JP2006349415A - 毒性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】化学的分析法では困難とされる、複数の物質を含む試料の毒性を、迅速に評価することができる方法を提供する。
【解決手段】土壌からの抽出物、金属などの試料からの被検物質を、試料が2種以上の被検出物を含み、各々の被検出物が試料に含まれている量において、単独では当該所定量のビブリオ・フィシャリなどの発光性バクテリアに対して毒性を示さない系において、所定量のの発光性バクテリアと接触させ、発光強度を測定する。
【選択図】 なし
【解決手段】土壌からの抽出物、金属などの試料からの被検物質を、試料が2種以上の被検出物を含み、各々の被検出物が試料に含まれている量において、単独では当該所定量のビブリオ・フィシャリなどの発光性バクテリアに対して毒性を示さない系において、所定量のの発光性バクテリアと接触させ、発光強度を測定する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、2種以上の被検出物を含む試料の毒性を評価する方法に関する。
現在、日本における土壌中の毒性を評価する方法には、主に化学的分析方法が利用されている。この化学的分析方法は、1)単一の毒性物質をGCMSなどにより検出すること、2)その物質を微量分析できることなどの特徴を有する。
しかしながら、土壌中の毒性は非常に複雑であり、毒性の原因物質は、複数の元素、化合物、それらの分解生成物などから成り立っており、単一の物質のみで構成されることはまず考えられない。
生体に対する毒性を考慮した場合、複数の物質がより複雑な形で、生体細胞に毒性を与える場合がある。これを「複合毒性」と呼ぶ。「複合毒性」は、生体への影響を示す指標であるため、化学的分析方法でこれを判断することは難しい。つまり、化学的分析方法によって土壌中に微量に存在する個々の物質を検出することができたとしても、微量であるためにその土壌は毒性なしと判断されてしまい、これらの物質が同時に複数存在することにより生体へ複合的な毒性を示す場合について、毒性ありと判断することができない恐れがある。
また、土壌中の毒性を評価する方法として、バイオアッセイによる方法がある。バイオアッセイによる方法として、ヒト肝臓ガン由来細胞株による細胞生存率試験、ミジンコ遊泳阻害試験、藻類生長阻害試験等が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。これらの方法によれば、生体への複合的な毒性を評価することが可能ではあるが、いずれの方法も評価結果を得るまでに数日もの時間を要する。
庄司 良、外7名、「廃棄物中の有機物の溶出試験とバイオアッセイによる有害性評価」、環境科学会誌、2003年、第16巻、第6号、p.475−484
しかしながら、土壌中の毒性は非常に複雑であり、毒性の原因物質は、複数の元素、化合物、それらの分解生成物などから成り立っており、単一の物質のみで構成されることはまず考えられない。
生体に対する毒性を考慮した場合、複数の物質がより複雑な形で、生体細胞に毒性を与える場合がある。これを「複合毒性」と呼ぶ。「複合毒性」は、生体への影響を示す指標であるため、化学的分析方法でこれを判断することは難しい。つまり、化学的分析方法によって土壌中に微量に存在する個々の物質を検出することができたとしても、微量であるためにその土壌は毒性なしと判断されてしまい、これらの物質が同時に複数存在することにより生体へ複合的な毒性を示す場合について、毒性ありと判断することができない恐れがある。
また、土壌中の毒性を評価する方法として、バイオアッセイによる方法がある。バイオアッセイによる方法として、ヒト肝臓ガン由来細胞株による細胞生存率試験、ミジンコ遊泳阻害試験、藻類生長阻害試験等が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。これらの方法によれば、生体への複合的な毒性を評価することが可能ではあるが、いずれの方法も評価結果を得るまでに数日もの時間を要する。
庄司 良、外7名、「廃棄物中の有機物の溶出試験とバイオアッセイによる有害性評価」、環境科学会誌、2003年、第16巻、第6号、p.475−484
したがって、本発明は、化学的分析法では困難とされる、複数の物質を含む試料の毒性を、迅速に評価することができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、試料を所定量の発光性バクテリアと接触させ、発光性バクテリアの発光強度を測定することにより、試料の毒性を評価する毒性評価方法であって、試料が2種以上の被検出物を含み、各々の被検出物が、試料に含まれている量において、単独では当該所定量の発光性バクテリアに対して毒性を示さないことを特徴とする毒性評価方法に関する。
また、本発明は、被検出物が、土壌からの抽出物である上記毒性評価方法に関する。
また、被検出物が、金属である上記毒性評価方法に関する。
また、発光性バクテリアが、ビブリオ・フィシャリ(Vibrio fischeri)である上記毒性評価方法に関する。
また、本発明は、被検出物が、土壌からの抽出物である上記毒性評価方法に関する。
また、被検出物が、金属である上記毒性評価方法に関する。
また、発光性バクテリアが、ビブリオ・フィシャリ(Vibrio fischeri)である上記毒性評価方法に関する。
本発明の毒性評価方法によれば、複数の物質を含む試料の毒性評価を、効率良く、簡便に、短時間で、現場で、安価に行うことが可能である。
本発明の毒性評価方法は、試料を所定量の発光性バクテリアと接触させ、発光性バクテリアの発光強度を測定することにより試料の毒性を評価する毒性評価方法である。
本発明に用いられる発光性バクテリアは、好ましくは、代謝(呼吸)時に熱としてのエネルギーを放出すると同時に、可視光を放出する海洋性のバクテリアである。発光性バクテリアが放出する可視光のピーク波長は、好ましくは400〜550nmであり、より好ましくは470〜500nmである。発光性バクテリアの発光強度を測定することにより、発光性バクテリアの代謝レベルを評価することが可能である。評価される試料が毒性物質を含む場合、試料と接した発光性バクテリアの代謝レベルが低下、すなわち、発光性バクテリアの発光強度が低下するために、発光強度を毒性評価の指標として用いることができる。
本発明においては、様々な発光性バクテリアを用いることができる。例えば、ビブリオ・フィシャリ(Vibrio fischeri)、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)、フォトラブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescens)、フォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)等を挙げることができ、本発明においてはビブリオ・フィシャリ(Vibrio fischeri)が好ましく用いられる。
発光性バクテリアは、凍結乾燥した状態で保存し、必要な時に、再活性化することができる。再活性化は、例えば、凍結乾燥状態の発光性バクテリアに再活性化溶液を加え、懸濁液とし、発光性バクテリアが再活性化するのに十分な温度で、十分な時間放置することで実施可能である。
再活性化溶液としては、NaCl水溶液、非毒性であることが明らかな海水等を用いることができる。NaCl水溶液の濃度は、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
再活性化溶液のpHは、4〜9であることが好ましく、5〜8であることがより好ましく、6〜7であることがさらに好ましい。
再活性化の温度は、0〜50℃であることが好ましく、5〜30℃であることがより好ましく、10〜25℃であることがさらに好ましい。
再活性化に要する時間は、発光性バクテリアに再活性化溶液を加えてから発光性バクテリアの発光強度が飽和するまでに要する時間であり、10分間〜2時間であることが好ましく、30分間〜2時間であることがより好ましく、40分間〜1時間であることがさらに好ましい。
発光性バクテリアは、再活性化した後、すなわち、発光強度が飽和した後、保存することができる。保存時間は、5時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましい。
再活性化の際の凍結乾燥バクテリアと再活性化溶液との混合割合として、例えば、凍結乾燥バクテリア1mgに対し、再活性化溶液を好ましくは0.1〜3ml、より好ましくは0.2〜1ml、さらに好ましくは0.3〜0.7ml用いることができる。
本発明の毒性評価方法においては、上記により得た懸濁液を用い、発光性バクテリアの発光強度を測定することができる。発光強度の測定は、懸濁液を、測定用のマイクロプレート、セル等に分注して行うことが好ましい。また、発光強度の測定には、懸濁液を0.5〜3ml用いることが好ましく、1〜2.5ml用いることがより好ましく、1.5〜2ml用いることがさらに好ましい。
測定に用いる発光性バクテリアの量は、評価される試料によって適宜設定すればよいが、通常1mlの懸濁液中に乾燥重量で0.5〜2mg、好ましくは0.8〜1.5mg、さらに好ましくは1〜1.3mg用いられる。
本発明の毒性評価方法によって評価される試料は、2種以上の被検出物を含み、各々の被検出物が、試料に含まれている量において、評価に使用される所定量の発光性バクテリアに対して、単独では毒性を示さないことを特徴とする。
本発明において、「被検出物」とは、複数の被検出物の複合作用として発光性バクテリアに対して毒性を示す物質をいう。「毒性を示さない」とは、発光性バクテリアの発光強度を一定の基準値未満に低下させないことをいい、また、「毒性を示す」とは、発光性バクテリアの発光強度を一定の基準値未満に低下させることをいう。なお、「一定の基準値」とは、毒性評価の目的、用途、対象、試料の被検出物含有量、発光性バクテリアの量などによって適宜設定される値である。
また、本発明において、「各々の被検出物が、試料に含まれている量において、評価に使用される所定量の発光性バクテリアに対して、単独では毒性を示さない」とは、試料中にある濃度で含まれている1つの被検出物が、その濃度で単独で試料中に存在する場合には、評価に使用される所定量の発光性バクテリアに対して毒性を示さないことをいう。例えば、a重量%の被検出物A、b重量%の被検出物B、及びc重量%の被検出物Cを含む試料がある場合、a重量%の被検出物Aのみを含む試料、b重量%の被検出物Bのみを含む試料、又はc重量%の被検出物Cのみを含む試料のそれぞれを、評価に使用される所定量の発光性バクテリアと接触させたとしても、いずれの場合も発光性バクテリアの発光強度が一定の基準値未満に低下しない状態である。
具体的な被検出物として、土壌の汚染に係る環境基準(環境庁告示第46号)で指定された物質、水質汚濁に係る環境基準(環境庁告示第59号)で指定された物質、地下水の水質汚濁に係る環境基準(環境庁告示第10号)で指定された物質などが挙げられるが、これらに限定されず、種々の物質を挙げることができる。例えば、Pb、Cd、Cu、Ni、Cr、Pb、Zn、Fe、Hg等の金属、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、四塩化炭素、ジクロロメタン、パラジクロロベンゼン、トリメチルベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、TPH(Total Petroleum Hydrocarbons)、PAH(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon)等の有機化合物等であり、好ましくは金属である。
本発明の毒性評価方法は、例えば、土壌からの抽出物、焼却灰からの抽出物、粉塵からの抽出物、河川水、湖水、海水、地下水、埋立地底部からの浸出水、工場排水、廃棄油、植物への付着物、植物からの抽出物等を含む試料の毒性評価に好ましく用いられ、特に土壌からの抽出物又は焼却灰からの抽出物を含む試料に好ましく用いられる。
被検出物となる土壌からの抽出物として、土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質が挙げられ、具体的には、土壌汚染対策法に基づく調査等の対象である、揮発性物質(四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン)、重金属等(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物)、農薬等(シマジン、チオベンカルブ、チウラム、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、有機リン化合物)などの物質が挙げられる。
土壌は、測定が必要とされる場所について、目的に応じて採取すればよく、採取箇所、採取深さ、採取量等、適宜設定することができる。揮発性有機化合物の評価を目的とする場合には、土壌を密閉容器内に採取することが好ましい。
被検出物を土壌から抽出する方法としては、目的に応じ種々の方法を用いることが可能であり、土壌と、適宜選択された溶媒とを混合し、一定時間激しく撹拌させ、その溶出成分をフィルターなどにより分離し、抽出液を得る方法等がある。
さらに、環境庁告示第46号で規定された抽出方法、環境省告示第19号付表の2で規定された抽出方法等を挙げることができる。
さらに、環境庁告示第46号で規定された抽出方法、環境省告示第19号付表の2で規定された抽出方法等を挙げることができる。
抽出溶媒としては、目的に応じ種々の溶媒を用いることが可能であり、例えば、被検出物として金属を抽出したい場合には酸性水溶液、好ましくは0.1〜1規定の塩酸を、有機化合物を抽出したい場合には有機溶媒、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、アセトン等を、水溶性物質を抽出したい場合には水、好ましくは蒸留水やイオン交換水等を使用することができる。
さらに、環境庁告示第46号付表において用いられる抽出溶媒、環境省告示第19号付表の2において用いられる抽出溶媒等が挙げられる。
さらに、環境庁告示第46号付表において用いられる抽出溶媒、環境省告示第19号付表の2において用いられる抽出溶媒等が挙げられる。
抽出の際の土壌と抽出溶媒との混合割合として、例えば、土壌1mlに対し、抽出溶媒を好ましくは0.1〜10ml、より好ましくは1〜5ml、さらに好ましくは1.5〜2.5ml用いることができる。
撹拌時間は特に限定されないが、迅速な毒性評価を行う観点から、2分間〜5時間であることが好ましく、2分間〜2時間であることがより好ましく、2分間〜1時間30分であることがさらに好ましい。
土壌と抽出溶媒とを含む懸濁液は、しばらく静置した後、上澄み液をろ過し、評価に用いる試料とすることが好ましい。ろ過には、好ましくは孔径0.65μm以下、より好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.45μm以下のフィルターを用いることが可能である。
本発明の毒性評価方法は、試料を所定量の発光性バクテリアと接触させ、発光性バクテリアの発光強度を測定する方法である。具体的には、再活性化させた発光性バクテリアと被検出物を含む試料との接触前後において、生じる光を発光測定装置を用いて測定し、発光強度の相対変化を評価する。
例えば、まず、発光強度測定用のセルに発光性バクテリアを含むバクテリア懸濁液1〜2mlを加え、被検出物を含む試料を発光性バクテリアと接触させる前の発光強度(発光強度1(任意単位))を測定する。次いで被検出物を含む試料0.05〜1mlを加え、被検出物を含む試料を発光性バクテリアと接触させた後の発光強度(発光強度2(任意単位))を測定する。(発光強度2/発光強度1)×100[%]で求められる値が、一定の基準値未満である場合を「毒性あり」と、一定の基準値以上である場合を「毒性なし」と評価することができる。
被検出物を含む試料が、酸性水溶液である場合、酸性分により発光性バクテリアが失活することを防ぐ目的で、緩衝液、アルカリ水溶液等を用いて発光強度測定時のpHを調整することが好ましい。発光強度測定時のpHは、4〜9であることが好ましく、5〜8であることがより好ましく、6〜7であることがさらに好ましい。
被検出物を含む試料をバクテリア懸濁液に混合してから発光強度測定までの時間は、用いる発光性バクテリアの種類によって適宜設定することができ、好ましくは5〜60分、より好ましくは7〜30分、さらに好ましくは10〜20分である。
測定に用いる発光測定装置は特に限定されず、受光部は外部からの光が入らないよう遮光された構造であり、かつ、発光性バクテリアからの発光のみを内蔵のフォトマル、フォトダイオード、CCD等の受光部により検出できる装置を用いることができる。測定値は受光部が検出する光子(フォトン)の数量に比例する値であればよい。本発明においては、発光性バクテリア懸濁液の発光強度を測定して得た初期測定値(発光強度1)をプログラムに記憶させ、次いで被検出物と発光性バクテリアとを含む混合液の発光強度を測定し(発光強度2)、発光強度1を100とした発光強度2の相対値を、評価基準値に従い判定することができる。したがって、測定値については単位補正を行わなくてもよい。発光測定装置としては、市販のルミノメーターを使用することができる。
次いで本発明の毒性評価方法について、発光性バクテリアとしてビブリオ・フィシャリを用い、土壌からの抽出物を評価する場合を例に、さらに詳細に説明する。
1.ビブリオ・フィシャリの再活性化
乾燥重量(目的に応じ50又は75mg)の凍結乾燥ビブリオ・フィシャリに対し、1重量%の塩化ナトリウム水溶液(目的に応じ27又は50ml)を加え、室温で50分間保持し、ビブリオ・フィシャリ懸濁液を得る。懸濁液のpHは、6.5〜7.5であることが好ましい。
乾燥重量(目的に応じ50又は75mg)の凍結乾燥ビブリオ・フィシャリに対し、1重量%の塩化ナトリウム水溶液(目的に応じ27又は50ml)を加え、室温で50分間保持し、ビブリオ・フィシャリ懸濁液を得る。懸濁液のpHは、6.5〜7.5であることが好ましい。
2.発光性バクテリアの発光強度測定
上記により得られたビブリオ・フィシャリ懸濁液(目的に応じ1又は2ml)を、発光強度測定用のセルに加え、ビブリオ・フィシャリ懸濁液の発光強度(発光強度1)を測定する。
発光強度の測定には、プラスチック製の多検体測定セルを用いることができる。セル底面が透明であれば、その下部に受光部を設置することにより、個々のセル内の発光強度を測定することができる。この場合、各セル同士は、非透明のプラスチックにより遮光され、相互のセル内における発光が周囲に広がらない構造とする。また、発光強度の測定に、黒色等の有色のマイクロタイタープレートを用いた場合は、各ウェル上部の光を測光するように受光部が設置されたスキャン式のプレートリーダ(ルミノメーター)等を用いて、効率的に発光量を測定することができる。底面部のみが透明のマイクロプレートを用いた場合は、受光部が下部に設置されたタイプのプレートリーダを用いることができる。
上記により得られたビブリオ・フィシャリ懸濁液(目的に応じ1又は2ml)を、発光強度測定用のセルに加え、ビブリオ・フィシャリ懸濁液の発光強度(発光強度1)を測定する。
発光強度の測定には、プラスチック製の多検体測定セルを用いることができる。セル底面が透明であれば、その下部に受光部を設置することにより、個々のセル内の発光強度を測定することができる。この場合、各セル同士は、非透明のプラスチックにより遮光され、相互のセル内における発光が周囲に広がらない構造とする。また、発光強度の測定に、黒色等の有色のマイクロタイタープレートを用いた場合は、各ウェル上部の光を測光するように受光部が設置されたスキャン式のプレートリーダ(ルミノメーター)等を用いて、効率的に発光量を測定することができる。底面部のみが透明のマイクロプレートを用いた場合は、受光部が下部に設置されたタイプのプレートリーダを用いることができる。
3.土壌の採取
5mlの土壌をへらなどを用いて、シリンジ内にサンプリングする。シリンジ先端はキャップができる構造であり、特に揮発性有機化合物の測定をする場合や、サンプルの測定が速やかにできない場合等は、土壌採取後キャップをし、密閉する。
5mlの土壌をへらなどを用いて、シリンジ内にサンプリングする。シリンジ先端はキャップができる構造であり、特に揮発性有機化合物の測定をする場合や、サンプルの測定が速やかにできない場合等は、土壌採取後キャップをし、密閉する。
4.被検出物の抽出
5mlの土壌試料中に、10mlの溶媒(土壌:溶媒=1:2(体積比))を加え、2分間以上激しく撹拌し土壌懸濁液を得る。迅速な評価を行う観点から、撹拌時間は短時間であることが好ましい。
溶媒は、金属(例えば、重金属等の含有毒性)を測定する場合は、0.1M塩酸水溶液を用い、水溶性物質(例えば、重金属等の溶出毒性もしくは浸出性水溶毒性)を測定する場合は、水(イオン交換水または蒸留水)、また有機化合物(例えば、揮発性有機化合物や有機性毒性物質)を測定する場合は、メチルアルコール(好ましくは試薬1級以上)を用いることができる。抽出溶媒のpHは、抽出が可能であればいずれのpHであってもよい。
5mlの土壌試料中に、10mlの溶媒(土壌:溶媒=1:2(体積比))を加え、2分間以上激しく撹拌し土壌懸濁液を得る。迅速な評価を行う観点から、撹拌時間は短時間であることが好ましい。
溶媒は、金属(例えば、重金属等の含有毒性)を測定する場合は、0.1M塩酸水溶液を用い、水溶性物質(例えば、重金属等の溶出毒性もしくは浸出性水溶毒性)を測定する場合は、水(イオン交換水または蒸留水)、また有機化合物(例えば、揮発性有機化合物や有機性毒性物質)を測定する場合は、メチルアルコール(好ましくは試薬1級以上)を用いることができる。抽出溶媒のpHは、抽出が可能であればいずれのpHであってもよい。
5.試料の調整
抽出液(試料)は、上述の土壌懸濁液をしばらく静置後、上澄み液を孔径0.45μm以下のフィルターを用いろ過することにより得る。
抽出液(試料)は、上述の土壌懸濁液をしばらく静置後、上澄み液を孔径0.45μm以下のフィルターを用いろ過することにより得る。
6.毒性の評価
バクテリア懸濁液と抽出液は、プラスチック製の多検体測定セル内で混合される。
酸抽出により調製された抽出液については、バクテリア懸濁液1ml(乾燥重量にして1.85mgの発光性バクテリアを含む)に、アルカリ水溶液を加えpHを7とし、これに抽出液1mlを加え発光強度の変化を測定する。
水抽出により調製された抽出液については、バクテリア懸濁液1ml(乾燥重量にして1.85mgの発光性バクテリアを含む)に対し抽出液1mlを加えて発光強度の変化を測定する。
有機溶媒抽出により調製された抽出液については、バクテリア懸濁液2ml(乾燥重量にして3mgの発光性バクテリアを含む)に抽出液0.05ml(50μl)を加え発光強度の変化を測定する。
バクテリア懸濁液と抽出液は、プラスチック製の多検体測定セル内で混合される。
酸抽出により調製された抽出液については、バクテリア懸濁液1ml(乾燥重量にして1.85mgの発光性バクテリアを含む)に、アルカリ水溶液を加えpHを7とし、これに抽出液1mlを加え発光強度の変化を測定する。
水抽出により調製された抽出液については、バクテリア懸濁液1ml(乾燥重量にして1.85mgの発光性バクテリアを含む)に対し抽出液1mlを加えて発光強度の変化を測定する。
有機溶媒抽出により調製された抽出液については、バクテリア懸濁液2ml(乾燥重量にして3mgの発光性バクテリアを含む)に抽出液0.05ml(50μl)を加え発光強度の変化を測定する。
バクテリア懸濁液と抽出液を混合した後、15分間放置し、15分後の発光強度を測定し、これを測定値(発光強度2)とする。また、0分から15分までの間の測定値を、連続的にデータとして保存し、発光強度の変化を追跡することも可能である。
測定値は、発光強度測定装置(ルミノメーター)と付随のコンピュータープログラムによってデータ化される。フォトダイオードを内蔵した測定装置により、発光強度の絶対値がプログラムに送り続けられ、プログラムが測定データを算出する。プログラムは、「発光強度1」の絶対値を記憶し、「15分間のタイマー」を用い測定時間を決定し、「発光強度2」の絶対値を記憶する。
毒性の判定には、発光強度の相対変化を100分率(%)で表した数値を用いる。すなわち、バクテリア懸濁液のみの発光強度(発光強度1)を100とし、バクテリア懸濁液と抽出液との反応後の発光強度(発光強度2)の相対変化を0〜100%(しばし100%を超えることもある)の整数値で表す。
測定値は、発光強度測定装置(ルミノメーター)と付随のコンピュータープログラムによってデータ化される。フォトダイオードを内蔵した測定装置により、発光強度の絶対値がプログラムに送り続けられ、プログラムが測定データを算出する。プログラムは、「発光強度1」の絶対値を記憶し、「15分間のタイマー」を用い測定時間を決定し、「発光強度2」の絶対値を記憶する。
毒性の判定には、発光強度の相対変化を100分率(%)で表した数値を用いる。すなわち、バクテリア懸濁液のみの発光強度(発光強度1)を100とし、バクテリア懸濁液と抽出液との反応後の発光強度(発光強度2)の相対変化を0〜100%(しばし100%を超えることもある)の整数値で表す。
従来の化学的分析方法によっては、被検出物の複合毒性を評価することができず、試料中に含まれる個々の被検出物の濃度が微量である場合などには、毒性なしと判断されてしまう場合があった。しかしながら、本発明の毒性評価方法によれば、微量に含まれる被検出物の複合作用による毒性を判断することができるため、試料の毒性を、生体に有毒であるか否かの観点から、高い感度で判断することが可能である。
さらに、本発明の毒性評価方法を化学的分析方法と組み合わせることにより、より詳細な毒性評価を行うことが可能である。
例えば、本発明の毒性評価方法によって毒性ありと判断された試料について、吸光光度分析装置、原子吸光分析装置、ICP発光分光分析装置、GCMS等の化学的分析方法によって毒性評価を行う。その結果、試料中に複数含まれる被検出物のそれぞれが、生体に有害とならない程度に微量である場合、すなわち、個々の被検出物が単独で毒性を有する物質ではない場合、これらの物質が複合毒性を有する物質である可能性があると判断できる。
また、例えば、化学的分析方法によって毒性なしと判断された試料について、本発明の毒性評価方法により評価を行う。これにより、複合毒性の可能性を含め、試料が生体へ毒性を有するものであるか否かを確認することができる。
また、本発明の毒性評価方法は、現場での迅速な評価が可能な、簡便な評価方法であるために、化学的分析方法による評価に先立ち、生体への毒性を即座に判断する方法、特に急性毒性を評価する方法として用いることができる。
これらの他、本発明の毒性評価方法において、使用する発光性バクテリアの量、被検出物の抽出方法、発光強度を測定するまでの時間、判定基準等を適宜設定することにより、土壌汚染対策法に基づく土壌含有量基準又は土壌溶出量基準に沿った評価を行うことも可能である。
また、汚染された土壌を、抽出処理、洗浄処理、熱処理、化学処理、生物処理等により浄化する際に、本発明の毒性評価方法によって浄化の程度を確認しながら、土壌の浄化を行うこともできる。
本発明の実施例を以下に示す。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、被検出物の含有量が既知の試料を作成し、本発明の毒性評価方法を用いて試料の毒性を判断した。
本実施例においては、被検出物の含有量が既知の試料を作成し、本発明の毒性評価方法を用いて試料の毒性を判断した。
実施例1
(高濃度金属水溶液(原液)の調製)
表1に示す金属塩を用い、金属イオン濃度として1,000mg/l(ppm)の水溶液(原液)を調製した。
(高濃度金属水溶液(原液)の調製)
表1に示す金属塩を用い、金属イオン濃度として1,000mg/l(ppm)の水溶液(原液)を調製した。
(各種組み合わせによる混合溶液の調製)
上記原液を希釈し、以下の毒性評価用の試料を調製した(表2)
上記原液を希釈し、以下の毒性評価用の試料を調製した(表2)
(毒性評価)
発光強度の測定には、Rapid Onsite Toxicity Audit System(略称ROTAS、発光性バクテリアを用いたバイオアッセイシステム、Cybersense Biosystems社製)を使用し、ROTAS−Leachableプロトコルにより測定した。
発光性バクテリア:ビブリオ・フィシャリ、50mg
再活性化溶液:1%NaCl、27ml
発光性バクテリア懸濁液pH:7
1セル中の発光性バクテリア懸濁液量:1ml(乾燥重量にして1.85mgのバクテリアを含む)
1セル中の金属水溶液添加量:1ml
混合後、測定までの時間:15分
発光強度の測定には、Rapid Onsite Toxicity Audit System(略称ROTAS、発光性バクテリアを用いたバイオアッセイシステム、Cybersense Biosystems社製)を使用し、ROTAS−Leachableプロトコルにより測定した。
発光性バクテリア:ビブリオ・フィシャリ、50mg
再活性化溶液:1%NaCl、27ml
発光性バクテリア懸濁液pH:7
1セル中の発光性バクテリア懸濁液量:1ml(乾燥重量にして1.85mgのバクテリアを含む)
1セル中の金属水溶液添加量:1ml
混合後、測定までの時間:15分
(結果)
サンプル溶液添加前後の発光レベルを相対評価し、(サンプル溶液添加後/サンプル溶液添加前)×100で求められる測定値100〜70を「毒性なし」、69〜50を「弱い毒性」、49以下を「強い毒性」と判定した。
1ppm−Cu単独では、毒性が示されなかったが、複合系(被検出物2種)の試料では、毒性が検出された。CuとZn、Fe又はNiを含む試料では「強い毒性」が、CuとPb又はCdを含む試料では「弱い毒性」が検出された。被検出物3種の試料では、Cuが存在する全てにおいて「強い毒性」が検出された。
1ppm−Zn単独では、毒性が示されなかったが、ZnとCuを含む試料では「強い毒性」が、ZnとFe又はNiを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Fe単独では、毒性が示されなかったが、FeとCuを含む試料では「強い毒性」が、FeとZnを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Pb単独では、毒性が示されなかったが、PbとCuを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Cd単独では、毒性が示されなかったが、CdとCuを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Ni単独では、毒性が示されなかったが、NiとCuを含む試料では「強い毒性」が、NiとZnを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
表3に全実験結果を示す。
サンプル溶液添加前後の発光レベルを相対評価し、(サンプル溶液添加後/サンプル溶液添加前)×100で求められる測定値100〜70を「毒性なし」、69〜50を「弱い毒性」、49以下を「強い毒性」と判定した。
1ppm−Cu単独では、毒性が示されなかったが、複合系(被検出物2種)の試料では、毒性が検出された。CuとZn、Fe又はNiを含む試料では「強い毒性」が、CuとPb又はCdを含む試料では「弱い毒性」が検出された。被検出物3種の試料では、Cuが存在する全てにおいて「強い毒性」が検出された。
1ppm−Zn単独では、毒性が示されなかったが、ZnとCuを含む試料では「強い毒性」が、ZnとFe又はNiを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Fe単独では、毒性が示されなかったが、FeとCuを含む試料では「強い毒性」が、FeとZnを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Pb単独では、毒性が示されなかったが、PbとCuを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Cd単独では、毒性が示されなかったが、CdとCuを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
1ppm−Ni単独では、毒性が示されなかったが、NiとCuを含む試料では「強い毒性」が、NiとZnを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
表3に全実験結果を示す。
実施例2
(各種組み合わせによる混合溶液の調製)
上記実施例1で用いた原液を希釈し、以下の毒性評価用の試料を調製した(表4)
(各種組み合わせによる混合溶液の調製)
上記実施例1で用いた原液を希釈し、以下の毒性評価用の試料を調製した(表4)
(毒性評価)
実施例1と同様に、ROTASを使用し、ROTAS−Leachableプロトコルにより試料の毒性評価を行った。
実施例1と同様に、ROTASを使用し、ROTAS−Leachableプロトコルにより試料の毒性評価を行った。
(結果)
サンプル溶液添加前後の発光レベルを実施例1と同様に相対評価し、実施例1と同様の基準で判定した。
0.5ppm−Cu単独では、毒性が示されなかったが、複合系のCu、Cd及びFeを含む試料では「強い毒性」が、Cu、Zn及びNiを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
表5に全実験結果を示す。
サンプル溶液添加前後の発光レベルを実施例1と同様に相対評価し、実施例1と同様の基準で判定した。
0.5ppm−Cu単独では、毒性が示されなかったが、複合系のCu、Cd及びFeを含む試料では「強い毒性」が、Cu、Zn及びNiを含む試料では「弱い毒性」が検出された。
表5に全実験結果を示す。
上記の結果から、各金属は、0.5ppm又は1ppmという低濃度であった場合も、複合系で存在する場合、著しい毒性を有する場合があることが確認された。ビブリオ・フィシャリは、Cuに敏感に反応し、次いでZn、Fe、その次にPb、Cdに反応し、Niに対する反応性は低かった。従来の化学的分析方法においては、被検出物として2種以上の微量の金属を含む試料において、個々の金属の含有量を定量できるに過ぎなかった。しかしながら、本発明の毒性評価方法によれば、複数の被検出物に起因する複合的な毒性を評価することが可能であるため、化学的分析方法によっては毒性なしと判断されるような場合であっても、生体への毒性の有無の観点から毒性ありと判断することが可能である。この効果は、特に、被検出物としてCuを含む試料において顕著に表れた。
Claims (4)
- 試料を所定量の発光性バクテリアと接触させ、発光性バクテリアの発光強度を測定することにより、試料の毒性を評価する毒性評価方法であって、
試料が2種以上の被検出物を含み、
各々の被検出物が、試料に含まれている量において、単独では当該所定量の発光性バクテリアに対して毒性を示さないことを特徴とする毒性評価方法。 - 被検出物が、土壌からの抽出物である請求項1記載の毒性評価方法。
- 被検出物が、金属である請求項1又は2記載の毒性評価方法。
- 発光性バクテリアが、ビブリオ・フィシャリ(Vibrio fischeri)である請求項1〜3いずれか記載の毒性評価方法。
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