本発明の実施形態を説明する前に、本明細書において使用する用語および本発明の創出過程について説明する。
本明細書において、単に「ガス」と称する場合、ガスとは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの少なくとも一方を含む概念であり、燃焼ガスと称することもできる。つまり、ガスとは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの両方を有する場合、燃焼反応中のガスのみを有する場合、あるいは燃焼反応が完了したガスのみを有する場合の、いずれをも含む概念である。以下、特に説明しない場合は同様の概念である。
また、排ガスとは、燃焼反応が完了または殆ど完了したガスを意味する。さらに、特に説明しない場合は、ボイラの缶体内を通過して煙突部に達したガスを排ガスという。
また、ガス温度は、特に説明しない限り、燃焼反応中のガスの温度を意味し、燃焼温度あるいは燃焼火炎温度と同義である。さらに、ガス温度の抑制とは、ガス(燃焼火炎)温度の最高値を低く抑えることを意味する。なお、通常、燃焼反応は、上述した「燃焼反応が完了したガス」中においても極微量であるが継続しているので、「燃焼反応の完了」とは、燃焼反応の100%完結を意味するものではない。
次に、本発明の創出過程について説明する。これまで、予混合燃焼による低NOx化は種々提案されているが、いずれも高空気比予混合燃焼によるものであった。それは、低空気比予混合燃焼を行うと、NOx値が増加することが知られていたからである。このため、当業者間においては、低空気比予混合燃焼における低NOx化については、具体的な実験も殆ど行われていないのが現状である。
本願の発明者らは、上記のような従来の既成概念にとらわれることなく、低O2、低NOxおよび低COの目標値、すなわち排気ガス中の残存酸素量0%〜3%の範囲内(低O2)で、NOx値(排ガスO20%換算値)1ppm〜20ppm(低NOx)、CO値(読取値)1ppm〜50ppm(低CO)を達成可能な低NOx燃焼技術について鋭意研究を行い、その結果、本願発明を創出するに至ったのである。
これについて、以下に説明する。本願の発明者らは、研究の結果、これまで当業者に知られていなかった新たな知見を獲得するに至った。すなわち、新たな知見とは、低空気比予混合燃焼と水管群冷却による低NOx化においては、COの増加を抑制するために、水管群自身を冷却に利用すると共に、ガスの酸化促進に利用するという技術である。このような構成によれば、ガスの冷却と酸化促進とをほぼ同時に進行させることが可能となるため、効果的に低O2、低NOxおよび低COの目標値を達成することができる。
また、本願の発明者らは、さらなる低NOx化を求めて、上述した構成(冷却手段と酸化手段とを一体的に構成する)に加えて、排ガス再循環を採用することによって、より効果があることに想到した。具体的には、低空気比予混合燃焼と水管群冷却による低NOx化においては、比較的少ない排ガス循環率であっても排ガス再循環によるNOx低減効果が大きいこと、排ガス循環量を増加しても低O2側ではCOの増加が殆どないことが明らかとなった。
より具体的には、バーナに近接した水管にフィン等の突起物を設けて、水管表面にてガスを保炎することによって、COを酸化すべく構成した状態において、排ガスを供給すれば、COの上昇無くして、より低NOx化を図ることが可能であることに想到した。通常、排ガス再循環を用いた構成によれば、NOxの低減効果を得ることはできても、COの上昇が問題となる。しかしながら、本願発明によれば、水管が冷却手段としても酸化促進手段としても機能する。したがって、本願発明の構成によれば、排ガスを供給する構成を加えても、低O2、低NOx(極超低NOx)および低COを実現することができる。
これらの知見に基づき、本願の発明者らは、低空気比予混合燃焼と水管群による燃焼反応中のガス冷却およびガス酸化促進とを組み合わせるという本願発明を生み出した。また、さらなる低NOx化を実現するために(低NOxと低COとを両立するために)、低空気比予混合燃焼と水管群による燃焼反応中のガス冷却およびガス酸化促進とに加え、排ガス再循環を組み合わせるという本願発明を生み出した。これらの本願発明により、前記目標値をクリアすることが可能である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、本実施形態の第一態様にかかるボイラは、予混合ガスバーナと、前記予混合ガスバーナに近接した水管(あるいは水管群)とを備えたボイラであって、前記予混合ガスバーナに最も近接している近接水管(ガスの流通方向に沿って直線状に配設された水管群の中で最も予混合ガスバーナに近接している水管)と、前記予混合バーナとの距離が、前記予混合ガスバーナにて燃焼状態が維持可能である距離以上で、且つ前記近接水管下流側近傍にてガス温度をNOx生成温度未満にし得る距離以下であり、前記近接水管の下流側にて、ガス中のCO酸化を促進可能で、且つNOx生成温度未満にガス温度を維持可能なように、前記近接水管および前記近接水管下流側の他の水管の少なくともいずれかの水管に、酸化促進手段が設けられていることを特徴としている。
このような構成によれば、予混合ガスバーナにて生成されたガスの燃焼状態を適切に維持しつつ、近接水管を用いてガス温度をNOx生成温度未満に抑えることができるため、効果的にNOx値を低減することが可能となる。加えて、酸化促進手段を用いて、ガス温度をNOx生成温度未満に維持しつつ、ガス中のCO酸化(燃焼促進)を行うことができるため、NOx低減と共にCO低減をも実現することができる。
この第一態様にかかるボイラを構成する予混合ガスバーナとしては、例えば、平板状であって、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成されたバーナが用いられる。その一例としては、波板と平板とを交互に積層して、多数の予混合ガス噴出孔を有すべく構成された予混合ガスバーナがあげられる。ただし、本実施形態にかかる予混合ガスバーナは、この構成に限定されず、好ましくは、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成されたバーナとするが、どのような構成であってもよい。したがって、例えば、本実施形態にかかる予混合ガスバーナは、予混合ガスを噴出する多数の噴出孔を有するセラミックプレートを用いて構成してもよい。
また、この第一態様にかかるボイラは、多数の熱吸収用の水管(伝熱管)を用いて構成された缶体を備え、上記の通り、この缶体を構成する水管(水管群)に近接して、予混合ガスバーナが設けられている。この缶体は、上部管寄せおよび下部管寄せを備えており、この上下の管寄せ間に複数の水管を立脚して配設することによって構成されている。この第一態様にかかるボイラを構成する缶体は、上下の管寄せ間に設けられた多数の水管を、略矩形のガス流動空間内に、所定間隔を隔てて配設された、いわゆる「角型缶体」として構成されている。そして、この角型缶体の一方側面に近接されて、予混合ガスバーナが設けられている。
本発明の第二態様にかかるボイラは、予混合ガスバーナと、前記予混合ガスバーナに近接した水管とを備えたボイラであって、前記予混合ガスバーナの近傍にて、前記予混合ガスバーナにて生成されるガスを冷却する冷却手段と、前記予混合ガスバーナにて生成されるガス中のCO酸化を促進する酸化促進手段とを有し、前記冷却手段および前記酸化促進手段が、前記予混合ガスバーナに最も近接している近接水管(ガスの流通方向に直線状に配設された水管群の中で最も予混合ガスバーナに近接している水管)を用いて構成されていることを特徴としている。つまり、この第二態様にかかるボイラは、冷却手段と酸化促進手段とが一体的に構成されたことを特徴としている。
このような構成によれば、予混合ガスバーナの近傍に冷却手段と酸化促進手段とを有するために、第一態様と同様に、ガスを冷却して(NOx生成温度未満に抑えて)、効果的にNOx値を低減することができる。また、ガス温度をNOx生成温度未満に維持しつつ、ガス中のCO酸化(燃焼促進)を行うことが可能であるため、NOx低減と共にCO低減をも実現することができる。
また、このような構成によれば、予混合ガスバーナに最も近接した近接水管を用いて、冷却手段と酸化促進手段とが一体的に構成されているため、NOx低減とCO低減とを行うと共に、装置のコンパクト化も実現することができる。
さらに、このような構成によれば、冷却手段と酸化促進手段とを一体的に構成していることによって、ガス温度を低減した後にCOを酸化するのではなく、ガス温度低減とほぼ同時にCO酸化を促進することができる。したがって、このような構成によれば、冷却手段と酸化促進手段とを別々に設ける場合よりも、効果的にガス温度の上昇を抑制すると共に、早い段階で未燃物およびCOの酸化促進を行うことが可能となる。よって、このような構成によれば、供給された酸素(予混合ガス生成時に供給された酸素)を効率的に利用可能となって、低O2、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを得ることができる。
本発明の第三態様にかかるボイラは、第一あるいは第二態様の構成に加えて、前記近接水管と前記予混合バーナとの距離が、前記近接水管の外径以下の距離である構成が好ましい。より具体的には、前記近接水管の中心軸(水管長手方向中心軸)と前記予混合バーナ表面との距離が、前記近接水管の外径以下の距離である構成が好ましい。
この好ましい構成によれば、効果的にガス冷却を促進することができる。したがって、上述した低O2、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを得ることができる。
本発明の第四態様にかかるボイラは、第一から第三態様のいずれかの構成に加えて、前記酸化促進手段が、前記近接水管および前記近接水管下流側の他の水管の少なくともいずれかの水管表面に設けられた突起物である構成が好ましい。つまり、酸化促進手段(燃焼反応促進手段)が、水管(近接水管)表面にてガスを保炎するために設けられた突起物である構成が好ましい。
このように、予混合ガスバーナの近傍に位置する水管に突起物(酸化促進手段)を設ければ、その突起物が保炎箇所となって、安定した燃焼状態が形成可能になると共に、伝熱が促進され、ガス冷却も促進される。この突起物としては、例えば、スタッドピンやフィン等があげられる。
この突起物としてローフィンを用いる場合には、高温高速のガス流の流動抵抗が大きくならないようにピッチを大きくとり、さらに材料に応じて先端温度が材料耐熱温度を超えないようにフィンの断面形状を考慮する。例えば、フィンの断面形状は、フィンの先端温度がCOを適切に燃焼させ得る燃焼温度に達し、その燃焼温度を継続させることを条件として、その燃焼温度に耐え得る形状となるように選択することが望ましい。また、冷却面基部で十分な接触面を有し、先端までの高さが流路の幅以内におさまるように、約50mm以内程度のフィン高さとすることが望ましい。
また、上述した突起物は、バーナに近接してガス温度を抑制する水管群において、各水管の高速流動ガスに接触する冷却面からガス流動方向に直交させて設けることが好ましい。この突起物は、例えば、スタッド状の物を用いる場合には、高速流の流動抵抗が大きくならないように投影面積が小さく、かつ冷却面基部で十分な接触面を有し、先端までの高さが約50mm以内の円柱,楕円柱,円錐などの形状とし、先端温度が材料耐熱温度を超えない材質とする。このような突起物を有するボイラによれば、水管の速度零の極薄い境界層に形成される最高ガス(火炎)温度帯を有効に冷却することができ、排出NOx値を大幅に低減することができる。
本発明の第五態様にかかるボイラは、第一から第四態様のいずれかの構成に加えて、前記予混合ガスバーナにて空気比1〜1.3での燃焼が行われる構成が好ましい。この好ましい構成によれば、効果的にボイラから排出される排気ガス中の残存酸素量を3%以下に低減しつつ、低NOxおよび低COを実現することができる。なお、上記空気比としては、1〜1.2の範囲内であることがより好ましい。
本発明の第六態様にかかるボイラは、第一から第五態様のいずれかの構成に加えて、前記予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスを供給する排ガス供給手段が設けられている構成が好ましい。
このような構成によれば、予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスが供給されるので(例えば、予混合ガスバーナから噴出される予混合ガスに排ガスを混入させるので)、ガス温度が抑制され、NOx値を低減することができる。
この第六態様にかかるボイラは、以上のように構成されており、近接水管によるガス温度抑制および排ガス供給によって、より効果的にガス温度を低減させて、低NOx化を図ることができる。また、このボイラは、低空気比燃焼を実現可能であるため(第五態様参照)、排ガス中の残存酸素量を3%以下に維持することができる。したがって、このように構成されたボイラによれば、環境汚染問題の解決と省エネルギ化とを実現し、より高いレベルでの有害物質低減化を実現することができる。
また、上記第六態様にかかるボイラにおいては、前記排ガス供給手段にて供給される前記排ガス量が5〜20%である構成が好ましい。ここでいう「排ガス量」の割合は、必要空気量に対するものであって、上記第一態様にかかるボイラにおいては、供給される排ガス量は、必要空気量に対して5〜20%程度であることが好ましい。ここで供給される排ガスの量は、NOxの低減効果と良好な燃焼状態が維持できるか否かという二点を条件として定められる。そこで、上記第六態様においては、これらの条件に基づき、供給される排ガスの量は、必要空気量に対して5〜20%程度であることが好ましい。このような範囲としているのは、排ガス供給量が5%を下回ると、効果的な低NOx効果(ガス温度の低減効果)を得ることができず、20%を上回ると、良好な燃焼状態を維持することが困難となる(消炎限界速度に達する)からである。この消炎限界速度は、燃料種類によって異なり、本実施態様は、燃料としてプロパン・ブタンを主成分とするLPGとメタンを主成分とする都市ガス(13Aなど)とを採用するため、この燃料種類との関係で上記のような好ましい排ガス供給量が定められる。
本発明の第七態様にかかるボイラは、第一から第六態様のいずれかの構成に加えて、前記水管の配設間隔が、前記水管間を通過するガス流速が20m/s以上となる間隔である構成が好ましい。
このような構成によれば、バーナ面と水冷水管面との間で生成されるNOx濃度を抑制すると共にCO濃度をも制御することができる。この技術を用いれば、各種の燃料に応じてバーナ面−水管構成を設計することができ、将来的な燃料動向の変化に対応が可能である。さらに、このような構成によれば、環境浄化の手段としてボイラの後段(冷却手段および酸化促進手段の後段)での排ガス処理装置の設計にも有効に適用できるという効果を得ることができる。
以下、本発明にかかるボイラおよび低NOx燃焼方法を適用した実施例について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例を適用した蒸気ボイラの縦断面の説明図である。また、図2は、図1のII−II線に沿う横断面の説明図である。
これらの図1および図2に示すように、本実施例にかかるボイラ1は、平面状の予混合ガス噴出面(平板状で、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成された燃焼面)を有する完全予混合式のバーナ10(本発明の「予混合ガスバーナ」に相当)、多数の熱吸収用の水管(伝熱管)20,21,22,23(本発明の「冷却手段」に相当)を用いて構成された缶体2、バーナ10に対して燃焼用空気を送るために設けられた送風機30、および缶体2内の排ガスをボイラ1外部に排出するために設けられた煙突部40等を用いて構成されている。また、本実施例においては、煙突部40から排出される排ガスを予混合ガスの燃焼反応領域へ供給するために、送風機30に設けられた吸気配管35と煙突部40との間に排ガス供給配管41(本発明の「排ガス供給手段」に相当)が設けられている。
本実施例にかかるボイラ1を構成するバーナ10は、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成された予混合ガス噴出面を有する予混合ガスバーナであって、波板と平板とを交互に積層して構成されている。このような構成に基づき、バーナ10の予混合ガス噴出面(燃焼面)10aには、多数の予混合ガス噴出孔が形成されることとなる。そして、このバーナ10は、後述する缶体2を構成する水管(水管群)に近接して設けられている。なお、詳細な構造等はここでは省略するが、本実施例にかかるバーナ10は、例えば、特許第3221582号公報に記載された「燃焼バーナ」と同様な構成を有している。
また、本実施例にかかるボイラ1を構成する缶体2は、上部管寄せ24、下部管寄せ25、およびこれらの上下部管寄せ24,25間に立脚して配設された複数の水管(壁面水管20,壁面側水管21,中央側水管22,中央水管23)等を用いて構成されている。この缶体2内においては、壁面水管20、壁面側水管21、中央側水管22、および中央水管23が、ガス流動方向(缶体2の長手方向)に配置されており、中央水管群(中央水管23を用いて構成された水管群)を中心として、二列ずつの中央側水管群(中央側水管22を用いて構成された水管群)、壁面側水管群(壁面側水管21を用いて構成された水管群)、および壁面水管群(壁面水管20を用いて構成された水管群)が構成されている。また、隣り合う水管同士は、千鳥状に配設されている。
さらに、図2に示すように、本実施例にかかる缶体2においては、長手方向の両側部に設けられた壁面水管20と、各壁面水管20間を連結した連結部26とを用いて、一対の水管壁27が構成されている。缶体2は、この一対の水管壁27と、上下部管寄せ24,25とを用いて、略矩形のガス流動空間29が形成されることとなり、このガス流動空間29内に、所定間隔を隔てて、壁面側水管21、中央側水管22、および中央水管23が配設されている。
また、本実施例にかかる缶体2を構成する水管21,22,23においては、バーナ10に近接した最前列水管(ガスの流通方向に沿って直線状に配設された水管群の中で最も予混合ガスバーナに近接している水管)(最前列壁面側水管21A,最前列中央側水管22A,最前列中央水管23A)(本発明の「冷却手段」「近接水管」に相当)に、フィン(第一フィン51,第二フィン52,第三フィン53)(本発明の「酸化促進手段」「突起物」に相当)が設けられている。これらのフィン51,52,53は、各最前列水管21A,22A,23Aの軸方向に等間隔に設けられており、それぞれの水管については、千鳥状に近接する水管同士のフィンが、それぞれのフィン間に交互に位置するように配設されている。例えば、図1は、参考までに第二フィン52を設けた最前列中央側水管22Aを仮想線(二点鎖線)にて示しているが、この図1に示すように、最前列中央側水管22Aに設けられている第二フィン52と、最前列中央水管23Aに設けられている第三フィン53とは、それぞれのフィン(例えば、第二フィン52)が、千鳥状に近接する水管(例えば、最前列中央水管23A)に設けられたフィン(例えば、第三フィン53)間に位置するように配設されている。
ここで、図3は、図2の部分拡大図を示したものである。この図3に示すように、それぞれの最前列水管21A,22A,23Aには、フィン51,52,53が設けられている。これらのフィン51,52,53は、上述したように、各最前列水管21A,22A,23Aの軸方向に等間隔に設けられており、それぞれの水管に設けられたフィンは、千鳥状に近接する水管のフィンとフィンとの間に位置するように配設されている。
また、本実施例においては、缶体2を構成する水管間隔が、通過するガス流速が20m/s以上となるように構成されている。より具体的には、この缶体2を構成する水管間隔は、通過するガス流速が15m/s〜40m/sの範囲内に設定することが好ましい。これは、燃焼ガスの水管への伝熱による冷却作用はほぼ流速の0.6から0.8乗に比例するためである。通常(ベア管を用いて)、このようなガス流速に設定すると、一方で流動抵抗の増加による圧力損失が急増し、反応変化するための滞留時間は短くなり、ボイラ装置として流動方向に多くの水管を配置することが必要となるが、本実施例においては、先述のフィン管等を用いることによって、これらの不具合を生ずることなく、効果的なガス流速を実現している。また、本実施例のような構成によれば、有効範囲がフィン無しの伝熱面の5〜10倍にも設けることが可能であるため、適切な流速を容易に実現することができる。
また、本実施例においては、水管外径D(フィンを含んだ水管外径)と、バーナ10と最前列水管中心の距離L(以下「バーナ間距離」という。)とが、以下の関係を有することが好ましい。
L=0.7D〜1.2D
なお、本実施例にかかるバーナ間距離Lは、水管外径D以下(L≦1.0D)である構成がより好ましい。
また、本実施例においては、近接する各水管同士の間隔(隙間)tが、以下の関係を有することが好ましい。
t=D/6〜D/4
上述したバーナ間距離Lおよび水管隙間tは、バーナ10にて燃焼状態が維持可能であって、且つ最前列水管下流側近傍にてガス温度をNOx生成温度未満にし得るように定められる。ただし、このような条件は、単にバーナ間距離Lあるいは水管隙間tだけでは定まらず、バーナ10に最も近接している水管(最前列水管)の局率半径にも起因するため、本実施例においては、上述した数式の関係を満たすべく、最前列水管を配設することが好ましい。
なお、本実施例においては、以上のようにフィンが設けられているが、本発明は、このような構成に限定されず、必要に応じて、スタッドピン、台形ネジ付管(比較的ピッチが長いもの)、コルゲート管等を用いてもよい。このような構成であっても、フィンを設けた場合と同様の効果を得ることができる。
本実施例にかかるボイラ1を構成する送風機30は、バーナ10に対して燃焼用空気を送るために設けられたものである。送風機30には、燃焼用空気の吸気口34を備えた吸気配管35が設けられている。また、この送風機30とバーナ10とは、空気供給経路部31を用いて接続されている。つまり、本実施例においては、送風機30を駆動させることによって、吸気口34および吸気配管35から吸気される燃焼用空気が、空気供給経路部31を介してバーナ10へ供給される。
この空気供給経路部31中には、ガス燃料供給管32が設けられており、ガス燃料供給管32には、高燃焼時と低燃焼時とで燃料流量を調整する燃料調整弁33が設けられている。なお、この空気供給経路部31には、必要に応じて、燃料と空気との混合性を向上させるために絞り部を設けることも可能である。
また、本実施例にかかるボイラ1を構成する煙突部40は、その入口がバーナ10と対向すべく、缶体2の最下流側に設けられている。したがって、本実施例にかかるボイラ1においては、バーナ10にて生成されたガスは、缶体2を構成する水管21,22,23と接触した後(接触して熱交換を行った後)、排ガスとして煙突部40を介してボイラ1外部に排出される。
ただし、先にも説明した通り、本実施例にかかるボイラ1には、煙突部40と吸気配管35との間に排ガス供給配管41が設けられている。したがって、缶体2から排出される排ガスの一部は、この排ガス供給配管41および吸気配管35を介して、バーナ10に供給されることとなる。つまり、排ガスは、空気供給経路部31中の予混合ガスと共に、予混合ガスの燃焼反応領域に供給されることとなる。なお、ここでは特に示していないが、必要に応じて、この排ガス供給配管41内には、排ガスの供給量(流量)を調整するために、排ガス供給量調整手段(例えば、ダンパ等)を設けてもよい。供給される排ガス量は、ガス温度の低減に寄与することと、良好な燃焼状態を維持することとを条件として、必要空気量に対して5〜20%程度であることが好ましい。
なお、供給される排ガス温度が100℃〜120℃程度の場合には、排ガス中の水分が霧状に結露したものが吸引されて、バーナ10までの配管系に付着し、腐食等が発生する可能性がある。したがって、本実施例においては、排ガス温度検知手段を設け、その排ガス中の水分量(排ガス温度)に応じて、適宜、排ガスの供給状態を制御することが好ましい。具体的には、冷態起動時には排ガスの供給量を「零」として、燃焼状態がある程度継続されてから(排ガス温度が上昇してから)排ガスをバーナ10に供給するように構成することが好ましい。また、供給される排ガス温度が200℃〜350℃程度と比較的高温である場合には、水分による影響はないが、吸気口34から吸引される燃焼用空気との混合温度が急激に上昇し、O2濃度変化が起こってガスのCO値が適正範囲を超えて高い値を示すおそれがある。したがって、このような場合にも、排ガス温度検知手段を設け、その排ガス温度に応じて、適宜、排ガスの供給状態を制御することが好ましい。
本実施例にかかるボイラ1は、以上のように構成されており、この構成に基づき、そのボイラ1内部では、次のような燃焼状態が形成される。
まず、ガス燃料供給管32から供給されたガス燃料と、送風機30から供給された空気および排ガスとが、空気供給経路部31中で混合され、ここで混合された予混合ガス(以下、排ガスを含んだ予混合ガスも単に「予混合ガス」という。)がバーナ10に供給される。ここで、ガス燃料供給管32からは、ボイラ1にて必要とされる燃焼量のガス燃料が供給される。このガス燃料の供給量の調整は、燃料調整弁33によって行われる。送風機30からは、予混合ガスの空気比が1〜1.3程度となるように、空気が供給される。
バーナ10の予混合ガス噴出面10aから噴出された予混合ガス等は、着火手段(図示省略)により着火され、バーナ10にて火炎を伴う燃焼反応中のガスFが形成される。予混合ガス等は、バーナ10から、缶体2内の水管20,21,22,23に対して、略垂直となるように(直交するように)噴出されているため、燃焼反応中のガスFは、缶体2内の水管20,21,22,23と交差するように接触を繰り返して(水管と熱交換を行った後)、排ガスとなる。そして、この排ガスは、その大部分が缶体2の最下流側に設けられた煙突部40を介してボイラ1外部に排出され、その一部は、排ガス供給配管41を介してバーナ10に供給される。
また、本実施例においては、缶体2を構成する最前列水管(最前列壁面側水管21A,最前列中央側水管22A,最前列中央水管23A)に、フィン51〜53が設けられているため、このフィン51〜53近傍で乱流が発生し、火炎Fが保炎される。つまり、このフィン51〜53を設けた最前列水管にてガス(火炎)が保炎されて、ガス中のCOの酸化が促進されることとなる。
さらに、中央側水管群と壁面水管群(水管壁27)との間に設けられた第一領域61は、酸化促進手段(燃焼反応促進領域)としても機能する。つまり、第一領域61を設けることによって、ガス中のCOの酸化が促進される。さらに、缶体2の最下流側の第二領域71も、酸化促進手段(燃焼反応促進領域)として機能し得る。なお、ここでは、特に示していないが、この第一領域61および第二領域71の少なくとも一方には、より燃焼反応を促進するために、CO酸化触媒物質を設けてもよい。
各水管20,21,22,23中の水は、バーナ10から噴出のガスとの熱交換によって加熱されて蒸気化される。この蒸気は、上部管寄せ24に接続された蒸気取出手段(図示省略)を介して、蒸気使用設備(図示省略)に供給される。
本実施例にかかるボイラ1は、その内部において以上のような燃焼状態が形成されているため、次のような効果を得ることができる。
本実施例においては、バーナ10の近傍に水管20,21,22,23が設けられているため、バーナ10にて生成されたガスがこの水管20,21,22,23にて冷却されて、ガス温度がNOx発生限界以下に抑制される。つまり、ガス温度がNOx発生限界以下に抑制されるため、効果的にNOx値の低減を図ることができる。
また、本実施例にかかるボイラ1は、冷却手段たる水管21,22,23に、酸化促進手段として機能するフィン51,52,53が設けられている。つまり、本実施例においては、冷却手段と酸化促進手段とが一体的に構成されている。
このような構成によれば、バーナ10の近傍に位置する最前列水管に、フィン51〜53が設けられているため、このフィン51〜53近傍で乱流が発生し、ガス(火炎F)が保炎される。つまり、バーナ10の近傍の水管にてガス温度を抑制すると共に、このフィン51〜53によってガスを保炎し、ガスの酸化を促進することができる。したがって、この実施例によれば、NOx値の低減を図ると共に、ガス中のCOの酸化促進を行い、低NOx化と低CO化とを両立することができる。
さらに、本実施例は、以上のように冷却手段と酸化促進手段とが一体的に構成されているため、従来技術のように「冷却後に酸化促進する」わけではなく、「ガスの冷却と酸化促進とがほぼ同時に行われる」こととなる。したがって、本実施例によれば、冷却手段と酸化促進手段とを別々に設ける場合よりも、効果的にガス温度の上昇を抑制すると共に、早い段階でガス中の未燃物およびCOの酸化促進を行うことが可能となる。よって、このような構成によれば、供給された酸素(予混合ガス生成時に供給された酸素)を効率的に利用可能となって、低O2、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを得ることができる。
また、本実施例においては、上述したように燃焼反応直後となる位置に水管を設けてガスを冷却することに加え、ガス通過速度(ガス流速)を速くすることで(例えば、10m/s以上に設定することで)、ガスが高温度になることを抑えてNOx生成を抑制している。つまり、水管の配設間隔を調整してガス流速を高めて、低NOx化を図っている。さらに、本実施例にかかるボイラを構成する水管の配置、ガスと水管群との接触状態、ガスの通過速度は、燃料種類による燃焼反応にも影響される。本実施例は、プロパン・ブタンを主成分とするLPGとメタンを主成分とする都市ガス(13Aなど)に合わせて設計されている。具体的には、これらの燃料を燃焼させた際に、ガス通過速度が10m/s以上となるような水管配列構成が採用されている。なお、本実施例においては、ガス通過速度(ガス流速)は、15m/s〜40m/sの範囲内に設定することが好ましく、20m/s以上に設定することがより好ましい。これは、燃焼ガスの水管への伝熱による冷却作用はほぼ流速の0.6から0.8乗に比例するためである。通常(ベア管を用いて)、このようなガス流速に設定すると、一方で流動抵抗の増加による圧力損失が急増し、反応変化するための滞留時間は短くなり、ボイラ装置として流動方向に多くの水管を配置することが必要となるが、本実施例においては、先述のフィン管等を用いることによって、これらの不具合を生ずることなく、効果的なガス流速を実現している。また、本実施例のような構成によれば、有効範囲がフィン無しの伝熱面の5〜10倍にも設けることが可能であるため、適切な流速を容易に実現することができる。
また、本実施例においては、燃料および燃焼用空気と共に排ガスがバーナ10に供給され、排ガスを含んだ予混合ガスがバーナ10から噴出されることとなる。このように予混合ガス中に排ガスを混入させると、バーナ10あるいは水管群中を流動する間の燃焼反応によって生成されるガス温度が抑制される。したがって、本実施例にかかる構成によれば、NOx値の低減を図ることができる。
以上のように、本実施例にかかるボイラの低NOx化は、ガス温度を抑制し、且つガス流速を速くすることで達成されるが、本来、低空気比においては両方の効果が減少する。そこで、本実施例においては、予混合ガスに排ガスを混合させることで体積増加させて、これらの効果を相殺させている。また、バーナ面から水管群に流入するガス量は高空気比の場合と比較して減少するので、同じ水管冷却伝熱面積であっても冷却効果が大きくなる。つまり、低空気比における排ガス混合の効果は、高空気比と同程度の短い反応時間でガス温度(火炎温度)抑制を達成できることである。したがって、上述した本実施例においては、著しいNOx低減効果を得ることができる。
さらに、本実施例においては、低空気比(空気比=1〜1.3)燃焼を実現可能であるため、排ガス中の残存酸素量を3%以下に維持することができる。したがって、このような燃焼方法によれば、環境汚染問題の解決と省エネルギ化とを実現し、より高いレベルでの有害物質低減化を実現することができる。
また、本実施例によれば、以上のような構成および燃焼状態を形成することによって、煙突部40での排気ガス中の残存酸素量を低く抑えた状態で、低NOx化および低CO化を実現可能となる。具体的には、排気ガス中の残存酸素量0%〜3%の範囲内(低O2)で、NOx値(排ガスO20%換算値)を1ppm〜20ppm(低NOx)、CO値(読取値)を1ppm〜50ppm(低CO)にすることが可能となる。つまり、本実施例によれば、低O2、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを得ることができる。
このような低O2燃焼は、省エネルギになると共に、低風量・低缶体圧損ともなる。したがって、送風機動力の低減および缶体効率の向上にも寄与し、ボイラの小型化(1割程度)を図ることも可能となる。
なお、本発明は、上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施例においては、ボイラ1が蒸気ボイラである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、温水ボイラでもよい。
また、上記実施形態および実施例においては、本発明にかかる低NOx燃焼方法をボイラに適用する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、本発明にかかる低NOx燃焼方法を他の装置、例えば、給湯器、吸収式冷凍機の再生器等の熱機器に適用してもよい。
さらに、上記実施例においては、缶体2を構成する水管の内、バーナ10に最も近い位置に設けられた最前列水管(最前列壁面側水管21A,最前列中央側水管22A,最前列中央水管23A)に、フィン51〜53を設ける構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、上記実施例のように全ての最前列水管についてフィンを設けるのではなく、いずれか(例えば、最前列中央側水管22Aと最前列中央水管23Aと)に対して、フィンを設ける構成としてもよい。さらに、最前列水管のみではなく、そのさらに下流側(ガス流動方向下流側)に位置する水管に対してもフィン等の突起物を設けるような構成としてもよい。
また、上記実施例においては、酸化促進手段である突起物としてフィンを用いる場合について説明したが、先にも述べたように、本発明はこの構成に限定されるものではない。したがって、例えば、図4に示すように、突起物として多数のスタッドピン81,81,…を設けてもよい。ここで、図4は、本発明の技術的範囲に属する他の実施例にかかるボイラ2’の横断面部分拡大図(図3と同様の位置における部分拡大図)を示したものである。このように、多数のスタッドピン81を設けた構成であっても、先に説明した実施例にかかるボイラと同様の作用効果を得ることができる。なお、この図4においては、図1等にて示した先の実施例にかかるボイラと水管配列等が異なるが、この水管配列等はボイラの発熱量や形状等に応じて適宜変更されるものであり、本発明の技術的思想においては、適宜種々の水管配列を選択することが可能である。また、この図4に示した実施例においては、隣り合う水管のスタッドピンが同じ高さとならないように、上下に交互に設ける構成であることが好ましい。