JP2006518192A - 供与体および受容体の特異性が変化したβ(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメイン、invitroタンパク質フォールディングを促進するドメイン、およびそれらの使用方法 - Google Patents

供与体および受容体の特異性が変化したβ(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメイン、invitroタンパク質フォールディングを促進するドメイン、およびそれらの使用方法 Download PDF

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Abstract

オリゴ糖を合成するために使用しうる方法および組成物;供与体および受容体の特異性が変化したガラクトシルトランスフェラーゼの変異体;抗原の免疫原性を高めるための方法;ならびにガラクトシルトランスフェラーゼ由来の触媒ドメインなどの、ポリペプチドのin vitroフォールディングを促進するために使用しうるポリペプチドステム領域、を開示する。

Description

政府による財政支援
本明細書中に記載した本発明は、米国国立衛生研究所から契約NO1-CO-12400号に基づく支援を受けて開発されたものである。米国政府は本発明に関して一定の権利を有しうる。
本発明の優先権
本出願は、米国仮出願第60/439,298号(2003年1月10日出願)および米国仮出願第60/450,250号(2003年2月25日出願)に基づく優先権を主張するものであり、それらの記載内容は参照により本明細書中に含まれるものとする。
発明の分野
本発明は、概して、供与体および受容体の特異性が変化したβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI変異体、ならびにその使用方法に関する。さらに、本発明は、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI変異体を使用することにより抗原(例えば、ワクチン)の免疫原性を高めるための方法、および糖組成物を合成するための方法に関する。
発明の背景
オリゴ糖は糖単位から構成された鎖であり、一般には砂糖として知られている。生体高分子ファミリーの中では、オリゴ糖の研究が最も遅れている。これは部分的には、それらの複合糖鎖の配列決定および合成が困難であることによる。現在のところ、オリゴ糖を合成するために一般的に適用しうる合成技術は存在しない。
糖鎖および糖脂質や糖タンパク質などの糖鎖断片を含む分子に対して、徹底した研究努力が為されている。それらの部分における研究上の関心は、タンパク質と糖鎖との間の相互作用が受精、分子ターゲッティング、細胞内認識を含む多様な生物学的認識事象、ならびにウイルス、細菌、および真菌の病原性に関与しているとの認識によるものが大きい。糖タンパク質および糖脂質のオリゴ糖部分が細胞間相互作用、細胞-リガンド相互作用、細胞-細胞外マトリクス相互作用、および細胞-病原体相互作用を媒介するということは、今日では広く理解されている。
これらの相互作用の多くは、該相互作用に関与する糖タンパク質または糖脂質の活性部分に見出されるものと同じ糖配列および立体化学を有するオリゴ糖で阻害しうると考えられている。オリゴ糖は、受容体タンパク質上の結合部位に関して糖タンパク質および糖脂質と競合するとされている。例えば、二糖であるガラクトシル-β(1,4)-N-アセチルグルコサミンは、肝細胞の形質膜中の受容体と相互作用する糖タンパク質の1成分であると考えられている。従って、細胞受容体により認識されてこれに結合するリガンドによく似たオリゴ糖および他の糖組成物は、診断および治療を含む用途に有用であると考えられる。
数多くの細胞間相互作用を媒介することに加えて、多くのオリゴ糖は、免疫系により認識される。例えば、全てのヒトに存在する自然発生抗体である抗Galは、糖鎖エピトープであるGal-α(1-3)Gal-β(1-4)GlcNAc-R (α-ガラクトシルエピトープ)と特異的に相互作用する。この抗体は、哺乳動物細胞により産生される他のいずれの公知糖鎖エピトープとも相互作用しない(Galili, Springer Seminar Immunopathology, 15:153 (1993))。抗Galは血中IgGの約1%を占めており(Galiliら、J.Exp.Med., 160:1519 (1984))、IgAおよびIgMの形でも見出される(Davineら、Kidney Int., 31:1132 (1987); Sandrinら、Proc.Natl.Acad.Sci., 90:11391 (1993))。該抗体は、血中Bリンパ球の1%により産生される(Galiliら、Blood, 82:2485 (1993))。従って、免疫応答を引き出す糖質の能力を利用し、かかる糖質をワクチンに連結して該ワクチンに対する免疫応答を高めることにより、多様な病原体に対する該ワクチンの有効性を高めることができる。
しかしながら、先に述べたように、オリゴ糖を合成する方法が存在しなかったため、オリゴ糖をヒトまたは動物の疾患用の治療薬として試験するための取り組みは比較的少なかった。限られた種類の小さなオリゴ糖であれば有機化学的手法によりカスタム合成することができるが、かかる化合物に要する費用は通常、法外に高い。その上、オリゴ糖を立体特異的に合成するのは非常に難しく、またシアル酸およびフコースなどの一部の糖の付加は、それらの結合が極めて不安定であるため、効率的に行われていなかった。このため、治療目的で多種多様なオリゴ糖を大量に製造するために、改良された、一般的に適用しうるオリゴ糖合成方法が求められている。従って、本発明は、これまでは連結することが困難であった数多くの糖同士の化学的連結を促進するために使用しうる酵素および方法を提供する。
発明の概要
本発明は、その対応する野生型酵素の触媒ドメインよりも速い速度でグルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合の形成を触媒する、改変型β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインを提供する。また本発明は、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース結合、N-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合、マンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合、およびガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO3結合の形成を触媒するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインも提供する。また本発明は、前述の各触媒ドメインを含有するポリペプチドも提供する。
また本発明により、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIなどのガラクトシルトランスフェラーゼ、およびガラクトシルトランスフェラーゼ変異体の触媒ドメインのin vitroフォールディングを促進するアミノ酸断片も提供される。
本発明は、前述のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインをコードする核酸断片を提供する。前述のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインをコードする核酸断片を含む発現カセットおよび細胞もまた提供される。
さらに、グルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース部分、N-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、マンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、およびガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO3部分を合成する方法が提供される。
また本発明は、抗原の免疫原性を高める方法、および所定の配列を有するオリゴ糖組成物などのオリゴ糖組成物を調製する方法も提供する。
さらに、本発明により、本明細書中に開示した触媒ドメインおよび方法を使用して作製したオリゴ糖が提供される。
発明の詳細な説明
β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIは、ガラクトースの、供与体(UDP-ガラクトース)から受容体(N-アセチルグルコサミン)への転移を触媒することにより、ガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合を形成させる。この反応により、ガラクトースを、それ自体が様々な他の分子に連結されうるN-アセチルグルコサミンに連結することが可能となる。これらの分子の具体例としては、他の糖およびタンパク質が挙げられる。前記反応を利用することにより、生物学的に非常に重要な意味を持つ多様なタイプの分子を作製することができる。例えば、ガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン連結は、細胞が体内で互いに相互作用する仕組み、および細胞が病原体と相互作用する仕組みを制御する多くの認識事象にとって重要である。さらに、このタイプの数多くの他の連結もまた、細胞認識および結合事象、ならびにウイルスなどの病原体との細胞間相互作用にとって非常に重要である。従って、これらのタイプの結合を合成する方法は、疾患を治療するために使用しうる医薬品および改良型ワクチンを開発するための研究および医学において多くの用途を有する。
本発明は、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素活性を、他の方法では作製することが非常に困難である化学結合をこの酵素が作製できるように変更しうるという、驚くべき発見に基づいている。これらの変更は、変異させた酵素が多くの種類の供与体(例えば、糖)を多くの種類の受容体に転移させることができるように、該酵素を変異させることを含む。従って、本発明の変異型β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼを使用することにより、これまでは作製することが非常に困難かつ高価であった多様な生成物を合成することができる。
また本発明は、ガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインの適切なフォールディングを促進するアミノ酸断片も提供する。該アミノ酸断片を使用することにより、本発明のガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを適切にフォールドさせて、それらの活性を上昇させることができる。また、該アミノ酸断片を使用することにより、組換えにより産生されるガラクトシルトランスフェラーゼの活性を上昇させることもできる。従って、本発明のアミノ酸断片を使用すると、該アミノ酸断片の非存在下で作製したβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼと比べてその酵素活性が上昇したβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼを作製することが可能となる。
定義
略語:ステム領域/触媒ドメインβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI (SRCDβ4Gal-T1)、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメイン(CDβ4Gal-T1)、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI (β4Gal-T1)、触媒ドメイン(CD)、ステム(stem)領域(SR)、野生型(wt)、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性(Gal-T)、β-メルカプトエタノール (β-ME)、N-アセチルガラクトサミントランスフェラーゼ活性(GalNAc-T)、α-ラクトアルブミン(LA)。
「受容体」という用語は、供与体が、ガラクトシルトランスフェラーゼまたはその変異体の触媒ドメインの作用によって積極的に連結される分子または構造を指す。受容体の具体例としては、限定するものではないが、糖質(carbohydrate)、糖タンパク質、および糖脂質が挙げられる。
「触媒ドメイン」という用語は、フォールドすると受容体への供与体の連結を触媒しうるドメインとなるアミノ酸断片を指す。例えば、触媒ドメインは、限定するものではないが、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(配列番号5)に由来するもの、ヒトβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(配列番号3)由来の触媒ドメイン、またはマウスβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(配列番号4)由来の触媒ドメインであってよい。触媒ドメインは、野生型酵素に見出されるアミノ酸配列を有していてもよく、または野生型配列とは異なるアミノ酸配列を有していてもよい。例えば、触媒ドメインは、アミノ酸位置228においてリシンがアルギニンに置換されている点を除いては配列番号5のアミノ酸残基130〜402と一致するアミノ酸配列を有していてもよい。
「供与体」という用語は、ガラクトシルトランスフェラーゼまたはその変異体の触媒ドメインの作用によって、受容体分子に積極的に連結される分子を指す。供与体分子は、糖、または糖誘導体を含みうる。供与体の具体例としては、限定するものではないが、UDP-ガラクトース、UDP-マンノース、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルコース、GDP-マンノース、UDP-N-アセチルガラクトサミン、UDP-グルクロン酸、GDP-フコース、およびCMP-N-アセチルノイラミン酸が挙げられる。供与体は、架橋剤または標識物質などの活性基を含む糖誘導体を含む。従って、本発明の方法に従って、所望の特性を有する糖誘導体を含むオリゴ糖を調製することができる。
「発現カセット」は、本明細書中で使用する場合、終結シグナルに機能しうる形で連結された対象ヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されたプロモーターを含む、適当な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を誘導しうるDNA配列を意味する。また「発現カセット」は、典型的にはヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要とされる配列も含む。発現カセットは、天然に存在するが異種発現に有用なその組換え型として取得されたものであってよい。発現カセット内のヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、または宿主細胞がある特定の外部刺激に曝露された時のみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあってもよい。多細胞生物の場合、該プロモーターは特定の組織または器官または発生段階に特異的であってもよい。
オリゴ糖および多糖という用語は、本明細書中では互換的に使用される。これらの用語は、2個以上の糖が連結された糖の鎖を指す。オリゴ糖および多糖は、ランダムな糖配列または予め選択した糖配列を有するホモポリマーおよびヘテロポリマーであってよい。さらに、オリゴ糖および多糖は、自然界で通常見出される糖、糖の誘導体、およびそれらの混合ポリマーを含有していてもよい。
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書中では互換的に使用される。ポリペプチドおよびタンパク質は、原核生物または真核生物の発現系を使用してin vivoで発現させることができる。多くのかかる発現系が当分野で公知であり、また市販されている(Clontech, Palo Alto, CA; Stratagene, La Jolla, CA)。かかる系の具体例としては、限定するものではないが、原核生物におけるT7-発現系および真核生物におけるバキュロウイルス発現系が挙げられる。ポリペプチドは、例えば、固相ペプチド合成法またはin vitro転写/翻訳系により、in vitroで合成することもできる。かかる方法は、例えば、米国特許第5,595,887号、第5,116,750号、第5,168,049号および第5,053,133号; Olsonら、Peptides, 9, 301, 307 (1988)に記載されている。固相ペプチド合成法は確立されかつ広く利用されている方法であり、以下の参考文献:Stewartら、Solid Phase Peptide Synthesis, W.H.Freeman Co., San Francisco (1969); Merrifield, J.Am.Chem.Soc., 85 2149 (1963); Meienhofer in “Hormonal Proteins and Peptides,” ed.; C.H.Li, Vol.2 (Academic Press, 1973), pp.48-267; BavaayおよびMerrifield, “The Peptides,” eds. E.GrossおよびF.Meienhofer, Vol.2 (Academic Press, 1980) pp.3-285;ならびにClark-Lewisら、Meth. Enzymol., 287, 233 (1997)に記載されている。これらのポリペプチドは、免疫アフィニティカラムもしくはイオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカもしくはDEAEなどの陰イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィ、クロマト分画、SDS-PAGE、硫安沈殿、例えばSephadex G-75を用いるゲルろ過、またはリガンドアフィニティクロマトグラフィによりさらに精製することができる。
本発明のポリペプチドとしては、アミノ酸置換を有するポリペプチド、すなわち、変異ポリペプチドが挙げられる(ただし、このポリペプチド変異体が生物活性を示す場合に限る)。該変異ポリペプチドは、そのポリペプチド中の少なくとも1個のアミノ酸残基の別のアミノ酸残基への置換、例えば、L体ではなくD体を用いる他、他の周知のアミノ酸類似体(例えば、N-アルキルアミノ酸、乳酸など)を用いる置換を含む。これらの類似体としては、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、馬尿酸、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、スタチン、1,2,3,4,-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、N-メチル-アラニン、パラ-ベンゾイル-フェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸ならびにtert-ブチルグリシンが挙げられる。
保存的アミノ酸置換が好ましく、これには例えば、酸性アミノ酸の場合はアスパラギン酸-グルタミン酸、塩基性アミノ酸の場合はリシン/アルギニン/ヒスチジン、疎水性アミノ酸の場合はロイシン/イソロイシン、メチオニン/バリン、アラニン/バリン、親水性アミノ酸の場合はセリン/グリシン/アラニン/トレオニンが含まれる。また、保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づくグループ分けも含まれる。各グループ中でメンバーは別のメンバーに置換することができる。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである。これらは互いに置換することができる。脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびトレオニンである。アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リシン、アルギニン、およびヒスチジンである。硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンである。例えば、ロイシンの、イソロイシンもしくはバリンによる置き換え、アスパラギン酸の、グルタミン酸による置き換え、トレオニンのセリンによる置き換え、またはあるアミノ酸の、これに構造上関連するアミノ酸による同様の置き換えを行うことにより、本発明の変異ポリペプチドを作製することができる。
I. 本発明のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメイン
A. 供与体と受容体との間の結合の形成を触媒することによりグルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合を形成させる触媒ドメイン
β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの供与体結合部位を変異させると、この酵素の供与体特異性が拡張されることが発見された。より具体的に言うと、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの供与体結合部位に位置するアミノ酸残基を置換することによりその柔軟性を高めて立体障害性を減じると、グルコースがN-アセチルグルコサミンに固定されてこれに化学結合することが可能となることが判明した。かかる変異により供与体結合(例えば、グルコースの結合)が拡張されるが、供与体と受容体との間の触媒性結合形成におけるアミノ酸残基との相互作用は保持される。いずれの理論にも束縛されるつもりはないが、触媒反応にとって重要であると考えられる触媒残基の1例は、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI中のアミノ酸位置317に位置するグルタミン酸(E317)である。ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI中のこのグルタミン酸は、ヒトおよびマウスβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI中のそれぞれアミノ酸位置313およびアミノ酸位置314のグルタミン酸残基に相当する。従って本発明は、供与体結合部位における柔軟性を高めて立体障害性を小さくすることにより、変異型β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIが受容体(例えば、N-アセチルグルコサミンまたはグルコース)への該供与体の化学結合を触媒できるようにするアミノ酸の置換、挿入、および欠失を有するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI変異体を提供する。
幾つかの実施形態では、本発明の触媒ドメインは、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(配列番号5)中の228位に相当するアミノ酸位置のアルギニンが別のアミノ酸に交換されている。具体的な交換の1例はR228Kである。ヒトおよびマウスβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(それぞれ配列番号3および4)中の対応するアルギニンは、アミノ酸位置224および225にある。マウス、ヒト、およびウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIでは、アルギニンはアミノ酸配列FNRAKLL(配列番号1)内に位置している。従って、当業者であれば、他のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインにおいて等価なアミノ酸を容易に決定することができる。
別の実施形態では、本発明の触媒ドメインは、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI中の228位に相当するアミノ酸位置のアルギニンが別のアミノ酸に置換されており、また229位に相当するアミノ酸位置のアラニンが別のアミノ酸に置換されている。
かかる触媒ドメインの実例は、アミノ酸位置228のアルギニンがリシンに置換されており(R228K)、かつアミノ酸位置229のアラニンがグリシンに置換されている(A229G)ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIである。ヒトおよびマウスβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(それぞれ、配列番号3および4)中の対応するアラニンは、アミノ酸位置225および226にある。マウス、ヒト、およびウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIでは、アルギニンはアミノ酸配列FNRAKLL (配列番号1)内に位置している。従って、当業者であれば、他のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインにおいて等価なアミノ酸を容易に決定することができる。
B. 供与体と受容体との間の結合の形成を触媒することによりN-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合を形成させる触媒ドメイン
N-アセチルガラクトサミンと、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI中の供与体結合部位に隣接するアミノ酸残基との間の水素結合の形成は、N-アセチルガラクトサミンの受容体への転移が不十分であることに起因すると仮定された。また、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI中の供与体結合部位において1個以上のアミノ酸残基を変異させてN-アセチルガラクトサミンとの水素結合形成を排除することにより、変異型β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIがN-アセチルガラクトサミンを供与体から受容体へより効率的に転移させることが可能になるとも仮定された。従って、本発明は、受容体(例えば、N-アセチルグルコサミンまたはグルコース)へのN-アセチルガラクトサミンの転移を減じる水素結合が減少しているかまたは存在しない、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの変異体を含む。
幾つかの実施形態では、本発明の触媒ドメインは、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(配列番号5)中の289位に相当するアミノ酸位置のチロシンが別のアミノ酸で交換されている。具体的な交換の例は、Y289L、Y289I、およびY289Nである。ヒトおよびマウスβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(それぞれ、配列番号3および4)中の対応するチロシンは、アミノ酸位置285および286にある。マウス、ヒト、およびウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIでは、チロシンはアミノ酸配列YVQYFGG(配列番号2)内に位置している。従って、当業者であれば、他のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインにおいて等価なアミノ酸を容易に決定することができる。
ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI中のアミノ酸位置289に位置するチロシンに相当するチロシンが別のアミノ酸に置換されている変異体は、任意で、アミノ酸位置342に相当する第2の変異を含んでいてもよい。かかる変異としては、アミノ酸位置342のシステインのトレオニンへの置換(C342T)を挙げることができる。しかし、活性な触媒ドメインを提供する他のアミノ酸がシステインと交換されていてもよい。
C. 供与体と受容体との間の結合の形成を触媒することによりN-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース結合を形成させる触媒ドメイン
本明細書中に記載した、N-アセチルガラクトサミンの受容体への化学結合形成を触媒しうるβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI変異体を、α-ラクトアルブミンと一緒に用いることにより、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース結合の形成を触媒することができる。
α-ラクトアルブミンは、グルコースに対するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの糖受容体特異性を変化させる乳腺特異的カルシウム結合タンパク質である。このため、α-ラクトアルブミンを使用してβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI、および本明細書中に記載したその変異体の受容体特異性を変化させることにより、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース結合形成を効率的に触媒することができる。α-ラクトアルブミンをガラクトシルトランスフェラーゼまたはその活性ドメインと一緒に用いるための条件は、以前に記載されている(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 276:37665 (2001))。
D. 供与体と受容体との間の結合の形成を触媒することによりN-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合、オリゴN-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン、およびマンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミンを形成させる触媒ドメイン
本明細書中に記載した変異体を組み合わせることにより、供与体特異性が選択的に変更された触媒ドメインを作製することができる。例えば、アミノ酸位置228(R228K)および289(Y289L)に置換を有するウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIから取得した触媒ドメインは、N-アセチルグルコサミンのN-アセチルグルコサミンへの連結を触媒することにより、N-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合を形成させることが可能であった。同じ変異型触媒ドメインは、N-アセチルガラクトサミンのN-アセチルグルコサミンへの連結を触媒することにより、オリゴN-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミンを形成させることが可能であった。拡張された供与体特異性は、該変異型触媒ドメインがマンノースのN-アセチルグルコサミンへの連結を触媒しマンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミンを形成させるその能力により、さらに実証された。従って、供与体特異性が変更された数多くの変異型触媒ドメインを、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの228位および289位に相当する位置のアミノ酸に相当するアミノ酸を変異させることにより作製することができる。上記の通り、これらのアミノ酸位置はヒトなどの他の生物から取得したガラクトシルトランスフェラーゼ酵素において容易に決定することができるし、またこれらを変異させることにより、供与体特異性が変化したさらなる触媒ドメインを作製することができる。
E. 供与体と嵩高い側鎖を有する受容体との間の結合の形成を触媒することにより、例えば、ガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO 3 結合を形成させる触媒ドメイン
ガラクトシルトランスフェラーゼから取得した触媒ドメインの受容体特異性を変更することにより、供与体を嵩高いおよび/または帯電した側鎖を有する受容体上に転移させうる触媒ドメインを作製することができる。
ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIから取得されるかかる変化した触媒ドメインの1例は、アミノ酸位置279(K279S)および280(F280T)に置換を有する。この変化した触媒ドメインは、ガラクトースのN-アセチルグルコサミン-6-SO3への転移を触媒することによりガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO3を形成することができる。さらなる触媒ドメインは、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの279位および280位に相当する位置にある1個以上のアミノ酸残基を変更することにより作製できる。上記の通り、これらのアミノ酸位置はヒトなどの他の生物から取得したガラクトシルトランスフェラーゼ酵素において容易に決定することができるし、またこれらを変異させることにより、受容体特異性が変化したさらなる触媒ドメインを作製することができる。
ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの279位および280位に相当する位置のアミノ酸を個別または同時に置換することにより、嵩高い(立体的に大きい)かまたは帯電した側鎖を有する数多くの受容体を受容しうるよう変更された受容体部位を有する、多くの様々な触媒ドメインを作製することができる。かかる変更型触媒ドメインを使用すれば、供与体由来の糖の、所望の側鎖を有する受容体への連結を触媒することができる。
II. 本発明の触媒ドメインは、全長β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI酵素内、または該触媒ドメインを含有する組換え分子内に含まれていてもよい
本発明のペプチドとしては、単離された触媒ドメイン、本発明の触媒ドメインを含有する全長β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI酵素、ならびにさらなるアミノ酸に連結された本発明の触媒ドメインを含む組換えポリペプチドが挙げられる。かかるポリペプチドは、組換え法を利用して作製したDNA構築物および発現カセットから発現させることができる。かかる方法は、以前に記載されている(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001))。
本発明の触媒ドメインを含有するガラクトシルトランスフェラーゼ酵素は、可溶性形態で作製することができる。かかる可溶性酵素を作製するために利用しうる方法は、以前に記載されている(米国特許第5,032,519号)。簡単に言うと、ガラクトシルトランスフェラーゼの疎水性膜貫通アンカー領域を除去することにより、可溶性形態の酵素を作成する。
あるいは、本発明の触媒ドメインを含有するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素は、それらがガラクトシルトランスフェラーゼを発現する細胞の膜中に固定されるように作製することができる。原核細胞および真核細胞の膜中に固定されたかかる酵素を作製することができる。かかる酵素を作製する方法は、以前に記載されている(米国特許第6,284,493号)。
簡単に言うと、原核生物の場合、ガラクトシルトランスフェラーゼのシグナル配列および膜貫通配列を、融合タンパク質を外膜に局在させることができる細菌性シグナル配列に置き換える。適切なシグナル配列としては、大腸菌(E.coli)の主要リポタンパク質であるLppおよびlamB由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、Omp A、Omp C、Omp FまたはPho E由来の膜貫通領域を三者融合タンパク質中で使用することにより、該融合タンパク質の外膜への適切な挿入を指示することができる。代表例として大腸菌(E.coli)、バチラスsp.(Bacillus sp.)、およびシュードモナスsp.(Pseudomonas sp.)を含むがこれらに限定されない原核細胞はいずれも、本発明に従って使用することができる。
別の実施形態では、ガラクトシルトランスフェラーゼの天然の膜貫通ドメインが、細菌の外膜タンパク質の膜貫通ドメインに置き換えられている。この実施形態では、ガラクトシルトランスフェラーゼのシグナル配列と細菌の膜貫通領域が協力して作用することにより、ガラクトシルトランスフェラーゼを細菌の細胞外膜に固定する。Omp A、Omp C、およびOmp F、Lpp、およびLam Bを含むがこれらに限定されない殆ど全ての外膜結合タンパク質が、この用途に適している。ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒部分を細菌の膜貫通領域内の細胞外ループに融合させることにより、融合タンパク質が細胞の細胞質またはペリプラズム内ではなくその外膜表面上で適切な向きを取るようにするとよい。かかるループ領域へのタンパク質の挿入については、以前に報告されている(Charbitら、J. Bacteriology, 173:262 (1991); Franciscoら、Proc.Natl.Acad.Sci., 89:2713(1992))。
また本発明は、真核細胞での使用にも適用可能であり、それによって、酵母細胞、昆虫細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、マウスA9細胞、ベビーハムスター腎細胞、C127細胞、COS細胞、Sf9細胞、およびPC8細胞を含むがこれらに限定されない公知の培養可能な真核細胞におけるガラクトシルトランスフェラーゼの細胞表面発現を導くことができる。
本発明の別の実施形態では、ガラクトシルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインが、形質膜タンパク質の膜貫通ドメインに置き換えられている。いずれの局在性形質膜タンパク質の膜貫通ドメインも、この目的に合っている。M6 P/IGF-II受容体、LDL受容体またはトランスフェリン受容体の膜貫通部分は代表的な例である。
別の実施形態では、ガラクトシルトランスフェラーゼのゴルジ残留シグナルが、部位特異的突然変異誘発により破壊されている。このアプローチにより、ガラクトシルトランスフェラーゼのゴルジ区画への局在化を担うアミノ酸が変異する。得られたガラクトシルトランスフェラーゼは形質膜へと輸送され、そこでその改変された膜貫通配列によって固定される。イソロイシン残基と、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼの膜貫通領域内の天然アミノ酸とを置換すると、この酵素がゴルジ体ではなく形質膜に選択的に局在化することが証明されている(Masibayら、J.Biol.Chem., 268:9908 (1993))。
III. ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒ドメインのin vitroフォールディングを促進するステム領域
β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIは、短い細胞質性の尾部、膜貫通ドメインに続いてステム領域を有するII型ゴルジ残留タンパク質であり、ゴルジ内腔に向いた球状の触媒ドメインを有する。β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメインを大腸菌(E.coli)内で発現させると、該ドメインは不溶性の封入体を形成する。これらの封入体を回収し、次に可溶化してin vitroでフォールドさせることにより、触媒活性ドメインを生成することができる。従って、in vitroフォールディング効率は、単離した封入体から作製される活性酵素の量に直接関連している。従って、in vitroフォールディング効率を高める方法は、有用な生成物を作製するために使用しうる触媒ドメインの生成量を増大させるだろう。
本発明は、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIのステム領域(例えば、配列番号6および7)の使用に関連する、ガラクトシルトランスフェラーゼ由来の触媒ドメインのin vitroフォールディングを改良する物質および方法を提供する。β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI由来のステム領域をβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメインのアミノ末端に融合すると、該触媒ドメインのin vitroフォールディング効率が高まることが分かった。フォールディングにおけるこの増大はβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI酵素に普遍的なものと考えられており、このことはウシおよびヒトの酵素の両方で実証されている。
フォールディング反応時にPEG-4000およびL-Argを封入させると、PEG-4000およびL-Argの非存在下で触媒ドメインのみをリフォールドさせた場合と比べて、本来の通りにフォールドする触媒ドメインが4倍〜7倍増大することがさらに発見された。PEG-4000およびL-アルギニンは、封入体から取得したタンパク質のin vitroフォールディング時の触媒ドメイン-タンパク質(CD-タンパク質)とステム領域/触媒ドメインタンパク質(SRCD-タンパク質)の両方のフォールディング中間体の溶解度に有益な影響を与えると考えられる。In vitroフォールディング時にPEG-4000およびL-アルギニンが存在すると、未変性分子とミスフォールド分子の両方の形成が増強される。関連する過程を図9に概略的に示す。CD-タンパク質の場合、大部分のミスフォールドタンパク質はPEG-4000およびL-アルギニンの非存在下では不溶性であるため、透析中に沈殿として現れる。この過程は、UDP-アガロースに結合しかつ酵素活性を示す適切にフォールドした分子を、溶液中に残した(図8)(表IX)。SR-ドメインは、PEG-4000およびL-アルギニンと同様に、フォールディング中間体の可溶化に寄与し、それによって未変性SRCD分子とミスフォールドSRCD分子の両方の形成を増強させたと考えられる。PEG-4000およびL-アルギニンの存在により、SRCD分子のフォールディング中間体の可溶化がさらに増強された。ミスフォールドSRCDタンパク質は、大部分のCD-タンパク質とは対照的に、PEG-4000およびL-アルギニンの非存在下でも可溶性のままであった。このため、ミスフォールドSRCD-タンパク質は、透析時に沈殿物として除去されなかった。ミスフォールドSRCD-タンパク質は、UDP-アガロースカラム上への結合を介して、適切にフォールドしたタンパク質から分離することができる(表IX)。従って、SR-ドメインは、ミスフォールド触媒ドメインとフォールド触媒ドメインの両方に対して可溶化剤として作用すると考えられる。SRCD-タンパク質の溶解度の上昇は、ミスフォールドタンパク質の凝集を阻止することによって生じると考えられる。この点で、その作用機序はシャペロンタンパク質の作用と似ていると考えられる。天然タンパク質のフォールディングおよび安定性におけるN末端ステム領域の正の効果は、他のガラクトシルトランスフェラーゼファミリーのメンバーを大量に作製する際に非常に有用である。
ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIのin vitroフォールディング効率は、アミノ酸位置342のシステインをトレオニンで置換する(C342T)ことによりさらに高まった。同じような変異を、他の生物由来のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI酵素中で生じさせることができる。
封入体からフォールドし、かつ精製された野生型ウシSRCDβ4Gal-T1は、短時間のうちにステム領域内のSer96位で開裂したことが分かった。このため、ウシSRCDβ4Gal-T1の分解を減らすために、アミノ酸位置96のセリンをAlaに交換してS96A-SRCDβ4Gal-T1を作製した。細菌の封入体からのフォールディングおよび精製の後は、S96A-SRCDβ4Gal-T1は、S96A変異を含まないSRCDβ4Gal-T1と比べて長期にわたってより安定であることが見出された。S96A-SRCDβ4Gal-T1を、本明細書中に開示したin vitroフォールディング研究の一部で使用した。
ステム領域を含む触媒ドメインのPEG-4000およびL-Arg存在下のin vitroフォールディング効率は約50%であり、リフォールド生成物の溶解度は約90%だった。
従って、本発明は、ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒ドメインに融合することにより該触媒ドメインのin vitroフォールディングを増加させうる、ガラクトシルトランスフェラーゼファミリーのメンバー由来のステム領域を含む。かかるステム領域は、ウシステム領域に対するアミノ酸配列の相同性に基づいて容易に決定することができるし、またこれをガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインのフォールディングを促進するその能力について試験することができる。また本発明は、本明細書中に開示した変異体、および他の種におけるそれらの対応する類似体も含む。
ガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含有する封入体を単離しかつフォールドさせるための一般法は、以前に記載されている(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 276:37665 (2001))。これらの方法を、本発明のステム領域、PEG-4000、およびL-Argと一緒に用いることにより、ガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインのフォールディング効率を高めることができる。これらの方法は、本明細書中の実施例の項に記載されている。
IV. β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメインをコードする核酸断片、該核酸断片を含む発現カセット、ならびに該核酸断片および該発現カセットを含む細胞
本発明は、供与体または受容体特異性が変化したβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメインをコードする単離された核酸断片を提供する。また本発明は、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIなどのガラクトシルトランスフェラーゼに由来する触媒ドメインの適切なフォールディングを促進するアミノ酸断片をコードする核酸断片も提供する。
ヒトβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(配列番号8)、ならびに他の生物由来の他のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIをコードする核酸配列が入手可能である。これらの核酸配列を、周知技術(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001))を利用して改変することにより、本発明の触媒ドメインおよびアミノ酸断片をコードさせることができる。例えば、ヒトβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI(配列番号8)をコードする核酸配列の一部を発現ベクター中に挿入し、該発現ベクターで細胞を形質転換して、ヒトβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメイン(配列番号6)に相当するアミノ酸断片が発現されるようにすることができる。別の例では、部位特異的突然変異誘発法(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 277:20833 (2002))を利用して、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIを、アミノ酸位置289のチロシンをロイシン、イソロイシン、またはアスパラギンに置き換えるように変化させることができる。同様の方法を利用して、本明細書中に記載したさらなる変異体および触媒ドメインをコードする核酸断片を作製することができる。
本発明の核酸断片は、選択した細胞における発現のために最適化することができる。コドン最適化表を利用することができる(HarlowおよびLane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)。
前記核酸断片は、多様なタイプのベクター中に挿入することができる。ベクターとしては、限定するものではないが、自己伝播性(self transmissible)もしくは可動性であってもそうでなくてもよい二本鎖もしくは一本鎖で線状もしくは環状形態の任意のプラスミド、ファージミド、F因子、ウイルス、コスミド、またはファージを挙げることができる。また、該ベクターは、細胞ゲノム内へ組み込むかまたは染色体外に存在させる(例えば、複製起点を有する自律複製プラスミド)ことにより、原核生物宿主または真核生物宿主を形質転換することもできる。
好ましくは、前記ベクター中の前記核酸断片は、in vitroでの転写または真核細胞もしくは微生物(例えば、細菌)など宿主細胞における転写のための適当なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にあって、これらに機能しうる形で連結されている。 ベクターは、複数種の宿主内で機能する二元機能性発現ベクターであってもよい。ゲノムDNAの場合、これはその固有のプロモーターまたは他の調節エレメントを含有していてもよく、またcDNAの場合には、これは宿主細胞における発現のためのプロモーターまたは他の調節配列の制御下にあってもよい。
具体的には、細菌および真核細胞(例えば、哺乳動物、酵母もしくは真菌の細胞)から選択されうる2つの異なる宿主生物において天然でまたは設計することにより複製可能なDNA運搬体を意味する、シャトルベクターが挙げられる。
また、前記ベクターは、典型的には核酸断片を確定的な様式で挿入しうる1個または少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含有するクローニングベクターであってもよい。かかる挿入は、該クローニングベクターの本質的な生物学的機能を失うことなく行うことができる。またクローニングベクターは、該クローニングベクターで形質転換した細胞の同定および選別に使用するのに適した標識遺伝子を含有していてもよい。標識遺伝子の具体例は、テトラサイクリン耐性、ハイグロマイシン耐性またはアンピシリン耐性のものである。多くのクローニングベクターが市販されている(Stratagene, New England Biolabs, Clonetech)。
また、本発明の核酸断片は、発現ベクター中に挿入することもできる。典型的には、発現ベクターは、(1)細菌宿主において該発現ベクターの増幅および選択をもたらす細菌の複製起点および抗生物質耐性遺伝子をコードする原核生物のDNAエレメント、(2)プロモーターなどの、転写の開始を制御する調節エレメント、ならびに(3)イントロン、転写終結/ポリアデニル化配列などの、転写物のプロセシングを制御するDNAエレメント、を含有する。
核酸断片をベクター中に導入する方法は当分野で周知である(Sambrookら、1989)。簡単に言うと、核酸断片を挿入しようとするベクターを1種以上の制限酵素(制限エンドヌクレアーゼ)で処理することにより、平滑末端、5’もしくは3’突出部を有する「粘着性の」末端、またはこれらの任意の組み合わせ、を有する線状化ベクターを生成する。また、ベクターを制限酵素で処理し、続いてこれをポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ホスファターゼまたはキナーゼなどの別の修飾酵素で処理すれば、核酸断片の該ベクター中へのライゲーションに有用な特性を有する線状化ベクターを作製することもできる。ベクター中に挿入しようとする核酸断片を1種以上の制限酵素で処理することにより、平滑末端、5’もしくは3’突出部を有する「粘着性の」末端、またはこれらの任意の組み合わせ、を有する線状化断片を作製する。また、核酸断片を制限酵素で処理し、続いてこれを別のDNA修飾酵素で処理することもできる。かかるDNA修飾酵素としては、限定するものではないが、核酸断片のベクター中へのライゲーションに有用な特性を有するポリ核酸断片を作製するための、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ホスファターゼまたはキナーゼが挙げられる。
その後、当分野で公知の方法(Sambrook, 2002)に従って、前記で処理したベクターと核酸断片を1つにライゲートすることにより、核酸断片を含有する構築物を形成させる。簡単に言うと、処理した核酸断片と処理したベクターとを、適切なバッファおよびリガーゼの存在下で混合する。その後、この混合物を適当な条件下でインキュベートすると、リガーゼが核酸断片をベクター中へライゲートできるようになる。核酸断片およびベクターはそれぞれ、平滑末端ライゲーションとは異なり、ライゲーション効率を高めるために相補的な「粘着性の」末端を有していることが好ましい。ベクターおよび核酸断片をそれぞれ2つの異なる制限酵素で処理して2つの異なる相補的「粘着」末端を作成することが、より好ましい。これにより核酸断片のベクター中への指向性ライゲーションが可能となり、ライゲーション効率が高まるので、ベクターの末端同士がライゲーションして挿入核酸断片を含まないベクターが再形成されることが回避される。
適切な原核生物のベクターとしては、pBR322、pMB9、pUC、λバクテリオファージ、m13バクテリオファージ、およびBluescript(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。適切な真核生物のベクターとしては、PMSG、pAV009/A+、PMTO10/A+、pMAM neo-5、バキュロウイルス、pDSVE、YIP5、YRP17、YEPが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、どの細胞型を宿主細胞として使用するかに応じてどのベクターまたはプロモーター系を使用すべきかは明らかであろう。
また本発明は、in vitroまたは宿主細胞内で本発明の特定の核酸断片の発現を誘導できる制御配列を含有する発現カセットも提供する。発現カセットは、該発現カセットがin vitro転写および翻訳アッセイにおいて線状形態をとり、かつ機能しうるような、単離可能な単位である。これらのアッセイを実施するための材料および手段は、Promega社(Madison, Wisconsin)から市販されている。例えば、in vitro転写物は、核酸断片をT7プロモータの制御下に置き、次いでT7 RNAポリメラーゼを使用してin vitro転写物を生成させることにより、作製することができる。その後、この転写物を、ウサギ網状赤血球溶解物を使用してin vitroで翻訳することができる。あるいは、発現カセットをベクター中に組み入れることにより、該発現カセットを宿主細胞内で複製および増幅させることができるし、または同様に、核酸断片をin vitroで転写および翻訳させることができる。
かかる発現カセットに1個または複数個の制限部位を含有させて、調節配列の調節下に核酸断片を配置することができる。また、該発現カセットに、核酸断片に機能しうる形で連結された末端シグナル、ならびに該核酸断片の適切な翻訳に要する調節配列を含有させることもできる。発現カセット中の核酸断片の発現は、構成的プロモーター、または宿主細胞がある特定の外部刺激に曝露された場合にのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあってもよい。
前記発現カセットは、5’-3’の転写方向に、in vivoおよび/またはin vitroで機能する転写および翻訳開始領域、核酸断片、ならびに転写および翻訳終結領域を含んでいてもよい。該終結領域は転写開始領域に固有のものであっても、核酸断片に固有のものであっても、または別の供給源に由来するものであってもよい。数多くの終結領域が当分野で公知である(Guerineauら、Mol.Gen.Genet., 262:141 (1991); Proudfoot, Cell, 64:671 (1991); Sanfaconら、Genes Dev., 5:141 (1991); Munroeら、Gene, 91:151 (1990); Ballasら、Nucleic Acids Res., 17:7891 (1989); Joshiら、Nucleic Acid Res., 15:9627 (1987))。
前記調節配列は、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、またはコード配列の下流(3’非コード配列)に位置し、かつ転写、RNAのプロセシングもしくは安定性、または関連するコード配列の翻訳に影響を及ぼす核酸配列でありうる。調節配列としては、限定するものではないが、エンハンサー、プロモータ、リプレッサー結合部位、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化シグナル配列を挙げることができる。それらは、天然および合成の配列ならびに合成および天然配列の組み合わせでありうる配列を含んでいてもよい。調節配列はプロモーターに限定されないが、いくつかの有用な調節配列として、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、調節されたプロモーター、組織特異的プロモーター、ウイルス性プロモーターおよび合成プロモーターが挙げられる。
プロモーターは、適切な転写に必要とされるRNAポリメラーゼの認識および他の要素を提供することによりコード配列の発現を制御するヌクレオチド配列である。プロモーターとしては、TATAボックス、ならびに/またはTATAボックスと転写開始部位を特定する際に役立つ他の配列とからなる短いDNA配列であるイニシエーターなどの、転写開始に要する全ての基本エレメントのみで構成される最小プロモーターが挙げられるが、発現を制御する場合には該プロモーターに調節エレメントが追加される。プロモーターは誘導性であってよい。幾つかの誘導性プロモーターが報告されている(Current Opinion in Biotechnology, 7:168 (1996))。具体例としては、テトラサイクリンリプレッサー系、Lacリプレッサー系、銅誘導系、サリチル酸塩誘導系(例えば、PR1a系)が挙げられる。また、ベンゼンスルホンアミド-(米国第5364,780号)およびアルコール-(国際公開第97/06269号および国際公開第97/06268号)誘導系ならびにグルタチオンS-トランスフェラーゼプロモーターも挙げられる。多細胞生物の場合、プロモーターは特定の組織または器官または発生段階に特異的であってもよい。
エンハンサーはプロモーター活性を刺激しうるDNA配列であり、該プロモーターの固有エレメントであっても、またはプロモーターの濃度もしくは組織特異性を高めるために挿入する異種エレメントであってもよい。エンハンサーはいずれの方向(通常または反対の方向)に操作することもできるし、またプロモーターから下流または上流に移動させた場合でも機能させることができる。エンハンサーおよび他の上流プロモーターエレメントは共に、それらの効果を媒介する配列特異的DNA結合タンパク質に結合する。
前記発現カセットには、コード配列に対して5’側(上流)に位置するヌクレオチド配列である5’非コード配列を含有させることができる。該5’非コード配列は完全にプロセシングされたmRNA中の開始コドンの上流に存在するので、一次転写物のmRNAへのプロセシング、mRNAの安定性、または翻訳効率に影響を及ぼす可能性がある(Turnerら、Molecular Biotechnology, 3:225 (1995))。
前記発現カセットには、コード配列に対して3’側(下流)に位置するヌクレオチド配列である3’非コード配列をさらに含有させることができ、該3’非コード配列としてはポリアデニル化シグナル配列およびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼしうる調節シグナルをコードする他の配列が挙げられる。ポリアデニル化シグナルは、普通は、ポリアデニル酸領域のmRNA前駆体の3’末端への付加に影響を及ぼすことを特徴とする。
また本発明は、ベクターおよび発現カセットを含有する構築物も提供する。ベクターは、限定するものではないが、以前に記載されたあらゆるベクターから選択することができる。このベクター中に、当分野で公知でありかつ以前に記載された方法(Sambrookら、1989)により、発現カセットを挿入することができる。ある実施形態では、発現カセットの調節配列は、該発現カセットを挿入するベクター以外の供給源に由来するものであってよい。別の実施形態では、ベクターおよび発現カセットを含有する構築物は、本発明の核酸断片を、それ自体が調節配列を含有するベクター中に挿入した場合に形成される。従って、発現カセットは、核酸断片をベクター中に挿入すると形成される。調節配列を含有するベクターは市販されており、またそれらを使用するための方法は当分野で公知である(Clonetech, Promega, Stratagene)。
前記発現カセット、または前記発現カセットを含有するベクター構築物は、細胞中に挿入することができる。発現カセットまたはベクター構築物は、エピソームとして担持させるか、または細胞のゲノム内に組み込むことができる。
構築物を細胞宿主に導入するための多様な技術が利用可能であり、また当業者に公知である。細菌および多くの真核細胞の形質転換は、ポリエチレングリコール、塩化カルシウム、ウイルス感染、ファージ感染、エレクトロポレーションおよび当分野で公知の他の方法を利用して達成することができる。当業者であれば、外来DNA構築物の直接取り込み(欧州特許第295959号を参照されたい)、エレクトロポレーション技術(Frommら、Nature (London), 319:791 (1986))または核酸構築物で被覆した金属粒子を用いる高速遺伝子銃(high velocity ballistic bombardment)(Klineら、Nature (London) 327:70 (1987)、および米国特許第4,945,050号)などの他の形質転換方法も利用可能である。
適当な発現ベクターの選択は、宿主細胞内に該発現ベクターを導入するその方法に応じて行われる。典型的には、発現ベクターは、(1)細菌宿主において発現ベクターの増幅と選択をもたらす細菌の複製起点および抗生物質耐性遺伝子をコードする原核生物のDNAエレメント、(2)プロモーターなどの、転写の開始を制御するDNAエレメント、(3)イントロン、転写終結/ポリアデニル化配列などの、転写物のプロセシングを制御するDNAエレメント、ならびに(4)転写開始を制御する前記DNAエレメントに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子、を含有する。有用なレポーター遺伝子としては、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)などが挙げられる。
V. グルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース部分、N-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、マンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分、およびガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO 3 部分を合成する方法
供与体および受容体特異性が変化した本発明の触媒ドメインを使用することにより、供与体由来の数多くの糖の数多くの受容体糖への連結を触媒することができる。また、糖誘導体の連結も、本発明の変化した触媒ドメインを使用し、それらの拡張された供与体および受容体特異性を通じて達成することができる。
例えば、第IA節の触媒ドメインを使用してグルコースとN-アセチルグルコサミンとの連結を触媒することが可能であり、第IB節の触媒ドメインを使用してN-アセチルガラクトサミンとN-アセチルグルコサミンとの連結を触媒することが可能であり、本明細書中に記載した触媒ドメインの多くは、第IC節に記載したようにα-ラクトアルブミンと共に使用することで糖のグルコースへの連結を触媒することが可能であり、第ID節の触媒ドメインを使用してN-アセチルグルコサミンとN-アセチルグルコサミンとの連結、N-アセチルガラクトサミンのN-アセチルグルコサミンへの連結、およびマンノースのN-アセチルグルコサミンへの連結を触媒することが可能であり、また第IE節の触媒ドメインを使用して供与体と嵩高い側鎖を有する受容体との連結(例えば、ガラクトースのN-アセチルグルコサミン-6-SO3への連結)を触媒することが可能である。
受容体は溶液中で遊離していても、または別の分子に連結されていてもよい。例えば、受容体は、タンパク質、別の糖、糖誘導体などに連結されていてもよい。また受容体は、供与体を連続して付加することにより指定の配列を有するオリゴ糖およびその誘導体を形成しうるプラットホームを提供する、固相支持体に連結されていてもよい。
一般に、供与体と受容体との間の連結は、本発明の触媒ドメインを所望の供与体および所望の受容体と共に適当な温度、pH、および二価金属濃度の条件下でインキュベートして該供与体の該受容体への連結を可能にすることにより、達成される。
例えば、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIのガラクトースおよびN-アセチルガラクトシルトランスフェラーゼ活性は、以下のアッセイ条件を利用して測定することができる。50 mM β-ベンジル-GlcNAc、10 mM MnCl2、10 mM Tris-HCl (pH 8.0)、500μM UDP-GalまたはUDP-GalNAc、および20 ngのβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI を含有する100μLのインキュベーション混合物を37℃で10分間インキュベートすることで、供与体糖の受容体糖へのカップリングを促進することができる。これらの条件を1例として提供するが、本発明の変更型触媒ドメインを使用して供与体を受容体へ化学結合させる際には、多くの他の条件を利用しうることが理解されよう。
VI. オリゴ糖を調製する方法
本発明は、オリゴ糖、特に本発明の変化した触媒ドメインを使用して予め選択された配列を有するオリゴ糖を合成する方法を提供する。一般に、この方法は、糖またはその誘導体を伸長中のオリゴ糖鎖の末端に連続付加することを含む。本発明の酵素以外の酵素を使用したかかる方法は、以前に記載されている(米国特許第6,284,493号)。
簡単に言うと、供与体および受容体を、本発明の変化した触媒ドメインと共に、該供与体が該受容体に連結されうる条件下でインキュベートすればよい。これらの条件については、本明細書中の実施例の節に記載されている。
ある実施形態では、供与体および受容体を、溶液中で本発明の触媒ドメインと混合すればよい。その後、該溶液をインキュベートすることにより、該供与体を該受容体に連結させる。新たに連結した分子を単離し、次いでこれを第2供与体および第2トランスフェラーゼ酵素を含有する第2溶液に加えることができる。このサイクルを、1サイクル毎に特定の供与体を加えながら繰り返すことにより、特定の配列を有するオリゴ糖を作製することができる。
別の実施形態では、受容体を固相支持体に連結することができる。その後、該固相支持体をカラムまたはトレイなどの構造中に固定することができる。その後、供与体と本発明の触媒ドメインとを、固定した受容体と共に、該供与体が該受容体に連結されうる条件下でインキュベートすることができる。その後、固相支持体を洗浄し、存在する全ての連結していない供与体および触媒ドメインを除去する。次に、第2供与体および第2トランスフェラーゼ酵素を加え、該供与体が該受容体に連結されうる条件下でインキュベートすることができる。このサイクルを繰り返すことにより、所定の配列を有するオリゴ糖を迅速かつ大量に作製することができる。さらに、この方法は、自動化した系での使用に容易に適合させることができる。この系は、所与の供与体の所与の受容体への連結を触媒する酵素を使用するため、該受容体または該供与体上の基を保護する必要無しに使用することができる。従って、この方法の利点の1つは、伸長中のオリゴ糖鎖を損なうことの無い穏やかな反応条件を使用できるということである。該方法の別の利点は、伸長中のオリゴ糖鎖を保護および脱保護する必要が無いため、伸長中のオリゴ糖鎖上に単量体を付加する際に要するサイクル時間が短いということである。
本発明の触媒ドメインを使用して所定のオリゴ糖およびその誘導体の配列を合成するための他の方法を利用することもできる。しかし、これらの方法でも、変化した受容体部位、変化した供与体部位、または変化した供与体および受容体部位を有するガラクトシルトランスフェラーゼを使用することになるだろう。
VII. 抗原の免疫原性を高める方法
本発明は、抗原の免疫原性を高める方法を提供する。一般に、該方法は、抗原を本発明の触媒ドメインと共にインキュベートすることにより、触媒ドメインの作用により糖を供与体から受容体へと転移させることを含む。
本発明の方法は、免疫応答を生じることが望まれる物質を含有する殆ど全ての受容体と共に使用することができる。例えば、糖を、供与体から全細胞に連結された受容体へと転移させることができる。その後、該細胞を放射線照射または化学的手段により死滅させてから動物に投与することにより、免疫応答を引き出すことができる。細胞膜を同じように使用してもよい。細胞および細胞膜に対する免疫応答を生じさせる方法は、米国特許第6,361,775号に記載されている。
ウイルスまたはそのサブユニットの免疫原性を本発明の方法に従って高め、これを改良型ワクチンとして使用することができる。例えば、ビリオンの1成分として糖タンパク質を含有するウイルスの場合、本発明の触媒ドメインを発現する細胞内で該ウイルスを増殖させることにより、1個以上の糖を該糖タンパク質に付加することができる。あるいは、本発明の触媒ドメインを使用して、1個以上の糖を該糖タンパク質に直接付加することができる。また、複合糖鎖を含有する、エンベロープを持たないウイルスが存在する。本発明の触媒ドメインを使用すれば、これらの糖鎖上に糖を付加することができる。
ウイルスのサブユニットは、生化学的方法を利用してビリオンから取得することができるし、またはそれらを適当な真核細胞内で組換え手段により発現させることができる。ウイルスのサブユニットを発現させる方法は、当分野でよく知られている。これらの方法は、使用するウイルスの種類に応じて様々でありうる。例えば、ウイルスのサブユニットを発現させる方法は、以下の論文:Possee, Virus Research, 5:43 (1986); Kurodaら、EMBO J., 5: 1359 (1986); Doerfler, Curr.Topics Microbiol.Immunol., 131:51 (1986); Rigby, J.Gen.Virol., 64:255 (1983); Mackettら、In: DNA Cloning, A Practical Approach, Vol II, Ed. D.M.Glover, IRL Press, Washington, D.C. (1985); Rothestein, In: DNA Cloning, A Practical Approach, 上掲(1985); Kinneyら、J.Gen.Virol., 69:3005 (1988); Panicalら、Proc.Natl.Acad.Sci., 80:5364 (1983); Smallら、In: Vaccinia Viruses as Vectors for Vaccine Antigens, pp. 175-178, Ed. J.Quinnan, Elsevier, N.Y (1985)、およびこれらの論文中で引用された参考文献に記載されている。
ワクチンが現在利用可能であり、かつその免疫原性を本発明の方法に従って改良しうるウイルスとしては、インフルエンザウイルス(オルトミクソウイルス)、狂犬病ウイルス(ラブドウイルス)、B型肝炎ウイルス(肝炎ウイルス)、東部-、西部-およびベネズエラ-ウマ脳炎ウイルス(トガウイルス/アルファウイルス属)、ならびに、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスおよびロシア春夏脳炎ウイルス(フラビウイルス)、リフトバレー熱ウイルス(ブンヤウイルス)(概説:Melnick, In: High Technology Route to Virus Vaccines Ed. Dreesman, BronsonおよびKennedy, American Society for Microbiology, Washington, D.C. (1985); Ograら、Prog.Med.Virol., 37:156 (1990))が挙げられる。ワクチンは未だ市販されていないが本発明の方法に従って処理すれば同様に有用となりうるウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルスおよびヒトT細胞白血病ウイルス(レトロウイルス)、呼吸器合胞体ウイルスおよび他のパラミクソウイルス(パラミクソウイルス)、単純ヘルペスウイルス1型および2型、水疱瘡ウイルス、サイトメガロウイルスおよび他のヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス)、デング熱ウイルスおよびセントルイス脳炎ウイルス(フラビウイルス)、ハンターンウイルス(ブンヤウイルス)、ラッサ熱ウイルス(アレナウイルス)、ならびにロタウイルス(レオウイルス)が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、ヒトに投与する際には軽度〜重度の副作用というある程度のリスクを伴う弱毒化生ウイルスを含むウイルス性ワクチンが存在する。本発明の方法によれば、死滅ウイルス性ワクチンの免疫原性を高めることができるようになり、これは、生存しておりよりリスクを伴うそれらの対応物の使用を減らすために役立つであろう。従って、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルスなどの現行では生ウイルスを含むワクチンは、全て本発明に包含されるものとする。
ワクチンは、本発明の触媒ドメインの作用により糖に連結させた適切な濃度の抗原を、製薬上許容しうる担体中に懸濁することによって調製する。担体の組成はワクチンの種類およびその投与経路によって異なるが、それは当業者であれば容易に理解されよう。ワクチンは、投与量当たり102〜109細胞(全細胞の場合)または同等量の細胞膜という投与量で、投与することができる。ウイルス性ワクチンの場合、ウイルスは、投与量当たり1μg〜50 mgのウイルス、または同等量のサブユニットという投与量で投与することができる。ワクチンの適当な投与量の決定は、当業者には自明のことであり、ワクチンを含む抗原、患者の年齢および患者の全体的および免疫学的な健康状態に応じて行われる。
本発明の方法に従って調製したワクチンの有効性を改良するために、患者を、ワクチン投与の数日前にワクチン接種部位においてアジュバントを用いて前処置することができる。アジュバントによる前処置は、マクロファージの接種部位への移動を誘発し、それによって処置抗原の食作用速度を増強させるのに役立つ。ウイルス性ワクチンの場合、患者をアジュバントおよびワクチンで同時に処置することができる。この目的に合うアジュバントとしては、水酸化アルミニウムおよび同様のアジュバントが挙げられる。
ワクチンは、哺乳動物(特にヒト)に、皮下、筋内、経口、静脈内、皮内、鼻腔内または膣内投与される。経口投与に先立って、ワクチンを十分な量の重炭酸ナトリウムまたは胃酸を中和しうる他の適切な化合物(約2グラム)を含有する溶液と混合してもよい。あるいは、通常は凍結乾燥形態であるワクチンを、胃酸に耐えうる被覆剤で処理した錠剤として製剤化することができる。
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実施例I
ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメインの一般的な発現、突然変異誘発、フォールディング、および精製
材料および方法
細菌増殖およびプラスミド形質転換は、標準的な手順(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience, New York (1987))を利用して実施した。ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメイン(残基130〜402)をコードするプラスミドpEGT-d129を変異のために使用した。部位特異的突然変異誘発は、CLONTECHの部位特異的突然変異誘発トランスフォーマーキットを使用して実施した。形質転換混合物は、鋳型であるpEGT-d129、選択プライマー、および所望の変異体を作製するための変異プライマーを含有していた。変異体は、制限酵素消化パターンにおける変化を探すことにより、組み入れられた変異についてスクリーニングし、さらにDNA塩基配列決定法により確認した。陽性クローンを用いてB834(DE3)pLysS細胞を形質転換した。プライマーはMolecular Technology Laboratory, NCI-Frederickにより合成した。
封入体の発現および精製は、以前に記載(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience, New York (1987))された通りに行った。封入体は、5 M GdnHCl、0.3 M亜硫酸ナトリウム中に溶解し、さらに最終濃度が5 mMとなるまで2-ニトロ-5-チオスルホ安息香酸二ナトリウムを加えることにより、S-スルホン化した。スルホン化タンパク質は水で希釈すると沈殿したので、この沈殿物を十分に洗浄した。
前記スルホン化タンパク質を5 M GdnHCl中に再溶解して、そのタンパク質濃度を1 mg/mL (275 nmにおける光学密度は1.9〜2.0)とした。このタンパク質溶液を、フォールディング溶液中で10部に分けて10倍希釈することにより、最終濃度を100μg/mLβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI、0.5 M GdnHCl、50 mM Tris-HCl、5 mM EDTA、4 mMシステアミン、および2 mMシスタミン、4℃でpH 8.0とした。これを4℃で48時間放置してタンパク質をフォールドさせた後、50 mM Tris-HCl、pH 8.0、5 mM EDTA、4 mMシステアミン、および2 mMシスタミンを含有する水3×4リットルに対して4℃で透析することによりGdnHClを除去した。透析中に沈殿したあらゆるタンパク質を遠心分離により除去し、上清を濃縮した。典型的には、100 mgのスルホン化タンパク質が1リットルのフォールディング溶液中でフォールドした場合、活性で可溶性、かつ純粋な野生型β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI触媒ドメインまたはその変異体は、2〜5および10〜12 mg得られる。フォールドしたタンパク質は、LA-アガロースカラム(Sigma)上でさらに精製した。最終的な精製タンパク質は、精製乳β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIのそれよりも僅かに高い比活性を有していた。
ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIのアミノ酸位置289の部位特異的突然変異誘発:部位特異的突然変異誘発は、PCR法を利用して実施した。変異体の構築は、プラスミドpEGT-d129を鋳型として使用して行った。尚、このプラスミドは、pEGT23a ベクター中に挿入された、ウシβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの残基130〜402をコードするBamH1/EcoRI断片を含み、さらにCys-342のThrへの変異を有する。上側DNA鎖に対応する変異プライマーは、以下:Y289L、5’-CCTTACGTGCAATTGTTTGGAGGTGTCTCTGCTCTAAGTAAA-3’(配列番号11)および5’-GACACCTCCAAACAATTGCACGTAAGGTAGGCTAAA-3’(配列番号12);Y289I、5’-CTACCTTACGTGCAGATCTTTGGAGGTGTCTCTGCTCTAAG-3’(配列番号13)および5’-GACACCTCCAAAGATCTGCACGTAAGGTAGGCTAATCCAA-3’(配列番号14);Y289N、5’-GGATTAGCCTACCATATGTGCAGAATTTTGGAGGTGTCTCT-3’(配列番号15)および5’-AGAGACACCTCCAAAATTCTGCACATCTGGTAGGCTAAATCC-3’(配列番号16)である。典型的には、全Gal-T1DNAは、末端クローニングプライマーおよび2個の突然変異誘発プライマーを使用し、2個の断片としてPCR増幅した。その後、断片をY289L、Y286I、およびY286N変異に対してそれぞれ制限酵素MfeI、BglII、およびNdeIを用いて切断し、これらをライゲートした。変異を有する全Gal-T1 DNAを、前記クローニングプライマーを使用してライゲーション混合物から増幅し、次いでこれをpET28aベクター中に挿入した。変異体を、その制限酵素消化パターンにおける変化に基づいて、組み入れた変異についてスクリーニングし、次にその配列を決定した。陽性クローンを用いて、以前に記載された通りに(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 270, 87665-376717 (2001))、B834(DES)pLys8細胞を形質転換した。変異型タンパク質は、公開されている方法(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 270, 87665-376717 (2001))に従い、発現させ精製した。
Gal-TおよびGalNAc-T酵素アッセイ:タンパク質濃度は、Bradfordの方法に基づいてBio-Radタンパク質アッセイキットを用いて測定し、さらにSDSゲル上で確認した。Gal-T1用のin vitroアッセイ手順は、以前に報告されている(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 270, 87665-376717 (2001))。活性は、UDP-GalまたはUDP-GalNAcを糖ヌクレオチド供与体として、またGlcNAcおよびGlcを受容体糖として使用して測定した。比活性を測定するため、50 mM β-ベンジル-GlcNAc、10 mM MnCl2、10 mM Tris-HCl、pH 8.0、500μM UDP-GalまたはUDP-GalNAc、20 ngのGal-T1、および0.5 μClの[3H]UDP-Galまたは[3H]UDP-GalNAcを含有する100μLのインキュベーション混合物を、それぞれGal-TまたはGalNac-T反応に使用した。インキュベーションは、37℃で10分間行った。200μLの冷50 mM EDTAを加えて反応を停止させ、この混合物を0.5mLベッドボリュームのAG1-X8陽イオン樹脂カラム(Bio-Rad)に通すことにより、全ての未反応[3H]UDP-Galまたは[3H]UDP-GalNAcを除去した。該カラムを300、400、および500μLの水で首尾よく洗浄し、カラム流出物をBiosafeシンチレーション液で希釈した。尚、放射活性はBeckman計数器で測定した。受容体糖を含まない反応物を対照として使用した。同様のアッセイを行い、50μM ウシLA (Sigma)の存在下でGlcおよび他の受容体に対するGalNAc-T活性を測定した。
速度定数を決定するための研究:供与体(KA)および受容体(KB)の真のKm、該供与体の解離定数Ki(a)、ならびにkcatは、二基質解析、ならびに5種の濃度の供与体(UDP-GalまたはUDP-GalNAc)および5種の濃度の受容体の一次プロット、ならびにこれに対応する切片と傾きの二次プロットを使用して得た。初速度条件は、時間に対して線形とした。適切な範囲の供与体および受容体濃度を選択したことで、正確なミカエリス・メンテン(Michaelis-Menten)プロットを導くことが可能となった。また、得られたデータを、以下の方程式(Zhangら、Glycobiology, 9:815-822 (1999))を使用し、ソフトウェアEnzFitter(Windows用の非線形曲線フィットプログラム)を用いて、一般的な二基質系についても解析した。
Figure 2006518192
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式中のvは初速度であり、かつ方程式1に関連する連続的かつ対称的な初速度パターン、すなわち基質AがE-S複合体から解離定数Ki(a)で十分に解離する定序またはランダム平衡機構、についての反応速度式である。方程式2は、二重置換または「ピンポン」機構の非対称初速度パターンに関するものである。速度パラメータKA、KB、Ki(a)、およびVmaxは、近似曲線から上記の速度方程式を利用して取得した。前記のグラフ法とEnzFitterプログラムでは、非常によく似た速度パラメータが得られた。N-アセチルガラクトサミントランスフェラーゼ(GalNAc-T)アッセイでは、UDP-GalNAcおよびGlcNAcについて使用する最大基質濃度は、それぞれ1および200 mMとした。しかし、ガラクトーストランスフェラーゼ(Gal-T)アッセイでは、GlcNAcの水への溶解度に限界があるため、GlcNAcの濃度を400 mM(これはそのKm値よりも2倍高い)以下に限定したが、その一方では最高300μMの UDP-Galを使用した。
GalNAc-T活性による生成物の 1 H NMR分光分析:反応は、100μgのY289L変異体ならびに各10 mMのトリエタノールアミン-HCl、pH 8.0、UDP-GalNAc、GlcNAc、およびMnCl2を含有するものを総量1 mLとして、37℃で48時間行った。この混合物を、最初に1 mL Chelex 100カラム、次にAG1-X8樹脂(200〜400メッシュ)を含有する1 mL陽イオンカラムに通した。4ベッドボリュームから得た流出物中の二糖生成物をプールし、凍結乾燥させた。該生成物を、最後に400μLのD2O中に溶解し、その1H NMRスペクトルを400 MHz NMR分光計で取得した。全てのNMRスペクトルは、Analytical Chemistry Laboratory, NCI-Frederick (Frederick, MD)で記録した。
結果
野生型およびGal-T1変異体のGal-TおよびGalNAc-T触媒活性の比較:変異体Y289L、Y289N、およびY289Iは、ガラクトーストランスフェラーゼ活性とN-アセチルガラクトシルトランスフェラーゼ活性の両方を示した(表IIIおよび図1)。変異体Y289LおよびY289Nは、同等の強さのガラクトシルトランスフェラーゼ活性とN-アセチルガラクトシルトランスフェラーゼ活性を示した。使用した基質濃度における変異体Y289IのN-アセチルガラクトシルトランスフェラーゼ比活性は、Y289Lの半分であった(表III)。Y289I変異体は、UDP-GalNAcに対して若干弱い親和性を示した(図1)。Asn置換は、Leu置換と同様に、GalNAc-T活性を示した。野生型Gal-T1は、非常に低いグルコシルトランスフェラーゼ活性を示すが、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性は示さない(BerlinerおよびRobinson, Biochemistry, 21:6840-68433 (1982); PalminおよびHindaganl, Glycobiology, 1:205-209 (1991); Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 270:87665-37671 (2001))。一方、変異体は適度なN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性を示し(表III)、この際、該変異体はN-アセチルグルコサミンをUDP-N-アセチルグルコサミンから受容体であるN-アセチルグルコサミンへと転移させるが、グルコシルトランスフェラーゼ活性は示さない。このN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性では最初の生成物である二糖GlcNAcβ1,4-GlcNAcそれ自体が酵素の受容体となるため、三糖以上の長さの糖鎖が生成する。
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Gal-T1のY289L変異体はGa-TおよびGalNAc-T酵素活性の両方を同等の効率で示すので、二重基質動態研究を行うことにより、供与体および受容体分子の両方について速度定数を決定した。両反応で得た速度データは、二重置換または「ピンポン」機構の非対称初速度パターンを表す方程式2においてKi(a)値を0とした場合と最もよく一致した。Gal-T反応時のY289L変異体は、受容体に対して野生型Gal-T1よりも20倍近く高いKmを示した(表IV)。Gal-T1反応時の触媒定数(kcat)は野生型と同程度であるが、GalNAc反応時には3〜5倍近く高くなる(表IV)。
Figure 2006518192
Y289L変異体はGal-T活性とほぼ同じ高さのGalNAc-T活性を示すので、この反応で得られる二糖生成物を精製し、1H NMR分光法によって解析した(図4)。NMRの結果は、変異体Y289LがGalNAcをUDP-GalNAcからGlcNAcへと転移させることによりGalNAcとGlcNAcとの間のβ1-4結合を形成することを示していた。
アミノ酸289に対応するコドンにおける点突然変異により、二重特性を有する酵素へと変換される:ヒトでは、β4Gal-Tファミリーには7種のメンバー(Gal-T1〜Gal-T7)があり、各々がそれらの触媒ドメイン内において高い配列同一性を有する(Loら、Glycobiology, 8:517-526 (1998); Nomuraら、J.Biol.Chem., 273:13570-13577 (1998))。これらのファミリーメンバーは、GalをUDP-Galから異なる糖受容体へ転移させる。例えば、Gal-T6はGalをGlc-セラミドのGlcへ転移させるが、Gal-T7はGalをキシロースへ転移させる(Nomuraら、J.Biol.Chem., 273:13570-13577 (1998))。これら7種のメンバーのうち、4種のメンバー(Gal-T1〜Gal-T4)は287位にTyr残基(ウシGal-T1のTyr-289に相当する)を有するが、Gal-T5およびGal-T6はPhe残基を有する。
Figure 2006518192
wt-Gal-T1およびY289L変異体のGalNAc-T活性におけるα-ラクトアルブミン(LA)の役割:LAは、Gal-T1によるGalNAcのUDP-GalNAcからGlcNAcへの転移を、そのGal-T効率にして約0.1%増強するが、この状況は、LAがその活性を0.3〜10%高めるGal-T1のグルコシルトランスフェラーゼ活性(Glc-T)とよく似ている(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 270:87665-37671 (2001))。LAは、Gal-T1を刺激してGlcをUDP-GlcからGlcNAcに転移させるための動的役割を果たしている(Ramakrishnanら、J.Biol.Chem., 270:87665-37671 (2001); Ramakrishnanら、Biochem Biophys.Res.Commun., 291:1113-1118 (2002))。活性は約1%増強される。この活性レベルは、前記供与体濃度の非標識UDP-糖、およびほんの少量の3H-標識UDP-糖を使用して測定した。このプロトコルを使用して、使用した非標識UDP-糖の量に基づいて正確に計算することができた。
LAがGlcではなくGlcNAcのみへのGalNAcの転移を刺激するwt-Gal-T1(Doら、Biol.Chem., 276:18447-18451 (1995))とは異なり、Tyr-289変異体(Y289L、Y289N、およびY289I)は、LAの存在下で、GalNAcをGlcNAcではなくむしろGlcに転移させる。この特性は、wt-Gal-T1がLAの存在下でGalをGlcNAcの代わりにGlcへ転移させるLS活性と極めてよく似ている(表VI)。さらに、wt-Gal-T1と同様に、これらの変異体もまたLAの存在下でGalをGlcへ転移させる。例えば、同様の触媒特性を有するウシ乳腺抽出物中のN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性が確認されている(Van den Nieuwenhofら、FEBS Lett., 459:377-380 (1999))。この酵素も同様に、LAの非存在下ではGalNAcをUDP-GalNAcからGlcNAcへ転移させるが、LAの存在下ではGalNAcをGlcNAcの代わりにGlcへ転移させる。
Figure 2006518192
ここでは、Gal-T1のTyr-289変異体がGal-T活性と同じ高さのGalNAc-T活性、ならびにGlcNAc活性を示すことが実証されている。ヒトGal-Tファミリーメンバーでは、287位のTyr/Phe残基(またはウシのTyr-289位)が、この酵素の供与体の糖特異性を決定する際に重要となる。
実施例II
N末端ステム領域を有するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI酵素の触媒ドメインの一般的な発現、突然変異誘発、フォールディング、および精製
材料および方法
制限エンドヌクレアーゼおよびDNA修飾酵素は、New England Biolabs (Beverly, MA)から入手した。オリゴヌクレオチドプライマーは、NCI-Frederickの組換えDNA設備により合成した。プラスミドミニ調製キットは、Qiagen(Santa Clarita, CA)から入手した。アンピシリン、UDP-GalおよびUDP-アガロースは、Sigma Chemical Co, MOから入手した。pET23aベクターおよびBL21(λDE3)/pLysSコンピテント細胞は、Novagen (Madison, WI)から入手した。大腸菌(E.coli)XL2-Blueウルトラコンピテント細胞は、Stratagene (La Jolla, CA)から入手した。AG1-X8樹脂(塩化物形態、200〜400メッシュ)は、Bio-Rad (Hercules, CA)から入手した。Taq DNAポリメラーゼおよびPCRヌクレオチドミックスは、Boehringer Mannheimから入手した。
β1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのウシおよびヒトステム-CDクローンのクローニング:
固有の制限部位が5’(SR)および3’(CD)末端に付加されている2組のオリゴヌクレオチドプライマーは、ウシβ4Gal-T1およびヒトβ4Gal-T1のcDNA配列(図3Aおよび3Bに示す)を基に合成した。β4Gal-T1をコードする全長ウシcDNAクローンを部位特異的突然変異誘発(Boeggemanら、Protein Eng., 6:779-785 (1993))のために使用した。ウシβ4Gal-T1のステム領域内で、Ser96をAla96に変異させた(後述)。変異型完全長cDNA鋳型は、SRCDβ4Gal-T1生成用の以下のプライマー対:(SR) 5'-CGCGGATCCCGCGACCTAAGACGCCTGCCTCAGCTGGTC-3' (配列番号17)および(CD) 5'-TGGAATTCCTAGCTCGGCGTCCCGATGTCCACTGTGAT-3' (配列番号18)を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。
ヒト胎盤QUICK-Clone cDNA (ロット番号9020891)をClontechから取得し、これをPCR用の鋳型として使用した。ヒトβ4Gal-T1を増幅するために、以下のPCRプライマー:(SR) 5'-CGCGGATCCCGCGACCTGAGCCGCCTGCCCCAACTGGTC-3' (配列番号19)および(CD) 5'-CCGGAATTCCTACTAGCTCGGTGTCCCGATGTCCACTGT-3' (配列番号20)を使用した。
このプライマー対により、ステムおよび触媒ドメインの両方を有し、かつ挿入物の5’および3’末端にそれぞれBamHI(SR)およびEcoRI(CD)(下線部)を含有するDNA断片を生成するよう設計されたcDNA領域が増幅された。PCR産物をQIAquick PCR精製キットを使用して精製し、精製断片をBamHIおよびEcoRIで消化することにより、付着末端を生成した。発現構築物を、消化およびゲル精製したPCR断片をBamHIおよびEcoRIで消化したpET23aベクター(Novagen, Madison, WI)中にライゲートすることにより取得し、これを用いてXL2-ウルトラコンピテント細胞を形質転換した。クローンの同一性は、DNA配列により確認した。
タンパク質分解を阻止するためのウシβ4Gal-T1のステム領域の変異:96位にSerを有する野生型ウシSRCD4Gal-T1を大腸菌(E.coli)で発現させた。その配列を図3Aに示す。後述するように、封入体からフォールディングおよび精製した組換え野生型タンパク質は、短期間のうちにそのSR領域内で開裂した。開裂したタンパク質は、SDS-PAGE上で分子量34.9 kDaに相当する一本のバンドを示す。該タンパク質をポリ二フッ化ビニリデン膜にエレクトロブロットし、この開裂断片のN末端配列をProtein Chemistry Laboratory, NCI-Frederickにおいてエドマン分解法により決定した。該断片のN末端配列は、SRAPSNLD (配列番号21)と決定された。これは、配列領域KPR96SRAPSNLD (配列番号22)内のSer96における開裂と一致する。ステム領域内のこのタンパク質分解を阻止するために、本発明者らはここで、Ser96の代わりにAlaを入れた変異体を構築した。これにより、ウシβ4Gal-T1のステム領域内の開裂が阻止され、組換えタンパク質が長期間無傷で維持されるようになった。本研究において記載した実験結果は変異体ウシS96A-SRCDβ4Gal-T1(図3A)についてのものであるが、便宜上省略して、このタンパク質を単にウシSRCDβ4Gal-T1と称する。ヒトSRCDβ4Gal-T1もやはり、ステム領域内で配列QLV53GVSTPLQ (配列番号23)中のVal53位において開裂するが、それは長時間経った後のことである。このクローンは、ウシβ4Gal-T1よりも高い安定性を示したので、変異させずにそのまま次の解析に使用した。
大腸菌(E.coli)におけるタンパク質発現および封入体の単離:タンパク質発現のために、BL21(λDE3)/pLysS-コンピテント細胞を、業者のプロトコルに従ってpETベクター誘導体を用いて形質転換した。形質転換細胞を50μg.mL-1アンピシリンを含有するLBブロス中でOD600 nmが約-0.7となるまで増殖させた後、これを0.4 mM IPTGで誘導した。培養物は、3〜4時間後に2000×gで20分間遠心分離することにより回収した。封入体を単離し、記載された通りに可溶化した(Boeggemanら、Protein Eng., 6:779-785 (1993))。1リットルの誘導細菌培養物からは、一般に、80〜100 mgの精製封入体が得られる。NovexゲルをSDS-PAGE解析に使用し、タンパク質のバンドをクーマシーブルーで可視化した。タンパク質濃度は、Bio-Radタンパク質染色試薬を使用し、ウシ血清アルブミンを標準として測定した。
封入体からのタンパク質のin vitroフォールディング:再生バッファ中でオキシド-シャッフリング剤を使用するプロトコルを利用して、封入体から活性な組換えβ4Gal-T1を生成した(Boeggemanら、Protein Eng., 6:779-785 (1993))。再生とそれに続く溶液の透析の後、フォールドしたタンパク質の一部が不溶性凝集物として沈殿した。未変性タンパク質の収量を上げるため、封入体を以前に記載された通りにスルホン化した(Boeggemanら、Glycobiology, 12:395-407 (2002))。スルホン化タンパク質を5 Mグアニジン-HClに溶解して、そのタンパク質濃度を1 mg/mL(OD275 nmは1.9〜2.0)とした。次いで、このタンパク質溶液を再生溶液中で少量のアリコートに分けて10倍希釈することにより、最終タンパク質濃度を、50 mM Tris-HCl pH 8.0、5 mM EDTA、0.5 M グアニジン-HCl、8 mMシステアミンおよび4 mMシスタミン中100μg/mLとした。タンパク質を4℃で48時間再生させた後、これを透析した。沈殿物を5000 rpmでの遠心分離により除去し、上清を限外ろ過膜(Amicon, Inc., Beverly, MA, USA)を使用して濃縮した。
フォールディング条件の改良: 近年、封入体からのタンパク質のフォールディング効率を調べるために、ファクトリアル・フォールディング・スクリーン(factorial folding screens) (RudolphおよびLilie, FASEB J., 10:40-56 (1996); ChenおよびGouaux, Proc.Natl.Acad.Sci., 94:13431-13436 (1997); Armstrongら、Prot.Sci., 8:1475-1483 (1999))が開発された。in vitroフォールディング効率を改良するため、Foldltスクリーンキット(Hampton Research, CA)に記載されている配合と似てはいるが幾つかの修正を加えた8種の異なるフォールディング条件について試験した。条件I:50 mM Tris-HCl pH 8.0、5 mM EDTA、0.5 Mグアニジン-HCl、8 mMシステアミンおよび4 mMシスタミン。条件II:55 Mes pH 6.5、10.56 mM NaCl、0.44 mM KCl、2.2 mM MgCl2、2.2 mM CaCl2、0.5 Mグアニジン-HCl。条件III:バッファ、pH、カオトロープおよび塩の条件に関しては条件IIと同様であるが、0.055% PEG-4000、1.1 mM EDTA、0.44 Mスクロースおよび0.55 M L-アルギニンを含む。条件IV:55 mM Mes pH 6.5、264 mM NaCl、11 mM KCl、0.055 % PEG-4000、0.5 Mグアニジン-HCl、2.2 mM MgCl2、2.2 mM CaCl2および0.44 Mスクロース。条件V:55 mM Tris pH 8.2、10.56 mM NaCl、0.44 mM KCl、1.1 mM EDTA、0.44 Mスクロース。条件VIおよびVIIIは、酸化還元剤の存在以外は同じである。条件VII:55 mM Mes pH 6.5、264 mM NaCl、11 mM KCl、1.1 mM EDTA、0.5 Mグアニジン-HCl、および0.55 M L-アルギニン。II〜VIIのバッファには、100 mM GSHおよび10 mM GSSGが含まれていた。条件IおよびVIIIには、8 mMシステアミンおよび4 mMシスタミンが含まれていた。最も高い酵素活性を呈し、可溶性でかつフォールドしたタンパク質を生じた条件VIIIは、50 mM Tris-HCl pH 8.0、10.56 mM NaCl、0.44 mM KCl、2.2 mM MgCl2、2.2 mM CaCl2 0.5 Mグアニジン-HCl、8 mMシステアミンおよび4 mMシスタミン、0.055% PEG-4000および0.55 M L-アルギニンであった。
β4Gal-T1酵素アッセイ:β4Gal-T1酵素活性についてのin vitroアッセイを、以前に記載された通りに実施した(Boeggemanら、Glycobiology, 12:395-407 (2002))。3H-標識-UDP-Galを糖供与体として、またGlcNAcを糖受容体として使用した。GlcNAcを含まない反応を対照として使用した。融合SRCDβ4Gal-T1タンパク質は、野生型組換えβ4Gal-T1と比較した場合に、同じ酵素活性(生成物形成量/分/タンパク質mol)を示した。
組換えタンパク質のUDP-アフィニティカラムへの結合:UDP-アガロースを使用して、活性タンパク質を4℃で結合させた。1 mLベッドボリュームのUDP-アガロースを含有するカラムを、25 mM MnCl2を含有する10 mLの25 mMカコジル酸バッファ(pH7.6)で前平衡化した。再生タンパク質溶液(0.5 mg)を前平衡バッファ条件に応じて調整し、前記カラムに載せた。試料を流した後、流出物を回収した。その後、SDS-PAGEにより非結合タンパク質について解析した。カラムは、平衡バッファを1mLずつ用いて3回洗浄した。結合タンパク質は、25 mMカコジル酸バッファ、pH 7.6、25 mM EDTAおよび1M NaClからなる溶出バッファを用いて溶出させた。各0.5 mLの画分をカラムから回収し、アリコートをSDS-PAGEにより解析した。酵素解析のために、適当な画分をプールし、これを4℃で50 mM Tris-HCl pH 8.0に対して透析した。
円偏光二色性分光法:組換えタンパク質の遠紫外円偏光二色性スペクトルは、JASCO J-715分光偏光計で測定した。各試料のスペクトルは、速度100 nm/分で走査した。遠紫外円偏光二色性スペクトルは、0.1 mmの光路と1.0 nmのバンド幅を使用して、室温で190〜250 nmで取得した。タンパク質は、Tris-HCl pH 8.0中に0.5 mg/mLの濃度で溶解した。同一キュベットで取得したバッファ・ブランクを差し引くことにより、正味のスペクトルを得た。楕円率の生データを、可視紫外吸光度測定値から求めた濃度値を使用してモル残基楕円率に変換した。補整およびデータの平均化は行わなかった。
結果
β4Gal-Tファミリーメンバーの触媒ドメイン(CD)のN末端に共有結合したステム領域(SR)が封入体からの組換えタンパク質のin vitroフォールディング効率に及ぼす影響
β4Gal-T1の触媒ドメイン(アミノ酸残基130〜402)(図3Aの配列、配列番号9)は、大腸菌(E.coli)で発現させると封入体画分内に不溶性物質として蓄積した。触媒ドメイン(図3Aの配列、配列番号9)のN末端に共有結合したステム領域を有する本質的に全てのタンパク質もまた、不溶性封入体画分内に蓄積した。封入体由来の混入タンパク質は、不溶性ペレットを本明細書中に記載した25%スクロースを含有するバッファで数回洗浄することにより除去した。精製封入体の収量は、発現させるタンパク質によって異なっていた(表VII)。タンパク質は、SDS-PAGEゲル上に予想された分子サイズを有する1本のタンパク質バンドを生じた(図4)。これらの不溶性封入体は、可溶化するのに5 MグアニジンHClを必要とした。
In vitroフォールディング段階に先立ってCDβ4Gal-T1の封入体をスルホン化すると、最終的にフォールドするタンパク質の収量が上がった。精製封入体からのスルホン化タンパク質の収量は、大体、出発タンパク質材料の半分であった(表VII)。オキシド-シャッフリング試薬が再生段階時に存在すると、全ての組換えスルホン化タンパク質の酵素活性が回復した。ステム領域が触媒ドメインのN末端に融合されている組換えタンパク質(SRCD)は、再生段階中も0.5 M グアニジンHClおよびオキシド-シャッフリング剤に可溶性のままであった。その後、SRCD-タンパク質溶液を透析してグアニジンHClを除去した時には、SDS-PAGE解析により判断した通り、フォールド分子とミスフォールド分子は共に可溶性のままであった。一方、CDのみを含有するミスフォールドタンパク質分子の大部分は、凝集してタンパク質溶液中で沈殿した。PEG-4000およびL-アルギニンの非存在下でリフォールドさせた後の、可溶性のヒトおよびウシSRCDβ4Gal-T1の回収率は、CDドメインのみを有するタンパク質よりも3〜9倍高かった(表VIII)。
Figure 2006518192
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β4Gal-T1のフォールディング効率および比活性を高める再生条件:ウシ野生型CDβ4Gal-T1を再生バッファI(本明細書中に記載されている)中でフォールドさせた後、ミスフォールドしたタンパク質を次の透析の際に沈殿させた。再生段階でフォールドする未変性タンパク質の量を増やすため、7種の異なる溶液からなる種々のフォールディング条件について試験した。結果を、条件Iに従って取得した収量と比較した(図5)。試験した封入体を5 M グアニジンHClに溶解して、最終的なタンパク質濃度を1 mg/mLとした。50μLのタンパク質溶液からなるアリコートを、エッペンドルフチューブ内の950μLのフォールディングバッファに加え、穏やかに混合し、さらにこれを4℃で4時間〜一晩インキュベートした。フォールディングバッファ(本明細書中に記載した条件I〜VIII)は、以下の点:pH6.5(条件II、III、IVおよびVII)〜8.0(条件V、VI、およびVII)、陽イオン(条件II、IV、VIおよびVIII)ならびにキレート剤(条件I、III、VおよびVII)について変更した。条件VI、VIIおよびVIIIには極性添加物(L-アルギニン)が含まれていた。条件IVおよびVには、スクロースなどの非極性添加物が含まれていた。条件IIIにはスクロースとL-アルギニンの両方が含まれていた。一部のバッファには、さらにPEG-4000も含まれていた(条件III、IV、VIおよびVIII)。システアミン(8 mM)およびシスタミン(4 mM)を含有する条件IおよびVIII下にあるものを除いては、100 mMの還元型(GSH)および10 mMの酸化型(GSSH)グルタチオンを存在させることにより適当な酸化還元環境を作り出した。
一晩のインキュベーションおよび1mM Tris-HCl pH 8.0に対する透析の後、試料を遠心分離し、各試料から得た5μLの上清をガラクトシルトランスフェラーゼ活性について試験してから、互いに比較した(図5)。結果は、バッファ条件VIおよびVIII下の活性が最も高いことを示していた。これらはいずれも、0.55 M L-アルギニンおよび0.055% PEG-4000を含んでいた(図5)。全てのフォールディング条件は、0.55 M L-アルギニンおよび0.055% PEG-4000の存在下でさえ組換えタンパク質のフォールディング収量に対して負の影響を及ぼすと思われる、30 mMラウリルマルトシドの存在下で試験した。スクロースの封入により阻害効果が生じた(条件IVおよびV)。試験した条件中のpH、塩、または陽イオンには、優先性は観察されなかった。8 mMシステアミン: 4 mMシスタミン(条件VIII)により作り出した酸化還元環境は、100 mM GSH:10 mM GSSH (条件VI)よりも好適であった。酵素アッセイ(図5)により、条件VIIIにおけるL-アルギニンとPEG-4000との組み合わせは、PEG-4000およびL-アルギニンを含有しない条件Iと比べてCDおよびSRCDタンパク質のin vitroフォールディング効率をそれぞれ7および3倍高めることが明らかとなった。
再生SRCDβ4Gal-T1中のミスフォールドタンパク質:再生タンパク質を未変性および還元条件下のSDS-PAGEゲル上で解析することにより、この再生SRCDβ4Gal-T1タンパク質が本来の通りフォールドしたか、またはミスフォールドしたかを調べた。β-メルカプトエタノール(βME)が存在せず、かつ試料の煮沸処理を行わない未変性条件下の解析により、ウシおよびヒトの可溶性SRCDβ4Gal-T1タンパク質はいずれも、凝集してゲルの上部に残る(図6(-))ミスフォールド分子を含有していることが明らかとなった。煮沸した試料中でβMEを使用する還元条件下では、ウシおよびヒトの可溶性SRCDβ4Gal-T1タンパク質のいずれのミスフォールド分子も、SDS-PAGEでウェルの上部に現れず、また予想されたサイズ(ウシ種の場合は35 kDa、ヒト種の場合は34 kDa)を表す一本のタンパク質バンドを生じた(図6(+))。
組換えタンパク質のアフィニティーカラムへの結合:封入体から取得したフォールドしかつ活性なCDβ4Gal-T1は、UDP-カラムに結合し、さらに25 mM EDTAおよび1M NaClを用いると該カラムから溶出した。そこで、可溶性の再生CDおよびSRCDβ4Gal-T1タンパク質のUDP-アガロースカラムへの結合について試験した。βMEおよび煮沸処理を利用しない、可溶性の再生CDβ4Gal-T1タンパク質の未変性SDSゲル解析により、可溶性の再生CDタンパク質は全て本来の通りにフォールドしたことが示された。次に、再生SRCDβ4Gal-T1タンパク質をUDP-アガロースカラムに載せた。殆ど全ての再生SRCDβ4Gal-T1タンパク質は、UDP-アガロースカラムに結合し、さらに該カラムから溶出した(図7)。UDP-アガロースカラムに通す前後のSRCDβ4Gal-T1タンパク質の酵素比活性(生成物形成/分/タンパク質ng)を測定することにより、再生SRCDβ4Gal-T1タンパク質の可溶性タンパク質画分が適切にフォールドした分子を含有しているかどうかを判断した(図8)。同様に、試料をβMEの非存在下で煮沸処理を行わずに解析した。条件Iを使用してウシおよびヒトSRCDタンパク質をフォールドさせた場合(図8A)、25 mM EDTAおよび1 M NaClを用いることで溶出したフォールド分子(図8A(+))は、アフィニティーカラムに流す前の該タンパク質(図8A、黒いバー)と比べて、それぞれ2倍および6倍高い比活性を示した(図8A、網目模様を付けたバー)。再生ヒトSRCDβ4Gal-T1試料は、ウシSRCDβ4Gal-T1と比べてより多くのミスフォールドタンパク質を示した(図8A、ウシとヒトの黒いバー)。一方、PEG-4000およびL-アルギニンを含有する条件VIIIに従ってフォールドさせると(図8B)、条件Iと比べて、適切にフォールドしたヒトSRCDが増大した(図8Bと図8A、黒いバー、ヒトSRCD)。条件VIII下でUDP-カラムから溶出したタンパク質(図8B、網目模様を付けたバー)は、アフィニティーカラム上に流す前の該タンパク質(図8B、黒いバー)と比べて、約2倍高い比活性を示した。可溶性ではあっても、SRCD試料中の該タンパク質の一部はフォールドしないためUDP-アガロー
スに結合することができない。溶出したタンパク質の上昇した比活性は、UDP-アガロースカラムに結合する前の試料中に存在するミスフォールド分子の量を示唆していた。これらの結果は、UDP-アガロースカラムに通す前の試料中のミスフォールドタンパク質もまたSDS-PAGEゲル中のウェルの上部に残るという観察結果と一致していた(図7BおよびC、レーンU)。可溶性のウシおよびヒトCDβ4Gal-T1は、フォールディングのために使用したバッファ(条件IまたはVIII)に関わらず同じ挙動を示した(表IX)。UDP-アガロースカラム上に結合させる前後のウシおよびヒトCDβ4Gal-T1の比活性は変わらなかった。
Figure 2006518192
組換えβ4Gal-T1の円偏光二色性スペクトル:円偏光二色性実験を精製β4Gal-T1タンパク質に対して行うことにより、ステムの付加がβ4Gal-T1の二次構造全体に障害をもたらすかどうかを判定した。ウシまたはヒトのタンパク質では、野生型CDβ4Gal-T1と比べて二次構造における有意な差異は検出されなかった。全ての系で、250〜200 nmに負の楕円率の極値が現れた。野生型酵素の円偏光二色性スペクトルは再現性が高く、またα-らせん構造の指標となる208および220 nmでの負の極値が現れた。ウシおよびヒトSRCDタンパク質中にステムを付加すると、そのいずれにおいても200〜210 nm領域で観察される楕円率がわずかに変化した。
全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により本明細書中に含まれるものとする。前述の明細書において、本発明をその特定の好適な実施形態に関して記載し、また多くの詳細事項について例示目的で説明してきたが、本発明はさらなる実施形態を許容しうること、および本明細書中に記載した詳細事項の一部を本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更しうることが、当業者には自明であろう。
図1は、wt-Gal-T1ならびに変異体Y289L、Y289I、およびY289Nの触媒活性を例示したものである。(A) 受容体(acceptor)であるβ-ベンジル-GlcNAcの飽和濃度におけるwt-Gal-T1および変異体のGal-T活性。(B) wt-Gal-T1および変異体のGalNAc-T活性。それらの活性は、供与体(donor)の種々の濃度において、50 mMβ-ベンジル-GlcNAcを受容体として用いて測定する。wt-Gal-T1のGal-T活性は、50 mMの濃度では阻害を示したため、10 mMβ-ベンジル-GlcNAcのみを用いて測定した。 図1は、wt-Gal-T1ならびに変異体Y289L、Y289I、およびY289Nの触媒活性を例示したものである。(A) 受容体(acceptor)であるβ-ベンジル-GlcNAcの飽和濃度におけるwt-Gal-T1および変異体のGal-T活性。(B) wt-Gal-T1および変異体のGalNAc-T活性。それらの活性は、供与体の種々の濃度において、50 mMβ-ベンジル-GlcNAcを受容体として用いて測定する。wt-Gal-T1のGal-T活性は、50 mMの濃度では阻害を示したため、10 mMβ-ベンジル-GlcNAcのみを用いて測定した。 図2は、受容体であるGlcNAcとのGalNAc-T反応で得られた二糖(LacdiNAc)生成物の部分的 1H NMRスペクトルを例示したものである。GalNacアノマープロトンのシグナルはδ4.58 ppmにあり、αおよびβ配座異性体に相当するGlcNAcアノマープロトンのシグナルはδ5.2 ppmおよびδ4.7 ppmにある。各糖部分のアセチル基に由来するシグナルは、δ2.05 ppmおよびδ2.08 ppmにある。 図3は、N末端ステム領域(SR)がβ4Gal-Tの触媒ドメイン(CD)の溶解度およびフォールディングに及ぼす影響を調べるために使用したpET23aベクター中構築物の挿入物のcDNA配列およびこれから導かれるタンパク質配列を例示したものである。(A) 野生型β4Gal-T1のSer96をAla96に変異させたウシSRCDβ4Gal-T1の配列。(B)ヒトSRCDβ4Gal-T1の配列。アミノ酸の上の数字は、ステム領域の境界となる残基に対応している。11アミノ酸の伸長配列(図には示さず)がこのタンパク質のアミノ末端となり、それはpET23aベクターのリーダー配列によりコードされている。ステム領域配列には影が付けてあり、その後ろに触媒ドメイン(CD)配列が続いている。PCR増幅に使用したプライマーには下線を引いてある。 図3は、N末端ステム領域(SR)がβ4Gal-Tの触媒ドメイン(CD)の溶解度およびフォールディングに及ぼす影響を調べるために使用したpET23aベクター中構築物の挿入物のcDNA配列およびこれから導かれるタンパク質配列を例示したものである。(A) 野生型β4Gal-T1のSer96をAla96に変異させたウシSRCDβ4Gal-T1の配列。(B)ヒトSRCDβ4Gal-T1の配列。アミノ酸の上の数字は、ステム領域の境界となる残基に対応している。11アミノ酸の伸長配列(図には示さず)がこのタンパク質のアミノ末端となり、それはpET23aベクターのリーダー配列によりコードされている。ステム領域配列には影が付けてあり、その後ろに触媒ドメイン(CD)配列が続いている。PCR増幅に使用したプライマーには下線を引いてある。 図4は、大腸菌(E.coli)で産生されたβ4Gal-Tの組換えCDおよびSRCDタンパク質のSDS-PAGE解析結果を示す。精製した封入体を、14%SDS-PAGE上で解析した。レーン1はウシCDβ4Gal-T1、レーン2はウシSRCDβ4Gal-T1、レーン3はヒトCDβ4Gal-T1、そしてレーン4はヒトSRCDβ4Gal-T1である。 図5は、種々の再生条件下での封入体のフォールディングとして、CDβ4Gal-T1およびSRCDβ4Gal-T1の相対活性を示す。相対活性は、フォールディング条件Iに比して算出した。最大量のフォールディングされたCDβ4Gal-T1およびSRCDβ4Gal-T1は、条件VIIIで得られた。条件IにおけるCDβ4Gal-T1の酵素活性は0.052 pmol/分/N-アセチルラクトサミン1ngであり、また条件IにおけるSRCDβ4Gal-T1の酵素活性は0.09 pmol/分/N-アセチルラクトサミン1ngであった。 図6は、封入体の再生後に得られた可溶性タンパク質のSDS-PAGE電気泳動による解析結果を示す。未変性条件(-)(煮沸処理を行わず、かつβ-MEが存在しない)および変性条件(+)(β-MEの存在下で煮沸処理を行った試料)下で行った。レーン1はウシCDβ4Gal-T1、レーン2はウシSRCDβ4Gal-T1、レーン3はヒトCDβ4Gal-T1、およびレーン4はヒトSRCDβ4Gal-T1である。未変性条件下では、ミスフォールドしたタンパク質に相当する可溶性SRCD試料の一部はゲル中に入らない(レーン2および4の矢印1)。 図7は、フォールディングしたCDβ4Gal-T1およびSRCDβ4Gal-T1の、UDP-アガロースカラム上への結合および特性解析結果を例示したものである。タンパク質の純度は、β-MEが存在せずかつ試料の煮沸処理を行わない未変性条件下で、SDS-PAGE解析により判断した。UDP-アガロースカラムに流す前のタンパク質試料(U)、ならびに25 mM EDTAおよび1M NaClを用いて溶出させた後のタンパク質試料(B)。パネル(A)は、UDP-アガロースカラムに通す前後のヒトCDβ4Gal-T1についての結果を示す(ウシCDβ4Gal-T1も同様の挙動を示す[図中には示さず])。パネル(B)は、ウシSRCDβ4Gal-T1についての結果を示し、またパネル(C)はヒトSRCDβ4Gal-T1についての結果を示す。パネルBおよびCのレーンの上部にある矢印は、可溶性ではあるがミスフォールドしたタンパク質の存在を示す。 図8は、UDP-アガロース精製前後の、可溶性のヒトおよびウシSRCDβ4Gal-T1タンパク質の酵素活性を示す。ガラクトシルトランスフェラーゼ活性は、本明細書中に記載した通りに測定した。UDP-アガロースカラム上に結合させる前のこれらのタンパク質の比活性((-)、黒いバー)、およびUDP-アガロースカラムに通した後の溶出物の比活性((+)、網目模様を付けたバー)が示されている。(A)バッファ条件I(PEG-4000およびL-アルギニン不含)では、ウシSRCDβ4Gal-T1と比べてヒトSRCDβ4Gal-T1ではより多くのミスフォールド分子が示された。(B)条件VIII(PEG-4000およびL-アルギニン含有)では、ウシSRCDβ4Gal-T1と比べてヒトSRCDβ4Gal-T1でより多くの正確にフォールドしたタンパク質が示された(黒いバー)。CDβ4Gal-T1の場合は、フォールディング条件Iまたは条件VIIIを用いてUDP-アガロースカラム上に結合させる前後で、フォールドしたタンパク質の量に差が見られた(データは示さず)。 図8は、UDP-アガロース精製前後の、可溶性のヒトおよびウシSRCDβ4Gal-T1タンパク質の酵素活性を示す。ガラクトシルトランスフェラーゼ活性は、本明細書中に記載した通りに測定した。UDP-アガロースカラム上に結合させる前のこれらのタンパク質の比活性((-)、黒いバー)、およびUDP-アガロースカラムに通した後の溶出物の比活性((+)、網目模様を付けたバー)が示されている。(A)バッファ条件I(PEG-4000およびL-アルギニン不含)では、ウシSRCDβ4Gal-T1と比べてヒトSRCDβ4Gal-T1ではより多くのミスフォールド分子が示された。(B)条件VIII(PEG-4000およびL-アルギニン含有)では、ウシSRCDβ4Gal-T1と比べてヒトSRCDβ4Gal-T1でより多くの正確にフォールドしたタンパク質が示された(黒いバー)。CDβ4Gal-T1の場合は、フォールディング条件Iまたは条件VIIIを用いてUDP-アガロースカラム上に結合させる前後で、フォールドしたタンパク質の量に差が見られた(データは示さず)。 図9は、β4Gal-T1のCDおよびSRCDドメインのin vitroフォールディングの概略図である。フォールドしていないCDおよびSRCDドメインはin vitroフォールディング段階中にそれぞれフォールディング中間体(I)および(II)を生成し、該中間体がミスフォールドした分子と正確にフォールドした分子を産生すると考えられる。CDのミスフォールド分子(III)はその殆どが不溶性なので沈殿するが、適切にフォールドした分子(IV)は可溶性であり、溶液中に残ってUDP-アガロースカラムに結合する。SRCDのミスフォールドした分子(III’)および適切にフォールドした分子(IV’)はその殆どが可溶性である。SRドメインの溶解作用により、適切にフォールドしたSRCD分子の割合がフォールディング過程中に上昇した。ミスフォールドSRCD分子は、可溶性ではあるものの、UDP-アガロースカラムに有意に結合することはなかった(III’)。適切にフォールドしたSRCD分子は、UDP-アガロースカラムに結合し(IV’)、さらに該カラムから溶出する。フォールディング溶液中にPEG-4000およびL-アルギニンが存在すると、適切にフォールドした分子の割合が上昇した。
【配列表】
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Claims (60)

  1. 野生型β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIよりも大きな速度でグルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合の形成を触媒するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI由来の精製および単離された触媒ドメイン。
  2. 前記のグルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合を形成する速度が、野生型β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIよりも少なくとも2倍、5倍、または10倍大きい、請求項1記載の触媒ドメイン。
  3. (a) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置228に保存的アミノ酸置換を有する、
    (b) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置229に保存的アミノ酸置換を有する、
    (c) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置228および229に保存的アミノ酸置換を有する、
    (d) アミノ酸位置228においてリシンがアルギニンに置換されている、または
    (e) アミノ酸位置228においてリシンがアルギニンに置換されており、かつアミノ酸位置229においてグリシンがアラニンに置換されている、
    請求項1記載の触媒ドメイン。
  4. 請求項1記載の触媒ドメインを含むポリペプチド。
  5. N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合の形成を触媒するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI由来の精製および単離された触媒ドメイン。
  6. (a) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置289に保存的アミノ酸置換を有する、
    (b) 前記触媒ドメインのアミノ酸位置289のチロシンが、ロイシン、イソロイシン、もしくはアスパラギンに置換されている、
    (c) 前記触媒ドメインのアミノ酸位置342のシステインがトレオニンに置換されている、
    (d) (a)と(c)の任意の組み合わせである、または
    (e) (b)と(c)の任意の組み合わせである、
    請求項5記載の触媒ドメイン。
  7. 請求項5記載の触媒ドメインを含むポリペプチド。
  8. α-ラクトアルブミンの存在下でN-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース結合の形成を触媒するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI由来の精製および単離された触媒ドメイン。
  9. (a) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置289に保存的アミノ酸置換を有する、
    (b) アミノ酸位置289のチロシンが、ロイシン、イソロイシン、もしくはアスパラギンに置換されている、
    (c) アミノ酸位置342のシステインがトレオニンに置換されている、
    (d) (a)と(c)の任意の組み合わせである、または
    (e) (b)と(c)の任意の組み合わせである、
    請求項8記載の触媒ドメイン。
  10. 請求項8記載の触媒ドメインを含むポリペプチド。
  11. N-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合の形成を触媒するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI由来の精製および単離された触媒ドメイン。
  12. (a) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置228に保存的アミノ酸置換を有する、
    (b) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置289に保存的アミノ酸置換を有する、
    (c) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置228および289に保存的アミノ酸置換を有する、または
    (d) アミノ酸位置228においてリシンがアルギニンに置換されており、かつアミノ酸位置289においてロイシンがチロシンに置換されている
    請求項11記載の触媒ドメイン。
  13. 請求項11記載の触媒ドメインを含むポリペプチド。
  14. マンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン結合の形成を触媒するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI由来の精製および単離された触媒ドメイン。
  15. (a) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置228に保存的アミノ酸置換を有する、
    (b) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置289に保存的アミノ酸置換を有する、
    (c) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置228および289に保存的アミノ酸置換を有する、または
    (d) アミノ酸位置228においてリシンがアルギニンに置換されており、かつアミノ酸位置289においてロイシンがチロシンに置換されている、
    請求項14記載の触媒ドメイン。
  16. 請求項14記載の触媒ドメインを含むポリペプチド。
  17. ガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO3結合の形成を触媒するβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI由来の精製および単離された触媒ドメイン。
  18. (a) 前記触媒ドメインが、アミノ酸位置279および280に保存的アミノ酸置換を有する、または
    (b) アミノ酸位置279においてセリンがリシンに置換されており、かつアミノ酸位置280においてトレオニンがフェニルアラニンに置換されている、
    請求項17記載の触媒ドメイン。
  19. 請求項17記載の触媒ドメインを含むポリペプチド。
  20. β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIの触媒ドメインのin vitroフォールディングを促進する、精製および単離されたポリペプチド。
  21. そのアミノ酸断片が、配列番号6もしくは7で表されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号6もしくは7で表されるアミノ酸配列を有する、請求項20記載のポリペプチド。
  22. 請求項1、5、8、11、14、または17のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸断片。
  23. 請求項22記載の核酸断片を含む発現カセット。
  24. 請求項22記載の核酸断片または請求項23記載の発現カセットを含む細胞。
  25. グルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を合成する方法であって、請求項1記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIを含む反応混合物を、グルコースを含む供与体、およびN-アセチルグルコサミンを含む受容体、と共にインキュベートすること、を含む前記方法。
  26. 前記供与体がUDP-グルコースであるか、前記受容体がN-アセチルグルコサミンであるか、または前記供与体がUDP-グルコースでありかつ前記受容体がN-アセチルグルコサミンである、請求項25記載の方法。
  27. 請求項25記載の方法に従って合成したグルコース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を含むオリゴ糖。
  28. N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を合成する方法であって、請求項5記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIを含む反応混合物を、N-アセチルガラクトサミンを含む供与体、およびN-アセチルグルコサミンを含む受容体、と共にインキュベートすること、を含む前記方法。
  29. 前記供与体がUDP-N-アセチルガラクトサミンであるか、前記受容体がN-アセチルグルコサミンであるか、または前記供与体がUDP-N-アセチルガラクトサミンでありかつ前記受容体がN-アセチルグルコサミンである、請求項28記載の方法。
  30. 請求項28記載の方法に従って合成したN-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を含むオリゴ糖。
  31. N-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース部分を合成する方法であって、請求項8記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼI、α-ラクトアルブミン、N-アセチルガラクトサミンを含む供与体、およびグルコースを含む受容体、を含む反応混合物をインキュベートすること、を含む前記方法。
  32. 前記供与体がUDP-N-アセチルガラクトサミンであるか、前記受容体がグルコースであるか、または前記供与体がUDP-N-アセチルガラクトサミンでありかつ前記受容体がグルコースである、請求項31記載の方法。
  33. 請求項31記載の方法に従って合成したN-アセチルガラクトサミン-β(1,4)-グルコース部分を含むオリゴ糖。
  34. N-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を合成する方法であって、請求項11記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIを含む反応混合物を、N-アセチルグルコサミンを含む供与体、およびN-アセチルグルコサミンを含む受容体、と共にインキュベートすること、を含む前記方法。
  35. 前記供与体がUDP-N-アセチルグルコサミンであるか、前記受容体がN-アセチルグルコサミンであるか、または前記供与体がUDP-N-アセチルグルコサミンでありかつ前記受容体がN-アセチルグルコサミンである、請求項34記載の方法。
  36. 請求項34記載の方法に従って合成したN-アセチルグルコサミン-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を含むオリゴ糖。
  37. マンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を合成する方法であって、請求項14記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIを含む反応混合物を、マンノースを含む供与体、およびN-アセチルグルコサミンを含む受容体、と共にインキュベートすること、を含む前記方法。
  38. 前記供与体がUDP-マンノースであるか、前記受容体がN-アセチルグルコサミンであるか、または前記供与体がUDP-マンノースでありかつ前記受容体がN-アセチルグルコサミンである、請求項37記載の方法。
  39. 請求項37記載の方法に従って合成したマンノース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン部分を含むオリゴ糖。
  40. ガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO3部分を合成する方法であって、請求項17記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIを含む反応混合物を、ガラクトースを含む供与体、およびN-アセチルグルコサミン-6-SO3を含む受容体、と共にインキュベートすること、を含む前記方法。
  41. 前記供与体がUDP-ガラクトースであるか、前記受容体がN-アセチルグルコサミン-6-SO3であるか、または前記供与体がUDP-ガラクトースでありかつ前記受容体がN-アセチルグルコサミン-6-SO3である、請求項40記載の方法。
  42. 請求項40記載の方法に従って合成したガラクトース-β(1,4)-N-アセチルグルコサミン-6-SO3部分を含むオリゴ糖。
  43. 受容体を有する抗原、供与体、および請求項1、5、8、11、14、もしくは17のいずれか1項に記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIを含む反応混合物を、該β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIが該供与体と該抗原上の該受容体との間の結合形成を触媒して該抗原の免疫原性を高める条件下でインキュベートすること、を含む方法。
  44. 前記供与体が、UDP-ガラクトース、UDP-マンノース、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルコース、GDP-マンノース、およびUDP-N-アセチルガラクトサミンからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
  45. 前記受容体が、糖質、糖タンパク質、または糖脂質である、請求項43記載の方法。
  46. 前記糖質が、単糖、二糖、オリゴ糖、および多糖からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
  47. 前記抗原がワクチンである、請求項43記載の方法。
  48. 前記抗原がタンパク質または糖タンパク質である、請求項43記載の方法。
  49. 請求項43記載の方法に従って調製した抗原。
  50. 所定の配列を有する糖組成物を調製する方法であって、以下:
    受容体を第1グリコシルトランスフェラーゼの存在下で第1供与体と接触させて該受容体と該供与体との連結を触媒することにより、第1糖組成物を形成させること、および
    第1糖組成物を第2グリコシルトランスフェラーゼの存在下で第2供与体と接触させて第1糖組成物と第2供与体との連結を触媒することにより、第2糖組成物を形成させること、
    を含み、
    ただし、第1グリコシルトランスフェラーゼまたは第2グリコシルトランスフェラーゼのうち少なくとも一方は、請求項1、5、8、11、14、もしくは17のいずれか1項に記載のβ(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼIであり、かつ他方の第1または第2グリコシルトランスフェラーゼは、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、およびグルクロニルトランスフェラーゼからなる群より選択されるものである、
    前記方法。
  51. 前記第1供与体または前記第2供与体が、UDP-ガラクトース、UDP-マンノース、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルコース、GDP-マンノース、UDP-N-アセチルガラクトサミン、UDP-グルクロン酸、GDP-フコース、およびCMP-N-アセチルノイラミン酸からなる群より選択される、請求項50記載の方法。
  52. 前記受容体が、糖質、糖タンパク質、または糖脂質である、請求項50記載の方法。
  53. 前記糖質が、単糖、二糖、オリゴ糖、および多糖からなる群より選択される、請求項52記載の方法。
  54. 前記受容体が抗原である、請求項50記載の方法。
  55. 前記抗原がワクチンである、請求項54記載の方法。
  56. 前記抗原がタンパク質または糖タンパク質である、請求項54記載の方法。
  57. 請求項50記載の方法に従って調製した組成物。
  58. パッケージング材料と、請求項1、5、8、11、14、または17のいずれか1項に記載の触媒ドメインを含むポリペプチドとを含むキット。
  59. 供与体をさらに含む、請求項58記載のキット。
  60. 前記供与体が、UDP-ガラクトース、UDP-マンノース、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-グルコース、GDP-マンノース、UDP-N-アセチルガラクトサミン、UDP-グルクロン酸、GDP-フコース、およびCMP-N-アセチルノイラミン酸からなる群より選択される、請求項59記載のキット。
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