JP2006507727A - オーディオ信号を再生するためのオーディオ再生システムおよび方法 - Google Patents

オーディオ信号を再生するためのオーディオ再生システムおよび方法 Download PDF

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Abstract

オーディオ再生システムは中央波面合成モジュール(10)と分散的に配置された複数のスピーカモジュール(12a〜12e)とに分割され、個別スピーカ用の合成信号とこの合成信号に関連付けられた対応するチャネル情報とが中央波面合成モジュールで算出される。次に、スピーカ用の合成信号と関連チャネル情報が伝送経路(16a〜16e)を介して各スピーカモジュールに伝送され、そのスピーカモジュールに関連付けられるスピーカ用の合成信号および関連チャネル情報を得る。分散型のオーディオレンダリングおよびデジタル/アナログ変換がスピーカモジュールで実行され、事実上アナログのスピーカ信号が各スピーカに空間的に近接して分散的に生成される。中央波面合成モジュールと複数の分散スピーカモジュールとの分割により、大きさが著しく変動する映画館の再生室に好適で、価格に関して拡縮可能なオーディオ再生システムを生成できる。

Description

本発明は、オーディオ再生システムに関し、特に映画館等可変サイズの再生室に使用するのに適したオーディオ再生システムであって、波面合成(wave-field synthesis)に基づくオーディオ再生システムに関する。
家電製品の分野では、新しい技術および革新的な製品に対する要望が高まっており、新しいマルチメディアシステムが成功するための重要な前提条件は、それらが最適な機能と能力とをそれぞれ提供することである。これは、デジタル技術と特にコンピュータ技術とによって達成される。例として、改善された現実的な視聴覚的印象を提供する機器等が挙げられる。従来のオーディオシステムは、自然環境だけでなく仮想環境の空間的音再生の品質においても著しい弱点を有する。
オーディオ信号のマルチチャネルスピーカ再生の方法は長年にわたって公知であり、標準化されてきた。全ての共通する技術は、スピーカの場所とリスナーの位置との両方が既に伝送フォーマットに組み込まれているという欠点を有する。リスナーに対するスピーカの誤った配設により、オーディオ品質は著しく低下する。最適な音響は再生室の小さな領域、いわゆるスイートスポットでのみ可能である。
オーディオ再生における優れた自然的空間的印象ならびに強力なエンクロージャは、新しい技術の助けにより得ることができる。この技術、いわゆる波面合成(WFS)の基礎は、デルフト工科大学で研究され、80年代後半に初めて発表された(非特許文献1)。
この方法は算出操作および伝送速度(transmission rates)に関して多大な要件を必要とするため、波面合成は実際にはこれまでほとんど利用されてこなかった。今日、この技術の利用を特定の用途において可能にするのは、マイクロプロセッサ技術およびオーディオ符号化の分野における進歩が必須となる。最初の製品化は、プロの分野においては来年には実現すると期待される。さらに数年以内に、波面合成を用いた最初の製品が消費者市場に登場するであろう。
WFSの基本的概念は、波動理論に関するホイヘンスの原理(Huygens principle)の応用に基づいている。即ち、波動によって捉えられる全ての点は、球面状または円状に伝播する要素波 (elementary wave)の始点である。
音響学に応用すると、いかなる形状の入来波面(incoming wave-front)も、相互に隣接して配置された多数のスピーカ(いわゆるスピーカアレイ)によって再生することができる。最も単純な事例で、単一の点音源を再生し、スピーカが線形配置である場合、時間遅延と振幅スケーリングとを持つ各スピーカのオーディオ信号は、個々のスピーカの放射された音場(emitted sound fields)が適切にオーバレイするように供給されなければならない。複数の音源がある場合、各スピーカに対する寄与が各音源について別個に算出され、結果として得られる信号が加算される。再生される音源が反射壁を持つ室内にある場合、スピーカアレイを介し、反射もまた追加的な音源として再生されなければならない。したがって、算出に係る手間は、音源の個数、録音室の反射特性、およびスピーカの個数に強く依存する。
この技術の特に優れた点は、広範囲にわたる再生室で自然な空間的音響印象が可能になることである。公知の技術とは対照的に、音源からの方向および距離が非常に正確に再生される。限られた程度ではあるが、現実のスピーカアレイとリスナーとの間に仮想音源を位置づけることさえもできる。
波面合成は周辺の条件が既知である場合にはうまく機能するが、条件が変化するとき、および現実の周辺条件と一致しない周辺条件に基づいて波面合成が実行されるときには、ばらつきが発生する。
周辺条件は周辺のインパルス応答によっても表現することができる。
これを以下の例に関してより詳細に説明する。反射が望ましくない壁に対し、スピーカが音源信号を放射すると仮定する。この単純な例では、波面合成を使用することによる室補償(room compensation)は、次のようなものであろう。即ち、まず壁によって反射された音響信号が再びスピーカに到達するのはいつか、およびこの反射音響信号がどれだけの振幅を有するかを決定するために、この壁の反射が決定される。この壁からの反射が望ましくない場合、波面合成は、次のような方法でこの壁からの反射を除去する可能性を提供する。即ち、対応する振幅を有するスピーカに対し、原オーディオ信号に加えて、この反射信号と位相が逆の信号を与え、その結果、前方補償波(forward compensation wave)が反射波を除去し、上述の周辺における上述の壁からの反射を除去するようにする。この方法は、まず周辺のインパルス応答を算出し、これら周辺のインパルス応答に基づいて壁の状態および位置を決定することによって実行可能であり、この時、壁は入射音響(incident sound)を反射する音源を意味するミラー源と解釈される。
まずこれら周辺のインパルス応答を測定し、次いで、オーディオ信号とオーバレイするスピーカに印加されるべき補償信号を算出する際には、この壁からの反射の除去操作は、これらの周辺にいるリスナーが、音響に関してはこの壁が全く存在しない印象を持つように実行される。
しかし、過剰補償または過少補償が行なわれないように、室のインパルス応答を正確に決定することが、反射波の最適補償には不可欠である。
このように、波面合成は、広い再生範囲にわたる仮想音源の正確なマッピングを可能にする。同時に波面合成は、録音技師および音響技師に対し、複合音響シーンの設計のための新たな技術的および創造的潜在力を提供する。80年代の末にデルフト工科大学で開発された波面合成(WFSまたは音場合成ともいう)は、音響再生のホログラフィック手法を表わす。キルヒホッフ・ヘルムホルツ積分はこのための基礎となる。それは、閉鎖された容積内の任意の音場が、この容積の表面上の単極子(monopole)および双極子(dipole)音源(スピーカアレイ)の分布を介して生成されることが可能であることを示している。これについての詳細は、非特許文献2および非特許文献3に見ることができる。
波面合成では、仮想位置にある仮想音源によって放射されるオーディオ信号から、スピーカアレイの全てのスピーカに対し合成信号が算出される。このとき、振幅および位相に関し、スピーカアレイに存在する個々のスピーカから出力される音波の重畳から結果的に生じる波が、仮想位置にあるこの仮想音源が実位置にある現実の音源であった場合にこの仮想音源から発生するであろう波と一致するように、合成信号が形成される。
通常、複数の仮想音源が異なる仮想位置に存在する。合成信号の算出は全ての仮想位置にある全ての仮想音源に対して実行され、通常、1つの仮想音源から結果的に複数のスピーカへの合成信号が得られる。したがって、1つのスピーカから見ると、このスピーカは異なる仮想音源から生じる複数の合成信号を受信することになる。線形重畳原理(linear superposition principle)によって可能となるこれらの音源の重畳の結果、スピーカによって実際に放射される再生信号が生成される。
スピーカアレイが大きければ大きい程、すなわち、個別スピーカがより多く設けられる程、波面合成の可能性をよりよく利用することができる。しかし、通常はチャネル情報も考慮しなければならないので、これは波面合成装置が実行しなければならない演算動作をも増大させる。つまり、基本的に全ての仮想音源から全てのスピーカまでの個別の伝送チャネルが存在する事を意味し、また、基本的に全ての仮想音源から全てのスピーカに対する合成信号が生成され、その結果、全てのスピーカが、仮想音源の個数に等しい個数の合成信号をそれぞれ得る場合も存在し得ることを意味する。
特に、映画館への適用においては仮想音源が移動する可能性もあり、波面合成の可能性が低減されてしまう理由としては、合成信号の算出と、チャネル情報の算出と、チャネル情報および合成信号の組合せによる再生信号の生成とのために、多大な算出操作が求められる点を挙げることができる。
その上、オーディオ再生の品質は、設けるスピーカの個数と共に高まることもここで留意する必要がある。これは、スピーカアレイに存在するスピーカが多ければ多い程、オーディオ再生品質がより高くかつ現実的になることを意味する。
上記シナリオでは、個々のスピーカのために完全にレンダリングされアナログデジタル変換された再生信号は、例えば二線式回線を介して波面合成中央ユニットから個々のスピーカへと伝送されることができる。これは、全てのスピーカが同期して動作することがほぼ保証されるので、同期目的のためのさらなる手段が不要であるという利点を有する。しかし他方では、波面合成中央ユニットは、常に特定の再生室および固定数のスピーカによる再生のためにしか作製することができない。これは、全ての再生室のために個々の波面合成中央ユニットを作製しなければないことを意味する。また、オーディオ再生信号の算出を、特に多数のスピーカおよび多数の仮想音源に関し、少なくとも部分的に並行しかつリアルタイムでそれぞれ実行しなければならないので、多大な量の演算能力を提供しなければならないことを意味する。
特に映画館用に意図されたオーディオ再生システムに関しては、映画館の再生室はそのサイズに関して著しく多様であるという問題がある。映画館には、中には非常に大型の映画スクリーンを持つものがあり、かつ/または同時に、大型スクリーンで上映される映画ほどの多数の観客を持たない映画のために設けられた複数の小型映画スクリーンを持つものもある。しかし、異なる映画館は異なる大きさの再生室を持ち、特にオーディオ再生が映画館だけではなく、例えばコンサートホールについても考慮される場合、その差異は100倍程度にもなり得る。
そのような様々なオーディオ再生室に、波面合成に基づくオーディオ再生システムを設けるためには、例えば、個別の波面合成中央ユニットを全ての再生室用に作製しなければならず、それは個別生産になるので、価格の点から受け入れられない。
一方、最大限に装備された波面合成中央ユニットを構築することも可能であろう。すなわち、接続可能なスピーカ、つまりアナログ信号出力の個数に関して対応可能であり、内部には、最大個数のアナログ出力、つまり、接続可能な最大個数のスピーカ用に設計された演算処理装置を含む装置が考えられる。
しかし、そのようなシステムは、小規模の再生室用のオーディオ再生システムが、非常に大規模の再生室用のオーディオ再生システムとほぼ同じ価格を持つことにつながり、それはおそらく小規模の再生室の運営者には受け入れられないであろう。オーディオ再生システムの提供者にとっては、特に中ないし小規模の再生室に関心を向ける必要がある。つまり、例えば私的居室または小規模のレストランおよびバー等の「最小規模」の再生室についても関心を向ける必要がある。
したがって、上述した最大限ユニット構築の可能性は不利であり、急激な市場の受入れはすぐには期待できない。
Berkhout, A.J.; de Vries, D.; Vogel, P.: Acoustic Control by Wave-field Synthesis. JASA 93, 1993) M.M.Boone, E.N.G. Verheijen, P.F. v.Tol, "Spatial Sound-Field Reproduction by Wave-Field Synthesis", Delft University of Technology Laboratory of Seismics and Acoustics, Journal of J. Audio Eng. Soc., Vol. 43, No. 12, December 1995 Diemer de Vries, "Sound Reinforcement by Wavefield Synthesis: Adaption of the Synthesis Operator to the Loudspeaker Directivity Characteristics", Delft University of Technology Laboratory of Seismics and Acoustics, Journal of J. Audio Eng. Soc., Vol. 44, No. 12, December 1996
本発明の目的は、市場に高く受け入れられるオーディオ再生の基本概念を提供することである。
この目的は、請求項1に記載のオーディオ再生システム、請求項19に記載のオーディオ信号を再生するための方法、または請求項20に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
本発明は、市場の受入れを達成しようとするオーディオ再生システムは拡縮可能でなければならないという知見に基づく。しかし、この拡縮可能性は、提供される演算能力に対して発揮するだけではなく、オーディオ再生システムの価格に対して影響を及ぼさなければならない。換言すると、これは、大規模な再生室用のオーディオ再生システムは、小規模な再生室用のオーディオ再生システムよりも高価になり得ることを意味する。さらに換言すると、小規模再生室用のオーディオ再生システムは、大規模再生室用のオーディオ再生システムより著しく安価でなければならない。
上述した最大限ユニット構築の概念では、規模による価格差はわずかであった。なぜなら、価格差は個別スピーカの個数によってのみ発生するが、多数のスピーカが量産されているという事実と、再生室を備える建物の中へ統合させるという新規概念のため、そのようなスピーカは安価に提供されることができるからである。
本発明によれば、オーディオ再生システムは、中央波面合成モジュールと、中央波面合成モジュールに分散的に接続される多くの個別スピーカモジュールとに分割される。
中央波面合成モジュールは、複数のオーディオトラックを有するオーディオ信号を受信し、一方では合成信号を算出し、かつ他方では仮想位置から現実のスピーカ位置までのチャネルのためのチャネル情報を算出する。
さらに、中央波面合成モジュールは、各スピーカによって再生されるべき1つまたは複数の合成信号を各スピーカに供給するだけでなく、上記1つまたは複数の合成信号の発信源となる仮想位置または仮想音源からそれぞれのスピーカまでのオーディオチャネルに関するチャネル情報をも提供するように構成される。ここで経験的に、エネルギー値(energy content)が特定のしきい値を上回る合成信号を全てのスピーカが受信する事例は非常にまれにしか起きないことから、有効なデータレート伝送制限が既に取得されている。したがって、本発明の中央波面合成モジュールは、個別スピーカにとって有効な合成信号のみおよびこの合成信号のためのチャネル情報のみを、分散スピーカモジュールに対して供給する選択肢を既に有することになる。
本発明のスピーカモジュールは分散的に実現化され、スピーカに直結され、好ましくはスピーカにそれぞれ空間的に近接して配置される。全てのスピーカモジュールは受信器を備え、各スピーカに対する1つまたは複数の合成信号とこの合成信号に関連するチャネル情報とを受信する。さらに、全てのスピーカモジュールはレンダリング手段を備え、上記合成信号とこの供給された合成信号に関連するチャネル情報とを使用して、スピーカの再生信号を算出する。さらに、各スピーカモジュールは、好ましくは1つのデジタル増幅器を有する信号処理手段と、別のデジタル信号処理手段と、それぞれのスピーカに供給されるアナログスピーカ信号を再生信号により生成するためのデジタル・アナログ変換器とを備える。中央波面合成モジュールおよび分散スピーカモジュールを接続するために、複数の伝送経路が設けられ、各伝送経路は中央波面合成モジュールから個別スピーカまで延びている。
レンダリングの操作は非常に演算集約的であり、これは、特に全ての個別スピーカに対して設けられる乗算器(multiplier)を考慮した場合に、例えばDSP(デジタル信号プロセッサ)または有線型回路の形の所要回路ハードウェアに対するコストに著しく寄与する。好ましくは、レンダリング手段はチャネルインパルス応答をチャネル情報として使用することによって動作し、時間ドメインまたは周波数ドメインのいずれかで直接実行することのできる演算時間集約的な畳み込み(convolution)を実行する。このとき、周波数ドメインへの変換および周波数ドメインからの変換が必要であり、その結果、周波数ドメインにおける現実の乗算演算と共に多大な処理を必要とする。ここで、レンダリングユニットは1つの個別合成信号を算出するだけでなく、通常は仮想音源の個数に対応する多数の合成信号を常に算出しなければならないことに特に留意すべきである。
本発明の概念が導く結果として、分散的に実行することが可能な演算は中央波面合成モジュールから分散スピーカモジュールへとシフトされるので、最良の事例では、全てのスピーカに同等の意味を持つ演算だけが中央波面合成モジュールで実行され、1つのスピーカモジュールに接続された1つまたは複数のスピーカだけに関する全ての演算はそのスピーカモジュールで分散的に実行されることになる。
よって、中央波面合成モジュールのコストを著しく低減することができるが、他方では、主としてスピーカモジュールで実行されるオーディオレンダリング操作のために、その価格がもはや無視できなくなったスピーカモジュールを用いることになるため、費用が嵩むという代価が発生する。
しかし、本発明のオーディオ再生システムは、性能ならびに価格の両面で拡縮可能である。多数の再生室用の中央波面合成モジュールを低価格で提供できる可能性があるので、中央ユニットおよび分散スピーカモジュールのコストに起因するシステム全体のコストは、設置されるスピーカの個数と、つまりは再生室の規模とに大きく依存するものとなる。
換言すると、大規模再生室の運営者は依然として大規模再生室用の再生システムのために所定の代価を支払わなければならないが、一方では、小規模再生室の運営者はオーディオ再生システムをかなり低い価格で購入することが可能になる。なぜなら、スピーカの個数と、つまりは高価でコスト集約的なスピーカモジュールの個数とは、大規模再生室に比較して著しく低減されるからである。
したがって、本発明のオーディオ再生システムは、小規模再生室用のオーディオ再生システムを大規模再生室に比較してかなり低減された価格で提供することが可能であり、その結果、オーディオ/ビデオコンポーネントの非常に競争の激しい市場で歓迎されることが期待できる。
本発明の好適な実施形態では、中央波面合成ユニットは、映画フィルム用の従来のオーディオフォーマットで録音された映画フィルムを処理することを可能にするように形成される。ここで、一般的な録音フォーマットとは例えば5.1サラウンドフォーマット、または7.1フォーマット、または10.2フォーマットである。5.1フォーマットの場合、そのような映画フィルムは6本のオーディオトラック、即ち「後左」,「後右」,「前左」,「前右」,「前中央」のチャネル用ならびにサブウーファチャネル用のオーディオトラックを含む。オーディオ技術に関しては従来通りと言えるそのような映画フィルムの再生は、本発明のオーディオ再生システムにおいては、音響技師および再生室運営者それぞれの好みに応じて選択することが可能な仮想位置にある仮想音源として、オーディオトラックを配置することによって達成することができる。したがって、価格の点で拡縮可能であり、オーディオ再生システムにおいて互換性のある本発明の再生方法は、たとえ録音セッティングに関して必要とされるメタ情報を持ち完全に波面合成に適したオーディオトラックを有する映画/ビデオフィルムがごくわずかにしか存在しない時代であっても、波面合成に基づくオーディオ再生システムを一度に普及させる可能性を持っている。
以下に、本発明の好適な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
本発明のオーディオ再生システムの概念図である。 本発明の中央波面合成モジュールのブロック図である。 本発明の分散スピーカモジュールのブロック図である。 分散スピーカモジュール内のオーディオレンダリングユニットの好適な実施形態のブロック図である。 大きいスイートスポットを有する互換性のある再生の基本的表現である。 スピーカLSiの再生信号を得るために、1つのスピーカに対して各々チャネル情報を有する複数の合成信号が入力される様子を示す基本図である。 仮想音源から現実のスピーカまでのチャネルを、このチャネルに対し影響を与え得る変数と共に示す基本図である。
本発明の再生システムは、図1に示すように、基本的に2つの部分に分割される。一方の部分は中央波面合成モジュール10である。他方の部分は、個別スピーカモジュール12a、12b、12c、12d、12eから構成され、図1に示すように、それらは現実の物理的スピーカ14a、14b、14c、14d、14eに接続される。スピーカ14a〜14eの典型的な個数の領域は50個以上の範囲であり、さらに典型的には100個以上であることに留意すべきである。全てのスピーカに個別スピーカモジュールを設ける場合には、対応する個数のスピーカモジュールも必要となる。適用方法に依存して、1つのスピーカモジュールから少数群の隣接するスピーカをアドレス指定することが好ましい。ここで、例えば4台のスピーカに接続された1つのスピーカモジュールが、これら4台のスピーカに対して同一の再生信号を供給するか否か、あるいはこれら4台のスピーカのためにそれぞれ異なる合成信号が算出されるか否かは重要ではなく、そのようなスピーカモジュールは、現実には複数の個別スピーカモジュールから構成されてはいるが物理的には1つのユニットに一体化されている。
波面合成モジュール10と全ての個別スピーカモジュール12a〜12eとの間に個別伝送経路16a〜16eが存在し、全ての伝送経路は中央波面合成モジュールおよび個別スピーカモジュールに結合される。
波面合成モジュールからスピーカモジュールへデータを伝送するためのデータ伝送モードとして、いわゆるファイヤワイヤ伝送フォーマットまたはUSBデータフォーマット等の高いデータレートを提供するシリアル伝送フォーマットが好ましい。毎秒100メガビットを超えるデータ伝送速度が有利である。
波面合成モジュール10からスピーカモジュールに伝送されるデータストリームは、波面合成モジュール内で、選択されたデータフォーマットに依存してそれに対応するようにフォーマットされ、一般的なシリアルデータフォーマットで提供される同期情報を与えられる。この同期情報は、個別スピーカモジュールによってデータストリームから抽出され、個別スピーカモジュールをそれらの再生に関して同期化するために、即ち、アナログスピーカ信号を得てそれをリサンプリングするためのデジタル/アナログ変換に関して同期化するために使用される。中央波面合成モジュールはマスタとして動作し、全てのスピーカモジュールはクライアントとして動作し、ここで、個別データストリームは全て、異なる伝送経路16a〜16eを介して中央モジュール10から同一の同期情報を得ることが好ましい。これは、全てのスピーカモジュールが同期して動作すること、つまり、マスタ10によって同期化させられることを確実にする。これは、本発明のオーディオ再生システムにおいては、オーディオ品質の損失を被らないために、つまり、波面合成モジュールにより算出された合成信号が、それぞれのオーディオレンダリング後に、時間的にずれて個別スピーカに出力されないようにするために重要である。この概念の利点は、個別スピーカモジュールが相互に同期化する必要が無いことである。それらは全てマスタに同期して作動するので、それらは相互に自動的に同期化される。個別スピーカモジュールの相互間の接続は、本発明には望ましくない。なぜなら、再生室の規模に関するスピーカモジュールの拡縮可能性のモジュール概念は、モジュールの単純な追加を必要とし、モジュール間の対応する配線を達成する必要が無いからである。
図2は、本発明の好適な実施形態に係る中央波面合成モジュールのブロック図を示す。まず、中央波面合成モジュールは、一般的に入力でオーディオ信号を受信するように形成された入力手段20を備え、上記オーディオ信号は複数のオーディオトラックを有し、これら全てのオーディオトラックに対して音源の位置が関連付けられる。
適用方法によっては、音源位置とは、再生室内におけるスピーカのリスナーに対する位置を示す指標であり、互換性のある再生を得るために5.1等の標準化されたオーディオフォーマットに従うものである。この場合、オーディオ信号は5+1=6本のオーディオトラックを有する。代わりに、オーディオ信号はより多数のオーディオトラックを有することができ、それらは波面合成適性信号として既に存在し、現実の録音位置にある音源およびオーディオオブジェクトをそれぞれ表わし、それらは波面合成を使用することにより、オーディオ信号再生に関して再生室における仮想音源としてマッピングされる。
さらに、本発明の好適な実施形態では、入力手段20が主制御ユニットとして使用され、このユニットは更なる機能を持つことが好ましい。特に、それは映画館で一般的に使用されるように、復号モジュールの機能を有する。代わりに、または追加的に、入力手段20は、別個のオーディオチャネルおよびオーディオトラックをそれぞれ提供するDVD復号器として形成されてもよい。
代替的に、再生手段20は、波面合成用に意図されたオーディオトラック21および対応する音源情報22が既に設けられた、MPEG4復号モジュールとして形成されてもよい。特に、オーディオトラック21は、録音セッティングにおけるオーディオオブジェクトからのオーディオ信号、録音セッティングにおけるオーディオオブジェクトの位置、オーディオオブジェクトの特性、特に、オーディオオブジェクトの大きさに関する特性、あるいは音響特性に対するオーディオオブジェクトの密度に関係する。
さらに必要ならば、オーディオトラック21に加えて、録音室および録音環境それぞれの特性を伝送し、波面合成の中でそれらの特性を考慮することが好ましい。録音室および録音環境それぞれに関する情報は、リスナーが視覚的表現を得るだけではなく、録音状況の聴覚的印象をも得ることをもたらすものである。観客は再生された音の中に、映画の録音場面が例えば戸外であるか、例えば潜水艦のような小さい部屋であるかを実感する。戸外での録音シナリオは、録音環境に反射がほとんどまたは全く無いので、比較的「ドライ」なオーディオ信号を提供するが、例えば潜水艦内では状況は全く異なる。ここでは、録音セッティングは多数の反射を持つ部屋および多数の反射を持つオーディオ環境によってそれぞれ代表される。この場合、オーディオトラックはできるだけドライに、つまり録音室内での部屋の音響効果無しに録音し、その特性に関する部屋の音響効果は追加的なメタ情報によって表わすことが好ましい。なぜなら、それらは標準化データストリームで標準MPEG4に従って伝送することができるからである。
中央波面合成モジュールは、一方でチャネル情報を、かつ他方で個別スピーカのための波面合成信号を決定するための手段24を備える。さらに、音源位置22を波面合成用の仮想位置に変換するための手段25が設けられる。
仮想位置からスピーカ位置までの全てのオーディオチャネルのためのオーディオチャネル情報を決定する手段24が個別に形成され、上記仮想位置はオーディオトラックに関連付けられる音源位置(手段25)に依存するものであり、上記オーディオチャネル情報は、全ての仮想位置から全てのスピーカまでの全てのチャネルに対して存在する。さらに、手段24は、上述しかつ公知である波面合成の原理を使用することによって、上記仮想位置からスピーカへの合成信号を算出するように形成される。
さらに、図2の中央波面合成モジュールは、1つまたは複数のスピーカに合成信号を提供するための手段26を備える。手段26は、中央波面合成モジュールからそれぞれの伝送経路を介して個別スピーカモジュールへと伝送される合成情報に関するチャネル情報を伝送し、それらの個別スピーカモジュールでオーディオレンダリングが実行されるように形成されている。実施形態によっては、各合成信号に関し、仮想位置から現実のスピーカへのチャネルに関するさらなる情報を伝送することが好ましい。これは、本発明の好適な実施形態における手段24が、全ての合成信号のためのチャネル情報をも提供し、算出されたチャネル情報からそれをそれぞれ補間し、その補間されたチャネル情報を手段26に提供して、手段26が個別スピーカモジュールへの伝送を開始することができるようにすることを意味する。好ましくは、データ伝送容量を節約するために、手段26は、無効の合成信号を排除し、無効の合成信号もその関連チャネル情報も伝送しないように形成される。したがって、1つの仮想音源からいくつかのスピーカに対して有効な合成信号が伝送される一方で、スピーカアレイの他のスピーカに対しては、波面合成の理論に従って同様に合成信号を算出することができるが、それらの信号は特定の期間内におけるそれらの性能に関して相対的に小さく、したがって、低減されたデータ伝送量のために無視できる場合がしばしば発生する。
詳細には、手段24はオーディオ信号を前処理するために使用する機能を含む。その上、手段24は個別スピーカモジュールを制御し、詳しくは、個別スピーカモジュールがそれらに伝送されたデータストリームに対して直接的にまたは手段26に関連して同期情報を導入し、その結果、全てのスピーカモジュールが中央波面合成モジュールに対して中央同期を得るように制御する。
本発明の概念では、全ての再生チャネルに対して共通する処理演算は全て中央波面合成モジュールが実行し、他方、個別スピーカおよび個別再生チャネル毎にそれぞれ異なる処理演算は分散的に実行されるように形成されている。
さらに、手段24は、互換性のある再生に関して、ステレオ信号、5.1信号、7.2信号、10.2信号等の場合における波面合成情報のシミュレーションを実行するように形成される。したがって、標準化オーディオフォーマット用の再生室に対するスピーカの標準位置が音源位置として使用される。
これについて図5を参照して説明する。図5は、再生室50および再生室の周りに延在するスピーカアレイ52だけでなく、図5から分かるように再生室50の外側の仮想位置に配置された多数の仮想音源53a〜53eをも示す。手段24は、図1の手段25に関連し、音源情報から仮想位置を算出するために、即ち、手動で制御可能な5.2信号の標準位置指標から仮想位置を算出するために形成される。実施形態によっては、スピーカアレイ52が再生室50に平面波(planar waves)を放射するように、仮想位置を例えば無限領域に移動することが好ましい。これは、現実の5.1スピーカが再生室に配置された標準的状況に比較して、いわゆるスイートスポット、即ち最適な音響印象が得られる再生室内の領域を著しく拡大させるという結果を生む。
その代わりに、仮想音源を有限仮想位置に配置し、点音源としてモデル化することもできる。この選択肢は、音響印象が映画の観客/リスナーにとってより快適であるという利点を有する。平面波には、リスナーが非常に大きい部屋に座っている印象を持つという特性があり、例えばスクリーンで潜水艦の場面が展開されている場合には、特に不快な知覚を導く。これに関連して、例えば5.1オーディオトラックを持つ一般的な映画フィルムは、録音セッティングの音響特性に関する情報を含まないことに留意すべきである。したがって、そのような場合には、平面波つまり無限位置にある仮想音源または有限位置にある仮想音源の間の妥協点を見出すことが好ましい。この点に関し、本発明のオーディオ再生システムはさらに、映画の場面に応じて仮想スピーカ53a〜53eの仮想位置を変動させる能力を提供する。例えば、場面が戸外で展開される場合には、スピーカは無限領域に配置することができる。しかし、場面が小さい部屋で展開される場合には、スピーカは再生室50により近づけて配置することができる。
互換性のある再生に関連して、本発明の好適な実施形態では、入力手段20は、映像信号の前に特定の時間「遅延」によってその映像信号に関連付けられるオーディオトラックをサンプリングするように構成され、その結果、波面合成モジュール内での処理後に個別スピーカモジュール内において、ある時間に関連付けられた音声がある時間に関連付けられた映像信号と同時にサンプリングされるように構成されている。本発明のオーディオ再生システムでは、音声および画像が一緒に放射されるように、負の「遅延」を測定しなければならない。負の遅延が大きい場合、信号は既に完全に算出されていることが可能であり、さらに信号は、例えば画像と音との同期化を確実にする各同期信号に応じてスピーカモジュールからスピーカへと出力されることができる。
互換性のある再生の場合と、録音セッティングにおける音源に関する既に準備された波面合成情報を入力信号が含んでいる場合とのどちらにおいても、再生室に関する情報を回線27を介してチャネル情報算出手段24に提供し、その結果、その再生室に関する情報を用いて合成信号が処理され、例えば再生室の音響特性を除去できるようにすることが好ましい。
再生室に関する情報は、再生室の幾何学的構造により決定することができるか、あるいはスピーカおよび特定のマイクロフォンアレイを使用することによって再生室で測定することができ、このとき制御および評価は再生室用の適応モジュール28を介して行なうことができる。本発明の一実施形態では、再生中に再生室の音響特性を決定し、それに相応して再生室に関する情報をリセットし、例えば満員の映画館の場合でも映画音響の最適抑制が実行されるようにすることが好ましい。このとき、特に小型で満員の再生室においては、再生室の音響特性は、再生室に人々がいない場合とは著しく異なることに留意すべきである。
さらに、再生室用の適応モジュール28は、再生の特性を測定するために使用することができるマイクロフォンアレイを備える。さらに、再生室用の適応モジュール28は、再生室におけるスピーカアレイの位置を見出すアルゴリズムを備える。さらに、再生室特性およびスピーカ特性の最適反転(optimum inverting)を実行するために、測定結果の前処理が実行される。このとき、適応モジュール28は手段24によって制御されることが好ましい。
実施形態によっては、適応モジュール28は、再生室のシステム構成のためだけに必要とされる場合もある。しかし、再生室の変化する状況に対する連続的な適応が望ましい場合には、この適応モジュール28を操作中絶えず使用することができる。
手段20へ入力されるWFS特定信号を処理するためにチャネル情報算出手段24が使用される場合には、追加のWFS情報、即ち例えばオーディオオブジェクトの特性および録音室の特性等が、入力されたオーディオ信号から抽出されてWFS情報回線29を介して手段24に供給され、その結果、この情報がチャネル情報算出に考慮されることが可能になる。
この場合、中央WFSモジュールはさらに、WFS処理済みオーディオ信号の前処理を実行するように形成される。さらに、手段24および/または手段26は、画像と音声との間で同期を得るために設けられ、したがって前述の通り、個別スピーカモジュールへの好ましくはシリアルデータストリーム内に時間コードが挿入される。最後に、既に説明した通り、チャネル情報算出手段24は、必要とされる場合には再生前または再生中のいずれかにおいて、適応モジュール28を制御して再生室の音響特性の測定を制御するという役割を果たす。
マルチプレクサ/伝送ステージ26は、手段24または制御手段20または手段26自身のいずれかにおいて生成される同期情報を、スピーカモジュールへのデータストリーム内に導入するように構成される。スピーカモジュールにはさらに、個別スピーカに要求される合成信号および必要なチャネル情報が供給される。
ここでさらに留意すべきことは、チャネル情報を算出するためかつ同期信号を算出するため、および個別スピーカのための個別合成信号と個別チャネル情報とを算出するために、手段24にはさらに特定の再生室内におけるスピーカ位置が提供されなければならないということである。これは図2で回線30によって象徴的に示される。
以下に、図3を参照しながらスピーカモジュールの好適な実施形態について説明する。まず、スピーカモジュールは受信器/復号器ブロック31を備え、このブロック31は選択手段からデータストリームを受信し、かつこのデータストリームから、合成信号31aと、関連するチャネル情報31bと、同期情報31cとを抽出する。図3に示すスピーカモジュールはさらに、中央装置としてオーディオレンダリング手段32を備え、この手段32は、1つまたは複数の合成信号を使用し、かつこれら合成信号に関連付けられたチャネル情報を使用することにより、スピーカのための再生信号を算出する。さらに、スピーカモジュールはデジタル/アナログ変換器付き信号処理手段33を備え、この信号処理手段33は、音声信号を生成するためにそれぞれのスピーカLSi34に供給されるアナログスピーカ信号を生成する。信号処理手段33、特にデジタル/アナログ変換器と協働するリサンプラに対し、受信器31によってデータストリームから抽出された同期情報31cが供給される。その結果、スピーカは、図2の手段24によって算出された合成信号を、互いに畳重しかつチャネル情報が付与された状態で、中央波面合成モジュールと同期するように、従って他の全てのスピーカモジュールとも同期するように時間的に正確に出力することができる。
したがって、図3に示したスピーカモジュールは、デジタル受信器、他の信号処理手段、およびデジタル/アナログ変換器の組合せによって特徴付けられ、特に、信号処理手段33にはデジタル増幅器を設けることができる。代替的に、信号はデジタル/アナログ変換後に増幅することができるが、同期のより正確な可能性のため、デジタル増幅が好ましい。さらに、短いアナログ回線を介してスピーカ34を信号処理手段33に結合することが好ましい。しかし、信号処理手段33からスピーカ34までの回線を短くすることができない場合には、同期はデジタル側で実行することが好ましいので、スピーカモジュールとスピーカとの間の線長が非常に異なると、非同期化が発生するおそれがあり、それは可聴アーチファクトと波面合成によって形成しようとする音響印象の喪失とを導くおそれがあるので、全てのスピーカのそれぞれの回線が、同じ長さであるかあるいは所定の許容範囲内の差異を持つ長さであることが好ましい。
本発明の好適な実施形態では、チャネルインパルス応答は時間ドメインまたは周波数ドメインのチャネル情報として伝送される。この場合、オーディオレンダリング手段32は、個別の合成信号とこれら合成信号に関連付けられるチャネル情報との畳み込みを実行するように設計される。この畳み込みは実際には時間ドメインで畳み込みとして実現することができ、あるいは必要に応じて、周波数ドメインの解析信号にチャネル伝達関数を乗算することによって周波数ドメインで実行することができる。処理上の手間に関して最適化された実施形態を図4に示す。図4はオーディオレンダリング手段32の好適な実施形態を示し、全ての合成信号Sji(t)のための時間−周波数変換ブロック34a,34b,34cと、合成信号の変換値にチャネルインパルス応答の変換値Hji(f)を乗算するため全ての分岐に設けられた乗算器35a,35b,35cと、加算器36と、終端の周波数−時間変換手段37とを備え、それらは図4に示すように接続されている。図4に示す構成では、それぞれチャネル伝達関数を既に有する合成信号が周波数ドメインで加算されるので、合成信号の個数とは関係なく、全てのスピーカモジュールに対し単一の周波数−時間変換手段のみが存在するだけであり、処理上の手間が低減されるという事実が特徴として挙げられる。実施形態によっては、合成信号Sjiの時間−周波数変換は完全に並列で実行されることができ、または充分な時間がある場合には、直列/並列あるいは完全に直列でも実行されることができる。
これまで示したように、図4に示した好適なオーディオレンダリング手段32は、スピーカモジュールに供給される合成信号の個数とは関係なく、好ましくは逆FFTとして実現される単一の周波数−時間変換手段37のみを有するという事実によって特徴付けられる。この場合では、手段34a,34b,34cはFFT(FFT=高速フーリエ変換)として実現されている。
図3に示したオーディオレンダリング手段32はさらに、図2に示した中央波面合成モジュールからの特殊なプログラム情報を得るように構成されている。したがって、マルチプレクサ/伝送ステージ26は、プログラム情報をスピーカモジュールに提供するために特定の出力を備える。適用事例によっては、プログラム情報をデータストリーム内で合成信号およびチャネル情報と乗算することもできるが、これは必須ではない。
以下に、プログラム情報をスピーカモジュールに伝送するための例を説明する。チャネル情報がチャネルインパルス応答として表現され、個別スピーカモジュールに伝送される場合、データレートを節約する意味で、インパルス応答全体ではなく、エンベロープがしきい値より高い量を有するインパルス応答のフロント領域にあるインパルス応答のサンプルだけを伝送することが好ましい。ここで、インパルス応答は通常、短時間だけ大きい値を持ち、加速度的に小さい値を取るようになり、最終的にはいわゆる「残響テール」(reverberation tail)を持つことに留意すべきである。それは音響印象にとっては重要であるが、そのサンプルはもはや高くはなく、その特定の位相関係は耳で強く知覚されない。この場合、しきい値より低いエンベロープを持つ残響テールは、サンプルに基づいて伝送するのではなく、単にエンベロープの支持値(supporting value)を伝送することが好ましい。本発明では、オーディオレンダリング手段32によって要求される残響テールのサンプルは、0と1の任意のシーケンスを生成するオーディオレンダリング手段によって生成され、その振幅はエンベロープの伝送された支持値によって加重される。さらなるデータ削減のため、少数の支持値だけを伝送し、支持値の間を補間し、次いで補間されたエンベロープをランダム0/1シーケンスの加重に使用することが好ましい。
ランダム0/1シーケンスは、「1」が正電圧値、「0」が負電圧値によって実現されることが好ましいことに留意すべきである。特定の値までは現実のサンプルであり、その後はエンベロープの単なる支持値であるチャネル情報をオーディオレンダリング手段が受信したかどうかに関する情報は、図3に示すプログラム情報を介してトランスミッタとレシーバとに共有され、変化することはない。
さらに、本発明の波面合成モジュールは、図2に示されていないWFSミキシングコンソールを備えており、このコンソールはWFS音表現を生成するためのオーサ(author)システムを備える。
以下に、合成信号の生成の基礎を成す手順について、図6を参照しながら説明する。3つの仮想位置60,61,62にある3つの仮想音源と、中央WFSモジュールには既知の現実のスピーカ位置にあるスピーカLSi63とを有するシステムについて考察する。さらに、仮想音源の仮想位置60,61,62は、それらがWFS処理された入力信号内に供給されるので、あるいはそれらが仮想位置を算出するための手段25によって音源位置を使用して導出されるので、中央波面合成モジュールには既知である。合成信号S1i,S2i,S3iはスピーカ63が放射しなければならない信号であり、それらはそれぞれの仮想位置60,61,62に由来するものである。このことから、これまで説明してきたように、全てのスピーカが複数の合成信号の重畳を放射することが分かる。
さらに、チャネルjiは全ての仮想位置と全てのスピーカとの間に定義され、これは図7に関連して説明するように、例えばインパルス応答、伝達関数、または他のいずれかのチャネル情報によって記述されることができる。全ての所望の特性はチャネルの記述の中に組み込まれることが可能であり、次いで、波面合成モジュールによって算出された合成信号に対し、合成信号に関連付けられたそれぞれのチャネルのためのチャネル情報を提供することができる。チャネル情報がチャネルを記述するインパルス応答として与えられる場合には、畳み込みが適用される。信号が周波数ドメインに存在する場合には、乗算が行われる。実施形態に応じて、代替的チャネル情報を使用することもできる。
以下に、仮想音源71から現実のスピーカ72までのチャネル70に影響を及ぼすことができる情報について、図7を参照しながら説明する。まず、仮想音源71の仮想位置がチャネル情報内、即ち、例えばチャネルインパルス応答内に導入される。さらに、大きさや密度等の仮想音源の特性が導入される。したがって、例えば小さなトライアングルは、大きなティンパニとは異なる方法で表現されモデル化される。さらに、図7に示すように、録音室の特性がチャネル伝達関数の中に導入される。さらなる影響要素は、オーディオ再生システム全体のシステム歪みであり、例えばスピーカのスピーカ歪みおよび不具合がそれぞれ含まれる。さらに、再生室の音響特性の補償を達成するために、再生室に関する情報がチャネル情報内に導入される。この情報から、例えば再生室がスピーカの正面に対向する壁を持ち、その壁による反射を抑制しなければならないことが分かっている場合には、それぞれのスピーカはこの情報を考慮に入れて制御され、そのためこれらのスピーカが反射された信号に対し180度位相シフトされかつそれぞれの振幅を有する信号を含むので、その結果、反射が除去され、壁は音響学的に透明になり、つまりリスナーにはもはや反射による識別が不可能となる。
最後に、チャネル情報は、特定の目標再生音響を設定するために使用することもできる。したがって、最初に再生室補償の形で再生室の音響を抑制してチャネル情報を生成し、次にその生成されたチャネル情報を波面合成モジュールに提供し、その結果、他のいずれの再生室の音響をも1つの再生室内でシミュレーションできるようにすることが好ましい。
条件によって、オーディオ信号を再生するための本発明の方法は、ハードウェアまたはソフトウェアで実現することができる。実現方法としては、電子的に読取り可能な制御信号を含むデジタルメモリ媒体、特にディスクまたはCDが挙げられ、上述の方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協働することが可能なものである。概して、本発明は、コンピュータプログラム製品がコンピュータで実行されるときに、機械可読媒体に格納された本発明の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品にも存在する。換言すると、本発明は、コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるときに、ある方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムとしても実現することができる。

Claims (20)

  1. 複数のスピーカ(14a〜14e)が所定のスピーカ位置に配置された再生室内でオーディオ信号を再生するための方法であって、オーディオ信号が複数のオーディオトラックを有し、音源位置が各オーディオトラックに関連付けられたオーディオ再生システムにおいて、
    仮想位置が上記オーディオトラックに関連付けられる上記音源位置に依存しており、全ての上記仮想位置から全ての上記スピーカまでの全てのオーディオチャネルのためのオーディオチャネル情報が存在するように、上記仮想位置から上記スピーカ位置までの全てのオーディオチャネルのための上記オーディオチャネル情報を決定し、上記スピーカの仮想位置から合成信号を算出し(24)、かつ上記各スピーカによって再生されるべき1つまたは複数の上記合成信号と、この1つまたは複数の上記合成信号のための上記チャネル情報とを、全てのスピーカに供給するために形成された中央波面合成モジュール(10)と、
    複数のスピーカモジュール(12a〜12e)であって、上記スピーカモジュールが上記スピーカと関連付けられており、かつ上記各スピーカモジュールが、上記各スピーカのための1つまたは複数の上記合成信号と上記チャネル情報とを受け取るための受信器(31)と、上記各スピーカのための1つまたは複数の上記合成信号と上記チャネル情報とを使用することによって、上記スピーカ用の再生信号を算出するためのレンダリング手段(32)と、上記再生信号によって上記各スピーカに供給することができるアナログスピーカ信号を生成するための信号処理手段(33)と、を有する複数のスピーカモジュール(12a〜12e)と、
    一方を上記中央波面合成モジュールに、他方を上記スピーカモジュールに個別に結合され、上記中央波面合成モジュールから全ての上記スピーカまでのびる複数の伝送線路(16a〜16e)と、
    を備えることを特徴とするオーディオ再生システム。
  2. 上記各スピーカモジュールが、それに関連付けられる上記スピーカに対し、上記スピーカと上記スピーカモジュールとの間の空間距離が上記スピーカモジュールと上記中央波面合成モジュールとの間の空間距離より短くなるように結合されていることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ再生システム。
  3. 上記オーディオチャネル情報は、上記オーディオチャネル用のインパルス応答であることを特徴とする請求項1または2に記載のオーディオ再生システム。
  4. 上記再生システムを算出するためのレンダリング手段は、1つまたは複数の上記合成信号をそれぞれのインパルス応答と共に使用することによって、1つまたは複数の畳み込みを実行する畳み込み手段を有することを特徴とする請求項3に記載のオーディオ再生システム。
  5. 上記レンダリング手段(32)は、
    上記各合成信号のための時間ドメイン−周波数ドメイン変換手段(34a,34b,34c)と、
    上記各合成信号のための乗算手段(35a,35b,35c)と、
    周波数ドメインに存在するそれぞれのチャネルインパルス応答を有する上記合成信号を加算するための加算手段(26)と、
    和信号を時間ドメインに変換して上記再生信号を得るための単一の周波数ドメイン−時間ドメイン変換手段(37)と、
    を備えることを特徴とする請求項4に記載のオーディオ再生システム。
  6. 上記スピーカモジュール内の上記信号処理手段(33)は、デジタル増幅器を有することを特徴とする請求項1に記載のオーディオ再生システム。
  7. 上記中央波面合成モジュールは、上記チャネルインパルス応答サンプルの第1部分をサンプルによって伝送し、第2部分をエンベロープ支持値を使用して伝送するように形成され、
    上記レンダリング手段(32)は、上記支持値を使用して、上記チャネルインパルス応答の第2部分を再構成するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のオーディオ再生システム。
  8. 上記レンダリング手段(32)は、ノイズ発生器または擬似ノイズ発生器によって上記チャネルインパルス応答の第2部分を発生するように形成され、ノイズ値または擬似ノイズ値が上記支持値および/または上記支持値から補間された補助値により振幅を加重されることを特徴とする請求項7に記載のオーディオ再生システム。
  9. 上記オーディオトラックが標準マルチチャネルトラックであり、上記音源位置が再生室内の再生スピーカの配置に関して標準位置であり、上記標準位置の個数が上記標準マルチチャネルトラックの個数に等しいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のオーディオ再生システム。
  10. 上記波面合成モジュールは、上記オーディオチャネル情報を算出するために、上記仮想位置(25)を上記標準位置(22)から算出するように形成されていることを特徴とする請求項9に記載のオーディオ再生システム。
  11. 複数の上記スピーカが一緒に平面音波を放出するように、上記波面合成モジュールが上記仮想位置を無限領域に配置するように形成されていることを特徴とする請求項10に記載のオーディオ再生システム。
  12. 上記波面合成モジュールは所定の仮想位置にある仮想再生スピーカを点音源としてシミュレーションするように形成され、上記点音源は、最適な再生領域がほぼ上記再生室の全体を含むように複数の上記スピーカから遠くに配置されたことを特徴とする請求項10に記載のオーディオ再生システム。
  13. 上記オーディオトラックはビデオまたは映画フィルムの一部であり、上記波面合成モジュールは、映像再生の前にある期間だけシフトされた上記ビデオまたは映画フィルムのオーディオトラックをサンプリングするように形成され、上記時間は、上記波面合成モジュール内および上記スピーカモジュール内における処理時間を考慮して、画像および音声の同時再生が得られるように選択されることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のオーディオ再生システム。
  14. 録音環境におけるオーディオオブジェクトの上記オーディオ信号が、上記オブジェクトのオーディオ信号と、録音環境におけるオーディオオブジェクトの位置と、大きさまたは密度等のオーディオオブジェクトの1つまたは複数の特性と、および/または上記録音環境の音響特性に関する情報とをオーディオトラックとして含むことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載のオーディオ再生システム。
  15. 上記波面合成モジュールが、上記録音環境における上記オーディオオブジェクトの位置から上記仮想位置を決定するように形成されていることを特徴とする請求項14に記載のオーディオ再生システム。
  16. 上記波面合成モジュールが、上記再生室の音響特性に関する情報を得るように、かつ上記チャネル情報を決定するときにそれらの情報を考慮するように形成され、その結果、複数の上記スピーカによって再生される音波が、上記再生室の音響学的影響を低減するように形成されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のオーディオ再生システム。
  17. 上記波面合成モジュールは、上記オーディオ信号の再生前または再生中に、
    上記再生室に配置された上記スピーカとマイクロフォンとの間の複数の室インパルス応答を算出し、
    上記複数の室インパルス応答から上記再生室の総インパルス応答を補間し、かつ
    上記チャネル情報を算出するときに上記総インパルス応答を考慮して、上記再生室の音響特性を低減することによって、
    上記再生室の音響効果に対する適応を実行するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載のオーディオ再生システム。
  18. 上記中央波面合成モジュールが同期情報を生成し、かつその同期情報を上記スピーカモジュールへのデータストリーム内に組み込むように形成され、上記複数のスピーカモジュールが上記中央波面合成モジュールから上記同期情報を受信し、かつそれを同期化のために使用して上記スピーカモジュールを上記中央波面合成モジュールに同期させるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載のオーディオ再生システム。
  19. 複数のスピーカが所定のスピーカ位置に配置された再生室内でオーディオ信号を再生するための方法であって、オーディオ信号が複数のオーディオトラックを有し、音源位置が各オーディオトラックに関連付けられた方法において、
    仮想位置が上記オーディオトラックに関連付けられた上記音源位置に依存しており、全ての上記仮想位置から全ての上記スピーカまでの全てのオーディオチャネルのためのオーディオチャネル情報が存在するように、上記仮想位置から上記スピーカ位置までの全てのオーディオチャネルのための上記オーディオチャネル情報を中央で決定するステップと、
    上記スピーカの仮想位置から上記合成信号を中央で算出するステップと、
    1つまたは複数の上記合成信号と関連するチャネル情報とを複数のスピーカモジュールに伝送するステップと、
    各スピーカ用の1つまたは複数の上記合成信号と上記関連チャネル情報とを使用して、上記スピーカの再生信号を分散的に算出するステップと、
    デジタル/アナログ変換を使用することにより信号処理を実行してアナログスピーカ信号を生成するステップと、
    上記アナログスピーカ信号を複数の上記スピーカから集合的に取り出すステップと、
    を含むことを特徴とする方法。
  20. プログラムがコンピュータで実行されるときに、請求項19に記載の方法を実行するためのプログラムコードとして用いられるコンピュータプログラム。
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