まず、本発明をハイブリッド車両に適用した実施例1について、ハイブリッド車両の駆動系の構成を説明する。
図1は実施例1のハイブリッド車両の駆動系を示す全体システム図である。実施例1のハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1(ジェネレータ)と、第2モータジェネレータMG2(モータジェネレータ)と、出力軸OUT(出力部材)と、これらの入出力要素E,MG1,MG2,OUTが連結される差動装置(第1遊星歯車PG1、第2遊星歯車PG2、第3遊星歯車PG3)と、選択された走行モードに応じて後述する油圧制御装置5からの制御油圧により締結・解放が制御される摩擦締結要素(ローブレーキLB、ハイクラッチHC、ハイローブレーキHLB)と、エンジンクラッチEC(第1クラッチ)と、モータジェネレータクラッチMGC(第2クラッチ)と、シリーズクラッチSC(第3クラッチ)と、を備えている。
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度などが制御される。
前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、永久磁石を埋設したロータと、ステータコイルが巻き付けられたステータと、を有する同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流をそれぞれのステータコイルに印加することにより独立に制御される。
前記差動装置としての第1遊星歯車PG1と第2遊星歯車PG2と第3遊星歯車PG3は、何れも2自由度3要素のシングルピニオン型遊星歯車である。前記第1遊星歯車PG1は、第1サンギヤS1と、第1ピニオンP1を支持する第1ピニオンキャリアPC1と、第1ピニオンP1に噛み合う第1リングギヤR1と、によって構成されている。前記第2遊星歯車PG2は、第2サンギヤS2と、第2ピニオンP2を支持する第2ピニオンキャリアPC2と、第2ピニオンP2に噛み合う第2リングギヤR2と、によって構成されている。前記第3遊星歯車PG3は、第3サンギヤS3と、第3ピニオンP3を支持する第3ピニオンキャリアPC3と、第3ピニオンP3に噛み合う第3リングギヤR3と、によって構成されている。
前記第1サンギヤS1と前記第2サンギヤS2とは第1回転メンバM1により直結され、前記第1リングギヤR1と第3サンギヤS3とは第2回転メンバM2により直結され、前記第2ピニオンキャリアPC2と前記第3リングギヤR3とは第3回転メンバM3により直結される。したがって、3組の遊星歯車PG1,PG2,PG3は、第1回転メンバM1と第2回転メンバM2と第3回転メンバM3と第1ピニオンキャリアPC1と第2リングギヤR2と第3ピニオンキャリアPC3との6つの回転要素を有する。
前記差動装置の6つの回転要素に対する動力源E,MG1,MG2と出力軸OUTと各係合要素LB,HC,HLB,EC,SC,MGCの連結関係について説明する。
前記第1回転メンバM1(S1,S2)には、第2モータジェネレータMG2が連結されている。
前記第2回転メンバM2(R1,R3)には、入出力要素の何れにも連結されていない。
前記第3回転メンバM3(PC2,R3)には、エンジンクラッチECと第1オイルポンプOP1を介してエンジンEが連結されている。
前記第1ピニオンキャリアPC1には、ハイクラッチHCを介して第2モータジェネレータMG2が連結されている。また、ローブレーキLBを介して変速機ケースTCに連結されている。
前記第2リングギヤR2には、モータジェネレータクラッチMGCを介して第1モータジェネレータMG1が連結されている。また、ハイローブレーキHLBを介して変速機ケースTCに連結されている。
前記第3ピニオンキャリアPC3には、出力軸OUTが連結されている。なお、出力軸OUTからは、図外のプロペラシャフトやディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右の駆動輪に駆動力が伝達される。
なお、前記第1モータジェネレータMG1とは、シリーズクラッチSCを介して連結されている。
上記連結関係により、図2に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(R2)、エンジンE(PC2,R3)、出力軸OUT(PC3)、第2モータジェネレータMG2(S1,S2)の順に配列され、遊星歯車列の動的な動作を簡易的に表せる剛体レバーモデル(第1遊星歯車PG1のレバー(1)、第2遊星歯車PG2のレバー(2)、第3遊星歯車PG3のレバー(3))を導入することができる。ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸にリングギヤ、キャリア、サンギヤ等の各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤとリングギヤの歯数比に基づく共線図レバー比(α、β、δ)になるように配置したものである。
前記ローブレーキLBは、油圧により締結される多板摩擦ブレーキであり、図4の共線図上において、第2モータジェネレータMG2の回転速度軸より外側位置に配置され、図2及び図3の共線図に示すように、締結によりロー側変速比を分担する「ローギヤ固定モード」と「ロー側無段変速モード」を実現する。
前記ハイクラッチHCは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、第2モータジェネレータMG2の回転速度軸と一致する位置に配置され、図2及び図3の共線図に示すように、締結によりハイ側変速比を分担する「2速固定モード」と「ハイ側無段変速モード」と「ハイギヤ固定モード」を実現する。
前記ハイローブレーキHLBは、油圧により締結される多板摩擦ブレーキであり、図4の共線図上において、第1モータジェネレータMG1の回転速度軸と一致する位置に配置され、図2及び図3の共線図に示すように、ローブレーキLBと共に締結することにより変速比をアンダードライブ側の「ローギヤ固定モード」とし、ハイクラッチHCと共に締結することにより変速比をオーバードライブ側の「ハイギヤ固定モード」とする。
前記エンジンクラッチECは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、エンジンEとの回転速度軸と一致する位置に配置され、締結によりエンジンEの回転とトルクを、エンジン入力回転要素である第3回転メンバM3(PC2,R3)に入力する。
前記シリーズクラッチSCは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、エンジンEと第1モータジェネレータMG1とを連結する位置に配置され、締結によりエンジンEと第1モータジェネレータMG1とを連結する。
前記モータジェネレータクラッチMGCは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、第1モータジェネレータMG1と第2リングギヤR2を連結する位置に配置され、第1モータジェネレータMG1と第2リングギヤR2との締結解除を行う。
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、高電圧バッテリ4と、油圧制御装置5と、統合コントローラ6と、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、第3リングギヤ回転数センサ12と、昇圧DC/DCコンバータ13と、から構成されている。
前記エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
前記モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10、11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2からは、高電圧バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報が統合コントローラ6に対して出力される。
前記インバータ3は、前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2との各ステータコイルに接続され、モータコントローラ2からの指令により独立した3相交流を作り出す。このインバータ3には、昇圧DC/DCコンバータ13を介して力行時に放電し回生時に充電する高電圧バッテリ4が接続されている。尚、昇圧DC/DCコンバータ13の採用により、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2に対し高電圧で電力を供給することが可能となり、少ない電流での電力供給を可能とし、高効率化を図っている。
前記油圧制御装置5は、両オイルポンプOP1,OP2の少なくとも一方からの油圧供給を受け、統合コントローラ6からの油圧指令に基づいて、ローブレーキLBと、ハイクラッチHCと、ハイローブレーキHLBと、エンジンクラッチECと、シリーズクラッチSCと、モータジェネレータクラッチMGCの締結油圧制御及び解放油圧制御を行う。この締結油圧制御及び解放油圧制御には、滑り締結制御や滑り解放制御による半クラッチ制御も含む。
ABS/TCSコントローラ20は、車輪速センサ18から4輪各輪の車輪速を入力し、ブレーキユニット17及び統合コントローラ6に対し制御信号を出力する。ABS/TCSコントローラ20には、疑似車体速を演算する疑似車体速演算部と、疑似車体速と各車輪速とを比較し、車輪のスリップ状態を検出するスリップ状態検出部と、ABS制御部と、TCS制御部を有する。
ABS制御部では、運転者のブレーキペダル操作により車輪と路面との間にスリップ状態が検出されたとき、ブレーキユニット17に設けられた増減圧バルブを開閉制御し、ホイルシリンダ内のブレーキ液圧を制御することで所望のスリップ状態を達成するABS制御部を有する。尚、ブレーキ液の油圧により制動力を得る場合について説明したが、モータ駆動によりブレーキパッドの位置制御を行うことで制動力を発生する電動式ブレーキを採用しても良く、特に限定しない。
TCS制御部では、運転者のアクセルペダル操作により車輪と路面との間にスリップ状態が検出されたとき、統合コントローラ6及びエンジンコントローラ1を介してエンジンEのトルクダウン制御を実行し、所望のスリップ状態を達成するTCS制御部を有する。尚、トルクダウン制御としては、エンジンEの出力トルクを制御する例を示したが、エンジンクラッチECの締結力制御により入力されるトルクを制限しても良いし、各輪に設けられたブレーキキャリパによって制動力を発生させ、所望のスリップ状態を達成するようにしてもよく、特に限定しない。
前記統合コントローラ6は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APと、車速センサ8からの車速VSPと、エンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neと、第1モータジェネレータ回転数センサ10からの第1モータジェネレータ回転数N1と、第2モータジェネレータ回転数センサ11からの第2モータジェネレータ回転数N2と、第3リングギヤ回転数センサ12からのエンジン入力回転速度ωinと、ABS/TCSコントローラ16からのABS制御情報、TCS制御情報等の情報を入力し、所定の演算処理を行う。そして、エンジンコントローラ1、モータコントローラ2、油圧制御装置5に対し演算処理結果にしたがって制御指令を出力する。
なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、統合コントローラ6とモータコントローラ2、及び統合コントローラ6とABS/TCSコントローラ20とは、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線14,15,16により接続されている。
次に、ハイブリッド車両の走行モードについて説明する。
走行モードとしては、ローギヤ固定モード(以下、「Lowモード」という。)と、ロー側無段変速モード(以下、「Low-iVTモード」という。)と、2速固定モード(以下、「2ndモード」という。)と、ハイ側無段変速モード(以下、「High-iVTモード」という。)と、ハイギヤ固定モード(以下、「Highモード」という。)と、の5つの走行モードを有する。
前記5つの走行モードについては、エンジンEを用いないで両モータージェネレータMG1,MG2のみで走行する電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、エンジンEと両モータージェネレータMG1,MG2を用いて走行するハイブリッドモード(以下、「HEVモード」という。)とに分けられる。
よって、図2(EVモード関連の5つの走行モード)及び図3(HEVモード関連の5つの走行モード)に示すように、「EVモード」と「HEVモード」とを合わせると「10の走行モード」が実現されることになる。
尚、Low-iVTモード,High-iVTモードを自由変速比モードと定義し、Lowモード,2ndモード,Highモードを固定変速比モードと定義する。
ここで、図2(a)は「EV-Lowモード」の共線図、図2(b)は「EV-Low-iVTモード」の共線図、図2(c)は「EV-2ndモード」の共線図、図2(d)は「EV-High-iVTモード」の共線図、図2(e)は「EV-Highモード」の共線図である。また、図3(a)は「HEV-Lowモード」の共線図、図3(b)は「HEV-Low-iVTモード」の共線図、図3(c)は「HEV-2ndモード」の共線図、図3(d)は「HEV-High-iVTモード」の共線図、図3(e)は「HEV-Highモード」の共線図である。
前記「Lowモード」は、図2(a)及び図3(a)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結し、ハイクラッチHCを解放し、ハイローブレーキHLBを締結し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるローギヤ固定モードである。
前記「Low-iVTモード」は、図2(b)及び図3(b)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結し、ハイクラッチHCを解放し、ハイローブレーキHLBを解放し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるロー側無段変速モードである。
前記「2ndモード」は、図2(c)及び図3(c)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結し、ハイクラッチHCを締結し、ハイローブレーキHLBを解放し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られる2速固定モードである。
前記「High-iVTモード」は、図2(d)及び図3(d)の共線図に示すように、ローブレーキLBを解放し、ハイクラッチHCを締結し、ハイローブレーキHLBを解放し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるハイ側無段変速モードである。
前記「Highモード」は、図2(e)及び図3(e)の共線図に示すように、ローブレーキLBを解放し、ハイクラッチHCを締結し、ハイローブレーキHLBを締結し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるハイギヤ固定モードである。
そして、前記「10の走行モード」のモード遷移制御は、統合コントローラ6により行われる。すなわち、統合コントローラ6には、要求駆動力Fdrv(アクセル開度APにより求められる。)と車速VSPとバッテリS.O.Cによる三次元空間に、例えば、図5に示すような前記「10の走行モード」を割り振った走行モードマップが予め設定されていて、車両走行時等においては、要求駆動力Fdrvと車速VSPとバッテリS.O.Cの各検出値により走行モードマップが検索され、要求駆動力Fdrvと車速VSPにより決まる車両動作点やバッテリ充電量に応じた最適な走行モードが選択される。なお、図5は三次元走行モードマップをバッテリS.O.Cが充分な容量域のある値で切り取ることにより、要求駆動力Fdrvと車速VSPとの二次元によりあらわした走行モードマップの一例である。
さらに、シリーズクラッチSCとモータジェネレータクラッチMGCを採用したことに伴い、上記「10の走行モード」に加え、図6に示すように、発進時等で選択されるシリーズローギヤ固定モード(以下、「S-Lowモード」という。)が追加される。この「S-Lowモード」は、ローブレーキLBとハイローブレーキHLBを締結し、エンジンクラッチECとハイクラッチHCとモータジェネレータクラッチMGCを解放し、シリーズクラッチSCを締結することで得られる。
つまり、上記「10の走行モード」はパラレル型ハイブリッド車両としての走行モードであるが、シリーズローギヤ固定モードである「S-Lowモード」については、エンジンEと第1モータジェネレータMG1とを共線図から切り離し、エンジンEにより第1モータジェネレータMG1を駆動して発電し、該第1モータジェネレータMG1による発電電力を受け入れて充電する高電圧バッテリ4と、該高電圧バッテリ4の充電電力を用いて第2モータジェネレータMG2を駆動するというシリーズ型ハイブリッド車両としての走行モードを達成する。つまり、実施例1は、パラレルにシリーズを組み合わせたハイブリッド車両として構成される。
前記走行モードマップの選択により、「EVモード」と「HEVモード」との間においてモード遷移を行う場合には、図6に示すように、エンジンEの始動・停止と、エンジンクラッチECを締結・解放する制御が実行される。また、「EVモード」の5つのモード間でのモード遷移や「HEVモード」の5つのモード間でのモード遷移を行う場合には、図6に示すON/OFF作動表にしたがって行われる。
これらのモード遷移制御のうち、例えば、エンジンEの始動・停止とクラッチやブレーキの締結・解放が同時に必要な場合や、複数のクラッチやブレーキの締結・解放が必要な場合や、エンジンEの始動・停止またはクラッチやブレーキの締結・解放に先行してモータジェネレータ回転数制御が必要な場合等においては、予め決められた手順にしたがったシーケンス制御により行われる。
(自由変速比モードの目標変速比制御中にスリップ状態となり、目標エンジン回転数制御への切り換える処理について)
次に、自由変速比モードの目標変速比制御中にスリップ状態となり、目標エンジン回転数制御へ切り換える際の処理内容を図7及び図8のフローチャートに基づいて説明する。
ステップ101では、自由変速比モードかどうかを判断し、自由変速比モードのときはステップ102へ進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
〔ABS制御作動時処理〕
ステップ102では、ABS/TCSコントローラ20からの情報に基づいて、ABS制御が作動中かどうかを判断し、作動中のときはステップ103へ進み、それ以外のときはステップ201へ進む。
ステップ103では、車体速と車輪速を演算する。尚、この車体速と車輪速の演算は、ABS/TCSコントローラ20において演算する疑似車体速、及び各輪の車輪速の演算結果を取得しても良いし、統合コントローラ6において、各輪の車輪速データに基づいて演算しても良く、特に限定しない。尚、疑似車体速の演算とは、具体的には直進時であれば各輪の最も速い車輪速を選択するセレクトハイ値を用いても良いし、車体減速度等に基づいて補正した値を用いても良いし、コーナリング時等では旋回外輪側の値を用いても良いし、各輪の平均車輪速を用いても良く、特に限定しない。
ステップ104では、現在のエンジン回転数をエンジンコントローラ1から取得する。
〔ユニット回転数条件判断〕
ステップ105では、エンジン回転数がユニット回転数条件下限回転数よりも大きいかどうかを判断し、大きいときはユニット回転数条件を満たしていると判断してステップ107へ進み、それ以外のときはユニット回転数条件を満たしていないと判断してステップ106へ進む。
尚、ユニット回転数条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、各回転要素(第2回転メンバM2等)の回転数が、過回転により潤滑が不十分になる虞や、遠心力により変形等が所定量以上となる虞を回避可能な下限回転数(逆回転側への制限値)を表す。
ステップ106では、目標エンジン回転数をユニット回転数条件下限回転数に相当する値に設定する。
ステップ107では、エンジン回転数がユニット回転数条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ109へ進み、条件を満たしていないときはステップ108へ進む。
尚、ユニット回転数条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、各回転要素(第2回転メンバM2等)の回転数が、過回転により潤滑が不十分になる虞や、遠心力により変形等が所定量以上となる虞を回避可能な上限回転数を表す。
ステップ108では、目標エンジン回転数をユニット回転数条件上限回転数に相当する値に設定する。
〔モータ回転数条件判断〕
ステップ109では、エンジン回転数がモータ回転数条件下限回転数以上かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ111に進み、それ以外のときはステップ110へ進む。
尚、モータ回転数条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数が、低回転高トルク状態により過電流が流れる状況を回避するためにモータトルクを制限する制御が開始される回転数よりも若干高めの下限回転数を表す。
ステップ110では、目標エンジン回転数をモータ回転数条件下限回転数に相当する値に設定する。
ステップ111では、エンジン回転数がモータ回転数条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ113へ進み、それ以外のときはステップ112へ進む。
尚、モータ回転数条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数が過回転となり、モータトルクが十分に出力されない回転数よりも若干低めの上限回転数を表す。
ステップ112では、目標エンジン回転数をモータ回転数条件上限回転数に相当する値に設定する。
〔エンジン回転数条件判断〕
ステップ113では、エンジン回転数がエンジン回転数条件下限回転数以上かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ115へ進み、それ以外のときはステップ114へ進む。
尚、エンジン回転数条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったとき(駆動輪がロック,アンロックを繰り返す状態)に、剛体レバーのトルクバランスが崩れ、エンジン回転数を押し下げることでエンジンストールしてしまう状況を回避可能な下限回転数を表す。
ステップ114では、目標エンジン回転数をエンジン回転数条件下限回転数に相当する値に設定する。
ステップ115では、エンジン回転数がエンジン回転数条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ117へ進み、それ以外のときはステップ116へ進む。
尚、エンジン回転数条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったとき(駆動輪がロック,アンロックを繰り返す状態)に、剛体レバーのトルクバランスが崩れ、エンジン回転数が吹け上がりレブリミットを超えてしまう状況を回避可能な上限回転数を表す。
ステップ116では、目標エンジン回転数をエンジン回転数条件上限回転数に相当する値に設定する。
〔入出力電力条件判断〕
ステップ117では、エンジン回転数が各モータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力条件下限回転数以上かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ119へ進み、それ以外のときはステップ118へ進む。
尚、入出力条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数の変化により発生する電力変化(回転数が減少側の場合は発電)が、高電圧バッテリ4や昇圧DC/DCコンバータ13等に過大な負荷を与えない下限回転数を表す。
ステップ118では、目標エンジン回転数を入出力電力条件下限回転数に設定する。
ステップ119では、エンジン回転数が入出力電力条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときは本制御フローを終了し、それ以外のときはステップ120へ進む。
尚、入出力条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数の変化により発生する電力変化(回転数が増加側の場合は放電)が、高電圧バッテリ4や昇圧DC/DCコンバータ13等に過大な負荷を与えない上限回転数を表す。
ステップ120では、目標エンジン回転数を入出力条件上限回転数に設定する。
〔TCS制御作動時処理〕
ステップ201では、ABS/TCSコントローラ20からの情報に基づいて、TCS制御が作動中かどうかを判断し、作動中のときはステップ202へ進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップ202では、車体速と車輪速を演算する。尚、この車体速と車輪速の演算は、ステップ103の説明を参照されたい。
ステップ203では、現在のエンジン回転数をエンジンコントローラ1から取得する。
〔ユニット回転数条件判断〕
ステップ204では、エンジン回転数がユニット回転数条件下限回転数よりも大きいかどうかを判断し、大きいときはユニット回転数条件を満たしていると判断してステップ206へ進み、それ以外のときはユニット回転数条件を満たしていないと判断してステップ205へ進む。
尚、ユニット回転数条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、各回転要素(第2回転メンバM2等)の回転数が、過回転により潤滑が不十分になる虞や、遠心力により変形等が所定量以上となる虞を回避可能な下限回転数(逆回転側への制限値)を表す。
ステップ205では、目標エンジン回転数をユニット回転数条件下限回転数に相当する値に設定する。
ステップ206では、エンジン回転数がユニット回転数条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ208へ進み、条件を満たしていないときはステップ207へ進む。
尚、ユニット回転数条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、各回転要素(第2回転メンバM2等)の回転数が、過回転により潤滑が不十分になる虞や、遠心力により変形等が所定量以上となる虞を回避可能な上限回転数を表す。
ステップ207では、目標エンジン回転数をユニット回転数条件上限回転数に相当する値に設定する。
〔モータ回転数条件判断〕
ステップ208では、エンジン回転数がモータ回転数条件下限回転数以上かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ210に進み、それ以外のときはステップ209へ進む。
尚、モータ回転数条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数が、低回転高トルク状態により過電流が流れる状況を回避するためにモータトルクを制限する制御が開始される回転数よりも若干高めの下限回転数を表す。
ステップ209では、目標エンジン回転数をモータ回転数条件下限回転数に相当する値に設定する。
ステップ210では、エンジン回転数がモータ回転数条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ212へ進み、それ以外のときはステップ211へ進む。
尚、モータ回転数条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数が過回転となり、モータトルクが十分に出力されない回転数よりも若干低めの上限回転数を表す。
ステップ211では、目標エンジン回転数をモータ回転数条件上限回転数に相当する値に設定する。
〔エンジン回転数条件判断〕
ステップ212では、エンジン回転数がエンジン回転数条件下限回転数以上かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ214へ進み、それ以外のときはステップ213へ進む。
尚、エンジン回転数条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったとき(駆動輪がロック,アンロックを繰り返す状態)に、剛体レバーのトルクバランスが崩れ、エンジン回転数を押し下げることでエンジンストールしてしまう状況を回避可能な下限回転数を表す。
ステップ213では、目標エンジン回転数をエンジン回転数条件下限回転数に相当する値に設定する。
ステップ214では、エンジン回転数がエンジン回転数条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ216へ進み、それ以外のときはステップ215へ進む。
尚、エンジン回転数条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったとき(駆動輪がロック,アンロックを繰り返す状態)に、剛体レバーのトルクバランスが崩れ、エンジン回転数が吹け上がりレブリミットを超えてしまう状況を回避可能な上限回転数を表す。
ステップ215では、目標エンジン回転数をエンジン回転数条件上限回転数に相当する値に設定する。
〔入出力電力条件判断〕
ステップ216では、エンジン回転数が各モータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力条件下限回転数以上かどうかを判断し、条件を満たしたときはステップ218へ進み、それ以外のときはステップ217へ進む。
尚、入出力条件下限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数の変化により発生する電力変化(回転数が減少側の場合は発電)が、高電圧バッテリ4や昇圧DC/DCコンバータ13等に過大な負荷を与えない下限回転数を表す。
ステップ217では、目標エンジン回転数を入出力電力条件下限回転数に設定する。
ステップ218では、エンジン回転数が入出力電力条件上限回転数以下かどうかを判断し、条件を満たしたときは本制御フローを終了し、それ以外のときはステップ219へ進む。
尚、入出力条件上限回転数とは、エンジン回転数が現在の回転数を維持した状態で出力軸回転数が0に成ったときに、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2等の回転数の変化により発生する電力変化(回転数が増加側の場合は放電)が、高電圧バッテリ4や昇圧DC/DCコンバータ13等に過大な負荷を与えない上限回転数を表す。
ステップ219では、目標エンジン回転数を入出力条件上限回転数に設定する。
次に、上記フローチャートの作用について、図8〜図23に示すタイムチャートに基づいて説明する。尚、上記フローチャートの作用効果の理解を助けるため、比較例を付し、この比較例との対比に基づいて説明する。
(Low-iVTモードにおいてABS制御が行われ、目標変速比制御を継続した場合)
図9はLow-iVTモード走行中にABS制御が行われた場合に目標変速比制御を継続した場合(以下、比較例1とする)、及び目標回転数制御に切り換えた場合(以下、本願発明とする)の共線図の変化を表す図、図10は比較例1の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図10に示す(1)〜(10)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速でLow-iVTモード走行中は、図9(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のブレーキペダル操作により駆動輪がロック傾向となると、フェーズ(3)に示すように、車輪速が一気に低下し始め、すなわち出力軸回転数が低下し始める。同時にフェーズ(4),フェーズ(5)及びフェーズ(6)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しているため、同様に回転数が一気に低下する。
目標変速比制御が行われている場合、走行状態に応じて設定された変速比を維持するように各動力源が制御されるため、駆動輪がロックすると、図8(b)の共線図に示すように、全ての回転数が押し下げられることとなり、この状態で車両が停止すると、エンジン回転数が零に押し下げられた状態であるため、エンジンストールしてしまう。
また、ロックを回避するためにブレーキユニット17によりホイルシリンダ圧の減圧が行われるとグリップ傾向となり、図8(b)点線の共線図に示すように、第2モータジェネレータMG2の回転数が大幅に増大(変化量大)する。
このとき、フェーズ(7)及びフェーズ(8)に示すように、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の回転数の急変により高電圧バッテリ4の入出力電力も急変し、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が作用する。また、ABS制御が行われると、駆動輪は数十ミリsecでロック、アンロックを繰り返すため、入出力電力もそれに応じて急変を繰り返し、フェーズ(8)において、フェールしてしまう虞がある。
昇圧DC/DCコンバータ13がフェールに落ちると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による制動力は使用できなくなるため、フェーズ(9)及びフェーズ(10)に示すように車速の低下が緩慢となり、ひいては制動距離の増大を招く。
(Low-iVTモードにおいてABS制御が行われ、目標エンジン回転数制御に切り換えた場合)
図11はLow-iVTモード走行中にABS制御が行われた場合に目標エンジン回転数制御に切り換えた場合の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図11に示す(1)〜(10)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速でLow-iVTモード走行中は、図9(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のブレーキペダル操作により駆動輪がロック傾向となると、フェーズ(3)に示すように、車輪速が低下し始め、すなわち出力軸回転数が低下し始める。そこで、フェーズ(4)において、目標変速比制御から目標エンジン回転数制御に切り換える(図11のエンジン回転数のタイムチャートにおける点線が目標エンジン回転数に相当する)。
すると、図9(c)の共線図に示すように、出力軸回転数が減少し、エンジン回転数を押し下げようとしても、目標エンジン回転数を下回ると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の制御によって変速比は変更されるものの、エンジン回転数の変動を抑制することとなる。また、目標エンジン回転数は、ユニット回転数条件、モータ回転数条件、エンジン回転数条件、入出力電力条件を満たす値に設定されるため、フェーズ(8)に示すように、出力軸回転数が変動したとしても、入出力電力は、所定の範囲内で徐々に変化するため、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が掛かることもない。
また、昇圧DC/DCコンバータ13は正常に使用できるため、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による制動力を使用することが可能となり、フェーズ(9)に示すように素早く車速を低下させることが可能となり、ひいては制動距離の短縮を図ることができる。
尚、ABS制御が終了したときは、終了後所定時間経過後までは自由変速比モードから固定変速比モードへのモード遷移を禁止しておく。これにより、確実に駆動輪の回転数が安定した状態で固定変速比モードへ遷移することができる。
(Low-iVTモードにおいてTCS制御が行われ、目標変速比制御を継続した場合)
図12はLow-iVTモード走行中にTCS制御が行われた場合に目標変速比制御を継続した場合(以下、比較例2とする)、及び目標回転数制御に切り換えた場合(以下、本願発明とする)の共線図の変化を表す図、図13は比較例2の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図13に示す(1)〜(10)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速でLow-iVTモード走行中は、図12(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のアクセルペダル操作により駆動力が増大し、路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。同時にフェーズ(4),フェーズ(5),フェーズ(6)及びフェーズ(7)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しており、目標変速比制御が行われているため、同様に回転数が上昇する。
運転者のアクセルペダル操作の踏み込み等により駆動輪がスリップ状態となると、TCS制御によりエンジントルクダウン制御が実行される。これにより、駆動輪へ出力されるトルクが低下すると、駆動輪はグリップを回復し、フェーズ(8)に示すように、出力軸回転数は一気に低下する。これに伴い、変速比を維持しているため、フェーズ(9),フェーズ(10),フェーズ(11)に示すように、エンジン回転数,第1モータジェネレータ回転数及び第2モータジェネレータ回転数も一気に低下し、フェーズ(12)及びフェーズ(13)に示すように、入出力電力もオーバーシュートし、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が作用する。
(Low-iVTモードにおいてTCS制御が行われ、目標エンジン回転数制御に切り換えた場合)
図14はLow-iVTモード走行中にTCS制御が行われた場合に目標エンジン回転数制御に切り換えた場合の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図14に示す(1)〜(12)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速でLow-iVTモード走行中は、図12(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のアクセルペダル操作により駆動力が増大し、路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。このとき、TCS制御が開始されると共に目標変速比制御から目標エンジン回転数制御に切り換えられる。
すると、図12(c)の共線図に示すように、出力軸回転数が増大し、エンジン回転数を押し上げようとしても、目標エンジン回転数を上回ると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の制御によって変速比は変更されるものの、エンジン回転数の変動を抑制することとなる。これにより、フェーズ(4),フェーズ(5),フェーズ(6)及びフェーズ(7)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しているものの、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるように第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2が制御されるため、小さな回転数変動となる。
また、目標エンジン回転数は、ユニット回転数条件、モータ回転数条件、エンジン回転数条件、入出力電力条件を満たす値に設定されるため、フェーズ(8)に示すように、トルクダウン制御により駆動輪のグリップが回復することにより出力軸回転数が変動したとしても、フェーズ(9),フェーズ(10)及びフェーズ(11)に示すように、小さな回転数変動となる。よって、フェーズ(12)に示すように、入出力電力は、所定の範囲内で徐々に変化するため、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が掛かることもない。
また、昇圧DC/DCコンバータ13は正常に使用できるため、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による駆動力を使用することが可能となり、エンジントルクダウン制御のみでなく、各モータジェネレータによるトルクダウン制御も実行することが可能となり、駆動輪のスリップを効率よく抑制することができる。
尚、TCS制御が終了したときは、終了後所定時間経過後までは自由変速比モードから固定変速比モードへのモード遷移を禁止しておく。これにより、確実に駆動輪の回転数が安定した状態で固定変速比モードへ遷移することができる。
以上説明したように、実施例1の車両の制御装置にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)自由変速比モードで走行中に、スリップ状態が検出されたときは、目標変速比制御から目標回転数制御に切り換えることとした。すなわち、スリップ状態を解消すべくABS制御やTCS制御が作動し、駆動輪の回転数が変動したとしても、結果的に変速比を適宜変更することが可能となり、エンジン回転数,第1及び/又は第2モータジェネレータの回転数変動を抑制することができる。また、モータジェネレータの不測の回転変動を抑制することが可能となり、昇圧DC/DCコンバータ13等の耐久性の向上を図ることができる。
(2)車輪速センサ18と、車両の実車体速である疑似車体速を演算する疑似車体速演算部を設け、目標エンジン回転数を、疑似車体速と車輪速に応じて設定した。よって、駆動輪の回転数変動領域を把握することが可能となり、確実に回転変動を抑制することができる。
(3)疑似車体速と車輪速との差に応じて目標回転数を設定した。よって、スリップ状態に応じた目標回転数を設定することができる。
(4)車体速により決定される出力軸回転数と、車輪速により決定される出力軸回転数のうち、どちらの回転数に変化したとしても、回転要素が所定の範囲内の回転数となる目標回転数を設定した。よって、ABS制御やTCS制御により出力軸回転数が変動したとしても、各回転要素の変動を抑制することができる。
(5)車体速により決定される出力軸回転数と、車輪速により決定される出力軸回転数のうち、どちらの回転数に変化したとしても、高電圧バッテリ4による入出力電力が所定の範囲内となる目標回転数を設定した。よって、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷がかかることを回避することが可能となり、確実に耐久性の向上を図ることができる。
(6)目標回転数を、エンジン回転数とした。よって、例えばABS制御により駆動輪がロックし、出力軸回転数が0になったとしても、エンジン回転数を所定回転数とすることが可能となり、エンスト等を防止することができる。
(7)目標回転数を、第1及び/又は第2モータジェネレータ回転数とした。よって、モータジェネレータの高効率な駆動領域を使用することが可能となり、燃費の向上を図ることができる。
(8)目標変速比制御から目標回転数制御に切り換えた後、ABSもしくはTCS制御が終了してから所定時間経過するまでの間、目標変速比制御への切り換えを禁止した。よって、車体速と車輪速が一致していない状況では、目標回転数制御により走行することで、予期しない回転数変動によるモータジェネレータの大きな回転数変動を抑制することが可能となり、安定したABS制御もしくはTCS制御を達成することができる。
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。図15(a)は、実施例2の差動装置を表す共線図である。実施例2の差動装置は、共線図上に4つの回転メンバを有する差動装置であり、具体的にはラビニョウタイプの遊星歯車機構でよい。尚、他の構成としては、単純遊星歯車を2列設け、各単純遊星歯車の回転要素のうち2つの回転要素を、それぞれ他の単純遊星歯車と連結して4つの回転メンバを有する機構でもよく、特に限定しない。
この4つの回転要素の共線図上の両側には、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2が配置され、内側の2つの回転要素にエンジンEと出力軸が配置されている。
変速モードについては、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2及びエンジンEを用いて変速比を無段階に制御して走行する自由変速比モードと、共線図上に設けられた締結要素により、ある変速比に固定可能な固定変速比モードを有する。尚、上記自由変速比モード及び固定変速比モードには、更に、エンジンEを切り離し、2つのモータジェネレータのみで走行可能な電気自動車モードと、エンジンEを使用して走行するハイブリッドモードの組み合わせを有する。尚、自由変速比モードで走行しているときは、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の双方とも、正回転側のみで使用し、逆回転しないように制御している。走行モードについては、実施例1よりも実施例2の方が少ないものの、基本的なシステム構成や制御内容については同様であるため、説明を省略する。
自由変速比モードの目標変速比制御中にスリップ状態となり、目標エンジン回転数制御への切り換える処理については、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
(自由変速比モードにおいてABS制御が行われ、目標変速比制御を継続した場合)
図15は自由変速比モード走行中にABS制御が行われた場合に目標変速比制御を継続した場合(以下、比較例3とする)、及び目標回転数制御に切り換えた場合(以下、本願発明とする)の共線図の変化を表す図、図16は比較例3の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図16に示す(1)〜(14)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速で自由変速比モード走行中は、図15(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のブレーキペダル操作により駆動輪がロック傾向となると、フェーズ(3)に示すように、車輪速が一気に低下し始め、すなわち出力軸回転数が低下し始める。同時にフェーズ(4),フェーズ(5)及びフェーズ(6)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しているため、同様に回転数が一気に低下する。 目標変速比制御が行われている場合、走行状態に応じて設定された変速比を維持するように各動力源が制御され、更に、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は逆回転しないように制御されているため、駆動輪がロックすると、図15(b)の共線図に示すように、全ての回転数が押し下げられることとなり、この状態で車両が停止すると、エンジン回転数が零に押し下げられた状態であるため、エンジンストールしてしまう。
また、ロックを回避するためにブレーキユニット17によりホイルシリンダ圧の減圧が行われるとグリップ傾向となり、図15(b)点線の共線図に示すように、第2モータジェネレータMG2の回転数が大幅に増大(変化量大)する。
このとき、フェーズ(7)及びフェーズ(8)に示すように、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の回転数の急変により高電圧バッテリ4の入出力電力も急変し、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が作用する。また、ABS制御が行われると、駆動輪は数十ミリsecでロック、アンロックを繰り返すため、入出力電力もそれに応じて急変を繰り返し、フェーズ(8)において、フェールしてしまう虞がある。
昇圧DC/DCコンバータ13がフェールに落ちると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による制動力は使用できなくなるため、フェーズ(9)及びフェーズ(10)に示すように車速の低下が緩慢となり、フェーズ(13)及びフェーズ(14)に示すように、制動距離の増大を招く。
(自由変速比モードにおいてABS制御が行われ、目標エンジン回転数制御に切り換えた場合)
図17は自由変速比モード走行中にABS制御が行われた場合に目標エンジン回転数制御に切り換えた場合の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図17に示す(1)〜(10)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速で自由変速比モード走行中は、図15(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のブレーキペダル操作により駆動輪がロック傾向となると、フェーズ(3)に示すように、車輪速が低下し始め、すなわち出力軸回転数が低下し始める。そこで、フェーズ(4)において、目標変速比制御から目標エンジン回転数制御に切り換える。
すると、図15(c)の共線図に示すように、出力軸回転数が減少し、エンジン回転数を押し下げようとしても、目標エンジン回転数を下回ると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の制御によって、エンジン回転数の変動を抑制することとなる。このとき、第2モータジェネレータMG2は逆回転を許容して制御する。
また、目標エンジン回転数は、ユニット回転数条件、モータ回転数条件、エンジン回転数条件、入出力電力条件を満たす値に設定されるため、フェーズ(8)に示すように、出力軸回転数が変動したとしても、入出力電力は、所定の範囲内で徐々に変化するため、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が掛かることもない。
また、昇圧DC/DCコンバータ13は正常に使用できるため、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による制動力を使用することが可能となり、フェーズ(10)に示すように素早く車速を低下させることが可能となり、ひいては制動距離の短縮を図ることができる。
尚、ABS制御が終了したときは、終了後所定時間経過後までは自由変速比モードから固定変速比モードへのモード遷移を禁止しておく。これにより、確実に駆動輪の回転数が安定した状態で固定変速比モードへ遷移することができる。
(自由変速比モードにおいてTCS制御が行われ、目標変速比制御を継続した場合)
図18は自由変速比モード走行中にTCS制御が行われた場合に目標変速比制御を継続した場合(以下、比較例4とする)、及び目標回転数制御に切り換えた場合(以下、本願発明とする)の共線図の変化を表す図、図19は比較例4の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図19に示す(1)〜(14)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速で自由変速比モード走行中は、図18(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のアクセルペダル操作により駆動力が増大し、路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。同時にフェーズ(4),フェーズ(5),フェーズ(6)及びフェーズ(7)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しており、目標変速比制御が行われているため、同様に回転数が上昇する。
運転者のアクセルペダル操作の踏み込み等により駆動輪がスリップ状態となると、TCS制御によりエンジントルクダウン制御が実行される。これにより、駆動輪へ出力されるトルクが低下すると、駆動輪はグリップを回復し、フェーズ(8)に示すように、出力軸回転数は一気に低下する。これに伴い、変速比を維持しているため、フェーズ(9),フェーズ(10),フェーズ(11)に示すように、エンジン回転数,第1モータジェネレータ回転数及び第2モータジェネレータ回転数も一気に低下し、フェーズ(12)及びフェーズ(13)に示すように、入出力電力もオーバーシュートし、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が作用する。
(自由変速比モードにおいてTCS制御が行われ、目標エンジン回転数制御に切り換えた場合)
図20は自由変速比モード走行中にTCS制御が行われた場合に目標エンジン回転数制御に切り換えた場合の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図20に示す(1)〜(12)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速で自由変速比モード走行中は、図18(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のアクセルペダル操作により駆動力が増大し、路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。このとき、TCS制御が開始されると共に目標変速比制御から目標エンジン回転数制御に切り換えられる。
すると、図18(c)の共線図に示すように、出力軸回転数が増大し、エンジン回転数を押し上げようとしても、目標エンジン回転数を上回ると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の制御によって、エンジン回転数の変動を抑制することとなる。このとき、同時に第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の回転数変動も抑制するように制御される。これにより、フェーズ(4),フェーズ(5),フェーズ(6)及びフェーズ(7)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しているものの、各回転要素の回転数変動が所定範囲内となるように目標エンジン回転数が設定されているため、小さな回転数変動となる。
また、目標エンジン回転数は、ユニット回転数条件、モータ回転数条件、エンジン回転数条件、入出力電力条件を満たす値に設定されるため、フェーズ(8)に示すように、トルクダウン制御により駆動輪のグリップが回復することにより出力軸回転数が変動したとしても、フェーズ(9),フェーズ(10)及びフェーズ(11)に示すように、小さな回転数変動となる。よって、フェーズ(12)に示すように、入出力電力は、所定の範囲内で徐々に変化するため、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が掛かることもない。
また、昇圧DC/DCコンバータ13は正常に使用できるため、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による駆動力を使用することが可能となり、エンジントルクダウン制御のみでなく、各モータジェネレータによるトルクダウン制御も実行することが可能となり、駆動輪のスリップを効率よく抑制することができる。
尚、TCS制御が終了したときは、終了後所定時間経過後までは自由変速比モードから固定変速比モードへのモード遷移を禁止しておく。これにより、確実に駆動輪の回転数が安定した状態で固定変速比モードへ遷移することができる。
以上説明したように、実施例2の構成であっても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。図21(a)は、実施例3の差動装置を表す共線図である。実施例3の差動装置は、共線図上に3つの回転メンバを有する差動装置であり、具体的には単純遊星歯車機構でよい。尚、他の構成としては、衛星ローラ等により入出力軸回転数のギヤ比を変更可能な機構でもよく、特に限定しない。この3つの回転要素の共線図上の両側には、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2及び出力軸が配置され、内側の回転要素にエンジンEが配置されている。
変速モードについては、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2及びエンジンEを用いて変速比を無段階に制御して走行するハイブリッドモード(自由変速比モードに相当)と、エンジンEを停止し、エンジン回転数として0を維持しつつ、2つのモータジェネレータのみで走行可能な電気自動車モード(固定変速比モードに相当)を有する。走行モードについては、実施例1よりも実施例3の方が少ないものの、基本的なシステム構成や制御内容については同様であるため、説明を省略する。
電気自動車モード(固定変速比モード)で走行中にスリップ状態となり、目標エンジン回転数制御へ切り換える処理については、エンジン停止状態からエンジン始動する点では実施例1と異なるものの、他の点については実施例1と同じであるため、説明を省略する。
(電気自動車モードにおいてABS制御が行われ、電気自動車モードを継続した場合)
図21は電気自動車モード走行中にABS制御が行われた場合に電気自動車モードを継続した場合(以下、比較例5とする)、及びエンジンを始動し目標エンジン回転数制御に切り換えた場合(以下、本願発明とする)の共線図の変化を表す図、図22は比較例5の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図22に示す(1)〜(14)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速で電気自動車モード走行中は、図21(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のブレーキペダル操作により駆動輪がロック傾向となると、フェーズ(3)に示すように、車輪速が一気に低下し始め、すなわち出力軸回転数が低下し始め、同じく第2モータジェネレータ回転数も低下し始める。同時にフェーズ(4)に示すようにエンジンEは停止しているため、回転数は0のままであり、フェーズ(5)に示すように、第1モータジェネレータMG1は、回転数が一気に増加する。
電気自動車モードが継続されている場合、駆動輪がロックすると、図21(b)の共線図に示すように、全ての回転数が0にされてしまい、第1モータジェネレータMG1の回転数変動も駆動輪の回転数変動と同期して予期せぬ変動を招く。
このとき、フェーズ(6)に示すように、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の回転数の急変により高電圧バッテリ4の入出力電力も急変し、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が作用する。また、ABS制御が行われると、駆動輪は数十ミリsecでロック、アンロックを繰り返すため、入出力電力もそれに応じて急変を繰り返し、フェーズ(7)において、フェールしてしまう虞がある。
昇圧DC/DCコンバータ13がフェールに落ちると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による制動力は使用できなくなるため、フェーズ(9)及びフェーズ(10)に示すように車速の低下が緩慢となり、フェーズ(8)及びフェーズ(9)及びフェーズ(10)に示すように、制動距離の増大を招く。
(電気自動車モードにおいてABS制御が行われ、目標エンジン回転数制御に切り換えた場合)
図23は電気自動車モード走行中にABS制御が行われた場合に目標エンジン回転数制御に切り換えた場合の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図17に示す(1)〜(10)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速で電気自動車モード走行中は、図21(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のブレーキペダル操作により駆動輪がロック傾向となると、フェーズ(3)に示すように、車輪速が低下し始め、すなわち出力軸回転数が低下し始め、駆動輪のスリップ状態に応じて、ABS制御が開始される。すると、フェーズ(5)において、第1モータジェネレータMG1の回転数を上昇させる制御を開始し、フェーズ(4)経過後、第1モータジェネレータMG1の回転数が正回転側に移行すると、それに伴い、フェーズ(7)において、エンジン回転数が引き上げられる。これにより、電気自動車モードから目標エンジン回転数制御に切り換える。
すると、図21(c)の共線図に示すように、出力軸回転数が減少し、エンジン回転数を押し下げようとしても、目標エンジン回転数を下回ると、第1モータジェネレータMG1の制御によって、エンジン回転数の変動を抑制することとなる。
また、目標エンジン回転数は、ユニット回転数条件、モータ回転数条件、エンジン回転数条件、入出力電力条件を満たす値に設定されるため、フェーズ(8)に示すように、出力軸回転数が変動したとしても、フェーズ(9),フェーズ(10)及びフェーズ(11)に示すように、入出力電力は、所定の範囲内で徐々に変化するため、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が掛かることもない。
また、昇圧DC/DCコンバータ13は正常に使用できるため、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による制動力を使用することが可能となり、フェーズ(12)に示すように素早く車速を低下させることが可能となり、ひいては制動距離の短縮を図ることができる。
尚、ABS制御が終了したときは、終了後所定時間経過後までは自由変速比モードから固定変速比モードへのモード遷移を禁止しておく。これにより、確実に駆動輪の回転数が安定した状態で固定変速比モードへ遷移することができる。
(ハイブリッドモードにおいてTCS制御が行われ、目標変速比制御を継続した場合)
図24はハイブリッドモード(自由変速比モード)走行中にTCS制御が行われた場合に目標変速比制御を継続した場合(以下、比較例6とする)、及び目標回転数制御に切り換えた場合(以下、本願発明とする)の共線図の変化を表す図、図25は比較例6の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図25に示す(1)〜(14)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速でハイブリッドモード走行中は、図26(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のアクセルペダル操作により駆動力が増大し、路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。同時にフェーズ(4),フェーズ(5),フェーズ(6)及びフェーズ(7)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しており、目標変速比制御が行われているため、同様に回転数が上昇すると共に入出力電力も上昇する。
運転者のアクセルペダル操作の踏み込み等により駆動輪がスリップ状態となると、TCS制御によりエンジントルクダウン制御が実行される。これにより、駆動輪へ出力されるトルクが低下すると、駆動輪はグリップを回復し、フェーズ(8)に示すように、出力軸回転数は一気に低下する。これに伴い、変速比を維持しているため、フェーズ(9)及びフェーズ(10)に示すように、エンジン回転数,第1モータジェネレータ回転数及び第2モータジェネレータ回転数も一気に低下し、フェーズ(11)及びフェーズ(12)に示すように、入出力電力もオーバーシュートし、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が作用する。
(ハイブリッドモードにおいてTCS制御が行われ、目標エンジン回転数制御に切り換えた場合)
図26はハイブリッドモード走行中にTCS制御が行われた場合に目標エンジン回転数制御に切り換えた場合の各回転数及びモータジェネレータと高電圧バッテリ4との入出力電力を表すタイムチャートである。以下、図26に示す(1)〜(11)のフェーズに合わせて説明する。
フェーズ(1)において、ある車速でハイブリッドモード走行中は、図24(a)に示す共線図の関係により走行している。この状態でフェーズ(2)において、運転者のアクセルペダル操作により駆動力が増大し、路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。路面の摩擦力を越えるとフェーズ(3)に示すように駆動輪がスリップ状態となる。このとき、TCS制御が開始されると共に目標変速比制御から目標エンジン回転数制御に切り換えられる。
すると、図24(c)の共線図に示すように、出力軸回転数が増大し、エンジン回転数を押し上げようとしても、目標エンジン回転数を上回ると、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の制御によって、エンジン回転数の変動を抑制することとなる。このとき、同時に第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の回転数変動も抑制するように制御される。これにより、フェーズ(4),フェーズ(5),フェーズ(6)及びフェーズ(7)に示すように、エンジンE,第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、剛体として連結しているものの、各回転要素の回転数変動が所定範囲内となるように目標エンジン回転数が設定されているため、小さな回転数変動となる。
また、目標エンジン回転数は、ユニット回転数条件、モータ回転数条件、エンジン回転数条件、入出力電力条件を満たす値に設定されるため、フェーズ(8)に示すように、トルクダウン制御により駆動輪のグリップが回復することにより出力軸回転数が変動したとしても、フェーズ(9)及びフェーズ(10)に示すように、小さな回転数変動となる。よって、フェーズ(11)に示すように、入出力電力は、所定の範囲内で徐々に変化するため、昇圧DC/DCコンバータ13に過大な負荷が掛かることもない。
また、昇圧DC/DCコンバータ13は正常に使用できるため、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2による駆動力を使用することが可能となり、エンジントルクダウン制御のみでなく、各モータジェネレータによるトルクダウン制御も実行することが可能となり、駆動輪のスリップを効率よく抑制することができる。
尚、TCS制御が終了したときは、終了後所定時間経過後までは自由変速比モードから固定変速比モードへのモード遷移を禁止しておく。これにより、確実に駆動輪の回転数が安定した状態で固定変速比モードへ遷移することができる。
以上説明したように、実施例3の構成であっても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
尚、実施例1〜3では、目標エンジン回転数を設定する構成について説明したが、あるギヤ比を持って機械的に連結された回転要素であれば、エンジン回転数以外の回転要素の回転数を設定しても、同様の作用効果を得ることができる。
また、実施例1〜3は、全てハイブリッド車両に適用した例を示したが、エンジン等の内燃機関を持たない電気自動車であっても、複数のモータが共線図上の剛体レバーに連結されている場合には、適用可能である。