JP2006514543A - ペプチドを製造する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は遺伝子工学に関し、具体的には、ファージディスプレイ法とインテインを介したタンパク質開裂反応とを組み合わせて用いた、組み換えペプチドの設計、製造および修飾に関する。
Description
本発明は遺伝子工学に関し、具体的には、ファージディスプレイ法とインテインを介したタンパク質開裂反応とを組み合わせて用いた、組み換えペプチドの設計、製造および修飾に関する。
ファージディスプレイ法および他のハイスループットスクリーニング法は、選択したレセプターや他の標的に結合する低分子量ペプチドを得るために用いられている。標的に結合するペプチドは、バイオパニングによってかなり迅速に同定することができものの、このような配列から有用な高親和性ペプチドを開発するには相当の時間がかかる場合がある。さらに、ファージディスプレイ法などのコンビナトリアルな方法は、通常、結合相互作用のみに基づいてペプチドを同定するため、十分な水溶性を示す生物学的に活性なペプチドを見出すためには、複数の候補を試験する必要がある。残念ながら、異なる種類のペプチドの系列を化学合成によって調製することは、特に、特定のジスルフィド結合の配置を用いてペプチドを環化しなければならない場合、困難且つ費用のかさむ作業となる。
所望の活性を有するペプチドの同定を促進するために、ペプチドをグルタチオン−S−転移酵素やアルカリフォスファターゼとの融合タンパク質として製造する方法が実施されている。しかし、担体タンパク質と融合すると、ペプチドはその活性を失う場合がある。さらに、ペプチドが酵素阻害物質である場合、融合タンパク質はこのような活性を示すのにあまり適切ではないことがある。これらの問題は、プロテアーゼまたはペプチド結合を加水分解する化学物質(例えば、臭化シアンやヒドロキシルアミン)を用いてペプチドを担体から切り離すことによって回避することができるが、ペプチドの収率は非常に低いことが多い。このような試薬の使用はまた、ペプチド自身の分解をもたらすこともある。
ファージディスプレイシステムによって見出されるペプチドもまた、水に不溶性である場合が多く、その不溶性によって研究や生体系での使用が困難になっている。
組み換えタンパク質を調製するための、インテインを介したタンパク質スプライシングシステムが報告されている(Chong et al., 1997)。インテインは、タンパク質スプライシング活性を有するタンパク質であり、細菌に組み換えタンパク質を発現させるための融合パートナーとして広く用いられている。インテインの自己開裂能により、標的タンパク質をインテインから切り離すことが可能になるので、プロティナーゼやペプチド結合を加水分解する化学物質による処理は不要となる(Chong et al., 1997; Mathys et al., 1999)。
インテインのスプライシング活性は、例えばチオール試薬によって誘導することができ、また一方では、温度とpHの変化によっても誘導することができる(Evans et al., 1999)。
インテインシステムは、小さな環状ペプチドの製造に用いられてきた(WO 00/36093)。この特許出願で開示されている方法では、ペプチドの環化を触媒するために、分離インテイン(split intein)のトランススプライシング能を利用している。この特許公報で製造したペプチドは主鎖環状ペプチド、即ちN末端アミノ酸とC末端アミノ酸との間にペプチド結合を有するペプチドである。この方法においては、標的ペプチドが分離インテインの2つの部分の間に挿入されており、このような構造は主鎖環状ペプチドを得るために不可欠である。
ファージディスプレイ法が新規なペプチドリガンドを選択するための有力な手段である一方で、現在のファージディスプレイライブラリーは、20種の天然アミノ酸の使用に依存しなければならないため、その化学的多様性に限界がある。ファージに提示されているペプチドやタンパク質に、さらなるアミノ酸を加えるためのアプローチが、わずかながらin vitroおよびin vivoで行われている。また、非天然アミノ酸を含む合成ペプチドを、ファージディスプレイ変異誘発法によって修飾した、ファージが提示するタンパク質に結合する試みも行われている(Dwyer et al., 2000)。
ファージに提示されたペプチドの化学的多様性を増加させるためのアミノ酸類似体の組み込みは、より高活性で安定したペプチドの同定につながり、このようなペプチドは創薬プロセスの手がかりとなる化合物としての役割を果たし得るので、アミノ酸類似体の組み込みは非常に重要である。
発明の概要
本発明者らは、溶解性の型でファージに提示されているペプチドを迅速に製造するための方法として、インテインを介したタンパク質スプライシングの開発によって改善された、ペプチドの製造および修飾のための方法を考案した。本発明の方法は、ジスルフィド架橋を有するペプチドの製造において特に有用であり、この方法では、ペプチドの開裂を温度/pH誘導可能な(temperature/pH-inducible)インテインスプライシングを用いて行う。一例として、ゼラチナーゼ阻害物質であるドデカペプチドCTT(アミノ酸配列:CTTHWGFTLC)の製造について記載する。CTTは、繊維状ファージに提示されたランダムペプチドライブラリーのスクリーニングによって発見された、ジスルフィド結合含有低分子量ペプチドである。
本発明者らは、溶解性の型でファージに提示されているペプチドを迅速に製造するための方法として、インテインを介したタンパク質スプライシングの開発によって改善された、ペプチドの製造および修飾のための方法を考案した。本発明の方法は、ジスルフィド架橋を有するペプチドの製造において特に有用であり、この方法では、ペプチドの開裂を温度/pH誘導可能な(temperature/pH-inducible)インテインスプライシングを用いて行う。一例として、ゼラチナーゼ阻害物質であるドデカペプチドCTT(アミノ酸配列:CTTHWGFTLC)の製造について記載する。CTTは、繊維状ファージに提示されたランダムペプチドライブラリーのスクリーニングによって発見された、ジスルフィド結合含有低分子量ペプチドである。
インテインシステムはまた、非天然アミノ酸を含む異型CTTペプチドを調製することも可能にした。5−フルオロトリプトファンを含有するCTTペプチドは、野生型CTTペプチドに比べ、ヒト血清においてより安定であり、腫瘍細胞浸潤のより有力な阻害物質であることが明らかになった。
CTTペプチドは水に溶解する。しかし、標識を目的とする場合には、ペプチドに追加のチロシン残基を挿入する必要がある。このような追加のチロシンを含む、化学的に合成、修飾されたCTTペプチドは、しかしながら、水に不溶性であり、そのためこのペプチドは研究に用いるのに非実用的である。そこで、ランダムな疎水性アミノ酸が隣接している追加のチロシンを含むCTTペプチドのコンビナトリアル ライブラリーをインテイン融合体として発現させ、得られたペプチドの溶解性と活性を試験した。その結果、本発明者らは、このシステムを用いると、改善された高い溶解特性を示すペプチドのスクリーニングが簡便に行われることを見出した。
従って、本発明者らは、インテインを介したタンパク質の開裂反応を、E. coliでの組み換えペプチドの生成に用いた。この方法により、10アミノ酸残基からなるゼラチナーゼ阻害ペプチド(アミノ酸配列:CTTHWGFTLC)の迅速な製造および精製をミリグラム単位の量で行うことが可能となる。ペプチドのアラニンスキャニング変異誘導法によって、トリプトファン残基がゼラチナーゼ阻害活性の中心であることが分かった。生合成によってヒドロキシル化トリプトファン類似体やフッ素化トリプトファン類似体をインテイン融合タンパク質に組み込んだ後でもインテインの開裂は生じた。アミノ酸類似体は、in vitroで構築したバクテリオファージMu DNA転位複合体(in vitro assembled bacteriophage Mu DNA transposition complexes)を用いた挿入変異誘発によって、トリプトファン栄養要求性に変換したタンパク質発現株を用いて効果的に組み込んだ。全てのトリプトファン類似体含有ペプチドがゼラチナーゼ阻害活性を保持していた。野生型のCTTHWGFTLCペプチドと比べて、5−フルオロトリプトファン含有ペプチドは高い血清安定性を示し、腫瘍細胞の浸潤に対するより強力な阻害物質であった。これらの研究は、非天然アミノ酸の生合成による組み込みによってペプチドを修飾し、その活性を改善するための新たな可能性を開いた。総合的には、これらの研究は、インテインを介したペプチドの発現がペプチドの設計において用途の広い手段であり、そして潜在的な治療的用途を有する高活性ペプチドの開発を可能にすることを示している。
さらに、proMMP−9を標的としてファージの選択を行った。選択のための操作を3回行った後、その結果として残ったペプチドをインテインベクターでクローニングした。クローニングには、ペプチドの配列がわからなくとも、いかなるファージ挿入ペプチドをも増幅することができるように設計したオリゴヌクレオチドプライマーのペアを用いた。このようにして得られたペプチドのアミノ酸配列はADGA−(X)n−GAAGであり、アミノ酸配列ADGAとGAAGはファージに由来し、(X)nは挿入ペプチドである。具体例としては、2種のこのようなペプチドの発現に成功し、それらの特異性をファージ結合の阻害によって示すことができた。
さらに、栄養要求性E. coliを用いてファージ粒子にアミノ酸類似体を組み込むためのペプチドディスプレイシステムを開示する。このシステムは、改善された活性または安定性を有するペプチドの選択を促進すると考えられる。栄養要求性の細菌株では、アミノ酸要求性は、天然アミノ酸の非存在下における転移RNAの誤ったアミノアシル化を強制し、続いてアミノ酸類似体のポリペプチドへの組み込みが生じる。このような方法を、本発明ではファージ粒子の製造に用いる。
従って、本発明は、概して、次の工程を包含する、ペプチドの製造方法に関する。目的ペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸分子を提供する工程、インテインとの融合体を形成するように該核酸分子を発現ベクターに組み込む工程、およびペプチド−インテイン融合体を発現させてペプチド−インテイン融合タンパク質を得る工程。
好ましい態様においては、上記方法のために提供する核酸分子は、ファージディスプレイベクター、あるいはリボソームディスプレイシステム、プラスミド−ペプチドディスプレイシステムまたは他の遺伝学的ディスプレイシステムから得たPCR増幅核酸分子である。
上記の方法は、得られたペプチドの開裂を誘導する工程、および開裂させたペプチドをアフィニティカラムで精製する工程をさらに包含してもよい。好ましい態様においては、ペプチドの開裂は、温度およびpHの変化により誘導する。
本発明の方法においては、通常、融合体の発現を、適切な宿主系を用いてin vivoで行う。このような宿主系においては、ペプチド−インテイン融合体を、例えば、Escherichia coli細胞で発現させる。他の微生物宿主や真核生物宿主、例えば酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞なども用いることができる。
一方、本発明の方法における融合体の発現は、in vitroで行うこともできる。その場合、翻訳は生きている細胞を用いずに行うことになるので、翻訳機構は通常、細胞溶解物や細胞抽出物から得る。
上記で概説したように、本発明の方法はペプチドの設計における様々な目的、例えば、水溶性を高めたペプチドを得るための、任意の親水性アミノ酸を含むペプチドのライブラリーの構築、非天然アミノ酸を含むペプチドの製造、または改善された特性についてスクリーニングするためのペプチドのプールの製造、に適用することができる。
本発明の方法の具体的な用途は、ファージディスプレイ法によって得たペプチドの製造であり、この場合、普遍的なインテイン・オリゴヌクレオチドプライマーのペアを設計する。このようなプライマーの構造は、ペプチドの配列がわからなくとも、挿入ペプチドの増幅を可能にする。
従って、以下の普遍的なプライマーを設計した。
(1)CCT TTC TGC TCT TCC AAC GCC GAC GGG GCT からなる、インテイン・フォワードSapIプライマー配列。このプライマーは、アミノ酸ADGAをファージからペプチドに加える。
(2)ACT TTC AAC CTG CAG TTA CCC AGC GGC CCC からなる、インテイン・リバースPstIプライマー配列。このプライマーは、アミノ酸GAAGをファージからペプチドに加える。
(1)CCT TTC TGC TCT TCC AAC GCC GAC GGG GCT からなる、インテイン・フォワードSapIプライマー配列。このプライマーは、アミノ酸ADGAをファージからペプチドに加える。
(2)ACT TTC AAC CTG CAG TTA CCC AGC GGC CCC からなる、インテイン・リバースPstIプライマー配列。このプライマーは、アミノ酸GAAGをファージからペプチドに加える。
これらのプライマー配列は、ファージに提示されるいかなるペプチドをもインテイン融合体として増幅およびクローニングするのに用いることができる。つまり、ファージペプチドをPCRを用いて増幅し、挿入物を制限酵素であるSapIおよびPstIで消化する。得られた挿入ペプチドを、同様に消化したインテインベクターに結合する。そして、結合したベクターで宿主細胞を形質転換し、発現させる。さらなる工程として、本発明の方法は宿主細胞から得たペプチドを精製する工程を包含してもよい。
本発明者らの研究により、インテインシステムの有用性は、低分子量ペプチドの製造および非天然アミノ酸による低分子量ペプチドの修飾に及んだ。非天然アミノ酸(例えばフッ素化トリプトファン)を組み込み得ることは、創薬プロセスで用いるための、より高い活性および/または安定性を示すペプチドの開発を促進するはずである。さらに、複数のアミノ酸栄養要求性を有する変異(modified)株を用いることにより、複数のアミノ酸を非天然アミノ酸で置換することが可能である。
非天然アミノ酸を含むペプチドの調製方法の好ましい態様においては、非天然アミノ酸を含むペプチドを栄養要求性宿主内でファージに提示させることによって直接選択し、続いて選択したペプチドをインテイン融合体としてファージに発現させる。
この非天然アミノ酸ディスプレイシステムは、アミノ酸類似体の組み込みが特定のコドンとは無関係であるため、fUSE5ベクターを用いた既存のファージライブラリーと完全に適合する。従って、アミノ酸類似体を含む新規なライブラリーは、既存のライブラリーで感染させることで簡単に作製することができる。これによってライブラリー構築に必要な、時間のかかるクローニングおよび形質転換のための工程を回避することができる。さらに、インテイン支援ペプチド発現(intein-assisted peptide expression)は、効率的にファージディスプレイを補完し、例えば、フルオロプトファン含有ペプチドを、活性分析のために可溶性ペプチドとして直接発現させることができる。
本発明のシステムは、トリプトファンなどの存在量の低いアミノ酸に対して用いると最も効果を表す。ファージディスプレイ法によって選択されたペプチドは、非常に多くの場合トリプトファンの存在量が増えているので、トリプトファン類似体をファージライブラリーに組み込むことができるということは重要である。
発明の詳細の説明
略語:
CTT: CTTHWGFTLCペプチド(Koivunen et al., 1999a));
iCTT: 組み換えCTTHWGFTLCペプチド;
STT: STTHWGFTLSペプチド;
MMP: マトリックスメタロプロティナーゼ;
5OH−Trp: 5−ヒドロキシトリプトファン;
5F−Trp: 5−フルオロトリプトファン;
6F−Trp: 6−フルオロトリプトファン;そして
7A−Trp: 7−アザトリプトファン。
略語:
CTT: CTTHWGFTLCペプチド(Koivunen et al., 1999a));
iCTT: 組み換えCTTHWGFTLCペプチド;
STT: STTHWGFTLSペプチド;
MMP: マトリックスメタロプロティナーゼ;
5OH−Trp: 5−ヒドロキシトリプトファン;
5F−Trp: 5−フルオロトリプトファン;
6F−Trp: 6−フルオロトリプトファン;そして
7A−Trp: 7−アザトリプトファン。
方法
ペプチドの化学合成
ペプチドの合成は、Applied Biosystems model 433A(カルフォルニア州、フォスターシティ)を用い、ジスルフィド結合の形成に過酸化水素を用いる以外は、公知のFmoc化学手法(Fmoc-chemistry)(Koivunen et al., 1999a)に従って合成した。端的に記すと、50mM 酢酸アンモニウム(pH7.5)にペプチドをその濃度が1mg/mlになるように溶解し、そこにペプチド100mgあたり0.5mlの3%過酸化水素を加えた。30分間インキュベートしたのち、pHを3.0に調整し、得られた環状ペプチドを逆相HPLCにより精製した。精製は、0.1%トリフルオロ酢酸を用いたアセトニトリルの直線濃度勾配(30分で0%から70%に上昇)で行った。
インテイン−ペプチド融合体のクローニング
CTTHWGFTLCペプチドをコードする合成オリゴヌクレオチド: 5'-GGTGGTGCTCTTCCAACTGTACGACCCATTGGGGATTTACTTTATGTTAACTGCAGGCG-3'を、DNAポリメラーゼ(Dynazyme II;フィンランド国、エスポー、Finnzymes製)および塩基配列が5'-CGCCTGCAGTTAACA-3'であるプライマーを用いて2本鎖に変換し、得られた2本鎖オリゴヌクレオチドをSapI および PstIで消化して挿入物を得た。挿入物を精製し、読み枠を構成するようにSapI−PstI消化pTwinベクター骨格(New England Biolabs製)に結合した(Evans et al., 1999)。正しく挿入されていることを配列の解析で裏付けた。コドンGCGをアラニンのコドンとして用いてアラニン変異ペプチドを調製するために、同様のクローニング法を使用した。全てのファージ挿入ペプチドのクローニングを行えるように、以下の普遍的オリゴヌクレオチド配列を用いた: 5'-CCT TTC TGC TCT TCC AAC GCC GAC GGG GCT-3'(インテイン・フォワードSapIプライマー配列)および5'-ACT TTC AAC CTG CAG TTA CCC AGC GGC CCC-3'(インテイン・リバースPstIプライマー配列)。親水性CTTペプチドライブラリーを構築するためには、合成縮重オリゴヌクレオチド配列: 5'-GGTGGTTGCTCTTCCAACGGCCGCCVAVVAVTATVAVGGCTGTACCACCCATTTACTTTATGTTAACTGCAGGCG-3'(式中、VはA, CまたはGである)を調製し、正常CTTペプチドに用いたのと同じプライマーを用いて2本鎖DNAに変換した。
CTTHWGFTLCペプチドをコードする合成オリゴヌクレオチド: 5'-GGTGGTGCTCTTCCAACTGTACGACCCATTGGGGATTTACTTTATGTTAACTGCAGGCG-3'を、DNAポリメラーゼ(Dynazyme II;フィンランド国、エスポー、Finnzymes製)および塩基配列が5'-CGCCTGCAGTTAACA-3'であるプライマーを用いて2本鎖に変換し、得られた2本鎖オリゴヌクレオチドをSapI および PstIで消化して挿入物を得た。挿入物を精製し、読み枠を構成するようにSapI−PstI消化pTwinベクター骨格(New England Biolabs製)に結合した(Evans et al., 1999)。正しく挿入されていることを配列の解析で裏付けた。コドンGCGをアラニンのコドンとして用いてアラニン変異ペプチドを調製するために、同様のクローニング法を使用した。全てのファージ挿入ペプチドのクローニングを行えるように、以下の普遍的オリゴヌクレオチド配列を用いた: 5'-CCT TTC TGC TCT TCC AAC GCC GAC GGG GCT-3'(インテイン・フォワードSapIプライマー配列)および5'-ACT TTC AAC CTG CAG TTA CCC AGC GGC CCC-3'(インテイン・リバースPstIプライマー配列)。親水性CTTペプチドライブラリーを構築するためには、合成縮重オリゴヌクレオチド配列: 5'-GGTGGTTGCTCTTCCAACGGCCGCCVAVVAVTATVAVGGCTGTACCACCCATTTACTTTATGTTAACTGCAGGCG-3'(式中、VはA, CまたはGである)を調製し、正常CTTペプチドに用いたのと同じプライマーを用いて2本鎖DNAに変換した。
細菌で行うペプチド製造
インテイン融合ペプチドをコードしているプラスミドをE. coli ER2566株(New England Biolabsより購入)に形質転換してクローンを得た。得られたクローンを、OD600が0.7に達するまで100μg/mlアンピシリン含有LB培地で培養した。タンパク質の発現は0.3mM IPTGで誘導し、さらに37℃で4時間インキュベートした。細菌のペレットを、20mM Tris−HCl(pH8.5)、500mM NaCl、1mM EDTAおよび1% TritonX−100からなる緩衝液B1に懸濁した。超音波処理および遠心分離を行った後、可溶性画分をキチンアフィニティーカラム(chitin affinity column)(New England Biolabs製)にアプライした。インテイン融合タンパク質の大部分を含む不溶性画分は、8M 尿素/100mM Tris−HCl(pH8.0)/100mM NaCl/2mM EDTAからなる溶液で可溶化し、超音波処理に付した。続いて、可溶化した材料を、TritonX−100を含まない緩衝液B1で少なくとも16倍に希釈し、遠心分離で透明にした。得られた透明な上清もキチンアフィニティーカラムにアプライした。このカラムをTritonX−100を含まない緩衝液B1で完全に洗浄した。50mM 酢酸アンモニウム/1mM EDTA(pH7.0)からなる溶液中、22℃で一晩インキュベートすることにより、インテイン開裂反応をカラム上で行った。遊離したペプチドを溶出し、凍結乾燥またはSep−Pak C18カートリッジ(Waters製)により濃縮し、濃縮物を逆相HPLCで精製した。個々のペプチドがどのようなペプチドであるかをMALDI−TOF質量分析で検証した。ペプチドの定量は、o−フタルアルデヒドまたはHPLC分析を用いて行った。既知濃度のCTTペプチドを標準として用いた。
インテイン融合ペプチドをコードしているプラスミドをE. coli ER2566株(New England Biolabsより購入)に形質転換してクローンを得た。得られたクローンを、OD600が0.7に達するまで100μg/mlアンピシリン含有LB培地で培養した。タンパク質の発現は0.3mM IPTGで誘導し、さらに37℃で4時間インキュベートした。細菌のペレットを、20mM Tris−HCl(pH8.5)、500mM NaCl、1mM EDTAおよび1% TritonX−100からなる緩衝液B1に懸濁した。超音波処理および遠心分離を行った後、可溶性画分をキチンアフィニティーカラム(chitin affinity column)(New England Biolabs製)にアプライした。インテイン融合タンパク質の大部分を含む不溶性画分は、8M 尿素/100mM Tris−HCl(pH8.0)/100mM NaCl/2mM EDTAからなる溶液で可溶化し、超音波処理に付した。続いて、可溶化した材料を、TritonX−100を含まない緩衝液B1で少なくとも16倍に希釈し、遠心分離で透明にした。得られた透明な上清もキチンアフィニティーカラムにアプライした。このカラムをTritonX−100を含まない緩衝液B1で完全に洗浄した。50mM 酢酸アンモニウム/1mM EDTA(pH7.0)からなる溶液中、22℃で一晩インキュベートすることにより、インテイン開裂反応をカラム上で行った。遊離したペプチドを溶出し、凍結乾燥またはSep−Pak C18カートリッジ(Waters製)により濃縮し、濃縮物を逆相HPLCで精製した。個々のペプチドがどのようなペプチドであるかをMALDI−TOF質量分析で検証した。ペプチドの定量は、o−フタルアルデヒドまたはHPLC分析を用いて行った。既知濃度のCTTペプチドを標準として用いた。
トリプトファン要求性E. coli ER2566変異株の作製
In vitroで構築したバクテリオファージMu DNA転位複合体(In vitro assembled bacteriophage Mu DNA transposition complexes)の調製を、公知の方法(Lamberg et al., 2002)と実質的に同様に行った。端的に記すと、カナマイシン耐性遺伝子を保持する1.1pmolのトランスポゾンDNAおよび4.9pmolのMuAタンパク質を、150mM Tris−HCl(pH6.0)/50% グリセロール/0.025% TritonX−100/150mM NaCl/0.1mM EDTAからなる溶液20μl中で混合した。転位複合体構築反応を30℃で2時間行い、複合体を得た。得られた複合体を1:8または1:16の希釈率で、エレクトロコンピテントE. coli ER2566株に対してエレクトロポレーションを行い、50μg/mlのカナマイシンを含むLBプレートで培養した。得られたクローンを、M9最小培地プレートおよび1mM DL−トリプトファン(Sigma製)含有M9培地プレートにそれぞれレプリカ法で移した。成長にトリプトファンを要求する、ER2566/Trp82株と命名したクローンをさらなる研究のために選択した。トランスポゾン挿入部位を決定するために、染色体DNAをゲノムDNA単離キット(Qiagen製)で単離し、単離したゲノムDNAをPstIで消化した。得られたゲノム断片をPstI消化pUC19プラスミドに結合して形質転換を行い、カナマイシン存在下で形質転換体を選択した。トランスポゾンの境界のDNA配列をトランスポゾン特異的プライマーである5'-ATCAGCGGCCGCGATCC-3'および5'-TTATTCGGTCGAAAAGGATCC-3'でシークエンシングした。ゲノム上の挿入位置はBLASTサーチを用いて特定した。
In vitroで構築したバクテリオファージMu DNA転位複合体(In vitro assembled bacteriophage Mu DNA transposition complexes)の調製を、公知の方法(Lamberg et al., 2002)と実質的に同様に行った。端的に記すと、カナマイシン耐性遺伝子を保持する1.1pmolのトランスポゾンDNAおよび4.9pmolのMuAタンパク質を、150mM Tris−HCl(pH6.0)/50% グリセロール/0.025% TritonX−100/150mM NaCl/0.1mM EDTAからなる溶液20μl中で混合した。転位複合体構築反応を30℃で2時間行い、複合体を得た。得られた複合体を1:8または1:16の希釈率で、エレクトロコンピテントE. coli ER2566株に対してエレクトロポレーションを行い、50μg/mlのカナマイシンを含むLBプレートで培養した。得られたクローンを、M9最小培地プレートおよび1mM DL−トリプトファン(Sigma製)含有M9培地プレートにそれぞれレプリカ法で移した。成長にトリプトファンを要求する、ER2566/Trp82株と命名したクローンをさらなる研究のために選択した。トランスポゾン挿入部位を決定するために、染色体DNAをゲノムDNA単離キット(Qiagen製)で単離し、単離したゲノムDNAをPstIで消化した。得られたゲノム断片をPstI消化pUC19プラスミドに結合して形質転換を行い、カナマイシン存在下で形質転換体を選択した。トランスポゾンの境界のDNA配列をトランスポゾン特異的プライマーである5'-ATCAGCGGCCGCGATCC-3'および5'-TTATTCGGTCGAAAAGGATCC-3'でシークエンシングした。ゲノム上の挿入位置はBLASTサーチを用いて特定した。
アミノ酸類似体をファージ粒子に組み込むための、栄養要求性E. coliの作製
カナマイシン耐性遺伝子を保持するin vitro構築バクテリオファージMu DNA転位複合体を調製し、MC1061株に対し、公知の方法(Lamberg et al., 2002)でエレクトロポレーションを行った。転位が成功したことをカナマイシン耐性の獲得で確認し、得られたコロニーを0.5mMのメチオニンまたはトリプトファンの存在下または非存在下で、0.5mM L−ロイシンおよび1mM チアミンを含有するM9最小寒天プレートにレプリカ法で移すことにより、栄養要求性についてスクリーニングした。組み込みについて調べるために、メチオニンまたはトリプトファンを成長に要求するクローンを選択した。ファージの感染を可能にするために、E. coli NK5468株(コネティカット州、ニューヘブン、エール大学、E. coli 遺伝センター(E. coli Genetic Center)より入手)のF’線毛[lacIq L8 pro with Tn9 in lacYZ]を交配により転移した。交配が成功したことをクロラムフェニコール耐性の獲得で確認した。
カナマイシン耐性遺伝子を保持するin vitro構築バクテリオファージMu DNA転位複合体を調製し、MC1061株に対し、公知の方法(Lamberg et al., 2002)でエレクトロポレーションを行った。転位が成功したことをカナマイシン耐性の獲得で確認し、得られたコロニーを0.5mMのメチオニンまたはトリプトファンの存在下または非存在下で、0.5mM L−ロイシンおよび1mM チアミンを含有するM9最小寒天プレートにレプリカ法で移すことにより、栄養要求性についてスクリーニングした。組み込みについて調べるために、メチオニンまたはトリプトファンを成長に要求するクローンを選択した。ファージの感染を可能にするために、E. coli NK5468株(コネティカット州、ニューヘブン、エール大学、E. coli 遺伝センター(E. coli Genetic Center)より入手)のF’線毛[lacIq L8 pro with Tn9 in lacYZ]を交配により転移した。交配が成功したことをクロラムフェニコール耐性の獲得で確認した。
ペプチドへのトリプトファン類似体の組み込み
インテイン−CTT融合体をコードしているプラスミドを、栄養要求性ER2566/Trp82株に形質転換してクローンを得た。得られたクローンを、0.6% グリセロール、0.1mM CaCl2、2mM MgCl2、0.01mM FeSO4、100μg/ml アンピシリン、25μg/ml カナマイシンおよび0.5mM DL−トリプトファンを添加したM9培地で、OD600が0.8〜1.0に達するまで培養した。トリプトファン類似体である5−ヒドロキシ−L−トリプトファン(5OH−Trp;Sigma製)、5−フルオロ−DL−トリプトファン(5F−Trp)、6−フルオロ−DL−トリプトファン(6F−Trp)またはDL−7−アザトリプトファン(7A−Trp;ICN Biomedicals製)の組み込みを、培地変更法(medium shift procedure)(Minks et al., 1999; Mohammadi et al., 2001; Ross et al., 1997; Tang et al., 2001)により行った。培養した細菌を遠心分離し、トリプトファンまたはトリプトファン類似体を含有しない新鮮なM9培地に懸濁した。残存トリプトファンの大部分を使い切るために懸濁した細菌を37℃で15分間培養し、その後トリプトファン類似体を最終濃度が0.5mMになるように0.5mM IPTGと共に添加した。37℃で4時間培養したのち、細菌をペレット化し、融合タンパク質の精製を上述のように行った。
インテイン−CTT融合体をコードしているプラスミドを、栄養要求性ER2566/Trp82株に形質転換してクローンを得た。得られたクローンを、0.6% グリセロール、0.1mM CaCl2、2mM MgCl2、0.01mM FeSO4、100μg/ml アンピシリン、25μg/ml カナマイシンおよび0.5mM DL−トリプトファンを添加したM9培地で、OD600が0.8〜1.0に達するまで培養した。トリプトファン類似体である5−ヒドロキシ−L−トリプトファン(5OH−Trp;Sigma製)、5−フルオロ−DL−トリプトファン(5F−Trp)、6−フルオロ−DL−トリプトファン(6F−Trp)またはDL−7−アザトリプトファン(7A−Trp;ICN Biomedicals製)の組み込みを、培地変更法(medium shift procedure)(Minks et al., 1999; Mohammadi et al., 2001; Ross et al., 1997; Tang et al., 2001)により行った。培養した細菌を遠心分離し、トリプトファンまたはトリプトファン類似体を含有しない新鮮なM9培地に懸濁した。残存トリプトファンの大部分を使い切るために懸濁した細菌を37℃で15分間培養し、その後トリプトファン類似体を最終濃度が0.5mMになるように0.5mM IPTGと共に添加した。37℃で4時間培養したのち、細菌をペレット化し、融合タンパク質の精製を上述のように行った。
ゼラチナーゼ阻害アッセイ
ゼラチナーゼであるproMMP−2およびproMMP−9(Roche製)を、酢酸p−アミノフェニル第二水銀とトリプシンでそれぞれ活性化し、続いて、各試験ペプチドの存在下または非存在下で30分間インキュベートした。ゼラチナーゼ阻害活性を次の3種のアッセイ法により求めた:(i)ゼラチナーゼ活性キット(Roche製)を製造者の説明書に従って用いた、ビオチン化ゼラチンの分解;(ii)MOS−250分光蛍光計(仏国、クレ、Bio-Logic SA製)を用いて励起波長330nmおよび発光波長390nmで追跡する、MMP−2特異的蛍光ペプチド基質(MCA-Pro-Leu-Ala-Nva-Dpa-Ala-Arg-NH2)(Calbiochem製)(最終濃度2.5μM)の分解;(iii)活性化MMP−2を0.1mg/ml β−カゼインと共に37℃で2時間インキュベートし、得られた試料を15%SDS−PAGEゲルで分析することによる、β−カゼインの分解。
ゼラチナーゼであるproMMP−2およびproMMP−9(Roche製)を、酢酸p−アミノフェニル第二水銀とトリプシンでそれぞれ活性化し、続いて、各試験ペプチドの存在下または非存在下で30分間インキュベートした。ゼラチナーゼ阻害活性を次の3種のアッセイ法により求めた:(i)ゼラチナーゼ活性キット(Roche製)を製造者の説明書に従って用いた、ビオチン化ゼラチンの分解;(ii)MOS−250分光蛍光計(仏国、クレ、Bio-Logic SA製)を用いて励起波長330nmおよび発光波長390nmで追跡する、MMP−2特異的蛍光ペプチド基質(MCA-Pro-Leu-Ala-Nva-Dpa-Ala-Arg-NH2)(Calbiochem製)(最終濃度2.5μM)の分解;(iii)活性化MMP−2を0.1mg/ml β−カゼインと共に37℃で2時間インキュベートし、得られた試料を15%SDS−PAGEゲルで分析することによる、β−カゼインの分解。
細胞浸潤
HT-1080ヒト フィブロサルコーマ細胞を、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびL−グルタミンを添加した10%ウシ胎児血清含有DMEM培地で培養した。細胞浸潤アッセイを、マトリゲル(Matrigel)で被覆したインベージョンチャンバー(invasion chamber)で上記の血清含有培地を用いて公知の方法(Koivunen et al., 1999a)で行った。端的に記すと、細胞をペプチドと共に1時間プレインキュベートし、その後マトリゲルで被覆したインベージョンチャンバー(Becton Dickinson製)内を16時間移動させた。移動した細胞をクリスタルバイオレットで染色し、染色細胞を計数した。
HT-1080ヒト フィブロサルコーマ細胞を、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびL−グルタミンを添加した10%ウシ胎児血清含有DMEM培地で培養した。細胞浸潤アッセイを、マトリゲル(Matrigel)で被覆したインベージョンチャンバー(invasion chamber)で上記の血清含有培地を用いて公知の方法(Koivunen et al., 1999a)で行った。端的に記すと、細胞をペプチドと共に1時間プレインキュベートし、その後マトリゲルで被覆したインベージョンチャンバー(Becton Dickinson製)内を16時間移動させた。移動した細胞をクリスタルバイオレットで染色し、染色細胞を計数した。
分光分析法および蛍光分析法
各ペプチドの200〜375nmの範囲にある吸光スペクトルを、20mM Tris−HCl(pH7.4)/50mM NaCl/0.1mM EDTAからなる溶液中で、ジェネシス5(Genesys 5)分光光度計(ニューヨーク州、ロチェスター、Thermo Spectronic製)で測定した。トリプトファン、5FWまたは6FWの存在下で培養したCTTファージの蛍光スペクトルを、10mM Tris−HCl(pH7.5)/140mM NaCl/1% SDSからなる溶液に懸濁した熱変性ファージ(2×109/ml)の蛍光強度を測定することで得た。300〜500nmの範囲の蛍光発光スペクトル(3回のスキャンの平均値)をMOS−250分光蛍光計で記録した。ペプチドを295nmの波長(バンド幅:5nm)で励起させ、300〜500nmの範囲の発光スペクトルを記録した。
各ペプチドの200〜375nmの範囲にある吸光スペクトルを、20mM Tris−HCl(pH7.4)/50mM NaCl/0.1mM EDTAからなる溶液中で、ジェネシス5(Genesys 5)分光光度計(ニューヨーク州、ロチェスター、Thermo Spectronic製)で測定した。トリプトファン、5FWまたは6FWの存在下で培養したCTTファージの蛍光スペクトルを、10mM Tris−HCl(pH7.5)/140mM NaCl/1% SDSからなる溶液に懸濁した熱変性ファージ(2×109/ml)の蛍光強度を測定することで得た。300〜500nmの範囲の蛍光発光スペクトル(3回のスキャンの平均値)をMOS−250分光蛍光計で記録した。ペプチドを295nmの波長(バンド幅:5nm)で励起させ、300〜500nmの範囲の発光スペクトルを記録した。
ヒト血清中でのペプチド安定性
本研究所職員から血液サンプルを採集し、そこから得た血清を一定量づつ−70℃で保存した。未希釈のヒト血清に、最終濃度が150μMになるようにペプチドを添加した。ペプチドを添加した血清を37℃でインキュベートし、種々のインキュベーション時間で血清の一部を採取した。採取した血清をPBS/0.05% Tween20からなる溶液で希釈し、即座に液体窒素で凍結しサンプルとした。凍結サンプルを解凍し、96穴のドットブロッターを用いてニトロセルロース膜にロードした。5%BSA含有TBS/0.05% Tween20からなる溶液でブロッキングした。その後、CTT−ペプチドをカップリングしたスカシガイヘモシアニン(Sigma製)で免疫することで調製した抗CTTウサギ血清を1/500に希釈し、上記ニトロセルロース膜と共にインキュベートした。結合した抗CTT抗体を、1/2000に希釈したペルオキシダーゼ結合抗ウサギ抗体(デンマーク国、DAKO製)を用いた化学ルミネセンスの増加により検出した。
本研究所職員から血液サンプルを採集し、そこから得た血清を一定量づつ−70℃で保存した。未希釈のヒト血清に、最終濃度が150μMになるようにペプチドを添加した。ペプチドを添加した血清を37℃でインキュベートし、種々のインキュベーション時間で血清の一部を採取した。採取した血清をPBS/0.05% Tween20からなる溶液で希釈し、即座に液体窒素で凍結しサンプルとした。凍結サンプルを解凍し、96穴のドットブロッターを用いてニトロセルロース膜にロードした。5%BSA含有TBS/0.05% Tween20からなる溶液でブロッキングした。その後、CTT−ペプチドをカップリングしたスカシガイヘモシアニン(Sigma製)で免疫することで調製した抗CTTウサギ血清を1/500に希釈し、上記ニトロセルロース膜と共にインキュベートした。結合した抗CTT抗体を、1/2000に希釈したペルオキシダーゼ結合抗ウサギ抗体(デンマーク国、DAKO製)を用いた化学ルミネセンスの増加により検出した。
アミノ酸類似体
DL−エチオニン(Eth)、DL−ノルロイシン(Nle)、4−アザ−DL−ロイシン(Ale)、5−ヒドロキシ−L−トリプトファン(5OH)、5−フルオロ−DL−トリプトファン(5FW)、6−フルオロ−DL−トリプトファン(6FW)およびDL−7−アザトリプトファン(7AW)をSigma-AldrichまたはICN Biomedicalsより購入した。
DL−エチオニン(Eth)、DL−ノルロイシン(Nle)、4−アザ−DL−ロイシン(Ale)、5−ヒドロキシ−L−トリプトファン(5OH)、5−フルオロ−DL−トリプトファン(5FW)、6−フルオロ−DL−トリプトファン(6FW)およびDL−7−アザトリプトファン(7AW)をSigma-AldrichまたはICN Biomedicalsより購入した。
ファージ粒子へのアミノ酸類似体の組み込み
CTTペプチドを提示している繊維状バクテリオファージfUSE5を、MB5F株またはMB64F株を宿主とし、化学合成培地であるM9培地に次の物質を添加して培養した:0.2% グルコース、0.1mM CaCl2、2mM MgCl2、0.01mM FeSO4、20μg/ml テトラサイクリン、25μg/ml カナマイシン、10μg/ml クロラムフェニコール、1mM チアミン、各0.2mMのグアノシン、ウラシル、アデニンおよびチミジン、ならびに0.1〜0.8mMの20種全てのアミノ酸(Neidhardt et al., 1974)。アミノ酸類似体の組み込みを培地変更法により行った。端的に記すと、細菌(OD600=0.7〜1.0)を遠心分離し、置換するアミノ酸を含有していない新鮮なM9培地に懸濁した。最終濃度が(L−異性体として)0.5〜2mMになるようにアミノ酸類似体を添加し、細菌を一晩培養した。
CTTペプチドを提示している繊維状バクテリオファージfUSE5を、MB5F株またはMB64F株を宿主とし、化学合成培地であるM9培地に次の物質を添加して培養した:0.2% グルコース、0.1mM CaCl2、2mM MgCl2、0.01mM FeSO4、20μg/ml テトラサイクリン、25μg/ml カナマイシン、10μg/ml クロラムフェニコール、1mM チアミン、各0.2mMのグアノシン、ウラシル、アデニンおよびチミジン、ならびに0.1〜0.8mMの20種全てのアミノ酸(Neidhardt et al., 1974)。アミノ酸類似体の組み込みを培地変更法により行った。端的に記すと、細菌(OD600=0.7〜1.0)を遠心分離し、置換するアミノ酸を含有していない新鮮なM9培地に懸濁した。最終濃度が(L−異性体として)0.5〜2mMになるようにアミノ酸類似体を添加し、細菌を一晩培養した。
ファージの定量
ファージ上清の希釈系列を調製し、各系列を、標準的な手法(Koivunen et al., 1999b)で E. coli K91/kan株に感染させるのに用いた。各10μlの感染大腸菌含有液を、40μg/ml テトラサイクリンおよび10μg/ml カナマイシンを含有するLB寒天プレート3枚に植えた。一晩インキュベートしたのち、細菌のコロニーの数を数えた。
ファージ上清の希釈系列を調製し、各系列を、標準的な手法(Koivunen et al., 1999b)で E. coli K91/kan株に感染させるのに用いた。各10μlの感染大腸菌含有液を、40μg/ml テトラサイクリンおよび10μg/ml カナマイシンを含有するLB寒天プレート3枚に植えた。一晩インキュベートしたのち、細菌のコロニーの数を数えた。
フルオロファージライブラリーの調製
各15μlのCX7C、CX8CおよびX9Cのライブラリー(Koivunen et al., 1999a, Koivunen et al., 2001)を、テリフィックブロス(Terrific Broth)で培養したMB5F株に感染させた。ファージの感染により0.5×109個の独立したクローンが生じた。一晩インキュベートしたのち、細菌を1リットルのM9培地で継代してから一晩培養した。培地変更法を上述のように行い、アミノ酸類似体である5FWおよび6FWを同時に、最終濃度が0.5mMになるように添加した。翌日、得られたファージをポリエチレングリコール(PEG)/NaClで2回沈殿させた(Koivunen et al., 1999b)。
各15μlのCX7C、CX8CおよびX9Cのライブラリー(Koivunen et al., 1999a, Koivunen et al., 2001)を、テリフィックブロス(Terrific Broth)で培養したMB5F株に感染させた。ファージの感染により0.5×109個の独立したクローンが生じた。一晩インキュベートしたのち、細菌を1リットルのM9培地で継代してから一晩培養した。培地変更法を上述のように行い、アミノ酸類似体である5FWおよび6FWを同時に、最終濃度が0.5mMになるように添加した。翌日、得られたファージをポリエチレングリコール(PEG)/NaClで2回沈殿させた(Koivunen et al., 1999b)。
フルオロファージライブラリーのバイオパニング
合計2.5×105個のEahy926細胞(Koivunen et al., 1999a, Koivunen et al., 2001)を150μlの1%ウシ血清アルブミン含有DMEM培地に懸濁し、フルオロファージライブラリー(形質導入単位(transducing unit):1×109)の一定分量と共に+4℃で4時間インキュベートした。インキュベートした細胞をウシ血清濃度勾配を用いた遠心分離に付し(Williams et al., 2002)、得られたファージ含有上清を2.5×105個のKS1767細胞にアプライし、+4℃で4時間インキュベートした。ここからサンプルを得、血清濃度勾配を用いて再び遠心分離に付し、得られた細胞のペレットをMB5F細菌を感染させるのに用いた。MB5F細菌を一晩培養し、その後、フルオロトリプトファンの存在下で一日培養した。ファージを回収し、2順目のEahy926細胞でのサブトラクションおよびKS1767細胞での選択に用いた。
合計2.5×105個のEahy926細胞(Koivunen et al., 1999a, Koivunen et al., 2001)を150μlの1%ウシ血清アルブミン含有DMEM培地に懸濁し、フルオロファージライブラリー(形質導入単位(transducing unit):1×109)の一定分量と共に+4℃で4時間インキュベートした。インキュベートした細胞をウシ血清濃度勾配を用いた遠心分離に付し(Williams et al., 2002)、得られたファージ含有上清を2.5×105個のKS1767細胞にアプライし、+4℃で4時間インキュベートした。ここからサンプルを得、血清濃度勾配を用いて再び遠心分離に付し、得られた細胞のペレットをMB5F細菌を感染させるのに用いた。MB5F細菌を一晩培養し、その後、フルオロトリプトファンの存在下で一日培養した。ファージを回収し、2順目のEahy926細胞でのサブトラクションおよびKS1767細胞での選択に用いた。
結果
インテインベクターを用いたペプチドの生合成
Ssp DnaBミニ−インテインは154個のアミノ酸のみからなり、そのC−末端に融合したタンパク質は一般的に効率よく発現されることから、ペプチド産生を行うためにC−末端開裂活性を有するこのSsp DnaBミニ−インテインを選択した。さらに、このインテインの開裂活性は、pHおよび温度条件の変化、即ち、pH8.5で4℃からpH7.0で22℃への変更によって誘導される。従って、ジスルフィド結合およびペプチドの活性に干渉すると考えられるチオールを用いて行うインテイン開裂の誘導を回避することができた。末端にシステインを有するペプチドの産生にインテインを用いることの利点の一つは、システインは触媒作用に好ましいアミノ酸であり、高開裂効率をもたらすからである(Paulus, 2000)。
本発明者らは、10個のアミノ酸残基からなるゼラチナーゼ阻害物質であり、ジスルフィド結合による環状型のみで活性であるCTTペプチドのインテインを介した産生を調べることから研究を開始した。実質的に全てのインテイン−CTT融合タンパク質は封入体で見られ、尿素で可溶化することにより回収した。このようなペプチドは、カラム上で行う開裂反応後に70〜90%の純度で得ることができた。HPLCによる最終精製後の収量は、1リットルの培養細菌あたりのペプチドが最大2mgであった。インテイン融合誘導体CTT(即ち、iCTT)は自発的に環化し、質量分析法において、ジスルフィド結合含有CTTペプチドの予想された分子量を有していた(表1)。次に、ゼラチナーゼ阻害活性に必要なアミノ酸残基を特定するために、CTTのアラニンスキャニング変異誘導法(alanine-scanning mutagenesis)を実施した。Ala−置換ペプチドがiCTTと同等の収率で得られた。質量分析法により、各環状ペプチドがどのようなペプチドであるか確認した(表1)。
ゼラチナーゼ阻害ペプチドの機能解析
iCTTのゼラチナーゼ阻害活性は、複数のアッセイにおいて化学的に合成したCTTのゼラチナーゼ阻害活性と同等であった。ゼラチン分解アッセイにおいては、iCTTおよびCTTは類似の濃度依存性を示し(図1のAを参照)、IC50値はMMP−2およびMMP−9の阻害のいずれについても20μMであった(データは示さない)。非環状の合成対照ペプチドSTT(アミノ酸配列:STTHWGFTLS)は、iCTTよりも数倍活性が低かった。
iCTTのゼラチナーゼ阻害活性は、複数のアッセイにおいて化学的に合成したCTTのゼラチナーゼ阻害活性と同等であった。ゼラチン分解アッセイにおいては、iCTTおよびCTTは類似の濃度依存性を示し(図1のAを参照)、IC50値はMMP−2およびMMP−9の阻害のいずれについても20μMであった(データは示さない)。非環状の合成対照ペプチドSTT(アミノ酸配列:STTHWGFTLS)は、iCTTよりも数倍活性が低かった。
ゼラチン分解アッセイにおけるAla−置換ペプチドの分析により、トリプトファン、グリシンおよびフェニルアラニンの置換はゼラチナーゼ阻害活性を著しく低下させることがわかった(図1のB)。野生型ペプチドに比べて、W→A、G→AおよびF→Aの置換を含む変異ペプチドのゼラチン分解阻害率はそれぞれ、17±12%、53±7%および36±7%であった。他の位置で生じている全てのAlaによる置換は、ゼラチナーゼ阻害活性に明確には影響を与えなかった。例えば、H→A置換を有するペプチドは野生型の活性の約80%を保持していた。同様の結果が、蛍光原性MMP−2基質アッセイで行ったペプチドの比較によって得られた(データは示さない)。
トリプトファン類似体を含むペプチドの生合成
インテイン発現系によってペプチド合成が可能であることを実証したので、本発明者らは、インテイン誘導ペプチドへの非天然アミノ酸の組み込みの可能性について調べた。ペプチドの活性およびおそらく安定性を高める可能性が最も高いと考えられたため、本発明者らは、CTTのただ1つのトリプトファン残基の修飾に本研究の焦点を定めた。非天然トリプトファン類似体の有効な組み込みに必要なトリプトファン要求性E. coliは、in vitroで構築したバクテリオファージMu DNA転位複合体を用いた変異誘導により調製した。ER2566/Trp82と命名したクローンを単離したところ、トリプトファンに対する栄養要求性であることがわかった。トランスポゾン挿入部位は、1,315,340〜1,315,344ヌクレオチドを重複しているゲノム上の位置に見られ、この番号は、完全にシークエンシングされたE. coliK12株に従った番号付けである。従って、Mu転位に特徴的な、正しい5塩基対からなる標的部位の重複を特定した(Lamberg et al., 2002)。挿入は、トリプトファン合成酵素のβサブユニットをコードしているtrpB遺伝子内にあり、観察された表現系と一致した。
インテイン発現系によってペプチド合成が可能であることを実証したので、本発明者らは、インテイン誘導ペプチドへの非天然アミノ酸の組み込みの可能性について調べた。ペプチドの活性およびおそらく安定性を高める可能性が最も高いと考えられたため、本発明者らは、CTTのただ1つのトリプトファン残基の修飾に本研究の焦点を定めた。非天然トリプトファン類似体の有効な組み込みに必要なトリプトファン要求性E. coliは、in vitroで構築したバクテリオファージMu DNA転位複合体を用いた変異誘導により調製した。ER2566/Trp82と命名したクローンを単離したところ、トリプトファンに対する栄養要求性であることがわかった。トランスポゾン挿入部位は、1,315,340〜1,315,344ヌクレオチドを重複しているゲノム上の位置に見られ、この番号は、完全にシークエンシングされたE. coliK12株に従った番号付けである。従って、Mu転位に特徴的な、正しい5塩基対からなる標的部位の重複を特定した(Lamberg et al., 2002)。挿入は、トリプトファン合成酵素のβサブユニットをコードしているtrpB遺伝子内にあり、観察された表現系と一致した。
Er2566/Trp82クローンは、培養細菌に添加した5−ヒドロキシトリプトファン、5−フルオロトリプトファン、6−フルオロトリプトファンまたは7−アザトリプトファンを含むCTTインテイン融合タンパク質を発現するのに用いた(図2のA)。これらのトリプトファン類似体は、これまでに、トリプトファン要求性E. coliにより合成された複数のタンパク質に組み込まれている(Minks et al., 1999; Mohammadi et al., 2001; Ross et al., 1997)。発現したインテイン融合タンパク質には7個のトリプトファン残基が存在し、そのうちの3個はキチン結合ドメインに、3個はインテインに、1個はCTTペプチドに存在する。本発明者らは4種全てのトリプトファン類似体のインテイン融合タンパク質への組み込みを観察した(図2のB)。SDS−PAGEでは、フッ素化Trp類似体を含むインテイン融合タンパク質は、正常のトリプトファンを含むタンパク質よりも早く移動した。一方、より極性の高い5OH−Trp残基および7A−Trp残基は、それを含む融合タンパク質の移動度を遅くした。野生型のタンパク質と比較すると、融合タンパク質の収率は、5OH−Trp、5F−Trpおよび6F−Trpについてはわずかに減少し、7A−Trpについては有意に減少した。注目すべきことは、5F−Trpおよび6F−Trpは、インテイン開裂活性を有意に損なうことはなく、フッ素化Trpを含むCTTペプチドは最小培地1リットルに対して約0.3mgの収量で得られた。5OH−Trp残基はインテイン開裂に影響を与え、ペプチドの収率は低下した。7A−Trp含有ペプチドは活性を測定するのに十分な量を得ることができなかった。各ペプチドが予想された非天然トリプトファン類似体を含むことを、質量分析法により確認した(表1)。野生型のCTTペプチドは、フッ素化ペプチド調製物にはごく少量しか存在せず、5OH−CTT調製物には全く検出されなかった(データは示さない)。修飾ペプチドがどのようなペプチドであるかを、紫外線吸収および蛍光分析法によりさらに確認した。5OH−Trp含有CTTペプチドは、第二吸光最大が赤色方向にずれた特徴的な吸光プロファイルを示した(図2のC)。全ての修飾ペプチドが、野生型ペプチドとは異なる蛍光発光スペクトルを示した(図2のD)。
修飾CTTペプチドのゼラチナーゼ阻害活性を、β−カゼイン分解アッセイ(図3のA)およびゼラチン分解アッセイ(データは示さない)で試験した。ゼラチナーゼ阻害活性における有意な差はこれらのアッセイでは見られなかった。100μMの濃度では、5OH−Trp、5F−Trpまたは6F−Trpを含有するペプチドは、iCTTがカゼイン分解をほぼ完全に阻害するのと同等の効率でMMP−2を阻害した。アミノ酸類似体は、ペプチドのプロテアーゼ感受性に影響するので、本発明者らは次に、正常ヒト血清中でペプチドをインキュベートすることでペプチドの安定性を調べた。ペプチドの存在量を決定するために、5F−Trp含有ペプチドも認識する抗CTT抗体を用いた。野生型CTTペプチドの半減期が0.5時間であるのに比べて、5F−Trp含有ペプチドの半減期は3時間であり、血清中でより安定であった(図3のB)。抗CTT−抗体は、血清の存在下では5OH−Trp含有ペプチドおよび6F−Trp含有ペプチドを弱くしか認識しなかったので、これらのペプチドの半減期を決定することはできなかった。抗CTT抗体は対照用の環状ペプチド(アミノ酸配列がCERGGLETSCのものとCPCFLLGCCのもの)と反応しなかったので、抗CTT抗体は非常に特異的であった。熱不活化ウシ胎児血清を10%添加した細胞培養培地では、CTTの安定性と5F−Trp含有ペプチドの安定性に有意な差は見られなかった(データは示さない)。
細胞浸潤アッセイにおいては、細胞を10%の熱不活化ウシ胎児血清の存在下で培養した場合、5F−Trp含有ペプチドおよび6F−Trp含有ペプチドはiCTTが示した活性と同程度の活性を示した(図4のA)。しかしながら、HT-1080細胞を、10%の非加熱(即ち、不活性化処理なしの)ヒト血清で培養したところ、5F−Trp含有ペプチドは、iCTTよりも有意により優れた細胞浸潤阻害剤であり(図4のB)、この結果は、血清安定性を示すデータと相関していた。6F−Trp含有ペプチドの活性は野生型ペプチドの活性と変わらなかったことから、このような効果はTrpの5位で生じたフッ素置換に特異的であった。
親水性インテインペプチドライブラリーの調製
CTTペプチドを放射性ヨードで標識するために、付加的なチロシンを含むペプチドを化学合成により調製した。CTTペプチドそのものは水溶性であるものの、付加的なチロシンを含むペプチドは水に不溶性であることが判明した。従って、水溶性のチロシン含有CTTペプチドをスクリーニングするために、インテインシステムを用いてペプチドライブラリーを調製した。ランダムなアミノ酸を含むよう設計された、極性アミノ酸をコードする縮重オリゴヌクレオチドを、チロシン含有CTTペプチドの溶解性を高める可能性があるものとして用いた。得られたライブラリーは、アミノ酸配列がGRXXYXGCTTHWGFTLC(式中、Xはいかなる親水性アミノ酸でもよい)で表されるペプチドをコードしていた。始めに、オリゴヌクレオチド: 5'-GGTGGTTGCTCTTCCAACGGCCGCCVAVVAVTATVAVGGCTGTACCACCCATTTACTTTATGTTAACTGCAGGCG-3'を設計し、そしてオリゴヌクレオチド合成装置を用いたコンビナトリアルな合成によって調製した。調製したオリゴヌクレオチドは、親水性アミノ酸をコードしている3個のVAV(式中、VはG、AまたはCを表す)コドンを含んでいた。
CTTペプチドを放射性ヨードで標識するために、付加的なチロシンを含むペプチドを化学合成により調製した。CTTペプチドそのものは水溶性であるものの、付加的なチロシンを含むペプチドは水に不溶性であることが判明した。従って、水溶性のチロシン含有CTTペプチドをスクリーニングするために、インテインシステムを用いてペプチドライブラリーを調製した。ランダムなアミノ酸を含むよう設計された、極性アミノ酸をコードする縮重オリゴヌクレオチドを、チロシン含有CTTペプチドの溶解性を高める可能性があるものとして用いた。得られたライブラリーは、アミノ酸配列がGRXXYXGCTTHWGFTLC(式中、Xはいかなる親水性アミノ酸でもよい)で表されるペプチドをコードしていた。始めに、オリゴヌクレオチド: 5'-GGTGGTTGCTCTTCCAACGGCCGCCVAVVAVTATVAVGGCTGTACCACCCATTTACTTTATGTTAACTGCAGGCG-3'を設計し、そしてオリゴヌクレオチド合成装置を用いたコンビナトリアルな合成によって調製した。調製したオリゴヌクレオチドは、親水性アミノ酸をコードしている3個のVAV(式中、VはG、AまたはCを表す)コドンを含んでいた。
オリゴヌクレオチドをPCRで二本鎖にした。PCR産物をPstIおよびSapIで消化し、消化産物を、PstIおよびSapIで消化したTWIN2インテインベクター(New England Biolabs製)でクローニングした。このようにして得られたDNA構築物を、MC1061コンピテント細胞に対してエレクトロポレーションを行い、ライブラリーを得た。得られたライブラリーは216種のCTTペプチドを含んでいた。少なくとも216種の独立したMC1061のクローンのプールからプラスミドベクターを抽出した。インテインの産生が可能なER2566細胞に対して抽出したプラスミドのエレクトロポレーションを行った。プラスミドを有している細胞を、アンピシリンを含むLB培地のプレートで培養した。10種の独立したクローンを、1つのプールに集めた。1つのプールに集められた10種のクローンを培養し、ペプチドを発現させ、キチンアフィニティーカラムおよび逆相C18カラムで精製した。ペプチドの各プールの活性を試験した。PBSへの溶解性も試験した。明確な活性および十分高い溶解性を示す2つのプールに対応するクローンを培養し、ペプチドを上述のように精製した。このようなペプチドのうちの1種(アミノ酸配列:GRENYHGCTTHWGFTLC)は、もとのペプチドに比べて水またはPBSに対して溶解性が高く、活性であった(図5)。このペプチドをコードするプラスミドをシークエンシングして、ペプチドを化学合成により合成した。
いかなるファージディスプレイペプチドもインテイン融合タンパク質として発現させうるという一般的な方法の有用性を証明するために、proMMP9に対する結合性について選択したファージ由来のペプチドを、普遍的なプライマーを用いて増幅した。ファージ選択を3順行った後にproMMP9に特異的に結合するファージクローンの挿入ペプチドを増幅し、インテインベクターにクローニングした。ペプチドを発現させ、HPLCで精製した。proMMP9に結合するファージの特異性およびそれがどのようなペプチドであるかを、ファージELISA法で確認した。インテインシステムによるペプチド発現物は、同じ挿入ペプチドを有するファージの結合しか遮断せず、他の挿入ペプチドを保持しているファージの結合と競合しなかった(図6)。
ファージ粒子へのアミノ酸類似体の組み込み
アミノ酸類似体の効率的な組み込みと共に高レベルのファージ産生を達成するために、ファージディスプレイライブラリーの調製に一般的に用いられるE. coli MC1061株に突然変異を誘導した。トリプトファンおよびメチオニンに対する栄養要求性の誘導体を、in vitroで構築したバクテリオファージMu DNA転位複合体を用いたランダム挿入変異誘導(random insertional mutagenesis)により、Lambert et al. (2002)の記載と実質的に同様の方法で単離した。親株であるMC1061株は、ファージ感染に必要なF線毛を持たないことから、E. coli NK5468株由来のF’線毛を、新たに単離した栄養要求性株に転移した。この結果、MB5Fと命名されたトリプトファン要求性株およびMB64Fと命名されたメチオニン要求性株が得られた。図7は、ペプチドディスプレイファージシステムに必要な細菌株を得るための方法を示すものである。新規な株の感染力は、K91/kan宿主に比べて約10%であるが、繊維状ファージに感染することができるので実用的である。
アミノ酸類似体の効率的な組み込みと共に高レベルのファージ産生を達成するために、ファージディスプレイライブラリーの調製に一般的に用いられるE. coli MC1061株に突然変異を誘導した。トリプトファンおよびメチオニンに対する栄養要求性の誘導体を、in vitroで構築したバクテリオファージMu DNA転位複合体を用いたランダム挿入変異誘導(random insertional mutagenesis)により、Lambert et al. (2002)の記載と実質的に同様の方法で単離した。親株であるMC1061株は、ファージ感染に必要なF線毛を持たないことから、E. coli NK5468株由来のF’線毛を、新たに単離した栄養要求性株に転移した。この結果、MB5Fと命名されたトリプトファン要求性株およびMB64Fと命名されたメチオニン要求性株が得られた。図7は、ペプチドディスプレイファージシステムに必要な細菌株を得るための方法を示すものである。新規な株の感染力は、K91/kan宿主に比べて約10%であるが、繊維状ファージに感染することができるので実用的である。
市販のトリプトファン類似体である5−ヒドロキシ−L−トリプトファン(5OH)、5−フルオロ−DL−トリプトファン(5FW)、6−フルオロ−DL−トリプトファン(6FW)およびDL−7−アザトリプトファン(7AW)を、ファージ粒子への組み込み効率について初めに試験した(図8)。トリプトファン要求性のMB5F株を、CTTHWGFTLCペプチドを保持しているfUSE5ファージに感染させた。感染した細菌を規定の培地で培養した後に、培地を、試験するアミノ酸類似体を含有する培地に変えた。対照としては、トリプトファンまたはその類似体を欠いている培地に細菌を移した。一晩培養したのち、培養上清のCTT−fUSE5ファージの力価を、E. coliK91/kanに感染させることにより測定した。5FWおよび6FWではトリプトファンとほぼ同数の感染性粒子を得た。5FWと6FWとを組み合わせたものもファージ粒子を効率的に生じた。対照的に、5OHおよび7AWはファージの製造を充分に促進しなかった(図9のA)。
メチオニン類似体であるエチオニンおよびノルロイシンの組み込み効率についても、MB64F株を用いて上記と同様に調べた。この実験では、ノルロイシン(Nle)は十分に高い効率で組み込むことができたが、エチオニン(Eth)は高い効率で組み込むことはできなかった(図9のB)。MC1061株は天然にロイシン要求性なので、ロイシン類似体であるノルバリン(Nva)および4−アザロイシン(Ale)についても調べた。しかしながら、これらの類似体を組み込むための試みは失敗に終わった(データは示さない)。
SDS−PAGEにおけるトリプトファン類似体の移動度の違いを利用して類似体の組み込み効率を測定する方法については、わずか50個のアミノ酸からなる、分子量が約5200の主要なコートタンパク質であるpVIIIの解像度が不十分であることから、組み込み効率を求めることはできなかった。フッ素化トリプトファン類似体が実際にファージ粒子に組み込まれていることを示すために、フッ素置換物はタンパク質中のトリプトファンに固有の蛍光特性を変化させるという事実を利用した。組み込まれていないフルオロトリプトファンを全て除去するために、5FWおよび6FWの存在下で培養したファージを、PEG/NaClで4回沈殿させた。このような処理により得られたファージ(2×109ファージ/ml)をSDSで変性し、その蛍光スペクトルを記録した。観察された蛍光発光は、主として主要なコートタンパク質であるpVIIIに含まれる単一のトリプトファンに由来するものであり、このコートタンパク質は、ビリオン当たり約2800コピー存在するのに対し、他のコートタンパク質は2〜5コピーしか存在しない。サンプルを295nmの波長で励起した場合には、5FW含有ファージおよび6FW含有ファージの蛍光量子収率は、これらの類似体を用いた前出のデータと一致して高度に上昇する(Minks et al., 1999)。さらに、6FW含有ファージ調製物の発光最大波長は、野生型ファージの発光最大波長が339nmであるのと比較して、6nm増加して345nmになった(図10)。これらの結果は類似体の組み込みが顕著であることを示すが、組み込みレベルの定量分析は不可能である。
非天然アミノ酸含有ファージのライブラリーを調製し、バイオパニングで使用可能であることを示すために、5FWおよび6FWを含有する、CX7C、CX8CおよびX9Cのライブラリーを調製した。これらのライブラリーは、MB5F株に野生型のCX7C、CX8CおよびX9Cのライブラリーを感染させ(Koivunen et al., 1999a; Koivunen et al., 2001)、次いでこのようなファージ感染細菌を5FWおよび6FWの存在下で培養することにより得た。KS1767ヒトカポジ肉腫細胞を認識するが内皮細胞系であるEahy926細胞を認識しないペプチドを単離するために、増幅したファージをKS1767ヒトカポジ肉腫細胞によるバイオパニングに付した。KS1767−特異的ペプチドは、Eahy926細胞に結合するペプチドのライブラリーを除いたあとに得た(図11)。バイオパニングを2順した後には、ファージは2.2倍に濃縮されており、このような結果は、化学合成培地におけるファージ粒子の形成が比較的ゆっくりとしていることを考慮すると、有意な結果である。
参考文献
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Williams, B. R.; Sharon, J. (2002), Immunol. Lett. 81, 141-148.
配列番号1〜4:
人工的な配列の説明: オリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5:
人工的な配列の説明: オリゴヌクレオチドプライマーであり、26、28、29、31、35および37番目のvは、a、cまたはgである。
配列番号6〜7:
人工的な配列の説明: オリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8〜11:
生物の種名が未知なものの説明: 未知
配列番号12〜19:
人工的な配列の説明: CTT−ペプチドのAla−置換体
配列番号20:
人工的な配列の説明: 第5残基にトリプトファン類似体を有するCTT−ペプチドであり、第5残基のXaaは、5−OH−Trp、5−F−Trpまたは6−F−Trpである。
配列番号21〜22:
人工的な配列の説明: 対照配列
配列番号23:
人工的な配列の説明: 付加的な親水性アミノ酸を有するCTT−ペプチドであり、第3、4および6残基のXaaはいかなる親水性アミノ酸でもよい。
配列番号24:
人工的な配列の説明: 付加的な親水性アミノ酸を有するCTT−ペプチド
人工的な配列の説明: オリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5:
人工的な配列の説明: オリゴヌクレオチドプライマーであり、26、28、29、31、35および37番目のvは、a、cまたはgである。
配列番号6〜7:
人工的な配列の説明: オリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8〜11:
生物の種名が未知なものの説明: 未知
配列番号12〜19:
人工的な配列の説明: CTT−ペプチドのAla−置換体
配列番号20:
人工的な配列の説明: 第5残基にトリプトファン類似体を有するCTT−ペプチドであり、第5残基のXaaは、5−OH−Trp、5−F−Trpまたは6−F−Trpである。
配列番号21〜22:
人工的な配列の説明: 対照配列
配列番号23:
人工的な配列の説明: 付加的な親水性アミノ酸を有するCTT−ペプチドであり、第3、4および6残基のXaaはいかなる親水性アミノ酸でもよい。
配列番号24:
人工的な配列の説明: 付加的な親水性アミノ酸を有するCTT−ペプチド
Claims (23)
- 下記の工程を包含することを特徴とする、少なくとも1つのジスルフィド結合を有するペプチドの製造方法。
− 目的ペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸分子を提供する工程、
− インテインとの融合体を形成するように該核酸分子を発現ベクターに組み込む工程、
− ペプチド−インテイン融合体を発現させてペプチド−インテイン融合タンパク質を得る工程、および
− 温度およびpHの変化により、得られたペプチド−インテイン融合タンパク質からペプチドの開裂を誘導する工程。 - 開裂させたペプチドをアフィニティーカラムで精製する工程をさらに包含することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 該融合体の発現を、宿主系を用いてin vivoで行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 該宿主系がEscherichia coli細胞であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
- 融合体の発現をin vitroで行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 該提供する核酸分子が合成核酸分子であり、該合成核酸分子は、目的ペプチドをコードするヌクレオチド配列および該核酸分子の発現ベクターへの組み込みを可能とする配列成分を包含することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 該提供する核酸分子が、ファージディスプレイベクターから得た核酸分子をPCRで増幅したものであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- ファージディスプレイベクターから得た核酸分子にコードされているペプチドに、アミノ酸類似体が含まれることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
- 製造するペプチドがファージディスプレイ法を用いてスクリーニングしたペプチドであり、該提供する核酸分子が、目的ペプチドをコードするヌクレオチド配列に隣接し、該ヌクレオチド配列の発現ベクターへの組み込みを可能とする配列成分を含有するオリゴヌクレオチドプライマーのペアを用いて得たPCR複製産物であることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
- 該オリゴヌクレオチドプライマーのペアが、CCT TTC TGC TCT TCC AAC GCC GAC GGG GCT 配列であるフォワードプライマー配列およびACT TTC AAC CTG CAG TTA CCC AGC GGC CCC 配列であるリバースプライマー配列からなることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
- 製造するペプチドが親水性ペプチドライブラリーを構築しており、該目的ペプチドに少なくとも1種の親水性アミノ酸を導入するために、該提供する核酸分子に親水性アミノ酸をコードするコドンが含まれることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 該製造するペプチドのアミノ酸配列が、GRENYHGCTTHWGFTLCであることを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
- 製造するペプチドが親水性ペプチドライブラリーを構築しており、該目的ペプチドの活性に影響を与えないアミノ酸残基を少なくとも1種の親水性アミノ酸で置換するために、該提供する核酸分子に親水性アミノ酸をコードするコドンが含まれることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 製造するペプチドによってペプチドのプールを構成するために、該提供する核酸分子が、それぞれ異なった目的ペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列を含有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 該ペプチドのプールから高い溶解性を示すペプチドをスクリーニングする工程をさらに包含することを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
- 該ペプチド−インテイン融合体の発現を下記の工程を包含する方法で行い、アミノ酸類似体を含むペプチド−インテイン融合タンパク質を得ることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
− 非天然アミノ酸で置換することが可能な天然アミノ酸に対する栄養要求性を有する宿主細胞を提供する工程、および
− 該宿主細胞内において、非天然アミノ酸であるアミノ酸類似体の存在下、該ペプチド−インテイン融合体を発現させる工程。 - 該製造するペプチドのアミノ酸配列が、CTTH(5−フルオロ−W)GFTLCであることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
- 該製造するペプチドのアミノ酸配列が、CTTH(6−フルオロ−W)GFTLCであることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
- CTTH(5−フルオロ−W)GFTLCで表されるアミノ酸配列からなる、高い血清安定性を示すペプチド。
- GRENYHGCTTHWGFTLCで表されるアミノ酸配列からなる、高い水溶性を示すペプチド。
- CTTH(5−フルオロ−W)GFTLCで表されるアミノ酸配列からなる、請求項16の方法で得られるペプチド。
- GRENYHGCTTHWGFTLCで表されるアミノ酸配列からなる、請求項11の方法で得られるペプチド。
- 下記の工程を包含することを特徴とする、非天然アミノ酸を含むペプチドの製造方法。
− 栄養要求性宿主を用いて、アミノ酸類似体含有ペプチドのライブラリーをファージに発現させる工程、
− 栄養要求性宿主内のファージに提示されているアミノ酸類似体含有ペプチドから目的ペプチドを選択する工程、
− 該目的ペプチドをコードする核酸分子をインテインベクターに導入する工程、および
− 請求項16に記載の工程に従って、該目的ペプチドをコードする核酸分子を発現させる工程。
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