JP2006347800A - 光学素子成形用型 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガラス素材をプレス成形して光学素子を製造する光学素子成形用型であって、膜の剥離、型表面の粗さに起因する成形品である光学素子の曇りがなく、ガラス素材が型表面に融着しない光学素子成形用型を提供する。
【解決手段】 光学素子成形用型1は、型母材2と、型母材2の成形面2a上に形成される中間層3と、プレス成形時にガラス素材と接触する表面層4とを備えている。表面層4は、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)などの貴金属などの合金からなる。また、中間層3は、第1層5、第2層6、第3層7の3層で構成されている。第1層5は、炭化タングステン(WC)などからなる。第2層は、クロム(Cr)などの単体からなる。第3層は、窒化クロム(CrN)などの窒化物からなる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、レンズ、プリズム等のリン酸系ガラスからなる光学素子を、ガラス素材のプレス成形により製造するために使用する光学素子成形用型に関する。
ガラス素材からレンズ、プリズム等の光学素子を製造する方法として、成形用型を用いたプレス成形がある。プレス成形による製造方法は、光学研磨法などと比較して、成形後の光学素子の研磨加工を必要としないため、簡単かつ安価に光学素子を製造することができるという利点がある。プレス成形に使用される光学素子成形用型を形成する材料としては、高硬度で、耐熱性、ガラス素材との非融着性及び鏡面加工性に優れた材質が要求される。このため、従来、型母材として、超硬合金、金属、セラミックスが用いられるとともに、その成形面に、耐熱性やガラスとの非融着性に優れた貴金属系の化合物や合金を成膜した光学素子成形用型が提案されている。例えば、超硬合金で形成された型母材にイリジウムとレニウムからなる合金膜をコーティングした光学素子成形用型により、光学素子成形用型の型表面において、酸化物が生成されにくい、またガラス素材との融着を起こしにくい光学素子成形用型が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、貴金属、タングステン、タンタルなどからなり、光学素子成形用型の型表面の酸化と傷付きを防止することができ、ガラス素材との非融着性に優れた保護層が、光学素子成形用型の型表面に形成される。さらに、クロムなどの型母材との密着性に優れ、精密加工を容易に施すことが可能な材料を使用した加工層が保護層と型母材との間に形成される光学素子成形用型が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特公平6−88803号公報 特開平7−172849号公報
しかしながら、これらの従来技術を適用しても、特にリン酸系ガラスからなる光学素子を成形する際には、以下のような問題点が存在する。超硬合金で形成された型母材にイリジウムとレニウムからなる合金膜をコーティングした光学素子成形用型では、型母材とコーティング膜の密着性が不十分で、成形作業を繰り返し行うと、コーティング膜の剥離が発生してしまう問題があった。特に、リン酸系ガラスは貴金属との親和性が高いことから、貴金属である上記合金膜に焼き付きやすく、ガラスの離型時に上記合金膜を剥がしてしまう現象が観察されている。また、貴金属、タングステン、タンタルなどからなる保護層が表面に形成され、保護層と型母材との間に加工層が形成される光学素子成形用型では、成形作業を繰り返し行うと、成形雰囲気中あるいはガラス素材中の酸素が保護層を透過し、加工層を酸化させてしまう。加工層が酸化すると型母材との密着性が保てなくなり、最終的に膜剥離が発生してしまう問題があった。
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ガラス素材をプレス成形して光学素子を製造する光学素子成形用型、特にリン酸系のガラス素材を使用する場合において、繰り返しの成形作業においても、膜の剥離、型表面の粗さに起因する成形品である光学素子の曇りがなく、ガラス素材が型表面に融着しない光学素子成形用型を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、リン酸系のガラス素材をプレス成形して、光学素子を成形するための光学素子成形用型であって、焼結した超硬合金または炭化ケイ素(SiC)からなる型母材と、前記型母材の成形面上に形成され、前記プレス成形の際に前記ガラス素材に接触する表面層とを備え、該表面層は、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)から選択される少なくとも1種類の物質、または、該物質を含む合金もしくは化合物からなることを特徴としている。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、機械的強度の大きい型母材に、上述の物質、または、該物質を含む合金もしくは化合物からなる表面層を形成することで、光学素子成形用型の型表面の耐酸化性、ガラスとの非融着性、傷付きにくさを向上させることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光学素子成形用型において、前記表面層は、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)から選択される2種類以上の物質を含む合金または化合物からなり、該合金または化合物に含まれる前記物質の各々の含有量は、0.5重量%以上99.5重量%以下であることを特徴としている。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、表面層を形成する材質を上述の配合とすることにより、さらに耐酸化性、ガラスとの非融着性、傷付きにくさを向上させることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の光学素子成形用型において、前記型母材と前記表面層との間には中間層が形成され、該中間層は、クロム(Cr)、タングステン(W)、炭素(C)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)またはこれらの元素の窒化物から選択される少なくとも1種類の物質を含む単体または化合物であることを特徴としている。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、表面層と型母材との間に上述の材質の中間層を形成することにより、型母材と表面層の密着性を高めることができる。このため、繰り返しプレス成形に対する耐久性が増し、さらに耐酸化性、ガラスとの非融着性、傷付きにくさを向上させることができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の光学素子成形用型において、前記中間層は、タングステン(W)、炭素(C)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)から選択される少なくとも1種類の物質を含む単体または化合物からなり、前記型母材の成形面上に接触して形成される第1層と、クロム(Cr)またはチタン(Ti)の単体からなり、前記第1層の成形面上に接触して形成される第2層と、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)から選択される少なくとも1種類の元素を含む窒化物からなり、前記第2層の成形面上に接触して形成される第3層とで構成されることを特徴としている。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、中間層を上述の3つの層とすることで、さらに繰り返しプレス成形に対する耐久性が増し、耐酸化性、ガラスとの非融着性、表面の傷付きにくさを向上させて、繰り返し使用に耐えうる光学素子成形用型を実現することができる。
請求項5に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の光学素子成形用型において、前記型母材の前記成形面下には、前記表面層を形成する物質、または、該物質を含む前記合金もしくは化合物に含まれる少なくとも1種類のイオンが注入されたイオン注入層が形成されることを特徴としている。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、型母材の表面層が形成される成形面に、表面層に含まれるイオンが注入され、成形面に近づくに従って、注入されたイオンが高濃度になるイオン注入層が形成される。このため、表面層の密着性を高め、剥離を防止することができる。また、ガラス成形を繰り返し行うことによって発生する型母材表面の不均一な結晶成長に起因する型母材表面の荒れを防ぐことができ、光学鏡面を得ることができる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の光学素子成形用型において、前記型母材の前記成形面下に、前記イオンが注入されたことによって形成される前記イオン注入層の結晶粒の粒径は10μm以下であることを特徴としている。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、イオン注入層の結晶粒の粒径を10μm以下とすることにより、緻密な焼結体を得やすく、光学鏡面を容易に得ることができる。
本願発明によれば、リン酸系のガラス素材とプレス成形時に接触する光学素子成形用型の型表面に表面層として、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)から選択される少なくとも1種類の物質、または、該物質を含む合金もしくは化合物の膜を成膜することで、耐酸化性、ガラスとの非融着性、傷付きにくさを得ることができる。さらに、型母材と表面層の間に中間層を形成することで、表面層と型母材の密着性を高め剥離を防止することができ、繰り返しプレス成形に対応可能な光学素子成形用型を提供することができる。
(第1の実施形態)
図1は、この実施形態の光学素子成形用型1の層構造を表す断面図を示している。図1に示すように、この実施形態の光学素子成形用型1は、炭化タングステン(WC)を主成分とする型母材2と、型母材2の成形面2a上に形成され、3つの層で構成される中間層3と、プレス成形時にガラス素材と接触し、イリジウムと他の元素による合金からなる表面層4とを備えている。中間層3の内、型母材2の成形面2a上に形成される第1層5は、炭化タングステン(WC)からなり、イオンビームスパッタによって成膜される。第1層5の成形面5a上に形成される第2層6は、クロム(Cr)の単体からなり、イオンビームスパッタによって成膜される。また、第2層6の成形面6a上に形成される第3層7は、窒化クロム(CrN)からなる。第3層7は、窒素ガスを流しながら窒化クロム(CrN)をターゲットとする反応スパッタによって、第2層6の成形面6a上に窒化クロム(CrN)層が形成されることによる。なお、ここでいう第3層7を形成する窒化クロム(CrN)層は、CrNと表記しているが、CrNとCrNの混合物である。また、表面層4は、イリジウム(Ir)と他の元素からなる合金ターゲットを使用したイオンビームスパッタによって形成される。表面層4を形成する合金の各元素の濃度は、イリジウム及び他の元素ともに0.5重量%以上99.5重量%以下に設定されている。この実施の形態の光学素子成形用型1及びこれと比較する比較例について、下記に示す実験を行った。
表1にこの実験に使用した光学素子成形用型1の種類、表2に各々の光学素子成形用型1を用いて繰り返しプレス成形した際の実験結果を示す。この実験では、第1の実施形態の光学素子成形用型1において、表面層4の条件を変えて、リン酸系ガラス素材を使用した光学素子成形に供し、不具合が発生するまでの成形回数を比較した。プレス成形時の光学素子成形用型の温度は550℃である。中間層3の膜厚は、第1層5が300nm、第2層6が150nm、第3層7が100nmとした。表面層4は、イリジウム(Ir)とともに合金を形成する元素にレニウム(Re)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)を使用した。これら4種類の元素をイリジウム(Ir)と組み合わせた4種類の合金それぞれについて、イリジウム(Ir)と他の元素の割合が、重量で99.5:0.5、75.0:25.0、50.0:50.0、25.0:75.0、0.5:99.5となる5種類の供試体を用意し、計20種類の供試体を製作した。また、これら計20種類の供試体と比較するために、比較1として、表面層4を形成する合金がイリジウム(Ir)99.7重量%、レニウム(Re)0.3重量%である供試体、比較2として、表面層4を形成する合金がイリジウム(Ir)0.2重量%、レニウム(Re)99.8重量%である供試体の計2種類の比較例を用意した。なお、表1における表層の膜材料の表記は、例えばIr−0.5Reは、イリジウム(Ir)99.5重量%に対して、レニウム(Re)が0.5重量%であることを表す。また、20種類の供試体及び2種類の比較例の表面層の厚さはすべて600nmである。
次に、この実験結果について説明する。表2に示すように、上述の条件の下、実験を行った結果、NO.1からNO.20の20種類すべての供試体については、3000回以上の繰り返しプレス成形を行っても、成形品である光学素子に曇り、あるいはガラス素材の光学素子成形用型への融着は認められなかった。これに対して、比較1においては、約90回の繰り返しプレス成形を行った段階で、光学素子成形用型1の型表面8の粗さが増加し、その粗さが成形品である光学素子に転写して曇りが発生してしまった。成形品の表面形状の測定からは数値上の粗さの増加は確認できなかったが、光学素子成形用型1の型表面8を電子顕微鏡で観察したところ、型母材2である超硬合金の結晶粒と同様の模様が確認できた。また、それぞれの結晶粒内では、微細な凹凸が形成されている部分と、比較的平滑な部分とが存在し、さらに結晶粒界が顕著に目立っていた。曇りの発生した成形品である光学素子の表面も詳細に観察した結果、光学素子成形用型1の型表面8と同様の模様が認められたことから、光学素子成形用型1の型表面8の微細な表面形状の変化が転写されて、成形品である光学素子の曇りになったと考えられる。比較2では、約30回の繰り返し成形を行った段階で、光学素子成形用型1の型表面8へのガラス素材の融着と、成形品である光学素子の曇りが確認された。光学素子成形用型1の型表面8を観察したところ、表面層4、中間層3の剥離が発生していた。さらに、ガラス素材の融着、成形品である光学素子の曇りは、表面層4、中間層3が剥離した部分から発生していることがわかった。光学素子成形用型1の型母材2が露出したことにより、型母材2にガラス素材が融着し、また型母材2の成形面2aが酸化して、表面粗さが増加し、成形品である光学素子の曇りが発生したと考えられる。以上のことから、この実施形態の中間層3の構成において、上述の2つ元素の合金からなる表面層で、2つの元素の割合が少なくとも0.5重量%以上で99.5重量%以下であれば、リン酸系のガラス素材を使用した光学素子の繰り返し成形に耐えうる光学素子成形用型であるといえる。
なお、表面層4を構成する合金の元素として、イリジウム(Ir)と、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)またはロジウム(Rh)との組み合わせをこの実験で挙げたが、これに限らず、イリジウム(Ir)以外の2つ以上の元素を含む合金でも構わない。また、同様の性質を有するオスミウム(Os)、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)でも良い。さらに、表面層4をロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)各々の単体元素で構成した場合も、焼き付きや膜剥離といった不具合は発生しなかった。但し、成形温度が高い場合、表面層4の再結晶の影響により金型表面が荒れ、成形品に曇りが発生するおそれがあるため、表面層4は合金または化合物で構成するのが望ましい。また、型母材2は炭化タングステン(WC)を主成分とする超硬合金からなるとしたが、これに限らず、炭化ケイ素(SiC)からなる材料を使用しても同様の効果が期待できる。
Figure 2006347800
Figure 2006347800
(第2の実施形態)
この実施形態の光学素子成形用型9は、第1の実施形態の光学素子成形用型1と同様の層構造であり、各層を形成する材質及び層厚が異なっている。図1に示すように、この実施形態の光学素子成形用型9の型母材10は、炭化ケイ素(SiC)が主成分であり、型母材10の成形面10a上に中間層11が形成されている。中間層11は、第1層12が、炭化ケイ素(SiC)からなり、CVD法によって成膜して、成形面12aを鏡面研磨して形成される。第2層13は、クロム(Cr)の単体からなり、RFスパッタによって成膜される。第3層14は、窒化クロム(CrN)からなり、窒素ガスを流しながらクロム(Cr)をターゲットとする反応スパッタによって、第2層13の成形面13a上に窒化クロム(CrN)層が形成されることによる。なお、ここでいう第3層14を形成する窒化クロム(CrN)層は、CrNと表記しているが、CrNとCrNの混合物である。また、表面層14は、イリジウム(Ir)50.0重量%とレニウム(Re)50.0重量%からなる合金ターゲットを使用した、RFスパッタによって形成される。この実施の形態の光学素子成形用型9、第1の実施形態の光学素子成形用型1及びこれと比較する比較例について、下記に示す実験を行った。
表3にこの実験に使用した光学素子成形用型9及び光学素子成形用型1の種類、表4に各々の光学素子成形用型9及び光学素子成形用型1を用いて繰り返しプレス成形した際の実験結果を示す。この実験では、第2の実施形態の光学素子成形用型9及び第1の実施形態の光学素子成形用型1において、中間層11及び中間層3の条件を変えて、リン酸系ガラス素材を使用した光学素子成形に供し、不具合が発生するまでの成形回数を比較した。プレス成形時の光学素子成形用型の温度は550℃である。表3に示す、NO.21からNO.28の8種類の供試体が第2の実施形態の光学素子成形用型9であり、NO.29からNO.36の8種類の供試体が第1の実施形態の光学素子成形用型1である。8種類の第2の実施形態の光学素子成形用型9において、中間層11の膜厚を変化させた。第1層12として、膜厚を10000nmと5000nmの2種類、第2層13として、膜厚を100nmと150nmの2種類、第3層14として、膜厚を50nmと100nmの2種類、各々を組み合わせた8種類とした。また、8種類の第1の実施形態の光学素子成形用型1において、中間層3の膜厚を変化させた。第1層5として、膜厚を300nmと100nmの2種類、第2層6として、膜厚を100nmと300nmの2種類、第3層7として、膜厚を50nmと100nmの2種類、各々を組み合わせた8種類とした。また、これら計16種類の供試体と比較するために、比較3として、第2の実施形態の光学素子成形用型9において、中間層11の第1層12を省略し、第2層13の膜厚が150nmで、第3層14の膜厚が100nmである供試体を用意した。また、比較4として、第1の実施形態の光学素子成形用型1において、中間層3の第1層5及び第3層7を省略し、第2層6の膜厚が150nmである供試体を用意した。さらに、比較5として、第1の実施形態の光学素子成形用型1において、中間層3のすべてを省略した供試体を用意した。これら比較用の3種類の供試体を含む19種類の供試体のすべてについて、表面層4は、イリジウム(Ir)50.0重量%とレニウム(Re)50.0重量%からなる合金で形成され、膜厚は600nmに統一されている。
次に、この実験結果について説明する。表4に示すように、上述の条件の下、実験を行った結果、NO.21からNO.36の16種類すべての供試体について、3000回以上の繰り返しプレス成形を行っても、成形品である光学素子に曇り、あるいはガラス素材の光学素子成形用型への融着は認められなかった。これに対して、比較3においては、約140回の繰り返しプレス成形を行った段階で、光学素子成形用型9の型表面8の粗さが増加し、その粗さが成形品である光学素子に転写して曇りが発生してしまった。成形品の表面形状の測定からは数値上の粗さの増加は確認できなかったが、光学素子成形用型9の型表面8を電子顕微鏡で観察したところ、型母材10である炭化ケイ素(SiC)の結晶粒と同様の模様が確認できた。また、それぞれの結晶粒内では、微細な凹凸が形成されている部分と、比較的平滑な部分とが存在し、さらに結晶粒界が顕著に目立っていた。曇りが発生した成形品である光学素子の表面も詳細に観察した結果、光学素子成形用型9の型表面8と同様の模様が認められたことから、光学素子成形用型9の型表面8の微細な表面形状の変化が転写されて、成形品である光学素子の曇りになったと考えられる。比較4においては、約70回の繰り返しプレス成形を行った段階で、光学素子成形用型1の型表面8へのガラス素材の融着が認められた。さらに、成形を繰り返すと成形品である光学素子の破壊(割れ)が発生し、成形作業の継続が不可能になった。この光学素子成形用型1の型表面8を詳細に観察したところ、一部に変色が認められた。元素分析を行った結果、この変色は、中間層3の第2層5のクロムの析出及び析出したクロムの酸化であることがわかった。このクロム及び酸化クロムがガラス素材との融着を起こしたものと考えられる。さらに、比較例5においては、約50回の繰り返し成形を行った段階で、光学素子成形用型1の型表面8へのガラス素材の融着と、成形品である光学素子の曇りが確認された。光学素子成形用型1の型表面8を観察したところ、表面層4、中間層3の剥離が発生していた。さらに、ガラス素材の融着、成形品である光学素子の曇りは、表面層4、中間層3が剥離した部分から発生していることがわかった。光学素子成形用型1の型母材2が露出したことにより、型母材2にガラス素材が融着し、また型母材2の成形面2aが酸化して、表面粗さが増加し、成形品である光学素子の曇りが発生したと考えられる。以上のことから、ある特定の表面層が形成されている光学素子成形用型においては、上述に示すような3層構造である中間層を有することで、表面層と型母材の密着性を保ち、リン酸系のガラス素材を使用した光学素子の繰り返しのプレス成形に耐えうる光学素子成形用型を実現することができる。
なお、中間層11または中間層3を構成するものとして、第1層では炭化ケイ素(SiC)または炭化タングステン(WC)、第2層ではクロム(Cr)、第3層では窒化クロム(CrN)(CrNとCrNとの混合物)としたが、これに限るものではない。例えば、第1層では、タングステン(W)または炭素(C)の単体からなるものとしても良い。また、第2層では、チタン(Ti)の単体からなるものとしても良い。さらに、第3層では、チタン(Ti)またはアルミニウム(Al)を含む窒化物としても良い。
Figure 2006347800
Figure 2006347800
(第3の実施形態)
図2は、この実施形態の光学素子成形用型15の層構造を表す断面図を示している。図2に示すように、この実施形態の光学素子成形用型15は、炭化タングステン(WC)を主成分とする超硬合金である型母材16と、型母材16の成形面16a下にイオン注入によって形成されるイオン注入層17と、成形時にガラス素材と接触し、イリジウム(Ir)とパラジウム(Pd)による合金からなる表面層18とを備えている。より具体的には、イオン注入層17は、表面層18を構成する合金のイリジウム(Ir)イオンを型母材16の成形面16aからイオン注入したものであり、成形面16aから型母材16の深層に行くに従い、イオン濃度が薄くなっている。表面層18は、イリジウム(Ir)50.0重量%とパラジウム(Pd)50.0重量%からなる合金ターゲットを使用した、イオンビームスパッタによって形成される。この実施の形態の光学素子成形用型15及びこれと比較する比較例について、下記に示す実験を行った。
表5にこの実験に使用した光学素子成形用型15の種類、表6に各々の光学素子成形用型15を用いて繰り返しプレス成形した際の実験結果を示す。表5に示すように、この実験では、光学素子成形用型15として、NO.37からNO.39に示す3種類の供試体を製作した。イオン注入層17は、イリジウム(Ir)イオンを注入量1×1015ions/cm、加速電圧100keV、イオン電流50mAの条件で型母材16に注入して、50nmの膜厚に形成したものである。NO.37からNO.39の供試体は、イオン注入層17の結晶粒の粒径がそれぞれ、20μm、10μm、2μmとなっている。また、表面層8は膜厚600nmとした。また、これらの供試体と比較するために、比較6として、イオン注入層17を形成せずに、表面層18のみを形成した供試体を製作した。
次に、この実験結果について説明する。表6に示すように、上述の条件の下、実験を行った結果、NO.37からNO.39の供試体については、3000回以上の繰り返しプレス成形を行っても、成形品である光学素子に曇り、あるいはガラス素材の光学素子成形用型への融着は認められなかった。しかし、比較6においては、約70回の繰り返し成形で、ガラス素材の融着と成形品である光学素子の一部で曇りが確認された。この光学素子成形用型15の型表面19を詳細に観察したところ、表面層18が剥離しており、ガラス素材の融着、成形品である光学素子の曇りは剥離した部分から発生していることがわかった。型母材16が露出したことによって、型母材16とガラス素材とが融着し、また露出した型母材16が酸化して表面粗さが増加したことによって、成形品である光学素子の曇りが発生したと考えられる。また、NO.38、NO.39の供試体については、型表面19を光学鏡面とすることができた。これは、イオン注入層17の結晶粒の粒径が10μm以下であることにより、焼結体が緻密になったことによる。光学鏡面を得るには、結晶粒の粒径が10μm以下であればよいが、粒径が小さければ光学素子成形用型の製造条件の設定が容易になるので好ましい。
なお、表面層18を形成するものとして、イリジウム(Ir)50.0重量%とパラジウム(Pd)50.0重量%の合金を挙げたが、これに限るものではない。第1の実施形態で列挙した2つ以上の元素を含む合金であり、その配合が0.5重量%以上99.5重量%以下であれば、この実施形態の光学素子成形用型15の表面層18として満足するものである。さらに、表面層18を上記列挙された元素単体で構成しても構わない。また、イオン注入層17として、イオン注入するイオンは、表面層18を形成する物質の元素と対応するイオンを注入したものであればよい。
Figure 2006347800
Figure 2006347800
以上、本発明の実施形態について図面、表を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
この発明の第1及び第2の実施形態の光学素子成形用型の層構造を示す断面図である。 この発明の第3の実施形態の光学素子成形用型の層構造を示す断面図である。
符号の説明
1、9、15 光学素子成形用型
2、10、16 型母材
2a、10a、16a 成形面
3、11 中間層
4、18 表面層
5、12 第1層
5a、12a 成形面
6、13 第2層
6a、13a 成形面
7、14 第3層
7a、14a 成形面
8、19 型表面
17 イオン注入層

Claims (6)

  1. リン酸系のガラス素材をプレス成形して、光学素子を成形するための光学素子成形用型であって、
    焼結した超硬合金または炭化ケイ素(SiC)からなる型母材と、
    前記型母材の成形面上に形成され、前記プレス成形の際に前記ガラス素材に接触する表面層とを備え、
    該表面層は、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)から選択される少なくとも1種類の物質、または、該物質を含む合金もしくは化合物からなることを特徴とする光学素子成形用型。
  2. 前記表面層は、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)から選択される2種類以上の物質を含む合金または化合物からなり、該合金または化合物に含まれる前記物質の各々の含有量は、0.5重量%以上99.5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子成形用型。
  3. 前記型母材と前記表面層との間には中間層が形成され、該中間層は、クロム(Cr)、タングステン(W)、炭素(C)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)またはこれらの元素の窒化物から選択される少なくとも1種類の物質を含む単体または化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子成形用型。
  4. 前記中間層は、タングステン(W)、炭素(C)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)から選択される少なくとも1種類の物質を含む単体または化合物からなり、前記型母材の成形面上に接触して形成される第1層と、
    クロム(Cr)またはチタン(Ti)の単体からなり、前記第1層の成形面上に接触して形成される第2層と、
    クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)から選択される少なくとも1種類の元素を含む窒化物からなり、前記第2層の成形面上に接触して形成される第3層とで構成されることを特徴とする請求項3に記載の光学素子成形用型。
  5. 前記型母材の前記成形面下には、前記表面層を形成する物質、または、該物質を含む前記合金もしくは化合物に含まれる少なくとも1種類のイオンが注入されたイオン注入層が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子成形用型。
  6. 前記型母材の前記成形面下に、前記イオンが注入されたことによって形成される前記イオン注入層の結晶粒の粒径は10μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子成形用型。

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