JP2006348098A - 鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐硫酸性、耐加水分解性及び難燃性に優れる鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物及びその成形体(例えば、鉛蓄電池の電槽又はその蓋体など)を提供する。
【解決手段】 ポリカーボネート系樹脂(例えば、Mv:19,000〜35,000)で構成された樹脂成分と、芳香族リン酸エステル(m−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)又はこのリン酸エステルに対応する縮合リン酸エステルを除く芳香族リン酸エステル)で構成された難燃剤とで、鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物を構成する。樹脂成分はさらにスチレン系樹脂を含有してもよい。ポリカーボネート系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との重量比は、樹脂(A)/樹脂(B)=100/0〜50/50程度であってもよい。前記難燃剤の割合は、通常、樹脂成分100重量部に対して、5〜50重量部程度である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐加水分解性、耐硫酸性及び耐熱性に優れ、鉛蓄電池ケーシング(電槽、蓋体など)用途において、有用な非ハロゲン系樹脂組成物に関する。
鉛蓄電池は、車両等の動力源としての他、施設のバックアップ用電源などの据置型鉛蓄電池として利用されている。鉛蓄電池には、電解質として硫酸が使用されており、蓄電池の電槽は長時間に亘り、硫酸溶液に接触した状態で使用される。そのため、電槽や電槽の蓋体などのケーシング用材料には、硫酸に長時間接触しても、硫酸に侵されず、また、硫酸を変質させない性能が求められる。
鉛蓄電池ケーシグ用(例えば、電槽用など)の材料としては、従来、UL−94規格のHBクラスの材料、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ブタジエンゴム−スチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン樹脂(ABS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂などをベースとする材料が用いられてきた。しかし、防災(火災防止)の観点から、さらに高い難燃性が求められている。特に、据置型鉛蓄電池の電槽には、V−0クラスの難燃性が要求されるとともに、外観特性、機械的強度、及び難燃性と成形性とのバランスなどの点から、臭素系難燃剤を用いて難燃化したABS樹脂などが多用されている。しかし、近年、環境問題への配慮から、前記難燃化ABS樹脂に匹敵する性能を有する(すなわち、外観特性、機械的強度を有すると共に、成形性及び難燃性のバランスに優れる)非ハロゲン系材料の開発が求められている。
変性ポリフェニレンエーテル樹脂をベースとする材料又はケーシングに関して、例えば、特開平10−208704号公報(特許文献1)には、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂との樹脂成分100重量部に対して、難燃剤(ハロゲン系、無機系難燃剤など)0〜30重量部を含む樹脂組成物で構成された電槽において、電槽が2つ以上の部品からなり、部品がエポキシ樹脂にて接着されている密閉型二次電池用電槽が開示されている。また、特開平10−214603号公報(特許文献2)には、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系オリゴマーとを含む樹脂組成物で構成された電槽において、電槽が2つ以上の部品からなり、これらの部品がエポキシ樹脂にて接着されている密閉型二次電池用電槽が開示されている。特開2003−197160号公報(特許文献3)には、ポリフェニレンエーテル系樹脂、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体、シンジオタクチック構造を有さないスチレン系重合体、及びリン系難燃剤を含む難燃性密閉型二次電池用電槽が開示されている。しかし、これらのポリフェニレンエーテル樹脂をベースとするケーシングでは、従来の難燃化ABSに比較すると、外観特性、及び成形性と難燃性とのバランスなどの点で未だ性能が不十分である。
特開平10−20874号公報(請求項1、段落番号[0026]及び[0027]) 特開平10−214603号公報(請求項1) 特開2003−197160号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、耐硫酸性、耐加水分解性及び難燃性に優れる鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、臭素系難燃剤で難燃化された従来のABS樹脂に匹敵する性能、すなわち、外観特性及び機械的強度に優れるとともに、成形性と難燃性とをバランスよく備えた鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、臭素系難燃剤で難燃化したABS樹脂では、長時間、水や硫酸(特に加熱した水や硫酸)に接触すると、樹脂が加水分解したり、成形品に割れが生じたりすること、さらに、ポリカーボネート系樹脂と特定の有機リン系難燃剤とを組み合わせると、難燃性のみならず、樹脂の耐硫酸性、耐加水分解性及び機械的強度を改善できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、少なくともポリカーボネート系樹脂で構成された樹脂成分と芳香族リン酸エステルで構成された難燃剤とを含んでおり、前記難燃剤は下記式(1)で表される芳香族リン酸エステルで構成されている。
Figure 2006348098
(式中、Z1はアルキル基R1を有していてもよい芳香族二価基を示し、Z2〜Z5は同一又は異なって、アルキル基R2を有していてもよいアリール基を示す。mは0以上の整数を示し、s及びtは同一又は異なって0〜6の整数を示す。R2及びtはZ2〜Z5により異なっていてもよい。但し、mが1以上の整数であり、sが0であり、Z1がm−フェニレン基であるとき、tのうち少なくとも1つは1以上の整数である)
このような樹脂組成物は、鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物として使用される。前記樹脂組成物において、難燃剤の割合は、樹脂成分100重量部に対して、通常、5〜50重量部程度である。
前記樹脂成分は、ポリカーボネート系樹脂(A)で構成してもよく、ポリカーボネート系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とで構成してもよい。ポリカーボネート系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とで構成された樹脂成分において、ポリカーボネート系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との割合(重量比)は、ポリカーボネート系樹脂(A)/スチレン系樹脂(B)=99.9/0.1〜50/50程度であってもよい。ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量Mvは19,000〜35,000程度であってもよい。
前記難燃剤は、トリアリールホスフェート、m−フェニレンビス[ビス(モノ乃至トリアルキルアリール)ホスフェート]又はその縮合物、ビスアリーレンビス(ビスアリールホスフェート)又はその縮合物、及びビスアリーレンビス[ビス(モノ乃至トリアルキルアリール)ホスフェート]又はその縮合物から選択された少なくとも一種の芳香族リン酸エステルで構成してもよい。
前記樹脂組成物においては、下記式(2)で表される化合物の割合が樹脂成分100重量部に対して5重量部以下であってもよい。
Figure 2006348098
(式中、nは1以上の整数を示す)
前記芳香族リン酸エステルと前記式(2)の化合物との割合(重量比)は、前者/後者=100/0〜70/30程度であってもよい。前記樹脂組成物は、前記式(2)の化合物を実質的に含有しないのが好ましい。
本発明では、ポリカーボネート系樹脂と特定の有機リン系難燃剤(芳香族リン酸エステル)とを組み合わせるので、鉛蓄電池ケーシング用途での使用に十分な耐硫酸性及び耐加水分解性が得られるとともに、ハロゲン系難燃剤を用いなくても、樹脂の難燃性を高いレベルに改善することができる。また、臭素系難燃剤で難燃化された従来のABS樹脂に匹敵する性能、すなわち、外観特性及び機械的強度に優れるとともに、成形性と難燃性とをバランスよく備えた鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物(非ハロゲン系樹脂組成物)を提供できる。
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂で構成された樹脂成分と、芳香族リン酸エステルで構成された難燃剤とを含有している。このような樹脂組成物は、耐加水分解性、耐硫酸性及び難燃性に優れ、硫酸に長期間接触する鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物として有用である。
(樹脂成分)
樹脂成分は、少なくともポリカーボネート系樹脂で構成すればよく、ポリカーボネート系樹脂を単独で、又はポリカーボネート系樹脂と他の樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ポリカーボネート系樹脂、例えば、二価フェノール類とカーボネート前駆体[例えば、カルボニルハライド(ホスゲンなど)、カルボニルエステル(ジフェニルカーボネートなど)またはハロホルメート(2価フェノールのジハロホルメートなど)など]とを慣用の方法(界面重縮合法、エステル交換法など)で反応させることにより得ることができるポリカーボネートなどが挙げられる。
二価フェノール類としては、ビスフェノール類、例えば、4,4'−ジヒドロキシビフェニル;ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)などのビス(4−ヒドロキシフェニル)C1-6アルカン類;ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)C5-8シクロアルカン類;9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;ビス(ヒドロキシフェニル)アルキルベンゼン類、例えば、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンなどのビス{(4−ヒドロキシフェニル)アルキル}ベンゼン類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4−ヒドロキシ安息香酸(4−ヒドロキシフェニル)エステルなどが例示できる。これらの二価フェノール類は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
二価フェノール類としては、通常、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)C5-8シクロアルカン類などを用いる場合が多い。
ポリカーボネート系樹脂は、直鎖構造や分岐構造を有していてもよい。なお、分岐構造は、必要により、少量の三官能以上のポリフェノール類、例えば、トリス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなど]を用いることにより形成できる。また、ポリカーボネート系樹脂は末端にヒドロキシル基を有していてもよく、末端は封鎖されていてもよい。末端の封鎖は、単官能フェノール類(フェノール、C1-20アルキルフェノールなど)により行うことができる。ポリカーボネート系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量Mvは、通常、10,000〜100,000(例えば、12,000〜50,000)程度の範囲から選択できるが、好ましくは15,000〜40,000、さらに好ましくは19,000〜35,000、特に20,000〜30,000程度である。
ポリカーボネート系樹脂と組み合わせる他の樹脂としては、オレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー、メチルペンテン系樹脂など)、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体など)、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステル系樹脂)、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系エラストマーなど)、ゴム状重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの樹脂のうち、特にスチレン系樹脂が好ましい。
前記スチレン系樹脂としては、ポリスチレン(GPPSなど)、スチレン−アクリル系共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)など]、スチレン−ジエン又はオレフィン系共重合体[スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体など]、ゴム含有スチレン系樹脂[耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂(MS樹脂)など]などが挙げられる。これらのスチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記スチレン系樹脂のうち、少なくともゴム含有スチレン系樹脂(HIPS、ABS樹脂など)を含むのが好ましい。なお、ゴム含有スチレン系樹脂は、共重合(グラフト重合、ブロック重合など)などにより、スチレン系樹脂で構成されたマトリックス中にゴム状重合体(ゴム成分)が粒子状に分散した重合体であってもよいが、通常、ゴム状重合体の存在下、少なくとも芳香族ビニル単量体を、慣用の方法(塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)で重合することにより得られるグラフト共重合体(ゴムグラフトスチレン系重合体)である。ゴム含有スチレン系樹脂のうち、塊状重合により得られる樹脂が好ましい。
樹脂成分中のポリカーボネート系樹脂と他の樹脂との割合(重量比)は、通常、ポリカーボネート系樹脂/他の樹脂=100/0〜50/50(例えば、99.9/0.1〜50/50)、好ましくは99/1〜55/45(例えば、95/5〜60/40)、さらに好ましくは90/10〜65/35程度である。
(難燃剤)
難燃剤は、芳香族リン酸エステル(前記式(2)の化合物を除く芳香族リン酸エステル)で構成されており、リン酸類のアリールエステル又はその縮合物などであってもよい。前記芳香族リン酸エステルとしては、通常、前記式(1)で表される芳香族リン酸エステルが使用される。
前記式(1)において、Z1で表される芳香族二価基としては、フェニレン(o−、m−又はp−フェニレン基など)、ナフチレン基(1,2−、1,3−、1,4−、2,3−又は1,8−ナフチレン基など)などのアリーレン基(C6-14アリーレン基など);キシリレン基などのアレーンジアルキレン基(C6-10アレーンジC1-4アルキレン基など);ビスアリールに対応する二価基[ビフェニレン基;ジフェニルメタン、ジキシリルメタン、ジフェニルエタン、2,2−ジメチル−2,2−ジフェニルプロパンなどのビスアリールアルカン(ビスC6-10アリールC1-4アルカンなど)に対応する二価基;ジフェニルエーテルなどのビスアリールエーテル(ビスC6-10アリールエーテルなど)に対応する二価基;ジフェニルスルフィドなどのビスアリールスルフィド(ビスC6-10アリールスルフィドなど)に対応する二価基;ジフェニルスルホキシドなどのビスアリールスルホキシド(ビスC6-10アリールスルホキシドなど)に対応する二価基など]などが挙げられる。
2〜Z5で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのC6-14アリール基(C6-10アリール基など);ビフェニルなどのビスC6-10アリール基などが挙げられる。
アルキル基R1〜R2としては、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル基などの直鎖又は分岐鎖状アルキル基(C1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基など)などが挙げられる。
アルキル基の個数を示すs及びtは、それぞれ、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0〜3(例えば、1〜2)の整数である。なお、アルキル基の置換位置は特に制限されず、Z2〜Z5において、例えば、フェニル基では、2〜6位のいずれの位置であってもよい。また、Z1〜Z5が複数のアルキル基を有する場合、アルキル基の位置は特に制限されず、隣接する炭素原子上にアルキル基を有していてもよく、非隣接の炭素原子上にアルキル基を有していてもよい。例えば、アルキル基を有する基Z2〜Z5の具体例としては、4−トリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基などが挙げられる。
リン酸エステルの縮合度を示すmは、例えば、0〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは2〜30程度であってもよい。
前記式(1)において、tは0(例えば、基Z2〜Z5について全てのtが0)であってもよいが、Z1がフェニレン基(m−フェニレン基など)又はビフェニレン基のときは、tの少なくとも1つ(例えば、基Z2〜Z5について全てのt)は1以上の整数であるのが好ましい。
なお、前記式(1)において、mが1以上の整数であり、sが0であり、Z1がm−フェニレン基であるとき、tのうち少なくとも1つ(好ましくは全てのt)は1以上の整数(例えば、1〜4、好ましくは1〜2の整数)であるのが好ましい。
このような難燃剤(芳香族リン酸エステル)の具体例としては、例えば、トリアリールホスフェート(トリフェニルホスフェートなどのトリC6-10アリールホスフェートなど)、m−フェニレンビス[ビス(モノ乃至トリアルキルアリール)ホスフェート](例えば、m−フェニレンビス[ビス(2,6−キシリル)ホスフェート]などのビス(モノ又はジC1-4アルキルC6-10アリール)ホスフェートなど)又はその縮合物、ビスアリーレンビス(ビスアリールホスフェート)(例えば、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などのビスC6-10アリーレンビス(ビスC6-10アリールホスフェート)など)又はその縮合物、及びビスアリーレンビス[ビス(モノ乃至トリアルキルアリール)ホスフェート](例えば、ビフェニレンビス(ビス2,6−キシリルホスフェート)などのビスC2-6アリーレンビス[ビス(モノ又はジC1-4アルキルC6-10アリールホスフェート)]など)又はその縮合物などが挙げられる。
前記難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。難燃剤の割合は、樹脂成分100重量部に対して、例えば、5重量部以上であればよく、通常、5〜50重量部(例えば、5〜40重量部)、好ましくは8〜30重量部、さらに好ましくは10〜25重量部程度である。
なお、前記式(2)の化合物は、難燃剤として知られる化合物であるが、本発明では、前記化合物(2)の含量は少ないのが好ましく、例えば、樹脂成分100重量部に対して、化合物(2)の割合は5重量部以下(0〜5重量部)、好ましくは0〜3重量部、さらに好ましくは0〜1重量部程度であり、特に樹脂組成物が前記化合物(2)を含有しないのが好ましい。また、前記難燃剤(芳香族リン酸エステル)100重量部に対する化合物(2)の割合は、例えば、100重量部未満(例えば、0〜80重量部程度)である。前記難燃剤と化合物(2)との割合(重量比)は、前者/後者=100/0〜60/40(例えば、100/0〜70/30)、好ましくは100/0〜90/10、さらに好ましくは100/0〜95/5程度である。なお、前記式(2)において、nはリン酸の縮合度を示し、前記mと同様の範囲から選択できる。
本発明の樹脂組成物は、さらに種々の添加剤、例えば、窒素系難燃剤、難燃助剤、ドリッピング防止剤(フッ素樹脂など)、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属フィラーなど)、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、離型剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤などを含有してもよい。
樹脂組成物は、慣用の方法、例えば、(i)混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)で各成分を予備混合して溶融混練機(一軸又はベント式二軸押出機など)で溶融混練し、ペレット化手段(ペレタイザーなど)でペレット化する方法、(ii)所望の成分のマスターバッチを調製し、必要により他の成分と混合して溶融混練機で溶融混練してペレット化する方法、(iii)各成分を溶融混練機に供給して溶融混練してペレット化する方法、(iv)所定の成分(例えば、前記変性オレフィン系樹脂など)を溶融混練機の途中部で添加して混練する方法などにより調製できる。
本発明の樹脂組成物は、鉛蓄電池ケーシング用成形体を形成するのに有用である。このような成形体には、鉛蓄電池の電槽、電槽の蓋体、又はこれらの部材をカバーするための部材などが含まれる。特に、前記樹脂組成物は、耐硫酸性に優れるため、直接硫酸溶液に接触する部材(電槽及びその蓋体など)などに有用である。
成形体は、慣用の方法、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、真空成形などにより前記樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
本発明の樹脂組成物及び成形体は、耐硫酸性、難燃性及び機械的強度に優れるため、鉛蓄電池ケーシング用途において特に有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜15及び比較例1及び2
表1及び2に示すポリカーボネート系樹脂と、スチレン系樹脂と難燃剤とを、表に示す割合で用いて、二軸押出機(東芝機械(株)製TEX30)によりシリンダー温度250℃で溶融混練し、ペレット状樹脂組成物を調製した。得られたペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製SH−100)により、シリンダー温度250℃及び金型温度60℃の条件で射出成形し、各試験用の試験片を作製した。
なお、実施例及び比較例で用いた成分は下記の通りである。
(A)ポリカーボネート(PC)系樹脂
A-1:ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンE2000、Mv30,000)
A-2: ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンS1000、Mv24,000)
A-3: ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンS2000、Mv22,000)
A-4: ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンS3000、Mv20,000)
A-5: ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンH3000、Mv18,000)
A-6: ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンH4000、Mv15,000)
(B)スチレン系樹脂
HIPS:耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン(株)製、エスチレンXL1)
ABS1:塊状重合により得られたABS樹脂(スチレン60重量%、アクリロニトリル20重量%、ブタジエンゴム20重量%)
ABS2:乳化重合により得られたABS樹脂(スチレン45重量%、アクリロニトリル15重量%、ブタジエンゴム40重量%)
(C)難燃剤
C-1:トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製、TPP)
C-2:m−フェニレンビス[(ビス2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](大八化学工業(株)製、PX200)
C-3:ビスフェノールAビス[ビス(ジフェニルホスフェート)]の縮合物(大八化学工業(株)製、CR741)
C-4:4,4’−ビフェニレンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](大八化学工業(株)製、PX202)
C-5:前記式(2)で表される(ポリ)リン酸エステル(大八化学工業(株)製、SR733S)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物又は成形品について、下記の特性を評価した。
(i)メルトフローレート(MI)
ISO1133に準拠して、220℃、荷重10kgの条件で、評価した(単位:g/10分)。
(ii)引張強さ
ISO527に準拠して評価した(単位:MPa)。
(iii)曲げ強さ及び曲げ弾性率
ISO178に準拠して、曲げ強さ(MPa)及び曲げ弾性率(MPa)を評価した。
(iv)シャルピー衝撃強度
ノッチ付き成形品を用いてISO179/1eAに準拠してシャルピー衝撃強度を測定した(単位:kJ/m2)。
(v)荷重たわみ温度(HDT)
ISO75/Aに準拠して、1.80MPaの条件で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
(vi)UL燃焼性
UL94に準拠して、試験片の厚み1.5mmで、燃焼性を評価した。
(vii)硫酸中の保持時間
20℃で比重1.300になるように調製した硫酸溶液を、促進のため80℃に加温し、この硫酸溶液中に試験片を浸漬した。100時間毎に引張試験(JIS K7113)を実施し、初期の物性の80%を下回る時間を指標として、硫酸から受ける影響を評価した。
結果を表1及び2に示す。
Figure 2006348098
Figure 2006348098

Claims (7)

  1. 少なくともポリカーボネート系樹脂で構成された樹脂成分と、芳香族リン酸エステルで構成された難燃剤とを含む鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物であって、前記難燃剤が下記式(1)で表される芳香族リン酸エステルで構成されており、前記難燃剤の割合が、前記樹脂成分100重量部に対して5〜50重量部である鉛蓄電池ケーシング用樹脂組成物。
    Figure 2006348098
    (式中、Z1はアルキル基R1を有していてもよい芳香族二価基を示し、Z2〜Z5は同一又は異なって、アルキル基R2を有していてもよいアリール基を示す。mは0以上の整数を示し、s及びtは同一又は異なって0〜6の整数を示す。R2及びtはZ2〜Z5により異なっていてもよい。但し、mが1以上の整数であり、sが0であり、Z1がm−フェニレン基であるとき、tのうち少なくとも1つは1以上の整数である)
  2. 樹脂成分が、ポリカーボネート系樹脂(A)、又はポリカーボネート系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とで構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 樹脂成分が、ポリカーボネート系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とで構成されており、ポリカーボネート系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との割合(重量比)が、ポリカーボネート系樹脂(A)/スチレン系樹脂(B)=99.9/0.1〜50/50である請求項1記載の樹脂組成物。
  4. ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量Mvが19,000〜35,000である請求項1記載の樹脂組成物。
  5. 難燃剤が、トリアリールホスフェート、m−フェニレンビス[ビス(モノ乃至トリアルキルアリール)ホスフェート]又はその縮合物、ビスアリーレンビス(ビスアリールホスフェート)又はその縮合物、及びビスアリーレンビス[ビス(モノ乃至トリアルキルアリール)ホスフェート]又はその縮合物から選択された少なくとも一種の芳香族リン酸エステルで構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
  6. 下記式(2)で表される化合物の割合が樹脂成分100重量部に対して5重量部以下である請求項1記載の樹脂組成物。
    Figure 2006348098
    (式中、nは1以上の整数を示す)
  7. 式(2)の化合物を実質的に含有しない請求項6記載の樹脂組成物。
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