nucleic Acids Res 22: 5433〜8;Maciejewski, J.P.等 (1995) Nat Med 1: 667〜73;Levy-Mintz, P.等 (1996) J. Virol. 70: 8821〜8832)および癌遺伝子産物(Biocca, S., Pierandrei-Amaldi, P. & Cattaneo, A. (1993) Biochem Biophys Res Commun 197: 422〜7;Biocca, S., Pierandrei-Amaldi, P., Campioni, N. & Cattaneo, A. (1994) Biotechnology (N Y) 12: 396〜9;Cochet, O.等 (1998) Cancer Res 58: 1170〜6)に結合する細胞内抗体についていくつかの応用例が報告された。後者は、癌遺伝子の強制的な発現が腫瘍細胞における染色体転座後に起こることが多いので、重要な領域である(Rabbitts, T.H. (1994) Nature 372: 143〜149)。したがって、これらのタンパク質は、細胞内抗体と結合することによって不活性化することができる重要な細胞内治療標的である(Rabbitts, T.H. (1998) New Eng. J. Med 338: 192〜194)。最後に、全ゲノム配列を決定しようとする国際的な努力によって、何も知られていないタンパク質をコードする膨大な数の遺伝子配列候補が得られる。機能ゲノミクスは、この極めて多量のタンパク質の機能を確認する手法であり、細胞内抗体の使用は、細胞内の抗体に結合することによってタンパク質の機能を直接ノックアウトする概念的に簡単な手法としてこの試みにおける重要なツールになる見込みがある。
したがって、細胞中で機能する抗体を誘導する簡単な手法は、それらの抗体の使用が多数のタンパク質標的に対して何らかの影響を有する場合に必要になる。通常の状況においては、免疫グロブリンは、小胞体中で生合成され、抗体として分泌される。しかし、抗体が細胞質(酸化還元条件が小胞体中の酸化還元条件とは異なる)中で発現されるときには、折りたたみおよび安定性の問題が起こり、発現レベルが低く、抗体ドメインの半減期が限られる。これらの諸問題は、折りたたみタンパク質の安定性に重要であるVHドメインおよびVLドメインの鎖内ジスルフィド結合の形成を妨げる(Biocca, S., Ruberti, F., Tafani, M., Pierandrei-Amaldi, P. & Cattaneo, A. (1995) Biotechnology (N Y) 13: 1110〜5;Martineau, P., Jones, P. & Winter, G. (1998) J Mol Biol 280: 117〜127)細胞質の還元性環境に起因する可能性が最も高い(Hwang, C., Sinskey, A.J. & Lodish, H.F. (1992) Science 257: 1496〜502)。しかし、一部のscFvは、この結合がなくても問題ないことが判明し(Proba, K., Honegger, A. & Pluckthun, A. (1997) J Mol Biol 265: 161〜72;Proba, K., Worn, A., Honegger, A. & Pluckthun, A. (1998) J Mol Biol 275: 245〜53)、これはおそらく抗体可変領域の特定の1次配列によるものと思われる。上記細胞質条件に耐える抗体についての規則または一貫した予測は、本発明までなされていない。さらに別の問題は、細胞内抗体に対する発現形式をどう設計するかであり、VHセグメントとVLセグメント(すなわち、抗体結合部位)がVHのC末端とVのN末端においてポリペプチドリンカーによって連結されたscFvを使用することに多大な努力が費やされた(Bird, R.E.等 (1988) Science 242: 423〜6)。これは、最も成功した細胞内発現形態であるが、完全抗体から(例えば、モノクローナル抗体から)scFvに変換するときに親和性が低下する欠点がある。したがって、すべてのモノクローナル抗体をscFvにすることができるわけではなく、すべてのモノクローナル抗体が細胞中で機能を維持できるわけではない。結局、異なるscFv断片は、この細胞環境において発現されるときには、別個の溶解性や凝集性を有する。
抗体は、標的抗原の認識および診断、治療学などの医療のためのインビトロツールとして生物科学において広範に使用されている。最近、遺伝子クローニング技術によって、抗体をコードする遺伝子を操作し、細胞内で発現させることが可能になった(CattaneoおよびBiocca、1999a)。特異的な高い親和結合特性を有する細胞内抗体(ICAb)は、標的タンパク質またはタンパク質相互作用が標的細胞内にのみ存在するヒトの疾患の治療に適用できる可能性が高い。ICAbの発現に適切な形態は、単鎖可変断片またはscFv(Biocca等、1994;Cohen、2002;Marasco等、1993)としても知られる単鎖抗体であり、これは重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、およびそれらを結合する柔軟なリンカーペプチドからなる(Bird等、1988;Huston等、1988)。
ICAbとして機能的scFvを応用することが進められ、いくつかの分野で実施されている。腫瘍特異的細胞内タンパク質を有効に産生する染色体転座または体細胞突然変異が起こる癌細胞にそれらを使用できる可能性がある(Rabbitts、1994;RabbittsおよびStocks、2002)。タンパク質産物は、細胞表面に現れるのではなく、細胞内にあるので、従来の抗体治療を使用することはできない。scFv形式は、細胞内での使用に適切である。というのは、そのサイズが最適であり、VHセグメントおよびVLセグメントが単一巨大分子上に存在し、したがってこの2本の鎖を1本にするのに鎖内ジスルフィド結合を必要としないのでベクターからの発現が容易であるためである。このような抗体断片のいくつかは、タンパク質をインビボで標的にするのに有効であることが実証されたが(Biocca等、1993;RondonおよびMarasco、1997;Tavladoraki等、1993)、正確な折りたたみに問題が多く、その結果、機能が失われ、発現が低下し、半減期が短縮するので、細胞内の還元性環境において有効に働く抗体は依然としてほとんどない(CattaneoおよびBiocca、1999b)。実際、ハイブリドーマに由来するscFvの大部分は、十分な高親和性および抗原特異性を有するにもかかわらず、インビボで有効に機能しないことが一般に見出されている。また、ドメイン内ジスルフィド結合は、真核生物細胞の細胞質内で発現されるscFvにおいては結合を形成しない(Biocca等、1995)が、一部のscFvは、この結合がなくても問題のないことが判明している(Proba等、1998;WornおよびPluckthun、1998a)。現時点においては、安定な可溶性細胞内抗体に対する要件の一般的な規則または予測はない。
この点で、この問題を解決するためにいくつかの手法が採用された。これらの手法としては、ScFvを安定化するためのジスルフィド結合の必要性を、固有の高い安定性に置き換えるランダム突然変異を利用するVHドメインおよびVLドメインの配列改変(Proba等、1998;WornおよびPluckthun、1998b)、またはインビボで有効であることが経験的に証明されているフレームワークの使用(Tse等、2002;Visintin等、2002)などが挙げられる。
しかし、出願時においては、細胞内環境内の発癌性RASに結合することを可能にする細胞内抗体の特性を明らかにする必要性が当分野では依然として残っている。このような抗体は、予防から治療にわたる広い応用分野がある。
本発明者らは、最近、細胞内抗体捕捉(IAC)技術(Visintin等、1999)(国際公開WO00/54057号)として記述されている、酵母および哺乳動物細胞内での細胞内抗体の機能に主に依存する細胞内抗体単離選択方法を開発した。
本発明者らは、今回、IAC手法を用いて、細胞内環境内でRASに特異的に結合することができる3種類の抗RAS抗体を特定した。これらの抗体は、インビボでの抗原親和性、溶解性および安定性に関して異なる特性を示す。また、本発明者らは、軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインの両方ではなくどちらか一方を含む抗体が、活性化RASに特異的に結合することができることを示した。また、本発明者らは、IAC手法を改変して、初期のインビトロでの選択方法を不要にした。本発明者らは、この手法をIAC手法と呼んでいる。特に、本発明者らは、特性がすでに明らかなコンセンサス骨格に基づく、特性がすでに明らかな細胞内発現抗体単一可変ドメイン(IDab)形式を用いて、インビボでの直接スクリーニング用の多様な細胞内発現抗体ライブラリーを作製した。このようにして、さらに別のパネルの抗RAS特異的細胞内抗体を単離した。
本発明者らは、驚くべきことに、細胞内環境内で特異的に結合する抗体を得るために重鎖可変ドメイン内ジスルフィド架橋の形成が不要であることを見出した。本明細書に記載する抗体は、突然変異/活性型RASに対しては特異的であるが、天然/非活性型RASに対しては特異的でない。本発明者らは、このような抗体が予防および治療にかなり役立つと考えている。
したがって、第1の態様においては、本発明は、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる抗体分子であって、前記抗体が単一可変ドメイン型のみを含み(単一ドメイン型抗体)、そのような可変ドメインが、
(a)VHの場合:図3に示され、それぞれ配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9、配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、あるいは残基22および92の1個または複数がシステイン残基ではない上記配列、すなわち、図3に示される配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29のいずれか;ならびに
(b)VLの場合:図3に示され、VLの場合、配列11、配列12、配列13、配列17、配列18、配列19、配列20で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)
からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体分子を提供する。
本明細書で使用する「単一可変ドメイン型抗体」という用語は、1個もしくは複数の重鎖可変ドメインまたは1個もしくは複数の軽鎖ドメインのどちらかを含むが、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの両方は含まない本明細書で定義される抗体を意味する。本発明による単一可変ドメイン型抗体はDab(IDab)であることが有利である。本明細書で定義するように、「Dab」は、「バルキング基」に場合によっては結合していてもよい単一可変重鎖ドメインまたは単一可変軽鎖ドメインである。本明細書で定義される「バルキング基」は、1個または複数の抗体定常領域ドメインを含むことができる。あるいは、「バルキング基」は、非免疫グロブリン起源の成分を含むことができる。これらは、細胞毒、蛍光または他の形態の標識を含むことができる。当業者は、このリストが網羅的なものではないことを理解されたい。疑問を避けるために、本発明によるDab(IDab)は、軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインのみを含むことができる。本発明による「Dab」は、単一重鎖可変ドメインを含むことが最も有利である。
さらに別の態様においては、本発明は、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる抗体分子であって、前記抗体は重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、前記抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは、図3に示され、可変重鎖ドメインの場合にはそれぞれ配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9および配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記配列のいずれかからなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか、ならびに図3に示す対応する軽鎖ドメインを含む抗体分子を提供する。
本発明の上記態様によれば、「対応する軽鎖」という用語は、図3に示す同じscFv分子内の特定の重鎖と対をなす軽鎖を意味する。すなわち、J48重鎖配列の対応する軽鎖は、J48軽鎖配列である。また、33重鎖配列の対応する軽鎖は、33軽鎖配列である。
本発明の上記態様によれば、「活性化RASとの特異的結合」という用語は、他の別の抗原に加えて活性化RASを含む試薬混合物内で活性化RASのみが結合することを意味する。すなわち、本発明による抗RAS抗体の結合は、活性化RASに対して選択的である。
本発明による抗体の活性化RASに対する特異的結合の親和性は高くても低くてもよい。例えば、scFv I21の活性化RASとの特異的相互作用は低親和性であるのに対して、scFv 33の活性化RASとの特異的相互作用は高親和性である。親和性は、本明細書に記載するBIACORE測定の使用を含めて、当業者に既知の方法を用いて測定することができる。
本発明の上記態様によれば、抗体は、本明細書で定義されるscFvまたはDabであることが好ましい。抗体は、本明細書で定義されるように活性化RASに特異的に結合するscFvであることが最も好ましい。
さらに別の態様においては、本発明は、細胞内環境内で活性化RASを機能的に不活性化させる抗体分子であって、単一可変ドメイン型のみを含み、そのような可変ドメインが、
(a)VHの場合:図3に示され、それぞれ配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9、配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、あるいは残基22および92の1個または複数がシステイン残基ではない上記配列、すなわち、図3に示される配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29のいずれか;ならびに
(b)VLの場合:図3に示され、それぞれ配列11、配列12、配列13、配列17、配列18、配列19、配列20で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)
からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体分子を提供する。
さらに別の態様においては、本発明は、細胞内環境内で活性化RASを機能的に不活性化させる抗体分子であって、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、前記抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインが、可変重鎖ドメインの場合には図3に示され、それぞれ配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9および配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記配列のいずれかからなる群から選択されるアミノ酸のいずれか、ならびに図3に示す対応する軽鎖ドメインを含む抗体分子を提供する。
本発明のこの態様による抗体は、これらの重鎖可変ドメイン、ならびにI21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S、C92S)からなる群から選択される対応する軽鎖ドメインを含むことが有利である。
本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、前記抗体はscFv分子である。本発明の上記態様の別の実施形態においては、突然変異RASを機能的に不活性化させる抗体は、単一可変鎖ドメインのみの抗体(IDab)である。本発明の最も有利な実施形態においては、IDabは重鎖のみのIDabである。
本発明の上記態様によれば、「活性化RASを機能的に不活性化させる」という用語は、活性化RASの細胞形質転換能力を阻害することを意味する。「阻害」という用語は、対照細胞が本発明の抗体による処理を受けない適切な対照と比較して、活性化RASの細胞形質転換能力が阻害されることを意味する。活性化RASの細胞形質転換能力が、適切な対照と比較して20%阻害されることが有利である。活性化RASの細胞形質転換能力が、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%阻害されることがより有利である。本発明のこの態様の最も好ましい実施形態においては、活性化RASの細胞形質転換能力が、適切な対照と比較して100%阻害される。
本明細書で使用する(活性化RASの)「形質転換能力」という用語は、細胞の正常な増殖制御を失わせる活性化RASの能力を意味する。例えば、「形質転換細胞」は、際限なく複製を繰り返し、接触阻止がなくなる。すなわち、細胞は、制御不能に分裂し、細胞自体の境界を認識することができない。形質転換された細胞は、多量の細胞を形成し、したがって腫瘍を形成する(腫瘍形成性(tumourigenic)形質転換)。1個または複数の形質転換細胞が腫瘍から分離し、さらに別の腫瘍を形成することができる(すなわち、腫瘍は、転移することができる)。
「活性化RASを機能的に不活性化させるのに適した」という用語は、細胞内抗体が活性化RASに選択的に結合することができ、その結果、活性化RASが本明細書に定義するように機能的に不活性化されるように、本発明による抗体のインビボでの溶解性および抗原結合親和性が適切でなければならないことを意味する。
本発明者らは、驚くべきことに、活性化RASとの相互作用の特異性を決定するCDR配列を見出した。
すなわち、さらに別の態様においては、本発明は、図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;配列番号3、a、bおよびc;配列番号11a、bおよびc;配列番号12a、bおよびc;および配列番号13、a、b、c;配列番号21a、bおよびc;配列番号22a、bおよびc;配列番号23a、bおよびc;配列番号24a、bおよびc;配列番号25a、bおよびc;配列番号26a、bおよびc;配列番号27a、bおよびc;配列番号28a、bおよびc;配列番号29a、bおよびcで示される群から選択される1組の可変重鎖または軽鎖ドメインCDRを含む単一可変ドメイン型抗活性化RAS細胞内結合抗体を提供する。
本発明の上記態様によれば、重鎖可変ドメインのみの抗活性化RAS細胞内結合抗体(IDab)は、図3に示され、配列番号3a、bおよびcで示される群から選択される1組の可変重鎖ドメインCDRを含むことが有利である。
本発明の上記態様の別の実施形態においては、前記抗体は、図3に示され、配列番号21a、bおよびcまたは配列番号22a、bおよびcで示される群から選択される1組の可変重鎖ドメインCDRを含む単一可変重鎖ドメインのみ(IDab)である。
本発明の上記態様の別の実施形態においては、軽鎖可変ドメインのみの抗活性化RAS細胞内結合抗体は、図3に示され、配列番号13a、bおよびcで示される群から選択される1組の可変重鎖ドメインCDRを含む。
さらに別の態様においては、本発明は、少なくとも1個の軽鎖ドメインおよび少なくとも1個の重鎖ドメインを含む抗活性化RAS細胞内結合抗体であって、それぞれ、図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;および配列番号3、a、b、cで示される群から選択される可変重鎖ドメインCDR、ならびに図3に示され、配列番号11a、bおよびc;配列番号12a、bおよびc;および配列番号13、a、b、cで示される群から選択される対応する軽鎖ドメインCDRを含む抗体を提供する。
本発明者らは、図3に示される特定のCDR配列によって、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合する能力が抗体に付与されることを見出した。
したがって、別の態様においては、本発明は、図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;配列番号3、a、b、c;配列11a、b、c;配列12a、b、c、配列13a、b、c;配列番号21a、bおよびc;配列番号22a、bおよびc;配列番号23a、bおよびc;配列番号24a、bおよびc;配列番号25a、bおよびc;配列番号26a、bおよびc;配列番号27a、bおよびc;配列番号28a、bおよびc;配列番号29a、bおよびcで示されるアミノ酸配列から選択され、そのそれぞれの重鎖または軽鎖可変ドメインフレームワーク領域アミノ酸配列に結合して細胞内で機能的な抗体を産生するときに、得られる抗体に、細胞内環境内で活性化RASに選択的に結合する能力を付与する可変領域CDRを提供する。
本発明の上記態様によれば、細胞内で機能する抗体は、IDAbなどの単一ドメイン型抗体とすることができる。Dabは、重鎖可変ドメインIDAbであることが有利である。本発明の上記態様の別の実施形態においては、前記抗体は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方を含む。前記抗体はscFvであることが有利である。
本明細書で定義するように「細胞内で機能する」(抗体)という用語は、抗体が細胞内環境内で発現されたときに、可溶性で熱力学的に安定であることを意味する。また、「細胞内で機能する(抗体)は、その天然環境内の抗体と立体配置的に類似している。すなわち、抗体がCDRを介して1個または複数の抗原と特異的に相互作用することができるコンホメーションをしている。
本発明の上記態様によれば、「細胞内で機能する抗体」という用語は、可変ドメインのCDRがそれらの1個または複数の抗原と細胞内環境内で特異的に相互作用することができるように、抗体が十分な細胞内安定性および溶解性を有することを意味する。
別の態様においては、本発明は、本発明による任意の1種類もしくは複数の抗体分子および/またはCDR配列をコードする核酸構築体を提供する。
さらに別の態様においては、本発明は、本発明による1種類もしくは複数の核酸構築体を含むベクターを提供する。
さらに別の態様においては、本発明は、本発明によるベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。
本発明者らは、抗体分子および/またはそれらをコードする核酸構築体は、治療上の価値が大きいと考えている。
したがって、さらに別の態様においては、本発明は、以下、すなわち、本発明による抗体分子、本発明の1個または複数のCDR、および本発明による核酸構築体、ならびに製薬的に許容されうる担体、希釈剤または賦形剤からなる群から選択される分子のいずれかを含む組成物を提供する。
本発明者らは、フレームワーク配列の特性によって、これらの配列から産生される細胞内発現抗活性化RAS抗体の細胞内での溶解性が決まることを見出した。好ましいフレームワーク配列は、図3で示され、Con、I21およびI21R33で示される。
したがって、さらに別の態様においては、本発明は、図3に示され、VHの場合には、配列番号1、2、3、7、8、9、10で示される群から、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記VH配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む可変鎖ドメインから抗体を合成するステップ、および/または図3に示され、配列11、12、13、17、18、19および20で示され、Con、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con33、I21R33(VHC22S、C92S)で示される群から選択されるアミノ酸のいずれかを含む軽鎖ドメイン変数から抗体を合成するステップを含む、活性化RASに特異的に結合し、かつ/または細胞内環境内で活性化RASを機能的に不活性化させることができる抗体分子を産生する方法を提供する。
本発明の上記態様によれば、「抗体を合成する」という用語は、上記配列を含む抗体全体/完全な状態の抗体の選択、ならびに/または上記配列およびそれらの後続の構築物を含む抗体断片の選択をその範囲に含む。また、この用語は、上記配列を生成するために、アミノ酸レベルまたは核酸レベルで適切な配列を突然変異させることをその範囲に含む。突然変異は、置換、欠失、逆位または挿入の形態をとることができる。突然変異は置換であることが有利である。突然変異誘発方法、および核酸またはアミノ酸配列の操作は、標準の実験室技術を含み、当業者には周知である。
また、「抗体を合成する」という用語は、上述した様々な配列またはその断片をコードする核酸構築体を新規構築または新規合成することをその範囲に含む。核酸の合成は、PCRに基づく手法を含むことができる。当業者は、上記配列をコードする核酸の合成に適切な他の方法を知っているはずである。
本発明の上記態様によれば、この方法は、図3に示され、それぞれ配列番号11、12、13、17、18、19および20で示される群から選択される可変軽鎖ドメイン、ならびに/または図3に示され、配列番号1、2、3、7、8、9および10で示される群から選択される重鎖可変ドメインからscFvを合成するステップを含むことが有利である。
本発明の上記態様のさらに好ましい実施形態においては、この方法は、図3に示され、それぞれ配列番号11、12、13、17、18、19および20で示される群から選択される可変軽鎖ドメイン、または図3に示され、配列番号1、2、3、7、8、9および10で示される群から選択される重鎖可変ドメインからIDabを合成するステップを含む。
さらに別の態様においては、本発明は、本発明による方法を用いて得られる抗体を提供する。
この抗体は、本明細書で定義されるIDab、またはscFvであることが有利である。
本発明による抗体は、インビボでの予防目的および治療目的に特に有用である。特に、本発明者らは、本発明による特定の抗体によって、細胞中での活性化RASの形質転換誘発能力を阻害できることを見出した。
したがって、さらに別の態様においては、本発明は、図3に示され、VHの場合には、配列番号1、2、3、7、8、9、10で示される群から、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記VH配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列のいずれか、あるいは図3に示され、VHの場合には、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29で示される群から選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む軽鎖可変ドメインおよび/または重鎖可変ドメイン、ならびに/あるいは図3に示され、配列11、12、13、17、18、19および20で示され、それぞれCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con33、I21R33(VHC22S、C92S)で示される群から選択されるアミノ酸のいずれかを含む可変軽鎖ドメインを含む抗体分子の、活性化RASに特異的に結合する医薬品、および/または細胞内環境内での活性化RASのインビボ機能活性を阻害する医薬品の調製における使用を提供する。
本発明の上記態様による使用に適切な抗体は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインを含むことができ、またはDabなどの単一ドメイン型抗体とすることができる。そのような使用に好ましい抗体は、Con、33、I21R33、I21R33VHI21VLおよびI21R33(VHC22S;C92S)からなる群から選択され、それぞれ図3に示される配列1、7、8、10、21、22、23、24、25、26、27、28および配列番号29として特定される1個または複数の重鎖可変ドメイン、ならびに上記と同じ重鎖可変ドメインと図3に示すそれらの対応する軽鎖とを含む重鎖抗体および軽鎖抗体を含む単一ドメイン型抗体である。
本発明者らは、本発明による抗体が、活性化RASの細胞形質転換能力を阻害するのに有効であることを示した。報告によれば、現在知られているすべての癌の約30%がRAS関連癌である。したがって、本発明の抗RAS抗体は、RAS関連癌の予防および/または治療において大きな可能性を示すものである。
したがって、さらに別の態様においては、本発明は、図3に示され、VHの場合には、配列番号1、2、3、7、8、9、10で示される群から、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記VH配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列のいずれか、図3に示され、VHの場合には、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28および配列番号29で示される群から選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む軽鎖可変ドメインおよび/または重鎖可変ドメイン、ならびに/あるいは図3に示され、配列11、12、13、17、18、19および20で示され、それぞれCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con33、I21R33(VHC22S、C92S)で示される群から選択されるアミノ酸のいずれかを含む可変鎖ドメインを含む抗体分子の治療有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与するステップを含む、患者のRAS関連癌の治療方法を提供する。
上記方法による使用に適切な抗体は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインを含むことができ、またはDabなどの単一ドメイン型抗体とすることができる。そのような使用に好ましい抗体は、Con、33、I21R33、I21R33VHI21VLおよびI21R33(VHC22S;C92S)からなる群から選択され、それぞれ図3に示される配列1、7、8、10、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28および配列番号29として特定される1個または複数の重鎖可変ドメイン(IDab)、ならびに上記と同じ重鎖可変ドメインとそれらの対応する軽鎖とを含む重鎖抗体および軽鎖抗体を含む単一ドメイン型抗体である。前記抗体はscFv分子であることが有利である。
さらに別の態様においては、本発明は、図3に示され、VHの場合には、配列番号1、2、3、7、8、9、10で示される群から、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記VH配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列のいずれか、あるいは図3に示され、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28および配列番号29で示されるアミノ酸配列のいずれかを含む軽鎖可変ドメインおよび/または重鎖可変ドメインを含み、かつ/あるいは図3に示され、配列11、12、13、17、18、19および20で示され、それぞれCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con33、I21R33(VHC22S、C92S)で示される群から選択されるアミノ酸のいずれかを含む可変軽鎖ドメインを含む抗体分子の、活性化RASに特異的に結合する医薬品、および/または細胞内環境内での活性化RASのインビボ機能活性を阻害する医薬品の調製における使用を提供する。
本発明の上記態様の好ましい実施形態においては、前記抗体は単一ドメイン型抗体である。前記抗体は、重鎖可変ドメインを含むIDabであることが有利である。少なくとも重鎖可変ドメインを含むこれらの抗体は、以下、すなわち、I21R33および指定配列7(VH)および配列9(VH)で示され図3に示されるCon 33からなる群から選択されるいずれか1つまたはアミノ酸配列を含むことが好ましい。
本発明の上記態様のさらに好ましい実施形態においては、本発明の上記態様による使用は、抗活性化RAS scFvに関するものである。
発明の詳細な説明
定義
免疫グロブリン分子は、本発明によれば、標的に結合することができる任意の部分を意味する。特に、これらは、免疫グロブリンスーパーファミリー、すなわち、2個のベータシートと通常は保存的ジスルフィド結合とを含む、抗体分子に特徴的な免疫グロブリン折りたたみを含むポリペプチドファミリーのメンバーを含む。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫系(例えば、抗体、T細胞受容体分子など)における広範な役割、細胞接着(例えば、ICAM分子)および細胞内シグナル伝達(例えば、PDGF受容体などの受容体分子)における関与を含めて、インビボでの細胞および非細胞相互作用の多数の態様に関与している。本発明は、抗体またはscFv分子に関する。
本明細書において使用される抗体は、選択標的に結合可能な完全抗体または抗体断片であり、Fv、ScFv、Fab’およびF(ab’)、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラを含めた遺伝子操作抗体、CDRグラフトおよびヒト化抗体、ならびにファージディスプレイまたは別の技術を用いて産生された人工的に選択された抗体を含む。Fv、ScFvなどの小さな断片は、サイズが小さく、その結果組織分布に優れているので、診断用途および治療用途に対して有利な諸特性を有する。前記抗体は、単一ドメイン抗体(IDab)またはscFvであることが好ましい。本明細書で定義するように、「抗体」という用語は、少なくとも1個の重鎖可変ドメインと少なくとも1個の抗体定常領域ドメインとを含む抗原結合部分を含む分子をその範囲に含む。
本明細書で定義するように、「Dab/IDab」は、「バルキング基(bulking group)」に場合によっては結合していてもよい単一可変重鎖ドメインまたは単一可変軽鎖ドメインである。本明細書で定義される「バルキング基」は、1個または複数の抗体定常領域ドメインを含むことができる。あるいは、「バルキング基」は、非免疫グロブリン起源の成分を含むことができる。これらは、細胞毒、蛍光または他の形態の標識を含むことができる。当業者は、このリストが網羅的なものではないことを理解されたい。本発明による「Dab」は、本明細書で定義される1個または複数の定常領域ドメインに結合した単一重鎖可変ドメインを含むことが最も有利である。疑問を避けるために、Dabは、軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインのみを含むことができる。本発明の好ましい実施形態においては、本明細書に記載するIDabは、重鎖可変ドメインのみを含む。
重鎖可変ドメインとは、その分子の抗原結合部位の一部を形成する免疫グロブリン分子の重鎖の一部である。VHIIIサブグループは、重鎖可変領域(VHIII)の特定のサブグループである。一般に、このグループに属する可変鎖アミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子は、Kabatデータベース中のVHIIIコンセンサス配列によって記述することができるVHアミノ酸配列を有する。
軽鎖可変ドメインとは、その分子の抗原結合部位の一部を形成する免疫グロブリン分子の軽鎖の一部である。免疫グロブリン分子のVkIサブグループは、可変軽鎖の特定のサブグループである。一般に、このグループに属する可変鎖アミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子は、Kabatデータベース中のVIコンセンサス配列によって記述することができるVHアミノ酸配列を有する。
免疫グロブリン重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域。免疫グロブリン分子の可変ドメインは、免疫グロブリン折りたたみの存在によって特徴付けられる特定の3次元コンホメーションを有する。可変ドメイン中の特定のアミノ酸残基によって、この特徴的な免疫グロブリンドメインコア構造が維持される。これらの残基は、フレームワーク残基として知られ、極めて保存的である傾向にある。
免疫グロブリン分子重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのCDR(相補性決定領域)は、フレームワーク領域残基ではない、可変領域の超可変ループ内に含まれるアミノ酸残基である。これらの超可変ループは、免疫グロブリンとリガンドの相互作用に直接関係する。これらのループ内の残基は、フレームワーク領域内の残基よりも保存性の程度が小さいことを示す傾向にある。
細胞内とは細胞の内部を意味し、本発明は、細胞内で選択的にリガンド/標的に結合する免疫グロブリンに関する。細胞はいかなる細胞でもよく、原核生物細胞でも真核生物細胞でもよく、細菌細胞、酵母細胞および高等真核生物細胞からなる群から選択されることが好ましい。最も好ましい細胞は、酵母細胞および哺乳動物細胞である。したがって、本明細書において使用する「細胞内」免疫グロブリンおよび標的またはリガンドは、(細胞質および核を含めて)細胞内に存在する免疫グロブリンおよび標的/リガンドである。また、「細胞内」という用語は、細胞内環境に似た、または細胞内環境を模倣した環境を意味する。したがって、「細胞内」は、細胞内ではないが、インビトロである環境を意味する場合もある。例えば、本発明による方法は、商業的に得られる、または自然の系から誘導されるインビトロでの転写系および/または翻訳系において実施することができる。
本発明におけるV鎖およびV鎖のコンセンサス配列とは、細胞内環境内でリガンドに選択的に結合することができる免疫グロブリン分子由来のV鎖およびV鎖のコンセンサス配列を意味する。細胞内で結合することができる免疫グロブリンの配列が比較されたときに、任意の1つの所与の位置において最も一般的である残基が、その位置のコンセンサス残基として選択される。コンセンサス配列は、その後、各位置におけるすべての細胞内結合免疫グロブリンに対する残基を比較し、次いで、データを照合することによって得られる。この場合、18種類の免疫グロブリンの配列が比較された。
本発明における特異的(抗体)結合とは、抗体とリガンドの相互作用が選択的である、すなわち、いくつかの分子が抗体に対して提示された場合に、提示された分子の1種類または数種類にしか抗体が結合しないことを意味する。抗体−リガンド相互作用は高親和性であることが有利である。免疫グロブリンとリガンドの相互作用は、水素結合、ファン・デル・ワールス力などの非共有結合性相互作用によって媒介される。
本発明におけるレパートリーとは、結合特異性の多重度を付与するために、核酸レベルでの1種類または複数のテンプレート分子の無作為、半無作為または特定の変化によって生成される1組の分子を指す。この場合、テンプレート分子は、本明細書に記載する1個もしくは複数のVHおよび/またはVLドメイン配列である。レパートリーを生成する方法は、当分野ではよく知られている。
「活性化RAS」という用語は、細胞の形質転換を誘導することができるRASの形態を指す。したがって、本発明によれば、「活性化RAS」という用語は「RASの発癌性形態」と同義である。本明細書で使用する(活性化RASの)「形質転換能力」という用語は、細胞の正常な増殖制御を失わせる活性化RASの能力を意味する。例えば、「形質転換細胞は、際限なく複製を繰り返し、接触阻止がなくなる。すなわち、細胞は、制御不能に分裂し、細胞自体の境界を認識することができない。形質転換された細胞は、多量の形質転換細胞を形成し、したがって腫瘍を形成する(腫瘍形成性形質転換)。1個または複数の形質転換細胞が腫瘍から分離し、さらに別の腫瘍を形成することができる(すなわち、腫瘍は、転移することができる)。
「活性化RASとの特異的結合」という用語は、他の別の抗原に加えて活性化RASを含む試薬混合物内で活性化RASのみが結合することを意味する。すなわち、本発明による抗RAS抗体の結合は、活性化RASに対して選択的である。本発明による抗体の活性化RASに対する特異的結合の親和性は高くても低くてもよい。例えば、scFv I21の活性化RASとの特異的相互作用は低親和性であるのに対して、scFv 33の活性化RASとの特異的相互作用は高親和性である。
「細胞内で機能する抗体」という用語は、可変ドメインのCDRがそれらの1個または複数の抗原と細胞内環境内で特異的に相互作用することができるように、抗体が十分な細胞内安定性および溶解性を有することを意味する。
「活性化RASを機能的に不活性化させるのに適した」という用語は、細胞内抗体が活性化RASに選択的に結合することができ、その結果、活性化RASが本明細書に定義するように機能的に不活性化されるように、本発明による抗体のインビボでの溶解性、安定性および抗原結合親和性が適切でなければならないことを意味する。「活性化RASを機能的に不活性化させる」という用語は、活性化RASの細胞形質転換能力を阻害することを意味する。「阻害」という用語は、対照細胞が本発明の抗体による処理を受けない適切な対照と比較して、活性化RASの細胞形質転換能力が阻害されることを意味する。活性化RASの細胞形質転換能力が、適切な対照と比較して20%阻害されることが有利である。活性化RASの細胞形質転換能力が、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90阻害されることがより有利である。本発明のこの態様の最も好ましい実施形態においては、活性化RASの細胞形質転換能力が、適切な対照と比較して100%阻害される。
一般技術
特に規定しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学における)当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。 標準技術は、分子、遺伝子および生化学方法(一般には、参照により本明細書に援用するSambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.およびAusubel等.、Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed、John Wiley & Sons, Incを参照されたい)および化学的方法に使用される。また、標準免疫学的技術については、Harlow & Lane.、A Laboratory Manual Cold Spring Harbor、N.Yを参照されたい。
抗体の新規合成
本発明者らは、可変重鎖フレームワーク残基および可変軽鎖フレームワーク残基を含む抗体のインビボでの安定性および溶解性を決定する可変重鎖フレームワーク残基および可変軽鎖フレームワーク残基を特定した。
したがって、本発明は、以下、すなわち、I21として図3に示され、配列4で示された重鎖フレームワーク領域、配列7で示され、I21R33として示されたコンセンサス配列の重鎖フレームワーク領域、および配列1で示され、Conとして示されたコンセンサス配列の重鎖フレームワーク領域;またはKabatによる22位および92位のアミノ酸残基がシステイン残基ではないこれらのフレームワーク配列のいずれかからなる群から選択されるフレームワーク配列(またはそれらをコードする核酸)のいずれかを用いて抗体を合成するステップと、図3に示す対応する軽鎖フレームワーク領域から抗体をさらに合成するステップとを含む、1個もしくは複数の重鎖のみ、または重鎖と軽鎖の両方を含む抗体を産生する、細胞内での使用に適切な方法を提供する。
本発明者らは、図1においてI21として示され、配列4および14で示されたフレームワーク領域と、図1において配列1および11ならびに図3において配列7および17で示されたコンセンサスのフレームワーク領域とが、それらを含む抗体に、細胞内環境内で機能するのに必要なコンホメーションの安定性および溶解性を付与することを示した。
また、Kabatによる22位および92位の1個または複数においてシステイン残基を含まない上記配列(VHの場合)を使用して、それらを含む抗体に、細胞内環境内で機能するのに必要なコンホメーションの安定性および溶解性を付与することもできる。特に、その一方または両方の位置におけるシステインがセリンによって置換されたアミノ酸配列を使用して、それらを含む抗体に、細胞内環境内で機能するのに必要なコンホメーションの安定性および溶解性を付与することもできる。
また、実験によって、scFv分子J48および33上に存在し、図1において配列2および12(J48)ならびに配列3および13(33)で示されたCDRが、それぞれ、細胞内で安定なそれらを含む抗体に、活性化RASに特異的に結合する能力を付与することが判明した。
したがって、上記フレームワーク配列と上記CDR配列の任意の組み合わせは、組み合わせたときに、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる新規Dabまたは軽鎖および重鎖抗体を産生するのに使用することができる。
抗体の新規合成に適切な方法は、本願と同じ日に出願された本発明者らの同時係属の「Method for generating Immunoglobulin genes」に記載されている。
したがって、タンパク質抗原を用いた予備的なインビトロファージ抗体スクリーニングに頼らずに、コンセンサスICAb骨格に基づき、酵母細胞アッセイにおいて直接一次スクリーニングが可能な十分な多様性を有するICAbライブラリーを構築することができると予想するのは合理的である。これによって、例えば、インビトロで発現してタンパク質を与えるのに抗原が不要であり、IAC選択のための酵母バイト発現に対する要件は、単にDNA配列だけであるという極めて明確な技術的利点が提供される。これによって、任意の生物のゲノム配列分析、例えば、ヒトゲノム配列決定プログラムから予測される任意のタンパク質に結合するICAbを選択するために、IAC技術を用いる可能性が開かれる。
極めて重要な問題は、有効な細胞内抗体を含むのに必要なライブラリー多様度であり、したがって酵母において十分な抗体多様性を得ることができ、スクリーニングすることができるかどうかである。現行のIACを成功させるには、極めて多様なライブラリーのインビトロでのファージAbスクリーニングから始める必要がある。しかし、そのようなファージ抗体は、(還元性環境における溶解性および折りたたみ問題のために)改変なしでは必ずしも細胞内抗体として働かず、これは、細胞内抗体ライブラリーとしてのこれらのファージscFvライブラリーの有効な多様性が、予想されるよりも少ないようであることを意味している。固定されたコンセンサスフレームワーク上の無作為化CDRを用いた特別設計のヒト細胞内抗体ライブラリーの構築は、有効なICAb多様性を増加させるはずである。これによって、十分に有効な多様性を維持し、細胞内抗体のスクリーニングを促進させつつ、予備的なファージパンニングステップを必要とせずに、ライブラリーをICAbについてスクリーニングすることが可能になる。
本発明による活性化RASに特異的な細胞内で機能する抗体
本発明者らは、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる一連の活性化RAS特異抗体を単離した。
(I)抗体を単離するIAC方法
IAC手法は、他のスクリーニング方法と比較していくつかの利点を有する。IAC手法は、scFvの細胞質直接選択として働く酵母2ハイブリッドインビボアッセイに基づいている。また、IAC手法は、理論的に、天然型の抗原のターゲティングが可能であるので、転写後修飾タンパク質または特にタンパク質複合体を含めて、細胞質で発現される任意の抗原に対して抗体断片(本明細書の実験ではscFv)を選択することができる。さらに、スクリーニングプロセスには、哺乳動物細胞における細胞内scFv候補の検証が必要であると考えられる。これらの異なるバイト系およびレポーター系を使用することによって、偽陽性scFvが排除される。また、哺乳動物の抗原−抗体相互作用アッセイは、酵母中での30℃、またはインビトロファージスクリーニングの室温(または4℃)に対して、37℃で実施される。酵母から哺乳動物細胞へのこのステップによって、より耐熱性の高い細胞内scFvを選択することができる。単離には哺乳動物アッセイが必要なので、標的抗原と内因性2量体分子の競合結合に適切なより高い親和性相互作用を選択することができる。
この研究においては、本発明者らは、活性化タンパク質RASに対してIAC技術を適用し、細胞質中のこの抗原に結合する特異的抗RAS scFvを単離した。配列分析によって、すべての抗RAS scFvが、Kabatデータベース(Kabat等、1991)によって定義されるVH3およびVκ1サブグループ、またはIMGTデータベース(LefrancおよびLefranc、2001)によって定義されるIGHV3およびIGK1サブグループに属することが示された。抗原BCRまたはABL(Tse等、2002)およびTAU(Visintin等、2002)に結合する大部分の選択されたICAb scFvも同じサブグループに属し、VHおよびVκフレームワークのこれらのサブグループが細胞内で機能することができるということを支持している。この観察によって、コンセンサスフレームワーク骨格を定義することができた(Tse等、2002)。
治療ツールまたは生物科学研究ツールとしての細胞内抗体の最も重要な要件は、これらの抗体(または抗体断片)が高い安定性、良好な発現レベルを示し、哺乳動物細胞のあらゆるコンパートメント内で機能することである。これらは、厳しい制約であり、ハイブリドーマに由来するscFv断片のほとんどは、インビトロでの親和性が良好であっても、改変なしでは還元性環境下で安定ではない。本明細書および既報(Tse等、2002;Visintin等、2002)に記載された細胞内抗体捕捉(IAC)技術は、機能的scFvを直接単離するためのインビボでの遺伝学的スクリーニングに基づくこれらの難点を克服するものである。
(II)改変IAC手法(IAC
本発明者らは、上記手法の改変において、特性がすでに明らかな細胞内発現抗体コンセンサス骨格に基づいて、直接細胞内単一ドメイン(direct intracellular single domain)(IDab)形式を用い、インビボでの直接スクリーニング用の多様な細胞内発現抗体ライブラリーを作製した。このようにして単離された抗RAS IDabは、20nm〜200nmの抗原結合親和性を有することが判明した。この方法を用いて単離された抗RAS IDabを、以下のセクション(iii)に記載する。
(i)細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの両方を含む抗活性化RAS抗体
本発明者らは、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合する重鎖と軽鎖の両方を含む抗体を単離した。本発明者らは、これらの抗体の一部が抗原に対して低親和性で結合し、一部が高親和性で結合することを見出した。また、本発明者らは、これらの抗体の一部が細胞内環境内で高い溶解性レベルを有し、一部が低い溶解性を有することを見出した。
例えば、抗RAS scFvに対するIACスクリーニングを用いると、1種類のscFv(I21)は、細菌ペリプラスムにおいて高い収率、哺乳動物細胞中での高い溶解性を示すが、哺乳動物細胞における相互作用の親和性に乏しく、他のscFv(scFv33およびJ48)は高親和性であるが、可溶性発現タンパク質の収率が比較的低い。しかし、I21 scFvフレームワーク配列は、VH領域とVL領域の両方において、図3に示すコンセンサスフレームワーク(Tse等、2002)に厳密に一致する。したがって、これらの結果によれば、図1において配列1および11として特定されるコンセンサスフレームワーク、図3に示され、配列4および14として特定されるI21フレームワーク配列、ならびに図3においてI21R33として特定され、配列7および17で示されたコンセンサスフレームワークは、求める細胞内抗体の産生に理想的なフレームワーク配列である。
本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、前記抗体はscFvである。本発明による好ましいscFvとしては、図3に示され、J38、33、I21、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33、I21R33(VHC22S、C92S)で示された配列を含むscFvが挙げられる。
本発明によるscFvの特徴
配列分析によって、すべての抗RAS scFvが、Kabatデータベース(Kabat等、1991)によって定義されるVH3およびVκ1サブグループ、またはIMGTデータベース(LefrancおよびLefranc、2001)によって定義されるIGHV3およびIGK1サブグループに属することが示された。抗原BCRまたはABL(Tse等、2002)およびTAU(Visintin等、2002)に結合する大部分の選択されたICAb scFvも同じサブグループに属し、VHおよびVκフレームワークのこれらのサブグループが細胞内で機能することができるということを支持している。この観察によって、コンセンサスフレームワーク骨格を定義することができた(Tse等、2002)。この抗RAS scFvのスクリーニングにおいては、1種類のscFv(I21)は、細菌ペリプラスムにおいて高い収率、哺乳動物細胞中での高い溶解性を示すが、哺乳動物細胞における相互作用の親和性に乏しく、他のscFv(scFv33およびJ48)は高親和性であるが、可溶性発現タンパク質の収率が比較的低い。しかし、I21 scFv フレームワーク配列は、VH領域とVL領域の両方においてコンセンサスフレームワーク(Tse等、2002)と厳密に一致し、このコンセンサスの有用性を支持するものとして、本発明者らは、コンセンサスフレームワーク(con33)またはI21フレームワーク(I21R33)へのscFv33の突然変異によって、溶解性および結合を含めて、この機能が改善されることを見出した。最後に、scFv33がI21Rコンセンサスフレームワークに突然変異し、scFv33 CDR配列を保持するときには、ICAbは、NIH3T3細胞の活性化RASG12V形質転換を阻害する決定的な生物学的機能を果たすことができた。これは、おそらく、ICAbとRAS標的抗原の相互作用のためである(図2参照)。これは、哺乳動物細胞用の有効なICAbを産生する本発明者らの手法の汎用性を示している。
ドメイン内ジスルフィド架橋形成を含む本発明による抗体の要件
本発明者らは、抗活性化RAS抗体が、細胞内で機能する抗体(すなわち、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合し、そのような環境で可溶かつ安定である抗体)を形成するために、ドメイン内ジスルフィド形成は必要ないことを見出した。すなわち、Kabat命名法による22位および92位に通常存在するシステイン残基の少なくとも1個がもはや存在せず、または別の残基、例えば、セリンに突然変異した軽鎖と重鎖の両方を含む抗体分子(例えば、scFv)、あるいは単一ドメイン型のみを含む抗体分子(例えば、Idab)は、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる。
特に、抗体のフレームワーク領域がそれぞれ配列10および配列20である、軽鎖と重鎖の両方を含む抗体は、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる。
有利には、本発明の抗体は、抗体のフレームワーク領域が配列10および配列20である、あるいは抗体のフレームワーク領域が、(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個または複数がシステイン残基ではない以外は、配列10および20で示されるものと同じである、軽鎖と重鎖の両方を含む。
(ii)本発明による単一可変ドメインのみの抗体
本発明者らは、IAC手法を用いて、重鎖可変ドメインを含み軽鎖可変ドメインを含まない抗体(本明細書では重鎖可変ドメインのみの抗体と称する)が、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができることを見出した。また、本発明者らは、軽鎖可変ドメインのみを含む抗体が、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができることも見出した。
したがって、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域配列が、図3に示され、Con(配列1)およびI21R33(配列7)で示される群から選択され、CDRが、図3に示され、J48(配列2)および33(配列3)で示される群から選択される、重鎖可変ドメインを含み軽鎖可変ドメインを含まない抗体は、細胞内環境内で活性化RASと特異的に相互作用することができる。
さらに、軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域配列が、図3に示され、Con(配列11)およびI21R33(配列17)で示される群から選択され、CDRが、図3に示され、J48(配列12)および33(配列13)で示される群から選択される、軽鎖可変ドメインを含み重鎖可変ドメインを含まない抗体は、細胞内環境内で活性化RASと特異的に相互作用することができる。
本発明の上記態様によれば、単一ドメイン型抗体は、バルキング基に結合した単一重鎖可変ドメインを含むもの(重鎖可変ドメインIDab)であることが好ましい。
本発明によれば、RASに特異的に結合することができるIDabは、ドメイン内ジスルフィド架橋の存在を必要としない。
(a)ドメイン内ジスルフィド架橋形成に対する、本発明による重鎖可変ドメインのみを含む抗体の要件
本発明者らは、ドメインにおいてKabat命名法による22位および92位に通常存在するシステイン残基の少なくとも1個がもはや存在せず、または別の残基、例えば、セリンに突然変異した、1個または複数の重鎖可変ドメインのみを含む本発明による抗体分子が、細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができることを見出した。
本発明の上記態様によれば、重鎖のみの可変ドメイン抗体は、単一重鎖可変ドメインのみを含むもの(単一重鎖ドメイン抗体)であることが好ましい。
(iii)改変IAC手法を用いて単離される本発明の抗RAS IDab
本発明者らは、特性がすでに明らかな細胞内発現抗体コンセンサス骨格に基づいて、細胞内単一可変ドメイン(IDab)形式を用いた改変IAC手法を使用して、インビボでの直接スクリーニング用の多様な細胞内発現抗体ライブラリーを作製した。この手法を用いて、RASに特異的なIDabを単離した。これらのIDabは、20〜200nMの抗原結合親和性を有する。さらに、これらのIDabは、NIH3T3細胞のRAS依存性発癌性形質転換を阻害することが判明した。
細胞内抗体を使用する目的は、標的タンパク質にインビボで結合し、生物学的応答を誘発させることである。本発明者らは、本明細書において、単一ドメイン(この場合、VHのみであるが、VLのみでも同じ特性を持つべきである)が、優れた溶解性および安定性を示す有効な細胞内試薬とすることができ、したがって、インビボの抗原に特異的に高親和性で結合するのに理想的であることを示した。
いくつかの点を考慮すると、単一ドメインが、scFvおよび他の形態よりも細胞内発現抗体として注目される。scFvにおけるVHドメインとVLドメインの会合は弱く(Glockshuber等、1990)、解離型が支配的であり、細胞内での凝集およびタンパク質分解の標的となっている。VH−VLヘテロダイマーの別の形式は、ジスルフィドによって安定化されたFv断片(dsFv)である(Reiter & Pastan、1996)が、ジスルフィド結合が細胞内で形成されないので、細胞内発現抗体には良好な選択肢ではない。天然H鎖抗体は、軽鎖の非存在下でラクダおよび関連種において見られ、これらはインビトロでの結合および特異性に有効である(Muyldermans等、2001)の総説)。インビトロでのVHライブラリーは、(Davies & Riechmann、1995;Davies & Riechmann、1996;Reiter等、1999)に記載されており、VHドメインのVL界面がラクダVHドメインを模倣するように突然変異した(Davies & Riechmann、1995;Davies & Riechmann、1996;Muyldermans等、1994)。抗RAS VH IDabのVHフレームワークのラクダ化(Camelisation)(突然変異G44E、L45R、W47GまたはW47I(Davies & Riechmann、1995;Davies & Riechmann、1996))によって、CHOルシフェラーゼレポーターアッセイ(データ示さず)から判断して、抗原結合活性がインビボで破壊された。しかし、IACコンセンサス骨格に基づく、本明細書に記載するIDabは、細胞中で可溶性タンパク質のように良好に発現し、非関連抗原との非特異的相互作用は検出されなかった。これは、改変がIDab細胞内発現抗体の応用に有用ではない可能性があることを示唆している。反対に、既定の免疫グロブリンフレームワーク骨格を採用することは、これらが細胞内環境に調和した諸特性を示すことができるので、より有用である可能性が高い(Tanaka & Rabbitts、2003)。IACコンセンサスに基づくIDab(Tanaka & Rabbitts、2003;Tse等、2002)は、この機能の前提条件を満たすものである。したがって、単一ドメイン細胞内抗体は、細胞内での使用が可能な現在公知の最小抗体断片である。
堅牢で、迅速かつ簡単な手順が、有効な細胞内発現抗体を特定するのに必要であり、本発明者らのIAC手法によって、インビボ環境における直接スクリーニングの利点を利用して、適切に折りたたまれ、十分な安定性を有し、インビボで機能することができる細胞内発現抗体の単離が促進された。特別に設計された多様な細胞内発現抗体ライブラリーは、抗原特異的細胞内発現抗体を誘導するプロセスが大いに単純化され、成功の可能性がより高くなるので、この目的に有利である。scFv形式を用いたライブラリーは、6個の無秩序なCDRループが存在するVHとVLの組み合わせの複雑さによって制約されるので、単一ドメイン細胞内発現抗体形式は、これを実施する手段となる。単一ドメインライブラリー(3個のCDRループのみ)を用いた最大多様性はscFvよりも小さい。さらに、抗原と抗体の接触域は、従来のscFv細胞内発現抗体に接触できない小さな隠れたエピトープを標的にすることができる小さな区域にわたるので、単量体のドメインで構成されるIDabは、抗原との相互作用に有利な場合がある。これらの状況においては、IDabは、例えば、癌における染色体転座から生じ得る2個のタンパク質ドメインの融合によって形成された間隙を認識することができる。
CDR配列を含む細胞内抗体に、細胞内環境内で活性化RASに結合する能力を付与するCDR配列:
本発明者らは、図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;配列番号3、a、b、c;配列11a、b、c;配列12a、b、c、配列13a、b、c;配列番号21a、bおよびc;配列番号22a、bおよびc;配列番号23a、bおよびc;配列番号24a、bおよびc;配列番号25a、bおよびc;配列番号26a、bおよびc;配列番号27a、bおよびc;配列番号28a、bおよびc;配列番号29a、bおよびcで示される活性化RAS抗体のCDR配列によって、それぞれの重鎖または軽鎖可変ドメインフレームワーク領域アミノ酸配列に結合して細胞内で機能する抗体が産生されるときに、得られる抗体に、細胞内環境内で活性化RASに選択的に結合する能力が付与されることを見出した。
CDRは、図3に示すJ48および33からなる群から選択されるものであることが有利である。
RAS関連癌の治療における本発明による細胞内で機能する抗活性化RAS抗体の使用:
本発明者らは、IAC技術を用いて単離される抗RAS抗体が活性化RAS特異的であることを見出した。すなわち、それらは、アクチビエイト型(activiated)/活性型RASに選択的に結合し、非活性型RASには結合しない。
この知見によって、本発明による細胞内で機能する抗活性化RAS抗体をRAS関連癌の治療および細胞のRAS関連形質転換に使用することが可能になる。また、それによって、本発明による抗体を、RAS関連癌の治療の医薬品調製に使用することが可能になる。
癌治療に使用される本発明による抗活性化RAS抗体は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含むことができ、または重鎖可変ドメインのみを含み軽鎖可変ドメインを含まなくてもよく、例えば、Dabであってもよい。
(a)癌治療に使用される本発明の抗体の構造
フレームワーク配列:
本発明の抗体の重鎖可変ドメインは、図1に示されそれぞれConおよびI21R33で示され、配列1および7として示される群から選択される重鎖フレームワーク領域アミノ酸配列のいずれか1個を含む。また、癌治療に適切な本発明による抗活性化RAS抗体は、上記配列であって、22位および92位のシステインの一方または両方が、重鎖可変ドメインドメイン内ジスルフィド架橋を形成することができないように異なるアミノ酸で置換された配列のいずれか1個を含むことができる。
好ましい可変重鎖フレームワーク配列は、図3に示す配列1(コンセンサス)および配列7(I21R33)からなる群から選択されるものである。
また、本発明による活性化RAS特異抗体は、1個または複数の軽鎖可変ドメインを含むことができる。癌治療に使用される活性化RAS抗体のフレームワーク領域は図3に示され、図3それぞれCon、I21R33からなり、配列11および17として示される群から選択されるもののどちらかである。
好ましい可変軽鎖フレームワーク配列は、図3に示す配列1(コンセンサス)および配列(I21R33)からなる群から選択されるものである。
CDR配列:
本発明によれば、図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;配列番号3、a、b、c;配列11a、b、c;配列12a、b、c、配列13a、b、c;配列番号21a、bおよびc;配列番号22a、bおよびc;配列番号23a、bおよびc;配列番号24a、bおよびc;配列番号25a、bおよびc;配列番号26a、bおよびc;配列番号27a、bおよびc;配列番号28a、bおよびc;配列番号29a、bおよびcで示されるアミノ酸配列から選択され、そのそれぞれの重鎖または軽鎖可変ドメインフレームワーク領域アミノ酸配列に結合して細胞内で機能する抗体が産生されるときに、得られる抗体に、細胞内環境内で活性化RASに選択的に結合する能力を付与する可変ドメインCDR。
したがって、癌治療に使用される抗体は、上記群から選択される対応する(すなわち、軽鎖または重鎖)CDRセットと組み合わせられた上記フレームワーク配列を有することが好ましい。
癌治療に使用するのに好ましい抗体は、I21R33のフレームワーク配列、または図3に示すJ48もしくは33のCDR配列と組み合わせられたコンセンサス配列を有する抗体、特に、IDabまたはscFvである。そのような抗体は、重鎖可変ドメインのみであっても、軽鎖と重鎖の両方を含んでいてもよい。抗体は、本明細書で定義されるscFvまたはDabであることが最も有利である。
(b)細胞への抗体の送達
本発明による抗体を細胞内環境に導入するためには、抗体をコードする核酸を細胞に形質移入することが有利である。
抗体をコードする核酸をベクターに組み込んで発現させることができる。本明細書において使用する、ベクター(またはプラスミド)とは、異種DNAを細胞に導入してそれを発現させるのに使用される独立した要素である。このようなビヒクルの選択および使用は、当業者には周知である。多数のベクターが利用可能であり、適切なベクターは、ベクターの使用目的、ベクターに挿入する核酸のサイズ、およびそのベクターで形質転換させる宿主細胞に応じて選択される。各ベクターは、その機能、およびそれが適合する宿主細胞に応じて様々な成分を含む。このベクター要素としては、一般に、以下、すなわち、複製開始点、1個または複数のマーカー遺伝子、エンハンサー成分、プロモーター、転写終結配列およびシグナル配列の1個または複数が挙げられるが、これらだけに限定されない。
また、本発明による抗体をコードする核酸は、一般操作および核酸増幅目的でクローニングベクターに組み込むことができる。
発現ベクターもクローニングベクターも、一般に、選択された1個または複数の宿主細胞中でベクターを複製することができる核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいては、この配列は、宿主の染色体DNAとは無関係にベクターを複製することができるものであり、複製開始点または自律複製配列を含む。このような配列は、様々な細菌、酵母およびウィルスで周知である。プラスミドpBR322由来の複製開始点はほとんどのグラム陰性細菌に適切であり、2mプラスミド開始点は酵母に適切であり、様々なウィルス開始点(例えば、SV 40、ポリオーマ、アデノウイルス)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製開始点成分は、これらがCOS細胞など高レベルのDNA複製に適合性の哺乳動物細胞において使用されない限り、哺乳動物の発現ベクターには不要である。
ほとんどの発現ベクターはシャトルベクターであり、すなわち、少なくとも1種の生物において複製可能であるが、別の種の発現用生物に形質移入(すなわち、トランスフェクション)させることができる。例えば、あるベクターは大腸菌中でクローン化され、次いで、宿主細胞染色体とは無関係に複製することができないにしても、同じベクターが酵母または哺乳動物細胞に形質移入される。DNAは、宿主ゲノムに挿入することによって複製することもできる。しかし、ゲノムDNAの回収は、核酸を切断するのに制限酵素消化が必要になるので、外因的に複製したベクターの回収よりも複雑である。DNAはPCRによって増幅することができ、複製成分なしで宿主細胞に直接形質移入することができる。
発現およびクローニングベクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含むことができることが有利である。この遺伝子は、選択培地中で増殖する形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、この培地中で生存できない。一般の選択遺伝子は、抗生物質および他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与し、栄養要求の欠乏を相補し、または天然培地から利用不可能な極めて重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
酵母に適切な選択遺伝子マーカーに関しては、標識遺伝子の形質発現のために形質転換体の選択を容易にするあらゆる標識遺伝子を使用することができる。酵母の適切なマーカーは、例えば、抗生物質G418、ハイグロマイシンもしくはブレオマイシンに対する耐性を付与するマーカーであり、または栄養要求性酵母突然変異体における原栄養を提供し、例えば、URA3、LEU2、LYS2、TRP1またはHIS3遺伝子である。
ベクターの複製は大腸菌中で都合良く行われるので、大腸菌遺伝マーカーおよび大腸菌複製開始点が含まれることが有利である。これらは、pBR322、Bluescript(著作権)ベクターまたはpUCプラスミド、例えば、pUC18またはpUC19など、大腸菌複製開始点と、アンピシリンなどの抗生物質に対する耐性を付与する大腸菌遺伝マーカーとの両方を含む大腸菌プラスミドから得ることができる。
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR、メトトレキセート耐性)、チミジンキナーゼなどの所望の核酸、またはG418またはハイグロマイシンに対する耐性を付与する遺伝子を発現する細胞を特定することができるマーカーである。哺乳動物細胞形質転換体は、マーカーを有し発現する形質転換体のみが順応して生存する選択圧下に置かれる。DHFRまたはグルタミン合成酵素(GS)マーカーの場合には、選択圧を次第に増加させる条件下で形質転換体を培養することによって選択圧を強いることができ、それによって(その染色体組込み部位において)選択遺伝子と結合核酸の両方が増幅される。増幅は、増殖に極めて重要なタンパク質の産生を大いに必要とする遺伝子が、所望のタンパク質をコードすることができる密接に関連した遺伝子とともに、組換え細胞の染色体内で縦一列に反復されるプロセスである。多量の所望のタンパク質が、通常、こうして増幅されたDNAから合成される。
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、所望の核酸に作動可能に結合されるプロモーターを含む。このようなプロモーターは、誘導性でも構成的でもよい。プロモーターは、DNA源からプロモーターを取り出し、単離したプロモーター配列をベクターに挿入することによって、核酸に作動可能に結合される。天然プロモーター配列と多数の異種プロモーターの両方を、抗体をコードする核酸の直接増幅および/または発現に使用することができる。「作動可能に結合され」という用語は、記述した成分が意図したように機能できる関係にある近位を指す。コード配列に「作動可能に結合され」た制御配列は、制御配列に適合した条件下でコード配列が発現されるように連結される。
原核生物宿主への使用に適切なプロモーターとしては、例えば、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、tacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。これらのヌクレオチド配列は公表されており、それによって、当業者は、リンカーまたはアダプターを用いてそれらを所望の核酸に作動可能に結合させて、必要な制限部位を提供することができる。細菌系に使用されるプロモーターは、一般に、核酸に作動可能に結合されたShine−Dalgarno配列も含む。
好ましい発現ベクターは、細菌中で機能することができるphagex、T7などのバクテリオファージのプロモーターを含む細菌発現ベクターである。最も広く用いられている発現系の1つにおいては、融合タンパク質をコードする核酸を、T7 RNAポリメラーゼによってベクターから転写することができる(Studier等、Methods in Enzymol. 185;60〜89、1990)。pETベクターとともに使用される大腸菌BL21(DE3)宿主系統においては、T7 RNAポリメラーゼは、宿主細菌中でλ−溶原菌DE3から産生され、その発現は、IPTG誘導性lac UV5プロモーターの制御下にある。この系は、多数のタンパク質の過剰産生にうまく使用されてきた。あるいは、ポリメラーゼ遺伝子は、市販されているCE6ファージ(Novagen、Madison、USA)などのint−ファージによる感染によって、ラムダファージ上に導入することができる。他のベクターとしては、PLEX(Invitrogen、NL)などのラムダPLプロモーターを含むベクター、pTrcHisXpressTm(Invitrogen)、pTrc99(Pharmacia Biotech、SE)などのtrcプロモーターを含むベクター、pKK223−3(Pharmacia Biotech)、PMAL(new England Biolabs、MA、USA)などのtacプロモーターを含むベクターなどが挙げられる。
酵母宿主とともに使用される適切なプロモーター配列は、調節性でも構成的でもよく、好ましくは、高度に発現される酵母遺伝子、特に、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子に由来する。すなわち、TRP1遺伝子、ADHIまたはADHII遺伝子、酸性ホスファターゼ(PH05)遺伝子のプロモーター、a−もしくはα−因子をコードする酵母接合フェロモン遺伝子のプロモーター、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼまたはグルコキナーゼ遺伝子、サッカロミセス セレビシエGAL 4遺伝子、S.ポンベnmt 1遺伝子のプロモーターなどの糖分解酵素をコードする遺伝子由来のプロモーター、またはTATA結合タンパク質(TBP)遺伝子由来のプロモーターを使用することができる。また、1種類の酵母遺伝子の上流活性化配列(UAS)と、別の酵母遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーター要素とを含むハイブリッドプロモーター、例えば、酵母PH05遺伝子のUASと、酵母GAP遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーター要素とを含むハイブリッドプロモーター(PH05−GAPハイブリッドプロモーター)を使用することができる。適切な構成的PHO5プロモーターは、例えば、PH05遺伝子のヌクレオチド−173から始まりヌクレオチド−9で終わるPH05(−173)プロモーター要素などの上流調節性要素(upstream regulatory element)(UAS)を欠く短縮型酸性ホスファターゼPH05プロモーターである。
哺乳動物宿主中のベクターからの遺伝子転写は、ポリオーマウィルス、アデノウイルス、鶏痘ウィルス、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、サルウィルス40(SV40)などのウィルスのゲノム、アクチンプロモーターなどの異種哺乳動物のプロモーター、または極めて強力なプロモーター、例えば、リボソームタンパク質プロモーター、および免疫グロブリン配列に通常連結されるプロモーターから誘導されるプロモーターによって制御することができる。
高等真核生物による核酸の転写は、エンハンサー配列をベクター中に挿入することによって増加させることができる。エンハンサーは、向きや位置に比較的無関係である。多数のエンハンサー配列が、哺乳動物の遺伝子から知られている(例えば、エラスターゼおよびグロビン)。しかし、一般には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが使用される。例としては、複製開始点の後期SV40エンハンサー(100〜270bp)およびCMV初期プロモータエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、スプライスして、所望の核酸の5’位または3’位でベクターに入れることができるが、プロモーターから5’位に位置することが好ましい。
真核生物発現ベクターは、遺伝子座制御領域(LCR)を含むことが有利である。LCRは、特に、遺伝子が、ベクターの染色体組込みが起こる恒久的に形質移入された真核細胞系において発現される場合に重要である宿主細胞クロマチンに組み込まれた導入遺伝子の組込み部位に無関係な高レベルの発現を誘導することができる。
真核生物発現ベクターは、転写終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物またはウィルスのDNAまたはcDNAの5’および3’非翻訳領域から一般に入手可能である。これらの領域は、免疫グロブリンまたは標的をコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル化された断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
哺乳動物細胞中で核酸の一過的発現をもたらす発現ベクターは、本発明の実施に特に有用である。一過的発現は、通常、宿主細胞が発現ベクターの多数のコピーを蓄積し、次に、所望の遺伝子産物を高レベルで合成するように、宿主細胞において効率的に複製することができる発現ベクターを使用することを含む。
本発明によるベクターの構築には従来の連結技術を使用することができる。単離プラスミドまたはDNA断片は、切断され、仕立て上げ、必要なプラスミドを産生するのに望ましい形で再度連結される。必要であれば、構築されたプラスミドにおける正確な配列を確認する分析が、既知の方法で実施される。発現ベクターを構築し、転写物をインビトロで調製し、DNAを宿主細胞に導入し、遺伝子産物の発現および機能を評価する分析を実施するのに適切な方法は、当業者に既知である。遺伝子の有無、増幅および/または発現は、例えば、従来のサザンブロット法、mRNAの転写を定量するノーザンブロット法、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、あるいはin situハイブリダイゼーション法によって、本明細書の配列に基づくことができる適切に標識されたプローブを用いて、試料中で直接測定することができる。当業者は、必要であれば、これらの方法を改良する仕方を容易に考えることができる。
抗体は、細胞膜と融合することができるリポソームなどの小胞を用いた微量注入または送達によって、細胞に直接導入することができる。ウィルス融合誘導ペプチドは、細胞の細胞質への膜融合および送達を促進するために使用することが有利である。
免疫グロブリンは、転位(translocation)活性をもたらすようなタンパク質由来のドメインまたは配列に融合または結合することが好ましい。好ましい転位ドメインおよび配列としては、HIV−1−転写活性促進タンパク質(Tat)、ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質、単純ヘルペス−1ウィルスVP22タンパク質に由来するドメインおよび配列などが挙げられる。この手段によって、免疫グロブリンは、細胞の近傍に導入されたときに、細胞またはその核に入ることができる。
外因的に添加されたHIV−1−トランス活性化タンパク質(Tat)は、形質膜を通って転位し、核に到達してウイルスゲノムの転写を促進する。転位活性は、HIV−Tatのアミノ酸37〜72(Fawell等.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91、664〜668)、37〜62(Anderson等.、1993、Biochem. Biophys. Res. Commun. 194、876〜884)および(基本配列RKKRRQRRRを有する)49〜58において明らかにされている。Vives等 (1997)、J Biol Chem 272、16010〜7は、転位、核の局在化および細胞の遺伝子のトランス活性化に重要と考えられるアミノ酸48〜60(CGRKKRRQRRRPPQC)からなる配列を同定した。β−ガラクトシダーゼおよびHIV−TATタンパク質形質導入ドメインからなる融合タンパク質の腹腔内注射によって、生物活性融合タンパク質がマウスの全組織に送達される(Schwarze等、1999、Science 285、1569〜72)。
ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質の第3ヘリックスも、類似の諸特性を有することが判明した(Prochiantz, A.、1999、Ann N Y Acad Sci、886、172〜9の総説)。アンテナペディアにおいて転位をもたらすドメインは、配列RQIKIWFQNRRMKWKKを有する塩基性アミノ酸に富む16アミノ酸長ペプチドに局在化している(Derossi等、1994、J Biol Chem、269、10444〜50)。このペプチドは、生物活性物質を培養細胞の細胞質および核に指向させるのに使用された(Theodore等、1995、J. Neurosci 15、7158〜7167)。アンテナペディアホメオドメインの第3ヘリックスの細胞インターナリゼーションは、受容体に無関係であると考えられ、転位プロセスには、膜リン脂質との直接の相互作用含まれることが示唆された(Derossi等、1996、J Biol Chem、271、18188〜93)。
単純ヘルペスウイルスのVP22外被タンパク質は細胞間の輸送が可能であり、細胞の亜集団において発現されるVP22タンパク質は、集団中の他の細胞に伝播する(ElliotおよびO'Hare、1997、Cell 88、223〜33)。GFP(ElliottおよびO'Hare、1999、Gene Ther 6、149〜51)、チミジンキナーゼタンパク質(Dilber等、1999、Gene Ther 6、12〜21)またはp53(Phelan等、1998、Nat Biotechnol 16、440〜3)とVP22からなる融合タンパク質は、このようにして細胞にターゲティングされる。
核および/または形質膜を通して転位置することができる特定のドメインまたは配列タンパク質を、突然変異誘発または欠失研究によって同定することができる。あるいは、候補配列を有する合成ペプチドまたは発現ペプチドをレポーターに連結させて、転位を分析することができる。例えば、合成ペプチドは、フルオレセインと結合することができ、蛍光顕微鏡を用いてVives等(1997)、J Biol Chem 272、16010〜7に記載の方法によって転位をモニターすることができる。あるいは、緑色蛍光タンパク質をレポーターとして使用することができる(Phelan等、1998、Nat Biotechnol 16、440〜3)。
上述したドメインもしくは配列、または転位活性を有することが明らかにされたドメインもしくは配列のいずれかを使用して、免疫グロブリンを細胞の細胞質または核に誘導することができる。ペネトラチンとしても知られる上記アンテナペディアペプチドは、HIV Tat同様好ましい。転位ペプチドは、本発明による単一ドメイン免疫グロブリンのN末端またはC末端に融合することができる。N末端融合が好ましい。
TLMペプチドも細胞への抗体の送達に役立つ。TLMペプチドは、HBVのPre−S2ポリペプチドから誘導される。Oess S、Hildt E Gene Ther 2000 May 7:750〜8を参照されたい。抗DNA抗体技術も役立つ。抗DNA抗体ペプチド技術は、Alexandre Avrameas等、PNAS val 95、pp 5601〜5606、May 1998;Therese Ternynck等、Journal of Autoimmunity (1998) 11、511〜521;およびBioconjugate Chemistry (1999)、vol 10 Number 1、pp 87〜93に記載されている。
本発明の抗体のさらに別の使用:
本発明の抗体分子、好ましくはscFv分子は、インビボでの治療用途および予防用途、インビトロおよびインビボでの診断用途、インビトロでのアッセイ用途および試薬用途、機能ゲノミクス用途などに使用することができる。
本発明による抗体および組成物を治療および予防に使用するには、ヒトなどのレシピエント哺乳動物に上記のものを投与する必要がある。それらは、哺乳動物の細胞内環境へ投与することを含むことが好ましい。
少なくとも90〜95%均一である実質的に純粋な抗体は哺乳動物への投与に好ましく、98〜99%以上の均一性が医薬品用途、特に、哺乳動物がヒトであるときには最も好ましい。免疫グロブリン分子は、上述したように部分的または均一に精製した後に、診断または(体外を含めて)治療に、あるいは当業者に既知の方法を用いてアッセイ手順を開発し実施するのに使用することができる。
本願においては、「予防」という用語は、疾患の誘発前に防御組成物を投与することを含む。「抑制」とは、誘発事象後、疾患が臨床的に現れるまでに、組成物を投与することを意味する。「治療」には、疾患の症状が現れた後に防御組成物を投与することを含む。
選択された本発明の抗体分子は、活性化RASタンパク質機能をインビボで撹乱し、したがって、一般に、癌を予防し、抑制し、または治療するのに使用される。この手法を用いて、RAS腫瘍性タンパク質を有する細胞を特異的に死滅させ、正常細胞を残すことができる。
選択された本発明の抗体の、疾患予防または治療における有効性をスクリーニングするのに使用することができる動物モデル系が利用可能である。適切な癌モデルは当業者に既知である。
一般に、選択された本発明の抗体は、薬理学的に適切な担体とともに、精製された形で利用される。一般に、これらの担体としては、水溶液またはアルコール/水溶液、乳濁液、懸濁液、生理食塩水および/または緩衝化媒質を含むものなどが挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムおよび乳酸添加リンゲルなどが挙げられる。適切な生理的に許容されるアジュバントは、ポリペプチド複合体の懸濁液を保つのに必要な場合には、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギネートなどの増粘剤から選択することができる。
静脈内ビヒクルとしては、リンゲルデキストロースを主成分とするものなどの、体液および栄養素補充物、電解質補充物などが挙げられる。保存剤、および抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、不活性ガスなどの他の添加剤も添加することができる(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版)。
選択された本発明の抗体は、分離投与組成物として、または他の薬剤とともに使用することができる。これらには、シクロスポリン、メトトレキセート、アドリアマイシンまたはシスプラチン、免疫毒素などの様々な免疫療法薬剤が含まれる。薬剤組成物としては、本発明の抗体または本発明の抗体の組み合わせ物とさえ組み合わされた様々な細胞障害性薬剤または他の薬剤の「カクテル」などが挙げられる。
本発明による薬剤組成物の投与経路は、当業者に一般に知られた経路のいずれかとすることができる。免疫療法を含む、ただしこれに限定されない療法の場合には、選択された本発明の抗体を標準技術に従って患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路を含めて、または、適切には、カテーテルによる直接注入を含めて、任意の適切な方法によることができる。投与量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の同時投与、禁忌(counterindication)、ならびに臨床家が考慮すべき他のパラメータによって決まる。
選択された本発明の抗体は、凍結乾燥して保存し、使用前に適切な担体で再構成することができる。既知の凍結乾燥および再構成技術を使用することができる。凍結乾燥および再構成によって機能活性の低下度が変わる可能性があり、それを補償するために使用レベルを上方に調整しなければならないことがあることを当業者は理解されたい。
選択された本発明の抗体またはそのカクテルを含む組成物を、予防処置および/または治療処置のために投与することができる。ある治療上の適用例においては、選択された細胞の集団の少なくともある程度の阻害、抑制、モジュレーション、死滅または他の何らかの測定可能なパラメータを達成するのに適切な量を「治療有効量」と定義する。この投与量を得るのに必要な量は、疾患の重篤度、および患者自身の免疫系の一般的な状態に依存するが、一般に、体重1キログラム当たり選択される免疫グロブリン0.005〜5.0mgであり、0.05〜2.0mg/kg/回の用量がより一般的に使用される。予防的に適用する場合には、選択される免疫グロブリン分子またはそのカクテルを含む組成物を、類似の用量、またはわずかに少ない用量で投与することもできる。
1種類または複数の選択された本発明の抗体分子を含む組成物を、哺乳動物における選択標的細胞集団の改変、不活性化、死滅または排除に役立つ予防および治療のために利用することができる。また、本明細書に記載するポリペプチドの選択されたレパートリーは、細胞の不均一な集まりから標的細胞集団を、選択的に死滅させ、枯渇させ、または有効に排除するために、体外またはインビトロで使用することができる。哺乳動物から得られる血液を、選択された抗体、細胞表面受容体またはその結合タンパク質と体外で混合し、それによって望ましくない細胞を死滅させ、または血液から除去して、標準技術に従って哺乳動物に戻すことができる。
本発明を、以下の実施例において例示のためだけにさらに説明する。
実施例
材料および方法−IAC手法
Ras抗原
組換え活性化HRAS(G12V;残基1〜166)を、pET11a(Novagen)に基づく発現プラスミドを含む細菌細胞中で発現させ、(Pacold等、2000)に記載されたイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過によって精製した。活性型RAS抗原を調製するために、精製HRASG12Vタンパク質3mgに、GTPの非加水分解性アナログである5’−グアニリルイミド−二リン酸(GppNp、Sigma)2mMを、アルカリホスファターゼ手順(Herrmann等、1996)によって添加した。このGppNp結合HRASG12Vを抗原として全体を通して使用した。
インビトロscFvファージライブラリースクリーニングおよび特異的cFv−VP16酵母ライブラリーの調製
3種類の異なるscFvライブラリー(de Wildt等、2000;Sheets等、1998)のIACスクリーニングを、(Tse等、2000;Tse等、2002)に記載されたものにわずかな改変を加えて実施した(Laboratory of Molecular Biologyウェブサイトhttp://mrc-lmb.cam.ac.uk内のリンクも参照されたい)。概要を述べると、第1のパンニングステップを使用したファージAbライブラリースクリーニングを、イムノチューブに結合した50μg/ml HRASG12V抗原の1mM MgCl含有PBS溶液中で実施した。抗RAS結合ファージを回収し、大腸菌TG1中で増幅させた。scFv DNA断片をpVP16酵母ベクター中にサブクローニングし、4.13×10個のクローンを酵母スクリーニングに使用した。末端切断HRASG12V cDNAをpBTM116ベクターのEcoR1−BamH1部位にクローン化してRASバイトを調製した。pBTM116−RASG12Vバイトベクター(tryp+)を、酢酸リチウム/ポリエチレングリコール法(Tse等、2000)を用いてサッカロミセス セレビシエL40に形質移入し、Trp−プレート上で増殖したコロニーを選択した。LexA−RAS融合タンパク質の発現を、抗pan RAS(Ab−3、Oncogene Research Product)を用いたウェスタンブロットによって確認した。ライブラリースクリーニングの場合には、酵母scFv−VP16ライブラリーDNA 100μgを、抗原を安定に発現するL40クローンに形質転換した。陽性コロニーをHisプロトトロピーのために選択し、フィルターアッセイによるβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性よって確認した。単離した個々のクローンについて、偽陽性クローンを除去し、His非依存性増殖およびβ−gal活性化を再検査することによって真陽性クローンを確認した。
インビトロアッセイ用scFvの精製
scFvのペリプラスム細菌発現は(Tse等、2000)に記載されている。scFvをpHEN2ベクター(マップについてはwww.mrc-cpe.cam.ac.ukを参照されたい)にクローン化し、大腸菌HB2151細胞の1リットル培養物中で1mM ITPGを用いて30℃で2時間発現させた。細胞を収集し、ペリプラスムタンパク質をTES緩衝剤(Tris−HCl(pH7.5)、EDTA、スクロース)で抽出した。ペリプラスムタンパク質を、10mMイミダゾールを含有するPBS 2.5リットルで終夜透析した。ペリプラスムscFvの固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーを、Ni−NTAアガロース(QIAGEN)4mlを用いて4℃で1時間実施した。アガロースを、20mMイミダゾールを含むPBS 20mlで4回洗浄した。ポリヒスチジン標識scFvを250mMイミダゾールのPBS溶液4mlで溶出させた。溶出物を、10%グリセリンを含む20mM Tris−HCl(pH7.5)2.5リットルで4℃で終夜透析した。精製scFvを、Centricon濃縮器(YM−10、Amicon)を用いて1〜5mg/mlに濃縮し、その一定分量を−70℃で保存した。精製scFvのタンパク質濃度をBio−Radタンパク質アッセイキット(Bio−Rad)によって測定した。
ELISAアッセイ
ELISAプレートウェルに、精製HRASG12V−GppNp抗原100μl(4μg/ml、約200nM)のPBS溶液を終夜4℃でコートした。3%ウシ血清アルブミン(BSA)−PBSを用いて室温で2時間ウェルをブロックした。それぞれの精製scFv(約450ng)を1%BSA−PBSで90μlに希釈し、37℃で1時間結合させた。1%BSA−PBSで1:2000に希釈された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ポリヒスチジン(HIS−1、Sigma)モノクローナル抗体を、0.1%Tween−20(PBST)を含有するPBSで3回洗浄した後に、37℃で1時間結合させた。PBSTで6回洗浄した後に、3,3’,5,5−テトラメチルベンジジン(TMB)液体基質系を用いて製造者の指示に従って、HRP活性を可視化した。0.5M硫酸塩を用いて反応を停止し、マイクロタイタープレートリーダー(450〜650nmフィルター)を用いてデータを収集した。抗原に対するscFvの特異性を検証するために、競合ELISAアッセイも実施した。抗原被覆ELISAウェルに添加する前に、scFvをHRASG12V−GppNp抗原(8μg/ml)とともに室温で30分間プレインキュベートした。すべての測定を2回実施した。
表面プラズモン共鳴分析
BIAcore 2000(Pharmacia Biosensor)を使用して、scFvと抗原の結合動力学を測定した。抗原をCM5センサーチップに固定化するために、EDC/NHS(N−エチル−N−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/N−ヒドロキシコハク酸イミド)混合物40μlを流量10μl/分で流して、センサーチップを初めに活性化した。10mM 酢酸ナトリウム中の精製HRASG12V−GppNp 100μg/ml、pH3.5を注入し、約1500RUまで固定化した。固定化後、エタノールアミン−HCl 40μlでチップを不活性化した。精製scFv(10〜500nM)を、流量20μl/分で25℃で(流出緩衝剤HBS−EP(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/vポリソルベート20)+2mM MgCl)固定化HRASG12V−GppNpを含むチップまたは抗原を含まないチップの2つのチャネルに充填し、scFvの結合親和性を求めた。各測定を2回実施した。scFvを結合させた後の抗原が固定化されたセンサーチップ表面を、出発ベースラインが得られるまで10mM HClで濯いで再生させた。動力学速度定数konおよびkoffを、製造者によって提供されたBIAevaluation 2.1ソフトウエアによって評価した。Kd値をkoffおよびkon速度定数から計算した(Kd=koff/kon)。
哺乳動物のインビボ抗原−抗体相互作用アッセイ
scFvを、pEF−BOS−VP16発現ベクターのSfi1およびNot1部位にクローン化した(原稿準備中)。HRASG12V cDNA(コドン1〜166)をpM1ベクターのEcoR1/BamH1部位にサブクローニングすることによって、Gal4 DBDとインフレームでRASG12Vを発現するHRAS発現プラスミド(pM1−RASG12V)を作製した(Sadowski等、1992)。陽性対照または陰性対照として使用したバイトpM1/β−galおよびプレイpEF−BOS−VP16/R4(抗β−gal scFv)は、(TseおよびRabbitts、2000)に記載されている。COS7細胞に、pG5−Lucレポータープラスミド 500ng(de Wet等、1987)、pRL−CMV 50ng(Promega)、pEF−BOS−VP16/scFv 500ngおよびpM1/抗原バイト500ngを、LipofectAMINE(商標)形質移入試薬8μl(Invitrogen、製造者の指示に従って)とともに一過的に同時形質移入した。形質移入から48時間後に、細胞をPBSで1回洗浄し、1X受動溶解緩衝剤(passive lysis buffer)500μl(Promega)に室温で15分間緩やかに振とうさせながら溶解させた。細胞可溶化物20μlを、Dual−Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて照度計で分析した。形質移入効率をウミシイタケルシフェラーゼ活性で正規化した。ルシフェラーゼ活性倍率を、ベクターのみを含む試料の正規化ホタルルシフェラーゼ活性を割り算して計算した。データは2回実施された2つの実験のものである。
免疫蛍光アッセイ
scFv DNA断片を、発現scFvのN末端の核局在化シグナル(nls)およびC末端のmycタグとともに、pEF−nuc−myc(Invitrogen)のNcoI−NotI部位にクローン化した。RAS抗原を発現させるために、完全長RASG12V cDNAを、pHM6ベクター(Boehringer Mannheim)のKpn1−EcoR1部位にクローン化して、N末端のHAタグおよびC末端のHis6タグを有するRASをコードした。形質移入前日に、1.2×10個のCOS7細胞をLab−Tek II Camberスライド(Nalge Nunc International)上に播いた。プラスミドにLipofectamineを用いて同時形質移入し、形質移入から48時間後に、細胞をPBSで2回洗浄し、0.5%Triton XのPBS溶液を透過し、4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液で固定した。ともに1:100に希釈した抗c−mycマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz;9E10)および抗HAウサギポリクローナル血清(Santa Cruz;sc−805)で細胞を染色した。二次抗体のフルオレセイン結合ヒツジ抗マウス抗体およびCy3結合ヤギ抗ウサギ抗体(Amersham Pharmacia Biotech(APB))を1:200に希釈して染色に使用した。PBSで数回洗浄した後に、スライドにカバーガラスを載せ、Bio−Radiance共焦点顕微鏡(Bio−Rad)を用いて染色パターンを検討した。
ウェスタンブロット分析
哺乳動物細胞におけるscFvの発現レベルおよび溶解性を評価するために、scFvまたはscFv−VP16融合タンパク質をCOS7細胞中で発現させた。scFv発現の場合には、scFv DNA断片をpEF−myc−cyto発現ベクター(Invitrogen)のNco1/Not1部位にクローン化した。形質移入前日に、COS7細胞を6ウェルの培養プレート(Nunc)に約2×10個/ウェルで播いた。pEF−myc−cyto−scFvまたはpEF−BOS−scFv−VP16 1μgを、LipofectAMINE 8μlを用いて一過的に形質移入した。形質移入から48時間後に、細胞をPBSで1回洗浄し、氷冷抽出緩衝剤(10mM HEPES、pH7.6、250mM NaCl、5mM EDTA、0.5%NP−40、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、0.1mg/mlアプロチニン、1mMフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF))に30分間溶解し、4℃、13,000rpmで10分間遠心分離した。SDS−PAGE、続いて(scFv検出用)抗myc(9E10)モノクローナル抗体または(scFv−VP16AD融合用)抗VP16(14−5、Santa−Cruz)モノクローナル抗体を一次抗体、HRP結合ウサギ抗マウスIgG抗体(APB)を二次抗体として用いたウェスタンブロットによって、ペレット(「不溶性」画分)および上清(「可溶性」画分)を分析した。ブロットを、高感度化学発光(ECL)検出キット(ABP)によって可視化した。
抗RAS scFv用フレームワーク残基の突然変異
抗RAS scFv33を含むpEF−BOS−VP16を最初のテンプレートに使用し、全体を通してPfu DNAポリメラーゼを使用した。一次テンプレートとしてscFv33の逐次部位特異的突然変異誘発を用い、フットプリント突然変異誘発を用いて、抗RAS scFvI21のFRおよび抗RAS scFv33のCDRを含む構築体I21R33(図3に示す配列)を構築した(原稿準備中)。I21R33(VHC22S;C92S)、con33およびI21R33VHI21VL(図3)も、適切なオリゴヌクレオチドを用いてフットプリント突然変異誘発によるI21R33の突然変異によって構築した。すべてのscFv構築体をSfi1またはNco1およびNot1で消化し、(インビボ抗原抗体相互作用アッセイ用)pEF−BOS−VP16および(哺乳動物細胞におけるscFv発現用)pEF−myc−cytoベクターにサブクローン化した。すべての突然変異scFv構築体をDNA配列決定によって確認した。
NIH3T3細胞における形質転換アッセイ
RASタンパク質は、細胞の形質膜に局在化する。したがって、scFvを細胞膜に局在化させるために、本発明者らはpEF−Membベクター(Invitrogen)を使用した。HRASのカルボキシ末端の20個のアミノ酸残基をpEF−myc−cytoベクターのNot1−Xba1部位に導入することによって、scFv発現プラスミドを構築した。この発現ベクターはまた、FLAGタグペプチド(MDYKDDDDK)および別のSfi1クローニング部位をpEF−FLAG−Membと呼ばれるpEF−Membベクターの平滑末端Sfi1部位に導入した。scFvをpEF−FLAG−MembのSfi1−Not1にサブクローニングした。RASG12Vの発現の場合には、HRASG12V突然変異体cDNAを発現ベクターpZIPneoSV(X)REFにサブクローニングした。低継代のNIH3T3細胞クローンD4(Chris Marshall博士から恵与された。)を、形質移入前日に、6ウェルのプレートに2×10細胞/ウェルで播いた。形質移入には、LipofectAMINE(商標)12μlを使用して、各pEF−FLAG−Memb−scFv 2μg+pZIPneoSV(X)−HRASG12Vベクター100ngを使用した。2日後に、細胞を10cmプレートに移し、5%ドナー仔ウシ血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDME培地(Invitrogen)中で2週間増殖させた。最後に、プレートをクリスタルバイオレットで染色し、増殖巣を数えた。
RASタンパク質をインビボで認識する特異的細胞内抗体断片の単離
本発明者らは、細胞内抗体捕捉技術(Visintin等、1999)を抗RAS ICAbの単離に応用した。逐次ステップは、特異的細胞内抗体を単離するために、精製RASタンパク質を用いた初期インビトロファージscFvライブラリーパンニングおよびインビボ抗原−抗体2ハイブリッド相互作用スクリーニングを含む。インビトロファージAbスクリーニングの場合には、5’−グアニリルイミド−二リン酸(GppNp、Sigma、GTPの非加水分解性アナログ)に結合した精製カルボキシル末端切断型ヒトHa−RASG12Vを抗原として使用した。1ラウンドのインビトロパンニング後に、約1.18×10個の抗原結合ファージを2.7X1013個の初期ファージから回収した(図1)。サブライブラリーをファージミドDNAとして調製し、酵母VP16転写活性化ドメインベクターにクローン化して、抗RAS scFv−VP16−ADライブラリー(約4×10個のクローン)を作製した。この酵母サブライブラリーを、RAS−G12Vに融合したLexA−DBDを含む融合タンパク質バイトを発現する酵母菌株(hisおよびβ−galレポーター遺伝子を有するL40)に形質移入した。合計約8.45×10個の酵母コロニーをスクリーニングした(図1)。428個のコロニーはヒスチジンの非存在下で増殖し、これらのクローンもβ−galを活性化させた。scFv−VP16−ADプラスミドをヒスチジン非依存性β−gal陽性クローンから単離し、それらのDNA制限パターンによって分類した。90%を超えるこれらのscFv−VP16−ADプラスミドが同一のDNAフィンガープリントパターンを有し、20個の配列が決定され、同一のDNA配列を有することが判明した。異なるDNAフィンガープリントパターンを有するscFvに、新しい酵母中のpBTM/RASG12Vバイトを同時形質転換し、ヒスチジン非依存性増殖およびβ−gal活性化について分析した。33、J48およびI21で示された3種類の抗RAS scFvをこうして特定した(図1)。酵母中のRASに対するこれらのscFvの結合特異性を、(空のpBTM116ベクターから作製された)LexA DBDおよび非関連抗原(β−ガラクトシダーゼ)との相互作用の有無によってさらに検証した(データ示さず)。
抗RAS ICAbの効力を、哺乳動物細胞レポーターアッセイおよびインビボ抗原コロケーションアッセイによって確認した(図2)。使用した哺乳動物細胞アッセイは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子からのルシフェラーゼ産生であった。3種類のscFvを、伸長因子−1aプロモーター(MizushimaおよびNagata、1990)およびVP16転写活性化ドメイン(AD)を有する哺乳動物発現ベクターpEF−BOS−VP16にシャトル(shuttle)させた。scFvを、そのN末端側で、VP16セグメントにインフレームにクローン化した(Triezenberg等、1988)。RASG12V抗原を、抗原(pM−RASG12V)とのN末端融合体としてGAL4−DBDを含むpMベクター(Sadowski等、1992)にクローン化した。pEFBOSVP16−scFvおよびpM−RASG12Vを、ルシフェラーゼレポータープラスミドとともにCOS7細胞に同時形質移入した。scFv33またはJ48 ICAb−VP16融合体がバイト抗原RASG12Vとともに発現されると10倍を超える活性化が認められたが(図2A)、非関連抗原β−ガラクトシダーゼでは認められなかった。しかし、酵母抗RASICAb I21がRASG12Vバイトと同時発現されたときには、活性化が認められなかった(図2A)。他の哺乳動物細胞系、すなわち、HelaおよびCHO細胞においても類似の結果が得られた。酵母とは反対に、この哺乳動物細胞アッセイにおいてICAb I21が抗原と検出可能な程度に相互作用しなかったのは、単に、不十分な親和性を持つか、または酵母アッセイよりも哺乳動物のアッセイが鈍感であることを反映しているのかもしれないし、おそらくは形質移入効率、内因性転写因子に接近する必要があるレポーター遺伝子活性化、および/または抗原もしくは抗体の発現レベルなどの要因のためかもしれない。
lexA−DBDを発現する酵母系およびGal4−DBDを発現する哺乳動物系におけるscFv33およびJ48の観察された相互作用は、scFvが、バイトにおけるRASとDBDの融合による人工的なものではなく、RAS抗原本来のエピトープと相互作用することの良好な指標になる。これの別の証拠は、本来のRAS抗原が、核局在化シグナル(nls)が付加するscFvとともに発現されるコロケーションアッセイから得られた。COS7細胞に、HAエピトープタグを有するRAS発現ベクターとmycエピトープタグを有するscFvをコードするscFv発現ベクターとを同時形質移入した。52時間後に、RAS抗原が抗HAタグAbによって検出され、scFvが抗mycタグAbによって検出された(図2B)。RAS抗原が単独で、または非関連ICAb(scFvR4(Martineau等、1998))とともに発現されたときには、抗原が細胞質中で検出され、抗体が核中で検出されたのに対し(図2B、下図)、抗原が、nlsを有する抗RAS ICAb 33とともに同時発現された場合には、RAS抗原およびscFvの核中でのコロケーションが認められた。これらは、抗RAS ICAb 33が十分な発現、およびRAS抗原にインビボで結合する親和性を有し、細胞内での再配置をもたらすことを意味する(抗RAS scFv J48を用いても類似の結果が得られた。データ示さず)。
抗RAS scFvの配列および細菌発現
抗RAS scFv(33、J48およびI21)の配列を決定し、誘導タンパク質配列を整列させた(図3)。全3種類のscFvは、JH5に連結されたVH3サブグループおよびVk1サブグループに属する。Sheets等のライブラリー(Sheets等、1998)からのみ単離された抗BCRおよび抗ABL scFv(Tse等、2002)についての本発明者らの以前のデータも、VH3およびVκ1サブグループに属する。本発明者らの以前の研究において、本発明者らは、抗BCRと抗ABL scFvを比較することによって誘導されたコンセンサスフレームワークを定義することができ(Tse等、2002)、類似の研究が抗TAU ICAbsを用いてなされた(Visintin等、2002)。本発明者らは、VH3およびVκ1からなるフレームワークが、細胞内のscFv機能、およびその上に他のICAbを設計するコンセンサスセット基本配列に極めて適していると結論した。本明細書の抗RAS ICAbは、この概念を改善するのに役立つ。
3種類の抗RAS scFvの発現レベルが、細菌ペリプラスム発現によって最初に検討された。これらのscFvを、scFvの5’にPelBリーダー配列を有するpHEN2にサブクローニングし、可溶性scFvタンパク質をペリプラスムで発現させた(マップについては、www.mrc-cpe.cam.ac.uk参照)。ペリプラスムscFv抽出物を固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製し、タンパク質試料をSDS−PAGEによって分離させた(図4)。scFvI21は、ペリプラスムに30℃で分泌されると主に可溶性画分中に蓄積し、ペリプラスム発現収率は約3mg/リットル培養物であった。他方の抗RAS scFv(33およびJ48)の発現は0.1mg/リットル未満であった。抗RAS scFv配列とコンセンサスICAb配列(図3)の比較から、33およびJ48のVHフレームワーク残基中に4つの違いが明らかになり、その1つはVH FR1の7位である。この残基は、この領域のコンホメーションに影響を及ぼす3個のうちの1個であり(Jung等、2001)、したがって、ICAb 33およびJ48溶解性に影響を及ぼす可能性がある。I21は、VH FR1 6、7および10位のコンセンサスに一致する。
抗RAS scFvの生化学的および生物物理学的特徴づけ
本発明者らの研究において単離されたICAbの諸特性も、2種類のインビトロアッセイによって明らかになった。scFvとRAS抗原の相互作用を、細菌中で生成された精製scFvを用いて、ELISAおよびバイオセンサーアッセイによって検討した。RASG12V−GppNpを抗原としてELISAプレート上にコートし、精製scFvに暴露し、結合したscFvをHRP結合抗Hisタグ抗体を用いて検出した(図5)。全3種類の抗RAS scFvは、BSAよりもRAS抗原に対してかなりのシグナルを発生し、相互作用特異性の尺度としてRASG12V抗原とともにプレインキュベーションするとシグナルが抑制された。これらの結果によれば、これらの抗RAS scFvが天然型のRASG12V−GppNpとのみ相互作用し得ることがさらに示唆される。
結合抗RAS scFvの抗原に対する親和性を、BIAcoreにおける結合動力学によって測定した(図6)。scFv33およびJ48のKdは、1.39±1.31nM、3.63±0.15nMと決定された(図6B)。これらのscFvの親和性の差は、VHドメイン中のCDR1配列の差を示している可能性がある。scFvI21のKdは2.16±0.25μMであり、scFv33またはJ48よりも3桁低い。scFvI21のマイクロモルの範囲のこの低い親和性は、酵母インビボ抗原−抗体相互作用アッセイにおけるその弱いβ−galレポーター遺伝子活性化、および哺乳動物細胞アッセイにおける検出可能な結合の欠如と一致する。
scFvフレームワーク配列の改変による抗RAS scFvの機能改善
細菌細胞および哺乳動物細胞において発現されたときには、scFvの安定性と収率に優れた定量相関があり、scFvI21は、細菌(図4)および哺乳動物細胞質(図7)において他の2種類の抗RAS scFvよりも高い発現収率を示す。COS7発現において試験されたすべてのscFvは、かなりの量の「不溶性」scFvを示したが(図7B)、最適発現レベルはscFvI21で明らかであった(図7A)。抗RAS scFv33の溶解性および安定性がインビボおよびインビトロで改善されるかどうかを、scFv33とscFvI21の13アミノ酸差の一部または全部を含むようにscFv33のフレームワークを突然変異させることによって評価した(図3)。scFv33のVH FR領域を突然変異させてI21と同じにすると(FR3末端にlysではなくargを含むが)、優れたインビボでの溶解性が認められた(図7A、I21R−33)。また、鎖内ジスルフィド結合に必要な両方のCys残基をSerに突然変異させても(図7、scFv I21R−33(VHC22S;C92S))、可溶性発現レベルに対するほんの小さな効果しか得られなかった。
scFvの様々な突然変異体のインビボでの相互作用を、COS7細胞中でルシフェラーゼレポーターアッセイによって評価した(図8)。図8Aに、scFv33フレームワークの様々な改変形態の発現およびルシフェラーゼレポーターデータを、scFv33自体またはscFvR4(抗β−gal陰性対照、(Martineau等、1998))、および有意なルシフェラーゼ活性をもたらさないscFvI21のレベルと比較して示す。このscFv−VP16の発現は、最初のscFv 33よりも増加したが(図8A)、1つの注目すべきscFv33の突然変異体は、レポーター応答を完全に排除した(図8A)Arg94Lys(Kabat等による番号付けによる(Kabat等.、1991)、IMGT、Lefranc等による106位(LefrancおよびLefranc、2001))である。94位のアルギニン残基は、抗原結合部位(重鎖のCDR3)に極めて近く、RAS抗原との相互作用に直接関与し得る。あるいは、この位置の残基は、CDR3ループによってその正に帯電した側鎖を介してH101位のアスパラギン酸のカルボキシル基と表面架橋を形成することができ(Morea等、1998)、(ArgからLysへの)置換は、CDR3の重要なコンホメーションに影響を及ぼす可能性がある。他方の突然変異体scFv33は、一般に、ルシフェラーゼレポーターアッセイから判断して、RAS抗原との結合能力を維持した(図8A)。興味深いことに、3種類の突然変異体、VH(A74S+S77T)、VL(I84T)およびVH(Q1E+V5L+A7S+S28T)+VL(G100Q+L104V)は、レポーター遺伝子活性が1.5〜2.5倍増加し、可溶性画分中のscFv−VP16が増加した。
H94位のアルギニンが維持されたことを除いて、scFvI21のフレームワークへのscFv33の突然変異が実施された(I21R33)。scFv33がICAbコンセンサスフレームワークに変換されたもの(con33)と、VHフレームワークのみの突然変異が実施されたもの(I21R−33VHI21VL、図3)の2種類のさらに別のscFv33変異体が構築された。哺乳動物レポーターアッセイにおいては、レポーター遺伝子活性の2〜3倍の増加がI21R33およびcon 33で認められたが、最初のscFv33よりも溶解性が劇的に改善された(図8B)。これらのデータによれば、コンセンサスフレームワーク、すなわちI21フレームワークは、細胞内抗体発現の最も適切な骨格であり、これらのフレームワークを用いてICAb機能を改善することができる。
VHドメインにおいて保存的システイン残基を欠く抗RAS scFvの活性
COS7細胞の還元性環境において、scFvはジスルフィド結合をほとんど形成することができないが、突然変異抗RAS scFv I21R33は、COS7細胞においてRAS抗原と特異的に相互作用する(Biocca等、1995;Tavladoraki等、1993)。おそらくは、抗βガラクトシダーゼscFvR4などの、過剰発現されたscFvの小集団が、細胞質中でジスルフィド結合を形成し、抗原とインビボで相互作用し、その一部が細菌の細胞質中でジスルフィド結合していると考えられる(Martineau等、1998)。したがって、scFvが抗原と高親和性を有する場合には、本発明者らの抗原−抗体相互作用アッセイによって、小集団をインビボで検出することができる。しかし、インビトロでの研究によれば、ジスルフィドがないが正確に折りたたまれるいくつかのscFvを作製できることが示された(Proba等、1998;WornおよびPluckthun、1998a)。したがって、鎖内S−S結合に対する要件を試験するために、22位および92位(Kabatの番号付け、またはIMGTによる番号付けで23および104)のシステイン残基を欠く突然変異体scFvをコードする発現ベクターを構築した。I21R33配列に基づくこのscFvは、2個のcysコドンを有し、セリンに突然変異した(クローンI21R33(VHC22S;C92S)。このタンパク質をコードするベクターを本発明者らの哺乳動物レポーターアッセイで試験した(図8B)。scFvタンパク質は高レベルで発現され、I21R33およびI21のそれらとほぼ同等であり、ルシフェラーゼレポーターを活性化する能力は12R33 scFvに類似している。これらの結果によれば、抗RAS scFv I21R33は、鎖内ジスルフィド結合内で適切に折りたたまれ、細胞内でこの状態で機能することができる。
腫瘍形成性形質転換を遮断するICAbから抗RAS scFvへの変換
上述の実験において、本発明者らは、VHおよびVLフレームワーク領域を正準のIACコンセンサスと等価にするVHおよびVLフレームワーク領域の突然変異分析によって、抗RAS ICAbの有効性を改善しようとした(Tse等、2002)。抗RAS配列がNIH3T3細胞の活性化RAS形質転換を阻害する能力を評価することによって、本発明者らの所定のコンセンサスフレームワークの有用性をさらに試験した。本発明者らは、RASをバイトとして使用した酵母スクリーニングから単離され(図1)、哺乳動物細胞において十分発現されるにもかかわらず(図7)有意な活性をもたないscFv I21クローンを出発点とすることによって、これを評価した。scFv33からI21R33への突然変異誘発(すなわち、scFv33のVH CDRおよびVL CDRを有するI21フレームワーク)によって、ルシフェラーゼレポーターを活性化することができる十分に発現されたタンパク質が得られる(図8B)。本発明者らは、活性化HRAS(RASG12V)のみを発現するプラスミドをNIH3T3細胞に形質移入して、多層に増殖可能であり、紡錘形状細胞の渦巻き形をした形質転換細胞巣(非接触阻害されたコロニー)を生成させる競合形質転換アッセイにこのタンパク質を使用した(図9A、RASG12V+空のscFvベクター)。NIH3T3細胞に、RASG12VベクターとscFvI21を発現するベクターを同時形質移入すると、RAS依存性ルシフェラーゼレポーターアッセイで認められた活性化の欠如に一致して、対照との差は本質的に認められなかった(図9AおよびB)。一方、RASG12Vが突然変異I21クローンのscFvI21R33で発現されると、おそらくscFvとRASG12V発現タンパク質が相互作用し、その機能が妨げられるために、形質転換細胞巣の数は30%に減少した。したがって、コンセンサス骨格は、本発明者らの実験において機能的scFvを生成する基礎となる。
単一ドメイン抗体断片は、インビボで細胞内発現抗体として機能することができる
上記実施例において、細胞内scFv抗体は、細胞内抗体捕捉方法(Tse等、2002)によって単離され、抗原結合に対するそれらのインビボでの有効性は、コンセンサス配列へのscFvフレームワークの逐次突然変異誘発によって改善された(Tanaka等、2003)。
本発明者らは、今回、抗RAS scFv細胞内発現抗体の個々のドメイン(すなわち、単一VHドメインまたは単一VLドメイン)がインビボで抗原に結合する能力を試験した。最小のルシフェラーゼレポータープラスミドと、Gal4 DNA結合ドメイン(DBD)に連結されたRAS抗原をコードするベクターおよびVP16 転写活性化ドメイン(AD)に連結された抗体断片をコードするベクターとをCOS7細胞に形質移入することを含むルシフェラーゼレポーターアッセイで様々な発現抗体断片を試験した。細胞内発現抗体−VP16融合体の発現を、ウェスタンブロット法を用いてタンパク質を検出することによって評価した。すべてのクローンが、COS7細胞においてそれぞれのタンパク質を発現し、scFvと単一ドメイン細胞内発現抗体融合体(VHおよびVL)の両方が同等に十分発現されたことが明らかである。
細胞内発現抗体がそれぞれの抗原とインビボで相互作用する能力を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイによって試験した。抗RAS VH単一ドメイン形式を用いて最適なルシフェラーゼ活性化が得られたことは重要である。例えば、細胞内発現抗体抗RAS scFv33由来のVHは、レポーター活性を親のscFvクローンの約5倍刺激した)。しかし、抗RAS VL単一ドメインは、まったく活性化されなかった(33VL)。前述したとおり(上記実施例参照)、コンセンサス形式(本明細書では、I21R33バージョンを使用した)へのscFv33の変換によって、インビボでの機能が抗原結合の点で増強された。この細胞内発現抗体に由来する単一ドメインVHは、このレポーターアッセイにおいても親分子より優れていた。最後に、VHドメインのドメイン内ジスルフィド結合に関与するシステイン残基の突然変異は、インビボでの発現または機能に対して実質的な効果をもたなかった(クローンI21R33VH−C22SおよびI21R33VH−C92S)。したがって、単一ドメイン細胞内発現抗体(IDab)は、ドメイン内ジスルフィド結合なしで機能することができる。本発明者らは、抗原への抗RAS scFv33の結合が、VHドメインのみを介して起こることができ、重要な推論として単一ドメインが細胞内抗体機能の優れた媒介物であると考えられると結論した。
酵母−IAC 手法における合成単一ドメイン細胞内抗体ライブラリーの直接スクリーニング
観察されたように哺乳動物細胞において単一VHドメインが機能することは、IDab形式が、直接の酵母抗体−抗原相互作用手順による抗原特異的IDabの単離に対して十分な多様性を有する細胞内抗体ライブラリーの作製に一般に有用となり得ることを示している(Visintin等、1999)。既報の細胞内発現抗体コンセンサスフレームワーク(Tanaka & Rabbitts、2003;Tse等、2002)に基づいて、酵母における直接インビボスクリーニング用のIDabライブラリーを作製することによって、この考えを検証した(Tse等、2000)。多様なVHドメインをpVP16*ベクターにクローン化して、IDab−VP16融合タンパク質をコードすることによって、2つのIDabライブラリーを作製した。ライブラリーのサイズは、約3×10(IDabライブラリー1)および5×10(IDabライブラリー2、推定多様性約3×10)であり、直接酵母スクリーニングと同等の複雑さであった。
IDabライブラリーを、2種類の異なる抗原(すなわち、HRASG12VおよびATF−2)を用いてスクリーニングして、それらの一般的有用性を確認した。his3およびlacZレポーター遺伝子を有する酵母細胞に、IDabライブラリーを、LexA DNA結合ドメインに融合された抗原をコードする抗原バイトクローンとともに形質移入した。100個を超えるクローンが、どちらの抗原バイトでもヒスチジンに無関係に増殖し(表1)、抗原とVH単一ドメイン細胞内発現抗体の細胞内相互作用が示唆された。これらのクローンを採取し、β−galフィルターアッセイによって評価し、最も発色の速い10個のクローンを選択して、配列を決定した。図3Bに、VH CDR領域から誘導されるアミノ酸配列を、IDab 33の親CDR領域と比較して示す。選択されたクローンのうち、異なる抗原に対して選択されたIDabと同一の配列がいくつか見られ、これらのクローンがバイトタンパク質のLexA DNA結合ドメイン部分と結合することが示唆された。これは、各IDabクローンのヒスチジン非依存性増殖およびβ−gal活性化を異種バイトを用いて再分析することによって評価された。このようにして、本発明者らは、抗RAS IDabのうちの9種類が、これらのIDabが抗LexA細胞内発現抗体であることと一致して、同族バイトだけでなく非関連ATF−2バイトとも相互作用することを見出した(クローン#1、#2、#4、#5、#8、#11、#14、#16、#19)。残りのクローンは、RAS抗原に対して特異性を有することが確認された。選択されたすべての抗ATF−2 IDabは、同族抗原に特異的であった。CDR3無作為化方法と一致して、VH CDR3のかなりの長さの違いが見られ、特に抗ATF−2クローンにおいては長さが2〜12個のコドン異なった。
ライブラリーから選択されたIDabは哺乳動物細胞において機能することができる
本発明者らの結果によれば、酵母中でライブラリーを直接スクリーニングすることによってIDabを選択することが可能であり(IAC手法)、最初のIAC方法において必要なインビトロでのファージ抗体ライブラリースクリーニングが不要である(Tse等、2000;Visintin等、2002)。哺乳動物細胞におけるこれらのIDabの効力を、3種類の異なる転写トランス活性化アッセイによって試験した。まず、本発明者らはIDabクローンを、COS7を用いたルシフェラーゼレポーターアッセイで試験した(Tanaka & Rabbitts、2003)。IDab配列を、哺乳動物発現ベクターにクローン化して、C末端でVP16ADに融合したIDabを発現させた。IDab−VP16構築体、およびGal4DBD−抗原融合体として発現する特異的バイト、またはGal4DBD−LexA融合体を含むバイトをCOS7細胞に形質移入した。本発明者らはルシフェラーゼの活性化においてある程度の可変性を認め、一部のクローン、例えば、抗RASクローン#6および#10は、レポーター活性を強く刺激したのに対して、一部のクローン、例えば、抗RASクローン#3または抗ATF−2クローン#27および#29は、中程度にしか刺激しなかった。興味深いことに、抗RASクローン#3は、他の抗RAS IDabよりもCDR3が長いだけでなく(図3B)、HRASと同時発現したときにルシフェラーゼ活性化を刺激し、KRASおよびNRASと同時発現したときにはルシフェラーゼ活性化を刺激しなかった。これに対して、抗RAS IDabクローン#6、#7、#9、#10、#12、#13、#17および#18は、全3種類のRAS抗原と同時発現したときにルシフェラーゼ活性化を刺激した(データ示さず)。これらのデータは、抗RAS細胞内発現抗体#3が、RAS分子上の他のIDabとは異なるエピトープを認識することを示している。クローン#1、#2、#4、#11、#14、#16および#19は、LexAをバイトとしてかなりのレポーター活性を刺激し、これらのIDabがLexA−RASとLexA−ATF−2バイトの両方に結合するという知見も考慮すると、これらが抗LexA DBD細胞内発現抗体であることがわかる。
抗RAS IDabの哺乳動物細胞活性は、染色体CD4(Fearon等、1992)またはGFPレポーターを有するCHO細胞を用いて検証される。これらのレポーターが、Gal4 DBD−抗原とIDab−VP16融合タンパク質の複合体の一過的発現によって刺激されたときに、CHO細胞表面で発現されるCD4分子(CHO−CD4)または緑色蛍光タンパク質が細胞中で産生される(CHO−GFP)。非関連細胞内発現抗体の抗β−gal scFvR4(Martineau等、1998)がRASバイトとともに発現されたときには、CHO−CD4とCHO−GFPのいずれでもレポーター活性化は認められなかった。しかし、scFvR4とlacZレポーターを同時形質移入すると、細胞の約20〜40%がCD4またはGFP発現を示した。抗RAS IDab33(抗RAS scFv33からサブクローニングされた最初のIDab(Tanaka & Rabbitts、2003))または抗RAS IDab#6もしくは#10がバイトとともに同時発現されたときに、RASバイトでのみ活性化が認められ、バイト特異性が逆転した。これらの結果は、酵母IDabライブラリースクリーニング手法によって、哺乳動物細胞内での関連抗原への結合を容易にするのに十分に良好なインビボ特性を有するIDabを選択できることを示している。
単一ドメイン細胞内抗体は、可溶性タンパク質としてインビボで発現される
本発明者らがこれらのレポーターアッセイにおいて使用したIDab細胞内発現抗体は、VP16活性化ドメインとの融合体として発現され、発現性良好である。しかし、これらの融合タンパク質のVP16ドメインは、哺乳動物細胞における溶解性および安定性の主要な決定要因となることがあり、これらの抗体断片はインビトロで凝集する傾向にあるので、単一ドメインのみがインビボで忍容性が良好ではない可能性がある(Davies & Riechmann、1995)。実際、非改変ヒトVHドメインは、VLドメインの非存在下で(すなわち、疎水性VL界面が露出して)、低タンパク質濃度においてはインビトロで単量体のみであり、濃度上昇につれ凝集し始める(Davies & Riechmann、1995;Riechmann & Muyldermans、1999)。本発明者らは、scFvまたはIDab抗体断片をコードするクローンを一過的に形質移入して、NIH3T3細胞中で抗RAS IDabを発現させ、抗FLAGタグ抗体を用いたウェスタン分析によって発現細胞内発現抗体を検出することによってインビボでIDab特性を評価した。この発現分析を抗原発現の存在下または非存在下で実施し、タンパク質は、可溶画分で、または遠心分離によって収集される溶解後の不溶性材料として、界面活性剤で溶解した細胞から抽出される。IDabおよびscFv細胞内発現抗体タンパク質は、この分析において両方の細胞画分中に現れ、抗原が同時発現してもしなくても大きな違いは認められなかった。抗RAS IDabクローン#6および#10が、可溶性タンパク質としてscFv形式よりも良好に発現すると考えられたことは重要である。これらの結果は、IDabが細胞中でscFv形式よりも安定であることを示唆している。これは、おそらくは、scFvが、タンパク質分解感受性をもたらし得るペプチドリンカーを有し、VHとVLのインビボでの会合不良を伴うのからである。
単一ドメイン細胞内抗体は、インビトロで高親和性で抗原に結合することができる
哺乳動物細胞の複雑な環境における「細胞内親和性」の決定要因は、抗原の存在下および非存在下における細胞内発現抗体の結合親和性、発現レベルおよび安定性である。インビボでの結合親和性を決定することは不可能であり、あるいは熱力学的(または動力学的)安定性または凝集傾向の研究を実施することは不可能である。しかし、細胞内親和性のパラメータを評価するために、本発明者らは、4種類の選択された抗RAS IDabクローン#3、#10、#12のインビトロでの結合親和性を最初のIDab 33と比較して求めた。Dabタンパク質は細菌中で発現されたが、精製Dabタンパク質の最終収率はかなり低く(最高0.5mg/1リットル培養物)、おそらくは、精製および濃縮によって、インビトロでの高濃度においてDabの付着性および凝集性が惹起されたためと考えられる(Riechmann & Muyldermans、1999)。
本発明者らは、IDabのRAS抗原結合親和性をバイオセンサーを用いて測定した。scFv33のKdは約10nMであることが判明し(表2)、これは本発明者らの以前の研究と一致している(Tanaka & Rabbitts、2003)。突然変異scFvI21R33VHI21VL(抗RAS scFv33のフレームワークは、I21コンセンサスVHに突然変異するが、I21 VL配列を保持している)は、scFv33の親和性(Kd約18nM)を維持し、VH−抗原相互作用の重要性と一致している。scFv33のVHがIDab形式になると親和性が失われ(表2;約90nMのKd)、最初のscFv33よりも約1桁弱くなった。抗RAS IDabクローン#3、#10および#12のKdは、それぞれ約180nM、120nM、26nMであった。したがって、(真の抗原−抗体相互作用の尺度である)抗RAS IDabのインビトロでの親和性とインビボでの活性との間に明確な相関はない(インビボでの全抗原−抗体相互作用にはいくつかの要因が関与している)。これらのデータによれば、インビボアッセイとインビトロアッセイの両方でIDabを評価する価値があるが、それでも、選択されたIDabの結合親和性成分は、抗原結合部分としてのインビボでの機能に対して適切な範囲内にある。
NIH3T3細胞の発癌性形質転換は、IDab細胞内発現抗体によって阻害することができる
細胞内発現抗体の目的は、細胞内のタンパク質の機能を排除または妨害すること、例えば、癌細胞における異常な機能を遮断することである。発癌性RASの機能は、腫瘍における構成的シグナル伝達によって媒介され、これは、突然変異RAS(HRASG12V;コドン12におけるグリシンからバリンへの突然変異を含む)をNIH3T3細胞に導入することによって模倣することができ、コンフルエントな細胞培養において接触阻止の喪失および増殖巣形成を招く。本発明者らは、細胞内抗体捕捉によって選択されたscFv細胞内発現抗体が、RASによって媒介される形質転換を阻害できることを示した(Tanaka & Rabbitts、2003)。本発明者らは、これらの抗体断片の存在下または非存在下でRAS形質転換アッセイを実施することによって、形質転換を阻害するIDabの有用性を評価した(図10)。
突然変異HRASG12Vをコードする発現クローンをNIH3T3細胞に形質移入すると、形質転換された非接触阻害されたコロニーの増殖が検出されたのに対して(図10A)、ベクターのみが導入された細胞は接触阻害されたままであった。これによって、それぞれ100%および0%相対形質転換が規定される(図10B)。HRASG12VクローンにscFvI21(哺乳動物アッセイにおいて効率的に発現されるが検出可能なRAS結合をもたないscFv(Tanaka & Rabbitts、2003))を同時形質移入しても、HRASG12Vのみ、またはHRASG12V+scFvI21で観察された細胞巣の数はほぼ同じであったので、突然変異RASの形質転換能力は影響を受けなかった(図10AおよびB)。逆に、本発明者らは、HRASG12Vが抗RAS scFvと同時発現されると(scFvが抗RAS scFv33のVHとI21のVLを含むscFvI21R33VHI21VL(Tanaka & Rabbitts、2003))、形質転換活性が減少し、HRASG12V対照のみと比較して細胞巣形成がわずか約20%であることを認めた(図10B)。哺乳動物レポーターアッセイにおけるそれらの優れた刺激、およびNIH3T3細胞におけるそれらの良好な発現特性のために選択された2種類の抗RAS IDabをこのアッセイにおいて試験した(IDab#6および#10)。これらは、抗RAS scFvと同様な挙動を示し、形質転換指数(transformation index)に対して劇的な効果を示した。抗RAS IDab#6および#10は、発癌性HRASG12Vの形質転換活性を、HRASG12Vのみを発現する形質移入細胞の10%未満に低下させた(図10B)。したがって、これらのIDabを、哺乳動物細胞中で、腫瘍形成性形質転換を阻害するのに十分な量および質で発現させることができる。これらのデータは、哺乳動物細胞におけるタンパク質機能を妨害するのに十分に良好なインビボ特性を有する試薬を生成するのに、IDab選択手順が一般に有用であることを示している。
IAC 手法の材料および方法
プラスミド
レポータークローン:−
レポータープラスミドpG5−Luc(de Wet等、1987)(Tse等、2002)およびpG5GFP−hyg(Shioda等、2000)は記述されている。pRL−CMVをPromega Ltdから得た。
バイト発現クローン:−
プラスミドpM1−HRASG12V、pM1−LacZ(Tanaka & Rabbitts、2003)およびpBTM−ATF−2(Portner-Taliana等、2000)は記述されている。pM1−ATF−2を、pBTM−ATF−2由来のSma1−BamH1断片をpM1ベクターにサブクローニングすることによって作製した(Sadowski等、1992)。pM1−LexAを生成させるために、LexA−DBD断片を、pBTM116(Hollenberg等、1995)から、BLEXAF2、5’−CGCGGATCCTGAAAGCGTTAACGGCCAGG−3’およびBAMLEXAR、5’−CGCGGATCCAGCCAGTCGCCGTTGC−3’を用いて増幅し、pM1のBamH1部位にクローン化した。
細胞内発現抗体発現クローン:−
細胞内発現抗体発現プラスミドpEF−scFv33−VP16(抗RAS)、pEF−scFvI21R33−VP16(抗RAS)(Tanaka & Rabbitts、2003)およびpEF−scFvR4−VP16(抗β−gal)(Martineau等、1998)(Tanaka等、2003)は記述されている。クローンpEF−33VH−VP16、pEF−I21R33VH−VP16、pEF−I21R33VH−C22S−VP16およびpEF−I21R33VH−C92S−VP16を、親pEF−scFv−VP16由来のVHドメイン断片をPCR増幅することによって作製し(オリゴヌクレオチドEFFP、5’−TCTCAAGCCTCAGACAGTGGTTC−3’およびNotVHJR1’ 5’−CATGATGATGTGCGGCCGCTCCACCTGAGGAGACGGTGACC−3を用いて;後者によってNot1クローニング部位が導入される)、pEF−VP16のSfi1−Not1部位にクローン化した(Tanaka等、2003)。pEF−33VL−VP16ドメイン断片およびpEF−I21R33VL−VP16ドメイン断片を親pEF−scFv−VP16から、VLF1 5’−ATCATGCCATGGACATCGTGATGACCCAGTC−3’(これによって、Nco1クローニング部位が導入される)+VP162R、5’−CAACATGTCCAGATCGAA−3’を用いて増幅し、pEF−VP16のNco1−Not1部位にサブクローニングした(Tanaka等、2003)。
(細菌ペリプラスム発現用)pHEN2−scFvまたはIDabを、適切なpEF−scFv−VP16またはpEF−IDab−VP16のSfi1−Not1断片をpHEN2ファージミドにクローン化することによって作製した。pZIPneoSV(X)−HRASG12Vを、pEXT−HRAS由来のHRASG12V突然変異体cDNAのコード配列をpZIPneoSV(X)ベクターにクローン化することによって作製した(Cepko等、1984)。pEF−FLAG−memb−IDabクローンを、pEF−IDab−VP16クローンの適切なSfi1−Not1断片をpEF−FLAG−Membに挿入することによって作製した(Tanaka & Rabbitts、2003)。
上記すべての構築体を配列決定により確認した。
酵母IDabライブラリーの構築
酵母プレイ発現ベクターpVP16*におけるIDabライブラリーの構築は、(Tanaka等、2003)に詳細に記載されている。2種類のIDabライブラリーを作製した(IDabライブラリー1および2と命名する;表1)。ライブラリー1を調製する場合には、VHテンプレートは、scFv625がその正準のコンセンサスを有する細胞内発現抗体VHコンセンサスフレームワークを有する前記scFv、すなわち、scFvI21R33またはscFv625から得られた(Tanaka等、2003;Tanaka & Rabbitts、2003)。これらのscFvのVH CDR2およびCDR3領域を、CDRにおけるコドン重複性に対してNNMを用いて(ここで、N=A、G、CまたはT、およびM=TまたはG)、PCR突然変異誘発(Hoogenboom & Winter、1992;Tanaka等、2003)によって無作為化し、その産物をpVP16*にクローン化して、VH−VP16活性化ドメイン融合タンパク質をコードした。これによって、VH CDR2およびCDR3領域が異なる2組の多様なクローンが産生された。I21R33に由来するライブラリーのクローン総数は約2×10個であり、scFv625コンセンサスに由来するライブラリーのクローン総数は約1.4×10個であった。これらは組み合わせると、総数約3.4×10個のクローンとなった(IDabライブラリー1)。
IDabライブラリー2を調製する場合には、テンプレートは上記ライブラリーであった。CDR1領域は、突然変異誘発(Hoogenboom & Winter、1992;Tanaka等、2003)によって無作為化され、pVP16*にクローン化された。これによって、VH CDR1、CDR2およびCDR3領域に可変性を有する2組の多様なクローンが産生された。I21R33に由来するライブラリーに対して得られるクローン総数は約3×10個であり、scFv625コンセンサスに由来するライブラリーからは約2.2×10個であった。これらは組み合わせると合計約5.2×10個のクローンとなった(IDabライブラリー2)。ライブラリーの多様性は、コロニー形成単位の総数を求め、ランダムに採取されたクローンの配列を決定して、VHセグメントの存在(クローンの約100%がVH挿入断片を有した)とCDRの無作為化との両方を検証することによって推定された。後者によれば、I21R33に由来するライブラリー中のクローンの約57%、およびscFv625コンセンサスに由来するライブラリーのクローンの約63%が、VHおよびVP16融合体中の完全なオープンリーディングフレームを有する。それ以外のクローンは、無作為化プロセス中に導入されたCDR1、CDR2またはCDR3中に終止コドンを有し(I21R33に由来するライブラリーの場合には、約17%、約13%および約9%がそれぞれCDR1、CDR2またはCDR3中に終止コドンを有し、scFv625コンセンサスに由来するライブラリーの場合には、約5%、約26%および約5%がそれぞれCDR1、CDR2またはCDR3中に終止コドンを有した)、したがって、各ライブラリーの多様性は、I21R33に由来するライブラリーおよびscFv625コンセンサスに由来するライブラリーでそれぞれ約1.7×10個および約1.4×10個(すなわち、約3×10個の混合ライブラリー2)と推定することができた。
IDabライブラリーの細胞内抗体捕捉(IAC)スクリーニング
合成Dabライブラリーのスクリーニングを、既報(Tanaka & Rabbitts、2003;Tse等、2002)のように、細胞内抗体捕捉(IAC)技術の手順に従って実施した。詳細な手順は、http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/PNAC/Rabbitts_T/group/index.htmlから入手可能である。
概略を述べると、pBTM−抗原(バイト)500mgと、pVP16*−IDabライブラリー1またはpVP16*−IDabライブラリー2(プレイ)1mgとをサッカロミセス セレビシエL40に同時形質移入した。栄養素要求性マーカーtrp、leuおよびhisを用いて陽性クローンを選択した。陽性クローンをhis原栄養性によって選択し、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)フィルターアッセイによって確認した。選択されたクローンについて、関連バイトおよび非関連バイトを用いてヒスチジン依存性増殖およびβ−gal活性化を再試験することによって真陽性クローンを確認した。β−galフィルターアッセイにおいて、最も発色の速い10個のダブルポジティブクローンを選択して、配列を決定した。目的バイトを安定に発現する酵母菌株をまず作製することによって、より効率的に選択を行うことができる(上記ウェブサイトも参照されたい)。
ルシフェラーゼアッセイおよびウェスタンブロット
ルシフェラーゼ手順はすでに記述されている(Tanaka & Rabbitts、2003;Tse等、2002)。scFvまたはIDab細胞内発現抗体をpEF−VP16発現ベクターにクローン化し、抗原をpM1ベクターにクローン化した。COS7細胞(2×10個)に、pG5−Luc 500ng、pRL−CMV 50ng、pEF−scFv−VP16またはpEF−IDab−VP16 500ng、およびpM1−抗原バイト 500ngを、LipofectAMINE(商標)形質移入試薬8ml(Invitrogen)を用いて、製造者の指示に従って一過的に同時形質移入した。形質移入から48時間後に、細胞を洗浄し、溶解し、Dual−Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて分析した。形質移入効率を、pRL−CMVの同時形質移入によって得られたウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化した。データは各2回実施された2つの実験のものである。
scFv−VP16またはIDab−VP16融合タンパク質の発現を確認するために、形質移入されたCOS7細胞ペレットにSDS−PAGE緩衝剤を直接添加することによって、タンパク質抽出物全体を調製した。溶解物を、SDS−PAGE、続いて一次抗体として抗VP16モノクローナル抗体(145−、Santa−Cruz Biotechnology)および二次抗体としてHRP結合ウサギ抗マウスIgG抗体(Amersham−Pharmacia Biotech、APB)を用いたウェスタン検出によって分析した。ECL検出キット(APB)を用いてブロットを可視化した。NIH3T3細胞(D4系;C.Marshall博士から恵与された。)中のscFvまたはIDab細胞内発現抗体の発現分析を既報(Tanaka & Rabbitts、2003)のとおり実施した。D4細胞に、pEF−FLAG−Memb−scFvまたはpEF−FLAG−Memb−IDabを、pZIPneoSV(X)−HRASG12Vとともに、またはpZIPneoSV(X)−HRASG12Vなしで形質移入した。形質移入から48時間後に、細胞をPBSで1回洗浄し、氷冷溶解緩衝剤(10mM HEPES、pH7.6、250mM NaCl、5mM EDTA、0.5%NP−40、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、0.1mg/mlアプロチニン、1mMフェニルメタンスルホニルフルオライド)に溶解し、4℃で遠心分離して細胞を回収した。ペレット(「不溶性」画分)および上清(「可溶性」画分)を、SDS−PAGE、続いて一次抗体として抗FLAGモノクローナル抗体(M2.Sigma)を用いたウェスタン検出によって分析した。
CD4またはGFPレポーター細胞を用いた哺乳動物の2ハイブリッドアッセイ
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、10%ウシ胎児血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充した最小必須培地アルファ(MEM−α、Invitrogen)中で増殖させた。CHO−CD4系(Fearon等、1992)のFACS分析を本質的に(Tse & Rabbitts、2000)に記載されたとおりに実施した。pG5GFP−HygベクターをLipofectAMINE(商標)を用いてCHO細胞に形質移入し、形質移入された細胞を0.3mg/mlハイグロマイシンB(Sigma)を含むMEM−α中で7日間選択することによってCHO−GFP系を樹立した。CHO−GFP安定クローン39aをさらなるアッセイのために選択した。FACSアッセイでは、3×10個のCHO−CD4またはCHO−GFP細胞を、形質移入24時間前に6ウェルのプレートに播いた。pM1−抗原0.5μgおよびpEF−scFv−VP16またはpEF−IDab−VP16 1μgを細胞に同時形質移入した。形質移入から48時間後に、細胞を洗浄し、分離させ、PBSに再懸濁した。CHO−CD4アッセイでは、抗ヒトCD4抗体(RPA−T4、Pharmingen)およびFITC結合抗マウスIgG抗体(Pharmingen)を用いることによって、細胞表面CD4発現の誘導が検出された。CHO−CD4細胞またはCHO−GFP細胞の蛍光をFACSCalibur(Becton Dickinson)を用いて測定し、データをCELLQuestソフトウエアを用いて分析した。
IDab断片のインビトロでの精製およびBIAcore親和性測定
インビトロアッセイでは、既報(Tanaka & Rabbitts、2003)のとおり、scFvおよびIDabが発現され、細菌ペリプラスムから単離された。IDab断片を、Hisタグおよびmycタグを有するpelBリーダー配列を含むpHEN2ベクターにクローン化した。1mMイソプロピル−β,D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて1リットル培地中で4時間、30℃でIDabを誘導した。細胞を収集し、ペリプラスム画分を冷TES緩衝剤(0.2M Tris−HCl pH7.5、0.5mM EDTA、0.5Mスクロース)10mlに抽出した。10mMイミダゾールを含むPBS 2.5リットルを用いて4℃で透析後、scFvおよびIDab断片をNi−NTAアガロース(QIAGEN)を用いて製造者の指示に従って精製し、Centricon濃縮器(YM−10、Amicon)を用いて濃縮し、一定分量を−70℃で保存した。タンパク質濃度を、Bio−Radタンパク質アッセイキットを用いて製造者の指示に従って測定した。scFvおよびIDabのインビトロでの親和性を、BIAcore 2000装置(Pharmacia Biosensor)を用いて表面プラズモン共鳴によって測定した。動力学速度定数konおよびkoffを、製造者によって提供されたソフトウエアによって計算した。Kd値をkoffおよびkon速度定数から計算した(Kd=koff/kon)。すべての測定を2回実施した。
上記明細書に述べたすべての刊行物を参照により本明細書に取り入れる。本発明に記載の方法およびシステムの様々な改変形態および変更形態が、本発明の範囲および思想から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、請求する本発明をそのような具体的実施形態に不当に限定すべきでないことを理解すべきである。実際、生化学、分子生物学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者に明白である本発明の記載された実施形態の様々な変形形態が以下の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
Figure 2006521088
Figure 2006521088
表1.IDabライブラリースクリーニングデータ
LexA−DBD融合体として2個の抗原バイト(bait)(HRASG12VおよびATF−2)を用いて、2個の異なるIDab−VP16ライブラリーをスクリーニングした。ライブラリー1は、無作為化VH CDR2および3を含み、一方、ライブラリー2は無作為化VH CDR1、2および3を含む。一次スクリーニング結果は、抗原バイトを用いて酵母L40中でスクリーニングされるクローンの初期数、およびヒスチジン欠乏プレート上で増殖するコロニーの数(HIS−増殖)、およびβ−gal活性化を引き起こす対応集団(β−gal陽性)として示される。
表2.BIAcoreを用いた抗RAS IDabタンパク質の親和性測定
His標識抗体断片は、細菌中での発現によって産生され、Ni−NTAアガロースアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。BIAcore 2000を用いてバイオセンサー測定を実施した。この表は、会合速度(Kon)および解離速度(Koff)の値と平衡解離定数計算値(Kd)を、BIA−evaluation 2.1ソフトウエアを用いて要約したものである。高いIDab濃度においては、IDabと抗原の非特異的相互作用が検出された。
scFv33(Tanaka & Rabbitts、2003);scFvI21R33VHI21VLは、scFvI21のVHフレームワーク領域、scFv33のVH CDR1、2および3、ならびにI21のVL(Tanaka & Rabbitts、2003)を用いたscFv33のscFv誘導体であり、IDabs #3、#10および#12は、HRASG12Vをバイトとして用いてIDabライブラリーから単離される細胞内発現抗体(intrabodies)である。
抗RAS scFvの細胞内抗体捕捉。3種類の異なるファージライブラリー(de Wildt等、2000;Sheets等、1998)(全多様度7.0×10)から得られる2.7×1013個のクローンを、精製HaRASG12V抗原を用いてインビトロでスクリーニングした。1.18×10個のファージを回収し、ファージミドDNAを調製し、scFv断片を酵母ベクターpVP16に入れて、4.13×10個のクローンのサブライブラリーを作製した。8.45×10個の酵母クローンを、LexA−RASG12Vバイトを発現する酵母L40系統中でスクリーニングした。428個のコロニーは、ヒスチジン選択プレート上で増殖し、β−galフィルターアッセイから判断してlacZ遺伝子を強力に活性化した。すべてのプレイプラスミド(prey plasmids)を、ヒスチジン非依存性かつβ−gal陽性酵母コロニーから単離し、制限酵素、BstN1、Msp1、Mbo1、RsaIまたはHinf1で消化して、異なるscFvクローンを特定することによってフィンガープリントをとった。続いて、DNAフィンガープリントパターンが異なる57個のscFvクローンを、LexA−RASG12Vバイトおよび(異なるライブラリーに由来し単離された)3種類のscFvを用いて酵母中で再試験した。これらの3種類の抗RAS scFvのうち、哺乳動物のレポーターアッセイにおいて検出可能な程度に結合したわずか2個のRASタンパク質。 哺乳動物細胞における抗RAS scFvとRASタンパク質の相互作用。(A):ルシフェラーゼアッセイ;COS7細胞に、様々なscFv−VP16活性化ドメイン融合およびGAL4−DBDバイトプラスミドpM1−HRASG12V(塗りつぶしボックス)またはpM1−lacZ(白抜きボックス)を、ホタルルシフェラーゼレポータープラスミドpG5−Lucおよび内部ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼコントロールプラスミドpRL−CMVとともに一過的に同時形質移入した。抗RAS scFv33、J48およびI21または抗β−gal scFvR4を発現するscFv−VP16プレイベクターを使用した(Martineau等、1998)。ルシフェラーゼ活性を、Dual Luciferase Assay System(Promega)および照度計を用いて形質移入から48時間後に測定した。各アッセイのルシフェラーゼ活性を、(形質移入効率用内部標準として用いた)ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して規格化した。ルシフェラーゼ誘導レベル倍率を、ベースラインとしてとられた非関連バイトを用いた各scFv−VP16の活性とともに示す。(B):In situ免疫蛍光試験;COS7細胞に、pEF−myc−nuc−scFv J48(抗RAS scFv)またはscFvR4(抗β−gal scFv)およびRAS抗原を発現するpHM6−RASベクターを一過的に同時形質移入した。48時間後に、細胞を固定し、(myc標識scFvを検出する)9E10モノクローナル抗体およびウサギ抗HAタグポリクローナル血清、続いて、それぞれ二次フルオレセイン複合抗マウスおよびCy3複合抗ウサギ抗体で染色した。染色パターンを、BioRadiance共焦点顕微鏡を用いて検査した。RASとともに同時発現されたscFv J48について、抗原およびICAb蛍光のコロケーションが見られた。緑色(フルオレセイン)=scFvの蛍光;赤色(Cy3)=抗原の蛍光 抗RAS細胞内抗体の配列。3(A)抗RAS scFvの配列。(A):ヌクレオチド配列を得て、(一文字コードとして示される)誘導タンパク質翻訳を整列させた。フレームワーク(FR)中のダッシュは、(IAC法(Tse等、2002)によって単離された抗BCRおよび抗ABL scFvから誘導される)コンセンサス(CON)配列を用いたアイデンティティである。数字は、Lefranc等(LefrancおよびLefranc、2001)(第1カラムの数字、IMGTとして表示)およびKabat等(Kabat等、1991)(第2カラム、Kabat)の系による残基の参照位置を示す。可変ドメインの重鎖(VH)と軽鎖(VL)の間のリンカーの15個の残基(GGGGS)は示されていない。相補性決定領域(CDR)は、灰色の背景で強調表示されており、フレームワーク領域(FR)から区別されている。3種類の抗RAS細胞内scFvは、33、J48およびI21として設計されている。すべての抗RAS scFvは、Kabatデータベース(Kabat等、1991)から得られる、中ほどに示す重鎖のVH3サブグループおよび軽鎖のVκ1サブグループ(設計されたVH3またはVκI)、またはLefrancデータベース(LefrancおよびLefranc、2001)から得られるIGVH3およびIGVK1に属する。突然変異抗RAS scFvは、I21K33、I21R33、I21R33VHI21VL、con33およびI21R33VH(C22SC92S)として設計されて示されている。I21K33は、I21フレームワーク中のscFv33のCDRを含み、I21R33は突然変異Lys94Arg以外は同一であり、I21R33VH21VLは、I21のVLドメインに融合するI21R33のVHドメインを含み、con33は、正準のコンセンサスフレームワーク(Tse等、2002)中にscFv33の全6個のCDRを有し、I21R33VH(C22S;C92S)は、VHドメインの突然変異CYS22SERおよびCYS92SERを有するクローンI21R33の突然変異体である。コンセンサス領域とI21Rフレームワーク領域では、わずかに4個のアミノ酸差(H1、H5、L0およびL3の位置)しかない。A、bおよびcは、CDR配列である。 抗RAS細胞内抗体の配列。3(A)抗RAS scFvの配列。(A):ヌクレオチド配列を得て、(一文字コードとして示される)誘導タンパク質翻訳を整列させた。フレームワーク(FR)中のダッシュは、(IAC法(Tse等、2002)によって単離された抗BCRおよび抗ABL scFvから誘導される)コンセンサス(CON)配列を用いたアイデンティティである。数字は、Lefranc等(LefrancおよびLefranc、2001)(第1カラムの数字、IMGTとして表示)およびKabat等(Kabat等、1991)(第2カラム、Kabat)の系による残基の参照位置を示す。可変ドメインの重鎖(VH)と軽鎖(VL)の間のリンカーの15個の残基(GGGGS)は示されていない。相補性決定領域(CDR)は、灰色の背景で強調表示されており、フレームワーク領域(FR)から区別されている。3種類の抗RAS細胞内scFvは、33、J48およびI21として設計されている。すべての抗RAS scFvは、Kabatデータベース(Kabat等、1991)から得られる、中ほどに示す重鎖のVH3サブグループおよび軽鎖のVκ1サブグループ(設計されたVH3またはVκI)、またはLefrancデータベース(LefrancおよびLefranc、2001)から得られるIGVH3およびIGVK1に属する。突然変異抗RAS scFvは、I21K33、I21R33、I21R33VHI21VL、con33およびI21R33VH(C22SC92S)として設計されて示されている。I21K33は、I21フレームワーク中のscFv33のCDRを含み、I21R33は突然変異Lys94Arg以外は同一であり、I21R33VH21VLは、I21のVLドメインに融合するI21R33のVHドメインを含み、con33は、正準のコンセンサスフレームワーク(Tse等、2002)中にscFv33の全6個のCDRを有し、I21R33VH(C22S;C92S)は、VHドメインの突然変異CYS22SERおよびCYS92SERを有するクローンI21R33の突然変異体である。コンセンサス領域とI21Rフレームワーク領域では、わずかに4個のアミノ酸差(H1、H5、L0およびL3の位置)しかない。A、bおよびcは、CDR配列である。 (B):細胞内発現抗体ライブラリースクリーニングから単離されるIDabのVH CDRタンパク質配列。2種類のタンパク質バイト、すなわち、HRASG12Vタンパク質およびATF−2タンパク質を用いて単一ドメインライブラリーをスクリーニングすることによって得られる選択IDab細胞内発現抗体クローンの相補性決定領域(CDR)の誘導タンパク質配列のアラインメント。(I):IDabクローンのヌクレオチド配列が得られ、(一文字コードで示された)誘導タンパク質翻訳を整列させた。IDab CDRを整列させ、IDab33のCDRと比較する(VHドメインの強調表示されたCDR領域は、IMGT(the International ImMunoGeneTics、http://imgt.cines.frの情報システム)(Lefranc & Lefranc、2001)(IDab33中の灰色表示された、第1行)およびKabat等(IDab33中の下線で示された、第1行)(Kabat等、1991)によって定義されたものである)。ライブラリーから選択されるIDabの配列において、PCR突然変異誘発によって無作為化された領域のみを灰色で強調表示した。抗RAS IDabクローン11〜19はIDabライブラリー2に由来し、これらは3個の突然変異CDRすべて、したがってこれらのクローン由来の配列中の強調表示されたCDR1、CDR2および3の領域を有することに留意されたい。配列番号21はクローン3であり、配列番号22はクローン6であり、配列番号23はクローン番号7であり、配列番号24はクローン番号10であり、配列番号25はクローン12であり、配列番号26はクローン13であり、配列番号27はクローン17であり、配列番号28はクローン18であり、配列番号29はクローン19である。a、bおよびcで示された区域はCDR配列である。(II):中間の図は、選択された各IDabが由来するVHフレームワークを示している。CON=正準のIACコンセンサスを有するscFv625由来のフレームワーク(Tse等、2002)。I21R=正準のコンセンサスに極めて近い配列を有するscFvI21R33由来のフレームワーク(Tanaka & Rabbitts、2003)。(C):選択された各IDabを、酵母アッセイにおいて、出発バイト(bait)または異種バイトを用いて、ヒスチジン依存性(HIS)またはβ−gal活性化アッセイ(β−gal)によって再試験し、これらのアッセイにおいて陽性(+)または陰性(−)のスコアをつけた。 抗RAS scFvのペリプラスムでの発現および精製。N末端にpelBリーダー配列を有し、C末端にHis6タグおよびmycタグを有するscFvは、100μg/mlアンピシリンおよび0.1%グルコースを含む2 X TY培地1リットル中で、1mM IPTGを用いて30℃で2時間、大腸菌HB2151中のpHEN2−scFvベクターからペリプラスムで発現された。誘導後、細胞を回収し、氷冷1 X TES緩衝剤(0.2M Tris−HCl(pH7.5)、0.5mM EDTA、0.5Mスクロース)4mlで抽出し、さらに1:5 TES緩衝剤6mlを添加した。細胞抽出物の上清を可溶性ペリプラスム画分として使用した。his標識scFvを、固定化Ni2+イオンクロマトグラフィーによって精製し、15%SDS−PAGEによって分画し、タンパク質をクーマシーブルーによって染色した。精製抗RAS scFv33およびJ48のおおよその収率は、培養物1リットル当たり100μg未満であり、scFvI21R33、I21R−33VHI21LおよびI21は3mg/リットルを超え、con33は1mg/リットルであった。E=完全ペリプラスム抽出物およびP=精製scFv;M=Mwマーカー。 抗RAS scFvの特異的抗原結合および競合ELISA。精製HRASG12V−GppNp(4μg/ml、約200nM;塗りつぶしボックス)またはウシ血清アルブミン(BSA、30mg/ml、約450μM;灰色ボックス)をELISAプレートに室温で1.5時間塗布した。両セットのウェルに、3%BSAのPBS溶液をブロッキング用に添加し、続いて精製scFv(450ng/ウェル)を添加し、終夜4℃でインキュベートした。PBS−0.1%Tween 20で洗浄後に、結合したscFvをHRP結合抗ポリヒスチジン抗体(HIS−1、Sigma)を用いて検出し、シグナルをEmaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて定量した。(図中で+として示す)競合アッセイの場合には、scFvを、ELISAウェルに添加する前に、HRASG12V−GppNp(8μg/ml;約400nM)を用いて室温で30分間プレインキュベートした。 BIAcoreを用いた抗RAS scFvの親和性測定。BIAcore 2000を用いてバイオセンサー測定を実施した。バクテリア培養物から得られた精製scFvを使用した。(A):抗RAS scFvとHRASG12V−GppNp抗原(固定化1500 RU)の結合を示すセンソグラム(Sensogram)。40μlの注射量および20μl/分の流速を使用した。精製scFv(10〜2000nM)を、固定化HRASG12V−GppNpを含む、または抗原を含まない、チップの2つのチャネルに添加した。各測定のセンソグラムを、抗原を含まないチャネルの共鳴によって正規化した。(B):表に、会合速度(Kon)および解離速度(Koff)の値、ならびにBIAevaluation 2.1ソフトウエアによる平衡解離定数(Kd)の計算値を要約する。 COS7細胞における発現scFvの溶解性に対するフレームワーク残基の影響。COS7細胞に、示したpEF−myc−cyto−scFv発現クローンを一過的に形質移入した。材料および方法に記載したように、可溶性タンパク質および不溶性タンパク質を抽出し、15%SDS−PAGE上で分画した。電気泳動後に、タンパク質をメンブレンに移し、抗mycタグモノクローナル抗体9E10とともにインキュベートした。泳動分子量マーカー(kDa単位)を左側に示す。右側の矢印は、scFv断片のバンドである。 フレームワーク配列の突然変異による抗RAS ICAbとRAS抗原の細胞内相互作用の改善。哺乳動物の2ハイブリッド抗体−抗原相互作用アッセイをCOS7細胞中で実施した。(A):COS7にpEFBOSVP16−scFvベクターおよびpM1−RASG12V、ならびにルシフェラーゼレポータークローンを形質移入し、ルシフェラーゼレベルを方法に記載したように求めた。上図は、scFv−VP16結合RAS抗原バイトのルシフェラーゼシグナルの正規化誘導倍率である(ゼロは、scFvを含まないプレイプラスミドから得られたシグナルである)。下図は、scFv−VP16融合タンパク質の発現後のCOS7細胞抽出物のウェスタンブロットである。ScFv−VP16融合タンパク質を、抗VP16(Santa Cruz Biotechnology、14−5)モノクローナル抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウスIgG抗体を用いたウェスタンブロットによって検出した。対照として用いたICAb scFvは、抗β−gal R4(Martineau等、1998)であった。scFv33突然変異体は、(Kabat等(Kabat等、1991)を用い、括弧内の数字はLefranc等による番号付けである(LefrancおよびLefranc、2001))(図3参照)。VH(A74S+S77T):VHのAla74(83)SerおよびSer77(86)Thr置換。VH(D84A):VHのAsp84(96)Ala置換。VH(R94K):VHのArg94(106)Lys置換。VL(0T+V3Q):リンカーとVLドメインの間のThr付加+VLのVal3(3)Gln置換。VL(F10S):VLのPhe10(10)Ser置換。VL(I84T):VLのIle84(100)Thr置換。VH(Q1E+V5L+A7S+S28T)+VL(G100Q+V104L):VHのGln1(1)Glu、Val5(5)Leu、Ala7(7)Ser、Ser28(29)Thr置換+VLのGly100GlnおよびVal104Leu。(B):コンセンサス配列骨格に変換するフレームワーク突然変異を含むscFvを用いたCOS7細胞2ハイブリッド抗体−抗原相互作用アッセイ示した様々なscFv−VP16プレイ構築体に、COS7細胞中のGAL4−RASG12Vバイトプラスミドを一過的に形質移入し、ルシフェラーゼ活性を形質移入の48時間後に測定した。ルシフェラーゼ活性レベル倍率を、scFvなし(scFvを含まないプレイプラスミド)の活性をベースラインとしてヒストグラムで示す。COS7細胞の可溶性画分におけるscFv−VP16の発現レベルを下図に示す。抗VP16(14−5)抗体およびHRP結合抗マウスIgG抗体を用いたウェスタンブロットによってバンドを可視化した。 抗RAS scFvによるRAS依存性NIH3T3細胞形質転換活性の阻害。突然変異体HRAS G12V cDNAを哺乳動物発現ベクターpZIPneoSV(X)にサブクローン化し、抗RAS scFvを、scFvのC末端に形質膜ターゲティングシグナルおよびscFvのN末端にFLAGタグを有するpEF−FLAG−Membベクターにサブクローン化した。pZIPneoSV(X)−RASG12V 100ngおよびpEF−FLAG−Memb−scFv 2μgをNIH 3T3細胞クローンD4に同時形質移入した。2日後に、細胞を10cmプレートに移し、5%ドナー仔ウシ血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDME培地中で14日間増殖させた。最後に、プレートをクリスタルバイオレットで染色し、形質転換細胞の増殖巣を数えた。(A):染色プレートの代表的な写真。左上図の空のベクターは、負の対照として、RASG12Vを含まないpZIPneoSV(X)とscFvを含まないpEF−FLAG−Membの同時形質移入を示す。増殖巣形成は認められなかった。右上図に、正の対照として、RASG12V pEF−FLAG−Membを含み、scFvを含まないpZIPneoSV(X)を示す。それ以外のプレートにおいては、RASG12V ベクターに、pEF−memb−scFvI21またはpEF−memb−scFvI21R33を同時形質移入した。(B):形質転換増殖巣(foci)の相対百分率を、100に設定された、pZIPneoSV(X)/HRASG12VおよびpEF−memb空ベクターによって誘発される増殖巣形成に対して規格化されたいくつかの増殖巣として求めた。示した結果は、各形質移入を2回実施した1つの実験のものである。2回の追加実験では、類似の結果が得られた。 抗RAS IDabによるNIH3T3細胞の突然変異RAS媒介発癌性形質転換の阻害。突然変異HRASG12V cDNAを哺乳動物発現ベクターpZIPneoSV(X)および抗RAS scFvsにクローン化し、またはIDabをpEF−FLAG−Membベクターにクローン化した(これによって、各scFvまたはIDabのC末端に融合した形質膜ターゲティングシグナル、およびN末端に融合したFLAGタグを有するタンパク質がコードされる)。pZIPneoSV(X)−HRASG12V 100ng、およびpEF−FLAG−Memb−scFvまたはpEF−FLAG−Memb−IDab 2μgを、低継代のNIH3T3 D4細胞にLipofectAMINE(商標)(Invitrogen)を用いて同時形質移入した。2日後に、細胞を10cmプレートに移した。コンフルエントに達した後に、5%ドナー仔ウシ血清を含むDME培地中で細胞を14日間保持し、プレートをクリスタルバイオレットで染色して形質転換細胞の増殖巣を定量した。(A):形質転換増殖巣を示す代表的なNIH3T3増殖プレートの写真。左上図の空ベクターは、クローン化RASを含まないpZIPneoSV(X)ベクターとクローン化scFvまたはIDabを含まないpEF−FLAG−memb ベクターとを同時形質移入したものである。それ以外のプレートは、pZIPneoSV(X)−HRASG12Vと、示したscFvまたはIDab pEF−FLAG−memb発現ベクターとを細胞に形質移入した後の培養物である。(B):pZIPneoSV(X)−HRASG12VとpEF−FLAG−Memb空ベクターのみによって誘導された増殖巣形成(値を100%に設定)に対して規格化された増殖巣の数として推算される形質転換増殖巣の相対百分率を示すヒストグラム。示した結果は1つの実験のものであり、各形質移入は2回実施された(2回の追加実験では類似の結果が得られる)。
参考文献
Figure 2006521088
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Claims (25)

  1. 細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる抗体分子であって、前記抗体が単一可変ドメイン型のみを含み、そのような可変ドメインが、
    (a)VHの場合:図3に示され、それぞれ配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9、配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、あるいは残基22および92の1個または複数がシステイン残基ではない上記配列、すなわち、図3に示される配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29のいずれか;ならびに
    (b)VLの場合:図3に示され、それぞれ配列11、配列12、配列13、配列17、配列18、配列19、配列20で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)
    からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む、抗体分子。
  2. 1個または複数の重鎖可変ドメインを含み、1個または複数の軽鎖可変ドメインを含まない、請求項1に記載の抗体。
  3. 1個または複数の軽鎖可変ドメインを含み、1個または複数の重鎖可変ドメインを含まない、請求項1に記載の抗体。
  4. 細胞内環境内で活性化RASに特異的に結合することができる抗体分子であって、前記抗体が重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、前記抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインが、図3に示され、可変重鎖ドメインの場合には、配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9および配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、あるいは(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個または複数がシステイン残基ではない上記配列のいずれかからなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか、ならびに図3に示す対応する軽鎖ドメインを含む、抗体分子。
  5. 細胞内環境内で活性化RASを機能的に不活性化する抗体分子であって、前記抗体が単一可変ドメイン型のみを含み、そのような可変ドメインが、
    (a)VHの場合:図3に示され、それぞれ配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9、配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、あるいは残基22および92の1個または複数がシステイン残基ではない上記配列、すなわち、図3に示される配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29のいずれか;ならびに
    (b)VLの場合:図3に示され、それぞれ配列11、配列12、配列13、配列17、配列18、配列19、配列20で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)
    からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む、抗体分子。
  6. 細胞内環境内で活性化RASを機能的に不活性化する抗体分子であって、前記抗体が重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、前記抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインが、図3に示され、可変重鎖ドメインの場合にはそれぞれ配列1、配列2、配列3、配列7、配列8、配列9および配列10で示されるCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con 33およびI21R33(VHC22S;C92S)、あるいは(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個または複数がシステイン残基ではない上記配列のいずれかからなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか、ならびに図3に示す対応する軽鎖ドメインを含む、抗体分子。
  7. 図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;配列番号3、a、bおよびc;配列番号11a、bおよびc;配列番号12a、bおよびc;および配列番号13、a、b、c;配列番号21a、bおよびc;配列番号22a、bおよびc;配列番号23a、bおよびc;配列番号24a、bおよびc;配列番号25a、bおよびc;配列番号26a、bおよびc;配列番号27a、bおよびc;配列番号28a、bおよびc;配列番号29a、bおよびcで示される群から選択される1組の可変重鎖または軽鎖ドメインCDRを含む単一可変ドメイン型抗活性化RAS細胞内結合抗体。
  8. 少なくとも1個の軽鎖ドメインおよび少なくとも1個の重鎖ドメインを含む抗活性化RAS細胞内結合抗体であって、前記抗体が、図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;および配列番号3、a、b、cで示される群から選択される可変重鎖ドメインCDR、ならびに図3に示され、配列番号11a、bおよびc;配列番号12a、bおよびc;および配列番号13、a、b、cで示される群から選択される対応する軽鎖ドメインCDRを含む、抗体。
  9. 図3に示され、配列番号1a、bおよびc;配列番号2a、bおよびc;配列番号3、a、b、c;配列11a、b、c;配列12a、b、c、配列13a、b、c;配列番号21a、bおよびc;配列番号22a、bおよびc;配列番号23a、bおよびc;配列番号24a、bおよびc;配列番号25a、bおよびc;配列番号26a、bおよびc;配列番号27a、bおよびc;配列番号28a、bおよびc;配列番号29a、bおよびcで示されるアミノ酸配列から選択され、それぞれの重鎖または軽鎖可変ドメインフレームワーク領域アミノ酸配列に結合して細胞内で機能する抗体を産生するときに、得られる抗体に、細胞内環境内で活性化RASに選択的に結合する能力を付与する可変ドメインCDR。
  10. 請求項1から8のいずれかに記載のいずれか1種類もしくは複数の抗体分子および/または請求項9に記載のいずれか1種類もしくは複数のCDR配列をコードする核酸構築体。
  11. 請求項10に記載の1種類または複数の核酸構築体を含むベクター。
  12. 請求項11に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
  13. 請求項1から8のいずれかに記載の抗体分子、請求項9に記載のCDR、および請求項10に記載の核酸構築体、および製薬的に許容されうる担体、希釈剤または賦形剤からなる群から選択される分子のいずれかを含む組成物。
  14. 図3に示され、VHの場合には、配列番号1、2、3、7、8、9、10、で示される群から、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記VH配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む可変鎖ドメインから抗体を合成するステップ、ならびに/あるいは図3に示され、配列11、12、13、17、18、19および20で示され、それぞれCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con33、I21R33(VHC22S、C92S)で示される群から選択されるアミノ酸のいずれかを含む可変鎖ドメインから抗体を合成するステップを含む、活性化RASに特異的に結合し、かつ/または細胞内環境内で活性化RASを機能的に不活性化させることができる抗体分子を産生する方法。
  15. 請求項14に記載の方法によって得られる抗体。
  16. 図3に示され、VHの場合には、配列番号1、2、3、7、8、9、10で示される群から、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記VH配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列のいずれか、あるいは図3に示され、VHの場合には、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29で示される群から選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む軽鎖可変ドメインおよび/または重鎖可変ドメイン、
    ならびに/あるいは図3に示され、配列11、12、13、17、18、19および20で示され、それぞれCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con33、I21R33(VHC22S、C92S)で示される群から選択されるアミノ酸のいずれかを含む可変軽鎖ドメインを含む抗体分子の、活性化RASに特異的に結合する医薬品、および/または細胞内環境内での活性化RASのインビボ機能活性を阻害する医薬品の製造における使用。
  17. 単一可変ドメイン型抗体の、請求項16に記載の使用。
  18. 前記可変ドメインが重鎖可変ドメインである、請求項17に記載の使用。
  19. 前記可変ドメインが軽鎖可変ドメインである、請求項17に記載の使用。
  20. 前記抗体が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方を含む、請求項16に記載の使用。
  21. 図3に示され、VHの場合には、配列番号1、2、3、7、8、9、10で示される群から、または(Kabatの番号付けによる)残基22および92の1個もしくは複数がシステイン残基ではない上記VH配列のいずれか、図3に示され、VHの場合には、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28および配列番号29で示される群から選択されるアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列のいずれかを含む軽鎖可変ドメインおよび/または重鎖可変ドメイン、ならびに/あるいは、図3に示され、配列11、12、13、17、18、19および20で示され、それぞれCon、J48、33、I21R33、I21R33VHI21VL、Con33、I21R33(VHC22S、C92S)で示される群から選択されるアミノ酸のいずれかを含む可変鎖ドメインを含む1種類または複数の抗体分子の治療有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与するステップを含む、患者のRAS関連癌の治療方法。
  22. 前記抗体が単一可変ドメイン型抗体である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記抗体が重鎖可変ドメインのみの抗体である、請求項22に記載の方法。
  24. 前記抗体が軽鎖可変ドメイン型抗体である、請求項22に記載の方法。
  25. 前記抗体が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方を含む、請求項21に記載の方法。
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