JP2006502835A - 吸収性薄膜 - Google Patents
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Abstract
Description
1. 関連出願
本出願は、2000年9月11日出願の米国仮出願第60/231,800号と2000年3月10日出願の米国仮出願第60/196,869号の優先権の恩典を主張した2001年3月12日出願の米国出願第09/805,411号、現在米国特許第6,531,146号の継続出願である、2003年3月10日出願の米国出願第10/385,399号の一部継続出願である。本出願は、また、2002年9月4日出願の米国仮出願第60/408,393号と2002年7月31日出願の米国仮出願第60/399/792号の優先権の恩典を主張する。上記の出願は、共同譲渡されており、すべての内容は本願明細書に含まれるものとする。
本発明は、一般的には、医療用移植片、更に詳細には、吸収性膜(resorbable membranes)及びその膜の使用方法に関する。
外科的修復又は炎症性疾患に関する主な臨床課題は、手術又は疾患後の治癒過程の初期段階で生じる癒着である。癒着は、異常な組織結合の形成を含む症状である。これらの結合は、例えば、肉体的機能の障害、不妊症の発症、腸や消火管の他の部分の閉塞(腸閉塞)、全身不快感、例えば、腰痛の発症になり得る。この症状は、ときには生命を脅かすことがある。外科的介入の結果として術後に癒着の最も一般的な形が生じるが、腰部の炎症性疾患、機械的損傷、放射線治療、異種物質の存在のような他の過程又は事象の結果として癒着が生じることがある。
術後の癒着を予防するために様々な試みが行なわれてきた。例えば、腹膜の洗浄、ヘパリン化溶液、凝血促進剤の使用、顕微鏡的又は腹腔鏡的手術法の使用のような手術法の変更、手術用グローブからタルクの排除、小さな縫合の使用、漿膜表面の付着をできるだけ少なくすることを目標とする物理的障壁(膜、ゲル又は溶液)の使用がすべて試みられてきた。残念ながら、これらの方法においては非常に限られた成功しか見られなかった。組織付着を制限するように設計された膜や腹腔内粘性溶液のような種々の形での障壁材料も限られた成功に直面した。これらの障壁材料としては、セルロース障壁、ポリテトラフルオロエチレン材料、又はデキストラン溶液が含まれ得る。
Tokahuraらの米国特許第5,795,584号には、抗癒着又は瘢痕組織低減用膜(フィルム又はメンブラン)が開示され、Cohnらの米国特許第6,136,333号には、類似の構造が開示されている。Tokahuraらの特許では、生体吸収性ポリマーが適切なカーボネートと共重合され、その後、膜のような非多孔性単層癒着障壁へ形成されている。Cohnらの特許では、抗癒着用高分子ヒドロゲルがウレタン化学を用いることにより架橋せずに形成されている。これらの特許は共に比較的複雑な化学式及び/又は外科的癒着障壁として用いられる具体的な構造が得られる反応を含んでいる。膜の改良が依然として求められている。
本発明は、様々な外科手術に関連して、例えば、組織癒着を遅延又は予防するとともに瘢痕を低減させるために用い得る改良された吸収性薄膜を提供する。更に、本発明のポリマーやコポリマーは、比較的簡単な化学反応や製剤を必要とする。
本発明の一特徴によれば、無定形ポリラクチド、例えば、70:30のポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)の実質的に均一な組成物を含む吸収性薄膜が提供される。
無定形ポリラクチド膜は、約5.5 g/dl以上である比較的大きい初期粘度特性で押出すことにより形成し得る。初期に大きい粘度特性は、押出工程で、例えば、膜の破損又は引裂の発生を低減させることにより膜の確実な形成に役立つことができる。処理と滅菌後、膜の粘度特性は、典型的には低くなる。本発明の他の態様によれば、押出工程での無定形ポリラクチド材料の強度を増大させるために、4 g/dlより大きいような他の比較的大きい粘度特性も使用し得る。押出工程によって、分子配向が偏向した膜が得られる。
本発明の他の特徴によれば、膜は、第一の実質的に平滑な表面と第二の実質的に平滑な表面をもち、非多孔性であり、該第一の実質的に平滑な表面と該第二の実質的に平滑な表面との間で測定した場合、約0.01mm〜約0.300mm厚である。該膜は、少なくとも該膜の縁部のセグメントを形成し得る、少なくとも1つの比較的厚い部分を含んでいる。従って、該膜の厚みは、いろいろな断面である。
本明細書に記載された特徴又は特徴の組合わせは、そのような組合わせに含まれる特徴が背景、本明細書、当業者の知識から明らかなように相互にまちまちでなければ本発明の範囲内に包含される。本発明の追加の利点と態様は、次の詳細な説明と特許請求の範囲で明らかである。
ここで、実施例が添付の図面に示されている本発明の本件の好適実施態様を詳細に参照する。可能であればどこでも、同一又は同様の部分を示す図面と説明には同一又は同様の符号が用いられている。本明細書の開示に関して、便利さと明瞭さのためだけに、上端、底、左、右、上方、下方、上、下、真下、後ろ、前のような方向性の用語が添付図面について用いられている。そのような方向性の用語は、決して本発明の範囲を制限するように解釈すべきではない。
本明細書の開示は図示した特定の実施態様を参照しているが、これらの実施態様は例として示され限定するものではないことは理解すべきである。具体的な実施態様を記載しているが、次の詳述の意図は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の真意と範囲内に包含することができる実施態様の変更、代替物、均等物すべてを包含するように解釈すべきである。
本発明の一実施態様による吸収性薄膜は、ポリラクチドを含む実質的に均一な組成物を含んでいる。図示された実施態様においては、ポリラクチドは無定形であり及び/又は偏向した分子配向を有する。本明細書に用いられる無定形ポリラクチドは、はっきりしたX線回折図を生じないものである。これらのポリマーは構造単位が三次元の規則的(結晶性)順序で配列している、あるとしてもわずかな領域を含むことがあり、それらの構造は大体平行であるが鎖が不十分に並んだ部分の集団のことがある長い分子のもつれとして見えるものである。一実施態様においては、無定形のという言葉を“実質的に無定形の”という言葉に置き換えることができ、他の実施態様においては、無定形のという言葉を“幾分無定形の”又は“わずかに無定形の”という言葉に置き換えることができる。
本件の好適実施態様においては、押出手順、例えば、当該技術において既知のものを用いて薄膜を製造することができる。押出手順は、有利には、膜を効率良く製造することができる。更に、そのような押出法によって製造された膜は、膜内に溶媒捕捉がない状態にすることができ、更に、所定の分子偏向を含む分子偏向を備えることができる。本発明の好適実施態様においては、膜を製造するために一軸押出しを用いることができる。変更した実施態様においては、膜を製造するために二軸押出手順を行なうことができる。一実施態様においては、本発明の膜を形成するために、例えば、ポリL-ラクチド又は更に好ましくはポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)であり得る無定形ラクチドポリマーのような無定形吸収性ポリマーを含む組成物混合物が押出される。一実施態様においては、本発明の膜を形成するためにポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)70:30 Resomer LR708(ドイツのBoehringer Igelheim KGから製造販売されている)が押出される。
本発明の一態様によれば、本発明の比較的薄い膜を形成するために前押出し粘度特性が約5 g/dlより大きい無定形ポリラクチド組成物が押出し得ることが見出される。4 g/dlより大きいような他の比較的大きい粘度特性は、例えば、押出工程で、無定形ポリラクチド材料の強度を大きくするために本発明の他の態様に従って使用し得る。
無定形ポリラクチドの初期に大きい(即ち、前押出し)粘度特性は、押出工程で、例えば、膜の弱化、破損又は引裂きの発生を低減することにより膜の確実な形成に役立つことができる。処理滅菌した後に膜の粘度特性が低下するが、膜の初期に比較的大きい粘度特性が、有利には、ミリメートルの部分のオーダーの厚みまで押出しを容易にすることができる。例えば、初期(前押出し)粘度特性が約5 g/dl〜約7 g/dlの範囲にある無定形ポリラクチドポリマーは、厚さが約0.02mmであり、得られた粘度特性が約2.5 g/dl〜約3.5 g/dlである、膜を形成するために押出すことができ、滅菌法の使用によって材料の粘度特性はほとんど変わらない。一実施態様においては、薄膜を滅菌するためにエチレンオキシドが用いられる。エチレンオキシドは薄膜の粘度特性の実質的な低下を引き起こさないと考えられる。電子線のような他の滅菌法を用いる他の実施態様においては、得られた粘度特性は、約2.5 g/dl〜約3.5 g/dlの代りに約1.25 g/dl〜約1.75であってもよい。電子線滅菌を用いる他の実施態様においては、押出した膜の粘度特性は約1 g/dlより大きいことがあり得る。一実施態様においては、膜の粘度特性は約2 g/dlより大きい。好ましくは、本発明の膜の粘度特性は約2.7 g/dl〜約3.5 g/dlである。
一実施態様においては、ポリマー鎖は2つの軸に実質的に整列している。図1bは、第一軸103と第二軸104に共にポリマーが整列している膜102を示す図である。そのような実施態様においては、約50%より大きい、好ましくは90%より大きいポリマー鎖又はポリマー鎖のセグメントが2つの軸の1つに実質的に整列している。一実施態様においては、整列したポリマーは第一軸103と第二軸104との間で等しく釣り合っている。他の実施態様においては、整列したポリマーは第二軸104より第一軸103に多い。例えば、ポリマーは第一軸に約45%整列し、第二軸に約55%整列することができる。一実施態様においては、軸は80度未満の角度106をなしている。好ましくは、軸は約45度未満、更に好ましくは30度未満、なお更に好ましくは20度未満の角度をなしている。
無定形ポリラクチドの分子配向は、膜に種々の物理的特性を与えることができる。例えば、膜をそのガラス転移温度にするのに十分な熱処理に供した場合、偏向した分子配向を有する膜は軸に実質的に垂直な向きに収縮することができる。図1aに示されるように、偏向した分子配向を有する膜100が熱処理に供された場合、収縮105の向きは軸101に実質的に垂直であることができる。更に、偏向した分子配向は、膜が加熱される場合、収縮の向きを制御又は選択的に制御させることができる。このことは、特定の構造とサイズが膜の植込みに所望される状態には有利なことである。
一実施態様においては、押出工程で膜は第一厚みをもつオリフィスを通って押出され、次に、膜は第二厚みまで伸ばされ、ここで、第一厚みは第二厚みより大きい。第一厚みは、第二厚みの2倍より大きく、更に好ましくは第二厚みの5倍より大きく、第二厚みの10倍より大きい。従って、処理滅菌された膜が引き続きそのガラス転移温度になったとき、その厚みは第一厚みに戻るか又は戻ってもよい。
本発明の膜は、少なくとも1つの実質的に平滑な表面をもち得る。好ましくは、本発明の膜は、2つの(対向する)実質的に平滑な表面をもっている。対向する表面の間で測定した本発明の膜の厚さは約0.01mm〜約0.3mm、更に好ましくは約0.01mm〜約0.1mmであり得る。好適実施態様においては、本発明の膜の厚さは、約0.015mm〜約0.025mmである。他の好適実施態様においては、本発明の膜の厚さは約0.02mmである。
本発明の膜は、2つの実質的に平滑な表面の少なくとも1つから隆起している少なくとも1つの厚い部分を更に含むことができる。好適実施態様においては、少なくとも1つの厚い部分は2つの実質的に平滑な表面の双方から突出している。言い換えれば、膜は厚みの異なる複数の領域又は部分を含むことができる。一実施態様においては、膜は第一厚みを有する第一部分と、第二厚みを有する第二部分を含み、第一厚みは第二厚みより大きい。第一部分が膜の縁部から離れて位置してもよく、第一部分が膜の縁部に位置してもよい。更に、第一部分の長さは膜の長さ又は幅より大きくない。ある実施態様においては、長さは膜の長さと幅共に短い。
好ましくは、厚い部分は、膜に結合機能を与えるのに有効である。変更した実施態様においては、厚い部分は、膜の少なくとも一部に剛性を与えるのに有効なものである。一実施態様においては、それぞれの厚い部分の長さは膜の長さに同じか又はそれより短く、幅が約0.5mm〜約25mm(一実施態様においては膜の幅より広くない)であり、厚さが膜の厚さより約2〜約10倍厚い。例えば、図2aは厚い部分を示す図である。この図においては、厚い部分115の長さ113は膜112の長さに同じであり、厚い部分111の幅は膜114の幅より短く、厚い部分116の厚さは膜117の厚さの約3倍である。本明細書の開示を考えると、厚い部分115は第一厚みを有する第一部分に対応し、図示した膜112の残りの部分は第一厚みより小さい第二厚みを有する第二部分に対応する。
本発明の好ましい薄膜は、無定形ポリラクチド、例えば、PLLAの実質的に均一な組成物を含んでいる。更に、無定形ポリラクチドは、押出しの結果として膜内に偏向した分子配向を有する。更に、膜は第一の厚い部分と第二の厚い部分を含み、各厚い部分の幅が約5mm〜約25mmであり、厚さが約0.070mmである。表面間で測定した薄膜の厚さは約0.02mmである。膜の粘度特性は約2 g/dlより大きく、約4 g/dlより大きい前押出し前滅菌粘度特性に対応している。好ましくは、本発明の膜の粘度特性は約2.75 g/dlより大きく、約5.5 g/dlより大きい前押出し前滅菌粘度特性に対応している。図2eは、第一の厚い部分151が第一縁部153を形成し、第二の厚い部分152が第二縁部154を形成している膜150のそのような実施態様を示す図である。変更した他の実施態様においては、膜124の追加の縁部又は領域に追加の厚い部分が形成されてもよい。例えば、矩形膜の4つの対応する縁部に4つの厚い部分が形成されてもよい。
本発明の膜は、膜の少なくとも1つの縁部に沿って配置された複数の穴を含むことができる。好ましくは、これらの穴は膜を通って伸びる。一実施態様においては、穴をもつ縁部は少なくとも1つの厚い部分によって形成されている。例えば、図2fは、第一の厚い部分161と第二の厚い部分162をもつ膜160を示す図である。厚い部分は、その長さに沿って穴163がある。穴は、例えば、組織に対する薄膜の縫合を容易にすることができる。
膜のそれぞれの厚い部分の幅は、例えば、約0.5mm〜約25mmであってもよい。一実施態様においては、厚い部分の幅は約5〜約25mmであり、縫合のために用いることができる。他の実施態様においては、厚い部分の幅は約0.5mmであり、下記の熱結合に用いることができる。本発明の一態様によれば、両極性電気焼灼器を用いるような加熱結合、超音波での溶着、又は同様に脊髄30の硬膜又は分節神経根32(図3a)のような組織に直接密封することができる。そのような装置は、厚い部分に加えて、厚くない縁部や中央の点のような様々な場所の膜を、膜のガラス転移温度より少なくとも高く、好ましくはその軟化点温度より高く加熱するために使用し得る。例えば、PLLAのガラス転移温度は約55℃であり、その軟化点温度が110℃より高い。2つの成分がそれらの境界面で共に結合するように隣接の組織と一緒に加熱する。他の実施態様においては、膜の厚い部分又は他の領域は、例えば、2つの脊椎20と22(図3a)の一方又は双方、又は筋肉又は他の軟組織に直接加熱結合又は密封し得る。他の実施態様においては、更に、薄膜の厚い部分又は他の領域は、例えば、膜が組織の回りに包まれ、その後それ自体に加熱結合する適用においてそれ自体に直接加熱結合又は密封し得る。更に、膜をそれ自体又は体組織に加熱密封する手法は固定増強のための他の結合法と組合わせることができる。例えば、薄膜材料は、2つ以上の加熱密封(即ち、加熱溶着)点を用いた位置に電気焼灼器を用いて一時的に固定することができ、その後、薄膜を定位置に固定するために縫合、ステープル又は膠を加えることができる。
本明細書に用いられる“非多孔性”という用語は、一般的には耐水性であり、好適実施態様によれば流体透過性でない材料を意味する。しかしながら、本発明の変更した実施態様においては、マイクロ細孔(即ち、流体透過性であるが細胞透過性でない)は、例えば、組織の瘢痕を引き起こす吸収性薄膜の表面の平滑性をほどんど破壊しない程度まで本発明の薄膜内に存在することができる。限られた適用としてかなり変更された実施態様においては、細胞透過性であるが血管透過性でない孔を製造し、使用することができる。
本件で具体化されるように、より薄い膜の厚さの多くはガラス転移温度に加熱しないときさえ十分に形作ることができる。一実施態様においては、本発明の膜は、膜を哺乳動物の体内へ最初に植込んでから約18〜約24ヶ月の間に哺乳動物の体内へ吸収できる。薄膜は、骨折眼窩床の外科的修復、鼻腔隔壁や穿孔耳鼓室薄膜の外科的修復、骨形成を促進させる保護鞘形成として、尿道構造の外科的修復や尿道狭窄の修復、頭蓋癒合部や前腕骨折部の完全な修正手術における骨癒合症の予防、軟組織線維症又は骨成長の減退、段階的修復手順での出生前破水臍ヘルニアの一時的被覆として、歯と歯肉縁との間の誘導組織再生、鼓室修復、硬膜被覆や神経修復、心臓脈管修復、ヘルニア修復、腱吻合、一時的関節スペーサ、創傷包帯、瘢痕被覆、胃壁破裂の被覆としてを含む多くの外科的適用に用いることができる。本発明の薄膜は、異常な瘢痕になるとともに正常な生理的機能を妨害し得る、組織が術後に共に異常に線維結合することを防止するのに特に適する。ときには、そのような瘢痕は経過観察、修正、又は他の外科的手術を強制及び/又は妨害し得る。
これらの膜の非常に薄い構成は、同じ材料の厚い膜の移植片の吸収速度と比較して膜の吸収速度をかなり促進させると考えられる。しかしながら、膜のあまりに急速な体内への吸収は、局所pHレベルで望ましくない滴下を生じるので、例えば、局所の炎症、不快感及び/又は異種抗体応答を導入/上昇させる。更に、あまり早く分解する薄膜の得られた一様でない(例えば、亀裂、破損、粗い又は薄片)面は、望ましくないことに、例えば、十分な治癒が生じる前に組織間の組織の乱れを引き起こすことがあり、潜在的組織の炎症や瘢痕が生じる。厚さが約0.200mm以下である本発明の膜は、抗瘢痕機能が達成及び最適化され得るように、ほぼ分解する前の3週間を超える間、好ましくは少なくとも7週間は構造上の完全さを維持すべきであると考えられる。膜が同一材料の厚い膜に比べて加速した速度で分解しない程度まで、抗瘢痕機能を達成及び最適化するように、ほぼ分解する前の少なくとも6ヶ月を超える間、更に好ましくは少なくとも1年間その構造上の完全さを維持すべきである。従って、本発明のこの態様のポリラクチド吸収性ポリマー薄膜は、比較的緩慢な速度で体内へ吸収するように設計されている。
術後部位における酸性度レベル及び/又は組織の乱れ、及び随伴する炎症(例えば、腫脹)を減少させる目的は、脊髄手術に関連して特に重要であると考えられ、特に炎症誘発不快感を軽減するためにしばしば行なわれる。神経組織が、例えば、わずかに高い酸性度レベルと炎症に対して特に感受性であり得ると考えられる。典型的な脊髄外科手術手順、例えば、椎弓切開術で、神経隆縁組織の一部が、例えば、脊柱及び/又は板に接近するように患者の脊椎から切除される。
図3aは、2つの脊椎20と22が分かれ、ネジ24とロッド26を用いて固定され、神経隆縁の一部が除去され、脊椎22内に窓28(想像矩形として示されている)が残っている椎弓切開術手順を示す図である。図3bは、脊椎22の神経隆縁内の窓28の拡大図である。従って、脊髄30と分節神経根32が晒されている。本発明によれば、薄膜は、脊髄30と分節神経根32双方の硬膜に適用され、そのことにより分節神経根32の近傍に術後瘢痕の発生を減少又は排除する。
本発明によれば、予備形成薄膜を予備形成し、外科医が続けて使うために滅菌包装に密封される。本発明の薄膜の一目的物が鋭い縁部と表面を少なくすることであるので、膜の予備形成は、比較的小さな程度でも、膜の予備形成は摩擦、組織の乱れ、炎症を少なくするために縁部の円みを容易にするのを援助すると考えられる。即ち、薄膜の表面と鋭い縁部は空気中の水分に膜が晒されることに応じて時間が経つにつれてわずかに分解できると考えられる。このことは非常にわずかな効果であると考えられる。更に、植込む直前に予め切断した膜のガラス温度まで最初に加熱することも鋭い縁部を更に円くし得る。更に、本発明の非常に薄い膜はこれらの現象に特に感受性があるものであり、おそらくより著しい程度まで、取扱いからの引裂き又は損傷に感受性があるので、薄膜の予備形成がその完全さを保存するのに有益である。
上記実施態様は例として示してきたものであり、本発明をこれらの例に限定するものではない。上記は本発明の好適実施態様の完全な説明であるが、種々の代替物、変更、均等物を用いることができる。更に、他の変更も前掲の特許請求の範囲の範囲内で行なうことができることは明らかである。
Claims (52)
- ポリマーを含む実質的に均一な組成物を含む吸収性薄膜であって、該ポリマーが該膜を哺乳動物の体内に最初に植込んでから約24ヶ月未満の間に哺乳動物の体内へ吸収でき、該ポリマーの該膜内で偏向した分子配向が少なくとも1つの軸に偏向しており、且つ該ポリマーの粘度特性が約1 g/dlより大きい、第一の実質的に平滑な表面と第二の実質的に平滑な表面をもち、非多孔性であり、且つ該第一の実質的に平滑な表面と該第二の実質的に平滑な表面との間で測定した厚さが約0.001mm〜約0.300mmである、前記膜。
- 該ポリマーが実質的に無定形のポリマーを含む、請求項1記載の膜。
- 該ポリマーがポリラクチドを含む、請求項1記載の膜。
- 該ポリラクチドがL-ラクチドとD,L-ラクチドのコポリマーを含む、請求項1記載の膜。
- 該ポリマーがラクチドとεカプロラクトンのコポリマーを含む、請求項1記載の膜。
- 該ポリマーの該分子配向が1つの軸に向かって偏向している、請求項3記載の膜。
- 該ポリマーの該分子配向が2つの軸に向って偏向している、請求項3記載の膜。
- 約0.010mm〜約0.100mm厚である、請求項3記載の膜。
- 約0.015mm〜約0.025mm厚である、請求項3記載の膜。
- 約0.020mm厚である、請求項3記載の膜。
- ガラス転移温度を有し、該膜がそのガラス転移温度になったときに該膜の厚さが少なくとも5倍増大する、請求項3記載の膜。
- ガラス転移温度を有し、該膜がそのガラス転移温度になったときに該膜の厚さが少なくとも10倍増大する、請求項3記載の膜。
- 細胞遊走に影響する化学走性物質、細胞遊走に影響する阻害物質、細胞増殖に影響するマイトジェン成長因子、細胞増殖に影響する成長因子からなる群より選ばれた添加剤に含浸している、請求項3記載の膜。
- 密封した滅菌パッケージングに含まれている、請求項3記載の膜。
- 少なくとも1つの厚い部分を更に有し、各厚い部分の長さが該膜の最長と同じか又はそれより短く、幅が約0.5mmより長く、厚さが該膜の中心部の厚さの約2倍より厚い、請求項3記載の膜。
- 該厚い部分が該実質的に平滑な表面の双方から隆起し、少なくとも該膜の縁部のセグメントを形成している、請求項15記載の膜。
- 第一の厚い部分が少なくとも該膜の第一縁部のセグメントを形成し、第二の厚い部分が少なくとも該膜の第二縁部のセグメントを形成している、請求項15記載の膜。
- 該膜がそのガラス転移温度になったときに該膜の厚みが2倍より厚くなる、請求項15記載の膜。
- 該厚い部分に沿って配置された複数の穴を更に含んでいる、請求項17記載の膜。
- 該膜の縁部に沿って配置された複数の穴を更に含んでいる、請求項3記載の膜。
- 粘度特性が約2 g/dlより大きい、請求項3記載の膜。
- 粘度特性が約3 g/dlより大きい、請求項3記載の膜。
- 一様でない収縮特性を有する、請求項3記載の膜。
- 方向性収縮特性を有する、請求項3記載の膜。
- 膜へ押出されたポリマーの実質的に均一な組成物を含む吸収性薄膜であって、該膜を哺乳動物の体内へ最初に植込んでから約24ヶ月未満の間に哺乳動物の体内へ吸収でき、粘度特性が約1 g/dlより大きく、更に、第一の実質的に平滑な表面と第二の実質的に平滑な表面をもち、該第一の実質的に平滑な表面と該第二の実質的に平滑な表面との間で測定した場合、約0.010mm〜約0.030mm厚である、前記膜。
- 該ポリマーが実質的に無定形のポリマーを含む、請求項25記載の膜。
- 少なくとも1つの厚い部分を更に有し、該少なくとも1つの厚い部分の長さが該膜の最長と同じかそれより短く、幅が約0.5mmより長く、厚さが該少なくとも1つの厚い部分以外の領域の該膜の該厚さの約2倍より厚い、請求項25記載の膜。
- 該厚い部分が該2つの実質的に平滑な表面の双方から隆起し、少なくとも該膜の縁部のセグメントを形成している、請求項27記載の膜。
- 第一の厚い部分が少なくとも該膜の第一縁部のセグメントを形成し、第二の厚い部分が少なくとも該膜の第二縁部のセグメントを形成している、請求項27記載の膜。
- 該厚い部分が該膜に剛性を与えるのに効果的である、請求項27記載の膜。
- 該厚い部分に沿って配置された複数の穴を更に含む、請求項27記載の膜。
- 非多孔性であり、ポリラクチドを含む、請求項25記載の膜。
- 吸収性薄膜であって、
第一の実質的に平滑な表面と第二の実質的に平滑な表面との間の厚さが約0.01mm〜約0.3mmである第一の実質的に平滑な表面と実質的な平滑な第二表面と、
長さが該膜の最長より短いか又は同じであり、幅が約0.5mmより長く、厚さが少なくとも1つの厚い部分以外の領域の該膜の該厚さの約2倍より大きい、少なくとも1つの厚い部分と
を含む、前記膜。 - 該厚い部分が2つの該実質的に平滑な表面の双方から隆起し、少なくとも該膜の縁部のセグメントを形成している、請求項33記載の膜。
- 少なくとも該膜の第一縁部のセグメントを形成している第一の厚い部分と、少なくとも該膜の第二縁部のセグメントを形成している第二の厚い部分を含んでいる、請求項33記載の膜。
- 該厚い部分に沿って配置された複数の穴を更に含んでいる、請求項33記載の膜。
- 該少なくとも1つの厚い部分が複数の厚い部分を含んでいる、実質的に無定形のポリマーから作られている、請求項33記載の膜。
- 該ポリマーがポリラクチドを含んでいる、請求項37記載の膜。
- 該ポリマーがL-ラクチドとD,L-ラクチドのコポリマーを含んでいる、請求項38記載の膜。
- 該ポリマーがカプロラクトンを含んでいる、請求項37記載の膜。
- 該ポリマーが1つの軸に向かって偏向した分子配向を有する、請求項37記載の膜。
- 該ポリマーが2つの軸に向って偏向した分子配向を有する、請求項37記載の膜。
- 約0.015mm〜約0.025mm厚である、請求項37記載の膜。
- ガラス転移温度を有し、該膜がそのガラス転移温度になったときに該膜の厚さが少なくとも5倍増大する、請求項37記載の膜。
- ガラス転移温度を有し、該膜がそのガラス転移温度になったときに該膜の厚さが少なくとも10倍増大する、請求項37記載の膜。
- 該膜が流体に対して不透過性である、請求項37記載の膜。
- 該膜に含浸した添加剤を更に含み、該添加剤が細胞遊走に影響する化学走性物質、細胞遊走に影響する阻害物質、細胞増殖に影響するマイトジェン成長因子、細胞増殖に影響する成長因子からなる群より選ばれる、請求項37記載の膜。
- 密封した滅菌パッケージングに含まれている、請求項37記載の膜。
- 粘度特性が約1 g/dlより大きい、請求項37記載の膜。
- 粘度特性が約2 g/dlより大きい、請求項37記載の膜。
- 術後部位に生体内外科手術手順を行なった後に治癒している術後部位と隣接の周囲組織との間の術後瘢痕組織の形成を低減させる吸収性瘢痕組織低減用のマイクロ膜であって、その移植片が、該術後部位と該隣接の周囲組織との間に形成される直前の該移植片の構造として定義される、前移植片構造を有し、該移植片が
第一の実質的に平滑な面と第二の実質的に平滑な面を有する吸収性ポリマーベース材料の実質的に平坦な膜であって、該第一の実質的に平滑な面と該第二の実質的に平滑な面との間に吸収性ポリマーベース材料の単層を含み、該吸収性ポリマーベース材料の単層が実質的に均一な組成物を有する、前記吸収性ポリマーベース材料の実質的に平坦な膜を含み、
該第一の実質的に平滑な面と該第二の実質的に平滑な面との間で測定した該吸収性ポリマーベース材料の単層の厚さが約10マイクロメートル(ミクロン)〜約300マイクロメートル(ミクロン)であり、
該吸収性ポリマーベース材料の単層が非多孔性であり、
該吸収性ポリマーベース材料の単層が実質的に
ラクチドポリマーと、
2つ以上の環状エステルのコポリマー
からなる群より選ばれた材料からなり、
該吸収性ポリマーベース材料の単層が該治癒している術後部位と該隣接した周囲組織との間の平滑面の障壁を該術後部位と該隣接した周囲組織との間の瘢痕組織の形成を低減又は排除するのに十分な比較的長時間維持するように適合し、且つ該移植片を哺乳動物の体内へ最初に植込んでから約24ヶ月以内に哺乳動物の体内へ吸収されるように適合している、前記吸収性瘢痕組織低減用マイクロ膜。 - 該2つ以上の環状エステルのコポリマーがラクチドとεカプロラクトンを含んでいる、請求項51記載の吸収性瘢痕組織低減用マイクロ膜。
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