JP2005514322A - 生体影響性成分と細胞標的化成分の所定の比を有する、実質的に均質な生体影響性物質、このような物質を作製するための方法、及びその使用法 - Google Patents
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Abstract
Description
ヒト癌細胞のトランスフェリン受容体の最初の報告は、1980年のFaulk及び同僚によるものであった(1)。以下の表中に示すように、異なるタイプのヒトの癌中の、トランスフェリン受容体の多数の報告がこの報告に続いた(2)。
ヒトの癌のすべてが上方制御型トランスフェリン受容体を有しているかどうか、あるいは正常な細胞すべてが下方制御型トランスフェリン受容体を有しているかどうかを検討する試験は1つも存在していないが、多くの方面からのデータによって、両方の質問に対する答えはイエスであることが示唆される。例えば、未熟な赤血球(すなわち正赤芽球及び網状赤血球)はその表面上にトランスフェリン受容体を有しているが、成熟した赤血球は有していない(17)。循環性単球も上方制御型トランスフェリン受容体を有しておらず(18)、クッパー細胞を含めたマクロファージは、赤血球貪食というトランスフェリン非依存性の方法によって、その鉄の大部分を得る(19)。実際、in vivoでの試験によって、血漿トランスフェリンから細網内皮系に入る鉄はほとんどないことが示される(概要に関しては、参照20を参照のこと)。マクロファージのトランスフェリン受容体は、γ−インターフェロンなどのサイトカインによって(21)、おそらく細胞内寄生虫を殺傷するための鉄摂取制限機構として(22)下方制御される。
トランスフェリン−ドキソルビシン複合体は、2つの反応を連続的に行うことによって原形質膜に結合する;最初にトランスフェリン成分がトランスフェリン受容体付近に結合し、その後主にカルジオリピンと帯電したリン酸の相互作用によって(58)、ドキソルビシン成分が脂質二重層付近に結合する。したがって、タンパク質及びリン脂質受容体中に結合することによって、複合体が適切な位置に置かれて、受容体の二量化、側部の移動性及び細胞質のカルシウム移動によって、シグナル伝達経路が活性化される(61)。
トランスフェリン−薬剤複合体の有効性は、いくつかの動物モデルにおいて調査されてきている。例えば、トランスフェリンとジフテリア毒素の複合体によって、第14日にヌードマウス中の異種移植によるグリオーマが95%減少し、グリオーマは第30日まで再発することはなかった(74)。グルタルアルデヒドで調製したトランスフェリン−ドキソルビシン複合体は、ヒト中皮腫細胞による死からヌードマウスを救済すること、ドキソルビシンのみで処理した動物と比較して大幅に寿命が長いことが見出されている(75)。さらにトランスフェリンは、ビオチン−ストレプトアビジン技術を使用することによって単純ヘルペスチミジンキナーゼに結合しており、これらの複合体は、転移性K562腫瘍細胞を接種したヌードマウスの寿命を大幅に延ばした(76)。最後に、ヌードマウスにおけるヒトトランスフェリン−ドキソルビシン複合体の最大耐量は、複合体に関して20mg/kg(iv)、遊離薬剤に関してわずか8mg/kg(iv)であることが見出されている(41)。
トランスフェリン−薬剤複合体の2つの臨床報告が存在する。1990年に発表された1件目の報告は、1日当たり1mgのグルタルアルデヒドで調製したトランスフェリン−ドキソルビシン複合体を用いた静脈内注射によって5日間治療した、7人の急性白血病患者の予備試験であった。これらの低い用量によって、毒性的な影響はなく、7人の患者の末梢血液中の白血病細胞の数は、治療後10日以内に86%減少した(77)。さらに、治療の前後に骨髄生検を調べることによって評価したように、疾患が拡大することはなかった。
トランスフェリン−ドキソルビシン複合体を作製するための方法は、1984年に最初に発表され(38)、その後トランスフェリン−薬剤複合体を作製するための方法の多くの報告が存在しており、そのうちのいくつかを以下の表中に挙げる。
(39)に記載されたのと同様にHPLC及びポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用することによって、TRF−GLU−DOX複合体の均質性を決定することができる。(89)に記載されたのと同様に分光光度法を使用することによっても、DOXとTRFの分子比を決定することができる。これらの技法によって、TRF−GLU−DOX複合体の一貫した均一性が繰り返し明らかになっている。さらにクロマトグラフィーは、これらの複合体の調製では必要とされない。なぜなら、凝集体または断片が存在しないからである。これによって多量の均質なトランスフェリン−薬剤複合体を作製することができ、収率が上がりコストは低下する。
純粋な薬剤−タンパク質複合体を単離した後、それらをポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特定し、それらの分子量を決定し、タンパク質1分子あたりの薬剤分子の数を決定する。トランスフェリン1分子あたりの薬剤分子の正確な数は、吸光光度技法だけには限られないがこれを含めた任意の適切な技法を使用して、決定することができる。官能性薬剤とタンパク質の比は、約0.1:1.0と3.0:1.0の間である(非特許文献1)。複合体を調べて、それらが腫瘍細胞の表面上の受容体に結合するかどうかを決定し、複合体が正常な細胞ではなく癌細胞を殺傷するかどうかを決定する。癌細胞に結合し正常な細胞には結合しない複合体のみを、薬剤感受性及び薬剤耐性癌細胞を使用する毒性試験用に選択する。結合試験はフローサイトメトリーまたは任意の他の適切な方法を使用して行うことができ、殺傷試験はミクロ培養技法を使用して、同数の癌細胞を殺傷するのに必要とされる薬剤−タンパク質複合体中の薬剤の濃度と比較して、癌細胞の培養物50%を殺傷するのに必要とされる遊離薬剤の濃度を決定することによって行うことができる。温熱増感剤の複合体を試験するときは、MITテトラゾリウム非色アッセイ(非特許文献2)を使用することによって毒性試験を行う。これらの毒性試験によって、薬剤感受性及び薬剤耐性細胞の熱感度を最大にするための、最も有効なトランスフェリン増感剤比及び複合体の最適濃度が決定される。薬剤−タンパク質複合体中の薬剤と比較して、約10倍を超える遊離薬剤が、同数の細胞を殺傷するために必要とされる。
均質なトランスフェリン−ドキソルビシン複合体の作製
所定のモル比を有する多量の均質なトランスフェリン−ドキソルビシン複合体の合成を、ドキソルビシン(DOX)の3’アミノ位置のアミノ基のみを使用して化学量論的に行って、グルタルアルデヒド(GLU)の2つの反応基の1つと反応させた。したがって、第1ステップは、DOXの生理食塩水溶液をDMSOなどの溶媒を含むGLUの生理食塩水溶液に一滴ずつ加えて、DOXとGLUのモル比が1:1である最終濃度にすることであった。生成したDOX−GLUの溶液を、暗所において室温で3時間攪拌した。
(39)で記載のHPLC及びポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用することによって、TRF−GLU−DOX複合体の均質性を決定することができる。(89)で記載の分光光度法を使用することによっても、DOXとTRFの分子比を決定することができる。これらの技法によって、TRF−GLU−DOX複合体の一貫した均一性が繰り返し明らかになっている。さらにクロマトグラフィーは、これらの複合体の調製では必要とされない。なぜなら、凝集体または断片が存在しないからである。これによって多量の均質なトランスフェリン−薬剤複合体を作製することができ、収率が上がりコストは低下する。
本発明に従って作製したTRF−GLU−DOXの複合体は、正常な細胞ではなく癌細胞に結合し殺傷する能力を有する。(39)に記載されたのと同様にフローサイトメトリーを使用することによって、これらの複合体が、正常な末梢血リンパ球ではなく培養したヒト癌細胞に結合することが示されてきている。(39)に記載されたのと同様に細胞培養技法を使用することによっても、TRF−DOX複合体が、正常な細胞ではなく培養したヒト癌細胞を殺傷することが示されてきている。これらの手順は、本明細書に記載した均質なTRF−GLU−DOX複合体を品質管理するものとしても働く。
ヒトの薬剤耐性ヒト中皮腫癌細胞を異種移植したヌードマウスは、それらをTRF−DOX複合体で治療したとき、それらを遊離DOXで治療したときよりも大幅に長く生存し(75)、トランスフェリン−薬剤複合体は、マウスモデルにおいて薬剤耐性のヒト癌細胞を殺傷するという原則が証明される。しかしながら、これらの結果は、TRFの1分子当たりに所定の数のDOX分子を含む多量の均質なTRF−DOX複合体を生成する能力に依存する。
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Claims (41)
- ドキソルビシンとトランスフェリンとの所定比を有するトランスフェリン−ドキソルビシン複合体を作製する方法であって、
a)各ドキソルビシン分子がグルタルアルデヒド1分子に効果的に付加するように、ドキソルビシンをグルタルアルデヒド連結物質に加えるステップ、及び
b)トランスフェリンとドキソルビシンとの所定比の複合体を生成するように、ドキソルビシン/グルタルアルデヒド結合体をトランスフェリンに加えるステップ
を含み、
前記トランスフェリン−ドキソルビシン複合体が、二量体、三量体及び凝集体を実質的に含まない方法。 - 任意の過剰なグルタルアルデヒド連結剤を除去することをさらに含む請求項1に記載の方法。
- 所定の薬剤対タンパク質の比を有する複合体を作製するための方法であって、
a)薬剤の溶液をモル過剰の連結分子の溶液に一滴ずつ加えて、それぞれの薬剤分子を1つの連結分子に連結させて薬剤/連結分子の組合せにすること、及び
b)薬剤/連結分子の組合せをタンパク質標的化剤に加えて、所定の薬剤対タンパク質の比を有する複合体を生成させること
を含み、
前記複合体が二量体、三量体及び凝集体を実質的に含まない方法。 - 任意の過剰な連結剤を除去することをさらに含む請求項3に記載の方法。
- 連結剤がグルタルアルデヒドである請求項3に記載の方法。
- 薬剤がドキソルビシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、及びシクロホスファミドからなる群から選択される請求項3に記載の方法。
- タンパク質がトランスフェリン、セルロプラスミン、ビタミン、ビタミン結合タンパク質、ホルモン、サイトカイン、低密度リポタンパク質、及び成長因子からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
- 生体影響性分子とタンパク質分子との所定の比で生体影響性分子と結合したタンパク質を含む実質的に均質な物質であって、前記タンパク質が標的細胞上の受容体に誘引される物質。
- タンパク質がトランスフェリンである請求項8に記載の物質。
- 生体影響性分子がドキソルビシンである請求項8に記載の物質。
- 生体影響性分子とタンパク質分子との所定の比が0.1:1.0と4:1.0の間である請求項8に記載の物質。
- 生体影響性分子が、抗癌剤、光増感剤、温熱増感剤、アポトーシス誘導物質、抗ウイルス剤、抗原虫薬及び造影助剤からなる群から選択される請求項8に記載の物質。
- 造影助剤がヨウ素、ガリウム、インジウム、及びイットリウムの放射性同位体である請求項12に記載の物質。
- ヨウ素の放射性同位体が125I、131I、111In、90Y、及び67Gaからなる群から選択される請求項13に記載の方法。
- 細胞を請求項8に記載の物質と接触させることを含む、標的細胞を選択的に治療するための方法。
- 標的細胞の生体影響に適した均質なモノマー物質であって、前記物質がモノマー複合体から本質的になり、前記モノマー複合体が標的細胞上に豊富に見られる受容体に結合可能なタンパク質及び生体影響性活性分子を、生体影響性活性分子とタンパク質との所定の比で含み、かつ前記物質が二量体、三量体及び凝集体を実質的に含まない物質。
- 生体影響性活性分子とタンパク質の比が0.2:1.0〜8.0:1.0である請求項16に記載の物質。
- 生体影響性活性分子とタンパク質の比が0.1:1.0〜4.0:1.0である請求項16に記載の物質。
- 腫瘍を治療するための試薬キットであって、鉄含有トランスフェリン、及びトランスフェリン1分子当たり所定の一貫した数の抗癌剤分子を有する均質な複合体を含むキット。
- 抗癌剤に対する腫瘍細胞の感受性を判定するための試薬キットであって、トランスフェリン1分子当たり所定の一貫した数の抗癌剤分子を有する2つ以上の均質な複合体を含み、かつ前記均質な複合体が異なる抗癌剤を有するキット。
- 抗腫瘍療法に対して感受性がある腫瘍を有する被験者を治療する方法であって、抗腫瘍有効量の請求項8に記載の実質的に均質な物質を患者に投与することを含む方法。
- タンパク質がトランスフェリンである請求項21に記載の方法。
- 生体影響性分子がドキソルビシンである請求項21に記載の方法。
- 腫瘍を造影することをさらに含む請求項21に記載の方法。
- 腫瘍を請求項8に記載の実質的に均質な物質を使用して造影し、かつ生体影響性物質が同位体、蛍光分子及び放射線不透過性物質からなる群から選択される請求項24に記載の方法。
- 生体影響性分子とタンパク質分子の所定の比が0.1:1.0と4.0:1.0の間である請求項21に記載の方法。
- 請求項8に記載の実質的に均質な物質を細胞に投与することを含む、薬剤耐性細胞を治療するための方法。
- 腫瘍細胞中の原形質膜の酸化還元酵素を標的として阻害するための方法であって、請求項8に記載の実質的に均質な物質を前記腫瘍細胞に投与して、前記酵素を阻害することを含む方法。
- 酵素がNADHオキシダーゼまたはNADHリダクターゼである、請求項28に記載の方法。
- タンパク質がトランスフェリンである請求項28に記載の方法。
- 生体影響性分子がドキソルビシンである請求項28に記載の方法。
- 腫瘍細胞が患者中に存在し、前記実質的に均質な物質を前記患者に投与する、請求項28に記載の方法。
- トランスフェリン受容体mRNAを不安定化させることにより、薬剤耐性腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する方法であって、請求項8に記載の実質的に均質な物質を前記腫瘍細胞に投与することを含む方法。
- タンパク質がトランスフェリンである請求項33に記載の方法。
- 生体影響性分子がドキソルビシンである請求項33に記載の方法。
- 腫瘍細胞が患者中に存在し、前記実質的に均質な物質を前記患者に投与する請求項33に記載の方法。
- 薬剤耐性癌細胞中のトランスフェリン受容体mRNAを不安定化させる方法であって、請求項8に記載の実質的に均質な物質を前記癌細胞に投与して鉄を捕え、これによって前記トランスフェリン受容体mRNAを不安定化させることを含む方法。
- タンパク質がトランスフェリンである請求項37に記載の方法。
- 生体影響性分子がデフェロキサミンである請求項37に記載の方法。
- 腫瘍細胞が患者中に存在し、前記実質的に均質な物質を前記患者に投与する、請求項37に記載の方法。
- 所定の薬剤対タンパク質の比を有する複合体を作製するための方法であって、
a)連結分子の溶液を凍結保存液の溶液に一滴ずつ加えて、第1の中間生成物を生成するステップ、
b)薬剤の溶液をモル過剰の前記第1の中間生成物に一滴ずつ加えて、それぞれの薬剤分子を1つの連結分子に連結させて薬剤/連結分子の組合せとし、第2の中間生成物を生成するステップ、
及び
c)第2の中間生成物をタンパク質標的化剤に加えて、所定の薬剤対タンパク質の比を有する第3の中間生成物を生成するステップ、
d)連結除去剤を前記第3の中間生成物に加えて、第4の中間生成物を生成するステップ、
及び
e)前記第4の中間生成物を濾過して、所定の薬剤対タンパク質の比を有する複合体を得るステップ、
を含み、
前記複合体が二量体、三量体及び凝集体を実質的に含まない方法。
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