JP2002095476A - トランスフェリン受容体を介した遺伝子導入法 - Google Patents

トランスフェリン受容体を介した遺伝子導入法

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JP2002095476A
JP2002095476A JP2000284824A JP2000284824A JP2002095476A JP 2002095476 A JP2002095476 A JP 2002095476A JP 2000284824 A JP2000284824 A JP 2000284824A JP 2000284824 A JP2000284824 A JP 2000284824A JP 2002095476 A JP2002095476 A JP 2002095476A
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洋司郎 新津
Junji Kato
淳二 加藤
Yasushi Sato
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の課題は、Tfと結合させたDNAを、Tf-R
を介して効率よく動物細胞に導入する方法を開発し、更
に全身的に投与した場合でも、該DNAを癌細胞及び筋肉
細胞のみに効率的に導入することにある。 【解決手段】凝集体を形成しないTf-DNA複合体の作製法
を開発し、更にTfとDNAをS-S結合を介して結合させるこ
とにより、Tf-Rを発現する細胞特異的に、高効率で遺伝
子導入を行うことが可能となった。更に動物に全身投与
した場合でも、動物内でTf-Rを発現する細胞、特に癌細
胞び筋肉細胞に遺伝子を導入することが可能となり、Tf
-Rを発現する癌に対する遺伝子治療、及び筋ジストロフ
ィーの遺伝子治療が可能となった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トランスフェリン
受容体(以下Tf-Rと称す)を有する動物細胞にDNAを導
入するための、トランスフェリン(以下Tfと称す)とDN
Aの複合体、該Tf-DNA複合体の作製法、及び該Tf-DNA複
合体を用いてin vitro及びin vivoでDNAを導入する方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】癌の遺伝子治療を実現するため、目的と
する癌細胞にのみ遺伝子を導入する技術は、開発すべき
重要な技術の一つである。Tfは動物細胞に鉄を運ぶ役割
を果たす分子である。Tfは細胞外で鉄と結合し、細胞表
面のTf-Rと結合して、Tf-Rと共に細胞内に取り込まれ、
細胞内で鉄を放出した後、再び細胞表面に運ばれて再利
用されるという過程を通して、細胞に鉄を供給する(Kl
ausner, R.D. et al., J. Biol. Chem. 258, 4715-472
4, 1983)。このため、Tfに結合した分子は、効率よく
細胞内に運ばれる。また、未熟な赤血球以外のほとんど
の細胞で、Tf-Rの発現が低いのに対し、分裂の盛んな癌
細胞ではTf-Rが高発現していることが知られている(La
rrruc, J.W. et al., J. Supramol. Struct. 11, 579-5
86, 1972、Faulk, W.P. et al., Lancet 11, 390-392,1
980)。以上のことを鑑みTfを利用して、抗癌剤を癌細
胞に運ぼうという試みが、in vivo・ in vitroを問わず
数多くなされ、例えばジフテリア毒素(Laske, D.W. et
al., Nat. Med, 3, 1362-1368, 1997)・リシンA鎖(R
aso, V. et al., J. Biol. Chem. 259, 1143-1149, 198
4)ネオカルシノスタチン(Sasaki, K. et al.,Jpn. J.
Cancer Res., 84, 191-196, 1993)・アドリアマイシ
ン(Barabas,K.et al., J. Biol. Chem. 267, 9437-944
2, 1992 )をTfと結合させて癌細胞に運ぶという試みが
成功している。
【0003】これに対し、Tf-Rを介してDNAを癌細胞に
導入しようという試みは、これまでに成功していない。
Wagnerらは、ポリリジンを介してTfをDNAに結合させた
が(Wagner, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
87, 3410-3414, 1990、Cotton, M., et al., Methods
Enzymol. 217, 618-644, 1993)、電気的な相互作用に
より凝集しやすく(Cristiano, R.J. et al., Cancer,
gene Ther. 3, 49-57, 1996)、更に細胞内に取り込ま
れた後に、ほとんどがリソゾームに入って分解される経
路を辿り、導入の効率が低かった。リソゾームでの分解
を抑制するchloroquineを共存させると、導入効率が上
がることが報告されているが(Zauner, W.et al., Exp.
Cell Res. 232, 137-145, 1997)、chloroquineの毒性
のためin vivoでの応用は現実的ではない。また、Cheng
ら(Cheng, P.W. et al., Hum. Gene Ther.7, 275-282,
1996)は、Tfを結合させたリポソームにDNAを入れて投
与する試みを行っているが、投与は腫瘍内投与に限ら
れ、全身的な投与は試みられていない。
【0004】また同様にTf-Rを高発現している細胞とし
ては、筋肉細胞が挙げられる。Tf-Rを介して、筋肉細胞
に遺伝子導入できれば、筋ジストロフィーの遺伝子治療
への道を開く重要な技術となる。Liang KWら(Mol. The
r., 1, 236-243, 2000)は、筋ジストロフィーの遺伝子
治療を目的として、TfとDNAの複合体を筋肉細胞に導入
することを試みている。しかし、陽イオンポリマーpoly
ethyleneimine(PEI)を共存させて、筋肉細胞への遺伝
子導入が認められるのみであり、in vivoへの応用へは
到っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、Tfと
結合させたDNAを、Tf-Rを介して効率よく動物細胞に導
入する方法を開発し、更に全身的に投与した場合でも、
該DNAを癌細胞のみに効率的に導入することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これまで
の方法の欠点を克服するために、以下の手段を講じた。 1).凝集が起こることを避けるために、結合が定量的に
コントロール可能なビオチン−アビジン結合を用いてTf
とDNAを結合させた。 2).凝集が起こることを避けるため、及びTfとTf-Rの結
合がDNAとの結合により障害されないために、ビオチン
化TfをTf-Rカラムに結合させ、カラム中で、アビジン次
いでビオチン化DNAを結合させて、TfがTf-Rに結合した
状態でTf-DNA複合体を作製した。 3).細胞内でTfとDNAが解離するように、S-S結合を含む
ビオチン化試薬によりビオチン化を行った。 これらの工夫により、凝集体を形成せず、TfがTf-Rとの
結合性を保持しているTf-DNA複合体の作製が可能とな
り、in vitroのDNAの導入で、リポフェクチン法・レト
ロウイルスベクターを用いた方法に勝る導入効率を達成
した。更にin vivoのDNA導入では、全身投与においても
癌細胞及び筋肉細胞に遺伝子導入が可能であることが示
された。
【0007】すなわち本発明は、 (1).以下の特徴; 1).1分子のTfに1分子のDNAが結合していること、 2).補助剤無しに、該DNAにコードされる遺伝子を、Tf-R
を有する細胞に導入できること、 ことを特徴とする、TfとDNAの複合体。ここで第一の特
徴、1分子のTfに1分子のDNAが結合していることは、
アガロースゲル電気泳動で、Tf-DNA複合体の移動度と、
Tfを結合させないDNAの移動度との間に大差が無く、更
に泳動後ニトロセルロース膜等にブロットし、Tfに対す
る抗体で染色することにより、DNAバンドと同位置にTf
が検出できることで、検証される特徴である。本発明
は、Tf-DNA複合体が凝集体を作らなければ、リソゾーム
に移行せず、高効率で遺伝子導入が行われることを見出
したものであり、従ってアガロースゲル電気泳動で、Tf
を結合させないDNAとの間で移動度が大きく異なる様なT
f-DNA複合体でない限り、本発明に含まれるものであ
る。DNAはTf-Rを有する細胞に導入するDNAであれば、如
何なるDNAも許される。また第二の特徴、補助剤無し
に、該DNAにコードされる遺伝子を、Tf-Rを有する細胞
に導入できることとは、遺伝子導入に通常用いられる、
リポフェクチン・PEI等の補助剤を用いなくても、Tf-R
を有する細胞に対しては、補助剤を用いた場合と同等の
効率で遺伝子導入が可能なことを意味する。
【0008】(2).TfとDNAが、S-S結合を介して結合して
いることを特徴とする、(1)に記載の複合体。ここで、T
fとDNAがS-S結合を介して結合しているとは、TfとDNAを
つなぐ原子間の結合に、還元により開裂する少なくとも
一つのS-S結合が存在することを意味する。 (3).TfとDNAが、ビオチン−アビジン結合を介して結合
していることを特徴とする、(1)に記載の複合体。 (4).ビオチンが、S-S結合を介してTfあるいはDNAと結合
している、(3)に記載の複合体。 (5).以下の工程: 1).Tf-RにTfを結合させ、 2).Tf-Rに結合した状態で、TfにDNAを結合させた後、 3).Tf-Rから、TfとDNAの複合体を遊離させる工程、を含
んで成る、Tf-Rに結合できる、トランスフェリンとDNA
の複合体を作製する方法。 (6).Tfがビオチン化Tfであり、結合したビオチン化Tfに
アビジンを介して更にビオチン化DNAを結合させる、(5)
に記載の方法。 (7).ビオチン化Tfあるいはビオチン化DNAのビオチンがS
-S結合を介してTfあるいはDNAと結合している(6)に記載
の方法。 (8).Tf-Rを、固相化したTf-Rに対する抗体を介して固相
化する(5)に記載の方法。 (9).(5)ないし(8)に記載の方法により作製されうる、Tf
とDNAの複合体。 (10).(1)ないし(4)、あるいは(9)に記載の複合体を、Tf
-Rを有する動物細胞と接触させ、Tfに結合したDNAを動
物細胞に導入する方法。 (11).動物に投与し、該動物のTf-Rを有する細胞に、Tf
に結合したDNAを導入する、(1)ないし(4)、あるいは(9)
に記載の複合体を含んで成る遺伝子治療剤。 (12).Tf-Rを有する細胞が癌細胞である、(10)に記載の
遺伝子治療剤。 (13).Tf-Rを有する細胞が筋肉細胞である、(10)に記載
の遺伝子治療剤。に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明について、具体的に
説明する。本発明は、Tf-Rを有する動物細胞にDNAを導
入する方法である。Tfに結合させて導入するDNAとして
は、マーカとして利用されるβガラクトシダーゼ・GFP
等をコードするDNA、あるいは遺伝子治療、好ましくは
癌の遺伝子治療に用いる自殺遺伝子(例えばHSV-TK、リ
シンA鎖、ジフテリアトキシン、リンホトキシン、TNF
等をコードするDNA)、免疫増強遺伝子(IL-2、インタ
ーフェロン、TNF等をコードするDNA)、更に好ましくは
HSV-TKをコードするDNAが挙げられる。また筋ジストロ
フィーの遺伝子治療に用いるdystrophinをコードする遺
伝子が挙げられるが、Tf-Rを有する細胞に導入するDNA
であれば、如何なるDNAも許され、好ましくは遺伝子導
入に適した10 kb以下、更に好ましくは 5 kb以下のDNA
であることが望ましい。
【0010】I.凝集していないTf-DNA複合体の作製法 本発明は、Tf-Rを有する動物細胞にDNAを導入するため
の、凝集しておらず、TfがTf-Rとの結合性を保持してい
るTf-DNA複合体、その一例としての1分子のTfに1分子
のDNAが結合したTf-DNA複合体、その作製法及び利用法
を開示するものである。
【0011】TfとDNAを凝集が生じないよう結合させる
方法としては、 1.価数(結合する手の数)を1価近くに制限し、Tfと
DNAが1:1でしか結合できないようにする。 2.複合体の片方、例えばTfを固相化、好ましくはTfが
Tf-Rとの結合性を保持しているように、固相化したTf-R
を介して固相化し、固相上で複合体を形成させることに
よって、Tfに結合したDNAが拡散し、別のTfとは結合す
ることを防止する。 3.ゲル濾過・限外濾過等の方法により、凝集体を取り
除く。 といった方法が考えられる。
【0012】1.価数を1価近くに制限する方法 価数を1価近くに制限する方法として、例えばTfをグル
タチオン合成酵素・His-tagあるいはエピトープに結合
する抗体との融合蛋白質として発現させ、これらに対応
してDNAにグルタチオン・Niイオンを固定化したニトリ
ロ三酢酸あるいはエピトープタグを結合させる方法を挙
げることができる。ヒトTf遺伝子は、例えばHershberge
r et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 646, 140-154, 1991
(NCBI Accession No:AAB22049、GI:248648)の情報を
基にプライマーを設定し、ヒト肝臓より抽出したmRNAを
鋳型としてRT-PCRを行った後、適当なベクターにクロー
ニングすることにより得ることができる。クローニング
後、Lawrence C.M.らの報告(Science 286:779-82, 199
9)より、Tfのドメイン構造及びTfのTf-Rへの結合に必
要な領域を推定し、Tfのドメイン構造を壊さずTfとTf-R
の結合を阻害しない位置を推定して、例えばグルタチオ
ン合成酵素をコードする遺伝子を挿入する。グルタチオ
ン合成酵素をコードする遺伝子は、例えばYEX Yeast ex
pression systems(clontech社製)pYEX4Tベクターから
PCRにより増幅して得ることができる。こうして、Tf-R
との結合能を有するTfとグルタチオン合成酵素の融合蛋
白を発現する発現ベクターを得ることができる。DNAに
グルタチオン・Niイオンを固定化したニトリロ三酢酸あ
るいはエピトープタグを結合させる方法としては、Phot
o-activated reagentを使う方法、nicktranslationによ
る方法が挙げられる。例えば、Photo-activated reagen
tとしてPHOTOPROBE (S-S) Biotin(Vector Laboratorie
社製)を用いてDNAにビオチンを導入し、アビジンを介
してグルタチオン・Niイオンを固定化したニトリロ三酢
酸あるいはエピトープタグを結合を結合させることがで
きる。また別法としては、Peptide nuclic acid(PNA)
を、triple helixを介してDNA中の特異配列結合させ、
末端に結合させたアミノ酸を介して、蛋白質に(LiangK
W et. al., Mol. Ther., 1, 236-243, 2000)、あるい
はグルタチオン・Niイオンを固定化したニトリロ三酢酸
あるいはエピトープタグに結合させることができる。PN
AはFramingham社より入手可能である。好ましくは、こ
れら結合はS-S結合を介して結合させることが望まし
い。
【0013】また別の価数を1価近くに制限する方法と
しては、反応条件を変えることで結合数がコントロール
可能な架橋試薬を使い、1分子のTfあるいはDNAに結合
する架橋分子の数を1近くになるように反応条件を設定
して、架橋反応を行う方法が挙げられる。
【0014】結合数がコントロール可能な架橋試薬とし
て好ましい試薬は、ビオチン化試薬である。以下にビオ
チン化試薬を用いる方法について詳細に説明する。DNA
をビオチン化する方法としては、ビオチン化したdNTP、
好ましくはdCTPを前駆体として、DNA合成機であるいは
酵素反応によりDNA合成を行う方法、及びDNAをビオチン
化試薬、例えばPHOTOPROBE (S-S) Biotin(Vector Labo
ratories社製)によりビオチン化DNAを得る方法が挙げ
られる。反応系に入れるビオチン化試薬の濃度を調整す
ることにより、DNAに結合するビオチンの分子数をコン
トロールできる。DNAは、動物細胞に導入された後、mRN
A合成の鋳型として働くため、mRNA合成に支障を来さな
い方法で、修飾を行う必要がある。ビオチン化の場合、
好ましくはDNA 1 kb当たり1分子以下、更に好ましくは
0.5分子以下のビオチン分子が結合していることが望ま
しい。
【0015】ビオチン化DNAは、アビジン、好ましくは
ストレプトアビジンを結合させたTfに結合させる。アビ
ジンと結合したTfは、1,6-bismaleimide hexane(BM
H)、m-maleimidobenzoyl-N-hudroxysuccinimide ester
(MBS)、N-succinimidyl 3-(2-pyridyldithio)propion
ate(SPDP)等の架橋試薬を用いる方法(Suzuki M., et
al., Nature Biotech., 17, 265-270, 1999)により作
製可能である。また、アビジンが4価であることから、
Tfをビオチン化し、ビオチン化Tfをアビジンと反応させ
る方法によっても作製可能である。Tfをビオチン化する
ビオチン化試薬としてはNHSビオチン・NHS S-Sビオチン
(Pierce社製)が挙げられるが、S-S結合を介してビオ
チンが結合するNHS S-Sビオチンが好ましい。ビオチン
の結合数は、例えばTfとビオチン化試薬を様々なモル比
で反応させ、1分子のTf当たりに結合したビオチンの分
子数を、4-hydroxyazobenzene-2-carboxylic acid (HAB
A) dye(Sigma社製)(Green, M.N. et al., Biochem.
J. 94, 1-45, 1980)を用いた方法により決定して、Tf
とビオチンの結合比が1:1に最も近くなるよう反応条件
を決めることにより、コントロール可能である。アビジ
ンを介してTfとDNAを結合させた場合は、アビジンの4
価のビオチン結合部位のうち、利用されていない結合部
位を、ビオチンで塞いでおくことが好ましい。また、鉄
イオンと結合していないTfはTf-Rと結合しないため、作
製したTf-DNA複合体中のTfは、鉄イオンと結合させてお
くことが望ましい。
【0016】2.固相上で複合体を形成させる方法 価数(結合する手の数)を1価近くに制限しても、価数
は確率的に分布するため2価以上の価数の分子の混入は
避けられず、これら分子を介在として凝集体が形成され
る恐れがある。そこで、より確実に凝集体の形成を避け
るために、固相上で複合体を形成させる方法を併用する
ことが好ましい。液相での結合反応ではTfと結合したDN
Aは自由に分子運動し、拡散して別のTfと結合すること
が可能である。TfあるいはDNAの片方、好ましくはTfを
固相化すれば、DNAの拡散は制限され、別のTfと結合す
ることは防止できる。固相化の方法としては、カラムの
担体・ビーズあるいは膜表面等に結合させる方法が挙げ
られるが、好ましくはカラムの担体に結合させることが
望ましい。
【0017】更に好ましい方法は、固相に結合したTf-R
を介してTfを固相化する方法である。その理由の第一
は、Tf-Rと結合した状態でDNAとの結合反応を行えば、T
f-Rと反応しないようなTf-DNA複合体は生成せず、Tf-DN
A複合体がTf-Rを介して細胞に取り込まれることが保証
されることである。理由の第二は、Tf-Rと結合したTfは
pHを下げることにより容易に脱離し、Tfとしての活性を
保ったままTf-DNA複合体を回収することが容易であるこ
とである。Tf-Rを固相に結合させる方法としては、一般
的な活性化担体、例えばBrCN activated Sepharose 4B
(Pharmacia社製)を使用することも可能であるが、好
ましくは、TfとTf-Rの結合を阻害しない方法、例えばTf
とTf-Rの結合を阻害しない抗体、好ましくはモノクロー
ナル抗体を介して固相と結合させることが好ましい。Tf
とTf-Rの結合を阻害しないモノクローナル抗体は、Tf-R
に対するモノクローナル抗体を通常の方法により作製
し、得られたクローンからTfとTf-Rの結合を阻害しない
抗体を選択する。抗体がTfとTf-Rの結合を阻害するか否
かは、例えば12 5Iで標識したTfが、Tf-Rを有する細胞、
例えばK562細胞に結合するのを該抗体が抑制するか否か
により検定できる。
【0018】3.凝集体を除く方法 生成してしまった凝集体を、ゲル濾過カラム・限外濾過
フィルター等の方法により、取り除くことも可能であ
る。
【0019】以上1,2,3に述べた方法を単独で、あ
るいは組み合わせて凝集体を含まないTf-DNA複合体を作
製するが、好ましい実施様態を以下に記載する。 1).TfとTf-Rの結合を阻害しないモノクローナル抗体を
固相化する。 2).固相化した抗体に部分精製したTf-Rを結合させる。
(Tfと結合した状態の場合は、pHを下げてTfを遊離させ
る。) 3).Tfとビオチンの結合比が1:1になる条件でビオチン化
したTfを結合させる。 4).ストレプトアビジンを結合させる。 5).1 kbあたり0.5分子のビオチンが結合する条件でビオ
チン化したDNAを結合させる。 6).利用されていないストレプトアビジンの結合部位
に、ビオチンを結合させる。 7).pHを下げて、Tf-DNA複合体(この場合ビオチン化Tr
−ストレプトアビジン−ビオチン化DNA)を溶出させ
る。 8).Tf-Rに結合するよう、溶出したTf-DNA複合体に鉄イ
オンを結合させる。
【0020】II.TfをS-S結合を介して結合してDNAと結
合させる方法 細胞内で切断されるような結合を介して結合したDNAを
開示するものである。細胞内で切断されるような結合と
しては、例えばS-S結合、細胞内のプロテアーゼにより
切断される配列を有するペプチド等が挙げられるが、好
ましくはS-S結合であることが望ましい。TfをS-S結合を
介して結合してDNAと結合させる方法としては、 1),Tf中のフリーのCys残基を介して架橋試薬、SPDP(N-
succinimidyl 3-(2-pyridylditho)propionate)を用い
る。 2).分子内にS-S結合を持つビオチン化試薬を用いる。 方法が挙げられる。これら試薬を用いてI.に述べた方
法により、Tf-DNA複合体を作製することにより、S-S結
合を介して結合したTf-DNA複合体を作製できる。
【0021】III.Tf-DNA複合体を用いた、細胞及び動
物への遺伝子導入法 Tf-DNA複合体は、Tf-Rを発現している細胞に対しては、
DNAとして好ましくは1μg/ml以上、更に好ましくは5μg
/ml以上の濃度で培地に混ぜて、培養するだけで、遺伝
子導入が可能である。Tf-Rを発現していない細胞へは、
ほとんど遺伝子導入されず、Tf-Rを発現している細胞に
のみ選択的に遺伝子を導入することができる。また動物
に対しては、全身的な投与、好ましくは静脈内投与、腹
腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、更に好ましくは静脈
内投与により、動物内のTf-Rを高発現している細胞、例
えば癌細胞、赤血球系細胞、好ましくは癌細胞に遺伝子
を導入することができる。また、場合によっては局所投
与、好ましくは腫瘍内投与も許される。動物、特にヒト
にTf-DNA複合体を投与する際は、Tf-DNA複合体に、必要
によりpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤などを添
加し、常法により皮下、筋肉内、静脈内用注射剤の製剤
とする。
【0022】
【発明の効果】本発明により、Tf-Rを発現する細胞に特
異的に、高効率で遺伝子導入を行うことが可能となっ
た。更に動物に全身投与した場合でも、動物内でTf-Rを
発現する細胞、特に癌細胞に特異的に遺伝子を導入する
ことが可能となり、Tf-Rを発現する癌に対する遺伝子治
療が可能となった。
【0023】
【実施例】以下に、本発明の実施について具体的に記す
が、本発明はこれに限られるものではない。 [実施例1] Tf-Rカラムの作製 Gatter, K.C.らの方法(J. Clin. Pathol.36, 539-545,
1983)で作製した抗Tf-Rモノクローナル抗体5E7をAffi
-Gel Hz(Bio-Rad社製)にゲル1 ml当たり2 mgの濃度で
結合させた。5E7抗体は、Tf-RのTf結合部位の外側に結
合し、Tfとの結合を妨げない抗体である。Turkewitzら
の方法(J. Biol. Chem. 263, 8318-8325, 1988)に従
ってヒト胎盤100 gより調製したTf-R-Tf複合体の粗精製
物を、SepharoseCL4B(ファルマシア社製)カラムにより
凝集物を除いた後、5E7モノクローナル抗体を結合させ
た2 mlのカラムにかけた。Tf-R-Tf複合体を結合させた
カラムは、10 mMリン酸カリウムpH 7.5, 150 mM NaCl緩
衝液、続いて0.2% Triton X-100を含む同緩衝液、10 mM
CHAPSを含む同緩衝液で洗浄した。Tf-R-Tf複合体よりTf
を解離させるため、カラムを更に50 mMクエン酸pH 4.9,
100 mM NaCl, 10 mM CHAPS, 1mM desferrioxamine mes
ylate(Ciba Geigy,NJ社製)緩衝液で洗浄し、続いて50
mM HEPES pH7.5, 100 mM NaCl, 10 mM CHAPS緩衝液、5
0 mM HEPES pH7.5, 2M KCl, 10 mM CHAPS緩衝液で洗浄
した。
【0024】[実施例2] Tfのビオチン化 ヒトTf(Miles, IL社製)を鉄イオンで飽和させ、PBSに
5 mg/mlの濃度で溶解して、様々なモル比でNHS-SS-ビオ
チン(Pierce社製)と反応させた。室温で3時間反応
後、未反応のビオチンをPBSに対して透析を行って除去
した。ビオチンとTfとの結合比を、4-hydroxyazobenzen
e-2-carboxylic acid (HABA)dye(Sigma社製)(Green,
M.N. et al., Biochem. J. 94, 1-45, 1980)を用いて
決定した。凝集体が生成しないように、様々なモル比で
反応させたビオチン化Tfより、ビオチンとTfとの結合比
が1.2 : 1のビオチン化Tf(NHS-SS-ビオチンとTfを3 :
1のモル比で反応)を選択した。
【0025】[実施例3] ビオチン化プラスミドの調製 CAGプロモータにより、核移行シグナルを有するβガラ
クトシダーゼ(nlacZ)を発現するプラスミド(pCAGnla
cZ)は、pCAGGS(Niwa, H et al., Gene, 108,193-200,
1991)EcoR1 siteにnlacZ遺伝子を挿入して作製した。
CAGプロモーターによりHSVのTKを発現するpCAHSVTKは、
pCAGGSベクターのEcoR1 siteにtk cDNAを挿入して作製
した(理研ジーンバンクRDB:1427)。CMVプロモータに
よりGFPを発現するプラスミド(pEGFP-C1)はClontech
社より購入した。ビオチン化は0.1〜1 mg/mlのPHOTOPRO
BE (S-S) Biotin(Vector Laboratories社製)を用い製
品に付属のマニュアルに従って行った。具体的には、10
0μlのDNA溶液(1mg /ml)に、100μlの0.1〜1 mg/mlの
PHOTOPROBE (S-S) Biotinを加え、氷中においてsun lum
pの下10 cmで15分間照射を行った。反応しなかったビオ
チンを除くため2-butanolで2回抽出し、2倍量のエタ
ノール・1/10量の10 M 酢酸アンモニウムを加えてDNAを
沈殿させ、室温で乾燥後、50μlの水に溶解した。ビオ
チン化したβガラクトシダーゼ遺伝子の発現を、X-gal
による染色により調べたところ、1 kb DNA当たり1分子
以上のビオチンが入ると、発現効率が極端に低下するこ
とが判った。そこで、プラスミドのビオチン化は1 kb D
NA当たり0.5分子以上のビオチンが入るような条件で行
った。
【0026】[実施例4] Tf-DNA複合体の作製 200μlのTf-Rを結合させたカラムに、500μgのビオチン
化Tfをかけ、4℃で1時間インキュベーション後PBSで洗
浄した。このカラムに5 mg/mlの濃度にPBSに溶解したス
トレプトアビジン(Pierce社製)200μlをかけ、4℃1
時間のインキュベーション・PBSによる洗浄し、更にビ
オチン化プラスミド200μgをかけた。未反応のストレプ
トアビジンをブロックするため、50μgのビオチンを加
え30分間インキュベーションした。カラム中で形成され
たTf-DNA複合体は、50 mMクエン酸pH 4.9, 100 mM NaC
l,10 mM CHAPS, 1mM deferoxamine mesylate緩衝液で溶
出し、Fe-NTAにより鉄イオンを飽和させた(Klausner,
R.D. et al., J. Biol. Chem. 258, 4715-4724, 1983)
後、PBSに対して透析した。作製したTf-DNA複合体の凝
集の有無を、アガロース電気泳動(0.8%ゲル)により検
討した。その結果を図1に示した。Tf-Rカラムを使用し
ないで作製したTf-DNA複合体が凝集体(lane 4)を形成
していたのに対し、Tf-DNAカラムを使用して作製したTf
-DNA複合体(lane 3)は、Tfを結合させないDNA(lane
2)と同じ位置に泳動され、DNAのスーパーコイル及びリ
ニアに対応したバンドが見出されて、凝集体は認められ
なかった。また、ニトロセルロース膜にブロットして、
Tfに対する抗体(lane 5)・ストレプトアビジンに対す
る抗体(lane 7)で染色すると、DNAのバンドに対応し
た位置に染色されたバンドが見出され、DNA・ストレプ
トアビジン・Tfが複合体を形成していることが確認され
た。
【0027】[実施例5] Tf-DNA複合体を用いた遺伝
子導入 K562細胞(Fluorescen-activated cell sorting (FACS)
分析で95%がTf-R陽性、ATCCより入手)、M7609細胞(同
79%が陽性、Ban, N. et al., Cancer Res., 56, 3577-3
582, 1996)、TMK-1細胞(同67%が陽性、広島大学医学
部E, Taharaより分与)、Human embryonic lung (HEL)
細胞(同3%が陽性、ATCCより入手)を24wellプレートに
5 x 105/wellで接種し、1 mlの10%FCSを含むRPMI-1640
培地中で培養した。培地に、nlacZを発現するプラスミ
ドDNA を結合したTf-DNA複合体5μg(DNAとして)を加
えて、nlacZ遺伝子を導入した。Tf-DNA複合体の取り込
みにTf-Rが関与しているかどうかを検討するため、モル
比で約100倍過剰のTf(10μg)を加えたウェルを、ま
た、リソゾームが関与しているかどうかを検討するた
め、リソゾームでの分解を抑制すると考えられているch
loroquine(100μM 、Sigma社製)を加えたウェルを設
けた。1日〜4日間培養を続け、発現したβガラクトシ
ダーゼ活性をβ-galactosidase enzyme assay system
(Promega社製)を用いて測定した。K562細胞での結果
を図2に示した。βガラクトシダーゼ活性は、1日後か
ら3.8±0.6 mili unit/μg proteinが検出され、徐々に
増加して4日後には5.7±0.5mili unit/μg proteinが
検出された。また、過剰のTfを加えたウェルでは、1日
後・2日後のβガラクトシダーゼ活性は顕著に抑制さ
れ、遺伝子の取り込みがTf-Rを介して行われていること
が示された。3日後になると顕著な抑制は観察されなか
ったが、これは、過剰に加えたTfに結合した鉄が使い果
たされ、Tf-DNA複合体に結合した鉄が使われるようにな
った結果、DNAが細胞に導入されたものと考えられる。c
hloroquineを加えたウェルでは、chloroquineの影響は
観察されず、Tf-DNA複合体による遺伝子導入にリソゾー
ムは関与していないものと考えられた。
【0028】図3にはM7609細胞・TMK-1細胞・HEL細胞
での結果を示した。4日後のβガラクトシダーゼ活性
は、それぞれ4.9±0.8 mili unit/μg protein・4.0±
0.3・ mili unit/μg protein・0.3±0.2 mili unit/μ
g proteinであり、βガラクトシダーゼは、Tf-Rの発現
量に応じて発現していた。この結果より、Tf-DNA複合体
による遺伝子導入は、Tf-Rを介して行われていることが
確認された。
【0029】[実施例6] アデノウイルスベクター 、
レトロウイルスベクター及びリポフェクチン法との比較 nlacZを発現するアデノウイルスベクターはTakahashi,
M. et al., J. Biol.Chem. 271, 26538-26542, 1996の
方法により作製し、multiplicity of infemtion (MOI)
100で37℃1時間感染させ、その後2日間培養した。nla
cZを発現するレトロウイルスプラスミドpRxZpNは札幌医
大分子生物 濱田教授より分与を受け、レトロウイルス
産生細胞は、Sato, Y. et al., Hum. Gene.Ther. 7, 18
95-1905, 1996に従ってクローニングした。K562細胞は8
x 104 CFU/mlで37℃4時間感染させた。リポフェクチ
ン法は、lipofectin(Life-Technologies社製)の製品
に付属のマニュアルに従って行った。具体的には、2μg
のビオチン化DNAを100μlのOpti-MEM培地に溶解し、10
μlのlipofectin試薬(life-technologies社製)を100
μlのOpti-MEM培地で溶解したものと混合して、室温で3
0分間放置し、0.8 mlのOpti-MEM培地を添加した。5x105
のBOSC23細胞をOpti-MEM培地で2回洗浄し、DNAとlipof
ectinの混合液を加えて、6時間培養し、20%FCSを含むR
PMI1640培地1 mlを添加して24時間後に遺伝子発現を分
析した。Tf-DNA複合体による遺伝子導入効率を、アデノ
ウイルスベクター 、レトロウイルスベクター及びリポ
フェクチン法と比較した結果を図4に示した。Tf-DNA複
合体による遺伝子導入法は、レトロウイルスベクター及
びリポフェクチン法より高効率であり、アデノウイルス
ベクターより若干低い効率であった。
【0030】[実施例7] GFPを発現するプラスミドDNA
を結合したTf-DNA複合体を投与したマウスの、GFPをコ
ードするDNA, mRNA及びGFP蛋白の臓器分布 ヒトTfが、マウスTf-RとヒトTf-Rと同様な親和性で結合
する(Mulford, C.A.et al., J. Biol. Chem. 263, 545
5-5461, 1988)ことから、K562細胞を移植したヌードマ
ウスに、尾静脈よりGFPを発現するプラスミドDNAを結合
したヒトTf-DNA複合体を静脈内投与し、GFPがどの様な
組織に発現するかを調べた。K562細胞を移植する前日及
び移植後7日毎に、250μgの抗ganglio-N-tetraosylcer
amide(Wako chemicals社製)を投与し、移植当日に3 G
yのγ線照射を行ったヌードマウスに、K562細胞1 x 107
を皮下移植した。K562腫瘍が100 mm3となった移植3週
後に、Tf-DNA複合体20μgを静脈内投与した。投与後1
時間・3日。5日・7日後に腫瘍及び各臓器を摘出し以
下の測定に共した。最初にGFPをコードするDNAの臓器分
布を調べた(図5)。摘出した腫瘍及び各臓器ををホモ
ゲナイズしアルカリ法によりDNAを抽出しPCRを行った。
PCRは配列番号1及び配列番号2に記載のDNAをプライマ
ーとし、95℃/30s, 62℃/30s, 72℃/60sを40 cycle繰り
返して、317 bpのバンドとして検出される。その結果、
投与後1時間では全ての臓器にDNAが検出された。これ
は各臓器に血液がコンタミネーション結果であると思わ
れる。3日後では、腫瘍が顕著な陽性となり、これより
は弱いが血液・骨髄・肝臓・心臓・脳・脾臓・皮膚・筋
肉・大腸が陽性となった。これはTf-Rが、分裂の盛んな
細胞(Panaccio, M. et al.,Immunol. Cell Biol. 65,
461-472, 1987)及び脳の血管内皮細胞(Jeffries,W.A.
et al., Nature 312, 162-163, 1984)で発現している
という結果と一致する。7日後では、腫瘍組織で明確な
バンドが見られ、骨髄と筋肉で僅かなバンドが見られる
他は、バンドは観察されなかった。
【0031】続いてGFPをコードするmRNAの臓器分布を
調べた(図6)。凍結した臓器よりRneasy Mini Kit(Q
uiagen社製)を用いてRNAを抽出し、Rnase free Dnase
(Gibco社製)で処理した。cDNAはSuper ScriptII Rnas
e-H-Reverse Transcriptase (RT、Life Technologies社
製)を用いて合成した。PCRは上記DNAと同様の方法で行
った。その結果、GFPのmRNAが検出されたのは腫瘍組織
・筋肉のみであり、筋肉での発現は非常に弱かった(図
6、上図:PCR、下図:定量的PCR)。筋肉で発現が検出
されたのは、筋肉が導入したDNAがプラスミドとして存
在し続ける特異な組織であるためと考えられる。また、
赤血球系の細胞でDNAが検出されるにもかかわらず、3
日後においてさえmRNAが検出されないのは、大過剰のヘ
モグロビンをコードするmRNAがあるためと考えられる。
最後に腫瘍組織及び筋肉におけるGFP蛋白の発現を調べ
た(図7)。腫瘍組織及び筋肉をOptimal Cutting Temp
erature compound(Miles社製)に包埋し、液体窒素で
冷やしたイソペンタンで凍結後、クリオスタットで5ミ
クロンの厚さの切片を作製し、直ちにBio-Rad MRC-1024
共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。その結果、蛍光を
発するGFP蛋白が観察されたのは、腫瘍組織でのみであ
った。GFPをコードするmRNAが検出されたにもかかわら
ず、筋肉でGFP蛋白が観察されないのは、筋肉中のmRNA
量が少ないためであると考えられる。
【0032】[実施例8] HSV-TKを発現するプラスミド
DNAを結合したTf-DNA複合体投与によるK562細胞の転移
抑制 (1).HSV-TKを発現するプラスミドDNAを結合したTf-DNA
複合体のin vitroでの効果 K562細胞を24 wellプレートに5 x 105/wellで接種し、1
mlの10%FCSを含むRPMI-1640培地中で培養した。培地
に、HSV-TKを発現するプラスミドDNA を結合したTf-DNA
複合体5μgを加えて、HSV-TK遺伝子を導入した。2〜200
μMのganciclovir(GCV。Syntex社製)の存在下で5日
間培養し、MTT法(Kuriyama, S. et al.,Hepatology 2
2, 1838-1846, 1995)にて、生細胞数を測定した。その
結果、図8に示す通り、HSV-TKを発現するプラスミドDN
Aを結合したTf-DNA複合体によりHSV-TK遺伝子を導入し
た細胞は、導入しない細胞と比較して、GCVに対し感受
性であった。
【0033】(2).K562細胞の転移巣に対するHSV-TKを発
現するプラスミドDNAを結合したTf-DNA複合体及びGCVの
効果 K562細胞を移植する前日及び移植後7日毎に、250μgの
抗ganglio-N-tetraosylceramide(Wako chemicals社
製)を投与し、移植当日に3 Gyのγ線照射を行ったSCID
マウスに、K562細胞1 x 107を尾静脈より移植した。移
植後22〜25日亘ってHSV-TKを発現するプラスミドDNAを
結合したTf-DNA複合体20μgを1日一回尾静脈より投与
し、その後7日間に亘って50 mg/kg/dayのGCVの投与を
続けた。移植35日後に臓器重量を測定し転移の指標とし
た。また、肝臓・肺・卵巣については顕微鏡で観察し
た。図9に示すように、Tf-DNA複合体及びGCVを投与し
たマウスでは、両者とも投与しなかったマウスと比較し
て、K562細胞の転移巣での増殖が抑制されていた。
【0034】(3).K562細胞転移巣を持つマウスに対す
る、HSV-TKを発現するプラスミドDNAを結合したTf-DNA
複合体及びGCVの延命効果 (2)と同様にK562細胞を移植したマウスに、(2)と同様に
Tf-DNA複合体及びGCVを投与し、同処置による延命効果
を検討した。その結果図10に示すように、Tf-DNA複合
体とGCVの両者を投与したマウスで延命効果が得られ
た。
【0035】
【配列表】 <110> Eisai Co., Ltd. <120> DNA transfection via transferrin receptor <130> EP00TH0802 <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 1 cttcaaggac gacggcaact ac 22
【0036】 <210> 2 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 2 actgggtgct caggtagtgg tt 22
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】Tf-DNA(nlacZ)複合体の、アガロース電気泳
動。
【図2】Tf-DNA(nlacZ)複合体を導入したK562細胞
の、βガラクトシダーゼ発現の経時変化。
【図3】Tf-DNA(nlacZ)複合体を導入したM7609細胞・
TMK-1細胞・HEL細胞の、βガラクトシダーゼ発現。
【図4】Tf-DNA(nlacZ)複合体、リポフェクチン法、
レトロウイルスベクター及びアデノウイルスベクターに
よる遺伝子導入効率の比較。
【図5】Tf-DNA(GFP plasmid)複合体を投与したマウ
スの、GFPをコードするDNAの臓器分布。
【図6】Tf-DNA(GFP plasmid)複合体を投与したマウ
スの、GFPをコードするmRNAの臓器分布。
【図7】腫瘍組織及び筋肉におけるGFP蛋白の発現。
【図8】Tf-DNA(HSV-TK)複合体を導入したK562細胞の
Ganciclovirに対する感受性。
【図9】K562細胞の転移巣に対する、Tf-DNA(HSV-TK)
複合体及びGanciclovir投与の効果。
【図10】K562細胞転移巣を持つマウスに対する、Tf-D
NA(HSV-TK)複合体及びGanciclovir投与の延命効果。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 5/10 G01N 33/53 M G01N 33/53 U 33/566 C12R 1:91) 33/566 C12N 15/00 ZNAA //(C12N 5/10 5/00 B C12R 1:91) C12R 1:91) Fターム(参考) 4B024 AA20 CA04 DA02 EA02 EA04 FA02 FA11 GA11 HA17 4B065 AA90X AA93Y AB01 BA02 CA24 CA44 4C076 AA95 BB11 CC50 EE41 EE59 FF70 4C084 AA13 MA05 MA66 NA13 ZA941 ZB261

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の特徴; 1).1分子のトランスフェリンに1分子のDNAが結合して
    いること、 2).補助剤無しに、該DNAにコードされる遺伝子を、トラ
    ンスフェリン受容体を有する細胞に導入できること、を
    特徴とする、トランスフェリンとDNAの複合体。
  2. 【請求項2】トランスフェリンとDNAが、S-S結合を介し
    て結合していることを特徴とする、請求項1に記載の複
    合体。
  3. 【請求項3】トランスフェリンとDNAが、ビオチン−ア
    ビジン結合を介して結合していることを特徴とする、請
    求項1に記載の複合体。
  4. 【請求項4】ビオチンが、S-S結合を介してトランスフ
    ェリンあるいはDNAと結合している、請求項3に記載の
    複合体。
  5. 【請求項5】以下の工程: 1).トランスフェリン受容体にトランスフェリンを結合
    させ、 2).トランスフェリン受容体に結合した状態で、トラン
    スフェリンにDNAを結合させた後、 3).トランスフェリン受容体から、トランスフェリンとD
    NAの複合体を遊離させる工程、を含んで成る、トランス
    フェリン受容体に結合できる、トランスフェリンとDNA
    の複合体を作製する方法。
  6. 【請求項6】トランスフェリンがビオチン化トランスフ
    ェリンであり、結合したビオチン化トランスフェリンに
    アビジンを介して更にビオチン化DNAを結合させる、請
    求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】ビオチン化トランスフェリンあるいはビオ
    チン化DNAのビオチンがS-S結合を介してトランスフェリ
    ンあるいはDNAと結合している請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】トランスフェリン受容体を、固相化したト
    ランスフェリン受容体に対する抗体を介して固相化した
    後、トランスフェリンと結合させる、請求項5に記載の
    方法。
  9. 【請求項9】請求項5ないし請求項8に記載の方法によ
    り作製されうる、トランスフェリンとDNAの複合体。
  10. 【請求項10】請求項1ないし請求項4、あるいは請求
    項9に記載の複合体を、トランスフェリン受容体を有す
    る動物細胞と接触させ、トランスフェリンに結合したDN
    Aを動物細胞に導入する方法。
  11. 【請求項11】動物に投与し、該動物のトランスフェリ
    ン受容体を有する細胞に、トランスフェリンに結合した
    DNAを導入する、請求項1ないし請求項4、あるいは請
    求項9に記載の複合体を含んで成る遺伝子治療剤。
  12. 【請求項12】トランスフェリン受容体を有する細胞が
    癌細胞である、請求項10に記載の遺伝子治療剤。
  13. 【請求項13】トランスフェリン受容体を有する細胞が
    筋肉細胞である、請求項10に記載の遺伝子治療剤。
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