JP2006512060A - ヒト幹細胞の材料および方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、哺乳動物の末梢血から単離された単球由来成人幹細胞(MDSC)並びにMDSCを含む医薬組成物、医薬組成物を含むキット、およびMDSCまたはその分化誘導体の調製、増殖、使用方法を提供する。これらの生物学的試料の使用には、疾患または病気を治療する方法およびそのような疾患または病気に関連する症状を改善する方法が含まれる。

Description

本件出願は2002年11月7日出願の米国仮出願60/424,442号の利益を要求し、その全体を本明細書に援用する。
政府の所有
米国政府は、国立癌研究所の付与番号1 R01 CA 80826-01号に従って本発明についての権利を有する。
技術分野
本発明は概して、培養末梢血単球のサブセットから得た成人幹細胞を単離し、培養し、増殖させ、および分化させる方法に関する。
背景
多能性幹細胞は、研究、創薬、および治療処置(移植を含む)における貴重な試料である(Lovell-Badge, Nature, 414:88-91 (2001); Donovan et al., Nature, 414, 92-97 (2001); Griffith et al., Science, 295:1009-1014 (2002); Weissman, N. Engl. J. Med., 346:1576-1579 (2002))。これらの細胞またはその成熟した子孫は、分化過程を制御するシグナリングイベントの研究、薬剤の系譜特異的な有益な効果または細胞毒性効果の同定および試験、または病気もしくは環境影響によって損傷を受けた組織の交換に使用し得る。しかしながら、多能性幹細胞の生物学および医薬展望の現況には障害または論争が存在する。
インビトロで受精させた卵子由来の胎児、臍帯、または胚組織からの多能性幹細胞の使用は、それがヒトの材料の場合には倫理上および法律上の問題が持ち上がり、感染症の感染のリスクをもたらし、および/または免疫拒絶反応のために効果が無い可能性がある。特に、胚幹細胞には数々の不利益な点がある。例えば、胚幹細胞は、特定の病気の治療に必要な細胞種になるまでにいくつかの中間ステージを経なければならない可能性がある。加えて、特殊化した細胞の免疫プロファイルが移植者のそれと異なる可能性があるため、胚幹細胞が移植者の免疫系に拒絶され得る。
これらの問題点を回避する1つの方法は、好ましくは末梢血などの容易に入手し得る組織に由来する自家幹細胞を使用することである。これに関連して、骨髄が血液以外の細胞系譜に属する成熟細胞に分化転換する能力を持つと思われる細胞を含むことが報告されている(Laggase et al., Nature Med., 6:1229-1234 (2000); Orlic et al., Nature, 410:640-641 (2001); Korbling, et al. N. Engl. J. Med., 346:738-746 (2002))。しかしながら、最近の研究はそのような分化転換の存在に疑問を呈しており、新生の成熟細胞は幹細胞が体内にある組織細胞と融合したことに起因するものである可能性を指摘している(Terada, et al., Nature, 416,:542-545 (2002); Ying et al., Nature, 416:545-548 (2002))。さらなる懸案事項は、多くの場合骨髄サンプルの取得は苦痛かつ煩わしい操作であることである。
別の研究において、Jiang等はラット、マウス、およびヒトの骨髄由来の間葉細胞培養に含まれる細胞が様々な細胞系譜に分化する能力を持つことを観察した(Jiang et al., Nature 418:41-49 (2002))。しかしながら同様に、これらの細胞はこれらげっ歯類の比較的到達しにくい骨髄の中に位置しており、そのことがこれらの細胞の単離および使用をより困難かつ高価な方法としている。
従って、様々な用途に適した細胞種の開発のために、比較的到達しやすい成人幹細胞、特にヒト成人幹細胞を単離し、培養し、維持し、増殖させ、および分化させることが当該技術分野に必要とされている。そのような方法として、病気の治療および病気の症状の改善のための自家幹細胞の使用が挙げられる。
発明の要約
本発明は、概して、多能性の単球由来幹細胞(MDSC)並びにそのような細胞を含む医薬組成物、そのような細胞を調製および維持する方法、そのような細胞を増殖させる方法、そのような細胞を分化させる方法、非終末分化(non-terminally differentiated)細胞を増殖させる方法、およびMDSCとその分化した細胞を含む群からの細胞を使用する方法を提供して、病気もしくは疾患を治療し、または病気もしくは疾患に関連する症状を改善することにより、当該技術分野に存在する上記の要求を解決する。本発明のMDSCは末梢血に見られ、ほとんどの生物体から得ることが可能な多能性幹細胞の費用効率的な試料を提供する。注目すべきことに、これらのMDSCは容易に増殖させることができる。このような細胞は典型的にはほとんどの生物体から得ることが可能であるため、自家MDSCも同様に必要時または所望時に得ることができる。さらには、本発明のMDSCは多能性幹細胞として広範な疾患および病気の治療、並びにこれらの病気または疾患の1つ以上に関連する症状の改善に適している。
1つの態様において、本発明は単離された単球由来幹細胞(MDSC)を調製する方法を提供し、該方法は:末梢血単球(PBM)を単離する工程;PBMを、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-6(IL-6)、および白血病抑制因子(LIF)からなる群より選択される効果的な量の有糸分裂促進化合物に接触させる工程;および、該細胞の増殖に適した条件下でPBMを培養し、それにより単離MDSCの調製物を得る工程を含む。PBMは好ましくは哺乳動物、ヒト、または成人ヒトのPBMである。1つの実施態様においては、PBMは有糸分裂促進化合物と接触させる前に低温保存される。関連する本発明の態様においては、単離MDSCは低温保存される。
関連する別の側面において、本発明は上述の方法により得られた単離MDSCを包含する。本発明のMDSCは明確な表現型を持つため、MDSCは少なくとも1つの具体的かつ特徴的な活性を持つことが本発明から予想される。例えば、本発明のMDSCは少なくと1つの明確な細胞表面マーカー(MAC-1、CD14、CD34、CD40、およびCD45)を示し、またはIL-1β、IL-6、およびIL-12 p70からなる群より選択される少なくとも1つのサイトカインを生産し、または食作用活性を示し、またはリンパ球活性化活性を示し、またはトリプシン、EDTA、およびディスパーゼのいずれか1つによる分散に耐性を示し、またはリドカインによる分散に感受性を示す。好ましくは、本発明の単離MDSCは食作用活性を示す。同じく好ましいのは、上記の1つ以上の細胞表面マーカーを示し、上記のサイトカインの1つを生産し、食作用活性を示し、リンパ球活性化活性を示し、トリプシン、EDTA、またはディスパーゼによる分散への耐性を示し、およびリドカインによる分散への感受性を示す単離MDSCである。
様々な細胞表面抗原を示す単離MDSCが本発明において企図される。本発明の1つの態様において、MAC-1、CD14、CD34、CD40、およびCD45からなる群より選択される表面抗原を示す単離MDSCを提供する。好ましくは、本発明はCD1aおよびCD83からなる群より選択される表面抗原を示さない単離MDSCを提供する。
本発明のこの態様の1つの実施態様において、IL-1β、IL-6、およびIL-12 p70からなる群より選択されるサイトカインを生産する単離MDSCを提供する。別の実施態様において、本発明は食作用活性を示す単離MDSCを提供する。
別の実施態様において、本発明のMDSCはトリプシン、EDTA、およびディスパーゼからなる群より選択される薬剤による分散に耐性を有する。さらに別の実施態様において、本発明のMDSCはリドカインによる処理に続く分散に感受性を有する。もちろん本発明のMDSCはリドカインによる分散に感受性を有するとともに、トリプシン、EDTA、およびディスパーゼによる分散に耐性を有し得る。
また本発明は単離MDSCを包含し、ここで該細胞は成人ヒト細胞であり;MAC-1、CD14、CD34、CD40、およびC45からなる群より選択される表面抗原を示し;IL-1β、IL-6、およびIL-12 p70からなる群より選択されるサイトカインを生産し;トリプシン、EDTA、およびディスパーゼからなる群より選択される薬剤による分散に耐性を有し;かつ食作用活性を示す。
本発明の別の態様においては、分化した細胞を産生する方法を提供し、ここで該方法は、MDSCを単離する工程および該細胞を該細胞の分化を誘導するのに効果的な量の誘導物質と接触させる工程を含む。好ましくは、分化した細胞は、該細胞を維持し、および/または増殖させるための条件下で培養される。本発明のMDSCは好ましくはヒトMDSCまたは成人ヒトMDSCである。関連する態様において、本発明はMDSCおよび/または分化した細胞の低温保存を企図する。
本発明の関連する態様は細胞種に特異的な治療薬剤を同定する方法を提供し、ここで該方法は、候補の治療薬剤を分化細胞を産生する上記方法に従って得た第一の分化細胞と接触させる工程、該候補の治療薬剤を分化細胞を産生する上記方法に従って得た第二の分化細胞とさらに接触させる工程、ここで該第一および第二の分化細胞は異なる細胞種である、および、第一の分化細胞の生存能力と第二の分化細胞の生存能力を比較して測定する工程、ここで生存能力の差により、候補の治療薬剤を細胞種特異的な治療薬剤として特定する。
本発明の範囲を提示されれば、当業者は、様々な特定の細胞種および組織種の産生、維持、および/または増殖に用いられる様々な成長因子および分化因子並びに方法が本明細書に説明するMDSCを維持し、増殖させ、および/または分化させることに使用し得ることを容易に理解する。特に、本発明は神経細胞を産生し、維持し、および/または増殖させる方法を企図し、ここで該方法は、MDSCを単離する工程;該MDSCを、MDSCの神経細胞への分化を誘導するのに効果的な量の神経成長因子(bNGF)などの神経細胞誘導物質と接触させる工程;および該神経細胞を該神経細胞の維持および/または増殖に適した条件下で培養する工程を含む。
本発明の別の態様において、内皮細胞を産生し、維持し、および/または増殖させる方法を提供し、ここで該方法は、MDSCを単離する工程;該MDSCを、MDSCの内皮細胞への分化を誘導するのに効果的な量の血管内皮成長因子(VEGF)などの内皮細胞誘導物質と接触させる工程;および該内皮細胞を該内皮細胞の維持および/または増殖に適した条件下で培養する工程を含む。
本発明の別の態様において、上皮細胞を産生し、維持し、および/または増殖させる方法を提供し、ここで該方法は、MDSCを単離する工程;該MDSCを、MDSCの上皮細胞への分化を誘導するのに効果的な量の表皮成長因子(EGF)などの上皮細胞誘導物質と接触させる工程;および該上皮細胞を該上皮細胞の維持および/または増殖に適した条件下で培養する工程を含む。
本発明のさらなる別の態様において、T-リンパ球を産生し、維持し、および/または増殖させる方法を提供し、ここで該方法は、MDSCを単離する工程;該MDSCを、MDSCのT-リンパ球への分化を誘導するのに効果的な量のインターロイキン-2(IL-2)などのT-リンパ球誘導物質と接触させる工程;および該T-リンパ球を該T-リンパ球の維持および/または増殖に適した条件下で培養する工程を含む。
本発明のさらなる別の態様において、マクロファージを産生し、維持し、および/または増殖させる方法を提供し、ここで該方法は、MDSCを単離する工程;該MDSCを、MDSCのマクロファージへの分化を誘導するのに効果的な量のリポ多糖類(LPS)などのマクロファージ誘導物質と接触させる工程;および該マクロファージを該マクロファージの維持および/または増殖に適した条件下で培養する工程を含む。
本発明のさらなる態様において、肝細胞を産生し、維持し、および/または増殖させる方法を提供し、ここで該方法は、MDSCを単離する工程;該MDSCを、MDSCの肝細胞への分化を誘導するのに効果的な量の肝細胞成長因子(HGF)などの肝細胞誘導物質と接触させる工程;および該肝細胞を該肝細胞の維持および/または増殖に適した条件下で培養する工程を含む。
好ましくは、本発明のMDSCは哺乳動物試料から単離する。本発明のMDSCのために同じく好ましいのはヒトおよび成人ヒトの試料である。
本発明はさらに、様々な病気および疾患の治療のための単離MDSCの使用を企図する。細胞ベースの治療が可能な疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、老人性痴呆症、多発性硬化症、例えば現在時刻、日付、居場所、または自己認識の混乱、および/または近時記憶喪失として現れた変化などの加齢中枢神経系(CNS)疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)痴呆症、血栓による脳損傷、血液供給障害、嚢腫の形成または存在、自己免疫疾患、例えば脳における細菌感染(膿瘍を含み得る)、例えば脳におけるウィルス感染、脳腫瘍、発作疾患、神経外傷(neural trauma)、外科的切開、糖尿病性潰瘍、血友病性潰瘍(hemophiliac ulcer)、静脈瘤性潰瘍、充実性血管腫、白血病、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、リウマチ様関節炎、乾癬、糖尿病性網膜症、若年性黄斑変性の網膜症、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス、オスラー-ウェーバー症候群、心筋脈管形成視覚消失症(myocardial angiogenesis blindness)、隆起病変血管新生(plaque neovascularization)、毛細血管拡張症、血友病性関節症、血管線維腫、傷害肉芽形成(wound granulation)、上皮細胞腫瘍、クローン病、化学-、熱-、感染-、または自己免疫-誘導性腸管損傷、化学-、熱-、感染-、または自己免疫-誘導性皮膚損傷、全身性エリテマトーデス、AIDS、反応性関節炎、ライム病、インスリン依存性糖尿病、臓器特異的自己免疫疾患、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、消化管アレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、寄生虫感染、結節癩、糖尿病、ゴーシェ病、ニーマン-ピック病、寄生生物感染症、癌、免疫系疾患、化学(薬剤およびアルコールを含む)-、物質-、感染-、または自己免疫-誘導性肝細胞毒性症(hepatotoxicity)、肝臓癌、転移性癌に誘導された肝臓損傷、および肝血栓が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明によれば、MDSCは好ましくは治療を受ける生物体から単離する(即ちそれは自家MDSCである)。好ましくは疾患の治療に使用されるMDSCは哺乳動物、ヒト、または成人ヒトの試料から得る。
本発明はさらに、本明細書に説明される方法に従って様々な病気を治療するのにも有用である。本発明の1つの態様は、細胞ベースの治療が可能な神経細胞疾患を治療する方法を提供し、ここで該方法は本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の神経細胞を投与する工程を含む。細胞ベースの治療が可能な神経細胞疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、老人性痴呆症、多発性硬化症、例えば現在時刻、日付、居場所、または自己認識の混乱、および/または近時記憶喪失として現れた変化などの加齢中枢神経系(CNS)疾患、AIDS痴呆症、血栓による脳損傷、血液供給障害、嚢腫の形成または存在、自己免疫疾患、膿瘍を含む細菌感染、例えば脳におけるウィルス感染、脳腫瘍、発作疾患、および神経外傷(neural trauma)が挙げられるが、これらに限定されない。さらには、本発明のMDSCから得た神経細胞は、上述した通りの細胞ベースの治療が可能な神経疾患と関連した病状の改善にも使用し得ることが企図され、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の神経細胞を投与する工程を含む。そのような疾患と関連した症状は当該技術分野においてよく知られている。
本発明の別の態様は、細胞ベースの治療が可能な内皮細胞障害を治療する方法に及び、ここで該方法は、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の内皮細胞を投与する工程を含む。細胞ベースの治療が可能な内皮細胞障害としては、外科的切開、糖尿病性潰瘍、血友病性潰瘍(hemophiliac ulcer)、静脈瘤性潰瘍、充実性血管腫、白血病、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、リウマチ様関節炎、乾癬、糖尿病性網膜症、若年性黄斑変性の網膜症、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス、オスラー-ウェーバー症候群、心筋脈管形成視覚消失症(myocardial angiogenesis blindness)、隆起病変血管新生(plaque neovascularization)、毛細血管拡張症、血友病性関節症(hemophiliac joint)、血管線維腫、および傷害肉芽形成(wound granulation)が挙げられるが、これらに限定されない。さらには、本発明のMDSCから得た内皮細胞は、上述した通りの細胞ベースの治療が可能な疾患と関連した病状の改善にも使用し得ることが企図され、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の内皮細胞を投与する工程を含む。そのような疾患と関連した症状は当該技術分野においてよく知られている。
本発明のさらなる別の態様は、細胞ベースの治療が可能な上皮細胞障害を治療する方法を提供し、ここで該方法は本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の上皮細胞を投与する工程を含む。細胞ベースの治療が可能な上皮細胞障害としては、上皮細胞腫瘍、クローン病、化学-、熱-、感染-、または自己免疫-誘導性腸管損傷、または化学-、熱-、感染-、および自己免疫-誘導性皮膚損傷が挙げられるが、これらに限定されない。さらには、本発明のMDSCから得た上皮細胞は、細胞ベースの治療が可能な疾患と関連した病状の改善にも使用し得ることが企図され、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の上皮細胞を投与する工程を含む。そのような疾患と関連した症状は当該技術分野においてよく知られている。
本発明はさらに、細胞ベースの治療が可能なT-リンパ球疾患を治療する方法を包含し、ここで該方法は、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量のT-リンパ球を投与する工程を含む。細胞ベースの治療が可能なT-リンパ球疾患としては、白血病、全身性エリテマトーデス、AIDS、クローン病、反応性関節炎、ライム病、インスリン依存性糖尿病、臓器特異的自己免疫疾患、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、消化管アレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、寄生虫感染、ウィルス感染、細菌感染、および結節癩が挙げられるが、これらに限定されない。さらには、本発明のMDSCから得たT-リンパ球は、細胞ベースの治療が可能な疾患と関連した病状の改善にも使用し得ることが予期され、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量のT-リンパ球を投与する工程を含む。そのような疾患と関連した症状は当該技術分野においてよく知られている。
本発明のさらなる別の態様は、細胞ベースの治療が可能なマクロファージ細胞疾患を治療する方法を提供し、ここで該方法は、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量のマクロファージを投与する工程を含む。細胞ベースの治療が可能なマクロファージ細胞疾患としては、糖尿病、ゴーシェ病、ニーマン-ピック病、細菌感染、寄生生物感染症、癌、白血病、および免疫系の疾患が挙げられるが、これらに限定されない。さらには、本発明のMDSCから得たマクロファージは、細胞ベースの治療が可能な疾患と関連した病状の改善にも使用し得ることが企図され、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量のマクロファージを投与する工程を含む。そのような疾患と関連した症状は当該技術分野においてよく知られている。
さらなる態様において、本発明は細胞ベースの治療が可能な肝細胞疾患を治療する方法を提供し、ここで該方法は、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の肝細胞を投与する工程を含む。細胞ベースの治療が可能な肝細胞疾患としては、化学(薬剤およびアルコールを含む)-、物質-、感染-、または自己免疫-誘導性肝細胞毒性症(hepatotoxicity)、肝臓癌、転移性癌に誘導された肝臓損傷、全身性エリテマトーデス、AIDS、ニーマン-ピック病、癌、および肝血栓が挙げられるが、これらに限定されない。さらには、本発明のMDSCから得た肝細胞は、細胞ベースの治療が可能な疾患と関連した病状の改善にも使用し得ることが企図され、本明細書に説明される方法によって得た医薬的に効果的な量の肝細胞を投与する工程を含む。そのような疾患と関連した症状は当該技術分野においてよく知られている。
本発明の1つ以上の細胞種(例えばMDSC並びにその非終末分化細胞および終末分化細胞)の投与が、病気もしくは疾患の治療またはそのような病気もしくは疾患と関連した症状の改善に使用し得ることがさらに企図される。
医薬組成物もまた企図される。好ましくは、本発明の医薬組成物は、MDSCおよび医薬的に許容される希釈剤、担体、または培地を含む。本発明はさらに、本発明の医薬組成物を含むキットを企図する。
本発明の他の特徴および利点は、後述の図面の簡単な説明および詳細な説明を参照してよりよく理解される。
発明の詳細な説明
本発明は、末梢血試料由来の多能性成人幹細胞並びにそのような細胞を培養し、増殖させ、および/または分化させる方法を提供する。本発明はまた、広範ないかなる疾患または病気の治療、またはそのような疾患または病気の1つ以上の少なくとも1つの症状の改善のためのそのような細胞の使用方法を提供する。本発明の多能性成人幹細胞は単球のサブセットであり、好ましくはヒト、家畜、またはペットから得る。このサブセットの細胞は本明細書において単球由来幹細胞(MDSC)と記載される。本明細書に提供する実施例は、MDSCがマクロファージ、T-リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、または肝細胞などの様々な非終末分化細胞または終末分化細胞に分化するように(即ちそのような細胞の表現型の特徴を獲得するように)誘導され得ることを示す。
本発明の1つの利点は、自家のMDSCおよび/またはそこから分化した細胞を、そのような細胞が必要な患者に投与し得る能力である。自家MDSCまたはその子孫の使用は免疫拒絶反応および病気の感染のリスクを減らす。さらには、自家MDSCを増殖させ、それによりそれらの細胞を有用な量生産するという能力によって、MDSC投与に基づく治療が可能な疾患および病気の数および種類(並びにMDSC投与に基づいて改善し得るそれら疾患および病気の症状の数および種類)が増えることが期待される。従って、本発明の方法はそのような細胞を増大させること(expansion)を伴わない現在の方法よりもより効果的および用途が広いことが見込まれる。投与量および投与方法は当業者が決まりきった最適化以上のものを要することなく容易に決定でき、その努力は投与される細胞の種類(MDSCおよび/またはその誘導体)によって導かれる。従って、MDSCを保管し、増殖させ、および分化させる能力は、それらを自家投与にとって非常に貴重なものとする。
本発明の利点としては、自家MDSCを含むMDSCの簡便な試料としての末梢血の使用が挙げられ、それは安全かつ安価に得ることができる。さらには、末梢血は容易に更新可能(renewable)であり、かつ、自家もしくは他家の多能性幹細胞の試料を連続的に提供し得ることが当技術分野において広く理解される。本発明のさらなる利点は、MDSCの調製のための血液試料が成人試料であってもよいことである。そのため、論議対象である胚幹細胞のサンプリングを避けることができる。さらには、成人血液試料は、MDSCまたはMDSC由来の細胞の投与を必要とするまさにその患者のものであり得る。本発明をよりよく理解するために以下の定義を提供する。
“成人”または“成人ヒト”は、当業者に理解されるであろう通り、年齢に関係なく、成熟ヒトまたは成熟ヒト細胞などの成熟生物体または成熟細胞を意味する。
“幹細胞”という用語は、様々な細胞種に分化する能力を持ついかなる細胞をも意味し、終末分化した細胞種を含む。従って、そのような細胞は前駆細胞と適切に理解される。幹細胞は多能性、即ち複数の細胞種に分化する能力を有し得る。
本明細書に定義されるように、“単離された”という用語は、その自然の環境、典型的には哺乳動物の体から取り出された細胞のことを意味する。好ましくは、単離された細胞は、サンプルが同種または実質的に同種の細胞種からなるように他の細胞種から分離される。具体例として、血液細胞単球は、それが生物体から取り出された血液のサンプル中に含まれる場合に単離されたと言える。
“単球由来幹細胞”または“MDSC”は、血液の単球画分から得た幹細胞を意味する。“末梢血単球”または“PBM”は、哺乳動物などの脊椎動物の末梢血に典型的に見られる単球細胞を意味する。これらの定義は、当技術分野におけるこれらの細胞ベースの用語の通常かつ慣習の意味と一致する。
“表面抗原”は、抗体に結合する能力を持ち、かつ、細胞膜との結合などによって典型的に細胞表面に位置する化合物、典型的にはタンパク質化合物を意味する。“含脂肪細胞マーカー”などの細胞“マーカー”は、含脂肪細胞などの細胞に、その細胞または細胞種の特性として十分に結合した検出可能な構成分子(element)を意味する。有用なマーカーの1つのクラスは細胞表面マーカーであり、細胞活動への影響を最小限にして検出可能である。
細胞ベースの“活性”は、任意の細胞または細胞種の機能を意味する。有用な活性の1つのカテゴリーは、任意の細胞または細胞種と他の細胞または細胞種とを区別するのに有用な活性である。例えば、マクロファージの活性は食作用であり、マクロファージに独特の特徴である。
“サイトカイン”は、免疫反応などの細胞反応の誘発において細胞間媒介物質として機能する、免疫系から通常放出される調節タンパク質という通常かつ慣習の意味が与えられる。サイトカインの例としてインターロイキンおよびリンフォカインが挙げられる。
“分散(dispersion)”は、分解(dissolution)、即ちばらばらになること(loosen)または分離(dissociate)を意味する。本明細書において使用されるように、分散は、溶解することまたはその溶液を形成することに限定されない。本発明の文脈においては細胞間、または細胞と固体表面の分離であり、ここで該固体表面は典型的には細胞培養または細胞増殖の間に細胞に利用可能である。
“脊椎動物”は、脊椎から作られた骨性もしくは軟骨性の背骨を持つことにより適切に特徴づけられるあらゆる生物体であるという通常かつ慣習の意味が与えられる。同様に、“哺乳動物”という用語は、本明細書に定義されるように、単孔類を含む有袋類および有胎盤類の両方のあらゆる脊椎動物を意味し、ここで該哺乳動物はその子供に授乳し、かつ、生きている子供を産むか(真獣類または胎盤哺乳類)卵を産むか(後獣類または非胎盤哺乳動物)のいずれかである。哺乳動物種の例としては、霊長類(例えばヒト、サル、チンパジー、ヒヒ)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、テンジクネズミ、ハムスター、ウサギ)、反芻動物(例えばウシ、ウマ、ヒツジ)、イヌ科(例えばイヌ、オオカミ)およびネコ科(例えばライオン、トラ、ネコ)が挙げられる。
成長、増殖、または培養のための“適した条件”とは、温度、湿度、酸素圧力、培地成分濃度、インキュベーション時間、および、細胞と成長因子の相対濃度が、子孫の産生または細胞生存能力の維持に適合する値であることを意味する。細胞の成長または培養に関与する各変数は当技術分野においてよく知られており、かつ、一般に、適切な値の範囲は決まりきった実験を行って結果に影響する各変数を最適化することにより得ることができる。
“成長”という用語は、細胞の数および/または大きさの拡大という通常かつ慣習の意味が与えられる。従って、“成長因子”という用語は、本明細書に定義される通り、細胞成長を誘導したりその速度を変更したりする能力を持つ化合物を意味する。
細胞“培養”は、細胞の成長またはその生存能力の維持に典型的に適合する場所および成長条件を与えられた、定義された範囲内の1つ以上の細胞のことである。同様に、動詞として使用される“培養”という用語は、細胞の成長またはその生存能力の維持に適合する場所および成長条件を提供するプロセスを意味する。
“増殖”という用語は、細胞成長のプロセスを意味する。“有糸分裂促進化合物”は、少なくとも1つのセットの成長または培養に適した条件下にある少なくとも1つの細胞種に対して、細胞分裂の速度に影響を与える能力を持つ化合物のことである。
“細胞ベースの治療が可能な疾患”という語句は、自家または他家を問わず移植者に細胞を投与することによって、それを全体的または部分的に治療し得るような疾患を意味する。この定義はさらに、有効細胞(effective cell)の不足(例えば細胞数の不足または健康な細胞の数の不足)を特徴とする疾患、さらには、異常細胞外シグナルに起因する疾患であって、投与細胞がそのシグナルのレベルを調節/影響することができる上記疾患をも包含する。そのため、この定義は、細胞を物理的に再供給すること、および/または、投与細胞の生理機能を活かして細胞外シグナルを健康な個体のそれに特徴的なレベルまたはそれに近いレベルに回復させることを包含する。
“分化”という用語は、細胞が、異種の、かつ、表現型が明確な細胞種へ変化するプロセスの、通常かつ慣習の意味が与えられる。“分化誘導物質”は、細胞分化のプロセスの直接的または間接的な原因物質である化合物のことである。この定義を使用すれば、“分化誘導物質”は分化に必須ではない。
“誘導物質”は、分化誘導物質、即ち少なくとも1種類の細胞分化を導き、円滑にし、または促進する能力を持つ物質のことである。
“加齢CNS変化”は、現在時刻、現在の日付、現在の居場所、自己認識、近時記憶喪失、またはよく知られかつヒトの精神状態を評価するための基準を提供する1つ以上の他の一般事実に関する混乱により現れた中枢神経系の交替または変化を意味する。
“効果的な”または“医薬的に効果的な”量とは、所望の効果、例えば医薬的効果に結びつく量のことである。本発明の文脈において典型的には、従来の技術により投与された場合に疾患もしくは病気またはそれに関連する症状に対して利益的な効果が得られ、かつ、動物またはヒト患者の健康または安寧に対して容認できない程有害な効果を起こさないようなMDSC(および/または分化したMDSC誘導体)の量または数のことである。例としては、効果的な量とは、PBM増殖、特にMDSC増殖を引き起こし、好ましくはそのような培養においてMDSCの相対貢献度を増やすM-CSFの量のことである。例として、医薬的に効果的な量とはアルツハイマー病の症状を改善するようなMDSC由来の神経細胞の量のことである。
“生存能力”は、生存、成長、または発生のための能力により特徴付けられる状態という、通常かつ慣習の意味が与えられる。文脈において、“生存能力”とは細胞の状態を意味する。生存能力の指標としては、細胞の絶対数もしくは相対数の測定、または、当技術分野において細胞の健康の指標であると理解される細胞の特徴もしくは特性のいずれか1つ以上を使用して行う1つ以上の細胞の絶対的もしくは相対的健康の評価が挙げられるが、これらに限定されない。
以上の定義を考慮すると、当業者は本発明が単離MDSCを調製する方法を提供することを理解し、ここで該方法は(a) 末梢血単球(PBM)を単離する工程、(b) 該PBMをマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-6(IL-6)、および白血病抑制因子(LIF)からなる群より選択される効果的な量の有糸分裂促進化合物と接触させる工程、および、(c) 該PBMを、前記細胞の増殖に適した条件下で培養し、それにより単離MDSCの調製物を得る工程を含む。
本発明の1つの態様に従って単離されたPBMを、効果的な量のM-CSF(25-200ng/ml)、IL-6(10-50ng/ml)、またはLIF(100-2000units/ml)と共にインキュベートする。好ましくは、培養ヒトPBMの調製物の処理には50ng/mlのM-CSF、20ng/mlのIL-6、または1000units/mlのLIFが使用される。
本発明に使用されるM-CSF、IL-6、またはLIFは、天然または合成試料などのいかなる適切な試料からのものでもよく、精製状態または非精製状態で使用し得る。さらには、M-CSF、IL-6、またはLIFは、ホロタンパク質またはPBMに対して有糸分裂促進効果を示す活性サブユニットもしくはフラグメントであり得ることが企図される。同様に、M-CSF、IL-6、またはLIFは、適切なバッファーなどに入れて単独で、または(たとえば他の有糸分裂促進物質と)組み合わせて使用してもよい。従来のアッセイを使用して十分な有糸分裂促進効果と関連するM-CSF、IL-6、またはLIFの量および投与量を決定してもよい。
本発明の方法によれば、PBMはMDSCを増殖させるのに適した成長条件下で1つ以上の成長因子(即ち有糸分裂促進化合物)と共にインキュベートされる。同様に、本発明のMDSCは、1つ以上の様々な分化誘導物質(即ち、誘導物質)および必要により1つ以上の成長因子と共に、様々な細胞種の分化および必要により増殖を可能とする適切な条件下でインキュベートされる。当業者が認識するように、成長因子および分化誘導物質の両方として機能する既知の化合物が存在する。本発明の成長因子としては、マクロファージ-コロニー刺激成長因子(M-CSF)、インターロイキン-6(IL-6)、および白血病抑制因子(LIF)が挙げられるが、これらに限定されない。成長因子および/または分化誘導物質として機能する化合物の例としては、リポ多糖類(LPS)、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)、肝細胞成長因子、ヒト組換えインターロイキン-2(IL-2)、IL-3、表皮成長因子(EGF)、b-神経成長因子(NGF)、組換えヒト血管内皮細胞成長因子165アイソフォーム(VEGF)、および肝細胞成長因子(HGF)が挙げられるが、これらに限定されない。成長因子および/または分化因子によるMDSCの分化の誘導に有用な投与量は:LPSについては0.5-1.0μg/ml(好ましくは1.0μg/ml)、PMAについては1-160nM(好ましくは3nM)、IL-2については500-2400units/ml(好ましくは1200units/ml)、bNGFについては50-1,600ng/ml(好ましくは200ng/ml)、VEGFについては12.5-100ng/ml(好ましくは50ng/ml)、EGFについては10-200ng/ml(好ましくは100ng/ml)、そしてHGFについては25-200ng/ml(好ましくは50ng/ml)である。
細胞表面抗原および細胞マーカーは、免疫染色などの当技術分野に知られるいかなる技術を使用して同定してもよい。表面抗原およびマーカーのうち、単独でまたは組み合わされて、本発明の細胞に特徴的なもとのしては、MAC-1、CD14、CD34、CD40、およびC45が挙げられ、一方、CD1aおよびCD83は特性として本発明の細胞に関連していない。例として、細胞表面抗原またはマーカーは細胞またはガラススライドを使用して同定し、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、そしてPBS中の4%ホルムアルデヒドで20℃、20分で固定して免疫染色した。細胞内タンパク質については、細胞を0.5%のTriton X-100と共に20℃で5分間処理して浸透化し、そして一次抗体と共に1時間インキュベートした。一次抗体を1%BSAを含むPBSで希釈して非特異的反応をブロックした。次いで、該細胞を1%BSAを含むPBSで3回洗浄し、FITC-、TRITC-、またはCyS-複合交差吸収ロバ二次抗体(Jackson ImmunoResearch, ペンシルバニア州West Grove)と共に45分間インキュベートした。これら両反応は飽和濃度、4℃において行った。次いで、スライドを洗浄し、そしてリン酸緩衝ゲルバトール(gelvatol)をマウントした。
蛍光イメージングを使用して細胞をモニターまたは検出してもよく、それは当技術分野に知られる技術を使用して行われる。例えば、蛍光イメージングには自動励起/発光フィルターホイール、クアッドパスキューブ(quad-pass cube)、およびSlideBookソフトウェアを使用し得る。グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ免疫蛍光(ヒツジポリクローナル抗体, Cortex Biochem., カリフォルニア州San Leonardo)を内部標準として使用して定量的蛍光比率イメージングを行ってもよい。サンプルをアイソタイプのマッチしたIgG抗体と反応させた後に検出される蛍光強度レベルはバックグラウンドの蛍光レベルを提供し、それは主に非特異的結合によるものである。この蛍光強度を任意数値である強度レベル1とした。
本発明における使用を企図した抗体としては、IL-1β、IL-6、IL-10、CD14、CD34、CD40、CD45、HLA-DR、HLA-DQ、CD1a、CD83、フォンビルブランド因子(vWF)、ケラチン(Pan Ab-1)、サイトケラチン7、α-フェトプロテイン(AFP)、微小管関連タンパク質-1B(MAP-1B)、神経フィラメントAb-1(NF)、IL-12p70、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、TNF-αレセプターI(TNF-RI)、およびTNF-RIIに対するマウスモノクローナル抗体が挙げられる。さらには、CD3、CD4、CD8、およびヒトアルブミンに対するマウスIgG1、IgG2A、IgG2B、およびヤギIgG抗体; E-カドヘリンに対するラットモノクローナル抗体; 神経細胞特異的エノラーゼ(NSE)、ぺルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)γ2、IL-6、レプチン、およびVEGF-R3(FLT-4)に対するウサギポリクローナル抗体、並びにVEGF-R2(FLK-1)に対するマウスモノクローナル抗体が、本発明における使用に企図される。
適切な分化誘導物質とのインキュベーションによって、本発明のMDSCは様々な細胞種に分化する能力を持つ。例えば、本発明の方法によれば、効果的な量のbNGFと接触させた後、MDSCは適切な成長条件下で神経細胞に分化する。1つの実施態様において、200ng/mlのbNGFをMDSC培養の処理に使用した。本発明は、当技術分野に知られる神経細胞分化の誘導物質を、最適な分化を可能にする成長条件および誘導物質濃度下で使用し得ることを企図する。これらの誘導物質の例としては、NGF、脳由来神経栄養因子、ニューロトロフィン-3、塩基性線維芽細胞成長因子、色素上皮由来因子、またはレチノイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の他の方法によれば、MDSCをVEGFと適切な成長条件下で接触させることにより内皮細胞が調製される。1つの実施態様においては、MDSCの培養を5-7日間処理するのに50ng/mlのVEGFを使用した。しかしながら、本発明は、VEGFの代わりに他の既知の内皮細胞分化の誘導物質を使用し得ることを企図する。これらの例としてはインスリン成長因子および塩基性線維芽細胞成長因子が挙げられるが、これらに限定されない。
同様に、本発明はMDSCをEGFと適切な条件下で接触させることにより上皮細胞を調製する方法を提供する。例として、100ng/mlのEGFをMDSCサンプルと共に4日間インキュベートした。しかしながら、本発明はEGFの代わりに他の既知の上皮細胞分化の誘導物質を使用し得ることを企図する。これらの例としては骨形成タンパク質-4、高カルシウム濃度、レチノイン酸、酪酸ナトリウム、ビタミンC、ヘキサメチレンビスアセタート、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)、テレオシジン、インターフェロンガンマ、スタウロスポリン、またはアクチビンが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のさらなる他の方法によれば、MDSCを適切な誘導物質、例えばマクロファージ発生についてはLPS、T-リンパ球発生についてはIL-2、と接触させることによりマクロファージおよび/またはT-リンパ球が調製される。例えば、1μg/mlのLPSおよび1200units/mlのIL-2をMDSCとインキュベートすることにより、それぞれマクロファージおよびT-リンパ球細胞への分化が成し遂げられる。本発明は、LPSおよびIL-2の代わりに他の既知のマクロファージおよびT-リンパ球細胞分化の誘導物質を使用し得ることを企図する。これらの例としてはIL-4、IL-12、IL-18、CD3抗体、PMA、テレオシジン、またはインターフェロンガンマが挙げられるが、これらに限定されない。
同様に、本発明は、MDSCをヒト組換え肝細胞成長因子(HGF)と適切な培養条件下で接触させることにより肝細胞を調製する方法を提供する。例として、50ng/mlのHGFをMDSCサンプルと5-7日間インキュベートした。しかしながら、本発明は、HGFの代わりに他の既知の肝細胞分化の誘導物質を使用し得ることを企図する。これらの例としてはレチノイン酸、オンコスタチンM、フェノバルビタール、ジメチルスルホキシド、デキサメタゾン、または、デキサメタゾンとジブチリルサイクリックAMPが挙げられるが、これらに限定されない。
今回説明したMDSCおよび/またはその誘導細胞は、他の使用法と併せて、病気または疾患(例えば癌)、そのような病気または疾患のための治療(例えば癌治療)によって減少または全滅した細胞集団を補充するため、または、損傷を受けたもしくは欠失した細胞または組織を交換するために用いられる。例として、パーキンソン病の進行の過程で損傷を受けた神経組織、外科的切開により損傷を受けた内皮細胞、ゴーシェ病に冒されたマクロファージ細胞、皮膚破壊(skin bums)により損傷を受けた上皮細胞、ライム病に冒されたT-リンパ球、または肝硬変の結果として損傷を受けた肝細胞が、本発明の細胞によって補充される。加えて、先天性疾患を患う個体に、組換え技術の使用による遺伝上変化の修復またはゲノムのさらなる改変(例えば、発現制御配列の導入、欠失、または改変、第二点復帰変異(second-site reversion)として機能するゲノム中への改変の導入、など)の後に、自家MDSCまたはその子孫を移植する。さらには、そのような細胞を投与する前に自家MDSCをインビトロで増殖させ得る能力によってこの方法のための十分な数の幹細胞を生産し得るはずであり、この方法はそのような増大させる作用を含まない現在の移植法と比べてより効果的であり、かつ用途が広いものであると期待される
本発明は以下の実施例によって説明されるが、それはあらゆる意味において限定を意図するものではない。これらの実施例は末梢血試料由来のMDSCが、マクロファージ、リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、または肝細胞の表現型の細胞に分化する、またはその表現型の特徴を獲得するように誘導し得ることを示す。簡単には、実施例1は、成人ヒト単球の末梢血からの単離および-70℃での保管およびMDSCの培養について説明する。実施例2-7は、s-MφとMDSCの間の差の検証(実施例2)、並びに、MDSCの、マクロファージおよびT-リンパ球への分化(実施例3)、上皮細胞への分化(実施例4)、神経細胞への分化(実施例5)、内皮細胞への分化(実施例6)、および肝細胞への分化(実施例7)を説明する。実施例8は、1つの単球が、その子孫が少なくともT-リンパ球、上皮、神経、内皮、および肝細胞への分化が可能であるMDSCのコロニーを産生するかどうかを確認するためのクローン解析を説明する。
実施例1
末梢血からの成人ヒトMDSCの単離および培養
健康な個人の(それぞれ500mlの末梢血からの)軟膜サンプル約50mlからの末梢血単球(PBM)調製物(LifeSource Blood Services, イリノイ州Glenview)を、前述した通りの選抜付着法(selective attachment method)(Hoklland, M. et al., Cell Biology, a laboratory handbook, Celis J. E. ed., Academic Press, 1: 179-181(1994))によって得た。先に等容量のRPMI1640培地(Life Technologies, Inc.)で希釈した20-25mlの軟膜細胞サンプルを、50ml遠心チューブの中で20mlのフィコール-ハイパック(γ=1.077)の上に注意深く重層し、そしてBeckman CPKR遠心機およびGH-3.7水平ローターを使用して、4℃で3,500rpm(2700g)、25分間遠心した。境界面にある単核細胞を注意深く採取した後、Beckman CPKR遠心機およびGH-3.7水平ローターを使用して1,000rpm(250g)で10分間遠心することにより細胞をRPMI1640培地で2-3回洗浄した。続いて、細胞を培養に使用するか、および/または90%仔ウシ血清および10%ジメチルスルホキシドの溶液中で、液体窒素の中に保管した。細胞(液体窒素中の保管から得たものを含む)を2-3×107 個/15cmディッシュでインキュベートした。37℃(8% CO2)で8-12時間インキュベートした後、浮遊細胞を取り除き、ディッシュをRPMI1640 培地で5回リンスした。次いで接着した細胞を10%仔ウシ血清で補充したRPMI1640培地5-10mlで強くピペッティングすることによりディッシュの表面からはがした。
PBMの割合を、Becton Dickinson FACScanを使用してR-フィコエリトリン-複合マウス抗-ヒトCD14モノクローナル抗体による免疫染色により評価した。実験において通常使用した細胞調製物中のCD14細胞の割合は90-95%であった。多くの実験において、CD14で免疫染色した細胞を、5つの検出器を持つBecton Dickinson FACStarPlusセルソーターを使用する滴下セルソーティング法によって、純度99.97%までさらに精製した。単離したPBMを、8-ウェル LabTek チャンバースライド(Nunc, Inc., イリノイ州Naperville)中で1×105 個/ml、0.4ml/ウェルで、37℃、8%CO2を含む加湿雰囲気中で接種した。5日から7日おきに培養液の半分を新鮮な成長培地に置き換えた。この培地は10%熱不活性化仔ウシ血清(Harlan, インディアナ州インディアナポリス)、100units/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミン(Life Technologies)で補充されたRPMI-1640からなるものであった。
それぞれ別の個人由来の培養ヒト末梢血単球の5つの調製物を、50ng/mlのM-CSF(Zhoa et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 100:2426-2431 (2003); その全体を本明細書に援用する)で処理した。5日間のインキュベーションの後、培養は形態的に区別し得る2つの主要な細胞のサブセットを含んでいた。2つのサブセットのうち、細胞全体の約25-35%を含むより少ない方は、形態学的に線維芽細胞に似た伸長した細胞から構成されており、それらを単球由来幹細胞(MDSC)と名付けた。全体の約65-75%を含むもう一方の対象は、標準的なマクロファージで構成されており、それらをs-マクロファージまたは標準的なマクロファージ(s-Mφ)と名付けた(図 1)。5つの個人のうち2つの個人からの液体窒素保存PBMは同様の結果を示した。液体窒素から得たもの1つを含むそれぞれ別の個人由来の他の2つのPBM調製物を、50ng/mlのM-CSF、1000units/mlのLIF、20ng/mlのIL-6、または、M-CSFとLIFもしくはIL-6のいずれかとの組み合わせ、のいずれか1つと共にインキュベートした(表 1)。5日後、M-CSFまたはLIFで処理した培養では約30%のMDSCが得られた一方で、IL-6で処理した細胞はこれらの細胞を約20%含んでいた。M-CSFおよびLIFの両方で処理した場合はおおよそ相加効果を示し、即ち、培養は約50%のMDSCで構成されていた。M-CSFおよびIL-6の両方と共にインキュベートした場合はそのような効果が得られなかった(表 1)。注目すべきは、対照培養はこれらの細胞を約5%しか有しなかったことである(表 1)。MDSCおよびs-Mφの両方とも培養マトリクスに結合して広がり、蛍光ビースを取り込み、そしてMAC-1を発現する能力を示し(図 1)、ここでそれらはそれぞれマクロファージの特徴的なマーカーである(Laouar et al., Cell Biology: A Laboratory Hand book, J. E. Celis Ed., Academic Press, vol. 1, 233 (1997); Schlossman, S. et al. Eds., Leukocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens, Oxford Univ. Press, New York (1995))。
マクロファージは抗原提示細胞として機能することが知られており、そのためそれらはサイトカインを産生し、かつ特徴的な細胞表面分子を提示する(Gordon et al., Curr. Opin. Immunol., 7: 24-33 (1995); Martinez-Pomares et al., Immunobiology, 195: 407-416 (1996); Grage-Griebenow et al., J. Leukoc. Biol. 69:11-20 (2001))。これらのタンパク質の免疫染色は、両方の細胞種が抗原提示細胞のいくつかの特徴を共有することを示した。しかしながら、IL-10、TNF-α、TNFRII、CD1a、HLA-DR、およびHLA-DQのレベルが減少していたという点において、MDSCはs-Mφとは異なっていた(表 2)。表 2においては、細胞表面抗原、サイトカイン、レプチン、およびPPARγ2の蛍光強度を免疫染色のあとに測定し、そしてナイルレッド染色のあとに脂質滴を評価した。定量的レシオイメージング顕微鏡法によって相対蛍光強度を測定した。以前に説明された通り(Nakabo et al., J. Leukoc. Biol., 60:328-336 (1996), Zhou et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:2588-2592 (1996))、10:1のマクロファージ対リンパ球の比率を使用してリンパ球の増殖を刺激し、そして5:1のマクロファージ対標的細胞の比率を使用して細胞毒性を評価した。MDSCはヒト白血病細胞に対して細胞毒性がより低いことが判明し、リンパ球の増殖の刺激において、s-Mφ細胞より効果的であった(表 2)。MDSCをs-Mφと区別した別の特性は、それらのレプチンおよびPPARγ2を発現する能力の低減(Tontonoz et al., Cell, 93:241-252 (1998))およびそれらの脂質滴に対する染色に対する感受性の増進であった(図 1d, 表 2)。
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このように、本発明のMDSCは成人の末梢血サンプルから単離することが可能であり、かつ、試料の生物体のものであるか否かに関係なく他の様々な細胞種と区別することが可能である。さらに、この結果は、PBM調製物を液体窒素中に保存することによってPBMのMDSCに分化する能力は影響を受けないことを示し、これはセルバンクを作製するためのPBM調製物の長期凍結が可能であることを示唆する。MDSCそのものおよびそれから終末分化した細胞の低温保存により、(例えば抗癌化学療法または放射線治療などの)様々な病気の治療によって失った細胞の再生が可能であることが企図される。
当業者は、表2に開示される特徴の1つ以上を示す細胞が当該技術分野に知られる決まりきった技術を使用して異なる末梢血の試料から単離し得ることを理解する。
実施例2
s-MφとMDSCが2つの識別可能な細胞種であることの検証
s-Mφとは異なり、MDSCは分裂する細胞を含み(図 1e)、そして造血幹細胞マーカーである(Randall et al., Stem Cells, 16:38-48 (1998))CD34のレベルが上昇していた(表 1)。MDSCが単順にs-Mφの複製子孫であるかどうかを判断するため、それぞれ別のヒトからの培養末梢血単球の5つの調製物を50ng/mlのM-CSFで処理し、そして14日の期間にわたって、形態学的観察によってMDSCおよびs-Mφの数を測定した。その結果は、6日後にMDSCの数が増加し、一方、s-Mφの数は減少したことを示した(図 2)。この期間における成長曲線に基づいて、MDSCの数は3日ごとに倍増することが推定された。10日後、共培養は80-90%のMDSCを含んでいた(図 2)。M-CSFで処理してない培養についてはそのような増加は観察されなかった(図 2)。5日目または12日目に培養に新鮮なM-CSFを補充しても、MDSCの外観および数にほとんど影響が無かった。
この実施例においては、MDSCの特性は、トリプシンおよび/またはEDTA、またはディスパーゼによる分散への耐性を有することである。最長60分間までのトリプシン、トリプシン-EDTA、またはディスパーゼによる標準的な消化によっても、培養ディッシュの表面に強く結合したMDSCを取り除くことができなかった。従って、実施例8に説明される作業を除いて、サブカルチャーから細胞懸濁を得るために、PBS溶液中の2%リドカインで5-8分間インキュベートした後に強くピペッティングすることによりMDSCを分散させた。
このように、本発明のMDSCは末梢血に見られる他の細胞(例えばs-Mφ)から区別することが可能である。M-CSF、LIF、またはIL-6以外の有糸分裂促進化合物を使用してMDSCを増殖し得ることは当業者に理解される。さらには、様々な成長条件を使用して幹細胞を増殖し得ることを当業者は理解する。さらには、培養または増殖の結果に影響する変数を最適化してMDSCおよびその誘導体の増殖を最適化または最大化することは、当技術分野の技術の範囲内にある。さらには、本明細書に開示されるMDSCの特徴はこれらの細胞を他の細胞種と区別するのに十分ではあるが、決まりきった手順によってMDSCのさらなる識別特徴が発見されることが予想される。
実施例3
マクロファージおよびT-リンパ球細胞分化
その祖先の性質(即ちその多能性)を確認するため、それぞれ異なる4人のヒトからの、80-90%のMDSCを含む12-14日目のM-CSF処理単球培養の調製物(MDSC培養)を、マクロファージ活性化物質である(Vadiveloo et al., J. Leukoc. Biol., 66:579-582 (1999))1μg/mlのLPSと共にインキュベートした。この処理は、MDSCを標準的なマクロファージに転換させた。この転換を、形態学的特徴、脂質染色、HLA-DR、HLA-DQ、IL-10、およびTNF-αの免疫染色の増進(図 3)、および細胞毒性(表 1)により検証した。
MDSCが他の血液系譜に沿って成熟することをさらに誘導し得るかどうかを検証するため、IL-2のT-リンパ球分化を誘導する能力をテストした。4つのMDSC培養を1200units/mlのIL-2で4 日間処理することにより、細胞が丸い形態を獲得することを誘導した。この処理は同時に、処理した細胞の約90%においてCD3発現を引き起こし、ここでこれは成熟T-リンパ球を特定する特徴である(Schlossman et al., Eds., Leukocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens (Oxford Univ. Press, New York 1995)。大雑把にCD3-陽性細胞の75%が同時にCD8発現を示し、ここでこれは細胞毒性/サプレッサーTリンパ球の特徴である(Ryffel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:7336-7340 (1982); Lederman et al., Hum. Immunol., 60:533-561 (1999))。対照の培養はCD3およびCD8を染色した細胞を3-4%含んでいた。ヘルパーT-リンパ球マーカーである(Schlossman et al., Eds., Leukocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens (Oxford Univ. Press, New York 1995)CD4を示した対照またはIL-2-処理細胞は3%未満であった。IL-2-誘導細胞もまた、細胞毒性/サプレッサーT-リンパ球についての機能的マーカーである標的細胞を殺す能力が増加した。5:1のエフェクター対標的細胞の比率を使用したところ、対照細胞の12±3%と比較して、IL-2-誘導リンパ球は35±7%の標的細胞を溶解した。
このように、本発明のMDSCは、効果的な量のLPSまたはIL-2に暴露することによってそれぞれマクロファージまたは様々なT-細胞リンパ球に分化するように誘導し得る。例示した誘導化合物LPSおよびIL-2の代わりに他の既知のマクロファージおよびT-リンパ球細胞分化の誘導物質を使用し得ることを当業者は理解する。さらには当業者は、当技術分野においてよく知られる決まりきった技術を使用して誘導化合物の適切な投与量を決定し得ることを理解する。さらには、広範なあらゆる細胞種の既知の分化誘導物質によって、そのような細胞種へのMDSCの分化を引き起こすことが期待され、そして、これらの分化誘導の範囲はこの実施例および以下の実施例に説明される。
実施例4
上皮細胞分化
MDSCが血液細胞のもの以外の系譜に分化するかどうか調べるため、まず上皮細胞に分化する能力をテストした。上述した通りに調製した4つのMDSC培養を、上皮細胞の成長および分化の促進物質である(Carpenter et al., Curr. Opin. Cell Biol., 5:261-264 (1993))100ng/mlの上皮細胞成長因子(EGF)で4日間処理した。この処理によりMDSCの約70%が上皮細胞の形態を示すように誘導した。この処理は同時に、細胞の71±4%においてパンケラチンに対する免疫染色を引き起こし、68±5%においてE-カドヘリンに対する免疫染色を引き起こし、ここでこれらは共に上皮細胞に特徴的なマーカーである(Tseng et al., Cell, 30:361-372 (1982))。ケラチンに対して染色した対照細胞は4±1%だけであり、E-カドヘリンに対して染色したのは3±2%だけであった。E-カドヘリンに対して陽性に染色した細胞はケラチンに対しても常に染色した。
このように、本発明のMDSCは、効果的な量のEGFなどの分化誘導物質に暴露することによって上皮細胞などの非血液細胞種に分化するように誘導し得る。例示した誘導化合物EGFの代わりに他の既知の上皮細胞分化の誘導物質を使用し得ることを当業者は理解する。さらには当業者は、当技術分野においてよく知られる決まりきった技術を使用して誘導化合物の適切な投与量を決定し得ることを理解する。
実施例5
神経細胞分化
MDSCがさらに他の細胞系譜に沿って成熟する能力を調べるため、神経細胞分化の誘導物質である(McAllister et al., Cell. Mol. Life Sci., 58:1054-1060 (2001))神経成長因子(bNGF)の効果を調べた。上述した通りに調製した4つのMDSC培養を200ng/mlのbNGFで処理したところ、MDSCの約90%が神経細胞の形態を示すようになった。これらの細胞はより小さな細胞体を持ち、かつ、神経突起様および軸索様の突起を示した(Jacovina et al., J. Biol. Chem., 276:49350-49358 (2001))。5-8日後、そのいくつかが非常に長いこれらの突起は細胞間接着を形成し、ニューラルネットワークの外観を形成した。これらの成熟細胞の特徴を、神経特異的エノラーゼ(NSE)、ニューロンフィラメント(NF)、および微小管関連タンパク質-1B(MAP-1B)に対する免疫染色により調べ、ここでこれらはすべてよく知られた神経細胞のマーカーである(Encinas et al., J. Neurochem., 75:991-1003 (2000))。3日間の処理の後、細胞の25%はこれらの3つのタンパク質に対して強い免疫染色を示し、そして5-8日後にはこの染色は細胞の約90%で検出され、またこの時点では、殊にMAP-1Bに関して、この染色が細胞の突起においても観察された。5-8日間のインキュベーションの後、コントロール細胞の9%未満が伸長した突起を示し、そしてこれらの細胞は前記ニューロン特異的抗原に対して弱く染色しただけであった。新鮮に培養した末梢血単球をbNGFで7日間または20日間処理した場合には、神経細胞分化はほとんどまたは全く観察されなかった。
このように、本発明のMDSCは、効果的な量のbNGFに暴露することによって神経細胞に分化するように誘導し得る。例示した誘導化合物bNGFの代わりに他の既知の神経細胞分化の誘導物質を使用し得ることを当業者は理解し、そして今回もまた当業者は、当技術分野においてよく知られる決まりきった技術を使用して誘導化合物の適切な投与量を決定し得ることを理解する。
実施例6
内皮細胞分化
上述の通りに調製したMDSC培養を50ng/mlの組換えヒト血管内皮成長因子165アイソフォーム(VEGF)で5-7日間処理した。この処理により、細胞の約70%が内皮細胞の形態を示すように誘導した。これらの細胞の一部が丸石様構成の鎖を形成し、これらのいくつかは互いに平行であるか、または交差していた。VEGFによる処理は同時に、細胞の74±3%において、3つのよく知られた内皮細胞成熟マーカー(Karkkainen et al., Nature Cell Biol., 4:E2-5 (2002))、即ちVEGF-R2、VEGF-R3、およびフォンビルブランド因子(vWF)に対する免疫染色を引き起こした。VEGFが存在しない場合、細胞の5±1%しかこれらのマーカーに対して染色しなかった。VEGFによる処理は同時に、VEGFが存在しない場合の7±4%と比較して、細胞の31±4%が神経細胞マーカーNSE、NF、およびMAP-1Bに対して免疫染色するように誘導した。NSE-、NF-、およびMAP-1B-染色細胞のほとんどすべてが神経細胞の形態を示した。内皮細胞および神経細胞の間の中間的な形態を示した少数の細胞は、内皮細胞および神経細胞マーカーの両方に対して染色した。
このように、本発明のMDSCは、効果的な量のVEGFに暴露することによって内皮細胞に分化するように誘導し得る。例示した誘導化合物VEGFの代わりに他の既知の内皮細胞分化の誘導物質を使用し得ることを当業者は理解する。さらに、当業者は、当技術分野においてよく知られる決まりきった技術を使用して誘導化合物の適切な投与量を決定し得ることを理解する。
実施例7
肝細胞分化
MDSCが肝細胞にも分化できるかどうか調べるため、上述の通りに調製したMDSC培養を、肝細胞の成長および分化の促進物質である(Michalopoulus and DeFrances, Science 276: 60-66 (1997); Schmidt et al., Nature, 373: 699-702 (1995))100 ng/mlの組換えヒト肝細胞成長因子(HGF)で5-7日間処理した。この処理の後、細胞の75-80%が円形または楕円形様の平たい形態を示した。同時に、処理した細胞の75±7%がアルブミンに対して免疫染色を示し、そして81±7%がαフェトプロテイン(AFP)に対して免疫染色を示し(表 3)、ここでこれらは分化した肝細胞に特異的である(Hamazaki et al., FEBS Lett., 497: 15-19 (2001))。より少ない割合である33±4%がまたサイトケラチン7に対して免疫染色し、ここでこれは胆管上皮細胞のマーカーである(Ruck et al., Histopathology 31: 324-329 (1997))。対照細胞の8±5%しかアルブミンに対して免疫染色せず、AFPに対しては6±5%しか染色せず、そしてサイトケラチン7に対しては7±3%しか免疫染色しなかった。
このように、本発明のMDSCは、効果的な量のHGFに暴露することによって肝細胞に分化するように誘導し得る。例示した誘導化合物HGFの代わりに他の既知の肝細胞分化の誘導物質を使用し得ることを当業者は理解し、そしてここでもまた当業者は、当技術分野においてよく知られる決まりきった技術を使用して誘導化合物の適切な投与量を決定し得ることを理解する。
さらには、MDSCからのリンパ球細胞、上皮細胞、神経細胞、内皮細胞、および肝細胞分化の個別の誘導によって細胞数が対照よりも幾分少なくなる(図 5)ことが、MAC-1の発現の著しい減少または消滅によって特徴付けられた。
本明細書における実施例は、MDSCが3つの胚葉すべてから広範な細胞種に分化するように誘導し得ることを示し、かつ、広範な細胞種分化のあらゆる誘導物質がMDSCに対して効果的であることが期待される。
Figure 2006512060
実施例8
クローン解析
単一のMDSC由来のコロニーの子孫を、識別可能な細胞系譜に分化するように誘導し得るかを調べるため、50ng/mlのM-CSFで5日間処理し、末梢血単球を99.97%含むようにエンリッチされた培養からの細胞を各96ウェルの12枚のU-底組織培養プレートに1ウェルあたり0.1-0.2 mlの成長培地の中に細胞0.8個となるように接種した。次いで、細胞を50ng/mlのM-CSFおよび1,000units/mlのLIFの存在下でインキュベートした。さらに、1枚のプレートを50 ng/mlのM-CSFで5日間処理した培養からの25%調整培地と共にインキュベートした。顕微鏡検査によりウェルの約70%が1つの細胞を含むことを示した。1つより多い細胞を含んでいた数個のウェルはさらなる実験から除外した。培地を5-7日おきに交換した。20日目には、プレートあたり約5コロニーであった(細胞約30個/コロニー)。さらなるインキュベーションにより、これらの大部分のコロニー中の細胞が様々な細胞系譜に特徴的な形態を獲得し、その後死んだ。
調整培地で処理したプレートの中のコロニーのいくつかは引き続き成長した。45-52日目には、これらの細胞を強いピペッティングによりリドカインを含まない条件で分散させ、平底の96-ウェル組織培養プレートに入れた。未処理の細胞はCD14、CD34、およびCD45細胞表面抗原を示し、多くはMDSCに特徴的な形態を示した。それぞれ単一の細胞からおこされたMDSCの2つのコロニーをさらなる分化実験に用いるために選択し、クローン 1およびクローン 2と名付けた。1200units/mlのIL-2、100ng/mlのEGF、200ng/mlのNGF、50ng/mlのVEGF、または50ng/mlのHGFで処理した7日後、細胞を系譜-特異的抗体で染色した。これらの抗体は細胞表面マーカーを個別に認識し、それはTリンパ球マーカーであるCD3、上皮細胞マーカーであるケラチン、内皮細胞マーカーであるvWF、神経細胞マーカーであるMAP1-B、および肝細胞マーカーであるAFPなどであった。この結果は、該分化誘導物質が処理細胞の大部分において期待された系譜と一致する形態を呼び起こし、そしてそれは誘導物質処理MDSC培養について先に観察されたものと似ていることを示した。表 4に示すように、処理細胞の70-90%は具体的な成熟状態を特徴付ける成熟マーカーを示した(表 4)。これらの観察は、単一のMDSCの子孫は識別可能な細胞系譜に分化するように誘導される能力を持つことを示し、かつ、さらにその結果としてMDSCの多能性特性を示した。
このように、本発明の方法によれば、単一の単球はMDSCコロニーを産生し得、かつ、これらの子孫は様々な非終末分化細胞種および終末分化細胞種に分化するように誘導され得る。さらには、本明細書に開示した方法を使用して産生された分化細胞を細胞種特異的治療化合物などの治療化合物の同定するための方法に使用し得る。
治療化合物を同定する方法において、当技術分野に知られる技術を使用して候補の治療化合物を分化細胞と接触させる。1つの実施態様において、候補治療化合物を第一型の分化細胞(例えば神経細胞)および第二型の分化細胞(例えばマクロファージ)と個別に接触させ、そして細胞の絶対的または相対的生存能力を測定する。生存能力は当技術分野において許容されるいかなる測定法によって評価され、これは絶対的または相対的な細胞数の測定、および、細胞の絶対的または相対的な健康(例えばエネルギー貯蔵)のいかなる許容される測定法をも含む。候補治療化合物の濃度は従来の技術を使用して決まりきったスクリーニングにより最適化される。
当業者は上記の例示の実施例に示したような本発明の多数の改良および変更を思いつくことが予想され、それらは本発明の企図するところである。従って、特許請求の範囲に現れるような限定のみが本発明に加えられるべきである。
Figure 2006512060
末梢血単球のマクロファージ分化およびMDSC成長を示す。 a) 新たに単離した単球、b) 未処理 5日目単球培養、c) 5日目 PMA-処理単球培養、d) 5日目 M-CSF-処理単球培養、e) 14日目 M-CSF-処理単球培養; 矢印は分裂している細胞を指す、f) LPSと共に1日インキュベートした14日目 M-CSF-処理単球培養、g) 5日目 M-CSF-処理単球培養のMAC-1免疫染色、および h) 5日目 M-CSF-処理単球培養の中の取り込まれたビーズの蛍光。図1a-fについて、細胞はナイルレッドで染色した脂質(赤)および4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した核(青)の蛍光画像を組み合わせた位相差顕微鏡使用により可視化した。スケールバー、40μm。 MDSCの複製を示す。未処理(x-x)およびM-CSF-処理(●-●)単球培養の中のMDSC並びに未処理(▲-▲)およびM-CSF-処理(■-■)単球培養の中のs-Mφ(S-マクロファージまたは標準的なマクロファージ)。結果は異なる4つの個体からの細胞の数についての平均値±標準偏差である。 MDSCのLPS-誘導マクロファージ分化を示す。蛍光強度(4つの実験の平均値±標準偏差)は、1個体1測定あたり30-50個の細胞に基づく。 MDSCの上皮細胞および神経細胞への分化を示す。A, EGF-誘導上皮細胞分化をケラチン(緑)およびE-カドヘリン(赤)に対する二重免疫染色により評価した。各視野は4-5個の細胞を含む。対照のパネルは陽性細胞を含むように選択した。B, bNGF-誘導神経細胞分化はSlidebookソフトウェアの使用による無作為に選択した50個の細胞の主要突起の長さ(平均値±標準偏差、上のパネル)および神経細胞特異抗原に対する免疫染色(下のパネル)によって評価した。免疫染色の各視野は10-15個の細胞を含み、ここで対照のパネルは陽性細胞を含むように選択した。スケールバー、50μm。MAP-1B,微小管関連タンパク質-1B; NF, 神経フィラメント; NSE, 神経特異的エノラーゼ。 分化誘導物質処理または未処理のMDSC培養の中の相対細胞数を示す。結果は、各処理についてそれぞれ4つの異なる実験からの無作為に選択した5つの顕微鏡視野における平均値±標準偏差である。

Claims (36)

  1. 単離された単球由来幹細胞(MDSC)であって、MAC-1、CD14、CD34、CD40、およびCD45からなる群より選択される表面抗原を示す上記細胞。
  2. 単離された単球由来幹細胞(MDSC)であって、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、およびインターロイキン-12 p70(IL-12 p70)からなる群より選択される検出可能なレベルのサイトカインを生産する上記細胞。
  3. 単離された単球由来幹細胞(MDSC)であって、食作用活性を示す上記細胞。
  4. 単離された単球由来幹細胞(MDSC)であって、トリプシン、EDTA、およびディスパーゼからなる群より選択される薬剤による分散に対する耐性を有する上記細胞。
  5. 単離された単球由来幹細胞(MDSC)であって、前記細胞が成人ヒト細胞であり、さらにMAC-1、CD14、CD34、CD40、およびC45からなる群より選択される表面抗原を示し、さらにインターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、およびインターロイキン-12 p70(IL-12 p70)からなる群より選択されるサイトカインを生産し、さらにトリプシン、EDTA、およびディスパーゼからなる群より選択される薬剤による分散に対する耐性を有し、そしてさらに食作用活性を示す、上記細胞。
  6. 以下の工程を含む単離MDSCの調製方法: a) 末梢血単球(PBM)を単離する工程; b) 前記PBMを、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-6 (IL-6)、および白血病抑制因子(LIF)からなる群より選択される効果的な量の有糸分裂促進化合物と接触させる工程; および c) 前記PBMを、前記細胞の増殖に適した条件下で培養して、単離MDSCの調製物を得る工程。
  7. 前記PBMを有糸分裂促進化合物と接触させる前にPBMを低温保存する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記MDSCを低温保存する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
  9. 前記PBMが哺乳動物PBMである、請求項6に記載の方法。
  10. 前記PBMがヒトPBMである、請求項9に記載の方法。
  11. 前記PBMが成人ヒトPBMである、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項6に記載の方法に従って得た単離MDSC。
  13. 以下の工程を含む、分化細胞を産生する方法: a) 請求項6に記載の方法に従ってMDSCを単離する工程; および b) 幹細胞を細胞の分化を誘導するのに効果的な量の誘導物質と接触させて、分化細胞を産生する工程。
  14. 前記分化細胞を低温保存する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記分化細胞を培養する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
  16. 分化細胞/誘導物質の組み合わせが、神経細胞/神経成長因子(bNGF)、内皮細胞/-血管内皮成長因子(VEGF)、上皮細胞/上皮細胞成長因子(EGF)、T-リンパ球/インターロイキン-2(IL-2)、マクロファージ/リポ多糖類(LPS)、および肝細胞/肝細胞成長因子(HGF)からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記MDSCがヒトMDSCである、請求項13に記載の方法。
  18. 前記MDSCが成人ヒトMDSCである、請求項17に記載の方法。
  19. 以下の工程を含む、細胞種特異的な治療薬剤を同定する方法: (a) 請求項13に記載の方法に従って得た第一の分化細胞と候補の治療薬剤を接触させる工程; (b) 請求項13に記載の方法に従って得た第二の分化細胞と該候補の治療薬剤をさらに接触させる工程、ここで該第一および第二の分化細胞は異なる細胞種である; および (c) 第一の分化細胞の生存能力と第二の分化細胞の生存能力を比較して測定する工程、ここで生存能力の差により、候補の治療薬剤を細胞種特異的な治療薬剤として特定する。
  20. 医薬的に効果的な量のMDSCを投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な疾患を治療する方法。
  21. 請求項20に記載の疾患を治療するためのMDSCの使用であって、前記MDSCが治療を受ける生物体から単離される、前記使用。
  22. 生物体がヒトである、請求項21に記載のMDSCの使用。
  23. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の神経細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な神経細胞疾患を治療する方法。
  24. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の内皮細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な内皮細胞障害を治療する方法。
  25. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の上皮細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な上皮細胞障害を治療する方法。
  26. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量のT-リンパ球を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能なT-リンパ球疾患を治療する方法。
  27. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量のマクロファージを投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能なマクロファージ細胞疾患を治療する方法。
  28. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の肝細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な肝細胞疾患を治療する方法。
  29. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の神経細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な神経細胞障害に関連する症状を改善する方法。
  30. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の内皮細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な内皮細胞障害に関連する症状を改善する方法。
  31. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の上皮細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な上皮細胞障害に関連する症状を改善する方法。
  32. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量のT-リンパ球を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能なT-リンパ球疾患に関連する症状を改善する方法。
  33. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量のマクロファージを投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能なマクロファージ細胞疾患に関連する症状を改善する方法。
  34. 請求項16に記載の方法によって得た医薬的に効果的な量の肝細胞を投与する工程を含む、細胞ベースの治療が可能な肝細胞疾患に関連する症状を改善する方法。
  35. MDSCおよび医薬的に許容される希釈剤、担体、または培地を含む医薬組成物。
  36. 請求項35に記載の医薬組成物を含むキット。
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