JP2006348932A - 不均一なインピーダンスを有する音響ライナー - Google Patents
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Abstract
【課題】不都合な重量や、経費や複雑さが加えられることなく、かつ、ダクトの空力性能を危険にさらすことなく、ダクト内で反射した騒音の方向を変える。
【解決手段】タービンエンジンの吸気ダクト20などの流体処理ダクトは、フェースシート34と、フェースシートから横方向に離間したバックウォール38を有する音響ライナー32を備える。ライナーは、バックウォールへ入射した音波を所定の方向に方向付けるよう不均一に分布した音響インピーダンスを有する。不均一なインピーダンスを、バックウォールに反射する騒音信号の方向を調節するよう空間的に分布することにより、ダクトから周囲環境に伝播する騒音を低減することができる。
【選択図】図4
【解決手段】タービンエンジンの吸気ダクト20などの流体処理ダクトは、フェースシート34と、フェースシートから横方向に離間したバックウォール38を有する音響ライナー32を備える。ライナーは、バックウォールへ入射した音波を所定の方向に方向付けるよう不均一に分布した音響インピーダンスを有する。不均一なインピーダンスを、バックウォールに反射する騒音信号の方向を調節するよう空間的に分布することにより、ダクトから周囲環境に伝播する騒音を低減することができる。
【選択図】図4
Description
関連出願の相互参照
本出願は、共に係属中の同一出願人による出願である“不均一な厚さのバックウォールを有する音響ライナー”(譲受人整理番号:EH−11410)と主題において共通するものである。
本出願は、共に係属中の同一出願人による出願である“不均一な厚さのバックウォールを有する音響ライナー”(譲受人整理番号:EH−11410)と主題において共通するものである。
本発明は、タービンエンジンの吸気ダクト及び排気ダクトなどの流体処理ダクトのための、騒音を減衰させるライナーに関する。
航空機の推進などに使用されるタービンエンジンは、空気をエンジンに送るための吸気ダクトと燃焼生成物を大気中へ排出するための排気ダクトを備える。作動中、エンジンは、ダクトの開放された端部を通って環境に伝播される騒音を発生させる。騒音は不快なものであるため、エンジン製造業者は、ダクトの内部壁部分に音響ライナーを設置している。共通して使用される種類の音響ライナーは、穿孔を有するフェースシートと無孔のバックウォールの間に挟まれた共振器チャンバの列を特徴とする。ライナーは、フェースシートが内部壁面部分を画定し、ダクトを通って流れる空気又は燃焼生成物にさらされる。音響ライナーは、設計周波数帯域と呼ばれる周波数の帯域幅にわたる騒音の振幅を低減するよう設計される。
音響ライナーは、完全に有効というわけではない。設計周波数帯域を外れる周波数における騒音は、ライナーの影響を受けない。設計周波数帯域内の騒音でさえも、低減した振幅にあるとは言え、存続する。減衰されているか又はされていないいずれかの残存騒音は、ライナーに反射する可能性がある。距離に伴って騒音があまりにも急速に減衰するために、ダクトの外側まで伝播できない場合がある。これらの減衰の影響を受けやすい騒音モードは「カットオフ」モードと呼ばれ重要ではない。その他の騒音モードは耐減衰性であり、長距離を容易に伝播することができる。これらは「カットオン」モードと呼ばれる。耐減衰性の騒音信号が、十分に浅い角度でライナーに当たると、騒音信号は、ほぼ同じ浅い角度で反射し、ダクト外へ伝播する可能性がある。
カットオンモードを減衰する1つの方法とは、ライナーがこれらのモードが反射する方向を調整することである。例えば、耐減衰騒音信号が浅い角度でライナーに衝突し、それがダクトの開放端から非常に離れている場合(即ち、吸気ダクトの吸気面から、あるいは排気ダクトの排気面から離間している場合)、より急角度で、即ち軸方向を下回る方向で信号を反射させることが有益であろう。より急角度での反射における主要な利点とは、それによって、騒音信号がダクトの開放端に向かって伝播するとき、騒音信号がライナー外側で繰り返し反射するということである。これは、ライナーとの相互作用のそれぞれにより騒音信号がさらに減衰されるため、信号の周波数がライナーの設計周波数帯域内である限り有益である。さらに、反射した信号は、その周波数の音響がその角度でダクト内を伝播できないため、距離に伴って急激に減衰される。
騒音信号が入射信号の方向よりも軸方向よりの方向へ騒音信号を反射させることもまた有利である。例えば、騒音信号がダクトの開放端の近くで(即ち、吸気ダクトの吸気面か、あるいは排気ダクトの排気面の近くで)ライナーに当たる場合、入射点とダクト開放端の間の軸方向における距離は短すぎて、例え急角度で反射した信号でさえも、反射信号を妨害できない。従って、より軸方向に近い方向で信号を反射させることがさらに有利である。これは航空機エンジンから軸方向に伝播する騒音は、地表に到達する前に、エンジンから非軸方向に伝播する騒音よりも広範囲にわたって広がることによる。騒音がより広範囲に分布することにより、騒音の振幅が減衰されるため、地上のオブザーバーへの影響を減少することができる。
反射角を調節する周知の方法とは、アクティブバックウォールを採用することである。アクティブバックウォールは、パネル型圧電アクチュエータなどの振動素子を備える。制御システムは、(騒音信号の入射に対して)ある振幅とある位相角で振動するようアクチュエータに信号を送ることによって、ライナー上に採用された音響センサに応答する。アクチュエータの振動によりライナーのインピーダンスが、入射騒音信号の減衰を最適化するよう時間と共に変化する。しかしながら、そのようなライナーは、その性能がアクチュエータを駆動するのに利用可能な動力によって制限されるため、完全に満足のいくものではない。さらには、アクティブバックウォールは不要な重量、経費、複雑さを生じさせる。
基本的に、エンジン設計者は、ライナー全体(即ち、フェースシートとバックウォール)を、ライナーが入射した騒音信号を1つ又はより多くの所望する方向において反射するように配向することができる。しかしながら、そのようにすることは、ダクトの内部形状が空力学的問題を考慮して調整されているため、ほぼ常に非現実的である。ライナーフェースシートは、少なくともダクトの内壁部分を画定するため、ライナー全体を、反射する音響の方向を調節するよう配向することは、ダクトの空力的性能をほぼ常に危険にさらすことになる。
不都合な重量や、経費や複雑さが加えられることなく、かつ、ダクトの空力性能を危険にさらすことなく、ダクト内で反響した騒音の方向を変える方法が必要とされている。
従って、本発明の目的は、不都合な重量や、経費や複雑さが加えられることなく、かつ、ダクトの空力性能を危険にさらすことなく、ダクト内で反射した騒音の方向を変えることにある。
本発明の第一の態様によれば、流体処理ダクトは、フェースシートに対して所定の方向において、バックウォールに対して入射した音波を方向付けるよう、空間的に分布した不均一な音響インピーダンスを有する。
本発明の詳細な一実施態様では、ライナーはフェースシートを備えるため、不均一なインピーダンスはフェースシートの空間的に不均一な孔度によるところが大きい。
本発明の様々な実施態様の前述並びにその他の特徴は、以下の、本発明を実施するための最良の態様の説明及び添付の図面からより明らかとなるであろう。
図1、図2及び図5は、ダクト軸24に外接するダクト内部壁22で画定されたタービンエンジンの吸気ダクト20を示している。図示する吸気ダクトは、エンジンの軸と平行に見た場合、断面において実質的に円形であるが、円形とはかけ離れた形状の吸気ダクトの場合もある。ダクトの1つの端部26は、大気中に開放している。ダクトの他方の端部は、開放端部から軸方向において相補的な位置にあり、ブレード段30を有する回転ファン28で示す圧縮機の直前にある。エンジン作動中、ファンは騒音源となり、その一部は、すでに説明したような音響ライナーで減衰される。
ダクト内部壁22の部分は、音響ライナー32と並んで配設されている。通常の音響ライナーは、(図3、図4、図6及び図7で見られる)多数の小さい孔36を設けられたフェースシート34と、フェースシートから横方向に離間した孔のないバックシート、即ちバックウォール38を有する。フェースシートは、図2と図5で最も良好に見られるように、ダクト壁の内部輪郭を画定する。共振器チャンバ40、又はその他の音響減衰器の列が、フェースシートとバックウォールの間の空隙を埋めている。それぞれの共振器チャンバは、方向4−4又は7−7から見ると六角形又はハニカム形状を有するため、音響ライナーのほとんどでは、共振器チャンバはハニカムセルと呼ばれる。ライナーのバックウォール38は奥行きDだけフェースシートから離れている(図3及び図6)。この奥行きは図示するように均一であってもよく、また、共に係属中で、共通の出願人による、本願と同時に出願された出願(譲受人整理番号EH−11410)、発明の名称「奥行きが不均一なバックウォールを有する音響ライナー」に、より完全に説明されているように、反響方向を調節するのに、不均一な奥行きを利用する場合には不均一であってもよい。上記出願の内容は参照としてここに組み入れられる。
ライナーの有効性は音響アドミタンスとして知られる特性に依存し、この音響アドミタンスは、音響変動(disturbance)を減衰させることができるよう、その変動をチャンバ40内へ入れさせるライナー性能の目安である。あるいは又、妨害(変動)を入れて減衰することのできないライナーの性能は、音響インピーダンスと呼ばれる。音響インピーダンスZは、抵抗Rで知られる実数成分と、リアクタンスXとして知られる虚数成分を有する複雑な数量であり、Z=R+iXである。音響インピーダンスは、時定数τに関連しており、これは音波がライナーに入り、バックウォールに反射して、フェースシートから再び現れるのに要する時間長さである。時定数τは、音響インピーダンスのリアクタンス成分の関数として重要である。
図3又は図6で示すライナーに関して、以下の関係は、時定数τ、ライナーのパラメータ、ライナーインピーダンス、及びライナーに沿った距離Xを相互に関連づける。図3又は図6で示すフェースシートのインピーダンスは、以下の方程式で与えられる。
Z=R+iX (1)
式中、Zはインピーダンスであり、Rは抵抗であり、Xはリアクタンスである。リアクタンスの項は以下の式で表される。
式中、Zはインピーダンスであり、Rは抵抗であり、Xはリアクタンスである。リアクタンスの項は以下の式で表される。
式中、ωは対象とする騒音信号の角周波数(即ち、ω=2Πf(式中、fは騒音信号の周波数である))であり、Mは音響イナータンスであり、Cはライナーの音響コンプライアンスである。逆に言えば、ライナーの時定数は、ライナーの応答周波数の逆数、即ち、
であり、ライナーの時定数は、以下の2次方程式から求めることができ、これは、方程式(2)にωを乗じることによって得られる。
式3からのωを代入して、
ライナーのリアクタンスXの任意の値が得られる。
2次方程式を解くことにより、時定数の式が得られる。
共鳴付近でリアクタンスXは、ゼロに近づく。共鳴付近の条件により、共鳴周波数の算出が可能となり、これは、ライナーの時間遅れ(時限)に反比例する。即ち、
である。一次数(first order)について、イナータンスとコンプライアンスは、ライナーと空力学的パラメータ中で表すことができる。
並びに、
式中、ρ=空気密度、S=それぞれ別個の共振器チャンバに通じるフェースシート中の孔(孔全部)の面積、V=共振器チャンバ個々の容積、c=音速、t’=t+σe(tはライナーフェースシートの物理的厚さであり、
式中、σeは、フェースシート中の孔36のための「端の補正」であり、かつdhは、(円形の孔とした場合の)フェースシート中の個々の孔36の孔径)である)。
上記「端の補正」は又、音響用語では共振器内への開放端に負荷をかける質量(mass)と呼ばれる。補正は孔の出口面付近の領域の付加質量を考慮したものである。音波は、共振器のネックを振動させるとき、孔の全質量を移動させるのに加えて、上記のような質量を移動させなければならない。
上述からわかるように、音響インピーダンスZは、フェースシートの開放面積に反比例する音響イナータンスMに正比例する。そのため、音響インピーダンスも又、孔の面積に反比例する。
音響リアクタンスがゼロのとき、共振が生じる。共振のとき、時定数は以下の関係を与えられる。
式中、Dはライナーの奥行きであり、σはライナーフェースシートの開放面積分(即ち、有効率)である。
従って、共振時の時定数は孔の面積と、ライナーの開放面積比率(有効率)に反比例する。又、時定数は、ライナー奥行きDに正比例する。
図4と図7を参照すると、ライナー32は空間的に不均一な音響インピーダンスを有する。図4において、インピーダンスとライナーの時定数は、騒音源28からの軸方向における距離が増大するに従って減少する。インピーダンスの減少は、孔36の面積における増大、即ち、フェースシートの有効率の、軸方向における騒音源から距離の増大に伴う増大に起因する。図7において、インピーダンスとライナーの時定数は、騒音源28からの軸方向における距離Xが増大するのに伴って増大する。このインピーダンスの増大は、孔36の面積における減少、即ち、フェースシートの有効率の、軸方向における騒音源から距離の増大に伴う減少に起因する。以下でより詳細に説明するように、インピーダンスの空間的分布、即ち、ライナーの時定数は、フェースシートに対して、所定の方向で音波を入射させるように選択される。
図2〜図4を参照すると、代表的な音波、即ち、ファンによって生じた騒音信号50が吸気ダクトを通って前方に伝播している。図示する騒音信号の軌道は、フェースシート34に平行な方向成分(つまり、おおよそ軸方向)とフェースシートに垂直な方向成分(つまり、おおよそ径方向)で説明可能である。図示する騒音信号は、入射角αの角度で、吸気ダクトの開放端26からは遠い箇所でライナーに当たる。騒音源からの距離が増大するに従って減少する場合における不均一なインピーダンスは、反射信号52とその反射角βで示されるような所定の方向に、入射騒音信号50の残部を反射させる。インピーダンスが空間的に均一であった場合、信号は、入射角αに等しい正反射角である反射角βsで反射し、正反射的な軌道54、即ち、フェースシート34に対して平行な方向成分と垂直な方向成分が、入射信号50の対応する方向成分と同じ大きさであるような軌道に沿って伝播するであろう。しかしながら、図2及び図3に見られるように、本発明のライナーにより、反射信号52の平行方向の成分の大きさは、入射信号の平行方向の成分よりも減少し、反射信号の垂直方向の成分の大きさは、入射信号の垂直方向の成分よりも増大する。即ち、反射信号の軌道は、入射信号の軌道よりも急勾配である。その結果、反射信号は、ダクトの開放端に向かって伝播するときに、ライナーに繰り返し反射する機会が多くなるため、ライナーによって騒音信号が減衰される機会が繰り返し提供される。
図5〜図7は、図2〜図4に類似しているが、騒音信号50が、吸気ダクトの開放端26の付近でライナーに当たっているのを示している。騒音源からの距離が増大するに従って増大する場合における不均一なインピーダンスは、反射信号52とその反射角βで示されるような所定の方向に、入射騒音信号50の残部を反射させる。インピーダンスが空間的に均一であった場合、信号は、入射角αに等しい正反射角である反射角βsで反射し、正反射的な軌道54、即ち、フェースシート34に対して平行な方向成分と垂直な方向成分が、入射信号50の対応する方向成分と同じ大きさであるような軌道に沿って伝播するであろう。しかしながら、図5及び図6にみられるように、本発明のライナーにより、反射信号52の平行方向の成分の大きさは、入射信号の平行方向の成分よりも増大し、反射信号の垂直方向の成分の大きさは、入射信号の垂直方向の成分よりも減少する。即ち、反射信号の軌道は、入射信号の軌道よりも浅い。その結果、反射信号は、より軸方向に近い方向で伝播するため、非軸方向で伝播する騒音と比較して、周囲にそれほど分散しない。
反射の所定の方向は、ライナーの全ての部分で同じ方向である必要はない。このことは、ライナーが、3−3の部分においては入射した騒音信号を、入射信号よりも軸方向の成分が小さく、径方向の成分が大きい所定の方向で反射しているのに対して、6−6の部分においては、入射した騒音信号を、入射信号よりも軸方向の成分が大きく、径方向の成分が小さい所定の方向で反射している前述の例から明らかである。
図8は、上述の本発明の音響ライナーの物理的挙動を概略的に図示している。図8において、表面のインピーダンスは、ライナーの時定数τが、以下の方程式に従って、直線的に変化する。
式中、Xは、騒音源28からの距離が増大するに従ってXが増大するようなフェースシートに沿った距離であり、τ0は、Xの任意の値(通常、騒音源に近い、ライナーの端部)における時定数であり、αは、入射角であり、γは、(フェースシートに対する)所定の反射角βと正反射角βsの差の2分の1であり、cは、音速である。図8で示すXの座標系に関して、時定数とインピーダンスのいずれもが、騒音源からの距離が増大するに伴って減少する。
図8を続けて参照すると、入射騒音信号50で示される音波は、入射角αでライナーに接近している。ライン140−140は、時間t0におけるライナーの等位相(例えば、最大圧力高さ(pressure crest))のラインを示している。後の時間、t1=t0+Δtにおいて、波は距離S1=c(Δt)だけ前方に進んだ。ここで、cは伝播速度である。時間t1ではライナーに入っていない波部分を、ラインセグメント141−141で示す。時間t0でライナー面に接近した波部分を、ラインセグメント141a−141aで示す。共振器チャンバに入ったばかりのこの波部分141a−141aは、フェースシートによって進行を妨げられ、かつ、不均一で直線的に変化するインピーダンスによって波面に課される直線的に変化する時間遅れのために屈折する。ラインセグメント141‘−141’は、波面が一定量(即ち、ライナーフェースシートにおける均一なインピーダンス分布)だけ遅延した場合のライナーの波面の位置を示している。141a−141aと141‘−141’の間の垂直距離は、ライナーフェースを通る波の伝播によって課される時間遅れが、増大するXの方向において減少するため、増大するXに伴って漸減する。時間t2=t0+2Δtにおいて、まだライナーに入っていない波部分を、ラインセグメント142−142で示す。142a−142aで示される波部分は、ライナーに入って進行を妨げられ、上述のように屈折し、バックウォールに向かって引き続き進行している。セグメント142b−142bで示す波の別の部分は、バックウォールに衝突し、フェースシートに向かって反響している。従って、時間t2では、波はラインセグメント142−142、142a−142a、及び142b−142bで示される。時間t3=t0+3Δtにおいて、波部分143a−143aは、バックウォールに向かって進行している。部分143b−143bは、バックウォールにはね返っている。部分143c−143cは、フェースシートを通って出、かつ、さらに遅れ、上述したように屈折している。時間t4=t0+4Δtにおいては、波完全にライナーから出ており、これはライン144−144で示されている。信号の反射角βは、α+2γと等しいように見える。図8で示す例に関して、フェースシートに対して、入射角αは、約45°であり、γは約12.5°であり、反射角βは約70°である。設計者は、ダクト内の所与の位置における所望の反射角βを規定するために、時定数τ並びにインピーダンスを、距離の関数としてどのように変えるべきかを定義するのに、関係式、
β=α+2γ
及び、
β=α+2γ
及び、
を利用することができる。すでに記した通り、騒音源からの距離の増大に伴って減少するインピーダンスは、図2、図3及び図8で見られるように音波をより径方向に向ける(あるいは、十分に増大が大きい場合には、騒音源に向かって戻る方向に向ける)。騒音源からの距離の増大に伴って増大するインピーダンスは、図5と図6に見られるように、ダクト内において音波をより軸方向に向ける。
所定の方向は、通常、フェースシートに対して非正反射方向であるが、ライナーのある部分は、そのような方向が騒音減衰目的に一致するか、あるいはそれぞれがフェースシートに対して非正反射するライナーの部分間に変わり目を形成する必要がある場合、フェースシートに対する正反射を得るために、空間的に均一なインピーダンスを有するものであってもよい。
上記例は、軸方向成分と径方向成分の両方を有する入射騒音信号を示している。しかしながら、エンジンファンから放射状に広がる騒音信号は、通常、ライナーに向かってらせん運動で伝播する回転モードを呈する。そのような入射音波は、軸方向成分と径方向成分に加えて周方向成分も有する。従って、音響インピーダンスは、軸方向における変化の代わりに、あるいは加えて、周方向において変化させてもよい。これは図9で見られ、フェースシートの孔36の面積、つまり有効率は、軸方向と周方向の両方において変化させて、反射した騒音信号を最も望ましい所定の方向に方向付ける。
本明細書において説明した例は、直線的に変化するインピーダンスを示しているが、インピーダンスは非直線的に分布させることも可能である。
前述の説明並びに付随する図面は、孔36径(面積)の変化を利用して、フェースシートの有効率を空間的に変化させることによって、所望の不均一な音響インピーダンス分布を達成できることを説明するものである。しかしながら、同様の効果は、均一な径を有する孔の密度を変化させることによって、あるいは、孔の大きさと密度を変えることを組み合わせることによって達成することもできる。約0.10インチ(約2.54mm)台の孔径を有する従来のライナーについては、孔間の均一な空隙によって、各共振器チャンバ40に通じる少なくとも1つの孔36が存在するのを確実にするのが容易であるため、孔径の変化が最も望ましい方法であろう。しかしながら、孔径を0.004〜0.010インチ(0.010〜0.025cm)台とすることができる微小な孔を有するライナーの場合、孔径を一定に維持しながら、孔密度を変化させることがより望ましいであろう。
図10と図11に見られるように、不均一なインピーダンスは、傾斜したバックウォール、あるいは段付きバックウォールと組み合わせて用いることができる。それらについては、ここに参照として組み入れた特許出願においてより詳細に説明している。
図12を参照すると、本発明は、アクティブバックウォールと組み合わせて使用することができる。図12に示すように、アクティブバックウォールは、フラットパネル型圧電アクチュエータなどの振動素子64を備える。制御システムは、アクチュエータに、ライナーのインピーダンスを時間の経過と共に変化させて、入射騒音信号の減衰を最適化するよう、(入射騒音信号に対して)ある振幅と位相角で振動するよう信号を送ることによって音響センサ62に応答する。アクティブ素子と組み合わせて可変インピーダンスバックウォールを使用することにより、必要なアクティブ素子量を減少させることができ、アクティブ素子を駆動するのに要する動力を減少させることが可能となる。
本発明を、タービンエンジンの吸気ダクトに関連して説明したが、タービンエンジンの排気ダクトを含むその他の型のダクトに対しても同様に適用できる。図13の概略的に示す排気ダクト66に見られるように、騒音源は、ダクトの上流端70から入る高温で高速の排気ガス68である。騒音は、ダクトの下流の開放端、即ち、下流端72に向かって伝播する。
さらに、図面で示し、文章中で説明した例は、位相速度(波伝播速度)が、熱力学的音速に等しいものであると想定したものであるが、波伝播速度が、一列に並んだダクトにおける音の伝播に起こりえるような熱力学的音速から著しく外れている場合にも、本発明の概念は同様に機能することは認識すべきである。
本発明を特定の実施態様を参照しながら示し、説明してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明から逸脱することなく、形態や細部における様々な変更が可能であることは当業者には理解できるであろう。
Claims (16)
- バックウォールに入射する音波をフェースシートに対して所定の方向に方向付けるように空間的に分布された、空間的に不均一な音響インピーダンスを有する音響ライナーを備える、流体処理ダクト。
- 前記ライナーが、空間的に不均一な有孔率を有するフェースシートを備えることを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記所定の方向が、前記フェースシートに対して非正反射であることを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記インピーダンスが、騒音源からの距離の増大に伴って増大することを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記インピーダンスが、騒音源からの距離の増大に伴って減少することを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記ダクトが、軸に平行に見たときに、実質的に円形であることを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記所定の方向が、軸成分と径成分を有することを特徴とする、請求項6記載のダクト。
- 前記入射音波と前記所定の方向が、いずれも、少なくとも前記フェースシートに平行な方向成分と、前記フェースシートに垂直な方向成分で表すことができ、前記所定の方向の平行方向の成分は、前記入射音波の平行方向の成分よりも小さく、かつ、前記所定の方向の垂直方向の成分は、前記入射音波の垂直方向の成分よりも大きいことを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記入射音波と前記所定の方向が、いずれも、少なくとも前記フェースシートに平行な方向成分と、前記フェースシートに垂直な方向成分で表すことができ、前記所定の方向の平行方向の成分は、前記入射音波の平行方向の成分よりも大きく、かつ、前記所定の方向の垂直方向の成分は、前記入射音波の垂直方向の成分よりも小さいことを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記ダクトが、タービンエンジンの吸気ダクトであり、圧縮機の下流における吸気口が、ダクト内に騒音を伝える騒音源であることを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記ダクトが、タービンエンジンの排気ダクトであり、ダクトの上流端に入る排気ガスの流れが騒音源であることを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記ライナーが、前記フェースシートに対して傾斜した配向を有することを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記ライナーが、段付きバックウォールを有することを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記ライナーが、アクティブバックウォールを含むことを特徴とする、請求項1記載のダクト。
- 前記フェースシートと前記バックウォールの間の横方向の空隙を、共振器チャンバの列が占めていることを特徴とする、請求項1記載のダクト。
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