JP2006517032A - ある種の癌治療の有効性を評価するための方法 - Google Patents

ある種の癌治療の有効性を評価するための方法 Download PDF

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Abstract

アポトーシスを刺激する働きをする治療薬の、哺乳類の身体における有効性を評価するための方法は、該アポトーシスを刺激する働きをする治療薬で処置する哺乳類から、腫瘍細胞が存在する身体組織または体液のサンプルを得ること、ここで、該組織または体液はカスパーゼ3の17kDa断片を含む可能性があり、この断片はin vivoにおけるカスパーゼ3の特異的切断によって生じたものである;該切断カスパーゼ3の17kDa断片の存在量を測定すべく該サンプルをアッセイすること;該治療薬を該哺乳類に投与すること;該哺乳類から、該身体組織または該体液の第二のサンプルを得ること;および該切断カスパーゼ3の17kDa断片の存在量を測定すべく該第二のサンプルをアッセイすることを含み、該第一のサンプルで測定された量に対する、該第二のサンプルで測定された該17kDa断片の量の増加が、アポトーシス刺激および該治療薬の有効性を示す。

Description

発明の詳細な説明
本願は2003年1月28日出願の米国仮出願番号60/442,902の優先権を主張するものである。
本発明は、アポトーシスの誘導を通じて作用する、またはアポトーシス誘導をもたらす癌治療の有効性を評価するための方法に関する。より詳しくは、本発明はアポトーシスマーカーとしての、切断カスパーゼ3の17kDaサブユニットを検出することを含む、かかる方法に関する。
全身性遺伝子療法送達系の開発における近年の研究の生産性の高い焦点の一つが、in vivoヒト治療用の遺伝子の非ウイルス系医薬製剤の開発、特にカチオンリポソーム介在遺伝子導入系に注がれてきた(Massing U, et al., Int. J. Clin. Pharmacol. Ther. 35:87-90 (1997))。それらをDNA送達にとって融通が利き、かつ、魅力的なものとするカチオンリポソームは、調製が簡単なこと;大量のDNAを複合化できること;どんな種類および大きさのDNAまたはRNAとともに用いる場合でも融通が利くこと;非分裂細胞細胞を含む、多くの異なる細胞種をトランスフェクトできること;および免疫原性または生物に有害な活性がないことを備えている(Felgner PL, et al., Ann. NY Acad. Sci. (1995) 772:126-139; Lewis JG, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93:3176-3181)。ヒト癌治療の展望からより重要なこととしては、カチオンリポソームがin vivo遺伝子送達にとって安全かつ効率的であるということが分かっていることである(Aoki, K. et al., Cancer Res. 55:3810-3816 (1997); Thierry, A.R., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9742-9746 (1997))。
カチオンリポソームのトランスフェクション効率は、それらが細胞表面受容体によって認識されるリガンドを有する場合に劇的に上昇し得る。受容体介在エンドサイトーシスは、真核細胞に存在する効率の高い内在化経路である(Cristiano, R.J., et al., Cancer Gene Ther. 3:49-57 (1996), Cheng, P.W., Hum. Gene Ther. 7:275-282 (1996))。リポソーム上のリガンドの存在は、細胞表面にあるその受容体がまずリガンドと結合し、その後、結合複合体の内在化によって細胞へのDNA導入を助ける。トランスフェリンおよび葉酸(folate)をはじめとする種々のリガンドが、そのリポソーム標的化能に関して研究されている(Lee, R.J., et al., J. Biol. Chem. 271:8481-8487 (1996))。葉酸受容体(FR)およびトランスフェリン受容体(TFR)レベルは、限定されるものではないが、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、頭頸部癌、膀胱癌、脳癌、卵巣癌、皮膚癌、肺癌、および肝臓癌をはじめとする種々の癌細胞種で上昇している。また、TFRおよびFRの上昇レベルは腫瘍細胞の攻撃能または増殖能とも相関がある(Elliot, R.L., et al., Ann. NY Acad. Sci. 698:159-166 (1993))。よって、TFRおよびFRのレベルは予後の腫瘍マーカーとして有用であると考えられ、悪性細胞の治療における薬物送達のための可能性のある標的である(Miyamoto, T., et al., Int. J. Oral Maxillofac. Surg. 23:430-433 (1994); Thorstensen, K., et al., Scand. J. Clin. Lab. Invest. Suppl. 215:113-120 (1993))。
腫瘍細胞上の受容体によって認識されるリガンドの他、特異的抗体もリポソーム表面へ結合でき、それらを特異的腫瘍細胞表面抗原(受容体を含むが、これに限定されるものではない)(Allen, T.M., et al., Stealth iposomes, pp. 233-244 (1995))に向けることができる(Allen, T.M., Biochim. Biophys. Acta 1237:99-108 (1995))。これらの「イムノリポソーム」、特に立体的に安定化したイムノリポソームは、特定の標的細胞群に治療薬物を送達することができる(Allen, T.M., et al., Stealth Liposomes, pp. 233-244 (1995))。Parkら(Park, J.W., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:1327-1331 (1995))は、リポソームに結合させた抗HER−2モノクローナル抗体(Mab)Fabフラグメントが、乳癌細胞系SK−BR−3を過剰発現するHER−2に特異的に結合し得ることを明かにした。イムノリポソームは、被覆ピット経路を介する受容体介在エンドサイトーシスによって、また可能性として膜融合によっても効率的に内在化を受けることが見出された。さらに、抗HER−2Fabフラグメントのアンカリングによって、その阻害作用は増強した。また、ドキソルビシンを付加した抗HER−2イムノリポソームは、in vivoおよびin vitroにおいて標的細胞に対して有意かつ特異的な細胞傷害性を示した(Park, J.W., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:1327-1331 (1995))。さらに、Suzuki et al., Br. J. Cancer 76:83-89 (1997)は、in vitroにおいてヒト白血病細胞において、より効率的にドキソルビシンを送達するために抗トランスフェリン受容体モノクローナル抗体結合イムノリポソームを用いた。Huwyler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14164-14169 (1996)は、in vivoにおいてラット神経膠腫(RT2)細胞に、ダウノマイシンを送達するために抗TfRモノクローナル抗体イムノリポソームを用いた。このペグ化(PEGlated)イムノリポソームによれば、正常な組織および臓器における薬物濃度がより低くなる。これらの研究は、腫瘍標的化薬物送達のためのイムノリポソームの有用性を示すものである。
生物工学における発展は、Mabからの特異的認識ドメインの誘導を可能にした(Poon, R.Y., Biotechnology International: International Developments in the Biotechnology Industry, pp. 113-128 (1997))。重鎖および軽鎖の可変領域の組換えと、その単一ポリペプチドへの組込みは、標的化の目的のために単鎖抗体誘導体(scFvと呼ばれる)を使用する可能性を提供する。癌胚抗原に向けられたscFv、HER−2、CD34、黒色腫関連抗原およびトランスフェリン受容体を提示するよう操作したレトロウイルスベクターが開発された(Jiang, A., et al., J. Virol. 72:10148-10156, (1998); Konishi, H., et al., Hum. Gene Ther. 9:235-248 (1994); Martin, F., et al., Hum. Gene Ther. 9:737-746 (1998))。ウイルスに向けたこれらのscFvは、特定の抗原を発現する細胞種を特異的に標的とし、結合し、感染することが示されている。さらに、少なくとも癌胚抗原の場合、scFvは、親抗体と同じ細胞特異性を持つことが示されている(Nicholson, I.C., Mol. Immunol. 34:1157-1165 (1997))。
種々のイムノリポソームが、ヒト遺伝子療法で使用するための、腫瘍を標的とする核酸の全身性送達が可能である。抗体または抗体フラグメントを標的とするイムノリポソーム複合体は、抗体または抗体フラグメントとリポソーム複合体の化学的結合によって、または簡単かつ効率的な非化学的結合法によって製造することができる。TfRscFvは種々の方法(出典明示により本明細書の一部とするPCT出願公開番号WO00/50008)を用いてリポプレックスと化学的に結合させることができ、in vitroおよびin vivoでヒト前立腺腫瘍細胞をトランスフェクトすることができる。あるいは、抗体または単鎖タンパク質をリポソームと結合させ、そして、抗体またはscFv、リポソームおよびリガンドを所定の比率および順序で単に混合することにより、この抗体−またはscFv−リポソーム−治療薬または診断薬複合体が形成される。
この標的化リポソームは種々の治療分子を標的細胞へ運搬することができる。治療薬はリポソーム表面に付着する。このような薬剤としては、化学療法薬、高分子量DNA分子(遺伝子)、プラスミドDNA分子、および小型のオリゴヌクレオチドが挙げられる。
世界中でこれまでに600を超える遺伝子療法臨床試験が認可されており、この数は増加の一途をたどっている。しかしながら現在、特定の遺伝子療法がその意図した標的に到達し、作用しているかどうかを判定する信頼できる、最小限の侵襲的手段はない。この問題は転移性疾患に作用可能な全身性遺伝子療法送達系の開発に向けた研究活動として特に重要である。腫瘍生検を繰り返し行うことはできないので、侵襲性の少ない方法論を用いる新しいアプローチを開発することが急がれる。
限定されるものではないが、化学療法薬、放射線療法、ならびにRBおよびp53のような腫瘍抑制遺伝子をはじめとする多くの抗癌薬はアポトーシスを誘導することによって働く。アポトーシス(プログラム細胞死とも呼ばれる)は、発育中の組織のパターン化に、および成熟細胞/組織のホメオスタシスの維持に中枢的役割を果たす高度に調節された生理学的プロセスである(Horvitz, H.R., Cancer Res. 59:1701-1706 (1999); Jacobsen, M.D. and Weil, M., Cancer, 88:407-454 (1997))。このアポトーシス機構の欠陥は癌の顕著な特徴である(Hanahan, D., and Weinberg, R., Cell, 100:57-70 (2000))。
本発明の一つの目的は、哺乳類の身体において治療薬の有効性を評価するための、簡単かつ信頼できる侵襲性の少ない方法を提供することである。より詳しくは、本発明の一つの目的は、治療薬がアポトーシスを刺激する働きをする場合の、かかる方法を提供することである。
本発明によれば、アポトーシスを刺激する働きをする治療薬の有効性を評価するための方法が提供される。この方法は、
腫瘍細胞が見られる身体組織、または該治療薬で処置する哺乳類からの体液のサンプルを得ること、ここで、該組織または体液はカスパーゼ3の17kDa断片を含み得、この断片はin vivoにおけるカスパーゼ3の特異的切断によって得られたものである;
該カスパーゼ3の17kDa断片の存在量を測定すべく該サンプルをアッセイすること;
該治療薬を該哺乳類に投与すること;
該哺乳類から、該身体組織または体液の第二のサンプルを得ること;および
該切断カスパーゼ3の17kDa断片の存在量を測定すべく該第二のサンプルをアッセイすること
を含み、該第一のサンプルで測定された量に対する、該第二のサンプルで測定された該17kDa断片の量の増加が、該治療薬によるアポトーシス刺激および該治療薬の有効性に相関する。
図面の簡単な説明
図1はP30およびP6カラムで精製したマウス血漿由来の17kDa切断カスパーゼ3サブユニットを示す。
図2はTfRscFv−LipA−p53の静注後のPanc−1異種移植片における外因性wtp53の発現および17kDaカスパーゼ3サブユニットの発現を示す。
図3はPanc−1異種移植片における、葉酸−LipA−p53複合体静注後の経時的な17kDaカスパーゼ3サブユニットの発現を示す。図中、UT=対照として用いた非処置動物;Fpp53=葉酸−リポソームA−p53複合体;およびFpVec=エンプティーベクターを有する葉酸−リポソームA複合体。
図4はトランスフェリン−リポソームA−p53複合体およびシスプラチン(CDDP)で処置した後のDU145担癌マウスから抽出した血液細胞ペレットにおける17kDaタンパク質の存在を示す。
図5はトランスフェリン−リポソームA−p53を含む複合体とシスプラチンの組合せで処置した後の、PANC−1異種移植片腫瘍を持つ、または持たないマウス由来の血清における、カスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を示す。
図6はTfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2の複合体で処置した後のPANC−1細胞におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を、TfRscFv−リポソームA−スクランブルHER−2の複合体で処置した、かかる細胞と比較して示す。
図7はTfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2複合体とジェムザール(Gemzar)(登録商標)の組合せで処置した後の、PANC−1細胞におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を、非処置細胞と、また、ジェムザール(登録商標)単独、TfRscFv−リポソームA−ASHER−2複合体単独、またはTfRscFv−リポソームA−スクランブルHER−2複合体とジェムザール(登録商標)の組合せのいずれかで処置したものと比較して示す。
図8はTfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2の複合体とジェムザール(登録商標)の組合せの静脈投与後のPANC−1異種移植片腫瘍担持マウス由来の血漿におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を、非処置動物と、また、ジェムザール(登録商標)単独、TfRscFv−リポソームA−AS HER−2複合体単独またはTfRscFv−リポソームA−スクランブルHER−2の複合体とジェムザール(登録商標)の組合せのいずれかで処置したものと比較して示す。
図9Aおよび9Bは、各々、PANC−1およびCOLO357細胞のトランスフェクション8時間後の、TfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2単独による、またはジェムザール(登録商標)との組合せによるアポトーシス経路におけるタンパク質発現のin vitro抑制的調節を示す。両細胞種ともカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在の明瞭な結果を示した。これらの結果は、非処置細胞の結果およびジェムザール(登録商標)単独またはジェムザール(登録商標)とTFRsvFv−リポソームA−スクランブルHER−2の組合せで処置した細胞の結果と対照的である。
図10はTfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2単独による、またはPANC−1細胞のジェムザール(登録商標)6時間後トランスフェクションの組合せによるアポトーシス経路におけるタンパク質発現のin vitro抑制的調節を示す。対照は図9Aおよび9Bと同じである。
図11は皮下PANC−1異種移植片腫瘍を担持するヌードマウスへの、TfRscFv−LipA−アンチセンスHER−2複合体単独またはジェムザール(登録商標)と組み合わせた静脈送達後の腫瘍細胞におけるアンチセンスHER−2作用の局在を示す。17kDaサブユニットの存在を示す矢印は、肝細胞または肺細胞サンプルのいずれにも存在しない腫瘍における中央のバンドを指している。
図12はPANC−1異種移植片腫瘍におけるTfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2とジェムザール(登録商標)の組合せ処置のin vivo作用を、非処置腫瘍、またはジェムザール(登録商標)単独、複合体単独もしくはジェムザール(登録商標)とTfRscFv−リポソーム A−スクランブルHER−2a複合体の組合せで処置した腫瘍と比較して示すグラフである。
図13はRB94腫瘍抑制遺伝子で全身処置した後のマウス血漿におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を示す。
図14は化学療法後のヒト乳癌患者の血清におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を示す。
発明の詳細な説明
アポトーシスのメカニズムは進化を通じて顕著に保存され、システインプロテアーゼファミリーによって制御されている。これらの酵素はそれらの特異的基質であるアスパラギン酸残基の後ろで切断することで、アポトーシス細胞を特徴付ける多くの典型的な生化学的・形態学的変化を媒介する。当業者ならば、アポトーシスの指標または生化学的マーカーとして活性化カスパーゼの同定が使用できることを知っているが、それらの使用はこれまでのところ、in vitro細胞培養物もしくは細胞溶解物、または無傷の生細胞の場合に限られていた。
カスパーゼファミリーには、少なくとも14の異なる哺乳類メンバーが存在する。これらの酵素は、プロアポトーシスシグナルに応答してタンパク質分解性の活性化を受ける不活性な前駆体(チモーゲン)としてほとんどの細胞種で構成的に発現する(Kohler et al., J. Immuno Methods 265:97-110 (2002)参照)。大きなプロ酵素は、特異的な内部配列で切断され、後にヘテロダイマーを形成する大サブユニットと小サブユニットとに分割される(Jacobsen, M.D. and Weill, M; Cell 88:307-354 (1997); Cryns, V. and Yuan, M. J., Gene Dev. 12:1551-1570 (1998);およびNunez, G., et al., Oncogene 17:3237-3245 (1998))。活性型のカスパーゼはこのような2つのヘテロダイマーからなっている(Nicholson, D.W. and Thornberry, N., trands biochem. Sci. 22:299-306 (1997))。
アポトーシスに関与するカスパーゼは一般に、イニシエーターカスパーゼ(カスパーゼ2、8、9および10)およびエフェクターカスパーゼ(カスパーゼ3、6および7)の2つのカテゴリーに分けられる。前者のグループは自己活性化型で、その後、エフェクターカスパーゼの活性化へと進行する。ある領域の細胞標的を切断して、最終的に細胞死をもたらすのはこれらの活性化されたエフェクターカスパーゼである。このイニシエーターからエフェクターカスパーゼへの一連の活性化が、カスパーゼカスケードという概念を導いた。例えば、腫瘍壊死因子(TNF)またはfasリガンドとその受容体との結合は、その活性化をもたらすイニシエータープロカスパーゼ8を補充する「細胞死誘導シグナル伝達複合体」の構築をもたらす。活性型カスパーゼ8はプロカスパーゼ3を切断および活性化してタンパク質分解カスケードを起動させる。
健康な細胞では、カスパーゼはミトコンドリアおよびサイトゾルに不活性型のプロ酵素として存在する(Mancini, M., et al., J. Cell Biol. 140: 1485-1495 (1998))。アポトーシスシグナルは2つの腫瘍経路:ミトコンドリアに付随する内因的経路と腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの細胞死受容体が介在する外因的経路に沿って伝達される。このカスケードはいくつかの異なる種類の刺激によって誘発される(Mathiasen and Jaeaettelae, Trends in Molecular Medicine 8:212-20 (2002))。放射線照射および化学療法薬など、DNAに傷害を起こす因子はp53を活性化し、これは両アポトーシス経路を刺激し得る。重要なこととしては、両経路の遂行にはカスパーゼ3の活性化が必要であるということである。従って、カスパーゼ3により誘導されるタンパク質分解は実質上、全ての細胞アポトーシス経路において重要な事象であることが示されている。現在のデータは全て、アポトーシスの欠陥が癌の前提条件であることを示唆している(Jaeaettelae, M., Exp. Cell Research 248:30-43 (1999); Evans, G. and Vousden,K., Nature 411:342-348 (2001))。HER−2のような癌タンパク質の調節されない活性化、またはp53のような腫瘍抑制タンパク質の不活性化によって誘導される細胞増殖シグナルはカスパーゼの活性化を誘導し、アポトーシスを誘導するはずである。しかし、ヒト腫瘍はアポトーシス遺伝子遺伝子(例えば、p53)の突然変異(それらの不活性化を招く)を含み、かつ/または抗アポトーシスタンパク質(例えば、HER−2)の発現/活性化(Mathiason and Jaeaettelae TRENDS in Mol. Med. 8:212-220 (2002))が増強されており、その結果、腫瘍細胞の治療モダリティーに対する応答能の低下または不活性化に至っている。
腫瘍細胞および/または体液におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの検出は、アポトーシスを刺激する働きをする治療薬を投与した後にアポトーシス経路が機能することを示すことにより、治療の有効性を確認する手段を提供する。よって、治療薬などによる処置を開始する前の患者からの体液または腫瘍細胞含有身体組織のサンプルにおける17kDaサブユニットのレベルを測定し、治療薬で処置した後の患者からの体液または腫瘍細胞含有身体組織の第二のサンプルにおける17kDaサブユニットのレベルと比較することにより、その治療薬がアポトーシスを刺激したかどうかを判定することができる。
本発明の方法はアポトーシスの存在を質的に評価すること、およびアポトーシスの程度を評価することの双方に使用できる。よって、この方法は種々の治療の相対的有効性を比較および評価するための用量応答試験で使用できる。特定の治療の有効性が高いほどアポトーシスのレベルが高く、従って、産生される17kDaサブユニットの量が多くなる。本発明によれば、腫瘍細胞または体液中のカスパーゼ3の17kDaサブユニットの量が任意のバックグラウンドレベル(すなわち、治療薬の投与前の同じ宿主からの腫瘍細胞または体液サンプルで測定されたサブユニットの量)の少なくとも約1.5〜2倍であることが判明した場合に、治療薬または治療薬の組合せによる作用の結果としてのアポトーシスが起こったことが分かる。有効性の高い治療レジメンならば、任意のバックグラウンドレベルの少なくとも約3〜4倍の17kDaレベルを生じ得る。治療薬の投与前に得られた組織または体液サンプルが17kDaサブユニットの不在を示す場合には、治療薬の投与後に得られた第二のサンプルでどんな量のサブユニットが検出されても、アポトーシスを誘導する薬剤の作用の結果であると考えられる。
典型的には、腫瘍サンプルまたは体液サンプル中の17kDaサブユニットの量の測定は、薬剤の性質にもよるが、投与から約30分〜5日後、好ましくは投与から約8時間〜72時間後に行うことができる。例えば、HER−2アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む治療薬の投与の結果、比較的迅速にアポトーシスが起こるが、wtp53遺伝子を含む治療薬では効果が出るまでにもっと時間がかかる。処置が数日または数週間にわたる多数回処置である場合には、最初の処置から30分〜5日後、各処置後、または最後の処置の後のサブユニットの量を測定することができる。処置が有効であれば、アポトーシスの量、従って、産生した17Daサブユニットの量が経時的に上昇を続ける。
上記で述べたように、17kDaサブユニットの量は腫瘍細胞または体液のいずれかで測定することができる。体液は血液、または血清もしくは血漿などのその成分、または唾液を含み得る。好ましい体液は血液またはその成分である。
特定の治療の有効性を評価するこの方法は、アポトーシスを刺激する働きをするいずれの治療薬または治療法でも有効である。このような治療薬としては放射線照射または放射性治療薬、化学療法薬、ならびにp53、RB94およびRBなどの腫瘍抑制遺伝子、またはアンチセンスHER−2などのオリゴヌクレオチド、あるいは腫瘍抑制遺伝子の投与と放射線または化学療法との組合せといったそれらの組合せが挙げられる。好ましい薬剤としては、野生型p53分子、RBまたはRB94分子、アポプチン分子、またはHER−2アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードするDNA分子が挙げられる。
一実施形態では、治療薬は遺伝子療法を含み、ウイルスベクターを介して、または上記のように、より好ましくは、カチオンリポソーム−リガンド複合体の一部として投与する。このような複合体は、出典明示によりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許出願出願番号09/601,444;09/914,046および10/113,927に詳しく記載されている。これらの複合体は目的部位、典型的にはトランスフェリン受容体を発現する癌細胞などの癌細胞に標的化される。標的化薬剤は、標的細胞上の目的の受容体と結合する、トランスフェリンまたは葉酸などのリガンド、または抗体もしくは抗体フラグメントである。好ましい抗体フラグメントは単鎖Fvフラグメント(scFv)である。このようなフラグメントは、完全な抗体によって認識される目的のエピトープに対する完全な抗体結合部位を含み、それぞれ重鎖および軽鎖に由来する成分VHとVL可変ドメインとを、一方の可変領域のC末端と他方のN末端を架橋する好適に設計されたリンカーペプチドで、VH−リンカー−VLかVL−リンカー−VHのいずれかの順序で連結することにより形成される。これらの治療組成物は腫瘍内、腹腔内、筋肉内、経口、または全身投与することができ、静脈投与が好ましい。
今般、wtp53、RB94またはアンチセンスHER−2などのある種の治療薬の外因的発現とin vivoにおける脈管形成因子およびアポトーシス因子における変化との間には関係があることが見出された。この腫瘍の応答は治療薬の投与と相関し、これらの変化は、これらの因子が癌を処置する上での治療の有効性の有用な分子マーカーとして働き得ることを示している。腫瘍および組織サンプルが得られる場合、アポトーシスの程度は、ウエスタンブロットアッセイ、TUNNELアッセイまたはアネキシンV染色(TREVIGEN TAC(登録商標))アポトーシス検出キットといった種々の既知の分析法を用いて測定することができる。17kDaの切断カスパーゼ3サブユニットの存在は、組織および血液サンプルにおけるウエスタン分析によって評価することができる。腫瘍における、外因的wtp53発現などの治療薬の存在に伴う変化と腫瘍応答との相関は、カスパーゼ3サブユニットの、腫瘍応答マーカーとしての使用を支持するものである。
特定の好ましい治療薬処置において、治療組成物はp53、RBもしくはRB94、またはアンチセンス(AS)HER−2オリゴヌクレオチドのいずれかをコードする核酸を含む。アポトーシス経路はp53RBまたはRB94によって誘導されることが知られており、また、今般、これはAS HER−2処置によっても誘導されることが分かった。そのP13K/Akt経路との相互作用を通じ、HER−2はアポトーシスに作用することができ、かつ、アンチセンスHER−2オリゴの投与後のHER−2の抑制的調節は、カスパーゼ3の切断を誘導することが示された。リガンド−リポソーム−アンチセンスHER−2複合体の一例としてTfRscFv−lipA−ASHER−2複合体があり、ここで、TfRscFvは、トランスフェリン受容体と結合するモノクローナル抗体の単鎖Fvフラグメントを表し、LipAは、1:1比のジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェート(DOTAP)とジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含むカチオンリポソームを表す。この複合体および類似の複合体が、出典明示により本明細書の一部とする米国特許出願出願番号09/914,046に詳しく記載されている。リガンド−カチオンリポソーム−p53複合体の例は、出典明示により本明細書の一部とする米国特許出願出願番号09/601,444に詳しく記載されており、DOTAP:DOPE、DOTAP:コレステロール、DOTAP:DOPE:コレステロール、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB):DOPE、DDAB:コレステロールまたはDDAB:DOPE:コレステロールが挙げられる。以下の実施例で示すように、wtp53、RB94またはASHER−2による処置とアポトーシスマーカーとしての17kDaサブユニットの存在との間には明らかな相関がある。
カスパーゼ3の17kDaサブユニットのレベルは、選択された治療組成物での処置の前と後双方の腫瘍または患者の血液のサンプルを得ることにより測定することができる。このサブユニットは非処置担癌患者もしくは担癌患者の正常細胞からの血液細胞ペレット、または腫瘍細胞では検出できないが、アポトーシスを誘導する治療薬で処置した後では、血液および腫瘍細胞の双方で検出できることが分かっている。上記で述べたように、17kDaサブユニットの測定値がバックグラウンド量の少なくとも約1.5〜2倍であるというのが、投与した治療薬の作用によるアポトーシスの指標となる。
カスパーゼ3の17kDaサブユニットの発現は、Cell Signaling Technology, Beverly, MAからのものなど、その断片に対する市販の抗体を用い、ウエスタン分析によって判定することができる。
17kDa断片のレベルを測定することで、目的の治療の有効性を評価および確認することができる。例えば、以下の実施例に詳しく記載するように、アンチセンスHER−2またはスクランブルHER−2オリゴヌクレオチドのいずれかを有する抗体フラグメント−リポソーム複合体の多回静脈処置とジェムザール登録商標)の多回処置を施した、ヒト膵臓癌異種移植片腫瘍担持マウスにおける17kDa断片の誘導に及ぼす、TfRscFv−リポソーム−AS HER−2と化学療法薬ジェムザール(登録商標)(ゲムシタビン)の組合せによる処置の作用を判定した。対照としては、ジェムザール(登録商標)単独か抗体フラグメント−リポソーム−アンチセンスHER−2オリゴヌクレオチド複合体単独のいずれかを施した動物を用いた。血清サンプルのウエスタン分析は、アンチセンス含有リポソーム複合体とジェムザール(登録商標)で処置した動物では、いずれかの療法単独で処置した場合に比べ、17kDaサブユニットが相乗作用的に誘導されたことを明らかに示した。この強力な誘導はスクランブルオリゴ含有リポソーム複合体とジェムザール(登録商標)を施したマウスでは明らかでなかった。この試験および実施例で詳しく記載する他の試験は、17kDaサブユニットが治療効力の非侵襲的薬力学的マーカーとして使用できることを示している。
実施例1
細胞培養物およびからタンパク質を単離する方法
A.細胞培養物において17kDa活性型カスパーゼ3断片の存在を検出するため、次の実施例で下記の手順を用いて、生細胞および浮遊している死細胞の双方から全タンパク質を単離した。細胞培養容器からの培地を除去し、保存した。
手順:
冷PBS 10mlの入った容器(例えば、75cmフラスコ)で細胞を洗浄する。このPBSと保存していた培地を合わせる。各フラスコにPBS 5mlを加え、ラバーポリスマンで細胞を掻き取る。この細胞を培地/PBS溶液に加える。各フラスコにPBS5mlを加え、洗浄する。顕微鏡下で確認して、残存している細胞の量を調べる。必要に応じて、再びPBS 5mlを加え、掻き取る。前記の溶液に加える。
4℃で7分間、200〜300xgで遠心分離を行う。
細胞ペレットをそのまま残して遠沈管から上清を除去する。
この細胞ペレットを1mlのPBSに再懸濁させ、1.5ml容のマイクロ遠沈管へ移す。
再び上記と同様に遠心分離を行う。
細胞ペレットをそのまま残してPBSを除去する。
細胞を溶解させるため、細胞ペレットを3×10細胞当たり150μl〜200μlのRIPAバッファー(新しく調製した阻害剤を含む)に再懸濁させる。RIPAバッファーは1×PBS、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS(これは大容量で作製してもよい)である。使用時に以下の保存溶液から阻害剤を加える。
a)イソプロパノール中10mg/mlのPMSF(10μl/mlで使用)
b)アプロチニン(Sigmaカタログ番号A6279、30μl/mlで使用)
c)冷凍アリコートとして100mMのオルトバナジウム酸ナトリウム(10μl/mlで使用)
氷上で20分間細胞懸濁液をインキュベートし、5〜7分おきにボルテックスにかける(溶液に気泡が生じないようにする)。
211/2ゲージのニードルに5〜10回通す。新しく調製したPMSFを加え、氷上でさらに20分間インキュベートする。
4℃で10分間、13,000xgで遠心分離を行う。
上清(細胞溶解物)を1.5ml容のマイクロ遠沈管に移した後、ペレットをほぐす。
1遠沈管当たり細胞溶解物30〜50μlずつ小分けし、−70℃〜−80℃で冷凍する。製造業者のプロトコールに従い、標品としてのBSAとともにPierce Micro BCAタンパク質アッセイキットを用いてタンパク質濃度を測定するのに用いるには、1つを5〜10μlとする。
B.次の実施例の実験では、腫瘍または他のいずれかの動物器官/組織から全タンパク質を単離するために以下の手順を用いた。安楽死の後、組織を速やかに動物から切り出し、過剰量PBSで1〜3回すすぎ、清潔な無菌器具を用いて氷上に維持しながら、組織を刻んだ。刻んだ組織を1以上の、予め秤量した無菌のポリプロピレンチューブに入れ、すぐに液体窒素中に浸漬することで急速凍結させた。凍結組織は、タンパク質を単離するまで、−70℃〜−80℃に維持した。
手順:
ドライアイス上に組織を置き、使用前、数分間、無菌Bessman組織粉砕器を液体窒素中に入れる。
冷却した粉砕器に組織を入れ、微粉末となるまでハンマーにより砕く。
粉砕した組織(粉末)を乾燥および冷却した清潔なスパチュラを用いて手早く回収し、ドライアイス上のマイクロ遠沈管に入れる。すぐに遠沈管および組織を秤量し、およその組織重を求める。
組織を溶解させるため、100μgの腫瘍組織当たり600μlのRIPAバッファー(新しく調製した阻害剤を含む)、または100μgの正常組織当たり1mlのRIPAバッファーを加える。ボルテックスにかけて混合し、上記の細胞培養手順に従う。
実施例2
血中のカスパーゼ3 17kDa断片の分析のための血漿の調製
以下の実施例で示される手順では、2つの方法のいずれかを用いてカスパーゼ3 17kDa断片の評価のために用いる血漿の調製のための血液を採取した。
1つの好ましい実施形態では、動物またはヒトから全血を、45USPユニットのヘパリンナトリウムの入った標準的なヘパリン処理3ml容試験管(Vacutainer(登録商標)、カタログ番号366387、Becton Dickson VACUTAINER(登録商標)Systems, Franklin Lakes, NJ)中に採取し、よく混合し、氷上に置いた。血液量が少ない場合には、3ml容のVACUTAINER(登録商標)チューブに30μlの1×PBSを加えてヘパリンを溶解させ、1/25〜1/50の望ましい比率のヘパリン/血液量を無菌マイクロ遠沈管に入れた。この遠沈管に50〜100μlの新鮮な血液を加え、よく混合し、氷上に置いた。この血液/ヘパリン混合物を4℃で10分間、1000×gで遠心分離を行った(大容量の場合は、遠心分離の前にVACUTAINER(登録商標)チューブから無菌遠沈管に移した)。遠心分離後、血漿を取り出し、別の無菌遠沈管に入れた。この血漿は小分けして−70℃〜−80℃で冷凍することができた。
もう1つの好ましい実施形態では、全血をヘパリン処理試験管に採取し、上記のように血漿を得た。17kDa画分の検出を妨害する可能性のある他の血液成分を除去するためには、市販の“Micro Bio−Spin”(登録商標)クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad Laboratories, Hercules CA)を用いて血漿を精製すればよかった。P6カラム(Tris)またはP30カラム(Tris)のいずれかを使用できた。しかしながら、好ましい実施形態では、P6(Tris)を使用した。血漿は、ある実施形態でステップ2(残留している充填バッファーを除去するためにカラムを遠心分離する)の前にカラムを、アジ化ナトリウムを含まない1ml〜10mMのTris−HClバッファーpH=7.4〜8.0で一度、重力による洗浄をしたこと以外は製造業者のプロトコールに従って精製した。17kDaタンパク質は透過物中にあった。図1は、17kDa切断カスパーゼ3断片がこの方法でP30およびP6カラムから精製されたことを示す。陽性対照は、アポトーシスを誘導するゲムシタビンでin vitro処置したPANC−1細胞由来のタンパク質溶解物を添加した非精製マウス血漿であった。陰性対照は、遠心分離ではなく重力流を用いてP30カラムから得られた空隙容量タンパク質、主としてアルブミンであった。
血漿の代わりに血清を血液から単離することもできた。この場合にはヘパリンは用いなかった。その代わりに、室温で30分〜1時間、全血を非ヘパリン処理試験管内で凝固させた後、そのサンプルを0.1×gで10分間遠心分離し、血清を取り出した。血清もまた−70℃〜−80℃で保存し、上記のようにP6またはP30 Microspinカラムにより精製することができる。
実施例3
カスパーゼ3 17kDaの発現に関するタンパク質のウエスタン分析
血液または組織からのタンパク質のウエスタン分析は次のように行った。
電気泳動
全タンパク質細胞溶解物(全タンパク質20〜60μg)を4℃の同量のRIPAバッファーで希釈する。よく混合する。
この溶解物溶液と1/6容量の6×電気泳動サンプルバッファー[6×電気泳動サンプルバッファー(不連続系の場合):7mlの4×Tris−HCl、pH6.8、3.0mlグリセロール、1g SDS、0.93g DTT、1.2mgブロモフェノールブルーとを混合し、HOを加えて10mlとする(必要に応じて)。0.5mlに小分けしたものを−70℃で保存する。
5分間煮沸した後、室温で5秒間、13,000×gでパルスをかける。
すぐにBio-Rad Laboratories (Hercules, CA)製のクリテリオン・プレキャスト4〜20%ゲル、または13%ポリアクリルアミドゲル、4〜20%ポリアクリルアミド/SDSゲルなどのいずれかの適当なゲルに載せる。100Vで、ただし、30MAより高くならないように、ゲルの底部に色素の前線が来るまでゲルの泳動を行う。
あるいは、Mini Bio−Spin P−30またはP−6カラムでのカラムクロマトグラフィーの後、10μlまでのヒト血清を、4〜12%または10〜20%プレキャストゲルおよびMES SDS泳動バッファー(Invitrogen, Life Technologies, Carlsbad, CA)を製造業者のプロトコールに従って用い、NuPAGE(登録商標)Bis−Tris電気泳動システムにて分離する。
サンプルの調製:
10μlのヒト血清(P−30またはP−6精製後のもの)を4×サンプルバッファー(Invitrogen)および同溶液で1×サンプルバッファーとなるように希釈し、このカラム後サンプルを全量24μl(1mmコームの場合)および36μl(1.5mmコームの場合)とする。NuPAGE(登録商標)還元剤(安定化した液体形態中で0.5M DTT)を加えて最終サンプル量の10%ととした後すぐにこの溶液を65〜75℃(好ましくは、70℃)で加熱し、このサンプルをNuPAGE(登録商標)ゲル上に載せる。MES SDS泳動バッファーを用い、ゲル当たり100〜200の一定のボルト数および70〜125mAでゲルの泳動を行う。
転写、免疫ブロット法および検出は上記のように行う。
サンプルバッファー
NuPAGE(登録商標)LDSサンプルバッファー
(4×)10ml
グリセロール 4.00g
Tris塩基 0.682g
TrisHCl 0.666g
LDS 0.800g
EDTA 0.006g
Serva Blue G250 0.75ml(1%溶液)
フェノールレッド 0.25ml(1%溶液)
超純水 10mlまで
1×バッファーはpH8.5としなければならない。
pH調整には酸も塩基も用いてはならない。
LDS=ドデシル硫酸リチウム
還元条件:
以下のように、20×NuPAGE(登録商標)SDS泳動バッファー(MES)を希釈し、1×NuPAGE(登録商標)SDS泳動バッファーを調製する。
十分混合する。
NuPAGE(登録商標)SDS泳動バッファー(MES)(20×) 50ml
超純水 950ml
下層(外部)バッファーチャンバーで用いるための1×NuPAGE(登録商標)SDS泳動バッファー800mlをとっておく。約600mlの1×泳動バッファー下層に満たす。泳動直前に、200mlの1×NuPAGE(登録商標)SDS泳動バッファー当たり500μlのNuPAGE(登録商標)酸化防止剤を加えることで、上層(内部)バッファーチャンバー用の残りの200mlを調製する。十分混合する。
MES SDS泳動バッファー:
(20×)500ml
MES 97.6g(1.00M)
2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸Tris塩基 60.6g(1.00M)
SDS 10.0g(69.3mM)
EDTA 3.0g(20.5mM)
超純水 500mlまで
1×バッファーはpH7.3でなければならない。pH調整には酸も塩基も用いてはならない。
実施例4
血液または組織からのカスパーゼ3 17kDaタンパク質の検出のための免疫ブロット法
免疫ブロット法
膜をBlotto A[Blotto A(一般用):5%(w/v)粉乳、TBS、0.05%Tween−20]中に1時間浸漬することにより、非特異的タンパク質結合を遮断する。全ウエスタンが1日で完了できない場合には、膜を4℃にてTBS(Tween−20を含まない)で覆い、一晩浸漬しなければならない。
この膜を一次抗体中でインキュベートする。使用する一次抗体はCell Signaling Technology (Beverly, MA)(カタログ番号966115)製の切断カスパーゼ3(Asp175)に対するウサギポリクローナル抗体を、好ましくは4℃で一晩、穏やかに揺動させた5〜50ml溶液/50cm膜、好ましくは10〜30ml/50cm量のTBST中5%(w/v)の粉乳にて1:500〜1:2000、好ましくは1:1000希釈したものである。あるいは、同じ希釈率のこの一次抗体を穏やかに揺動させながら室温(27℃)で2〜3時間インキュベートしてもよい。
膜を、各洗浄とも穏やかに揺動させながら10分間3回、TBSTで洗浄する。
穏やかに揺動させながら30分間、Blotto Aで1:1000〜1:10,000、好ましくは1:2000希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギ、抗マウス、または抗ラットIgG(二次抗体)とともにインキュベートする。
各洗浄とも穏やかに揺動させながら15分間3回、TBSTで洗浄した後、15分間TBS中で洗浄する。
検出はAmersham ECL試薬を製造業者の仕様に従って用いて行う。
実施例5
膵臓腫瘍および肝臓における切断カスパーゼ3 17kDaタンパク質の検出
1つの治療薬として、出典明示により本明細書の一部とする米国特許出願出願番号09/914,046に詳細に記載されているTfRscFv−LipA−p53複合体を用いた。ヒト膵臓癌(PANC−1)皮下異種移植片腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスにTfRscFv−LipA−p53を24時間で3回静注した。各注射で複合体は全量800μl/マウス注に40μgのp53プラスミドDNAを含んだ。最後の注射から6時間後、動物を安楽死させ、腫瘍および肝臓を摘出し、実施例1、3および4と同様にウエスタン分析用にタンパク質を単離した。非処置動物の腫瘍および肝臓からのタンパク質も対照として含めた。次に、この膜を負荷量が等しいかどうかを調べるため、アクチンに特異的な市販の抗体でプローブした。
図2はTfRscFv−LipA−p53複合体を静注したマウスのPANC−1腫瘍に主要な外因性wtp53の発現を示す。また、同じウエスタンブロットを、17kDa断片の存在に関してプローブする目的でも用いた。図3の一番下のレーンに示されているように、腫瘍ではこの17kDaマーカータンパク質の存在下で実質的増強が見られるが、TfRscFv−LipA−p53複合体で処置した後の肝臓では低レベルの痕跡しか見られず、このことはwtp53機能の回復が特に腫瘍においてアポトーシスの誘導をもたらすことを示している。外因性の野生型(wt)p53の発現と17kDa切断カスパーゼ3断片の発現との間には明らかな相関があった。このパネルのこのパネルの上のバンドは17kDaサブユニットの19kDa前駆体を示している。
他の標的化部分によって指向されるwtp3を有するリガンド−リポソームも同じ作用を示した。PANC−1腫瘍においてリポソーム−p53複合体の標的化リガンドとして葉酸を用いて別の研究を行った。ヒトPANC−1皮下異種移植片腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスに、葉酸リガンドによって標的化されるLipA−p53を24時間で3回静注した。各注射とも、複合体にはwtp53DNAを有するか、またはエンプティーベクターとしての20μgのプラスミドDNA/マウスを含んだ(全量300μg/マウス/注射)。42時間および66時間後に動物を安楽死させ、腫瘍を摘出し、実施例1、3および4と同様にウエスタン分析用にタンパク質を単離した。非処置動物の腫瘍からのタンパク質も対照として含めた。次に、この膜をカスパーゼ3の17kDaサブユニットに特異的な市販の抗体で、また負荷量が等しいかどうかを調べるためにアクチンでプローブした。p53の代わりにエンプティーベクターを有する複合体を注射した動物の腫瘍では、17kDa断片の発現は明らかではなく、このことはこれがp53に向けられた現象であることを示している(図3)。
実施例6
血液細胞における切断カスパーゼ3の17kDa断片の検出
血中で17kDa断片が検出できれば、wtp53遺伝子療法の有効性を確認する非侵襲的手段として使用できるものと考えられる。このことを評価するため、標的化リガンドとしてTfを有するTf−LipA−p53を全身処置したマウスから血液を採取した。100mmを超えるDul45異種移植片腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスにTf−LipA−p53(100μg p53)を1回静脈投与した。また、このマウスには化学療法薬シスプラチン(CDDP)5mg/kgの1回注射(腹腔内)も施した。60時間後、マウスを安楽死させ、約1mlの血液をヘパリン処理試験管に採取した。遠心分離により細胞を分離し、実施例1のように細胞ペレットからタンパク質を単離し、実施例3のように13%ポリアクリルアミドゲル上で泳動させた。カスパーゼ3の17kDaの切断型活性サブユニットを、実施例4に記載したように抗17kDa特異的抗体(Cell Signaling)を用いてウエスタン分析により同定した。
図4の結果は、Tf−LipA−p53の全身処置から60時間後のDU145腫瘍担持マウスから抽出した血液細胞ペレットにおける17kDaタンパク質の存在を示している。しかしながら、このサブユニットは処置しなかった腫瘍担持動物からの血液細胞ペレットでは検出できなかった。従って、このことは、外因性wtp53の存在と比較的非侵襲的な手段によって血中で検出可能なこのアポトーシスマーカーの存在との間に明らかな相関があることを示している。
実施例7
切断カスパーゼ3の7kDa断片の発現が治療に対する腫瘍応答に関連していることの証明
実施例6の結果は、Tf−LipA−p53およびCDDPでの全身処置から60時間後のDU145腫瘍担持マウスから抽出した血液細胞ペレットにおける17kDaタンパク質の存在を示す。正常なリンパ球はp53により誘導されるアポトーシスに感受性がある。従って、血中における17kDa断片の出現が本当に腫瘍と関連しているかどうかを調べるために評価を行った。実施例6で記載したDU145腫瘍担持マウスに施したものと同じ処置を、PANC−1皮下異種移植片腫瘍存在を有する、または有さないマウスに繰り返した。さらに、この試験では、血液細胞の存在による複雑化を避けるために血清の使用を試してみた。血清を用いるので、負荷量が等しいかどうかを評価するためにハウスキーピング遺伝子を用いることはできないが、各レーンに等量を負荷した。実施例2に記載したようにヘパリンを用いずに全血1mlから血清を単離し、実施例3および4に記載したようにウエスタン分析を行った。図5に示すように、17kDa断片は担癌動物で、さらには担癌動物のみに強く発現した。よって、このバンドの存在はwtp53/CDDP治療に対する腫瘍応答と明らかに関連している。
実施例8
アポトーシス指標としてのカスパーゼ3の17kDa断片の検出:in vitroでのAS−HER−2 ODN処置後
本発明のさらなる特定の実施形態では、切断17kDaサブユニットがアンチセンス(AS)HER−2による治療の有効性を証明する手段として腫瘍および/または血液で検出できること、すなわち、アポトーシス経路がASHER−2処置によって誘導されることが証明された。(用いたアンチセンスHER−2オリゴヌクレオチドは、出典明示によりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第6,027,89号および米国出願出願番号09,716,320に記載されているものである)。そのP13K/Akt経路HER−2との相互作用によりアポトーシスに影響を及ぼし得ることが示されている。従って、TfRscFv−LipA−ASHER−2複合体を介したHER−2の抑制的調節はカスパーゼ3の切断を誘導するものと思われた。17kDa断片に対する市販(Cell Signaling Technology)の抗体を用い、実施例3および4のようにウエスタン分析によりその発現を検出した。タンパク質溶解物は実施例で記載した手順を用いて得た。トランスフェクション24時間後、ASHER−2またはスクランブル(SC)HER−2 ODNのいずれかを有するTfRscFv−lipA複合体で処置した細胞からのタンパク質は実施例1で記載したように単離した。スクランブルHER−2 ODNは、順序は無作為であるが、アンチセンス分子と同様のヌクレオチド組成を有する。ある実施形態では、AS−HER−2 ODNは、ヒトHER−2遺伝子をコードする遺伝子センス鎖と開始コドンが相同な、ヌクレオチド15個のDNA片である。T75フラスコに1.2×10のPANC−1細胞を播種し、24時間後、0.5μMのAS HER−2またはスクランブル(SC)ODNを含有するTfRscFv−LipA複合体でトランスフェクトした。実施例1で記載したようにウエスタン分析用にタンパク質を単離した。4〜20%勾配ポリアクリルアミド/SDSゲルの各レーン当たりの負荷量は40μgであった。ニトロセルロース膜に転写した後、ブロットを、実施例3および4のように、カスパーゼ3の17kDa断片に特異的な市販のAbおよび負荷量が等しいかどうかを調べるためのアクチンでプローブした。17kDaより上のバンドは17kDaサブユニットの19kDa前駆体を示す。図6に示すように、カスパーゼ3 17kDa断片の誘導は明白であり、TfRscFv−LipA−AS HER−2処置後にアポトーシス経路が刺激されることを示している。非処置またはSC HER−2 ODN処置細胞ではいずれもこのバンドは明でなく、このことは明らかなAS HER−2特異的作用であることを示している。
また、TfRscFv−LipA−ASHER−2と化学療法薬ジェムザール(登録商標)(ゲムシタビン)の組合せによる17kDa断片の誘導もin vitroで評価した。図7で示すように、0.8μMジェムザール(登録商標)での9時間のPANC−1細胞の処置(上記の通り)はこの断片のバックグラウンドレベルを超える発現をもたらさなかった。これに対し、TfRscFv−LipA−AS HER−2(1μM ODN)およびジェムザール(登録商標)(0.8μM)での処置は強い17kDaバンドを誘導したが、このバンドは、同量のジェムザール(登録商標)と組み合わせた同量のSC ODNを有する複合体で処置した細胞には存在しなかった。このことは、これが非特異的なODNまたはジェムザール(登録商標)の作用ではなかったことを示している。アクチンレベルは各レーンとも等量のタンパク質が負荷されていることを示した。
実施例9
AS HER−2で処置した後のin vivoにおける切断カスパーゼ3の17kDa断片の検出:in vivo薬力学マーカー
この17kDaタンパク質はまた、AS HER−2治療の有効性を確認するための非侵襲的in vivo薬力学マーカーとしても使用できる。AS HER−2またはSC ODN(9mg/kg)のいずれかを有するTfRscFv−LipAの多回静脈処置(全部で19回)および11回のジェムザール(登録商標)(60mg/kg)の腹腔内注射を施したPANC−1異種移植片腫瘍担持マウスにおける17kDa断片の誘導に対する組合せ処置(TfRscFv−LipA−AS HER−2およびジェムザール(登録商標))の作用を調べた。ジェムザール(登録商標)またはTfRscFv−LipA AS HER−2複合体いずれか単独を施す動物を対照として用いた。
実施例2で上記したように、各動物の血液1mlから血漿を単離した。各血漿サンプル30μlを4〜20%勾配ポリアクリルアミド/SDSゲル上泳動させた。カスパーゼ3の17kDa切断型活性サブユニットは、実施例3および4で記載したようにウエスタン分析により同定した。血漿サンプルのウエスタン分析は、TfRscFv−LipA AS HER−2およびジェムザール(登録商標)で処置した動物では、いずれかの治療それ自体で処置した場合に比べ、17kDa断片の相乗的誘導を明らかに示した(図8)。この強い誘導はSC ODN(TfRscFv−LipA−SC ODN)およびジェムザール(登録商標)を施したマウスでは明らかでなかった。従って、wtp53またはAS HER−2いずれかの処置および作用とこのアポトーシスマーカーの存在との間には明らかな相関がある。これらの研究は、このタンパク質が治療効力の非侵襲的薬力学マーカーとして使用できることを示している。
実施例10
シグナル変換経路のin vitro抑制的調節におけるAS HER−2に関する切断カスパーゼ3の17kDa断片の発現
腫瘍を標的とするTfRscFv−LipA−AS HER−2複合体での膵臓癌(PanCa)の処置はHER−2の発現(過剰発現でない場合でも)をダウンレギュレーションすることができ、従って、細胞の増殖/生存に負の作用をし、腫瘍細胞の死滅の増強に導くアポトーシス経路を積極的に促進する。TfRscFv−リポソーム複合体を介したHER−2のダウンレギュレーションが下流のシグナル伝達経路に影響を及ぼし得ることを証明するため、PanCa細胞系統PANC−1およびCOLO357においてこの複合体の、PI3K/AKT経路およびアポトーシスの成分に作用する能力をウエスタン分析により評価した。これら2つの細胞系統はHER−2発現のレベルが異なり、COLO357はPANC−1より有意に高いHER−2レベルを発現することから選択した。開始コドン領域(5’−TCC ATG GTG CTC ACT−3’)に相補的なホスホロチオエート配列特異的AS HER−2と、対照としての非配列特異的SC(5’−CTA GCC ATG CTT GTC−3’)ODNを合成し、Ransom Hill Biosciences (Ramona, CA)による逆相HPLCにより精製した。GenBankデータベースに対してASおよびSC配列をスクリーニングしたところ、AS ODNはHER−2に対してのみ相同性を有していたが、SC ODNとデータベース中の配列には相同性はなかったことが示された。PANC−1またはCOLO 357細胞を6穴プレートに播種し、24時間後に、1μM(PANC−1の場合)または0.5μM(COLO 357の場合)のAS HER−2またはSCHER−2ODN(陰性対照)を有するTfRscFv−LipA複合体でトランスフェクトした。オリゴ単独、または相乗作用を見出すためにはするゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))との組合せで細胞をトランスフェクトした。示された時間に細胞を回収し、RIPAバッファー中で溶解させ、タンパク質を測定し、4〜20%勾配ポリアクリルアミド/SDSゲル上で泳動させ(全タンパク質60μg/レーン)、実施例1、3および4で記載したようにウエスタン分析のためにするニトロセルロースに転写した。HER−タンパク質の発現を検出するため、膜を抗ヒトHER−2/Neu(C−18)ウサギポリクローナルAb(Santa Cruz Biotechnolog)でプローブし、ECL(Amersham)によりシグナルを検出した。非処置細胞に比べた場合のタンパク質発現の変化を、全および/またはリン酸化Akt(Ser 473)、PI3K経路における中枢的成分(抗ヒトポリクローナルAb, Cell Signaling Technologyを使用)、リン酸化BAD(Ser 136)、アポトーシスの調節に重要な因子(抗ヒトウサギポリクローナル抗体,Cell Signaling Technologyを使用)、ならびに切断カスパーゼ3(Asp 175)(17kDaサブユニットに特異的なウサギポリクローナル抗体,Cell Signaling Technologyを使用)およびPARP/切断PARP(ポリADPリボポリメラーゼ、アポトーシスのもう1つのマーカー)(抗ヒトウサギポリクローナル抗体,Cell Signaling Technology使用)(両者ともアポトーシスの下流指標)に関しても確認した。
図9Aおよび9BはTfRscFv−LipA−AS HER−2単独またはジェムザール(登録商標)との組合せのトランスフェクションの、トランスフェクション8時間後の作用を示す。HER−2タンパク質の半減時間が10〜25時間の間で報告されている(Bae et.al Experimental and Molwcular Medicine 33:15-19 (2001))。よって、予測されたように、この初期時間では.ウエスタン分析でHER−2タンパク質レベルの変化は検出されなかった。しかしながら、この時点を、初期のアンチセンス特異的作用またはAS HER−2とジェムザール(登録商標)の組合せの何らかの相乗作用を検出する努力目標として選んだ。PANC−1細胞では(図10A)、AS HER−2とジェムザール(登録商標)の組合せによるリン酸化された活性型のAKTに対していくらかの作用が見られた。しかしながら、この初期時間であってもpBAの発現に対してAS HER−2およびジェムザール(登録商標)による明らかな相乗作用的抑制的調節が明瞭であった。より重要なことでは、カスパーゼ3の切断型(17kDaタンパク質の出現)およびPARPはともにアポトーシス誘導の指標であるが、基本的に併用療法において(しかし、わずかながら単独療法でも同様に)AS HER−2 ODNで処置した細胞においてのみ現れ、ジェムザール(登録商標)単独またはSC ODNおよびジェムザール(登録商標)で処置した細胞では現れなかったが、このことはこれらの作用がAS HER−2特異的なものであることを示している。また、COLO357細胞をトランスフェクション8時間後のタンパク質発現の変化に関して調べた。PANC−1の場合に見られたように、この時点はちょうどHER−2発現の変化も事実上なく、pAKTの抑制的調節も最小でしかなかった。しかしながら、ここでもまた、AS HER−2単独、およびジェムザール(登録商標)との組合せで処置した細胞は双方とも切断カスパーゼ3(17kDaサブユニット)と切断PARPが明らかに明瞭であった。このことは、ジェムザール(登録商標)単独またはSC ODNとジェムザール(登録商標)の組合せで処置した細胞においてこれらのバンドの痕跡がほとんど、または全くない事実と考え合わせると、やはり、これがAS特異的な作用であることを示す。
8時間の時点で、AKTのリン酸化活性型(pAKT)はTfRscFv−LipA−AS HER−2処置の最小の作用しか示さないので、トランスフェクション16時間後についてもPANC−1細胞を調べた(図10)。この時点は報告されているHER−2タンパク質の半減期よりもまだ短かったので、予測されたようにHER−2抑制的調節の証拠はなかった。しかしながら、AS HER−2単独、およびジェムザール(登録商標)との組合せで処置した両細胞とも、pAKTの有意な抑制的調節が見られ、これは対照では明らかでなかった。pBADは8時間目に比べて16時間目でもさらに抑制的調節され、そのタンパク質発現はほとんど完全に消失した。ここでもジェムザール(登録商標)の作用が認められた。カスパーゼ3の切断型(17kDa断片)およびPARPはアンチセンス処置細胞だけでなく、ジェムザール(登録商標)単独またはSC ODNおよび薬物で処置した細胞でも明らかであった。しかしながら、PARPに関しては、AS HER−2 ODNで処置した細胞と対照との間でなお有意差があった。AS HER−2単独および組合せ処置のいずれでも、PARPの全レベル(切断型および非切断型)はジェムザール(登録商標)またはSC ODNおよびジェムザール(登録商標)で見られたものよりも遙かに低かったが、これはおそらく、誘導のより早期であったこととAS HER−2処置の結果としての継続的な分解のためである。AKTおよびBADの双方に関して、これらタンパク質のリン酸化されていない不活性型はAS HER−2処置によって影響を受けなかったことも述べなければならないが、これは見られた抑制的調節が経路特異的なものであって、処置の全般的な非特異的細胞傷害性の結果ではないという考えを支持するものである。
実施例11
AS HER−2によるPanCa腫瘍の全身処置後のin vivoにおける切断カスパーゼ3の17kDa断片の腫瘍特異的局在の検出
そのPI3K/Akt経路との相互作用により、HER−2がアポトーシスを阻害し得ることが示された。従って、TfRscFv−LipA−AS HER−2複合体を介したHER−2の抑制的調節はカスパーゼ3の切断を誘導するはずである。
PANC−1腫瘍は、4〜6週齢の雌ヌードマウスに一連の継代培養を経たPANC−1異種移植片腫瘍に由来する1mm未満の腫瘍片を移植することにより誘導した。腫瘍が100〜200mmに達した時、尾の静脈に6日間毎日、TfRscFv−LipA−AS HER−2複合体を静注した。マウス一個体当たりに投与するODN(ASまたはSC)の用量は10mg/kg/注射とした。標準的な治療と比較するため、別の動物に化学療法薬ジェムザール(登録商標)(腹腔内)単独(60mg/kg/注射)を一日おきに全部で3回施した。さらに、あるマウスには、上記の用量および投与計画でTfRscFv−LipA−AS HER−2とジェムザール(登録商標)の組合せを施し、また、対照として、あるものには上記の用量および投与計画でSC ODNとジェムザール(登録商標)を有する複合体の組合せを施した。最後の注射から24時間後に全てのマウスを殺し、実施例1のように腫瘍、肝臓および肺を取った。このモデルにおける腫瘍特異的標的化を評価するため、組織におけるHER−2および17kDa切断カスパーゼ3断片の発現を実施例3および4のようにウエスタンブロット分析により調べた。HER−2レベルに関してもスクリーニングした腫瘍および組織サンプルにおける17kDa断片の誘導に及ぼすTfRscFv−LipA−AS HER−2の作用を調べた。実施例3および4で記載したようなウエスタン分析では、TfRscFv−LipA AS HER−2単独またはジェムザール(登録商標)との組合せで処置した動物からの腫瘍において17kDa断片の誘導が示される(図11)。この強い誘導はSC ODN(TfRscFv−LipA−SC ODN)およびジェムザール(登録商標)またはジェムザール(登録商標)単独を施したマウスでは明らかでなかった。より重要なこととしては、この17kDa切断カスパーゼ3のバンドは肝臓または肺のサンプルのいずれにおいても明らかではなかった。これらの研究は、静脈投与後、この複合体はAS HER−2 ODNを優先的に腫瘍に標的化し、送達することができたことを示している。さらに、17kDaの発現は治療分子が発現された場合にのみ明らかであった。
実施例12
TfRscFv−LipA−AS−HER−2によるPanCa異種移植片腫瘍のin vivo化学増感
上記のin vitro研究では、PanCa細胞のTfRscFv−LipA−AS HER−2複合体での処置はそれらのジェムザール(登録商標)応答を高めることが示されている。この遺伝子療法送達系がヒト癌、例えばPanCaにとって臨床上信頼できるものとなるためには、in vitroで見られた増感の上昇をn vivoモデルへと翻訳しなければならない。in vivoPanCaの処置におけるTfRscFv−LipA−AS HER−2の有効性は、皮下PANC−1異種移植片マウスモデルを用いて評価した。約50mmの皮下異種移植片腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウス(5〜9個体/1個体当たり2つの腫瘍を有する群)を、ODNを含有するTfRscFv−LipA−AS HER−2複合体9mg/kg/注射で1週間に3回処置した。対照としてある動物群には、ジェムザール(登録商標)単独、TfRscFv−LipA−AS HER−2単独、またはジェムザール(登録商標)と、SC ODNを有する複合体との組合せを施した。ジェムザール(登録商標)は、60mg/kgを1週間に2回腹腔内投与した。動物には全部で、複合体の静注18回とジェムザール(登録商標)12回を施した。図12に示されるように、ジェムザール(登録商標)単独は腫瘍の増殖に最小の作用だけを示したが、AS HER−2単独では効果はなかった。ジェムザール(登録商標)単独または対照SC ODNおよびジェムザール(登録商標)を施した群は統計学的に差がなく、このことはTfRscFv−LipA−SC ODNおよびジェムザール(登録商標)による増殖阻害が厳密に薬物の作用であることを示している。しかしながら、TfRscFv−LipA−AS HER−2とジェムザール(登録商標)の組合せを施したマウスにおいて腫瘍増殖は実質的に阻害された。併用療法およびジェムザール(登録商標)単独またはTfRscFv−LipA−AS HER−2単独を施した群の間の差は統計学的に極めて有意である(スチューデントのt検定によりp<0.001)。よって、AS HER−2を有する複合体の、ジェムザール(登録商標)と組み合わせた静脈投与はPanCaに対して有効である。
また、動物の体重も毒性の指標としてモニタリングした。体重の低下は見られず、いずれの処置群の間にも有意差はなかった。よって、TfRscFv−LipA−AS HER−2は著しい非特異的細胞傷害性を持たないことが明らかである。従って、この研究は、全身送達された、腫瘍を標的とするリポソームAS HER−2複合体は、17kDa切断カスパーゼ3断片の発現によって実証されるようなアポトーシスの誘導により、PanCa腫瘍を化学療法薬に対して増感させ得ることを明らかに示す。
実施例13
マウス血漿における腫瘍抑制RB94検出による17kDa切断カスパーゼ3断片の誘導
異なる腫瘍抑制遺伝子RB94でのin vivo処置も、アポトーシスの指標である切断カスパーゼ3の17kDa断片の発現を誘導することが示されている。網膜芽細胞腫遺伝子RBは、928のアミノ酸の核リンタンパク質をコードする腫瘍抑制因子である。この110kDaのタンパク質の通常の機能は、DNAの転写を抑制し、細胞分裂を妨げ、従って、細胞増殖を阻害することである。(Li et.al., Cancer Research 62:4637-44, 2002; Xu et.al., PNAS 91:9837-41, 1994.)
多種のヒト癌において野生型RBを用いた遺伝子置換療法がin vitroおよびin vivoでそれらの腫瘍形成性を抑制または軽減することができた。RB94は末端切断型のRBであり、全長タンパク質のNH末端において112のアミノ酸残基を欠いており、腫瘍増殖の抑制において全長RBよりもいっそう高い効力がある。RB94タンパク質は全長RBよりも長期低リン酸化状態に留まることが分かっている。それは細胞増殖の抑制を担う非リン酸化型または低リン酸化型であることから、これによりPB98の高い効力を見込める可能性がある。また、このN末端切断型RBタンパク質はまた、アポトーシス/生存の細胞制御にも寄与することができることも示唆されている(Tomei, L.D. in Apoptosis: the Molcular Basis of Cell Death, pp 279-316, 1991)。よって、in vivoにおけるRB94の腫瘍細胞への送達および発現の結果、アポトーシスが誘導できる。RB94で処置した担癌マウスの血漿における切断カスパーゼ3の17kDa断片の検出は進行中のアポトーシスの指標となる。
ヒト膀胱癌細胞系統HTB−9の皮下異種移植片腫瘍を担持する雌ヌードマウスに、RB94遺伝子(40μg/マウス/注射)を有する複合体(800μl/注射)を24時間内に3回静注した。また、この複合体は、リポソームD(1:1DOTAP:コレステロール)とリガンドとして、Tf自体またはTfRscFv分子のいずれかからもなった。対照としては、他のマウスに、標的化リガンドを含まない複合体か、またはリガンドとして非腫瘍特異的分子(CD)を含む複合体を静注した。これらの中には、腫瘍に向かったり腫瘍に影響を及ぼしたりすると予測されるものはなかった。最後の注射から16時間後に動物を殺し、採血し、実施例2で記載したように血漿を単離した。切断カスパーゼ3の17kDa断片の発現のウエスタン分析は実施例3および4で記載したように行った。4〜20%ポリアクリルアミド/SDSゲルのレーン当たり40μgのタンパク質を泳動させた。図13に示されるように、17kDa切断カスパーゼ3タンパク質は、腫瘍を標的化でき、腫瘍に作用できるRB94複合体を施したマウスからの血漿においてのみ明らかであった。よって、アポトーシスの指標である17kDa切断カスパーゼ3断片の血漿のおける非侵襲的検出は遺伝子療法の全般的な薬力学マーカーとして役立ち得る。この方法は、p53に関しては簡単ではないが、広く適用できる。
実施例14
治療後のヒト乳癌患者からの血清における17kDa切断カスパーゼ3断片の検出
動物モデルで得られた結果がヒトに適用できること、および17kDa切断カスパーゼ3断片の発現が治療効果を非侵襲的に評価するために使用できることを確認するため、通常の化学療法を用いて乳癌の処置を受けた2名の患者から相当する血清サンプルセットを得た。これらの血清サンプルは処置前と処置後に得た。血清はP(Tris)Micro−Bio−Spin(登録商標)クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて精製した(実施例2)。カラム透過物を血清:RIPAバッファーが0.1:1〜10:1、好ましくは1:1の比率で希釈した。等量(1〜100μl)を、実施例3および4に記載のように、4〜20%ポリアクリルアミド/SDSゲル上で泳動させ、転写し、17kDa切断カスパーゼ3断片の発現に関してプローブした。図14に示されているように、17kDa切断カスパーゼ3断片は対照(非担癌)ヒト被験者または処置前の患者のいずれからの血清においても明らかでない。しかしながら、このバンドは標準的化学療法後では明らかに存在している。よって、動物モデルで示されたように、アポトーシスの指標である17kDa切断カスパーゼ3断片の発現はヒト患者における癌治療(遺伝子、アンチセンス、および化学療法)とも相関がある。従って、放射線療法をはじめ、アポトーシスを誘導するいずれの治療についても、本願に含まれている実施例に記載されているような、17kDa切断カスパーゼ3断片に関する血液(血清または血漿)の分析が、治療の有効性を監視するための比較的非侵襲的な方法となり得る。ヒト癌患者では、血液(1ml〜3ml)をヘパリン処理試験管に採り、4〜27℃で3〜10分間、300〜1000xgで遠心分離を行って血漿を得ればよいと考えられる。この血漿は(実施例3および4で記載したように)そのまま泳動させることもできるし、あるいは、サンプルの一部20〜75μlを、4〜27℃(好ましくは18〜24℃、最も好ましくは20℃)で1〜10分間(好ましくは4分間)、P6またはP30 Micro Bio−Spin(登録商標)クロマトグラフィーカラム(好ましくはP6)により300〜2000xg(好ましくは1000xg)での遠心分離によってさらに精製してもよい。透過物を血漿:RIPAが0.1:1〜10:1、好ましくは1:1の比率で希釈した後、4〜20%ポリアクリルアミド/SDSゲル上で電気泳動を行い、孔径0.1か0.45μm、好ましくは0.22μmのいずれかのナイロンまたはニトロセルロース固相支持体膜、好ましくはProtran(登録商標)(S+S)に転写する。検出は、17kDa断片を、好ましくは17kDa断片のみを検出するポリクローナルまたはモノクローナル抗カスパーゼ3抗体を用い、放射性または非放射性手段、好ましくは非放射性、好ましくは非比色定量的、好ましくは化学発光を介する、好ましくはECLウエスタンブロット検出試薬および分析システム(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)(30秒〜24時間、好ましくは1分〜18時間の範囲の時間、限定されるものではないが、Hyperfilm ECLをはじめとするオートラジオグラフィーフィルムに露光する)で見られるような増強された化学発光によって行う。
もう1つの実施形態では、非ヘパリン処理試験管に採取し、18〜24℃で5〜90分間好ましくは30〜60分間凝固させることにより、1〜3mlの全血から単離した血清を用いて17kDa断片の存在を検出することができる。次に、この血餅状サンプルを0.01〜1000xg、好ましくは、0.05〜0.1xg、最も好ましくは0.1xgで、0.5〜30分間、好ましくは5〜15分間、最も好ましくは10分間遠心分離し、血清を取り出す。この血清は実施例3および4で記載したようにそのまま分析することもできるし、あるいは血漿に関して上記したものと同じかラムで精製し、同じ方法でウエスタンブロット分析により分析することもできる。
P30およびP6カラムで精製したマウス血漿由来の17kDa切断カスパーゼ3サブユニットを示す。 TfRscFv−LipA−p53の静注後のPanc−1異種移植片における外因性wtp53の発現および17kDaカスパーゼ3サブユニットの発現を示す。 Panc−1異種移植片における、葉酸−LipA−p53複合体静注後の経時的な17kDaカスパーゼ3サブユニットの発現を示す。図中、UT=対照として用いた非処置動物;Fpp53=葉酸−リポソームA−p53複合体;およびFpVec=エンプティーベクターを有する葉酸−リポソームA複合体。 トランスフェリン−リポソームA−p53複合体およびシスプラチン(CDDP)で処置した後のDU145担癌マウスから抽出した血液細胞ペレットにおける17kDaタンパク質の存在を示す。 トランスフェリン−リポソームA−p53を含む複合体とシスプラチンの組合せで処置した後の、PANC−1異種移植片腫瘍を持つ、または持たないマウス由来の血清における、カスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を示す。 TfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2の複合体で処置した後のPANC−1細胞におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を、TfRscFv−リポソームA−スクランブルHER−2の複合体で処置した、かかる細胞と比較して示す。 TfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2複合体とジェムザール(Gemzar)(登録商標)の組合せで処置した後の、PANC−1細胞におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を、非処置細胞と、また、ジェムザール(登録商標)単独、TfRscFv−リポソームA−ASHER−2複合体単独、またはTfRscFv−リポソームA−スクランブルHER−2複合体とジェムザール(登録商標)の組合せのいずれかで処置したものと比較して示す。 TfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2の複合体とジェムザール(登録商標)の組合せの静脈投与後のPANC−1異種移植片腫瘍担持マウス由来の血漿におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を、非処置動物と、また、ジェムザール(登録商標)単独、TfRscFv−リポソームA−AS HER−2複合体単独またはTfRscFv−リポソームA−スクランブルHER−2の複合体とジェムザール(登録商標)の組合せのいずれかで処置したものと比較して示す。 各々、PANC−1およびCOLO357細胞のトランスフェクション8時間後の、TfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2単独による、またはジェムザール(登録商標)との組合せによるアポトーシス経路におけるタンパク質発現のin vitro抑制的調節を示す。両細胞種ともカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在の明瞭な結果を示した。これらの結果は、非処置細胞の結果およびジェムザール(登録商標)単独またはジェムザール(登録商標)とTFRsvFv−リポソームA−スクランブルHER−2の組合せで処置した細胞の結果と対照的である。 TfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2単独による、またはPANC−1細胞のジェムザール(登録商標)6時間後トランスフェクションの組合せによるアポトーシス経路におけるタンパク質発現のin vitro抑制的調節を示す。対照は図9Aおよび9Bと同じである。 皮下PANC−1異種移植片腫瘍を担持するヌードマウスへの、TfRscFv−LipA−アンチセンスHER−2複合体単独またはジェムザール(登録商標)と組み合わせた静脈送達後の腫瘍細胞におけるアンチセンスHER−2作用の局在を示す。17kDaサブユニットの存在を示す矢印は、肝細胞または肺細胞サンプルのいずれにも存在しない腫瘍における中央のバンドを指している。 PANC−1異種移植片腫瘍におけるTfRscFv−リポソームA−アンチセンスHER−2とジェムザール(登録商標)の組合せ処置のin vivo作用を、非処置腫瘍、またはジェムザール(登録商標)単独、複合体単独もしくはジェムザール(登録商標)とTfRscFv−リポソーム A−スクランブルHER−2a複合体の組合せで処置した腫瘍と比較して示すグラフである。 RB94腫瘍抑制遺伝子で全身処置した後のマウス血漿におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を示す。 化学療法後のヒト乳癌患者の血清におけるカスパーゼ3の17kDaサブユニットの存在を示す。

Claims (18)

  1. 哺乳類の身体において治療薬の有効性を評価するための方法であって、該薬剤はアポトーシスを刺激する働きをし、
    該治療薬で処置する哺乳類から、腫瘍細胞が存在する身体組織または体液のサンプルを得ること、ここで、該組織または体液はカスパーゼ3の17kDa断片を含み得、この断片はin vivoにおけるカスパーゼ3の特異的切断によって生じたものである;
    該切断カスパーゼ3の17kDa断片の存在量を測定すべく該サンプルをアッセイすること;
    該治療薬を該哺乳類に投与すること;
    該哺乳類から、該身体組織または該体液の第二のサンプルを得ること;および
    該切断カスパーゼ3の17kDa断片の存在量を測定すべく該第二のサンプルをアッセイすること
    を含み、該第一のサンプルで測定された量に対する、該第二のサンプルで測定された該17kDa断片の量の増加が、アポトーシス刺激および該治療薬の有効性に相関する、方法。
  2. 前記体液が血液または血液成分である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記血液成分が血漿、血清または血液細胞を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記体液が唾液である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記治療薬が化学療法薬、放射性治療薬、腫瘍抑制核酸、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記治療薬が核酸を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記核酸が、野生型p53分子、RB分子、RB94分子、アポプチン分子またはアンチセンスHER−2をコードするDNA分子を含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記治療薬がリガンド−カチオンリポソームとの複合体として投与される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記リガンドがトランスフェリン、葉酸または抗トランスフェリン受容体単鎖抗体フラグメントを含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記リガンドが抗体または抗体フラグメントを含む、請求項8に記載の方法。
  11. 前記抗体または抗体フラグメントがトランスフェリン受容体またはHER−2と結合する、請求項10に記載の方法。
  12. 前記抗体フラグメントがscFvフラグメントである、請求項10に記載の方法。
  13. 前記リポソームがジオレオイルトリメチルアンモニウムホスフェート(DOTAP)とジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)もしくはコレステロールまたはそれらの組合せとの混合物、あるいはジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)とDOPEもしくはコレステロールまたはそれらの組合せとの混合物を含む、請求項8に記載の方法。
  14. 前記治療薬が化学療法薬または放射性治療薬をさらに含む、請求項8に記載の方法。
  15. 前記第二のサンプル中の切断17kDaサブユニットの量が、前記第一のサンプル中の切断サブユニットの量の少なくとも1.5〜約2倍である、請求項1に記載の方法。
  16. 哺乳類の身体において治療薬の有効性を評価するための方法であって、該薬剤はアポトーシスを刺激する働きをし、
    該治療薬で処置する哺乳類から、血液または血液成分のサンプルを得ること;
    該サンプル中に存在するカスパーゼ3の17kDa断片の量を測定すべく該サンプルをアッセイすること、ここで、該フラグメントはin vivoにおけるカスパーゼ3の特異的切断によって生じたものである;
    該治療薬を該哺乳類に投与すること;
    該哺乳類から、血液または血液成分の第二のサンプルを得ること;および
    該サンプル中に存在する切断カスパーゼ3の17kDa断片の量を測定すべく該第二のサンプルをアッセイすること
    を含み、該第一のサンプルで測定された量に対する、該第二のサンプルで測定された該17kDa断片の量の増加が、アポトーシス刺激および該治療薬の有効性に相関する、方法。
  17. 前記血液成分が血漿、血清または血液細胞を含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記治療薬が化学療法薬、放射性治療薬、腫瘍抑制核酸、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組合せを含む、請求項16に記載の方法。
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