JP2006504408A - パントテン酸の高生産のための微生物及び方法 - Google Patents

パントテン酸の高生産のための微生物及び方法 Download PDF

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Abstract

この発明は、改変されたパントテン酸生合成酵素活性及び改変されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成酵素活性を有する微生物を利用するパントエート及びパントテン酸の高生産のための改良方法を特徴とする。特に、この発明は、その合成に直接的に又は間接的に寄与する基質又は酵素の増加によって、鍵となる中間体ケトパントエートの量を増加し、所望の生産物の生産を高める方法を特徴とする。組換え微生物及びその培養条件も特徴とする。さらに、そのような微生物によって生産される組成物も特徴とする。

Description

関連出願
本出願は米国仮特許出願第60/393,826「パントテン酸の高生産のための微生物及び方法」(出願日2002年7月3日)に基づく優先権を主張するものである。本出願は、国際特許出願第/PCT/US02/00925「パントテン酸の高生産のための微生物及び方法」(出願日2002年1月18日(係属中))に関連し、該国際特許出願は順に、先の出願に係る、仮特許出願第60/347,638「パントテン酸の高生産のための微生物及び方法」(出願日2002年1月11日(係属中))、仮特許出願第60/263,053(出願日2001年1月19日(期間経過))、及び仮特許出願第60/262,995(出願日2001年1月19日(期間経過))、の利益を主張するものである。本出願はまた、米国特許出願第09/667,569(出願日2000年9月21日(係属中))にも関連し、該米国特許出願は米国特許出願第09/400,494(出願日1999年9月21日(放棄))の一部係属出願である。米国特許出願第09/667,569も先の出願に係る米国仮特許出願第60/210,072(出願日2000年6月7日(期間経過))、米国仮特許出願第60/221,839(出願日2000年7月28日(期間経過))、及び米国仮特許出願第60/227,860(出願日2000年8月24日(期間経過))の利益を主張するものである。上述の各関連出願全体の内容は、参照により本明細書中に組み込まれている。
発明の背景
パントテン酸(pantothenic acid)又はビタミンB5としても知られるパントテン酸(pantothenate)は、ビタミンB複合体の一員であり、家畜類及びヒトを含む哺乳類にとって必要な栄養物質である(例えば、水溶性のビタミンサプリメント、あるいは飼料添加物といった食料源からもたらされる)。細胞において、パントテン酸は主として補酵素A(CoA)やアシルキャリアータンパク(ACP)の生合成に利用される。これらの補酵素は、これらの分子の4'-ホスホパンテテイン部分のスルフヒドリル基と一緒にチオエステルを形成するアシル部分の代謝において機能する。これらの補酵素は全ての細胞で不可欠であり、細胞内物質代謝における100以上の異なる中間反応に関与する。
パントテン酸(特に、生物活性Dアイソマー)の従来の合成手段はバルク化成品からの化学合成を介するものであり、その方法では、基質の莫大なコストのみならず、ラセミ中間体の光学分割のための要件が大きな障害となっている。従って、研究者は近年、(細菌は自らパントテン酸を合成できるので)パントテン酸生合成法に有用な酵素を生産する細菌又は微生物系に注目している。特に、生物変換法はパントテン酸の好ましいアイソマーの生産に有利な方法として評価されている。さらに、微生物による直接的な合成方法は近年、D‐パントテン酸の生産を容易にする方法として検討されてきた。
発明の概要
しかし、依然としてパントテン酸の生産方法、特に所望の生産物をより高い収量で得るための最適化された微生物法の改良に対する重大なニーズがある。
本発明はパントテン酸の生産のための改良法(例えば微生物による合成)に関する。パントテン酸生産方法は、例えばパントテン酸生合成経路及びイソロイシン-バリン生合成経路(例えば図1を参照)の鍵酵素を過剰発現するために操作された微生物を特徴とする関連出願に記載されている。株は標準の発酵法(例えば国際公開第WO 01/21772及び米国特許出願第60/262995を参照)において、50g/l以上のパントテン酸を生産することが可能となるよう操作された。特に、panB、panC、panD、panE1遺伝子の発現の増加及びilvBNC、ilvD遺伝子の発現の増加は、グルコースを商業的に魅力的な量のパントテン酸へ変換する株をもたらす。
例えばパントテン酸の生産量を高めるために、上記の方法に関する様々な改良が現在開発されている。例えば米国特許出願第09/667、569は改変(例えば活性の欠損又は低下)されたパントテン酸キナーゼ酵素を有する生産株を記載している。このような株においては、補酵素A(CoA)合成のためのパントテン酸の利用を減少させることによって、パントテン酸レベルが効果的に増加する。米国特許出願第60/262,995はさらに、種々のパントテン酸生合成酵素及び/又はイソロイシン−バリン生合成酵素及び/又はそれらの各基質の利用、すなわち[R]-3-(-2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリルアミノ)-プロピオン酸(「HMBPA」)として同定された選択的産物の生産への使用が最小限となるよう操作された改良型のパントテン酸生産株について記載している。
本発明は、パントテン酸生合成経路、すなわちメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路のための基質を供給する生合成経路を調節することによって、パントテン酸の生産をさらに高める方法を特徴とする。特にMTF生合成経路の改変によるMTF量の増加は、鍵となるパントテン酸生合成経路の中間体である高められた量のケトパントエートをもたらすことが見出された。ケトパントエート量の増進は、次に、適切に操作された株において著しく高められたパントテン酸の生産量をもたらす。本発明者らは、例えばpanB、panC、panD、panE1、ilvBNC、及びilvD遺伝子を過剰発現するために操作された株によるパント化合物(例えばパントテン酸)の生産における、律速段階を確定し、本明細書においてMTF生合成経路の改変によってこの制限を克服する方法を記載する。
少なくとも3つの効果的なMTF生合成経路の改変手段が本明細書に記載される。一態様において、パントテン酸生産微生物の培養培地中のセリン量の増加は、パント化合物の高生産を引き起こすことが示される。また3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ(serA遺伝子産物)の活性又は合成の増加、あるいはセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(glyA遺伝子産物)の活性又は合成の増加によって、適切に操作された微生物においてセリンとメチレンテトラヒドロフォレートの生合成が増進され、この増加がパント化合物の生産を増加することも示される。3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ(serA遺伝子産物)の合成の増加は、例えば適切に操作された発現カセットからserAを過剰発現することにより達成される。セリンヒドロキシルメチルトランスフェラーゼ(glyA遺伝子産物)の合成の増加は、例えば適切に操作された発現カセットからglyA遺伝子を過剰発現することにより達成される。あるいは、セリンヒドロキシルメチルトランスフェラーゼ(glyA遺伝子産物)の量は、glyA遺伝子の調節を改変することによって増加される。例えばpurR遺伝子といったglyA発現について負の調節因子(すなわちリプレッサー)をコードしている遺伝子の変異又は欠失は、効果的にglyA遺伝子発現を増加する。パント化合物生産微生物におけるMTF量を増加するために適した別の方法は、グリシンをMTFに変換する責任酵素(例えばグリシン開裂酵素)の脱調節することを含む。
従って、本発明は、その一態様において、パントテン酸の生産が高まるような条件下で、改変されたパントテン酸生合成酵素活性及び改変されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成酵素活性を有する微生物を培養することを含む、パントエート及びパントテン酸の高生産方法を特徴とする。本発明は別の態様において、パントテン酸生産の生産が高まるような条件下で、改変されたパントテン酸生合成酵素活性、改変されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素、及び改変されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成酵素活性を有する微生物を培養することを含む、パントエート及びパントテン酸の高生産方法を特徴とする。特に本発明は、鍵中間体であるケトパントエートの量の増加や、その合成に寄与する酵素によって、所望の生産物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の高生産方法に特徴がある。好適な方法は、微生物培養の36時間後、50、60、70g/Lまたはそれ以上の量のパントテン酸生産を生じさせ、あるいは微生物培養の36時間後、少なくとも60、70、80、90、100、110、120g/Lまたはそれ以上の量のパントテン酸が生産される。組換え微生物及びそれを培養する条件も特徴とする。また、そのような微生物によって生産される組成物についても特徴とする。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明と特許請求の範囲から明らかになるだろう。
発明の詳細な説明
本発明はパント化合物(例えば、ケトパントエート、パントエート及び/又はパントテン酸)を生産するための改良法及び該改良法に使用するために操作された微生物に関する。50g/l以上のパントテン酸を生産することが可能な株は、国際特許出願第WO01/21772及び米国特許出願第60/262,995に教示されるとおりに構築することができる。panB、panC、panD、panEl遺伝子発現の増加及びilvBNC、ilvD遺伝子発現の増加により、グルコース(ピルビン酸)を商業的に魅力ある量のパントテン酸に変換する株(例えばBacillus株)の設計が可能である。
しかし、ケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼといったpanB遺伝子産物を高レベルに発現するように操作された株(例えば米国特許出願第09/667,569に記載されているPA824、米国特許出願第60/262,995に記載されているPA668-24)において、パントテン酸生産をさらに増加するための律速段階は依然としてα−ケトイソ吉草酸(α−KIV)のケトパントエートへの変換であることを今回見出した。α−KIVの合成を増加する方法は、これまで国際特許出願第WO01/21772及び米国特許出願第60/262,995に記載された。本明細書で本発明者らは、パントテン酸生産の更なる増加が正に、パント化合物生産微生物を、MTF量又はMTF合成速度を増進または増加するよう操作することによって達成し得ることを開示する。
したがって、本発明は、メチレンテトラヒドロフォレート(「MTF」)生合成経路を調節することを含むパント化合物生産を改良する方法を特徴とする。特に、パント化合物生産微生物におけるMTF量の増加は、ケトパントエート生産を増進する有効な手段であり、ついで、その結果、適切に操作された組換え微生物におけるパントエート及び/又はパントテン酸生産の増進をもたらす。
ケトパントエートヒドロキシメチレントランスフェラーゼは、α−ケトイソ吉草酸(「α‐KIV」)及びMTFからのケトパントエートの生産を触媒する(例えば図1を参照)。特にこの酵素は、ケトパントエートを産生するため、MTFからα−KIVへヒドロキシメチル基の転移を触媒する。α−KIV及びMTFはどちらもこの反応の基質であり、それらの合成はケトパントエートの生産を改善するために増加され得る。E.coli(及びBacillus subtilisでも)におけるMTF生合成の経路が図2に概説されている。MTFはglyA遺伝子がコードするセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼによって触媒される反応においてテトラヒドロフォレート及びセリンから合成される。MTF合成の改良のため、細胞は基質及びglyA遺伝子産物の量の増加を必要とする。
1つの実施形態において、本発明は、パントテン酸生産が高まるような条件下で、(i)脱調節(deregulated)されたパントテン酸生合成経路(例えば脱調節された1種、2種、3種又は4種のパントテン酸生合成酵素を有する)、(ii)脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)合成経路(例えば脱調節された少なくとも1種又は2種のメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成酵素を有する)、を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とする。例示のパントテン酸生合成酵素にはケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、ケトパントエートレダクターゼ、パントテン酸シンテターゼ、並びにアスパラギン酸−α−デカルボキシラーゼが含まれる。例示のMTF生合成酵素にはserA遺伝子産物及びglyA遺伝子産物が含まれる。
他の実施形態において、本発明は、パントテン酸生産が高まるような条件下で、(i)脱調節されたパントテン酸生合成経路(例えば脱調節された1種,2種,3種又は4種のパントテン酸生合成酵素を有する)、(ii)脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路(例えば脱調節された1種,2種又は3種類のilv生合成酵素を有する)、及び(iii)脱調節されたMTF生合成経路(例えば脱調節された少なくとも1種又は2種のMTF生合成酵素を有する)、を有する微生物を培養することを含むパントテン酸の高生産方法を特徴とする。例示のilv生合成酵素にはアセトヒドロキシ酸シンテターゼ、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ、及びジヒドロキシ酸デヒドラターゼが含まれる。
別の実施形態において、本発明は、36時間の培養後、少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産され、好適には少なくとも60g/Lのパントテン酸が生産され、さらに好適には少なくとも70g/Lのパントテン酸が生産され、最も好適には少なくとも80g/L、少なくとも90g/L、少なくとも100g/L、少なくとも110g/L、又は少なくとも120g/Lあるいはそれ以上のパントテン酸が生産されるように、脱調節されたパントテン酸生合成経路、脱調節されたilv生合成経路、及び脱調節されたMTF生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法を特徴とする。
別の実施形態において、本発明は、48時間の培養後、少なくとも70g/Lのパントテン酸が生産され、好適には少なくとも80g/Lのパントテン酸が生産され、さらに好適には少なくとも90g/Lのパントテン酸が生産されるように、脱調節されたパントテン酸生合成経路、脱調節されたilv生合成経路、及び脱調節されたMTF生合成経路を有する微生物を培養することを含むパントテン酸生産方法を特徴とする。
1つの例示的な実施形態において、MTF生合成経路の脱調節は、パント化合物生産株におけるserA遺伝子産物の脱調節、例えばserA遺伝子の構成的な発現又はserAのフィードバック耐性対立遺伝子の導入によって、達成される。別の例示的な実施形態において、MTF生合成経路の脱調節は、パント化合物生産株におけるglyA遺伝子産物の脱調節、例えば、purR遺伝子産物の変異又は破壊によるglyA遺伝子の過剰発現又はglyA遺伝子の抑制のモジュレートによって、達成される。別の例示的な実施形態において、MTF生合成は、培養培地中のセリンの増加又はグリシン開裂酵素の脱調節によってモジュレートされる。
本発明はさらに、パントテン酸生産がパントテン酸キナーゼ活性の調節(例えばパントテン酸キナーゼ活性の低下)によってさらに高められる上記の方法を特徴とする。1つの実施形態において、CoaAは欠失され、CoaXはダウンレギュレーションされる。また別の実施形態において、CoaXが欠失され、CoAがダウンレギュレーションされる。さらに別の実施形態においては、CoaX及びCoaAがダウンレギュレーションされる。本発明はさらに、微生物を過剰セリンの条件下で培養することを含む、上記の方法を特徴とする。本発明はさらに、微生物が、パントテン酸生産がβ‐アラニン供給とは無関係であるように脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する、上記の方法を特徴とする。
さらに本発明の方法によって合成された生産物も特徴とし、該方法によって生産されたパントテン酸を含む組成物についても同様である。さらに本発明方法に使用する組換え微生物も特徴とする。1つの実施形態において、本発明は、パントテン酸の高生産のための組換え微生物であって、脱調節されたパントテン酸生合成経路及び脱調節されたMTF生合成経路を有する、組換え微生物を特徴とする。別の実施形態において、本発明は、パントテン酸の高生産のための組換え微生物であって、脱調節されたパントテン酸生合成経路、脱調節されたMTF生合成経路、及び脱調節されたilv経路を有する、組換え微生物を特徴とする。微生物はさらに低下したパントテン酸キナーゼ活性を有することができる。好適な微生物はBacillus属、例えばBacillus subtilisに属する。
上述したように、本発明の特定の態様は、脱調節されたパントテン酸生合成経路を少なくとも1つ有する微生物を培養することを含むパント化合物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の高生産方法を特徴とする。「パントテン酸生合成経路」という用語には、パントテン酸の合成又は形成に利用される、パントテン酸生合成酵素(例えば生合成酵素をコードする遺伝子によってコードされるポリペプチド)、化合物(例えば、基質、中間体、あるいは産生物)、補助因子などが含まれる。「パントテン酸生合成経路」という用語には、微生物内で(例えばin vivoで)パントテン酸合成をもたらす生合成経路、並びにin vitroでパントテン酸合成をもたらす生合成経路が含まれる。
本明細書中で用いられる「脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する」微生物には、少なくとも1種のパントテン酸の生産が(例えば、生合成酵素の脱調節前の微生物又は野生型の微生物、におけるパントテン酸生産と比較して)高まるように脱調節された(例えば過剰発現された)(これらの用語はいずれも本明細書中で定義される)パントテン酸生合成酵素を有する微生物が含まれる。「パントテン酸(pantothenate)」という用語には、「パントテン酸(pantothenic acid)」とも称される遊離酸形態のパントテン酸、及び「パントテン酸塩(pantothenate salt)」とも称されるその全ての塩(例えば、パントテン酸(pantothenate)又はパントテン酸(pantothenic acid)の酸性水素を、例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウムなどのカチオンと置換することによって誘導される)が含まれる。また「パントテン酸」という用語にはパントテン酸のアルコール誘導体も含まれる。好適なパントテン酸塩はパントテン酸カルシウム又はパントテン酸ナトリウムである。好適なアルコール誘導体はパントテノールである。本発明のパントテン酸塩及び/又はアルコールには、本明細書に記載した遊離酸から従来法によって調製された塩及び/又はアルコールが含まれる。別の実施形態において、パントテン酸塩は本発明の微生物によって直接合成される。本発明のパントテン酸塩は同様に、従来法によってパントテン酸の遊離酸形態に変換され得る。「パントテン酸」はまた、本明細書中で「pan」と称される。
好ましくは、「脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する」微生物には、パントテン酸生産が1g/L以上となるように脱調節された(例えば過剰発現された)少なくとも1種類のパントテン酸生合成酵素を有する微生物が含まれる。さらに好ましくは、「脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する」微生物には、パントテン酸生産が2g/L以上となるように脱調節された(例えば過剰発現された)少なくとも1種類のパントテン酸合成酵素を有する微生物が含まれる。なお一層好ましくは、「脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する」微生物には、パントテン酸生産が10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/Lあるいはそれ以上となるよう脱調節された(例えば過剰発現された)少なくとも1種類のパントテン酸合成酵素を有する微生物が含まれる。
「パントテン酸生合成酵素」という用語は、パントテン酸生合成経路の化合物(例えば中間体あるいは産生物)の形成に利用されるあらゆる酵素をも含むものとする。例えば、α−ケトイソ吉草酸からのパントエート合成は、中間体であるケトパントエートを経由して進む。ケトパントエートの形成は、パントエート生合成酵素PanBあるいはケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(panB遺伝子産物)によって触媒される。パントエートの形成は、パントエート生合成酵素PanE1あるいはケトパントエートレダクターゼ(panE1遺伝子産物)によって触媒される。アスパラギン酸からのβ−アラニンの合成は、パントテン酸生合成酵素PanDあるいはアスパラギン酸−α−デカルボキシラーゼ(panD遺伝子産物)によって触媒される。パントエート及びβ−アラニンからのパントテン酸の形成(例えば縮合)は、パントテン酸生合成酵素PanCあるいはパントテン酸シンテターゼ(panC遺伝子産物)により触媒される。パントテン酸生合成酵素はまた、本明細書中に記載したHMBPA生合成経路における酵素としての代替機能を成すものであり得る。
したがって、1つの実施形態において、本発明は、脱調節された(例えばパントテン酸生産が高まるように脱調節された)少なくとも1種類のパントテン酸生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とし、前記酵素は、例えばPanB(すなわちケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(すなわちパントテン酸シンテターゼ)、PanD(すなわちアスパラギン酸−α−デカルボキシラーゼ)、PanE1(すなわちケトパントエートレダクターゼ)からなる群から選択される。別の実施形態において、本発明は、脱調節された少なくとも2種類のパントテン酸生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とし、前記酵素は、例えばPanB(すなわちケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(すなわちパントテン酸シンテターゼ)、PanD(すなわちアスパラギン酸−α−デカルボキシラーゼ)、そしてPanE1(すなわちケトパントエートレダクターゼ)からなる群から選択される。別の実施形態において、本発明は、脱調節された少なくとも3種類のパントテン酸生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とし、前記酵素は、例えばPanB(すなわちケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(すなわちパントテン酸シンテターゼ)、PanD(すなわちアスパラギン酸−α−デカルボキシラーゼ)、そしてPanE1(すなわちケトパントエートレダクターゼ)からなる群から選択される。別の実施形態において、本発明は、脱調節された少なくとも4種類のパントテン酸生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とし、例えば微生物は、脱調節されたPanB(すなわちケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)、PanC(すなわちパントテン酸シンテターゼ)、PanD(すなわちアスパラギン酸−α−デカルボキシラーゼ)、そしてPanE1(すなわちケトパントエートレダクターゼ)を有する。
別の態様において、本発明は、脱調節されたイソロイシン−バリン生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とする。「イソロイシン−バリン生合成経路」という用語には、ピルビン酸からバリン又はイソロイシンへの変換の形成又は合成に利用される、イソロイシン−バリン生合成酵素(例えば生合成酵素をコードする遺伝子によってコードされるポリペプチド)、化合物(例えば基質、中間体又は産生物)、補助因子など、を含む生合成経路が含まれる。「イソロイシン−バリン生合成経路」という用語には、微生物で(例えばin vivoで)バリン又はイソロイシンの合成に導く生合成経路、並びにin vitroでバリン又はイソロイシンに導く生合成経路が含まれる。
本明細書中で用いられる「脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)経路を有する」微生物には、(例えば、前記生合成酵素の脱調節前の微生物あるいは野生型の微生物におけるイソロイシン及び/又はバリン及び/又はα‐KIV生産と比較して)イソロイシン及び/又はバリン及び/又はバリン前駆物質、α‐ケトイソ吉草酸(α‐KIV)の生産が高まるように脱調節された(例えば過剰発現された)(これらの用語はいずれも本明細書中で定義される)少なくとも1種類のイソロイシン‐バリン(ilv)生合成酵素を有する微生物が含まれる。図1はイソロイシン−バリン生合成経路の概略図を含む。イソロイシン−バリン生合成酵素は太字の斜字で示し、それらの対応する遺伝子は斜字で示している。「イソロイシン−バリン生合成経路」という用語は、イソロイシン−バリン生合成経路の化合物(例えば中間体あるいは産生物)の形成に利用される全ての酵素が含まれる。図1によれば、ピルビン酸からのバリンの合成は中間体である、アセトラクテート、α、β−ジヒドロキソイソ吉草酸(α、β−DHIV)及びα−ケトイソ吉草酸(α−KIV)を経由して進行する。ピルビン酸からのアセトラクテートの形成は、イソロイシン−バリン生合成酵素アセトヒドロキシ酸シンテターゼ(ilvBN遺伝子産物、あるいは、alsS遺伝子産物)によって触媒される。アセトラクテートからのα、β−DHIV形成は、イソロイシン−バリン生合成酵素アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ(ilvC遺伝子産物)によって触媒される。α、β−DHIVからのα−KIVの合成は、イソロイシン−バリン生合成酵素ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(ilvD遺伝子産物)によって触媒される。さらに、バリンとイソロイシンは、分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素によって個々のα−ケト化合物と相互変換され得る。イソロイシン−バリン生合成酵素は、本明細書中に記載するHMBPA生合成経路における酵素としての代替機能を成すこともできる。
したがって、1つの実施形態において、本発明は、脱調節された(例えばバリン及び/又はイソロイシン及び/又はα−KIV生産が高まるように脱調節された)少なくとも1種類のイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とし、該酵素はIlvBN、AlsS(すなわちアセトヒドロキシ酸シンテターゼ)、IlvC(すなわちアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ)、及びIlvD(すなわちジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)からなる群から選択される。別の実施形態において、本発明は、脱調節された少なくとも2種類のイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法を特徴とし、該酵素は、例えばIlvBN、AlsS(すなわちアセトヒドロキシ酸シンテターゼ)、IlvC(すなわちアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ)そしてIlvD(すなわちジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)からなる群から選択される。別の実施形態において、本発明は、脱調節された少なくとも3種類のイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素を有する微生物を培養することを含むパントテン酸の高生産方法を特徴とし、例えば、該微生物は、脱調節された、IlvBN又はAlsS(すなわちアセトヒドロキシ酸シンテターゼ)、IlvC(すなわちアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ)及びIlvD(すなわちジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)を有する。
本明細書中で記載される、パントテン酸生合成経路及び/又はイソロイシン−バリン(ilv)経路の酵素は、[R]−3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸(「HMBPA」)合成又は[R]−3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸(「HMBPA」)生合成経路において代替的な活性を有することが見出されている。「[R]−3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸(「HMBPA」)生合成経路」という用語には、HMBPAの合成又は形成に利用されるパントテン酸生合成経路及び/又はイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路と本来的に関連する生合成酵素及び化合物(例えば基質など)が関わる代替生合成経路が含まれる。「HMBPA生合成経路」という用語には、微生物で(例えばin vivoで)HMBPAに導く生合成経路、並びにin vitroでHMBPAの合成に導く生合成経路が含まれる。
「HMBPA生合成酵素」という用語には、HMBPA生合成経路の化合物(例えば中間体あるいは産生物)の形成に利用される全ての酵素が含まれる。例えば、α−ケトイソ吉草酸(α−KIV)からの2−ヒドロキシイソ吉草酸(α−HIV)の合成は、panE1又はpanE2遺伝子産物(panE1は本明細書中で代替的にケトパントエートレダクターゼと称される)及び/又はilvC遺伝子産物(本明細書中で代替的にアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼと称される)によって触媒される。β−アラニン及びα−HIVからのHMBPAの形成はpanC遺伝子産物(本明細書中で代替的にパントテン酸シンテターゼと称される)により触媒される。
「[R]−3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸(「HMBPA」)」という用語には、「[R]−3−(2−ヒドロキシ−3メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸」とも称される遊離酸形態のHMBPA、並びに「[R]−3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸塩」又は「HMBPA塩」とも称される、その任意の塩(例えば、3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸の酸性水素を、例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウムのカチオンと置換することによって誘導される)が含まれる。好適なHMBPA塩はHMBPAカルシウム及びHMBPAナトリウムである。本発明のHMBPA塩には、本明細書中に記載される遊離酸から従来法を介して調製される塩が含まれる。本発明のHMBPA塩は、同様に、従来法により3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸又は3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオネートの遊離酸型へ変換され得る。
好適な実施形態において、本発明は、脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パント化合物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の高生産方法を特徴とする。「メチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路」という用語は、PanB基質であるMTFの形成又は合成に利用される、MTF生合成酵素(例えば、生合成酵素をコードする遺伝子によってコードされるポリペプチド)、化合物(例えば、基質、中間体あるいは産生物)、補助因子など、が関わる生合成経路を指している。「メチレンテトラヒドロフォレート(MTF)合成経路」という用語は、in vivo(例えば、図2で示すE.coliにおける経路)でMTF合成に導く生合成経路、並びにin vitroでMTF合成に導く生合成経路を指す。「メチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成酵素」という用語には、メチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路の化合物(例えば中間体あるいは産生物)の形成に利用される全ての酵素が含まれる。
本発明は、少なくとも一部は、特定のMTF生合成酵素の脱調節の結果、MTFの高生産がもたらされるという知見に基づく。その脱調節がMTF生産の増進をもたらすようなMTF生合成酵素は、「MTF生合成増進酵素」と呼ばれる。例示の「MTF生合成増進酵素」はserA遺伝子産物(3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ)及びglyA遺伝子産物(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)である。「脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有する」微生物は、(例えば、前記生合成酵素の脱調節前の微生物又は野生型の微生物におけるMTF生産と比較して)MTFの生産あるいは生合成が高まるように、脱調節(例えば過剰発現)された少なくとも1種類のMTF生合成増進酵素を有する微生物である。
1つの実施形態において、本発明は、脱調節された「メチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路」(明細書中に定義される)を有する微生物を培養すること含む、パント化合物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の高生産方法を特徴とする。別の実施形態において、本発明は、脱調節されたMTF生合成増進酵素を有する微生物を培養することを含むパント化合物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の高生産方法を特徴とする。好適な実施形態において、本発明は、脱調節されたglyA遺伝子産物(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)及び/又は脱調節されたserA遺伝子産物(3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ)を有する微生物を培養すること含むパント化合物(例えばパントエート/パントテン酸)の高生産方法を特徴とする。
さらに別の態様において、本発明は、パントテン酸の生産を容易にするよう選択された培養条件下で微生物を培養すること、例えば、培養培地中で過剰セリン(glyA基質)とともに微生物を培養すること、を含むパントテン酸の高生産方法を特徴とする。「過剰セリン」という用語には、目的の微生物の培養に通常利用されるセリン量よりも増加した又は高いセリン量を含む。例えば、本明細書中の実施例に記載されるBacillus属微生物の培養は、通常約0−2.5g/Lのセリン存在下で行われる。したがって、過剰のセリン量には、2.5g/L以上の量、例えばおよそ2.5−10g/Lのセリン量が含まれ得る。さらに、過剰のセリン量には、5g/L以上の量、例えば約5−10g/Lのセリン量が含まれ得る。
さらに別の態様において、本発明は、例えば本明細書中に記載の微生物を、例えばパントテン酸及び/又はイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路前駆体及び/又は本明細書中に記載される中間体を増加させることによって、パントテン酸の産生がさらに高められるような条件下で微生物を培養すること(例えば、過剰β−アラニン、バリン及び/又はα−KIVの存在下で微生物を培養すること)、あるいは、β‐アラニン供給の不在下で有意量のβ‐アラニンの生産を可能にするように前記微生物を改変すること(すなわち、米国特許出願第09/09/667,569に記載されるβ‐アラニン非依存的微生物)、を特徴とする。
さらに別の態様において、本発明は、パントテン酸の生産が高まるように、パントテン酸生産株のパントテン酸キナーゼ活性をさらに調節することを特徴とする。パントテン酸キナーゼは、パントテン酸からの補酵素A(CoA)形成を触媒する鍵酵素である(例えば米国特許出願第09/09/667,569を参照)。パントテン酸キナーゼの調節(例えばパントテン酸キナーゼの活性又は量の低下)は、CoA生産を減らし、これはパントテン酸の蓄積に有利である。1つの実施形態において、パントテン酸キナーゼ活性は、CoaAの欠失及びCoaX活性のダウンレギュレーションによって低下する(CoaAとCoaXはいずれも特定の微生物におけるCoA生合成の第一段階を触媒することが可能である)。別の実施形態において、パントテン酸キナーゼ活性はCoaXの欠失及びCoaAのダウンレギュレーションによって低下する。さらに別の実施形態において、パントテン酸キナーゼ活性はCoaA及びCoaX活性のダウンレギュレーションによって低下する。
本発明の種々の態様は、下記のサブセクションでさらに詳細に説明する。
I.パントテン酸生合成酵素及び/又はイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素及び/又はメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成酵素をコードする種々の遺伝子のターゲティング
1つの実施形態において、本発明は、パントテン酸生合成経路及び/又はイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路及び/又はメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路の種々の生合成酵素の量(レベル)を、改変又は増加させることを特徴とする。特に、本発明は、前記の生合成酵素をコードする遺伝子を改変又は変化させることによって、前記生合成経路に関連する様々な酵素活性を改変することを特徴とする。
本明細書中で使用する「遺伝子」という用語には、生物で、インタージェニックDNA(すなわち、生物の染色体DNAにおいて、天然でその遺伝子にフランキングする及び/又は遺伝子分断する介在性DNA又はスペーサーDNA)によって、別の遺伝子又は他の遺伝子から分離され得る核酸分子(例えば、DNA分子又はその断片)が含まれる。あるいは、遺伝子は別の遺伝子とわずかに重複(例えば、第一の遺伝子の3'末端が第二の遺伝子の5'末端と重複)してもよく、重複遺伝子はインタージェニックDNAによって他の遺伝子から分断されていてもよい。遺伝子は、酵素あるいは他のタンパク分子(例えば、遺伝子はタンパク質をコードする連続したオープンリーディングフレーム(ORF)などのコーディング配列を含むことができる)の合成を指示したり、それ自体生物内で機能的であり得る。生物における遺伝子は、オペロンに集合する場合があり、本明細書中で記載されるように、オペロンはインタージェニックDNAによって、他の遺伝子及び/又はオペロンから分断される。本明細書中で用いられる「単離遺伝子」には、該遺伝子が由来する生物の染色体中の遺伝子に、天然でフランキングしている配列を本質的に含まない(すなわち、隣接する第二の又は別のタンパク質をコードするコーディング配列や隣接する構造配列などを含まない)遺伝子、そして、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列などの5'及び3'調節配列を場合により含む遺伝子が含まれる。1つの実施形態において、単離遺伝子は、主にタンパク質をコードする配列(例えばBacillusタンパクをコードする配列)を含む。別の実施形態において、単離遺伝子は、遺伝子が由来する生物の染色体DNA由来のタンパク質(例えばBacillusタンパク質)をコードする配列、及び隣接する5'及び/又は3'調節配列(例えばBacillusの隣接する5'及び/又は3'調節配列)を含む。単離遺伝子は、該遺伝子が由来する生物の染色体DNA中の遺伝子に、天然でフランキングする約10kb、5kb、2kb、1kb、0.5kb、0.2kb、0.1kb、50bp、25bp、又は10bp以下のヌクレオチド配列を含むのが好ましい。
「オペロン」という用語は、少なくとも2つの隣接する遺伝子又はORFを含み、場合により、配列中、少なくとも1つの遺伝子あるいはORFの5'又は3'末端のどちらかで重複しているものを含む。「オペロン」という用語は、プロモーター及び1以上の隣接した遺伝子又はORFと結びついた調節要素(例えば、生合成酵素といった酵素をコードする構造遺伝子)を含む、調和的に働く遺伝子発現ユニットが含まれる。遺伝子(例えば構造遺伝子)の発現は、例えば、調節要素と結合する調節タンパクによって、又は転写の抗終止反応によって、同調的に調節され得る。オペロンの遺伝子(例えば構造遺伝子)は、タンパク質全てをコードする一本鎖mRNAを与えるべく転写され得る。
本明細書中で用いられる「変異を有する遺伝子」又は「変異遺伝子」には、前記変異体によってコードされるポリペプチド又はタンパク質が、野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質と異なる活性を示すように、少なくとも1つの改変(例えば置換、挿入、欠失)を含むヌクレオチド配列を有する遺伝子が含まれる。1つの実施形態において、変異を有する遺伝子又は変異遺伝子は、例えば、類似した条件下でアッセイした場合に(例えば、同じ温度で培養された微生物をアッセイした場合)、野生型の遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質と比較して、増加した活性を有するポリペプチド又はタンパク質をコードする。本明細書中で用いられる「増加した活性」又は「増加した酵素活性」は、野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質の活性よりも少なくとも5%大きい、好ましくは少なくとも5−10%大きい、さらに好ましくは10−25%大きい、そしてなお一層好ましくは、野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質の活性よりも25−50%、50−75%あるいは75−100%大きい活性である。上に詳述した値の中間範囲、例えば75−85%、85−90%、90−95%などの範囲も本発明に含まれることを意図する。本明細書中に用いられる「増加した活性」あるいは「増加した酵素活性」は、野生型の遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドの活性よりも少なくとも1.25倍大きい、好ましくは少なくとも1.5倍大きい、さらに好ましくは少なくとも2倍大きい、なお一層好ましくは、少なくとも3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍大きい活性も含むことができる。
別の実施形態において、例えば類似した条件下でアッセイした場合に(例えば、同じ温度で培養された微生物でアッセイした場合に)、変異を有する遺伝子又は変異遺伝子は、野生型の遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質と比較して、低下した活性を有するポリペプチド又はタンパク質をコードする。また変異遺伝子は、全くポリペプチドをコードしないか、あるいは野生型ポリペプチドの低下した生産レベルを有することも可能である。本明細書中で用いられる「低下した活性」又は「低下した酵素活性」は、野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質の活性よりも、少なくとも5%小さい、好ましくは少なくとも5−10%小さい、さらに好ましくは少なくとも10−25%小さい、そしてなお一層好ましくは、野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質の活性よりも、少なくとも25−50%、50−75%、または75−100%小さい活性である。上に詳述した値の中間範囲、例えば75−85%、85−90%、90−95%などの範囲もまた本発明に含まれることを意図する。本明細書中で用いられる「低下した活性」あるいは「低下した酵素活性」には、酵素活性が欠失または「ノックアウト」された活性(例えば、野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質の活性よりもほぼ100%小さい活性)を含むことができる。
活性は目的の特定のタンパク質の活性を測定するための十分に認められるいかなるアッセイ法によっても決定され得る。活性は例えば、粗製の細胞抽出液中のタンパク質、あるいは細胞、もしくは微生物から精製又は単離したタンパク質の活性を測定するように、直接的に測定あるいはアッセイされ得る。あるいは、活性は細胞もしくは微生物内で又は細胞外培地中で測定あるいはアッセイされ得る。例えば変異遺伝子(例えば低下した酵素活性をコードする上記変異体)のアッセイは、微生物、例えば酵素が温度感受性である変異体微生物、内での変異遺伝子の発現、並びに変異遺伝子が酵素活性について温度感受性(Ts)変異体を相補する能力について変異体遺伝子をアッセイすることによって達成し得る。「増加した酵素活性」をコードする変異体遺伝子は、例えば対応する野生型遺伝子よりもより有効的にTs変異体を相補する遺伝子である。「低下した酵素活性」をコードする変異体遺伝子は、例えば対応する野生型遺伝子よりも小さい有効性でTs変異体を相補する遺伝子である。
核酸又は遺伝子配列中の単一塩基の置換(例えば対応するアミノ酸配列中のアミノ酸の変化をコードする塩基置換)でさえ、対応する野生型のポリペプチド又はタンパク質と比較して、コードするポリペプチドあるいはタンパク質の活性に劇的な影響を及し得るということは当業者に理解されるであろう。本明細書に記載の変異体遺伝子(例えば変異体ポリペプチド又はタンパク質をコードしている遺伝子)は、変異体遺伝子が、野生型遺伝子を発現する対応する微生物と比較して、該変異体遺伝子を発現する、又は変異体タンパク質もしくはポリペプチドを生産する微生物(すなわち変異体微生物)において、変化した活性を有し、場合により、異なる又は別個の表現型として観察可能であるタンパク質又はポリペプチドをコードするという点で、タンパク質ホモログをコードする核酸又は遺伝子と容易に区別され得る。これとは対象的に、タンパク質ホモログは、野生型の遺伝子を発現する対応する微生物と比較して、同一の又は実質的に類似した活性を有することができ、場合により、微生物内で生産される場合に、その表現型の点で見分けがつかないものであってよい。したがって、ホモログと変異体との間(例えば実質的に同等の機能的活性を持たない低い配列の同一性(例えば30−50%の配列同一性)を有するホモログと、例えば劇的に異なる又は変化した機能的活性を持たない99%の配列同一性を共有する変異体との間)を区別するのに役立つのは、例えば核酸分子、遺伝子、タンパク質あるいはポリペプチド間における配列同一性の程度ではなく、むしろ該ホモログと該変異体との間を区別するのは、コードされるタンパク質あるいはポリペプチドの活性である。
また、本発明で用いる核酸分子、遺伝子、タンパク質あるいはポリペプチドは、MTF生合成経路、ilv生合成経路、パントテン酸生合成経路を有するあらゆる微生物に由来し得ることも当業者には理解されるであろう。そのような核酸分子、遺伝子、タンパク質あるいはポリペプチドは、相同性検索、配列比較などの公知の技法を用いることによって当業者が同定可能であり、また、組換え微生物内でこれらの核酸分子、遺伝子、タンパク質又はポリペプチドの生産あるいは発現が生じるような方法で(本明細書中に記載の技術や当業界で公知の技術に従って、例えば、適切なプロモーター、リボソーム結合部位、発現ベクターあるいは組換えベクターの使用、転写が増進するような遺伝子配列の改変(好適なコドン使用に気を配る)などによって)、当業者がそれらを改変することが可能である。
1つの実施形態において、本発明の遺伝子は、グラム陽性微生物(例えば、微生物を取り囲むグラム陽性壁の存在のために塩基性色素、例えばクリスタルバイオレットを保持する微生物)に由来する。「に由来する」(例えばグラム陽性微生物「に由来する」)という用語には、微生物内で天然で見られる遺伝子(例えば、グラム陽性微生物中に天然で見られるもの)を指す。好適な実施形態において、本発明の遺伝子は、Bacillus属、Cornyebacterium属(例えばCornyebacterium glutamicum)、Lactobacillus属、Lactococci属及びStreptomyces属からなる群から選択される微生物に由来する。別の好適な実施形態において、本発明の遺伝子は、Bacillus subtilis, Bacillus lentimorbus, Bacillus lentus, Bacillus firmus, Bacillus pantothenticus, Bacillus amyloliquefaciens, Bacillus cereus, Bacillus circulans, Bacillus coagulans, Bacillus licheniformis, Bacillus megaterium, Bacillus pumilus, Bacillus thuringiensis, Bacillus halodurans及びその他の、例えば16S rRNA型よって特徴付けられるようなグループ1のBcillus種、からなる群から選択される微生物に由来する。別の好適な実施形態において、遺伝子はBacillus brevis又はBacillus stearothermophilusに由来する。別の好適な実施例において、本発明の遺伝子は、Bacillus Iicheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus subtilis及びBacillus pumilusからなる群から選択される微生物に由来する。特に好適な実施形態において、該遺伝子はBacillus subtilisに由来する (例えばBacillus subtilis由来である)。「Bacillus subtilisに由来する」あるいは「Bacillus subtilis由来」という用語には、Bacillus subtilisに天然で見られる遺伝子が含まれる。本発明の範囲内には、Bacillus属由来の遺伝子(例えばB.subtili由来の遺伝子)、例えばBacillus属あるいはB.subtilis のpurR遺伝子、serA遺伝子、glyA遺伝子、coaX遺伝子、coaA遺伝子、pan遺伝子及び/又はilv遺伝子が含まれる。
別の実施形態において、本発明の遺伝子は、グラム陰性微生物(塩素性色素を排除するもの)に由来する。好適な実施形態において、本発明の遺伝子は、Salmonella属(例えばSalmonella typhimurium)、Escherichia属、Klebsiella属、Serratia属及びProteus属からなる群から選択される属に由来する。さらに好適な実施形態において、本発明の遺伝子はEscherichia属の微生物に由来する。さらに好適な実施形態において、本発明の遺伝子はEscherichia coliに由来する。別の実施形態において、本発明の遺伝子はSaccharomyces属(例えばSaccharomyces cerevisiae)に由来する。
II.組換え核酸分子及びベクター
本発明はさらに、本明細書に記載の遺伝子(例えば単離遺伝子)、好ましくはBacillus遺伝子、さらに好ましくはBacillus subtilis遺伝子、なお一層好ましくはBacillus subtilisのパントテン酸生合成遺伝子及び/又はイソロイシン−バリン(ilv)生合成遺伝子及び/又はメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成遺伝子、を含む組換え核酸分子(例えば組換えDNA分子)を特徴とする。「組換え核酸分子」という用語には、組換え核酸分子が由来する本来の又は天然の核酸分子とヌクレオチド配列において異なるように変化された、改変された、又は操作された(例えば1又はそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失又は置換による)核酸分子(例えばDNA分子)が含まれる。好ましくは、組換え核酸分子(例えば組換えDNA分子)には、調節配列に機能するような形で結合された本発明の単離遺伝子が含まれる。「調節配列に機能するような形で結合された」という用語は、目的の遺伝子のヌクレオチド配列が、遺伝子の発現(例えば、高められた、増加された、構成的な、基底の、弱められた、減少された、抑制された発現)、好ましくは(例えば組換え核酸分子が本明細書に記載の組換えベクターに組み込まれ、微生物に導入された時に)該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の発現、を可能にする手法で調節配列に結合されることを意味する。
「調節配列」という用語には、他の核酸配列(すなわち遺伝子)の発現に影響を与える(例えばモジュレートあるいは調節する)核酸配列が含まれる。1つの実施形態において、調節配列は、それが天然で、例えば天然の位置及び/又は配向で現れるように、調節配列及び目的の遺伝子について観察されるものと同じように、目的の特定の遺伝子に対して類似の又は同一の位置及び/又は配向で、組換え核酸分子中に含まれる。例えば、目的の遺伝子は、天然生物において目的の遺伝子を伴う又は該遺伝子に隣接する調節配列に機能するような形で結合され(例えば、機能するような形で「天然」の調節配列(例えば天然のプロモーター)に結合された)、組換え核酸分子内に含まれてもよい。あるいは、目的の遺伝子は、天然生物中の別の(例えば異なる)遺伝子を伴う又は該遺伝子に隣接する調節配列に機能するような形で結合され、組換え核酸分子内に含まれてもよい。あるいは、目的の遺伝子は、他の生物由来の調節遺伝子と機能するような形で結合され、組換え核酸分子内に含まれてもよい。例えば他の微生物の調節配列(例えば他の細菌の調節配列、バクテリオファージの調節配列など)は、目的の特定遺伝子と機能するような形で結合され得る。
1つの実施形態において、調節配列は非本来の又は非天然の配列(例えば改変された、突然変異された、置換された、誘導体化された、欠失された配列で、化学的に合成されたものを含む配列)である。好適な調節配列は、プロモーター、エンハンサー、終止シグナル、抗終止シグナル、及びその他の発現制御要素(例えばリプレッサー又はインデューサーが結合する配列並びに/あるいは、例えば転写されたmRNA中の転写及び/又は翻訳調節タンパク質が結合する部位)を含む。そのような調節配列は、例えばSambook,J.、Fritsh,E.F、及びManiatis,T.による、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd,ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor NY(1989)に記載されている。調節配列は、微生物においてヌクレオチド配列の構成性発現を指令するもの(例えば構成性プロモーター及び強力な構成性プロモーター)、微生物においてヌクレオチド配列の誘導性発現を指令するもの(例えばキシロース誘導性プロモーターなどの誘導性プロモーター)、及び微生物においてヌクレオチド配列の発現を減衰又は抑制するもの(例えばPurR結合部位などのリプレッサー結合部位又は減衰シグナル)が含まれる。また調節配列の除去又は欠失による目的遺伝子発現の調節も本発明の範囲内に含まれる。例えば、負の転写調節に関係する配列は、目的遺伝子の発現が増進されるよう除去され得る。
1つの実施形態において、本発明の組換え核酸分子には、プロモーター又はプロモーター配列に機能するような形で結合された、少なくとも1の細菌遺伝子産物(例えばパントテン酸生合成酵素、イソロイシン−バリン生合成酵素及び/又はメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成酵素)をコードする核酸配列又は遺伝子が含まれる。本発明の好ましいプロモーターには、Bacillusプロモーター及び/又はバクテリオファージ(例えばBacillusに感染するバクテリオファージ)のプロモーターが含まれる。1つの実施形態において、プロモーターはBacillusプロモーターであり、好ましくはBacillusの強力なプロモーター(例えばBacillusにおける生化学的ハウスキーピング遺伝子と結合するプロモーター、あるいはBacillusにおける解糖経路遺伝子と結合するプロモーター)である。別の実施形態において、プロモーターはバクテリオファージプロモーターである。好適な実施形態において、プロモーターはバクテリオファージSP01由来のものである。特に好適な実施形態において、プロモーターはP15、P26、又はPVegからなる群から選択されるものであって、例えば下記のそれぞれの配列を有するものである。
GCTATTGACGACAGCTATGGTTCACTGTCCACCAACCAAAACTGTGCTCAGTACCGCCAATATTTCTCCCTTGAGGGGTACAAAGAGGTGTCCCTAGAAGAGATCCACGCTGTGTAAAAATTTTACAAAAAGGTATTGACTTTCCCTACAGGGTGTGTAATAATTTAATTACAGGCGGGGGCAACCCCGCCTGT(配列番号1),
GCCTACCTAGCTTCCAAGAAAGATATCCTAACAGCACAAGAGCGGAAAGATGTTTTGTTCTACATCCAGAACAACCTCTGCTAAAATTCCTGAAAAATTTTGCAAAAAGTTGTTGACTTTATCTACAAGGTGTGGTATAATAATCTTAACAACAGCAGGACGC (配列番号2)、及び
GAGGAATCATAGAATTTTGTCAAAATAATTTTATTGACAACGTCTTATTAACGTTGATATAATTTAAATTTTATTTGACAAAAATGGGCTCGTGTTGTACAATAAATGTAGTGAGGTGGATGCAATG (配列番号3)
さらなる好適なプロモーターには、Bacillus(例えばBacillus subtilis)において高レベルの発現を促進するtef(翻訳伸張因子(TEF)プロモーター)及びpyc(ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)プロモーター)が含まれる。例えばグラム陽性微生物で用いるためのさらなる好適なプロモーターには、amy及びSPO2プロモーターが含まれるが、それらに限定されない。例えばグラム陰性微生物で用いるためのさらなる好適なプロモーターには、cos, tac, trp, tet, trp-tet, lpp, lac, lpp-lac, lacIQ, T7, T5, T3, gal, trc, ara, SP6, λ-PR 又はλ-PLが含まれるが、それらに限定されない。
別の実施形態において、本発明の組換え核酸分子には1つか又は複数のターミネーター配列(例えば転写終止配列)が含まれる。「ターミネーター配列」という用語は、mRNAの転写を終結するために働く調節配列を含む。ターミネーター配列(又はタンデム転写ターミネーター)はさらに、例えばヌクレアーゼに対してmRNAを安定化するために働くこともできる。
さらに別の実施形態において、本発明の組換え核酸分子には、配列(すなわち、検出及び/又は選択マーカー)を含むベクターの検出を可能にする該配列が含まれ、この配列には例えば、抗生物質耐性配列をコードする遺伝子あるいは栄養要求性変異を克服する遺伝子、例えば、trpC、薬剤マーカー、蛍光性マーカー及び/又は比色分析マーカー(例えばlacZ/β−ガラクトシダーゼ)が含まれる。さらに別の実施形態において、本発明の組換え核酸分子には、人工リボソーム結合部位(RBS)あるいは人工RBSに転写される配列が含まれる。「人工リボソーム結合部位(RBS)」は、(例えば転写を開始するために)リボソームと結合する(例えばDNA内にコードされている)mRNA分子内の部位を含み、該リボソームは、天然RBS(例えば天然遺伝子に見られるRBS)と少なくとも1ヌクレオチドだけ相違する。好適な人工RBSは、約5-6, 7-8, 9-10, 11-12, 13-14, 15-16, 17-18, 19-20, 21-22, 23-24, 25-26, 27-28, 29-30又はそれ以上のヌクレオチドを含み、そのうち約1-2, 3-4, 5-6, 7-8, 9-10, 11-12, 13-15又はそれ以上のヌクレオチドが天然RBS(目的遺伝子の天然RBS、例えば、天然panB RBS TAAACATGAGGAGGAGAAAACATG (配列番号4)、あるいは天然panD RBS ATTCGAGAAATGGAGAGAATATAATATG (配列番号5))と異なる。比較のため最適に整列させる時、理想的なRBSの1以上のヌクレオチドと同一となるように、異なるヌクレオチドを置換するのが好ましい。理想的なRBSには、
AGAAAGGAGGTGA (配列番号6),
TTAAGAAAGGAGGTGANNNNATG (配列番号7),
TTAGAAAGGAGGTGANNNNNATG (配列番号8),
AGAAAGGAGGTGANNNNNNNATG (配列番号9), 及び
AGAAAGGAGGTGANNNNNNATG (配列番号10)
が含まれるが、それらに限定されない。人工RBSは特定の遺伝子と結合された天然又は本来のRBSと置換するために用いることができる。人工RBSは、好ましくは特定遺伝子の翻訳を増加する。好適な人工RBS(例えばpanB、例えばB.subtilis のpanBの翻訳を増加するためのRBS)には、
CCCTCTAGAAGGAGGAGAAAACATG (配列番号11) 、及び
CCCTCTAGAGGAGGAGAAAACATG (配列番号12)
が含まれる。好適な人工RBSには(例えばpanD、例えばB.subtilisの panDの翻訳を増加するためのRBS)には、
TTAGAAAGGAGGATTTAAATATG (配列番号13),
TTAGAAAGGAGGTTTAATTAATG (配列番号14),
TTAGAAAGGAGGTGATTTAAATG (配列番号15),
TTAGAAAGGAGGTGTTTAAAATG (配列番号16),
ATTCGAGAAAGGAGG TGAATATAATATG (配列番号17),
ATTCGAGAAAGGAGGTGAATAATAATG (配列番号18), 及び
ATTCGTAGAAAGGAGGTGAATTAATATG (配列番号19)
が含まれる。
本発明はさらに、本明細書で記載される核酸分子(例えば上述の遺伝子を含む遺伝子又は組換え核酸分子)を含むベクター(例えば組換えベクター)を特徴とする。「組換えベクター」という用語には、組換えベクターが由来する本来又は天然の核酸分子に含まれる核酸配列と比較して、より大きい、より小さい又は異なる核酸配列を含むように変化され、改変又は操作されたベクター(例えば、プラスミド、ファージ、ファスミド、ウイルス、コスミドあるいはその他の精製された核酸ベクター)が含まれる。組換えベクターは、例えば本明細書に記載されるようなプロモーター配列、ターミネーター配列及び/又は人工リボソーム結合部位(RBS)などの調節配列に機能するような形で結合された、上記遺伝子を含む生合成酵素をコードする遺伝子あるいは組換え核酸分子を含む。別の実施形態において、本発明の組換えベクターは、細菌において複製を増強する配列(例えば複製増強配列)を含む。1つの実施形態において、複製増強配列はE.coliにおいて機能する。別の実施形態において、複製増強配列はpBR322に由来する。
さらに別の実施形態において、本発明の組換えベクターは、抗生物質耐性配列を含む。「抗生物質耐性配列」という用語には、宿主生物(例えばBacillus)において抗生物質に対する耐性を促進する又は付与する配列が含まれる。1つの実施形態において、抗生物質耐性配列は、cat(クロラムフェニコール耐性)配列、tet(テトラサイクリン耐性)配列、erm(エリトロマイシン耐性)配列、neo(ネオマイシン耐性)配列、kan(カナマイシン耐性)配列、並びにspec(スペクチノマイシン耐性)配列からなる群から選択される。本発明の組換えベクターはさらに、ホモログ組換え配列(例えば、宿主生物の染色体中に目的遺伝子を組み込むことを可能とするように設計された配列)を含むことができる。例えば、bpr、vpr又はamyE配列を、宿主染色体中への組み込みのためのホモロジーターゲットとして使用することができる。遺伝子操作されるべき微生物の選択、所望の遺伝子産物の発現レベルなどのような因子に応じてベクターの設計を練ることができることは、さらに当業者には認められるであろう。
III.組換え微生物
本発明はさらに、本明細書中に記載するようなベクター又は遺伝子(例えば、野生型及び/又は変異遺伝子)を含む微生物、すなわち組換え微生物を特徴とする。本明細書で用いられる「組換え微生物」という用語には、それが由来する天然の微生物と比較して、遺伝子型及び/又は表現型と比較して、変化した、改変された、又は異なる遺伝子型及び/又は表現型を示すように遺伝子的に変化した、改変された、又は操作(例えば遺伝子操作)された微生物(例えば細菌、酵母菌、真菌細胞など)が含まれる。
1つの実施形態において、本発明の組換え微生物はグラム陽性生物(微生物を取り囲むグラム陽性壁の存在のために塩基性色素、例えばクリスタルバイオレットを保持する微生物)である。好適な実施形態において、組換え微生物はBacillus属、Cornyebacterium属(例えばCornyebacterium glutamicum)、Lactobacillus属、Lactococci属及びCornyebacterium属からなる群から選択される属に属する微生物である。さらに好適な実施形態において、組換え微生物はBacillus属の微生物である。別の好適な実施形態において、組換え微生物は、Bacillus subtilis, Bacillus lentimorbus, Bacillus lentus, Bacillus firmus, Bacillus pantothenticus, Bacillus amyloliquefaciens, Bacillus cereus, Bacillus circulans, Bacillus coagulans, Bacillus licheniformis, Bacillus megaterium, Bacillus pumilus, Bacillus thuringiensis, Bacillus halodurans,並びに、その他の、例えば16S rRNA型によって特徴付けられるグループ1Bacillus種、からなる群から選択される。別の好適な実施形態において、組換え微生物はBacillus brevis又はBacillus stearothermophilusである。別の好適な実施形態において、組換え微生物はBacillus licheniformis, Bacillus amyloliquefaciens, Bacillus subtilis, 並びに Bacillus pumilus.からなる群から選択される。
別の実施形態において、組換え微生物はグラム陰性生物(塩基性色素を排除する生物)である。好適な実施形態において、組換え微生物はSalmonella属 (例えば Salmonella typhimurium)、Escherichia属、 Klebsiella属、Serratia属及びProteus属からなる群から選択される微生物である。さらに好適な実施形態において、組換え微生物はEscherichia属の微生物である。さらに一層好適な実施形態において、組換え微生物はEscherichia coliである。別の実施例において、組換え微生物はSaccharomyces(例えばSaccharomyces cerevisiae)である。
本発明の好適な「組換え」微生物は、脱調節されたパントテン酸生合成経路又は生合成酵素、脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路又は酵素、及び/又は改変又は脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路又は酵素、を有する微生物である。「脱調節された」又は「脱調節」という用語は、生合成経路中の酵素をコードする微生物中の少なくとも1種類の遺伝子の変化又は改変であって、微生物における生合成酵素の活性又は量(レベル)を変更又は改変するような変更又は改変を含む。生合成経路中の酵素をコードする少なくとも1種の遺伝子が、遺伝子産物を増進又は増加させるように変更又は改変されるのが好ましい。「脱調節された経路」という用語には、生合成経路中の酵素をコードする1以上の遺伝子が、1以上の生合成酵素の活性又は量(レベル)が変化又は改変されるように変更又は改変された生合成経路を含む。
ある場合には、微生物における経路を「脱調節する」(例えば所定の生合成経路における1以上の遺伝子を同時に脱調節する)能力は、1以上の酵素(例えば2種又は3種の生合成酵素)が(本明細書で記載される)「オペロン」と称する連続した遺伝物質片上で相互に隣接を起こす遺伝子によってコードされている微生物の特定の現象から生じる。オペロンに含まれる遺伝子の同調制御により、1つのプロモーター及び/又は制御要素の変更あるいは改変は、該オペロンによってコードされる各遺伝子産物の発現の変更あるいは改変をもたらすことができる。制御要素の変更又は改変は、以下のものに限定されないが、内因性のプロモーター及び/又は制御要素の除去、遺伝子産物の発現が改変されるような強力なプロモーター、誘導性プロモーター又は複数のプロモーターの付加、遺伝子又はオペロンの染色体位置の改変、リボソーム結合部位のような遺伝子又はオペロンに隣接する(又はオペロン内部の)核酸配列の改変、遺伝子又はオペロンのコピー数の増加、遺伝子又はオペロンの転写、及び/又は、遺伝子又はオペロンの各遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば制御タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子など)の改変、あるいは、(例えばリプレッサータンパク質の発現を阻止するためのアンチセンス核酸分子の使用(但し、これに限定されない)を含む)当業界で日常的な遺伝子発現を脱調節する任意の他の慣用手段を含む。さらに脱調節には、例えばフィードバック抵抗性酵素あるいは、より高い又は小さい比活性を有する酵素を生成するための、1以上の遺伝子のコード領域の改変が含まれ得る。
別の好適な実施形態において、組換え微生物は、少なくとも1種類のパントテン酸生合成酵素、少なくとも1種類のイソロイシン−バリン生合成酵素、及び/又は少なくとも1種類のMTF生合成酵素が過剰発現されるように設計あるいは操作される。「過剰発現される」あるいは「過剰発現」という用語は、微生物の操作前に、あるいは操作されていない同じ微生物において発現されるレベルよりも大きいレベルで遺伝子産物(例えば生合成酵素)を発現することを含む。1つの実施形態において、前記微生物は、操作されていない微生物において発現されるレベルよりも大きいレベルの遺伝子産物を過剰発現させるように遺伝子設計あるいは遺伝子操作され得る。
遺伝子操作には、以下のものに限定されないが、(例えば、強力なプロモーター、誘導性プロモーター、又は複数のプロモーターを付加することによって、あるいは発現が構成的であるように制御配列を除去することによって)特定遺伝子の発現に関わる調節配列又は部位の変更あるいは改変、特定遺伝子の染色体位置の改変、リボソーム結合部位のような特定遺伝子に隣接する核酸配列の変更、特定遺伝子のコピー数の増加、特定遺伝子の転写及び/又は特定遺伝子産物の翻訳に関係するタンパク質(制御タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子など)の改変、あるいは(例えばリプレッサータンパクの発現を阻止するためのアンチセンス核酸分子の使用(但し、これに限定されない)することを含む)当業界で日常的な特定遺伝子の発現を脱調節する任意の他の慣用手段を含み得る。遺伝子操作はまた、例えば経路の阻止あるいはリプレッサーの除去のための遺伝子欠失も含み得る。
別の実施形態において、微生物は、その操作前又は操作されていない同等の微生物において発現されるレベルよりも大きいレベルの遺伝子産物量を過剰発現させるために物理的あるいは環境的に操作され得る。例えば、微生物は、転写及び/又は翻訳が増進又は増加されるように、特定遺伝子の転写及び/又は特定遺伝子産物の翻訳を増加することが知られている又は見込まれる物質の存在下で処理又は培養され得る。あるいは、微生物は、転写及び/又は翻訳が増進あるいは増加されるように、特定遺伝子の転写及び/又は特定遺伝子産物の翻訳を増加させるために選択された温度で培養され得る。
IV.組換え微生物の培養及び発酵
「培養」という用語には、本発明の生きた微生物の維持及び/又は増殖(例えば培養物又は株の維持及び/又は増殖)が含まれる。1つの実施形態において、本発明の微生物は液体培地で培養される。別の実施形態において、本発明の微生物は固体培地あるいは半固体培地で培養される。好適な実施形態において、本発明の微生物は、微生物の維持及び/又は増殖に不可欠あるいは有益な栄養素(例えば炭水化物、炭化水素、油、脂肪、脂肪酸、有機酸、及びアルコールなどの炭素源あるいは炭素基質、例えばペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、大豆ミール、大豆粉、大豆粗粒、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム及び燐酸アンモニウムといった窒素源、例えば燐酸、そのナトリウム及びカリウム塩などのリン源;例えばマグネシウム、鉄、マンガン、カルシウム、銅、亜鉛、ホウ素、モリブデン、及び/又はコバルト塩などの微量元素;並びにアミノ酸、ビタミン、増殖促進剤などの増殖因子など)を含む培地(例えば滅菌液体培地)中で培養される。
本発明の微生物は制御されたpH下で培養されるのが好ましい。「制御されたpH」という用語は、所望の産物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の生産をもたらすいかなるpHも含む。1つの実施形態において、微生物は約7のpHで培養される。別の実施形態において、微生物はpH6.0から8.5の間のpHで培養される。望ましいpHは当業者に公知の多数の方法によって維持され得る。
また、本発明の微生物は、制御された通気下で培養されるのが好ましい。「制御された通気」という用語は、所望の産物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の生産をもたらすのに十分な通気(例えば酸素)を含む。1つの実施形態において、通気は培養の際に、酸素量を調節することによって、例えば培養培地の溶存する酸素量を調節することによって、制御される。培養物の通気は培養物を攪拌することによって制御されるのが好ましい。攪拌は推進器又はこれに類似の機械攪拌装置によって、あるいは培養容器(チューブ又はフラスコ)の回転又は振とうすることによって、あるいは様々なポンプ装置によって行うこともできる。さらに通気は培地を通して(発酵混合物を通して)無菌空気あるいは酸素を通過させることによって制御され得る。また本発明の微生物は、消泡剤の添加によって過剰の起泡を起こすことなく培養されるのが好ましい。
さらに、本発明の微生物は、制御された温度下で培養され得る。「制御された温度」という用語は、所望の産物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の生産をもたらすいかなる温度も含む。1つの実施形態において、制御された温度は15℃から95℃の間の温度を含む。別の実施例において、制御された温度は15℃から70℃の間の温度を含む。好適な温度は20℃から55℃、好ましくは30℃から50℃の間がさらに好ましい。
微生物は液体培地中で(維持及び/又は増殖)することができ、好ましくは、静地培養、試験管培養、振とう培養(例えば回転式振とう培養、振とうフラスコ培養など)、通気攪拌培養、あるいは発酵などの従来の培養方法によって連続的または間欠的に培養される。好適な実施形態において、微生物は振とうフラスコで培養される。さらに好適な実施形態において、微生物は発酵槽(例えば発酵法)で培養される。本発明の発酵法には(以下のものに限定されないが)、回分式、供給−回分式及び連続式方法、あるいは発酵方法が含まれる。「回分式方法」あるいは「回分式発酵」という用語は、培地、栄養素、補足的添加物などの組成物が発酵の開始時に仕込まれ、発酵の間の変化の対象としないが、培地の過剰な酸性化及び/又は微生物の死を防ぐためにpHや酸素濃度のような因子を制御することを試みてもよい。「供給回分式方法」あるいは「供給−回分式」という用語は、1以上の基質又は、補助物質を、発酵の進行につれて加える(例えば、徐々に又は連続的に加える)ことを例外とする回分式発酵を指す。「連続法」あるいは「連続発酵」という用語は、好適には所望の産物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の回収のために、既定の発酵培地を発酵槽に連続的に加えて、使用済み又は「ならし」培地の等量を同時に除去するシステムを指す。このような様々な方法が開発され、当業者でよく知られている。
「所望の化合物が生産されるような条件下で培養する」という用語には、所望の化合物が生産される、あるいは生産される特定化合物が所望の収量で得られるのに適した又は十分な条件下(例えば温度、圧力、pH、継続時間など)で微生物を維持及び/又は増殖することを含む。例えば培養は、望ましい量の化合物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)が生産されるのに十分な時間継続される。培養は該化合物の適切な生産に実質的に達するのに十分な時間(例えば、適切な濃度のパントエート及び/又はパントテン酸、あるいは適切な比のパントエート及び/又はパントテン酸:HMBPAに達するのに十分な時間)継続されるのが好ましい。1つの実施形態において、培養はおよそ12時間から24時間継続される。別の実施例において、培養はおよそ24時間から36時間、36時間から48時間、48時間から72時間、72時間から96時間、96時間から120時間、120時間から144時間、あるいは144時間以上の時間継続される。さらに別の実施形態において、微生物は、およそ36時間で少なくとも5から10g/Lの化合物が生産され、およそ48時間で少なくとも10から20g/Lの化合物が生産され、あるいはおよそ72時間で少なくとも20から30g/Lの化合物が生産されるような条件下で培養される。さらに別の実施形態において、微生物は、およそ36時間で少なくとも5から20g/Lの化合物が生産され、およそ48時間で少なくとも20から30g/Lの化合物が生産され、あるいはおよそ72時間で少なくとも30から50ないしは60g/Lの化合物が生産されるような条件下で培養される。さらに他の実施例において微生物は、およそ36時間で少なくとも40から60g/Lの化合物が生産され、およそ48時間で少なくとも60から90g/Lの化合物が生産されるような条件下で培養される。本明細書中に記載の方法、例えば特定の発酵運転又は特定の操作株を用いた方法によって、上記に列挙された範囲の上限値を超す値が得られる可能性があることは、当業者に理解されるであろう。
好ましくは、本発明の生産方法は、「適切なコントロールと比較して高められた」パントテン酸の生産量をもたらす。本明細書に記載の「適切なコントロール」という用語は、所望の生産物の増進され、増加され、あるいは高められた量を測定するのに適切であるとして当業者が認めるいかなるコントロールも含まれる。例えば本方法が脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する微生物を培養することを特徴とし、また該微生物がさらに脱調節されたMTF生合成経路を有する(すなわち、少なくとも1種のMTF生合成酵素が脱調節、例えば過剰発現されるように操作されている)場合には、適切なコントロールには、MTF酵素又はMTF経路(すなわち脱調節されたパントテン酸生合成経路のみを有する)の操作前あるいは未操作の微生物の培養が含まれる。同様に、本方法が、脱調節されたパントテン酸生合成経路及び脱調節されたilv生合成経路を有する微生物を培養することを特徴とし、また該微生物がさらに脱調節されたMTF生合成経路を有する(すなわち、少なくとも1種のMTF生合成酵素が脱調節、例えば過剰発現されるように操作されている)場合には、適切なコントロールには、MTF生合成酵素あるいはMTF経路の(すなわち脱調節されたパントテン酸生合成経路及びilv生合成経路のみを有する)操作前あるいは未操作の微生物の培養が含まれる。本発明に従って実施されるそれぞれの方法では、比較を行う必要はない。例えば当業者は、同一の又は類似した条件下での一連の反応(例えば、試験管培養、振とうフラスコ培養、発酵など)の実施から経験的に適切なコントロールを決定することができる。例えば特定の株による日常的な生産量を認めながら、当業者は、そのような生産量を上回る増進、増加あるいは高められた量を認識することができる。言い換えれば、適切なコントロールとの比較には、所定の値(例えば所定のコントロール)との比較が含まれる。
したがって、適切に操作された株が(パントテン酸生産を高めるような操作前に)36時間で40g/Lのパントテン酸を生産するという実施形態において、(例えば少なくとも1種のMTF生合成酵素を過剰発現させるような操作後の)50、60、70g/Lあるいはそれ以上のパントテン酸は高生産を例示する。同様に、適切に操作された株が(パントテン酸生産を増進させるような操作前に)48時間で50g/Lのパントテン酸を生産するという実施形態において、(例えば、少なくとも1種類のMTF生合成酵素を過剰発現させるような操作後の)60、70、80、90g/Lあるいはそれ以上のパントテン酸の高生産を例示する。
本発明の方法には、所望の化合物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)を回収する工程をさらに包含し得る。目的の化合物を「回収する」という用語には、培養培地から化合物を抽出し、収穫し、単離し、あるいは精製することが含まれる。化合物の回収は、以下のものに限定されないが、慣用の樹脂(例えば、陰イオン又は陽イオン樹脂、非イオン性吸着樹脂など)による処理、慣用の吸着剤(例えば活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)による処理、pHの変更(例えばアルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどのような慣用の溶媒による)溶媒抽出、透析、ろ過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調整、凍結乾燥などを含む当業界で公知のいかなる従来の単離又は精製法によっても実施し得る。例えば、化合物は培養培地から、初めに微生物を培養物から除去することにより回収され得る。次に培地を、陽イオン樹脂を通過させるか又は該樹脂上に通して陽イオンを除去し、ついで陰イオン交換樹脂を通過させるか又は該樹脂上に通して目的の化合物よりも強い酸性度を有する無機アニオン及び有機酸を除去する。得られた化合物はその後、本明細書に記載の塩(例えばカルシウム塩)に変換され得る。
本発明の所望の化合物は、得られる調製物が、他の培地成分を実質的に含まない(例えば培地成分及び/又は発酵副産物を含まない)ように「抽出」、「単離」、又は「精製」されるのが好ましい。「他の培地成分を実質的に含まない」という用語には、所望の化合物が、それが生産された培養物の培地成分又は発酵副産物から分離されている、該化合物の調製物が含まれる。1つの実施形態において、調製物は、(乾燥重量で)およそ80%以上の所望の化合物(例えば、およそ20%未満の他の培地成分あるいは発酵副産物)、より好ましくはおよそ90%以上の所望の化合物(例えば、およそ10%未満の他の培地成分あるいは発酵副産物)、さらに好ましくはおよそ95%以上の所望の化合物(例えば、およそ5%未満の他の培地成分あるいは発酵副産物)、最も好ましくはおよそ98から99%の所望の化合物(例えば、およそ1から2%未満の他の培地成分あるいは発酵副産物)を含む。所望の化合物が塩に誘導体化される際には、好ましくは、該化合物は塩の形成に関わる汚染化学物質をさらに含まない。所望の化合物がアルコールに誘導体化される際には、好ましくは、該化合物はアルコールの形成に関わる汚染化学物質をさらに含まない。
代替的な実施形態において、所望の化合物は、例えば微生物が生物学的に無害(安全)である場合、微生物から精製されない。例えば培養物全体(あるいは培養上清)を、生成物(例えば粗生成物)として使用できる。1つの実施形態において、培養物(あるいは培養上清)を改変することなしに使用する。別の実施形態において、培養物(あるいは培養上清)を濃縮する。さらに別の実施形態において、培養物(あるいは培養上清)を乾燥あるいは凍結乾燥する。
さらに別の実施形態において、所望の化合物は部分的に精製される。「部分的に精製される」という用語には、例えば市販の樹脂による処理(例えば回分式処理)などの少なくとも何らかの処理を行った培地調製物を含む。好適な実施形態において、「部分的に精製された」調製物は所望の化合物を(乾燥重量で)およそ30%以上、好適にはおよそ40%以上、さらに好適にはおよそ50%以上、またさらに好適にはおよそ60%以上、そして最も好適にはおよそ70%以上含まれる。好ましくは、「部分的に精製された」調製物はまた、所望の化合物を(乾燥重量で)80%以下で有している(すなわち、本明細書に記載される、「抽出」、「単離」、あるいは「精製」された調製物よりもよりも純度が低い)。
生合成酵素、あるいは操作された生合成酵素の組み合わせに応じて、本発明の微生物に、1又は複数の所望化合物が生産されるような少なくとも1つの生合成前駆物質を提供(例えば供給)することが望ましいあるいは必要であるかもしれない。「生合成前駆物質」あるいは「前駆物質」という用語には、微生物の培養培地に提供される、該培地と接触される、又は該培地中に含められるときに、所望生成物の生合成の増進あるいは増加のために働く物質又は化合物が含まれる。1つの実施形態において、生合成前駆物質あるいは前駆物質はアスパラギン酸である。別の実施形態において、生合成前駆物質あるいは前駆物質はβ−アラニンである。アスパラギン酸あるいはβ−アラニンの添加量は、培養培地において微生物の生産力を増進させるのに十分な濃度(例えばパントエート及び/又はパントテン酸の生産を高めるのに十分な濃度)をもたらす量であるのが望ましい。本発明の生合成前駆物質は、(例えば水あるいはバッファーのような好適な溶媒中の)濃縮溶液又はけん濁液の形態で、あるいは固体の形態(例えば粉末形態)で加えることができる。さらに、本発明の生合成前駆物質は単一のアリコートとして、所定の期間の間継続的にあるいは断続的に添加し得る。「過剰β−アラニン」という用語には、目的の微生物の培養に通常利用されるβ−アラニン量よりも増加された又は高いβ−アラニン量が含まれる。例えば、本明細書の実施例において記載されるBacillus微生物の培養は通常約0−0.01g/Lのβ−アラニン存在下で行われるため、過剰β−アラニン量には約0.01−1g/L、好ましくは約1−20g/Lの量が含まれ得る。
さらに別の実施形態において、生合成前駆物質はバリンである。さらに別の実施形態において、生合成前駆物質はα−ケトイソ吉草酸である。バリンあるいはα−ケトイソ吉草酸は所望の生産物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の生産が起こるのに十分な培地中の濃度をもたらす量で加えられるのが好ましい。「過剰α−KIV」という用語には、目的の微生物の培養に通常利用されるα−KIV量よりも増加された又は高いα−KIV量が含まれる。例えば、本明細書において説明されているBacillus微生物の培養は通常約0−0.01g/Lのα−KIVの存在下で行われるため、過剰α−KIV量には約0.01−1g/L、好適には約1−20g/Lのα−KIVが含まれ得る。「過剰バリン」という用語には、目的の微生物の培養に通常利用されるバリン量よりも増加された又は高いバリン量が含まれる。例えば本明細書の実施例に記載されるBacillus微生物の培養は通常約0−0.5g/Lのバリン存在下で行われているため、過剰バリン量には約0.5−5g/L、好適には約5−20g/Lのバリンが含まれ得る。
さらに別の実施形態において、生合成前駆物質はセリンである。セリンは所望の生産物(例えばパントエート及び/又はパントテン酸)の生産が起こるのに十分な培地中の濃度をもたらす量で加えられるのが好ましい。本明細書に記載される過剰のセリンはまた、例えばパントテン酸の高生産のために、本明細書に記載の生産法に従って加えられ得る。当業者はかなり過剰の生合成前駆物質が微生物の毒性をもたらす可能性を認識するであろう。生合成前駆物質は本明細書で「生合成補助基質」と呼ばれる。
本発明の別の態様には、本明細書に記載の組換え微生物を特徴とする生物形質転換法が含まれる。「生物形質転換法」(本明細書で「生物変換法」とも呼ばれる)という用語は、適当な基質及び/又は中間体化合物の所望生産物への生産(例えば形質転換あるいは変換)をもたらす生物学的方法を含む。
生物変換反応に用いられる微生物及び/又は酵素は、それらが目的とする機能(例えば所望の化合物の生産)を果たすことができる形態である。微生物は所望の最終結果を得るのに必要な完全な細胞であってもよいし、あるいはそれらの細胞の一部のみであってもよい。微生物は、(例えば緩衝液又は培地のような適当な溶液中に)懸濁され、洗浄され(例えば、微生物の培養から培地を含まないように洗浄される)、アセトン乾燥され、(例えばポリアクリルアミドゲル又はk−カラギーナンで、あるいは例えばビーズ、マトリックスの合成支持体上に)、固定化され、固定され、架橋され、あるいは透過(化合物、例えば基質、中間体、又は生産物がより容易に膜又は壁を通過できるような透過性の膜及び/又は壁を有する)され得る。
本発明は以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。本出願全体にわたって引用された全ての参考文献、特許、公開された特許出願の内容は、参照により本明細書中に取り入れる。
実施例I パント化合物生産細胞株
パントテン酸生産のためのBacillus属の株を開発する際には、種々の遺伝子操作が、米国特許出願第09/400,494及び09/667,569に記載されるパントテン酸生合成経路及びイソロイシン−バリン(ilv)経路(図1)に関連した遺伝子及び酵素に対し行われる。例えば、脱調節されたpanBCDオペロンを有する株及び/又は脱調節されたpanE1を有する株は、(β−アラニン及びα−ケトイソ吉草酸(α−KIV)の存在下で培養したとき)パントテン酸の高生産を示す。ilvBNC及びilvDについてさらに脱調節された株は、β−アラニンのみの存在下でパントテン酸の高生産を示す。さらにまた、さらにpanDを脱調節することによってβ−アラニン非依存性を達成することが可能である。
1つの例示的なパントテン酸生産株がPA824であり、この株はスペクチノマイシン(Spec)耐性及びテトラサイクリン(Tet)耐性の、トリプトファン原栄養株であり、panBCD遺伝子座におけるpanBCD、panE1遺伝子座におけるpanE1(B.subtilisのゲノムにおける2種の遺伝子はE.coli panEの、panE1及びpanE2と相同であり、前者のpanE1はパントテン酸生産に関する主要ケトパントエートレダクターゼをコードしているが、panE2はパントテン酸合成に寄与しない(米国特許出願09/400,494))、ilvD遺伝子座におけるilvDに関してそれぞれ脱調節されており、またamyE遺伝子座におけるilvBNCカセット、及びbpr遺伝子座におけるpanDをそれぞれ過剰発現している。PA824は、標準の発酵手順(例えば参照により本明細書に取り入れる米国仮特許出願60/263,053あるいは60/263,053参照)により14Lの発酵槽中で48時間培養したとき、通常およそ40−50g/Lのパントテン酸を生産する。簡単に言うと、微量元素を含むバッチ培地(4.5L)に、振とうフラスコ培養のPA824を接種する。発酵は、温度(例えば43℃)、溶存酸素、及びpHについて制御され、グルコースが制限された供給一回分式法として実施される。初期の仕込み(batched)グルコースが消費された後、グルコース濃度は、継続的に新鮮な供給培地を供給することにより、およそ0g/Lと1g/Lの間に維持される。pHは7.2に定め、監視され、NH3あるいはH3PO4溶液を供給することによって維持される。溶存酸素濃度[pO2]は攪拌及び通気速度によっておよそ10−30%に維持される。起泡は適当な消泡剤の添加によって制御される。発酵ブロス中のパントテン酸力価は遠心分離による細胞除去後(HPLC分析によって)決定される。
第2の例示的な株はPA668である。PA668はvpr遺伝子座及び/又はpanB遺伝子座で増幅された余分のコピー数のP26panBを含むPA824の派生株である。PA668はクロラムフェニコールを用いることで多重コピーの選択を可能とするpanB発現ベクター(pAN636)を用いることによって構築された。簡単に説明すると、pAN636 NotI制限断片(ベクター配列を除く)を連結し、ついでこれを用いてPA824を形質転換し、5μg/mlのクロラムフェニコールを含むプレート上で選択した。30μg/mlのクロラムフェニコールに耐性の形質転換体を単離し、48時間の試験管培養中のパントテン酸の生産についてスクリーニングした。単離株はPA824よりおよそ10%多くのパントテン酸を生産する。10L発酵において、第1の株であるPA668-2Aは、類似した条件下で培養されたPA824に匹敵する量のパントテン酸を生産する(例えば36時間で約45−50g/L)。36時間後、PA824で通常通りパントテン酸生産が衰え始めるとき、PA668-2Aはかなりの量のパントテン酸を生産し続ける(例えば48時間で約60−65g/Lのパントテン酸)。第2の株であるPA668-24は十分に速い速度で、すなわち48時間後に60−70g/Lに達するパントテン酸を生産する。
第3の生産株であるPA721B-39は、下記のように増幅可能なP26panBpanDカセットをさらに含むよう操作された。第一に、単一発現カセットが構築され、このカセットはbpr遺伝子座にpanB及びpanDの両方を組み込むことが可能である。一の発現カセットに双方の遺伝子を結合することは、抗生物質耐性マーカーの排除のために、得られた株を単純化する。P26panBpanD発現カセットは、2つの異なるpanDリボソーム結合部位(国際公開第WO01/21772及び米国特許出願第60/262,995において先に合成され試験されているRBS)の各々を含むように構築された。カセットはさらに、合成したpanB遺伝子リボソーム結合部位(RBS1)を含むが、その設計は単純なオリゴヌクレオチドカセットの置換によるpanB RBSの特徴変更を許容する。構築の第一段階において、panB遺伝子は、pAN665の構築のため、図3に図示されているように2つのpanD遺伝子カセットに結合される。次に、生じたpanBpanDカセットは図4に図示されているようにB.subtilis発現ベクターpOTP61に導入される。構築されたそれぞれのプラスミド(pAN670及びpAN674)の本質的特徴を表1に提示する。
Figure 2006504408
それらの新しいプラスミドは、単一のベクターからの過剰のPanBとPanDの産生を兼備し、PA668に存在するpanB遺伝子発現ベクターと(pAN636)に対して増加した量のPanBを生産することが予測された。パントテン酸生産株にP26panBpanDベクターを組み込むための方法は、bpr及びpanE1間の遺伝子結合をうまく利用した。最初に、PA930から単離された染色体DNAで株を形質転換し(panE1::cat)、クロラムフェニコール耐性について選択することによって、内在するpanD発現カセットが修復されたPA824の派生株を構築した。得られた形質転換体はテトラサイクリン感受性について選別し、そしてPA715と名付けられた2種のTet感受性単離株を蓄えた。この株はP26panBpanDベクターを試験するための宿主株である(下記参照)。PA715においてP26panE1カセットを復元するため、それぞれのベクターをまず、P26panE1を含むがbpr遺伝子座に組み込まれたカセットを有していない株(PA328)中に形質転換した。PA328は確かにp26panBCD遺伝子座を含んでいるが、α-KIVの過剰生産のための操作は行われていない。テトラサイクリン耐性であるPA328の形質転換体は、2種類のベクターから適当なNotI制限断片を用いることによって得られ、得られた株をPA710及PA714と名付けた。
次の工程は、PA824株のバックグランドにおいて上記のカセットを評価することができるようにPA715にこれらのカセットを移入することである。これは、PA710及びPA714株からの染色体DNAの単離と、テトラサイクリン耐性による選別を伴うPA715の形質転換への2つのDNAの各々の別々の使用によって達成された。テトラサイクリン耐性形質転換体はクロラムフェニコール感受性について選別された。すなわちこの選別によってbpr遺伝子座におけるP26panBpanDカセットとの結合によってドナーDNAからP26panE1遺伝子をも獲得した所望の形質転換体が識別される。PA710あるいはPA714染色体DNAがドナーとして用いられた形質転換に由来するクロラムフェニコール感受性単離株が得られた。試験管培養アッセイにおいて最も高いパントテン酸力価を生じた単離株が蓄えられた。これらの株をそれぞれPA717及びPA721と名付けた。新しい株、並びにPA824及びPA715、の2本ずつ(duplicate)の試験管培養物を、43℃で48時間SVY10g/Lアスパラギン酸中で増殖し、その後パントテン酸、HMBPA及びβ-アラニンについてアッセイした。さらに、各株からの抽出液をSDS−PAGEゲルで泳動した。試験管培養アッセイの結果を表2に提示する。
Figure 2006504408
期待されたように、各新しい株はPA715よりも多くのパントテン酸及びβ-アラニンを生産した。2種の株(PA717-24及びPA721-39)は、PA824とほぼ同程度多くのパントテン酸を生産したが、PA721-35はPA824より多くのパントテン酸を生産した。3種全ての新株はPA824よりも低いHMBPAを生産した。タンパク質のゲル分析は3種の新株がいずれのコントロール株よりも多くのPanBを生産していることを示した。
PA717-24、PA721-35、及びPA721-39株も大豆粉を主体とする培地中での振とうフラスコ培養において評価された。表3に示されるように、増幅可能なP26panBpanDカセットをもつこれらの株は、パントテン酸及びHMBPAを、別個の増幅性P26panB及びP26panDカセットの両方を含むPA668-2及びPA668-24で認められる量と類似した量で生産した。
Figure 2006504408
パントテン酸(並びに図1に示した及び本明細書に記載した他のパント化合物)の生産に加えて、商業的な量の所望のパント化合物を生産するために操作された特定の株はまた、3−(2−ヒドロキシ−3−メチル−ブチリルアミノ)−プロピオン酸(HMBPA)(本明細書中では、「β-アラニン-2-(R)-ヒドロキシイソ吉草酸」、「β-アラニン-2-ヒドロキシイソ吉草酸」、「β-アラニル-α-ヒドロキシイソ吉草酸」、及び/又は「ファントテネート」とも称する)として同定された副産物を生産することが実証された。(「ファントテネート」という用語はまた、本明細書中で「fan」と略記される。)
HAMBAは[R]-α-ヒドロキシイソ吉草酸(α-HIV)とβ-アラニンが、PanC酵素により触媒され、縮合した産物である。α-HIVはα-KIVの還元によって形成され、その反応はα-ケトレダクターゼPanE(例えばPanE1及び/又はPanE2)及び/又はIlvCによって触媒される。それゆえ、微生物には、生合成酵素PanB、すなわちパントテン酸生合成経路及びHMBPA生合成経路の基質となるα-KIVについて拮抗する経路が少なくとも2つ存在することが提案されている。(α-KIVについて拮抗する第3及び第4の経路は、α-KIVからのバリン又はロイシンの生産をもたらす経路である、例えば図1参照。)少なくともパントテン酸生合成経路及びHMBPA生合成経路はさらに、PanC酵素の競合的な基質、すなわちα-HIV及びパントエートを生産する。HMBPA生産はパントテン酸生産に重要な影響を及ぼし得る。例えば、HMBPA経路は前駆物質(α-KIV及びβ-アラニン)及びいくつかの酵素(PanC、PanD、PanE1、及び/又はIlvC)についてパントテン酸経路と拮抗し得る。さらにHMBPAの構造がパントテン酸の構造と類似しているために、HMBPAの構造は、パントテン酸経路における1以上の段階を負に調節する望ましくない性質を有する可能性がある。HMBPAの識別に基づいて、米国仮特許出願第60/262,995は、パントテン酸生合成法では、HMBPA生合成法と比べて、パントテン酸生産が、基質(α-KIV及びβ-アラニン)及び/又は酵素(PanC、PanD、PanE1、及び/又はIlvC)の使用を有利にするあらゆる手段によって改良又は最適化され得ることを教示している。
実施例II:セリン利用率の増加によるパントテン酸生産の増加
パントテン酸生産を最適化する少なくとも1つの方法は、微生物培養におけるセリンの利用率を調節することを含む。特にセリンの利用率の増加が(例えばHMBPAと比例して)パントテン酸の生産増加に導くのに対して、セリンの利用率の減少はHMBPAに対してパントテン酸生産の減少に導くことが実証できる。この方法はセリンから誘導される化合物、メチレンテトラヒドロフォレート(MTF)が、パントテン酸生合成反応の間に、ヒドロキシメチル基をα-KIVに与えてケトパントエートを生成するという理解に基づくものである(例えば図1及び2を参照)。それゆえに、セリン量の調節は効果的にケトパントエート量を調節し、続いて適切に操作された微生物におけるパントエート及び/又はパントテン酸生産を調節する1つの手段である。この調節を実証するため、PA824をSVYグルコース+5g/Lβ-アラニン及び±5g/Lセリンを加えた試験管培養で、43℃で48時間培養した。
Figure 2006504408
表4に提示されたデータにより立証されるように、セリンの添加はパントテン酸生産量を増加する(一方、逆にHMBPA生産を減少する)。
実施例III:glyA遺伝子産物セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ量の増加を伴う細菌細胞の操作
セリン供給に代わる方法として、パントテン酸生産量を調節するためのセリン量及び/又はセリン利用量(及び、従ってメチレンテトラヒドロフォレート量)をの増加する他の方法は、3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼあるいはセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(それぞれserA及びglyA遺伝子産物)の合成又は活性を増加することであり、これによって、適切に操作された微生物においてセリン及びメチレンテトラヒドロフォレート生合成が増加する。
glyA遺伝子の発現は、強力な構成性プロモーターの下流にB.subtilisのglyA遺伝子のクローンを含む発現カセットでB.subtilisを形質転換することによって増加された。発現カセットを構築するために、表5に示したプライマーRY417及びRY418は、B.subtilis PY79から単離された染色体DNAからPCRによってglyA遺伝子を増幅するのに使用された。
Figure 2006504408
RY417はXbaI部位のすぐ下流に合成リボソーム結合部位RBS2を含む。増幅されたDNAはその後、pAN396プラスミド(図6.配列番号24)を生成するため、XbaI及びBamHIで切断され、pAN004(図5)ベクター中のXbaI部位とBamHI部位間にクローン化された。pAN004ベクターは、クローン化されたglyA遺伝子の発現を駆動するため、XbaIクローニング部位のすぐ上流に、SP01ファージのP26プロモーターを含む。pAN396は発現カセットのすぐ下流にB.subtilisで機能するcat遺伝子を含む。B.subtilisを形質転換するため、P26 glyAカセット及びcat遺伝子を含むNotI DNA断片はpAN396から単離され、自己連結され、そしてB.subtili PY79のコンピテント細胞に形質転換された。数個のクロラムフェニコール耐性形質転換体を選別し、PA1007及びPA1008と名付けた。染色体DNAをこれらの各株から単離し、PA1011及びPA1014株を得るため、それぞれPA721B-39及びPA824のコンピテント細胞を形質転換するのに用いた。選択されたPA1011及びPA1014単離株の細胞抽出液についてのSDSポリアクリルアミド電気泳動により、これらの株が、それらの親株であるPA712B-39(実施例Iに記載)及びPA824(国際公開第WO 01/21772に記載)と比較して、増加した量のglyA遺伝子を含むことが確認された。glyA遺伝子発現の増加がパントテン酸生産に及ぼす影響を調べるため、PA1011及びPA1014を43℃で48時間、5g/L β-アラニンを含むSVYグルコースの試験管培養中で増殖した。表6に提示されたデータに示されるように、PA1014(4.5g/L)はその親株であるPA824(3.2g/L)よりも多くのパントテン酸を生産した。同様にPA1011(4.35g/L)は平均して親株PA712B-39(4.05g/L)よりも多くのパントテン酸を生産した。
Figure 2006504408
実施IV:serA遺伝子産物3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ量の増加を伴う細菌細胞の操作
serA遺伝子産物である3-ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼは、セリン生合成への経路において最初に関わる酵素である(図2参照)。セリンはMTF合成の基質の1つであるため、本発明者らは、その細胞中のセリン量を増加するため、serA遺伝子の過剰発現を企てた。serA遺伝子発現は、上述のglyA遺伝子について実施例IIIで説明されたのと同様の方法で、すなわち強力な構成性プライマーの下流にクローン化されたB.subtilis serA遺伝子を含む発現カセットでB.subtilisの細胞を形質転換することによって増加された。発現カセットを構築するためのプライマーに、表5に示されたRY405及びRY406を用いて、B.subtilis PY79から単離された染色体DNAからPCRによってserA遺伝子を増幅した。増幅されたDNAはその後XbaIとBamHIで切断され、これらはpAN393プラスミド(図7;配列番号25)を生成するため、pAN004ベクター(図5)中のBamHI部位とXbaI部位の間にクローン化された。B.subtilisを形質転換するため、P26serAカセット及びcat遺伝子を含むNotI DNA断片を、pAN393から単離し、自己連結し、そしてB.subtilis PY79のコンピテント細胞中に形質転換した。数個のクロラムフェニコール耐性形質転換体を選別し、PA1004及びPA1005と名付けた。染色体DNAをこれらの株のそれぞれから単離し、これらはPA1010及びPA1013株を得るため、それぞれPA721B-39及びPA824のコンピテント細胞を形質転換するために用いられた。PA1010及びPA1013の単離株の細胞抽出液のSDSポリアクリルアミド電気泳動によって、これらの株がそれらの親株であるPA721B-39及びPA824と比較して、増加した量のserA遺伝子を含むことが確認された。
serA発現の増加がパントテン酸生産に及ぼす影響を調べるため、PA1010及びPA1013を43℃で48時間、5g/L β-アラニンを含むSVYグルコースの試験管培養中で増殖した。表7に提示されるデータに示されるように、PA1010(4.7g/L)は平均してその親株であるPA721B-39(4.1g/L)よりも多くのパントテン酸を生産した。同様にPA1013(4.1g/L)は平均して親株PA824(3.1g/L)よりも多くのパントテン酸を生産した。
Figure 2006504408
実施例V:serA及びglyAの発現増加を伴う株の振とうフラスコ実験及び発酵槽実験
試験管での実施に基づいて、2種の親株PA824及びPA721B-39から各々1つずつ、増幅可能なserAカセットを含む2種の株と、増幅可能なglyAカセットを含む2種の株とを選別した。4種の株を、親株とともに、振とうフラスコ中で増殖した(表8)。大豆粉MOPSグルコース(SMG)培地で、4種全ての株はそれらの親株よりも多くのパントテン酸を生産した。大豆粉MOPSマルトース(SMM)培地で、4種の株のうち1つが親株より優れているように思われた。
各親株からのserA過剰発現株及びglyA過剰発現株を、10リットルのChemapベンチ発酵槽で同時に培養した。SMMで最も高いパントテン酸力価を与えた、PA824に由来するglyA過剰発現株PA1014-3も発酵槽において最良の生産を成した(表9)。PA1014-3株は、親株であるPA824が培養上清中に36時間で41g/l及び48時間で46g/lのパントテン酸を生産したのに対し、それぞれ71g/l及び 86g/lのパントテン酸を生産した。serA株PA1012-4も培養上清中にそれぞれ36時間で52g/l、48時間で60g/lというPA824コントロールよりも著しく多いパントテン酸を生産した。これらの結果ははっきりとglyA及びserAの両方の増加による有効性を証明している。
serA及びglyAを過剰発現するPA721B-39派生株もまた、それらの親株よりも明らかに改善された。どちらも48時間で培養上清中におよそ80g/l(それぞれ82g/l及び79g/l)のパントテン酸を生産した。PA824派生株に対するPA721B-39派生株のPanB量増加の効果は、HMBPA減少においてこれを証明する。PA712B-39及びその派生株は48時間経過後でPA824よりも少ないかあるいはPA668-24と同量のHMBPAを生産する。GlyAの増加もHMBPAへの炭素の流れを低くすると思われる。
Figure 2006504408
Figure 2006504408
パントテン酸の生産増加は、単一株においてserAとglyAの過剰発現を併合することによって、及び/又はフィードバック耐性serA又はglyA、あるいはその両方に導く突然変異を導入することによっても達成できる。
実施VI:purR遺伝子の突然変異によるglyA遺伝子発現の増加
実施例III及びVに記載されているように、glyA遺伝子の発現は、強力な構成性プロモーターによってglyA遺伝子が駆動されるカセットの1以上のコピーを付加することによって増加され得る。glyA遺伝子発現を増加させる代替的な方法は、その制御を変化させることである。文献が記載しているglyA::lacZ融合を記載する文献は、glyAプロモーターは通常の条件下では中程度の強さ(およそ400ミラー単位)であるが、もしその負のレギュレーターであるpurR遺伝子が欠失された場合、このプロモーターは比較的高レベル(1800ミラー単位)に誘導されることが可能である(Saxildら(2001)J.Bacteriol.183:6175-6183)。それゆえ、実験は、glyA発現、及びその結果生じるパントテン酸生産が、パントテン酸生産株からpurRの欠失によって増加され得るかを決定するために行われた。
B.subtilisのpurR遺伝子をPCRによってPY79染色体DNAから増幅し、得られた断片を、プラスミドpAN835F(図8,配列番号26)を得るため、PvuIIで切断されたpGEM5-Zf(+)ベクターDNA中にクローン化した。このステップは、PvuII部位を挿入断片の両端で失わせ、そしてpurR遺伝子のオープンリーディングフレームの中間部にユニークPvuII部位を残した。続いて、pAN363F(配列番号27)に由来するグラム陽性カナマイシン耐性遺伝子を含むブラントPCR DNA断片を、pAN838F(図9,配列番号28)を得るため、pAN835FのこのユニークPvuII部位に連結した。
pAN838Fをその後、PY79、PA668-24、及びPA824中に形質転換し、10mg/lでカナマイシン耐性について選別し、それぞれPA1059、PA1060、P1061と名付けられた新たな組の株を得た。すべての新しい単離株は、二重乗り換え事象から予想された破壊されたpurR::kan対立遺伝子を含むことがPCRによって示された。PA1060及びPA1061の数種の単離株は、β−アラニンを含むSVYグルコース中で増殖された試験管培養でパントテン酸生産について試験された(表10)。PA668-24、PA1060-2及びPA1060-4に由来する単離株で最良のものは、それぞれ3.0g/lから5.3〜5.1g/lへのパントテン酸の改善を生じ、これは75%の増加である。同様に、PA824、PA1061-1及びPA1061-2に由来する単離株で最良のものは、およそ3.1g/lから5.4g/lとこちらも75%の増加を生じた。これらの結果は、glyA遺伝子が、purR遺伝子の破壊によって、これらの新しい株において実質的に誘導されていることを示唆している。あるいは、PA1060及びPA1061のパントテン酸生産における改善は、より複雑な多面的効果によるものかもしれない。いずれにせよ、purRレギュロンの脱調節はパントテン酸生産に正の効果を有する。
他の実施形態において、purRの破壊は他のパントテン酸生産株、例えば組み込まれたP26serA対立遺伝子、あるいはP26panBCDオペロンの1以上のコピー、を有する株に組み込まれ得る。purR遺伝子はPan26panBのような所望の発現カセットの付加のための部位としても使用され得る。人はまた、purR変異を選別するために、8−アザグアニンのようなグアニン類似体に対する耐性を使用することができる。
Figure 2006504408
実施例VII:非増幅性カセットからのserA遺伝子の過剰発現
この実施例はセリン生産を増加するための別の方法を説明する。この方法では2段階の手順により、強力な構成性プロモーター(P26)を染色体serA遺伝子の前に配置する。天然serA遺伝子のすぐ上流の領域から、およそ700bpのDNA配列を含む2種のプラスミドを構築した。第1のプラスミドであるpAN821もまた、serAをコードする領域の3'側半分を、前述した2つの配列(カナマイシン耐性遺伝子(図10 、配列番号30))の間に含む。B.subtilis中に形質転換し、カナマイシン耐性について選別すると、pAN821はserA遺伝子の破壊を生じ、セリン栄養要求性となる。これはΔserA::kan対立遺伝子と名付けた遺伝子配列を形成する。
P26 serA構造を移入するように設計された第2のプラスミドは、pAN395においてP26プロモーターの5'末端にserA上流配列が挿入することによって構築された。生じたプラスミドであるpAN824は図11に示されている(配列番号31)。プラスミドpAN395は実施例IVで説明したpAN393に類似している。serA遺伝子のオープンリーディングフレームは、B.sutilis PY79DNAを鋳型として用いたPCRによって合成された。その上流プライマーはXbaI部位及び適度に強力な合成リボソーム結合部位(RBS2)を含む。その下流プライマーはBamHI部位を含む。このserAオープンリーディングフレームを用いて、培地コピープラスミド(pAN006)においてpanBCD遺伝子を置換し、pAN395(図12、配列番号29)を得た。このプラスミドはP26プロモーター及びRBS2リボソーム結合部位から発現されるserA遺伝子を含む。
pAN821由来のΔserA::kan対立遺伝子をPA824株へ導入してPA1026を得た。予想通り、PA1026は最少培地では生育しなかった。第2段階で、プラスミドpAN824由来のP26serAカセットをPA1026に導入し、そしてセリン原栄養性について選別し、PA1028株を得た。数種のPA1028単離株は、診断用のPCRによって予想された染色体構造(P26 serA)を有することが確認された。これらの単離株をその後、5g/lのβ−アラニンを含むSVY中で48時間培養された試験管培養中で、パントテン酸生産について調べた(表11)。PA1028単離株(PA824由来)は10%から25%のパントテン酸生産増加を与えた。表12に示すように、振とうフラスコ実験において、PA824が約7g/lのパントテン酸を生産したのに対し、PA1028は11g/lのパントテン酸を生産した。
実施例VIII:組み込まれた非増幅性P26 serAカセット及び増幅性P26 glyAカセットの双方を含むパントテン酸生産株の構築
serAに組み込まれた非増幅性P26 serAカセットはより高いパントテン酸合成をもたらし(例えば表12を参照)、また、glyAに組み込まれたクロラムフェニコール増幅性P26 glyAカセットは高いパントテン酸合成をもたらすので、これら2つを組み合わせると相乗的であるかもしれないことが提案された。serAに組み込まれた非増幅性P26 serAカセットを含むPA824の派生株であるPA1028-4株を、PA1014-3由来の染色体DNAを用いて5mg/lでクロラムフェニコール耐性に形質転換し、クロラムフェニコール増幅性P26 glyAカセットを含むPA1038と名付けられた1組の株を得た。PA1038単離株は、β−アラニンを含むSVY中で増殖された標準試験管培養を用いて、パントテン酸生産について試験された(表13)。予想されたように、PA1038は、PA824による約4.2g/lからPA1038株の組による6.6〜7.5g/lへと劇的なパントテン酸生産の増加を示した。単離株PA1038-3及びPA1038-12はさらに、表12で示されるような振とうフラスコ中で試験された。どちらもPA824の7.4g/lというパントテン酸生産に対して、平均13.6g/lのパントテン酸を生産した。
Figure 2006504408
Figure 2006504408
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実施例IX:グリシン開裂経路の改変によるMTF生産の増加
上の実施例で実施されたように、細菌におけるMTF生産増加は、panBCD及び/又はpanE遺伝子の操作によってより多くのパントテン酸が生産されるように操作された株において、パントテン酸生産を増加する。パントテン酸生産が、glyA遺伝子あるいはserA遺伝子の発現増加によって、増加され得ることが実証された。実施例III〜実施例V及びVII〜VIIIで実証されたように、より強力なプロモーター又はリボソーム結合部位を用いて、glyA又はserA発現を増加させることができる。あるいは、glyA遺伝子の発現は、実施例IVで説明されたように、purRリプレッサー遺伝子の破壊によってBacillusにおいて脱調節され得る。
MTF生産を増加させる別の方法は、グリシン開裂経路の酵素の発現を増進することである。例えば、gcvT、gcvPA、gcvPB、gcvH、及びpdhD遺伝子によってコードされている酵素類は、グリシンの、MTF、CO2、及びNH3への分解を触媒する。前述のSP01ファージP26プロモーターのような強力な構成性プロモーターを、gcvT-gcvPA-gcvPBオペロンの前、又はgcvHもしくはpdhD遺伝子の前にクローン化して、それらの発現を増進することができる。上述の手法に加えて、安価な追加のグリシンを培地に添加して、本明細書に記載のように操作されたあらゆる株によってMTF生産をさらに増進することができる。
均等
当業者は、通常の実験法を用いるだけで上述の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等を確認することができるし又は認識するであろう。そのような均等は特許請求の範囲に含まれることを意図するものである。
図1はパントテン酸及びイソロイシン−バリン(ilv)の生合成経路の概略図である。パントテン酸生合成酵素は太字で示し、それらの対応する遺伝子は斜字で示している。イソロイシン−バリン(liv)生合成酵素は太字の斜字で示し、それらの対応する遺伝子は斜字で示している。 図2はE.coli(及びおそらくはB.subtilis)におけるメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路の概略図である。 図3はプラスミドpAN665の構築の概略図である。 図4はプラスミドpAN670の構築の概略図である。 図5はプラスミドpAN004の概略図である。 図6はプラスミドpAN396の概略図である。 図7はプラスミドpAN393の概略図である。 図8はB.subtilisのpurR遺伝子のクローンであるpAN835Fの構造の概略図である。 図9はB.subtilisのpurR遺伝子の破壊を導入するために設計されたプラスミド、pAN838Fの構造の概略図である。 図10は、serA遺伝子部分を欠失し、カナマイシン耐性について選択するために設計されたプラスミド、pAN821の構造の略図である。 図11は、serAの遺伝子座に非増幅性P26serAカセットを組み込み、Ser+について選択するように設計されたプラスミド、pAN824の構造の概略図である。 図12はserAの遺伝子座にP26serA発現カセットを組み込み、そして増幅するように設計された培地コピープラスミド(medium copy plasmid)、pAN396の構造の概略図である。
【配列表】
Figure 2006504408
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Claims (49)

  1. パントテン酸の生産が高まるような条件下で、脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法。
  2. パントテン酸の生産が高まるような条件下で、
    (i)脱調節されたパントテン酸生合成経路、及び
    (ii)脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路
    を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法。
  3. 前記微生物が脱調節された少なくとも2種類のパントテン酸生合成酵素を有する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記微生物が脱調節された少なくとも3種類のパントテン酸生合成酵素を有する、請求項2に記載の方法。
  5. 前記微生物が脱調節された少なくとも4種類のパントテン酸生合成酵素を有する、請求項2に記載の方法。
  6. 前記微生物が、脱調節されたケトパントエートヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、脱調節されたケトパントエートレダクターゼ、脱調節されたパントテン酸シンテターゼ、及び脱調節されたアスパラギン酸−α−デカルボキシラーゼを有する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記微生物がさらに、脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記微生物が、脱調節された少なくとも2種類のイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素を有する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記微生物が、脱調節された少なくとも3種類のイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素を有する、請求項7に記載の方法。
  10. 前記微生物が、脱調節されたアセトヒドロキシ酸シンテターゼ、脱調節されたアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ、及び脱調節されたジヒドロキシ酸デヒドラターゼを有する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記微生物が、脱調節された少なくとも1種類のMTF生合成酵素を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記微生物が脱調節されたglyA遺伝子を有する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記微生物が脱調節されたserA遺伝子を有する、請求項11に記載の方法。
  14. 前記微生物が脱調節されたglyA遺伝子及び脱調節されたserA遺伝子を有する、請求項11に記載の方法。
  15. 前記微生物が変異された、欠失された、又は破壊されたpurR遺伝子を有する、請求項12又は14に記載の方法。
  16. パントテン酸の生産が高まるように、脱調節されたパントテン酸生合成経路、脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路、及び脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の高生産方法。
  17. 36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産されるように、脱調節されたパントテン酸生合成経路、脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路、及び脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
  18. 36時間の培養後少なくとも60g/Lのパントテン酸が生産されるように微生物を培養することを含む、請求項17に記載の方法。
  19. 36時間の培養後少なくとも70g/Lのパントテン酸が生産されるように微生物を培養することを含む、請求項17に記載の方法。
  20. 48時間の培養後少なくとも60g/Lのパントテン酸が生産されるように、脱調節されたパントテン酸生合成経路、脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路、及び脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
  21. 48時間の培養後少なくとも70g/Lのパントテン酸が生産されるように微生物を培養することを含む、請求項20に記載の方法。
  22. 48時間の培養後少なくとも80g/Lのパントテン酸が生産されるように微生物を培養すること含む、請求項20に記載の方法。
  23. パントテン酸キナーゼ活性の調節によってパントテン酸の生産がさらに高められる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
  24. パントテン酸キナーゼ活性が減少される、請求項23に記載の方法。
  25. CoaAが欠失され、及びCoaXがダウンレギュレーションされる、請求項24に記載の方法。
  26. CoaXが欠失され、及びCoaAがダウンレギュレーションされる、請求項24に記載の方法。
  27. CoaX及びCoaAがダウンレギュレーションされる、請求項24に記載の方法。
  28. 前記微生物が過剰セリンの条件下で培養される、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
  29. パントテン酸が生産されるように過剰セリンの条件下で、脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
  30. 前記微生物が、パントテン酸の生産がβ−アラニン供給と無関係であるように脱調節されたパントテン酸生合成経路を有する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記微生物がグラム陽性微生物である、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記微生物がBacillus属に属する、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記微生物がBacillus subtilisである請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
  34. 請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法に従って合成された生産物。
  35. 請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法に従って生産されたパントテン酸を含む組成物。
  36. 脱調節されたパントテン酸生合成経路、及び脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有する、パントテン酸の高生産のための組換え微生物。
  37. 脱調節されたパントテン酸生合成経路、脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路、及び脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成経路を有する、パントテン酸の高生産のための組換え微生物。
  38. さらに、パントテン酸キナーゼ活性が低減された請求項36又は37に記載の微生物。
  39. グラム陽性微生物である、請求項36〜38のいずれか1項に記載の微生物。
  40. Bacillus属に属する、請求項36〜38のいずれか1項に記載の微生物。
  41. Bacillus subtilisである、請求項36〜38のいずれか1項に記載の微生物。
  42. 36時間の培養後少なくとも30g/Lのパントテン酸が生産されるような条件下で、
    脱調節されたpanB遺伝子、
    脱調節されたpanD遺伝子、及び
    少なくとも1種類の、脱調節されたイソロイシン−バリン(ilv)生合成酵素をコードする遺伝子
    を有する組換え微生物を培養することを含むパントテン酸の生産方法。
  43. 前記微生物がさらに、脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路を有し、かつ36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸を生産するような条件下で前記微生物を培養する、請求項42に記載の方法。
  44. 36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産されるように、過剰セリンの条件下で、
    脱調節されたpanB遺伝子、及び
    脱調節されたpanD遺伝子
    を有する組換え微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
  45. 36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産されるように、過剰バリンの条件下で、
    脱調節されたpanB遺伝子、
    脱調節されたpanD遺伝子、及び
    脱調節されたメチレンテトラヒドロフォレート(MTF)生合成経路
    を有する組換え微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
  46. 36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産されるように、バリン過多の条件下で、
    脱調節されたpanB遺伝子、
    脱調節されたpanD遺伝子、及び
    脱調節されたglyA遺伝子
    を有する組換え微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
  47. 36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産されるように、過剰バリンの条件下で、
    脱調節されたpanB遺伝子、
    脱調節されたpanD遺伝子、及び
    変異された、欠失された、又は破壊されたpurR遺伝子
    を有する組換え微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
  48. 36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産されるように、過剰バリンの条件下で、
    脱調節されたpanB遺伝子、
    脱調節されたpanD遺伝子、及び
    脱調節されたserA遺伝子
    を有する組換え微生物を培養することを含む、パントテン酸塩の生産方法。
  49. 36時間の培養後少なくとも50g/Lのパントテン酸が生産されるように、過剰バリンの条件下で、
    脱調節されたpanB遺伝子、
    脱調節されたpanD遺伝子、
    脱調節されたserA遺伝子、及び
    脱調節されたglyA遺伝子
    を有する組換え微生物を培養することを含む、パントテン酸の生産方法。
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