固定されたつば(brim)やバイザーの下に格納式バイザーを摺動可能に取付けた頭部装具、或いは固定されたつばやバイザーに固定できる、脱着可能取付け式つば伸張部やバイザー伸張部はよく知られているが、これらの構造体は一般に、バイザーの長さ又は幅のいずれか一方を拡張できるだけで、長さと幅の両方を拡張できるものではない。例えば、米国特許第5621915号は、伸長部ユニットのスロット群を利用してバイザーを摺動させる、又は縁なし帽のバイザーにこの伸長部ユニットを留め具で留めることによって、縁なし帽(キャップ)や縁付き帽(ハット)のバイザーに取り付けできる、脱着可能縁なし帽バイザー伸長部を開示している。この脱着可能縁なし帽バイザーは格納式ではなく、縁なし帽や縁付き帽に取り付けられているか取り付けられていないかのどちらかである。よって、開示されている脱着可能縁なし帽バイザーにおいては、バイザーの長さを連続的に変化させる調節はできず、またバイザーの幅は全く調節することができない。
米国特許第6202218号は、バイザーの長さの可変的な調節が容易にできるように、固定されたバイザー又はつばのスロットに挿入された拡張可能なバイザーを有する縁付き帽について開示している。しかしながら、この開示された拡張可能なバイザーにおいても、バイザーの長さと幅の両方を可変的に調節することはできない。
米国特許第5689830号は、縁付き帽や縁なし帽のつば要素として用いるためのバイザーを開示している。このつばは、格納と拡張の双方が可能で、また、着用者の頭の周りで旋回可能且つ回転可能である。しかしながら、このバイザーは、縁付き帽に対して旋回可能なだけであり、伸長部の固定つばに対するピボット回転によりバイザーの幅を調節可能とするものではない。
米国特許第5901371号は、主固定バイザーにおける対向する両側面に配置された調節可能なサイドバイザーを有する縁なし帽を開示している。各サイドバイザーにはフラップがピボット回転可能に取付けられていることにより、このフラップは各サイドバイザー内にある第一の位置から、該バイザーから外れ下方にのびる第二の位置へと移動可能で、着用者の所望により日よけのサイズを変更できる。しかしながらこのフラップは、バイザーの長さと幅の両方を可変的に調節できるバイザー伸長部を提供するものではない。
他にも、バイザーの長さを調節することのできる拡張可能なバイザーを有する縁なし帽を開示している特許(米国特許第4793006号、同第5075898号、同第5197150号、同第5839125号)があるが、いずれもバイザーの幅は調節できない。これらの特許はいずれも、バイザーの長さを調節できることが所望されると考えたものであるが、これに対して米国特許第5901371号は、縁なし帽の片側或いは両側に日よけ部分をより広くとるためにサイドバイザー部の長さを調節できることが所望されると考えたものである。しかしながら、これらの特許はいずれも、バイザーの長さと幅の両方を調節可能なことが所望されるとは認識しておらず、また、バイザーの長さと幅の両方を調節可能とするのに適した構造体を示唆していない。
米国特許第4793006号
米国特許第5075898号
米国特許第5197150号
米国特許第5839125号
調節可能な領域を有する表面を備えた構造体に関連した技術は、家具分野において最もよく例示されよう。従来、可変領域支持表面を有するテーブルや机、その他の家具の多くは一般に、脱着可能な板状体を利用したり、垂直姿勢から水平姿勢に回転させるため、家具に摺動可能又はピボット回転可能に取り付けた板状体伸長部を利用している。これらの拡張可能な構造体には問題がある。例えば、脱着可能な板状体の場合、テーブルその他の家具の上で物品を置ける表面領域を可変調節することができず、また、一般により広い或いは狭い表面領域が望まれる際には、収納場所に運び入れたり運び出したりしなければならない。ピボット回転可能又は摺動可能に家具に連結された板状体の場合は、収納や運搬の必要がなくなる。しかしながら、摺動可能に取り付けられた板状体は、家具の支持表面の長さ又は幅のいずれか一方を調節できるだけで、長さと幅の両方を調節することはできない。同様に、家具の支持表面に回動可能に取り付けられた板状体は、軸によって実質的に家具支持表面の面内において通常垂直姿勢から水平姿勢へと回転可能で、従って、テーブルの長さ又は幅のいずれか一方を拡張できるだけで、両方はできず、支持表面の領域を可変的に調節する選択肢はない。
他の状況においても表面領域を拡充するために使用される類似の構造体があるが、通常、従来の拡張・格納式板状体を有する家具と同じ問題点がある。
本発明は、物体の表面領域を可変調節できる拡張・格納式板状体を有する構造体を提供する。この構造体は第一パネルと、第一パネルにそれぞれピボット回転可能に取り付けられた第二、第三パネルとを含み、第二、第三パネルは、これら第二、第三パネルの重なりが最小である第一の位置と、第二、第三パネルの重なりが最大である第二の位置との間のどの位置へもピボット回転可能である。
本発明の一アスペクトにおいて、本構造体は、着用者の状況や活動に応じた所望の可変的日よけを提供する目的で、つばの幅と長さの両方向に拡張可能な、縁付き帽や縁なし帽のつばを提供するために用いられる。
本発明の別のアスペクトにおいて、拡張・格納式板状体を有する上記構造体は、思い通りに長さと幅の両方向に拡大したり縮小したりできる表面領域を有する家具を提供するために用いられる。
これら及び本発明の他の特徴、利点及び目的は、以下、本明細書、クレーム及び添付の図面を参照することによって当業者にさらに理解され、認識されるであろう。
図1〜9には、拡張・格納式板状体16、17を備えたつば15を有する縁なし帽10が示されており、各板状体はそれぞれ主つば部材18にピボット回転可能に取り付けられている。通常、主つば部材18は、従来知られている方法で縁なし帽10に固定されている。拡張・格納式板状体16、17はそれぞれ、主つば部材18の対向する端部にピボット回転可能に取り付けられ、ピボットピン21、20の周りを回動可能で、つばの有効面領域を長さ方向と幅方向の両方に拡張できる。
図1、2、8に示される完全格納位置では、通常、拡張・格納式板状体16、17は主つば部材18及び副ガイド部材28によって完全にカバーされ、隠されており、従って調節可能なつば15の有効表面領域は主つば部材18の領域に等しい。拡張・格納式板状体16、17のそれぞれは、図3〜6に示されているように、主つば部材18とこれら拡張・格納式板状体との重なりが最小(即ち、拡張及び表面領域が最大)である第一の位置と、図1、2に示されているように、主つば部材18と該拡張・格納式板状体16、17との重なりが最大(即ち、板状体16、17が完全に格納され、つば15の表面領域が最小)である第二の位置との間のどの位置へもピボット回転できる。板状体16と17の運動は、互いに独立的であっても従属的であってもよい。しかしながら、図示した実施形態においては、拡張・格納式板状体16、17は協調して動く(即ち、板状体16と17が同時に拡張、格納される構造体が提案されている)。この機構は、主つば部材18の裏面に固定されたガイド22、ガイド22を貫通する細長い線状スロット24に通されて配設されたピン23、板状体17を貫通する細長い弧状スロット25、板状体16を貫通する細長い弧状スロット26、及び副ガイド部材28を貫通する細長いスロット27を含む。ピン23は、スロット24より幅の広い頭部29を含み、従って頭部29は主つば部材18とガイド22の間に保持される。板状体16、17及び副ガイド部材28は、ピン23のシャンク部に固定されるアクチュエータ31のフランジ部30とガイド22との間に挟まれている。図示した実施形態においては、留め具32、33はそれぞれピン20、21と協働して、各つば要素16、17、18、28を層状に合わせて支える。この図示した実施形態においては、留め具32、33のシャンク部はそれぞれ、ピン20、21を貫いて延びる軸方向の穴で受ける。留め具32、33はそれぞれ、しまりばめ、摩擦係合、接着剤、その他様々な手段によってピン20、21に固定することができる。つばを構成する要素の組み立て方としては、拡張・格納式板状体16、17各々が、主つば部材18に対して回転し、つば15の有効領域を長さと幅の両方向に広げることができれば、他にも様々な手段を用いることができる。
つば15の有効領域は、把持アクチュエータ31をスロット27の長手方向と同じ方向につば15の縁部へ向けて外方に押すことで広げることができる。これにより、アクチュエータ31に取り付けられたピン23が、拡張・格納式板状体16、17それぞれのスロット26、25の外方端に係合し、板状体16はピン21の周りを外方に向かって回転し、拡張・格納式板状体17はピン20の周りを外方に向かって回転する。板状体16、17は、アクチュエータ31をつば15の縁部から離れるよう反対の方向に動かす、或いは拡張された板状体16、17の外縁部を内側へ押し込むことにより格納できる。
図示した実施形態においては、板状体16、17は基本的に互いに鏡像関係にある。この関係は、スロット25、26、ガイドスロット24、ピン23、オプショナルガイドスロット27と共に、つば要素16、17が同等に拡張しつばに対称性を与えることを保証する。このような対称性は一般に、審美的理由から望ましい。しかしながら、これらスロット及びガイドは、長さと幅の両方向に拡張可能なつば構造体を達成するという観点からは必須なものではない。
図10には、本発明の別の実施形態が示されており、先に図1〜9に関して述べた拡張・格納式板状体を有する構造体を縁なし帽にではなくヘッドバンドに使用している。ヘッドギア110は、拡張・格納式板状体(その全体像については上述した)を有する構造体を取り付けたヘッドバンド111を含む。この拡張・格納式板状体構造は、主つば118、第一拡張・格納式板状体116、第二拡張・格納式板状体117、及びガイド部材128を含む。ヘッドギア110のつば構造体115は、図1〜9に図示した実施形態で述べたつば構造体15と同様のものとすることができる。従って図10は、拡張・格納式板状体を有する構造体を、各種様々な縁付き帽、縁なし帽、ヘッドバンド、その他種々のヘッドギア等のいずれにも使用できることを示している。
図11〜14は、水平な支持表面或いは作業表面212を提供する第一パネル210を有する家具200(机やテーブル等)を示す。第二パネル216と第三パネル217はそれぞれ、第一パネル210の下面にピボット回転可能に取り付けられているため、これらは図11、12の格納位置(パネル216、217は第一パネル210の下で完全に重なっている、即ち、重なりが最大である位置)と第二位置(パネル又は板状体216、217がピボットピン221、220の周りをそれぞれ回転し、第二、第三パネル216、217の重なりが大幅に減少する位置)との間を回転でき、これにより、支持表面212の有効領域が長さと幅の両方向に増大する。図15に図示されているように、拡張・格納式板状体216、217は第一パネル210の一端に取り付けることができ、追加の拡張・格納式板状体218、219は第一パネル210の他端に取り付けることができる。
図1〜10に示した頭部装具と同様、拡張・格納式板状体を用いる家具やその他の構造体には、板状体216、217を対称的に展開させる手段を備えることができる。この手段は一般に拡張・格納式バイザー15に関連して述べた手段と同じでよい。
頭部装具や家具に加え、本明細書に開示の拡張・格納式板状体を有する構造体は、その他様々な目的(各種プラットフォーム類、トレイ等)に利用できる。
該構造体に用いるアクチュエータ(例えばアクチュエータ31)は直接的又は間接的に拡張・格納式板状体或いはパネルに連結でき、摺動、回転、その他の方法で操作して板状体或いはパネルを動かすことができる。アクチュエータはロックできるものであっても、ロックできないものであってもよい。また、ピボットピンはアクチュエータとして機能できるよう適切に形成することができる。アクチュエータはバイザーアッセンブリの様々な位置に配置することができる。固定バイザーパネルが一枚だけの場合、バイザー伸長部の上方又は下方に位置させることができる。固定バイザーパネル及び回転可能バイザーパネルは、厚紙、織物、プラスチック、木材、その他、適切な材料であればいずれの材料でも作ることができる。
本発明の構造体には、図示した実施形態の方法と同様にして展開したり格納したりできる拡張・格納パネルを三枚以上用いることができる。従って請求の範囲の解釈に当たっては、本発明は、拡張・格納式パネルを少なくとも二枚必要とするが、三枚以上の拡張・格納パネルを有する構造体をも包含するものと解釈されねばならない。
上の記述は、好ましい実施形態についてのみに関するものである。本発明の種々の改変は、当業者や本発明を実施・使用しようとする者に想到されるであろう。よって、図面に示し上に記述した各種実施形態は単に説明を目的としたものであり、本発明の範囲を何ら限定するよう意図されたものではなく、本発明の範囲は、均等物の原理を含む特許法の原則に従って解釈されるべき添付の特許請求の範囲によって定義されるものである。