JP2006337249A - カンチレバーセンサを利用するターゲット物質の検出方法及び検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 目的とするカンチレバーの片面上に、ターゲット物質認識物質との結合を介して、付着するターゲット物質の面密度をより高めることが可能であり、高い面密度で付着したターゲット物質相互間の斥力、ならびに、その荷重によって、カンチレバー先端の撓みの変化量をより大きくでき、高い検出感度でターゲット物質の検出を可能とする検出方法の提供。
【解決手段】 外力を加えて、予め撓んだ状態とした上で、カンチレバーとターゲット物質と接触させると、ターゲット物質同士の斥力が小さい状態で、ターゲット物質認識物質との結合を介して、ターゲット物質の付着がなされ、その後、カンチレバーを撓ませていた外力を取り除き、付着しているターゲット物質間の斥力によって、カンチレバーが撓む状態における撓み量を測定すると、より高い検出感度、また、より簡易な手順でターゲット物質の検出が可能となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カンチレバーセンサを利用して、ターゲット物質を検出する方法、ならびに該検出方法に基づく、ターゲット物質の検出装置に関する。特には、原子間力顕微鏡(AFM)等のようなプローブ式顕微鏡において、微小な力の検出用プローブとして利用されている片持ち梁式針(以下、カンチレバー)を応用して、高い検出感度でターゲット物質を検出する方法、ならびに該方法に基づく、高い検出感度を有するターゲット物質の検出装置に関する。
カンチレバーセンサでは、片持ち梁式針(以下、カンチレバー)の撓み量は、カンチレバー表面の曲げ応力に比例するという特質を利用して、曲げ応力の変化を撓み量変化として検出している。例えば、プローブ式顕微鏡の検出用プローブでは、カンチレバー先端に加わる微小な力、例えば、原子間力の変化を高い感度で検出する手段として利用されている。
カンチレバーセンサを応用して、ターゲット物質を検出する方法として、カンチレバー表面にターゲット物質を選択的に結合させることにより、カンチレバー表面の曲げ応力の変化を誘起させる方法が検討されている(非特許文献1参照)。ターゲット物質に対して、特異的な結合性を示す物質(ターゲット物質認識物質)、例えば、ターゲット物質である抗原に対して、特異的な抗原抗体反応性を有する抗体分子をカンチレバーの片面上に固定する。このカンチレバーを、ターゲット物質(例えば、抗原)を含有している試料と接触させると、ターゲット物質(例えば、抗原)は、特異的な結合性を示す物質(ターゲット物質認識物質、例えば、特異的抗体)との結合を介して、カンチレバーの片面上に付着した状態となる。その際、ターゲット物質がカンチレバーの片面上に付着することに起因して、カンチレバー表面に加わる曲げ応力は変化し、結果的に、カンチレバー先端の撓み量変化として検出可能である。例えば、ターゲット物質がカンチレバーの片面上に高い面密度で付着すると、ターゲット物質相互間に斥力が発生することがある。その場合、高い面密度でターゲット物質が付着している片面が上向にとなるようにカンチレバーを保持すると、ターゲット物質自体の荷重に加えて、ターゲット物質相互間の斥力に因って、かかる片面はより大きな凸形状の撓みを示す。すなわち、ターゲット物質がかかる片面に付着していない状態で観測されるカンチレバー先端の撓み量を基準として、カンチレバー先端の撓み量の変化(増加)を測定することで、この片面上に付着しているターゲット物質の量を評価することが可能である。また、片面上に付着しているターゲット物質の量は、試料中に含有されているターゲット物質の濃度に比例するため、試料中に含有されるターゲット物質の濃度を定量的に評価することも可能である。
さらに、カンチレバーセンサを応用して、ターゲット物質を検出する手法を、プローブ・ハイブリダイゼーション反応を利用する、特定の塩基配列を有するDNAの検出に適用した事例も報告されている(非特許文献2参照)。
Nanotechnology, Vol.14, p.86〜90 (2003) Science, Vol.288 p.316〜318 (2000)
ターゲット物質自体の荷重に起因する曲げ応力の変化に加えて、高い面密度で付着したターゲット物質相互間の斥力に起因する曲げ応力の変化をも利用することで、より大きな撓み量の変化(増加)を得る、上記の検出方法は、有用な手法ではあるが、なお、いくつか改善すべき課題を残している。

まず、第一の課題は、ターゲット物質相互間の斥力が強すぎる場合には、上記の検出方法は、必ずしも、有用な手法とならない点である。
ターゲット物質相互間の斥力が強すぎると、片面上に固定されているターゲット物質認識物質との結合を介して、ターゲット物質が付着すると、試料中に含まれているターゲット物質に対して、強い斥力を及ぼす結果、その影響が及ぶ範囲内に存在するターゲット物質認識物質へのターゲット物質の結合が阻害される。その状況下では、平坦に保持されているカンチレバーにおいて、その片面上に固定されているターゲット物質認識物質とターゲット物質の結合は、一定の間隔を隔てた位置でしか起こらず、結果的に、カンチレバーの片面上に付着するターゲット物質の面密度は、一定の水準に達しない状態となる。すなわち、片面上に付着するターゲット物質の面密度は、ターゲット物質相互間の斥力が顕著とはならない低い水準に留まる結果、カンチレバー先端の撓みを誘起する、曲げ応力の変化に対して、高い面密度で付着したターゲット物質相互間の斥力に起因する曲げ応力の寄与は実質的に無い状態となる。その場合、カンチレバー先端の撓みを誘起する、曲げ応力の変化は、ターゲット物質自体の荷重に起因する曲げ応力の変化のみであり、また、片面上に付着するターゲット物質の面密度自体も低い水準に留まるため、カンチレバー先端の撓み量変化は小さなものとなる。
換言すると、ターゲット物質相互間の斥力が強すぎると、試料中に含まれているターゲット物質の濃度がある水準を超えると、平坦に保持されているカンチレバーにおいて、ターゲット物質認識物質との結合を介して、その片面上に付着するターゲット物質の面密度は、それ以上増加しない状態となり、ターゲット物質の濃度を適正に評価できない可能性がある。

次に、第二の課題は、片面のみにターゲット物質認識物質の固定化を施しているカンチレバーの使用に関連し、その作製工程、あるいは、カンチレバー自体の構造に起因するものである。
カンチレバーの片面にのみ、ターゲット物質が付着する状態を達成するため、従来の手法では、片面のみにターゲット物質認識物質の固定化を施している。すなわち、他の面に対して、選択的にマスク剤層をコートして、予めマスキング処理を施し、ターゲット物質認識物質の付着を防止した後、ターゲット物質認識物質を含む溶液にカンチレバーを接触させることで、目的とする片面のみにターゲット物質認識物質の固定化を行っている。あるいは、マイクロインクジェット技術などを利用して、目的とする片面のみにターゲット物質認識物質を含む溶液を吹き付け塗布することで、他の面上へのターゲット物質認識物質の付着を防止している。
いずれの作製手法でも、カンチレバーの一つの面に対して、選択的なマスク剤層の塗布コート、あるいは、ターゲット物質認識物質を含む溶液の吹き付け塗布のような、選択的な液塗布操作を含む工程が必要となる。カンチレバー自体のサイズは、例えば、長さ(L)、幅(W)、厚さ(T)が、500μm(L)×100μm(W)×1μm(T)である場合、その片面のみへ選択的な液塗布操作は、決して平易な作業でなく、高い再現性を達成することは容易ではない。
加えて、カンチレバーの片面には、ターゲット物質認識物質を固定化し、他方の面には、マスク剤層をコートする形態では、カンチレバー自体の素材と、その表面にコートされるマスク剤層とでは、一般に、熱膨張係数に差違がある。その結果、カンチレバーが置かれる温度が変化すると、両者の熱膨張係数差に起因して、曲げ応力が発生し、カンチレバー先端の撓み量変化が誘起される。この温度変化に由来するカンチレバー先端の撓み量変化を補正するためには、ターゲット物質が付着された状態のカンチレバーと、ターゲット物質が付着されていない状態のカンチレバーについて、カンチレバー先端の撓み量を実測した上で、その差違を求める必要がある。すなわち、測定用カンチレバーと、温度較正用カンチレバーを用意した上で、両者のカンチレバー先端の撓み量を検出する手段、その差違に基づき、片面上に付着するターゲット物質の面密度(量)を算出する検出用ソフトウエアを具える必要がある。検出対象のターゲット物質種類が多くなると、検出装置の構成をさらに複雑化する要因ともなる。
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、まず、カンチレバーの片面にのみ、ターゲット物質認識物質の固定化する形態に代えて、カンチレバーの両面にターゲット物質認識物質の固定化なされている状態においても、目的とするカンチレバーの片面上に固定化されているターゲット物質認識物質に対して、選択的にターゲット物質の結合を起こすことが可能であり、同時に、目的とするカンチレバーの片面上に、ターゲット物質認識物質との結合を介して、付着するターゲット物質の面密度自体もより高めることが可能であり、結果的に、この片面上に選択的に高い面密度で付着したターゲット物質相互間の斥力、ならびに、その荷重によって、カンチレバー先端の撓みの変化量をより大きくでき、高い検出感度でターゲット物質の検出を可能とする検出方法、ならびに、かかる検出方法に基づく、高感度のターゲット物質の検出装置を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、研究を進めたところ、下記の知見を得た。
まず、カンチレバーの両面に同じ面密度でターゲット物質認識物質を固定した場合であっても、外力を加えて、カンチレバーを予め撓ませた状態とすると、凸面側と凹面側との間で、実効的なターゲット物質認識物質の面密度に差違が生じることを見出した。すなわち、撓みの無い状態と比較すると、凸面側では、実効的なターゲット物質認識物質の面密度は、相対的に疎な状態となり、一方、凹面側では、実効的なターゲット物質認識物質の面密度は、相対的に密な状態となっている。
ターゲット物質認識物質と結合するターゲット物質は、相互間隔が一定値を下回ると、ターゲット物質相互の間に斥力が生じる場合、カンチレバーに撓みの無い際に、ターゲット物質認識物質と結合したターゲット物質相互の間に斥力が生じる臨界的状態は、ターゲット物質認識物質Nflat分子当たり、一つのターゲット物質が付着している状態に相当する。一方、かかる臨界的状態は、凸面側では、ターゲット物質認識物質Nconvex分子当たり、一つのターゲット物質が付着している状態に相当し、凹面側では、ターゲット物質認識物質Nconcave分子当たり、一つのターゲット物質が付着している状態に相当する。その際、実効的なターゲット物質認識物質の面密度を考慮すると、Nconvex<Nflat<Nconcaveとなり、換言すると、撓みの無い状態と比較すると、凸面側では、より多くの量のターゲット物質を付着させることができ、一方、凹面側では、より少ない量のターゲット物質しか付着させることができないことを見出した。結果的に、外力を加えて、カンチレバーを予め撓ませた状態とすることで、凹面側へのターゲット物質の付着を阻害でき、一方、凸面側では、ターゲット物質の付着を実効的に促進する効果が得られることが見出された。すなわち、カンチレバーの両面に同じ面密度でターゲット物質認識物質を固定した場合であっても、外力を加えて、カンチレバーを予め撓ませた状態とすると、凸面側に選択的にターゲット物質の付着を起こすことが可能である。
加えて、この凸面側において、ターゲット物質認識物質と結合したターゲット物質相互の間に斥力が生じる臨界的状態に達するためには、ターゲット物質認識物質Nconvex分子当たり、一つのターゲット物質が付着している状態と平衡する、試料中のターゲット物質濃度Cconvexは、ターゲット物質認識物質Nflat分子当たり、一つのターゲット物質が付着している状態と平衡する、試料中のターゲット物質濃度Cflatと比較すると、より高い濃度となることも判明した。すなわち、カンチレバーセンサによって、定量的な濃度測定が可能な上限濃度(検出可能上限濃度)は、外力を加えて、カンチレバーを予め撓ませた状態における、凸面側の検出可能上限濃度Cconvexは、撓みの無い状態のカンチレバー表面の検出可能上限濃度Cflatよりも高くなり、定量的な測定が有効な範囲も拡大することが判った。さらには、外力を加えて、カンチレバーを予め撓ませた状態で、ターゲット物質を選択的に凸面側へ付着させた場合、外力を取り除いた際、凸面側へ付着しているターゲット物質相互の間隔は、ターゲット物質相互の間に斥力が生じる結果、カンチレバーの片面のみにターゲット物質認識物質を固定し、撓みの無い状態で、ターゲット物質を付着させた場合と比較して、ターゲット物質相互の斥力の寄与に伴い、より大きなカンチレバー先端の撓み量を示す、すなわち、より高い検出感度が得られることも確認される。
本発明者らは、以上の一連の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の形態にかかるターゲット物質の検出方法は、
カンチレバーセンサを利用して、ターゲット物質を検出する方法であって、
(A)カンチレバーセンサを構成するカンチレバー表面に、前記ターゲット物質と結合可能なターゲット物質認識物質を固定する工程;
(C)前記カンチレバーに外力を加えて、一方の面を凸として、撓んだ状態で保持する工程;
(D)撓んだ状態で保持する前記カンチレバーを、試料と接触させ、ターゲット物質認識物質に対するターゲット物質の結合を可能とする工程;
(E)前記カンチレバーに加えた外力を取り除く工程;
(F)ターゲット物質との結合を目的とする、試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量を測定する工程
を含む
ことを特徴とするターゲット物質の検出方法である。
また、本発明の第二の形態にかかるターゲット物質検出装置は、
カンチレバーセンサを利用して、ターゲット物質を検出する検出装置であって、
(a)ターゲット物質認識物質を表面に固定したカンチレバーを具えたカンチレバーセンサ;
(c)前記カンチレバーに外力を加えて、一方の面を凸として、撓んだ状態で保持する手段;
(d)前記撓んだ状態で保持する前記カンチレバーを、ターゲット物質認識物質に対するターゲット物質の結合を可能とする状態で、試料と接触させる手段;
(e)前記カンチレバーに加えた外力を取り除く手段;
(f)ターゲット物質との結合を目的とする、試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量を測定する手段;
(h)試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量測定値に基づき、該カンチレバー表面に固定されているターゲット物質認識物質に対して結合したターゲット物質の有無、あるいは、結合したターゲット物質の量を算出する手段
を具えている
ことを特徴とするターゲット物質検出装置である。
本発明にかかるターゲット物質の検出方法の原理では、予めカンチレバーを撓ませた状態とした上で、カンチレバーとターゲット物質とを接触させることによって、ターゲット物質同士の斥力が小さい状態で、カンチレバー表面にターゲット物質を付着させることが可能となり、付着後、カンチレバーを撓ませている外力を取り除くと、カンチレバーは、表面に付着したターゲット物質間の斥力によって、撓んだ状態になる。この状態で、カンチレバー先端の撓み量(変位量)を測定することによって、ターゲット物質のより高感度な検出が可能となり、または、より簡易な検出手段による測定が可能となる効果が得られる。
さらに、カンチレバーに付着するターゲット物質の最大量が増加することで、測定装置の測定上限(飽和検出量)が高くなり検出範囲が広がる、という効果も得られる。
加えて、予めカンチレバーを撓ませる状態でターゲット物質を付着させることに伴って、カンチレバーの凸面側上に選択的にターゲット物質を付着することが可能となり、カンチレバーの片面のみにターゲット物質認識物質を固定する必要はなく、換言すれば、カンチレバーの一方の面のみにターゲット物質認識物質を固定するために要する工程を省くことが可能となるという利点もある。特に、カンチレバーの両面にターゲット物質認識物質を固定すると、温度等の外的要因によって、カンチレバーに反りが導入される現象も回避でき、この種の外的要因に起因する、カンチレバーの反りなどのノイズ要因を較正するため、比較用カンチレバーの利用、較正用のソフトウエアの付加を行わなくとも、高い信頼性を有する測定が可能となる。すなわち、カンチレバーの片面のみにターゲット物質認識物質を固定化するための付加的な工程を省ける利点以上に、カンチレバーの両面の状態が相違することに由来する、温度等の外的要因に起因するトラブルや、誤検出の問題も大幅に低減する上で、大きな貢献を有する。
上述の本発明にかかるターゲット物質の検出方法は、
カンチレバーセンサを利用して、ターゲット物質を検出する方法であって、
(A)カンチレバーセンサを構成するカンチレバー表面に、前記ターゲット物質と結合可能なターゲット物質認識物質を固定する工程;
(C)前記カンチレバーに外力を加えて、一方の面を凸として、撓んだ状態で保持する工程;
(D)撓んだ状態で保持する前記カンチレバーを、試料と接触させ、ターゲット物質認識物質に対するターゲット物質の結合を可能とする工程;
(E)前記カンチレバーに加えた外力を取り除く工程;
(F)ターゲット物質との結合を目的とする、試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量を測定する工程
を含む
ことを特徴とするターゲット物質の検出方法であるが、
その際、前記工程(A)と前記工程(C)の間に、
(B)前記カンチレバーの初期の撓み量を測定する工程を設け、
前記工程(F)の後に、
(G)前記工程(B)で測定される初期の撓み量と、前記工程(F)で測定される、試料との接触を行った後の撓み量との差を算出する工程を設ける構成とするとより好ましい。
また、かかる本発明の検出方法に基づく、本発明のターゲット物質検出装置は、
カンチレバーセンサを利用して、ターゲット物質を検出する検出装置であって、
(a)ターゲット物質認識物質を表面に固定したカンチレバーを具えたカンチレバーセンサ;
(c)前記カンチレバーに外力を加えて、一方の面を凸として、撓んだ状態で保持する手段;
(d)前記撓んだ状態で保持する前記カンチレバーを、ターゲット物質認識物質に対するターゲット物質の結合を可能とする状態で、試料と接触させる手段;
(e)前記カンチレバーに加えた外力を取り除く手段;
(f)ターゲット物質との結合を目的とする、試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量を測定する手段;
(h)試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量測定値に基づき、該カンチレバー表面に固定されているターゲット物質認識物質に対して結合したターゲット物質の有無、あるいは、結合したターゲット物質の量を算出する手段
を具えている
ことを特徴とするターゲット物質検出装置である。

以下に、本発明を詳しくに説明する。
図を参照して、本発明にかかるカンチレバーセンサを利用した、ターゲット物質の検出方法の検出原理を模式的に説明する。
図1(a)のように、チップ11から突き出すように設置されたカンチレバー13の表面にターゲット物質認識物質12を予め固定する。次に、図1(b)のように、カンチレバーに外力14を加えて、ターゲット物質認識物質12が固定されているカンチレバーを、凸状に撓んだ状態とする。この凸状に撓んだ状態を保持したまま、カンチレバー13とターゲット物質15と接触させる。予めカンチレバー13を撓んだ状態とすることによって、カンチレバーの凸面側では、撓みの無い状態に較べて、表面に固定されているターゲット物質認識物質は、実効的に疎な状態となっている。
図1(c)のように、カンチレバーの凸面側では、撓みの無い状態に較べて、ターゲット物質認識物質と結合したターゲット物質同士の間隔も開いており、ターゲット物質相互間の斥力16が小さい状態で、カンチレバーの凸面側表面にターゲット物質が付着する。最後に、図1(d)のように、カンチレバーを撓ませていた外力14を取り除き、ターゲット物質自体の荷重に加えて、ターゲット物質間の斥力16によって、カンチレバーが撓んだ状態で、カンチレバー先端の撓み量17を測定する。測定されるカンチレバー先端の撓み量17に基づき、ターゲット物質の有無や付着量を検出する。
カンチレバーをたわませることの効果を、ターゲット物質認識物質の1つである抗体を例に挙げて説明する。平均的な抗体分子(Fab)2の長手サイズは、約15nmであり、Fabの可変領域VHとVL相互の間隔に起因する、その上部の開き幅は、約10〜20nmといわれている。図1(a)の様に、抗体分子(Fab)2が密集して固定化されている場合、撓みの無い状態では、当然、抗体分子同士の間隔は、各抗体分子の上部の開き幅によって制限され、10〜20nmとなっている。外力を加えて、厚さT1μm、長さL=500μmのカンチレバーを、曲率半径rの円弧形状に撓ませ、その先端での撓み量Δd(変位量)が50μmになったと仮定する。すなわち、この円弧の角度をθとすると、θが十分に小さな範囲では、
L=r×θ、
Δd=r−rcosθ≒r×θ×sinθ≒r×θ2
と、近似的に表すことが可能である。従って、曲率半径rは、r≒L2/Δdとなる。
この外力に因る撓みの曲率半径rが、およそ5000μmとなる場合、カンチレバー表面上に固定されている長手サイズ約15nmの抗体分子先端部の間隔は、この撓みに伴い、率にして0.3%程度拡がることになる。すなわち、抗体分子先端部の間隔は、0.3〜0.6Å程度拡がることになる。その抗体分子先端部の可変領域VHとVLに結合する抗原分子相互の間隔は、この抗体分子先端部の間隔の拡がりよりも、さらに大きな拡がりを示すことになる。その間隔拡がりの程度は、抗原分子の長手サイズが大きくなるとともに大きくなる。その結果、抗体と結合した抗原同士間の斥力は、撓みの無い場合と比較すると、予めカンチレバーを撓ませておくことで弱まり、抗原分子の長手サイズが大きくなると、一層その効果は増すことになる。
また、本発明において、カンチレバーの両面にターゲット物質認識物質を固定化した状態で、外力14を加えて、予めカンチレバーを撓ませておくと、図2(a)のように、カンチレバーが撓んでいない状態と比べて、カンチレバーの凹面側では、ターゲット物質認識物質は密な状態となる。この状態でカンチレバーにターゲット物質を接触させると、ターゲット物質認識物質と結合するターゲット物質の密度は、凸面側では、ターゲット物質認識物質Nconvex分子当たり、一つのターゲット物質が付着している状態であるが、凹面側では、ターゲット物質認識物質Nconcave分子当たり、一つのターゲット物質が付着している状態となり、図2(b)のように、カンチレバーに付着するターゲット物質の量に差が生じる。
外力14を取り除くと、図2(c)のように、ターゲット物質自体の荷重に加えて、ターゲット物質間の斥力によって、カンチレバーが撓んだ状態となり、カンチレバー先端の撓み量27が測定される。ターゲット物質認識物質がカンチレバーの片面にのみ固定化されている場合に測定される、図1(d)に示すカンチレバー先端の撓み量17と、ターゲット物質認識物質がカンチレバーの両面に固定化されている場合に測定される、図2(c)に示すカンチレバー先端の撓み量27とを比較すると、ターゲット物質自体の荷重は相違するが、ターゲット物質間の斥力の寄与は、実質的に等しくなっている。すなわち、凹面側では、付着しているターゲット物質相互の間隔は、ターゲット物質間の斥力を生じさせる臨界的な間隔より広くなっており、ターゲット物質間の斥力による影響は無視できるが、凸面側では、付着しているターゲット物質相互の間隔は、図1(d)と図2(c)とでは、本質的に等しくなり、結果的に、ターゲット物質間の斥力の寄与も同等となる。
すなわち、カンチレバーの両面にターゲット物質認識物質を固定化した状態であっても、外力14を加えて、予めカンチレバーを撓ませておくことで、凹面側において、ターゲット物質認識物質との結合を介して付着するターゲット物質に由来する、ターゲット物質間の斥力による影響を無視できる程度に低減できている。従って、図1の(a)のように、ターゲット物質認識物質をカンチレバーの片面にのみ固定化するためには、カンチレバーの一方の表面に予めマスキングを施す、あるいは、目的とする片面にのみ、ターゲット物質認識物質を吹き付ける操作が必要であるが、外力14を加えて、予めカンチレバーを撓ませておくことで、それらの工程を省くことが可能となっている。
さらには、カンチレバーの一方の表面に予めマスキングを施す際、そのマスキングに利用するコート層の存在に伴って、カンチレバーの二つの面で、熱膨張に付随する変位量に差違が生じ、バイメタルのように温度変化に起因して、カンチレバー全体に反りが発生する。そのため、付着したターゲット物質によるカンチレバーの撓み量を測定する際、この温度変化に起因するカンチレバー全体の反りに対する較正が必要である。一方、マスキングに利用するコート層が存在しない場合には、カンチレバーの二つの面の間では、熱膨張に付随する変位量に差違がないため、温度変化に起因するカンチレバー全体の反りに対する較正は必要でなくなるという利点もある。

本発明にかかるターゲット物質の検出方法について、その工程をより詳しく説明する。
(工程A)カンチレバーの表面にターゲット物質認識物質を固定する工程
カンチレバー:
カンチレバーの形状・材質は、ターゲット物質分子同士の斥力程度の応力によって、所望の撓みが発生可能である限り、特に、限定はされない。なお、固定化されるターゲット物質認識物質の面密度、付着されるターゲット物質の付着量範囲を事前に検討した上で、最適の素材、形状を選択することが好ましい。カンチレバー全体のバネ定数は、一般的なプローブ顕微鏡のカンチレバー型プローブにおいて採用される、0.01〜100N/m程度の範囲内であれば、通常、問題無く利用できる。但し、検出対象のターゲット物質の種類や、カンチレバーの素材・形状によっては、カンチレバー全体のバネ定数は、前記の範囲以外に設定することも可能である。
また、カンチレバーが静電気を帯びると、静電的な相互作用に起因する力によって、カンチレバー全体が撓んだ状態となる可能性がある。このターゲット物質同士の斥力とは、無関係な撓みの発生要因を排除するため、カンチレバー自体の素材に、導電性を示す材料を利用することが望ましい。例えば、カンチレバー本体を、半導体や絶縁性素材で作製する場合は、その表面を金属被膜でコーティングする形態とする、あるいは、半導体材料に、その導電性を向上させるようなドーパントを添加し、導電性半導体材料とすることが好ましい。
さらには、後述の工程Bに関する説明中に例示するように、光学的手法でカンチレバー先端部の撓み量(変位量)を検出する場合は、検出に利用するレーザ光をカンチレバー表面で反射させる必要がある。その際、必要に応じて、カンチレバー先端部の少なくとも一部に、光反射率を向上させる処理、例えば、アルミニウム金属コート膜等の、表面コーティングを施すこともできる。
上記のバネ定数、導電性、表面の光反射率等の要件を満足するカンチレバーの一例として、例えば、ボロン等をドープしたn型シリコンウエハに対して、半導体加工プロセスを適用することで作製される、厚さ(T)数μm程度、長さ(L)数百μm程度、幅(W)数十μm程度の、長方形形状のカンチレバーや、厚さ(T)数μm程度、根本から先端までの長さ(L)数百μm程度、一片の幅(W)数十μm程度の、V字型またはU字型のカンチレバーを挙げることができる。但し、カンチレバーだけでは取り扱いが困難であるため、一辺が数mm以上の大きさのチップに、前記のカンチレバーが取り付けられたような形状に、一体加工することが好ましい。また、プローブ顕微鏡用のプローブとして市販されている、長さ5mm程度、幅2mm程度、厚さ1mm程度のチップの先端に、厚さ(T)5μm程度、長さ(L)200μm程度、幅(W)35μm程度のカンチレバーが形成されているカンチレバー付きチップを転用することもできる。また、チップの中央に穴が空いていて、その穴中にカンチレバーが突きだしているような構造のものは、チップの先端からカンチレバーが突き出した構造のものより、チップを取り扱う際、カンチレバー部を破損させるトラブルの発生頻度を大幅に減らすことができる。さらに、後述する変位量測定装置にチップを装着する際に、カンチレバーが傾いて装着され、カンチレバー先端部の撓み量(変位量)を誤検出するトラブルの発生頻度も大幅に減らすことができる。
なお、外力を印加して、予めカンチレバーを撓んだ状態に保持する手段や、カンチレバー先端部の撓み量(変位量)を検出する手段を、このカンチレバー付きチップに組み込んでしまう形態に関しては、工程B、工程Cの説明中にて詳説する。

ターゲット物質およびターゲット物質認識物質:
ターゲット物質は、それを特異的に結合することが可能なターゲット物質認識物質が存在するものならば、イオン種や、高分子であってもよく、特に、その形態は限定されない。また、ターゲット物質とターゲット物質認識物質との結合を行う際には、両者の結合の促進または橋渡しする第三の物質を添加してもよい。本発明が適用可能なターゲット物質とターゲット物質認識物質の組み合わせの例として、以下のようなものを挙げることができる。

(1)ターゲット物質は、1〜数個の原子で構成される分子あるいはイオン種で、ターゲット物質認識物質は。かかるターゲット物質の分子やイオン形状に対して、ちょうど合うような、相補的な形状を示す高分子、またはそのような高分子を官能基として含んでいる巨大高分子。
具体的には、カリックス[n]アレーンは、側鎖やnの数値によって、様々なイオン種やフラーレンなどと特異的に結合することが、化学 Vol.53 No.3 p26〜(1998)に紹介されている。また、キチンやキトサンのアミノ基は、ポリアクリル酸(PAA)と水素結合した状態で、PAAのカルボキシル基部分(−COO-)に、カルシウム・カチオン種(Ca2+)が特異的に付着することが、Chemistry Letters 1999 p199〜に報告されている。
(2)ターゲット物質は、アミノ酸、ペプチド・タンパク質、あるいは、これらの配糖体、糖鎖との結合体など、抗原分子であり、ターゲット物質認識物質は、前記抗原分子と特異的な抗原・抗体反応する抗体。あるいは、例えば、ビオチンとアビジンなど、リガンド分子とその受容体の組み合わせ。
特異的な結合を行う、リガンド分子とその受容体に関しては、様々な組み合わせが報告されている。一方、抗原分子に対する特異的抗体に関しては、抗原分子に応じた、目的とする抗体の創製方法、特に、モノクローナル抗体の単離・精製方法も確立されている。さらに、種々のモノクローナル抗体に関しては、市販もされている。
(3)ターゲット物質は、DNAやRNA分子であり、ターゲット物質認識物質は、該ターゲット物質の一本鎖核酸分子の塩基配列に対して、それ相補的な塩基配列を有し、該ターゲット物質の一本鎖核酸分子とハイブリド体を形成する一本鎖DNA、PNA。
ターゲット物質となる、一本鎖核酸分子に対して、その塩基配列中から、該ターゲット物質に特有な数十塩基長の部分塩基配列を選択し、それと相補的な関係の数十塩基の塩基配列を有する一本鎖DNAをハイブリダイゼーション反応用のプローブとして利用することができる。なお、数十塩基の塩基配列を有する一本鎖DNAは、市販のDNA合成装置を利用することで、簡単に合成することが可能である。

ターゲット物質認識物質をカンチレバー表面上に固定する方法:
ターゲット物質認識物質の固定方法は、特には、限定はなく、用いるターゲット物質認識物質の特性に合わせて、適切な方法を選択すればよい。例えば、ターゲット物質認識物質、あるいは、ターゲット物質認識物質を側鎖に持つ巨大高分子が有機溶媒等に溶解する場合、ターゲット物質認識物質や巨大高分子を溶解した溶液をカンチレバー表面に滴下し、スピンコートする方法、あるいは、溶液中にカンチレバーを浸漬した後、引き上げるディップコート法が適用可能である。また、インクジェット技術などを用いて、溶液の微細液滴を吹き付ける方法は、例えば、複数のカンチレバーが並んだアレイに対して、個々のカンチレバーに別のターゲット物質認識物質を塗布する場合に有効である。また、ターゲット物質認識物質が、抗体分子や一本鎖DNAの場合、分子の一端にチオール基(−SH)を結合させ、一方、カンチレバーの表面上に金や白金被膜層をコートした上で、該金や白金被膜層へ結合する方法も、一般的に利用される手法である。例えば、ターゲット物質認識物質がビオチンの場合、ビオチンにチオール基(−SH)を導入したビオチンチオールの作製法と、導入されたチオール基(−SH)を利用して、金基板上へ結合させる方法が、Science,262,p1706〜(1993)に報告されている。また、カンチレバーの表面が、金属や金属酸化物で構成されている場合、ビオチンシランを利用して、シラン部分の反応を介して、結合させる手法が、特開平7−260790号公報に開示されており、本発明でも利用できる。

(工程B)カンチレバーの初期の撓み量(変位量)を測定する工程
カンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定方法:
カンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定に利用する手法は、特に限定されない。
例えば、AFM等で一般的に利用されている、カンチレバーの先端部にレーザ光線を照射し、撓んだカンチレバー表面の曲率半径rを、反射光の反射角のズレとして検出する「光てこ法」や、光ファイバを用いて、カンチレバーの先端部にレーザ光線を照射し、その反射光も同じ光ファイバに導き、入射光と反射光の干渉波の変化に基づき、光路長の変化として、カンチレバー先端部の撓み量を検出する干渉法といった、光学的な手法に基づく、撓み量(変位量)の検出方法が利用できる。
また、カンチレバーに、ピエゾ素子など、電気的に歪み量を検出する歪み検出素子を張り合わせて、カンチレバー先端の撓み量(変位量)を歪み検出素子の素子抵抗値の変化として、検出する方法、あるいは、導電性のカンチレバーと平行に電気的に絶縁された電極を設置し、コンデンサーを構成し、カンチレバー先端の撓み量(変位量)に由来する平均電極間距離の変化を、該コンデンサーの静電容量変化として検出する方法など、電気的な手法に基づく、撓み量(変位量)の検出方法も利用できる。
なお、カンチレバーに、ピエゾ素子などの歪み検出素子を貼り付ける場合、工程Aにおいて、カンチレバーを作製する際に、歪み検出素子を同時に作り込む。カンチレバーと歪み検出素子とが一体化されると、その部分では、カンチレバーの剛直性は、必要以上に高くなり、所望のバネ定数からの変移が引き起こされる。また、カンチレバー自体の素材と、貼り付けられる歪み検出素子の素材とは、一般に、熱膨張率に差違があるため、カンチレバーと歪み検出素子との張り合わせ部分がバイメタル素子のように温度変化に応じて反りを生じる。カンチレバーに、ピエゾ素子などの歪み検出素子を貼り付ける構成を利用する際には、これらの問題に対する十分な配慮が必要である。
カンチレバー先端の撓み量(変位量)の記録、算定方法:
上記の測定方法に基づき、測定されるカンチレバー先端の撓み量(変位量)の記録、算定には、レーザ光線反射光の反射角のズレ、干渉波の信号、歪み検出素子の素子抵抗値を検出し、その検出値に基づき、撓み量(変位量)に換算する、演算処理を行う専用の電子回路を用いることができる。また、後述する、ターゲット物質の付着後、カンチレバー先端の撓み量(変位量)を測定する工程Fや、装置全体の制御も考慮して、レーザ光線反射光の反射角のズレ、干渉波の信号、歪み検出素子の素子抵抗値を検出し、その検出値のアナログ信号をADコンバータなどを介して、デジタル化した上で、パーソナルコンピュータ(以下、パソコン)に取り込み、撓み量(変位量)に換算する、演算処理を行う形態を選択してもよい。
なお、ターゲット物質認識物質のカンチレバー表面上への固定化が、高い再現性でなされる場合、ターゲット物質付着前に測定される、各カンチレバーの初期の撓み量(変位量)も、高い再現性を示すものとなる。また、カンチレバーのバネ定数によっては、ターゲット物質の付着後に測定される、カンチレバー先端の撓み量(変位量)と比較して、ターゲット物質付着前に測定される、カンチレバーの初期の撓み量(変位量)は、無視できる場合もある。
ターゲット物質付着前における、カンチレバーの初期の撓み量(変位量)が高い確度で予測できる場合、また、ターゲット物質の付着後に測定される、カンチレバー先端の撓み量(変位量)と比較して、カンチレバーの初期の撓み量(変位量)が無視できる場合には、各カンチレバーについて、その初期の撓み量(変位量)の測定を省き、代表値を利用することでも、測定精度には実質的に影響を及ぼさない。

(工程C)カンチレバーに外力を加えて、撓んだ状態で保持する工程
カンチレバーを予め撓ませ、その撓んだ状態に保持する方法は、特に限定されない。例えば、カンチレバーの先端をカンチレバーと同程度の大きさ形状・素材のもので押す、またはフック付きニードルで引くといった機械的な手法により、所望の外力が印加されている状態とする、機械的な撓みの形成方法が利用できる。また、工程Bの説明中に記述した、カンチレバーにピエゾ素子を張り合わせた形態では、このピエゾ素子に電圧を印加して、歪みを引き起こし、カンチレバーを変形させる方法が利用できる。その他、導電性を有する、V字型またはU字型のカンチレバー二つを上下に対向させて配置した状態とし、カンチレバー両者にそれぞれ電流を流し、発生する磁界による静電的力によって、撓ませる方法、予め、カンチレバーの先端に鉄等の磁性材料を組み込み、電磁石で吸引することで、撓ませる方法を採用することもできる。さらには、後述する工程Dにおいて説明するように、一定の流量・流速・方向で試料溶液または気体をカンチレバー表面に吹き付け、撓んだ状態とする方法なども利用可能である。
いずれの手法を選択する場合も、カンチレバーに印加される外力によって、カンチレバーが破損したり、塑性変形を引き起こしたりしないように、カンチレバーの材質、形状に応じて、印加される外力の大きさ、保持される撓みの曲率の範囲を事前に検討することが必要である。

(工程D)カンチレバーをターゲット物質を含む試料に接触させる工程
予め撓んだ状態に保持されているカンチレバーを、ターゲット物質を含む試料と接触させる方法は、特に限定されない。試料が液体である場合は、カンチレバーを試料中に浸漬すればよい。また、試料が気体である場合は、カンチレバーを試料雰囲気中に曝せばよい。また、試料溶液または気体を一定の流量・流速・方向でカンチレバーの表面に吹き付ける形態を採用することもできる。その際、試料溶液または気体を一定の流量・流速・方向でカンチレバーの表面に吹き付けることにより、カンチレバーを撓んだ状態に保持するとともに、ターゲット物質との接触もなされ、工程Cと工程Dを同時に行う形態とすることも可能である。
工程Dは、カンチレバーを変位量測定装置に組み込んだ状態で行っても良い。また、工程Bの終えた後、変位量測定装置からカンチレバーを取り外し、カンチレバーを撓んだ状態に保持する機構を備えた、脱着が容易なカセットに取り付け、工程Cを行い、このカセットに取り付けた状態で、工程Dを実施することができる。すなわち、フィールドや医療現場など、試料をサンプリングする場所において、このカセットに取り付けた状態のカンチレバーを利用して、工程Dを実施することができる。工程Dを終えたカセットを回収して、再び、カセットから取り外しや、ターゲット物質の付着がなされたカンチレバーを変位量測定装置にセットしなおし、ターゲット物質の付着後の、カンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定を行う。すなわち、回収されたカセットは、一か所にまとめた上で、ターゲット物質の付着後の、カンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定をまとめて行うも可能となる。

(工程E)カンチレバーに印加されている外力を取り除く工程
工程Cにおいて、外力を印加して、強制的な撓んだ状態に保持されているカンチレバーは、印加されている外力を取り除くと、この強制的な撓みは解消され、表面に付着したターゲット物質に起因した撓みのみが残る状態となる。この印加されている外力を取り除く際、いきなり、カンチレバーに印加されている外力をゼロにすると、蓄えられている弾性応力によって、カンチレバーは振動を始める。この振動は次第に減衰して、最終的には、カンチレバーは制止するが、それまでの間、カンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定を行うことができない。外力を印加して、強制的な撓んだ状態で凸面となっている表面上に付着しているターゲット物質は、この振動に伴い、その面の形状が、逆に凹状態となった際、ターゲット物質相互の斥力によって、脱落を引き起こす場合もある。すなわち、この振動に伴い、強制的な撓んだ状態で凸面となっている表面上に付着しているターゲット物質の一部が脱落すると、振動が制止した時点で測定される、カンチレバー先端の撓み量(変位量)は、本来、かかる表面上に付着していたターゲット物質の量を反映しないものとなる。
この点を考慮し、カンチレバーに印加されている外力を徐々に減らして、振動の発生を回避しつつ、最終的に印加される外力をゼロにすることが望ましい。この外力を徐々に取り除く段階に要する時間は、カンチレバーのバネ定数に依存しており、すなわち、カンチレバーの素材や形状に依存する。実際に測定に利用するカンチレバーと、全く同じ素材、形状のカンチレバーを利用して、事前に、外力を徐々に取り除く段階に適する外力の低下速度を検討した上で、適宜決定することが可能である。
また、いきなり、カンチレバーに印加されている外力を取り除いた際に、発生する振動の振幅を抑制し、速やかに減衰するとうに、例えば、カンチレバーの根本部分にダンパーを取り付け、振幅を制限し、同時に、弾性応力の減衰を行う形態を利用することもできる。また、いきなり、カンチレバーに印加されている外力を取り除いた際に、発生する振動によって、カンチレバーの先端が反対方向に方向に撓む状態を回避するように、ストッパーを作用させ、強制的に振動を止める手法の利用も考えられる。

(工程F)ターゲット物質の付着後の、カンチレバー先端の撓み量(変位量)を測定する工程
カンチレバー表面にターゲット物質が付着し、ターゲット物質の荷重、ならびに、ターゲット物質相互の間で生じる斥力に起因して、カンチレバーの先端は撓んだ状態となる。このターゲット物質の付着後の、カンチレバー先端の撓み量(変位量)は、上記工程Bで利用すると同様の測定に従って、測定する。

(工程G)前記工程(B)の初期の撓み量(変位量)と、前記工程(F)で測定されたカンチレバー先端の撓み量(変位量)の差を算出する工程
工程Bを行った場合は、既に記録されているの撓み量(変位量)と、工程Fで測定される、ターゲット物質の付着後の、カンチレバー先端の撓み量(変位量)との差を、パソコン等で計算する。算出される、カンチレバー先端の撓み量(変位量)の増加の有無、ならびに、カンチレバー先端の撓み量(変位量)の増加量に基づき、このカンチレバー先端の撓み量(変位量)の増加を引き起こしている、歪み応力を算出し、さらに、付着しているターゲット物質の量を算定する。

なお、上記の説明では、本発明の検出原理を説明する上で、説明を簡単にする目的で、一本のカンチレバーを有するセンサを用いる形態について記述したが、複数のカンチレバーを有するセンサ構成を利用することもできる。
例えば、複数のカンチレバーを並べたアレイ構成を利用し、複数のカンチレバー表面に同一のターゲット物質認識物質を固定し、それら複数のカンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定結果を平均して、この平均値に基づき、付着しているターゲット物質の量を算定する形態を採用すると、試料中に含まれるターゲット物質の検出を、より精度で行うことが可能となる。
また、複数のカンチレバーを並べたアレイ構成を利用し、個々のカンチレバーに別のターゲット物質認識物質を固定すると、各カンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定結果に基づき、一度に複数のターゲット物質を検出する形態とすることも可能である。
また、別の例として、並列した二本のカンチレバーを一組とし、一方はターゲット物質認識物質を固定した検出用カンチレバーとし、もう一方はターゲット物質認識物質と似てはいるがターゲット物質とは結合しない物質を固定して、対比用カンチレバーとすると、カンチレバー先端の撓み量(変位量)測定時に、両者の変位量の差を検出することで、カンチレバーにかかる重力・振動などのノイズ要因を除去することが可能となる。その際、対比用カンチレバー表面には、ターゲット物質が付着していない点を利用し、測定用カンチレバー先端の撓み量(変位量)と対比用カンチレバー先端の撓み量(変位量)の測定値の差は、測定用カンチレバー上に付着しているターゲット物質の有無、ならびにその付着量を反映する。従って、その差に基づき、測定用カンチレバー上に付着しているターゲット物質の量を算出する形態とすることもできる。

なお、本発明にかかるターゲット物質の検出方法の原理に基づく、ターゲット物質検出装置の装置構成は、上記の工程(A)〜工程(G)に対応する装置構成を備えることが好ましい。具体的には、
(a)ターゲット物質認識物質を表面に固定したカンチレバーを具えたカンチレバーセンサ;
(b)ターゲット物質認識物質を表面に固定したカンチレバーの初期撓み量を測定する手段;
(c)前記カンチレバーに外力を加えて、ターゲット物質認識物質が固定されている一方の面を凸として、撓んだ状態で保持する手段;
(d)前記撓んだ状態で保持する前記カンチレバーを、ターゲット物質認識物質に対するターゲット物質の結合を可能とする状態で、試料と接触させる手段;
(e)前記カンチレバーに加えた外力を取り除く手段;
(f)ターゲット物質との結合を目的とする、試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量を測定する手段;
(g)試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量と、カンチレバーの初期撓み量との差を算出する手段;
(h)試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量とカンチレバーの初期撓み量との差に基づき、該カンチレバー表面に固定されているターゲット物質認識物質に対して結合したターゲット物質の有無、あるいは、結合したターゲット物質の量を算出する手段
を具えていることを特徴とするターゲット物質検出装置とすると、より好ましい。

以上に説明したように、本発明にかかるターゲット物質の検出方法の原理では、予めカンチレバーを撓ませた状態とした上で、カンチレバーとターゲット物質とを接触させることによって、ターゲット物質同士の斥力が小さい状態で、カンチレバー表面にターゲット物質を付着させることが可能となり、付着後、カンチレバーを撓ませている外力を取り除くと、カンチレバーは、表面に付着したターゲット物質間の斥力によって、撓んだ状態になる。この状態で、カンチレバー先端の撓み量(変位量)を測定することによって、ターゲット物質のより高感度な検出が可能となっており、または、より簡易な検出手段による測定が可能になる。
一方、予めカンチレバーを撓ませる状態でターゲット物質を付着させることに伴って、カンチレバーの凸面側上に選択的にターゲット物質を付着することが可能となり、カンチレバーの片面のみにターゲット物質認識物質を固定する必要はなく、換言すれば、カンチレバーの一方の面のみにターゲット物質認識物質を固定するために要する工程を省くことが可能となる。
以下、具体例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。なお、下記の具体例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例であるが、本発明は、これら実施例の態様に限定されるものではない。

(実施態様1)
本実施態様では、ターゲット物質のアビジンを、ターゲット物質認識物質として、ビオチンを利用して、ビオチンを固定化したカンチレバーセンサによって検出する事例を示す。すなわち、ビオチンは、アビジンと特異的に結合する補酵素であり、ターゲット物質のタンパク質を、それと特異的な結合能を有する基質物質との複合体形成を介して、カンチレバー表面に付着させる事例に相当する。

(1)カンチレバー表面へのビオチンの固定化
検出に利用するカンチレバーセンサは、カンチレバーの表面に予め金コートを施した後、金に対するスルファニル基(−SH)の反応性を利用して、スルファニル基(−SH)を導入したビオチン(ビオチンチオール)を金コート膜上に固定化したものである。カンチレバーセンサは、センサを構成するカンチレバーは1本であり、カンチレバー先端の撓み量の検出は、光てこ法を採用している。
カンチレバーの片面にのみ、ビオチンを固定化したカンチレバーを具えるセンサチップA、Bと、カンチレバーの両面に、ビオチンを固定化したカンチレバーをセンサチップC、Dとを、下記の手順に従って作製する。

図3(a)に、シリコン基板から通常の半導体製造プロセスを利用して作製する、カンチレバー付きチップ自体の構造を模式的に示す。縦横10mm、厚さ1mm程度の正方形チップ31の中心に、カンチレバー33が形成されている。図3(b)に示すように、カンチレバー33は、厚さ1μm、長さ500μm、幅100μmの片持ち梁状の構造であり、シリコン基板をエッチング加工することで作製する。このエッチング加工によって除去される部分は、正方形チップ31の中心に、直径600μmの穴32となる。この穴32の中央に、カンチレバー33が突き出した形状とする。この加工工程後、カンチレバー付きチップA、Bでは、カンチレバーの上面のみに、スパッタ法で金被膜をコートする。一方、カンチレバー付きチップC、Dでは、カンチレバーの上面、下面ともに、スパッタ法で金被膜をコートする。
ビオチンに対して、スルファニル基(−SH)を導入したビオチンチオールのエタノール溶液(0.5mM)中に、金被膜コートを施したカンチレバー付きチップを30分間浸漬する。金被膜表面へのビオチンの固定化処理後、ビオチンチオールのエタノール溶液から取り出し、未反応ビオチンチオールの除去のため、エタノールで3回洗浄する。洗浄後、乾燥を行った後、シリコン基板から上記のサイズで、ダイシング処理を行って、カンチレバー付きチップを切り離す。
その結果、カンチレバー付きチップA、Bは、本質的に全く等しい、片面ビオチン固定型のカンチレバーセンサとなり、また、カンチレバー付きチップC、Dは、本質的に全く等しい、両面ビオチン固定型のカンチレバーセンサとなる。

(2)ビオチン固定カンチレバーセンサを利用するアビジンの検出
次に、ビオチン固定カンチレバーセンサを利用して、アビジンを検出する手順を説明する。
図4に、カンチレバー先端の撓み量を検出するために利用する、光てこ法を応用した変位量測定装置の構成を模式的に示す。
カンチレバー付きチップ31を固定するステージ41は、チップと接する面はチップ形状に合わせて窪んでおり、かつチップと接触する面は、鏡面加工し、平坦な面とされている。クランプ42で、チップ31をステージ41に固定する際、チップ31自体の装着位置は、高い精度と再現性で同じ位置となる。一方、半導体レーザ発信器43から放出されるレーザ光線44は、レンズ45を通して、カンチレバー先端部に照射される。カンチレバー先端部で反射された反射光46は、ディテクタ47に達する。ディテクタ47は、上下2個のフォトダイオード(不図示)より構成される、所謂、二分割センサである。上下2個のフォトダイオードの信号は、それぞれ2チャンネルAD変換ボードを介して、デジタル情報として、パソコン48に入力される。
カンチレバー先端部の撓み量が変化すると、先端部に対する、レーザ光線44の入射角θが変化し、対応して、反射光の反射角θも変化し、反射光の軌跡は、46’の様にズレる。ディテクタ47の二分割センサ上に入射される反射光の中心軸は、レーザ光線44の入射角θが当初の角度θ0である状態で、上下2個のフォトダイオードの境界線上に位置するように、半導体レーザ発信器43とディテクタ47の位置合わせがなされる。一般に、そのゼロ点調整がなされた状態では、上下2個のフォトダイオードへの入射光強度に比例する、出力信号強度は等しくなるように、位置合わせがなされる。
カンチレバー先端の撓み量が変化すると、レーザ光線44の入射角θが、当初の角度θ0から変位すると、最終的に、二分割センサ上に入射される反射光の中心軸は、上下2個のフォトダイオードの境界線上から、上下2個のフォトダイオードの何れかに偏る位置に変位する。その結果、上下2個のフォトダイオードへの入射光強度に比例する、出力信号強度に差違が生じる。両者の出力信号強度の差違に基づき、二分割センサ上に入射される反射光の中心軸の、上下2個のフォトダイオードの境界線上からの変位量を算出し、さらに、カンチレバー先端部に対するレーザ光線44の入射角θが、当初の角度θ0から変位した量Δθを算出する。これら一連の演算処理は、パソコン48内において、データ解析プログラムに従って実施される。
なお、カンチレバー付きチップ31のカンチレバー形状、例えば、カンチレバー33の長さ、カンチレバー33上におけるレーザ光線44の当初の照射位置、当初の撓み量(または、曲率半径)ならびに、検出結果から算出される、当初の角度θ0から変位した量Δθに基づき、カンチレバー先端の撓み量の変化量を算出する。
ビオチン固定カンチレバーセンサを利用して、アビジンの検出を行う前に、予め、カンチレバー付きチップを変位量測定装置にセットし、そのカンチレバーの先端部におけるレーザ光線44の照射スポット位置が、所定の位置となるように、レーザ発信器43と集光レンズ45とからなる、入射光源系の光軸を微調整する。併せて、反射光の受光系を構成する二分割センサ型ディテクタ47の位置を微調整し、二分割センサ上に入射される反射光の中心軸が上下2個のフォトダイオードの境界線上に位置するようにする。具体的には、二分割センサを構成する、上下2個のフォトダイオードへの入射光強度に比例する、出力信号強度が、等しくなるように、二分割センサ型ディテクタ47の位置を微調整する。
以上の「ゼロ点調整」を終えた後、カンチレバー付きチップを取り外し、図5に示すように、プローブ顕微鏡用の探針53付きカンチレバー52を具えたチップ51を、スペーサ54を介して、該チップ31の上面に取り付け、カンチレバー33の先端に、探針53が接触する状態とする。その結果、探針53の接触点に印加される外力のため、カンチレバー33は、上面を凸にして撓んだ状態となる。ここでは、厚さ1μm、長さ500μm、幅100μmの片持ち梁状構造のカンチレバー33に対して、その先端における撓み量が、約100nmとなる当接条件(特には、スペーサ54の厚さ)を選択している。

この探針53付きカンチレバー52を具えたチップ51を取り付けた状態で、カンチレバー付きチップAをアビジン水溶液に浸漬する。所定時間を経過した後、アビジン水溶液からカンチレバー付きチップAを取り出し、蒸留水で洗浄を行う。カンチレバー表面に固定されているビオチンとの結合を介して、安定に付着するアビジンを除き、カンチレバー表面に物理的吸着しているアビジンなどは、蒸留水洗浄によって、除去される。蒸留水洗浄後、表面にアビジンが付着しているカンチレバー付きチップAを自然乾燥する。予め、「ゼロ点調整」を行っておいた変位量測定装置に、再セットし、カンチレバーの上面側表面にアビジンが付着しているカンチレバー付きチップAについて、その先端における撓み量の変化を測定する。
探針53付きカンチレバー52を具えたチップ51を取り付けた状態で、カンチレバー付きチップBを純水に浸漬する。所定時間を経過した後、純水からカンチレバー付きチップBを取り出し、蒸留水で洗浄を行う。蒸留水洗浄後、カンチレバー付きチップBも自然乾燥する。予め、「ゼロ点調整」を行っておいた変位量測定装置に、再セットし、カンチレバー付きチップBについて、その先端における撓み量の変化を測定する。

同様に、探針53付きカンチレバー52を具えたチップ51を取り付けた状態で、カンチレバー付きチップCをアビジン水溶液に浸漬する。所定時間を経過した後、アビジン水溶液からカンチレバー付きチップCを取り出し、蒸留水で洗浄を行う。カンチレバー表面に固定されているビオチンとの結合を介して、安定に付着するアビジンを除き、カンチレバー表面に物理的吸着しているアビジンなどは、蒸留水洗浄によって、除去される。蒸留水洗浄後、表面にアビジンが付着しているカンチレバー付きチップCを自然乾燥する。予め、「ゼロ点調整」を行っておいた変位量測定装置に、再セットし、カンチレバーの上下面の両表面にアビジンが付着しているカンチレバー付きチップCについて、その先端における撓み量の変化を測定する。
探針53付きカンチレバー52を具えたチップ51を取り付けた状態で、カンチレバー付きチップDを純水に浸漬する。所定時間を経過した後、純水からカンチレバー付きチップDを取り出し、蒸留水で洗浄を行う。蒸留水洗浄後、カンチレバー付きチップDも自然乾燥する。予め、「ゼロ点調整」を行っておいた変位量測定装置に、再セットし、カンチレバー付きチップDについて、その先端における撓み量の変化を測定する。

カンチレバー付きチップAにおける、カンチレバー先端における撓み量の変化は、予め、カンチレバー上面を凸にして撓んだ状態において、かかる上面に固定されているビオチンとの結合を介して、付着されているアビジンに由来している。その撓み量の変化は、付着されているアビジンの面密度に依存して変化し、かかるカンチレバー付きチップAを利用した際の、アビジンの検出感度を反映している。一方、カンチレバー付きチップBにおける、カンチレバー先端における撓み量は、検体中のアビジン濃度が零であった場合、測定されるカンチレバー先端における撓み量に相当している。

同様に、カンチレバー付きチップCにおける、カンチレバー先端における撓み量の変化は、予め、カンチレバー上面を凸にして撓んだ状態において、かかるカンチレバーの上下両面に固定されているビオチンとの結合を介して、付着されているアビジンに由来している。その撓み量の変化は、カンチレバーの上面に付着されているアビジンの面密度、ならびに、下面に付着されているアビジンの面密度の双方に依存して変化し、かかるカンチレバー付きチップCを利用した際の、アビジンの検出感度を反映している。一方、カンチレバー付きチップDにおける、カンチレバー先端における撓み量は、検体中のアビジン濃度が零であった場合、測定されるカンチレバー先端における撓み量に相当している。

(実施態様2)
本実施態様では、ターゲット物質のカルシウムイオン(Ca2+)を、ターゲット物質認識物質としてキトサンを利用して、キトサンを固定化したカンチレバーセンサによって検出する事例を示す。すなわち、キトサンは、ポリアクリル酸(PAA)と水素結合し、キトサンと水素結合した状態のPAAに、カルシウムイオンが特異的に結合されるという特徴を利用し、PAAを補助剤とし、キトサンをターゲット物質認識物質とする事例に相当する。
なお、キトサン(β−1,4−ポリ−D−グルコサミン)に代えて、β−D−マンヌロン酸(β−D−マンノピラヌロン酸)とα−L−グルロン酸(α−L−グロピラヌロン酸)からなるポリウロン酸である、アルギン酸を、陰性対照として利用する。糖鎖状の繊維状高分子であるキトサン(β−1,4−ポリ−D−グルコサミン)と同様に、粘質多糖の一種であるアルギン酸も、常温では水に溶けにくい繊維状高分子であるが、PAAと水素結合による複合体形成を行わない。従って、PAAが存在しても、アルギン酸は、カルシウムイオン(Ca2+)を固定化する機能を発揮しないものである。

(1)カンチレバー表面へのキトサン、または、アルギン酸の固定化
検出に利用するカンチレバーセンサは、センサを構成するカンチレバーは2本一組であり、2本のカンチレバー先端における撓み量差の検出には、分波されたレーザ光線を、光ファイバを用いて、それぞれのカンチレバー先端部に照射し、その反射光による干渉波を測定し、撓み量差(光路長差)を算出する手法を採用している。
一方のカンチレバーの片面には、キトサンが固定化され、他方のカンチレバーの片面には、アルギン酸が固定化されている2本一組のカンチレバーを具えるセンサチップG、Hを、下記の手順に従って作製する。

図6(a)に、シリコン基板から通常の半導体製造プロセスを利用して作製する、カンチレバー付きチップ自体の構造を模式的に示す。縦横10mm、厚さ1mm程度の正方形チップ31の中心に、2本一組のカンチレバー63、63’が形成されている。カンチレバー63、63’は、ともに厚さ1μm、長さ500μm、幅100μmの片持ち梁状の構造であり、50μmの間隔で平行に配置されている。図6(b)に示すように、カンチレバー63、63’は、その上面は、チップ上面と一致するように、シリコン基板をエッチング加工することで作製する。このエッチング加工によって除去される部分は、正方形チップ31の中心に、直径600μmの穴32となる。この穴32の中央に、2本一組のカンチレバー63、63’が突き出した形状とする。
この加工工程により作製される、カンチレバー付きチップGにおいては、2本一組のカンチレバー63、63’に相当するものを、それぞれ、カンチレバーg、g’と表記する。また、カンチレバー付きチップHにおいては、2本一組のカンチレバー63、63’に相当するものを、それぞれ、カンチレバーh、h’と表記する。
次に、このカンチレバー付きチップG、Hが作製されている基板をスピンコータにセットし、カンチレバーgおよびカンチレバーhに対して、1.0%の酢酸水溶液にキトサンを1.0%溶解したキトサン酢酸水溶液を滴下し、2000rpm20secの条件でスピンコートする。スピンコート後、乾燥させることで、カンチレバーgおよびカンチレバーhを、その表面にキトサンがコートされているカンチレバーとする。一方、基板をスピンコータにセットし、カンチレバーg’およびカンチレバーh’に対して、60℃に加熱して溶解した1.0%アルギン酸水溶液を滴下し、2000rpm20secの条件でスピンコートする。スピンコート後、乾燥させることで、カンチレバーg’およびカンチレバーh’を、その表面にアルギン酸がコートされカンチレバーとする。
2本一組のカンチレバーの上面に、異なるコートを施した後、シリコン基板から上記のサイズで、ダイシング処理を行って、2本一組のカンチレバー付きチップを切り離す。

(2)キトサン固定カンチレバーとアルギン酸固定カンチレバーを具えたカンチレバーセンサを利用するカルシウムイオンの検出
次に、カンチレバーセンサを利用して、カルシウムイオンを検出する手順を説明する。
図7に、カンチレバーセンサ31が具えている2本一組のカンチレバーを、キトサンあるいはアルギン酸のコートが施されている上面が凸にして撓んだ状態とした上で、PAAを添加した炭酸カルシウム水溶液71中に浸漬するための装置の構成を模式的に示す。図7(a)に示すように、2本一組のカンチレバー付きチップGは、PAAを添加した炭酸カルシウム水溶液71がパドル72の回転で一定の流速で循環する流路73に挿入される。その際、PAAを添加した炭酸カルシウム水溶液71が、カンチレバーセンサ31の穴32を通過するため、2本一組のカンチレバー74は、この流れによる外力を受け、図7(b)に示すように、所定の曲率半径で撓った状態に保持される。この状態で、一定時間、流路73中に静置する。
その後、パドル72を停止し、流路73内の水溶液の流れが止まった後、2本一組のカンチレバー付きチップGを水溶液から取り出す。取り出したカンチレバーセンサ31は、数回蒸留水で洗浄した後、自然乾燥する。
2本のカンチレバーg、カンチレバーg’の先端における撓み量差の検出は、分波されたレーザ光線を、光ファイバを用いて、それぞれのカンチレバー先端部に照射し、その反射光による干渉波を測定し、撓み量差(光路長差)を算出する手法を採用する変位量測定装置を用いて行う。まず、カンチレバーセンサGを変位量測定装置にセットし、カンチレバーgおよびカンチレバーg’それぞれの先端部にレーザ光線の照射スポット点が位置するように、光ファイバの先端を微調整する。次いで、反射したレーザ光線を同じ光ファイバで受光し、両者の撓み量差(光路長差)に起因する干渉光を測定する。すなわち、測定される干渉光を与えている位相差に基づき、両者の撓み量差(光路長差)を算出する。

同様に、カンチレバー付きチップHは、図7の構成を有する装置において、純水を一定の流速で流している水路に浸漬する。2本一組のカンチレバーhとカンチレバーh’は、この流れによる外力を受け、図7(b)に示すように、所定の曲率半径で撓った状態に保持される。この状態で、一定時間、流路73中に静置する。
その後、パドル72を停止し、流路73内の水溶液の流れが止まった後、2本一組のカンチレバー付きチップHを純水から取り出す。取り出したカンチレバーセンサ31は、数回蒸留水で洗浄した後、自然乾燥する。同様に、2本のカンチレバーh、カンチレバーh’の先端における撓み量差の検出も、分波されたレーザ光線を、光ファイバを用いて、それぞれのカンチレバー先端部に照射し、その反射光による干渉波を測定し、撓み量差(光路長差)を算出する手法を採用する変位量測定装置を用いて行う。

カンチレバーの上面にコートされているキトサン層、ならびに、アルギン酸層は、水溶液または純水中に浸漬した場合、水を吸水する結果、膨潤を起こす。この膨潤に伴って、カンチレバーは、キトサン層、ならびにアルギン酸層を設けている上面側を凸として、撓んだ状態となる。加えて、カルシウムイオンを捕捉した状態のPAAと水素結合による複合体形成が起こるキトサン層を具えているカンチレバーgでは、複合体形成の結果、このカンチレバーの上面に付着する、カルシウムイオンを捕捉した状態のPAAの付着量に付随する撓み量の寄与が追加される。一方、アルギン酸層を具えているカンチレバーg’では、カルシウムイオンを捕捉した状態のPAAの付着は生じないため、勿論、カルシウムイオンを捕捉した状態のPAAの付着に付随する撓み量の寄与はない。
従って、カンチレバーgとカンチレバーg’の間で、両者のカンチレバー先端の撓み量差を測定すると、前記膨潤に由来する撓み量の増加は相殺され、カルシウムイオンを捕捉した状態のPAAの付着量に付随する撓み量の寄与の差に相当するものとなる。すなわち、測定される両者のカンチレバー先端の撓み量差は、カンチレバーgの上面にコートされているキトサン層に、補助剤PAAを介して、付着しているカルシウムイオンの面密度(量)を反映する。
一方、カンチレバーhとカンチレバーh’の間で、両者のカンチレバー先端の撓み量差を測定すると、前記膨潤に由来する撓み量の増加は相殺され、一方、カルシウムイオンを捕捉した状態のPAAの付着量はともに零であるため、実質的に、両者のカンチレバー先端の撓み量差も零となる。

(実施態様3)
本実施態様では、ターゲット物質のDNAを、ターゲット物質認識物質として、特定の塩基配列を有する一本鎖DNAを利用して、該一本鎖DNAを固定化したカンチレバーセンサによって検出する事例を示す。すなわち、プローブ・ハイブリダイゼーション反応を利用して、プローブ用の一本鎖DNAと、相補的な塩基配列を含んでいる検出対象DNAとのハイブリッド体形成を介して、検出対象DNAのみを選択的にカンチレバー表面に付着させる事例に相当する。
また、カンチレバーセンサは、複数種のDNAプローブを、それぞれ個別のカンチレバー表面に固定化し、このプローブ固定カンチレバー複数をアレイ状に配置することで、所謂、マルチプローブアレイ型のセンサとする。例えば、試料中に含有される検出対象DNAの塩基配列の中に、これら複数種のDNAプローブの塩基配列に対して、相補的な塩基配列部分が存在しているか否かの検出に利用することもできる。

(1)カンチレバー表面への一本鎖DNAの固定化
検出に利用するマルチプローブアレイ型センサでは、各プローブに対して、それぞれ、上下一組の電気的に絶縁された電極付きV字型カンチレバーが向き合った構造に配置されている。図8に示すように、互いに向かい合って配置され、導電性材料で作製される、上下一組のV字型カンチレバーに電流を流すと、電磁気力が発生し、すなわち、その電流の方向に従って、引力または斥力が発生する。また、上下一組のV字型カンチレバーに含まれる導電性層は、コンデンサーを構成しており、その間隔の変化は、かかるコンデンサーの静電容量の変化を引き起こす構成となっている。
従って、この特徴を利用することで、上下一組のV字型カンチレバーに、互いに逆方向の電流を流すと、引力が発生し、V字型カンチレバーを撓ませることが可能である。また、V字型カンチレバー先端の撓み量の変化に起因して、その間隔の変化が引き起こされると、かかるコンデンサーの静電容量の変化として検出が可能である。

(上下一組のV字型カンチレバーを具えたチップの作製)
図8に、絶縁体製基板の上面と下面に形成される、上下一組の電極付きV字型カンチレバーが、互いに向き合った配置に設けられているセンサチップの構造を模式的に示す。チップ81は、絶縁体製基板を利用して作製されており、チップ81の中央部分に、V字型カンチレバーをアレイ状に配置するための、縦幅5mmのスリット82が設けられている。
チップ81の上面には、上面側のV字型カンチレバー83と一体化して形成される導線84−1、84−2に対して、電流を供給する際に利用される電極85−1、85−2が設けられる。対応して、チップ81の下面には、下面側のV字型カンチレバー83’と一体化されている導電性層で形成される導線84−3、84−4に対して、電流を供給する際に利用される電極85−3、85−4が設けられる。なお、図8(a)には、チップ81の上面側の導線84−1、84−2と電極85−1、85−2のみを表示しているが、下面側の導線84−3、84−4と電極85−3、85−4は、対応する位置に配置されている。
上面側のV字型カンチレバー83と、下面側のV字型カンチレバー83’とは、両者の間に100μmの間隔を設けて、スリット82中に突き出した形状で設けられる。すなわち、チップ81において、スリット82の一つの長辺に沿って、100μmの間隔を与えるスペーサ部分に相当する、厚さ1μmの絶縁体層を残し、絶縁体製基板に対して、エッチング処理が施されている領域が設けられている。なお、上下一組のV字型カンチレバーで構成されるコンデンサー構造において、その静電容量へ主要な寄与を有する部分は、スリット82中に突き出した形状の上下一組のV字型カンチレバー部分と、厚さ1μmの絶縁体層を挟んで、導線84−1、84−2と導線84−3、84−4とが配置される部分となる。上下一組のV字型カンチレバーにおける先端の撓み量の変化に起因する静電容量変化を検出する際、上下一組の導線が厚さ100μmの絶縁体層を挟んでいる部分の寄与を抑えておくことが望ましい。従って、上下一組のV字型カンチレバーの間隙を調整するスペーサ部分に相当する、所定の厚さを有する絶縁体層は、高い絶縁特性を有し、同時に、誘電率は低い絶縁材料を選択することが好ましい。また、チップ81自体も、高い絶縁特性を有し、同時に、誘電率は低い絶縁材料で構成することが望ましく、例えば、石英基板を用いることが好ましい。
V字型カンチレバー83と83’は、導電性材料のn型シリコンをエッチング加工して、厚さ5μm、根本から先端までの距離500μm、幅100μmのV字型形状に作製する。また、導線84−1、84−2と導線84−3、84−4も、それぞれ、V字型カンチレバー83と83’と一体化し、n型シリコンをエッチング加工して作製する。加えて、一体化されるV字型カンチレバーと導線は、n型シリコン層の上面、下面には、膜厚約100nmの金蒸着膜を付加し、金/n型シリコン/金の積層構造とされている。
金とn型シリコンの熱膨張係数は異なっており、周辺温度が変動した際、金/n型シリコンの二層構造では、表面応力が誘起され、撓みを生じるが、金/n型シリコン/金の三層積層構造では、上面と下面とで誘起される応力が互いに相殺する結果、全体として、温度変動に起因する撓みの発生は抑制される。加えて、V字型カンチレバー部の上面、下面は、金蒸着膜で被覆する形態となっており、スルファニル基(−SH)の金に対する反応性を利用して、一本鎖DNAの結合を行うことが可能である。勿論、金/n型シリコン/金の三層積層構造を用いると、上面と下面の金蒸着膜は、全体の導電率を向上する機能も有している。
4種のDNAプローブを用いて、マルチプローブアレイ型センサを構成する際には、上下一組の電極付きV字型カンチレバー4組;(j1,j’1)〜(j4,j’4)を、横長のスリット82にアレイ状に配置する。

(DNAプローブ用の一本鎖DNAの作製)
DNAプローブ用の一本鎖DNAは、所定の塩基配列を有する、化学合成オリゴDNAを利用する。一本鎖DNAの合成は、DNA自動合成機(ABI社製、381A)を利用して行うことができる。合成される一本鎖DNAの5’末端に、金蒸着膜上への結合に利用するスルファニル基(−SH)を導入する。チオールモディファイア(Thiol−Modifier:Glen Research社製)を利用し、DNA自動合成機による合成時に、5’末端にチオール基導入を行う。合成後、通常の脱保護処理を行って、化学合成オリゴDNAを回収する。次いで、高速液体クロマトグラフィーを利用し、精製を行い、目的とする塩基配列を有し、5’末端にチオール基導入処理がなされた一本鎖DNA標品を得る。
表1に示す、4種のDNAプローブ:Probe J1〜J4を調製する。
DNAプローブ:Probe J1は、市販のクローニングベクターである、プラスミドpUC18中のマルチクローニングサイト部分のうち、EcoRIおよびSacI認識部位の部分に相当する塩基配列(配列番号:1)を有する一本鎖DNAである。
DNAプローブ:Probe J2は、プラスミドpUC18中のマルチクローニングサイト部分のうち、BamHIおよびXbaI認識部位の部分に相当する塩基配列(配列番号:2)を有する一本鎖DNAである。
DNAプローブ:Probe J3は、プラスミドpUC18中のマルチクローニングサイト部分のうち、PstIおよびSphI認識部位の部分に相当する塩基配列(配列番号:3)を有する一本鎖DNAである。
DNAプローブ:Probe J4は、プラスミドpUC18中のマルチクローニングサイト部分のうち、SphIおよびHindIII認識部位の部分に相当する塩基配列(配列番号:4)を有する一本鎖DNAである。
Figure 2006337249
(一本鎖DNAのカンチレバー表面への固定化)
4種の一本鎖DNA(DNAプローブ):Probe J1〜J4を、それぞれ、10mMのTris−HCl緩衝液中に、最終濃度1μMで溶解して、4種のDNAプローブ水溶液を調製する。マイクロピペットを用いて、Probe J1水溶液を、上下一組のカンチレバー(j1,j’1)に、Probe J2水溶液を、上下一組のカンチレバー(j2,j’2)に、Probe J3水溶液を、上下一組のカンチレバー(j3,j’3)に、Probe J4水溶液を、上下一組のカンチレバー(j4,j’4)に、それぞれ滴下する。滴下されたDNAプローブ溶液の液滴は、上下一組のカンチレバーを包み込み、隣接する液滴とは混じり合わないようにする。その状態で、しばらく静置した後、1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を数回滴下して、未固定の一本鎖DNAを洗浄除去する。この工程で、上下一組のカンチレバーのそれぞれ外側の面上に一本鎖DNAが固定される。

(3) ターゲットDNAの調製
下記の6種の鎖状DNA;ターゲットDNA1〜ターゲットDNA6を調製する。
ターゲットDNA1は、プラスミドpUC18を、消化酵素EcoRIで消化した鎖状DNAである。すなわち、プラスミドpUC18中には、EcoRI認識部位は、マルチクローニングサイト部分に唯一存在するのみであり、このEcoRI認識部位で消化される結果、得られる鎖状DNAは、EcoRI認識部位をもはや有していない。
ターゲットDNA2は、プラスミドpUC18を、消化酵素BamHIで消化した鎖状DNAである。すなわち、プラスミドpUC18中には、BamHI認識部位は、マルチクローニングサイト部分に唯一存在するのみであり、このBamHI認識部位で消化される結果、得られる鎖状DNAは、BamHI認識部位をもはや有していない。
ターゲットDNA3は、プラスミドpUC18を、消化酵素PstIで消化した鎖状DNAである。すなわち、プラスミドpUC18中には、PstI認識部位は、マルチクローニングサイト部分に唯一存在するのみであり、このPstI認識部位で消化される結果、得られる鎖状DNAは、PstI認識部位をもはや有していない。
ターゲットDNA4は、プラスミドpUC18を、消化酵素HindIIIで消化した鎖状DNAである。すなわち、プラスミドpUC18中には、HindIII認識部位は、マルチクローニングサイト部分に唯一存在するのみであり、このHindIII認識部位で消化される結果、得られる鎖状DNAは、HindIII認識部位をもはや有していない。
ターゲットDNA5は、プラスミドpUC18を、消化酵素KpnIで消化した鎖状DNAである。すなわち、プラスミドpUC18中には、KpnI認識部位は、マルチクローニングサイト部分に唯一存在するのみであり、このKpnI認識部位で消化される結果、得られる鎖状DNAは、KpnI認識部位をもはや有していない。但し、マルチクローニングサイト部分に含まれる、EcoRI、BamHI、PstI、HindIII認識部位は残存している。
ターゲットDNA6は、プラスミドpUC18を、消化酵素EcoRIとHindIIIで消化し、二つの断片とした後、電気泳動によって、分子量の大きい鎖状DNA断片のみを回収・精製したものである。消化酵素EcoRIとHindIIIで消化すると、プラスミドpUC18中のマルチクローニングサイト部分は、分子量の小さな鎖状DNA断片となる。従って、分子量の大きい鎖状DNA断片は、マルチクローニングサイト部分に存在する、EcoRI、BamHI、PstI、HindIII認識部位を含んでいない。

(4)マルチプローブアレイ型のセンサを利用するターゲットDNAの検出
上記の4種のDNAプローブ:Probe J1〜J4を用いて、作製されているマルチプローブアレイ型のセンサを利用して、前記6種の鎖状DNA;ターゲットDNA1〜ターゲットDNA6の検出を行う手順を説明する。
予め、作製されているマルチプローブアレイ型のセンサについて、上下一組のカンチレバー(j1,j’1)〜(j4,j’4)のそれぞれの静電容量を測定する。図9(b)に示すように、上下一組のカンチレバー94、94’に、それぞれ付設されている電極85−1と電極85−3に、静電容量計92を接続して、上下一組の電極付きV字型カンチレバー94と94’とで構成されるコンデンサーの静電容量を測定する。この時点で測定される静電容量は、V字型カンチレバー94と94’の先端の撓み量初期状態における静電容量C0である。

次いで、図9(a)のように、上下一組のV字型カンチレバー93、93’に対して、それぞれ、電極85−1、85−2に、電源91を、電極85−3、85−4に、電源91’を接続する。上下一組のV字型カンチレバー93、93’に対して、互いに逆方向の電流を流すと、両者の間に発生する電磁気力は、引力となる。その際、V字型カンチレバー93および93’は、それぞれ、その外面を凸形状として、撓んだ状態となる。
ターゲットDNAを含む水溶液を、予め90℃に加熱して、含まれる二本鎖DNAをディネーチャーし、二本の一本鎖DNAに分離させる。このディネーチャー処理済みの一本鎖DNAを含む水溶液を、マイクロピペットで、マルチプローブアレイ型のセンサの、撓んだ状態とされている上下一組のV字型カンチレバー(j1,j’1)〜(j4,j’4)に滴下する。各液滴は、上下一組のカンチレバー(j1,j’1)〜(j4,j’4)を、それぞれ包むようにする。しばらく静置した後、1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を数回滴下して、未結合の一本鎖DNAを洗浄除去し、静置乾燥する。

マルチプローブアレイ型のセンサの各V字型カンチレバー(j1,j’1)〜(j4,j’4)上に固定化されている4種のDNAプローブ:Probe J1〜J4との、ハイブリダイゼーション反応を、前記の手順で行った後、再び、それぞれの静電容量を測定する。静電容量の測定は、上記と同様の手順で実施する。ハイブリダイゼーション反応後に測定される静電容量Chybrid.と、初期状態における静電容量C0に基づき、パソコン48で所定の解析プログラムに従って、データ処理を行い、各V字型カンチレバー先端の撓み量変化の有無を算出する。
ターゲットDNA1〜6に関して、上記の手順に従って、ハイブリダイゼーション反応後に測定される静電容量Chybrid.と、初期状態における静電容量C0の測定結果に基づき、ハイブリダイゼーション反応の前後における各V字型カンチレバー先端の撓み量変化の有無を算出する。
表2に、ハイブリダイゼーション反応の前後における各V字型カンチレバー先端の撓み量変化の有無を、ターゲットDNA1〜6に関して纏めて示す。
Figure 2006337249
ハイブリダイゼーション反応の前後において、各V字型カンチレバー先端の撓み量変化を有する場合、かかるV字型カンチレバー上に固定化されるDNAプローブと、ターゲットDNAとがハイブリッド体を形成し、V字型カンチレバー上に付着が生じていることを示している。従って、各V字型カンチレバー先端の撓み量変化の有無の算定結果に基づき、各ターゲットDNAが、EcoRIおよびSacI、BamHIおよびXbaI、PstIおよびSphI、SphIおよびHindIIIの4組の認識部位を有しているか否かの判定を行うことが可能である。
一般に、マルチプローブアレイ型のセンサとして、上下一組のV字型カンチレバーn組をアレイ状に配置し、各上下一組のV字型カンチレバーに対して、異なる塩基配列を有するDNAプローブを固定化することで、ターゲットDNA中に、n種類のプローブの塩基配列が含まれるか否かの判定を行うことが可能である。
本発明によれば、1〜数個の原子で構成される分子あるいはイオン種、アミノ酸・ペプチド・タンパク質ならびに、これらの配糖体、糖鎖との結合体などを含む抗原分子、DNAやRNAの核酸分子をターゲットとする、高感度の検出方法・装置を提供することができる。それに伴い、水中や大気中に微少に存在する物質、例えば、大気中の希ガスや有毒ガスなどを検知するガスセンサ、あるいは、大気中の臭い物質などを検知する臭いセンサ(人工嗅覚)、水中のウランや希少金属といった有用資源、環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)や環境汚染物質、バクテリアなどの検出装置、血液や呼気中の何らかの指標物質やウイルス等を検出する医療機器、遺伝子診断用の特定DNA配列検出装置などに、本発明の原理を応用することで、その検出感度を向上させることも可能となる。
本発明にかかるカンチレバーセンサを利用する、ターゲット物質の検出方法における第一の形態の原理を模式的に示す図である。 本発明にかかるカンチレバーセンサを利用する、ターゲット物質の検出方法における第二の形態の原理を模式的に示す図である。 本発明において利用されるカンチレバーセンサの一形態を示し、一本のカンチレバー付きチップの構成の一例を模式的に示す図である。 本発明において利用される、カンチレバー先端の撓み量を測定するための、光てこ方式の変位量検出装置の構成例を模式的に示す図である。 本発明において利用される、カンチレバーに撓みを導入する手段の一形態を示し、プローブ顕微鏡用カンチレバー探針を利用して、外力を印加する手法の一例を模式的に示す図である。 本発明において利用されるカンチレバーセンサの一形態を示し、二本一組のカンチレバー付きチップの構成の一例を模式的に示す図である。 本発明において利用される、カンチレバーに撓みを導入した状態で、ターゲット物質に接触させるための装置の一例を模式的に示す図である。 本発明において利用されるカンチレバーセンサの一形態を示し、二本一組のV字型カンチレバー付きチップの構成の一例を模式的に示す図である。 本発明において利用される、二本一組のV字型カンチレバーに撓みを導入する手段、ならびに、該V字型カンチレバー先端の撓み量を検出する手段の一例を模式的に示す図である。
符号の説明
11 カンチレバーを固定しているチップ
12 ターゲット物質認識物質
13 カンチレバー
14 カンチレバーを撓ませる外力
15 ターゲット物質
16 ターゲット物質同士の斥力
17、27 カンチレバー先端の撓み量
31 カンチレバー付きチップ
32 カンチレバーを納めた穴
33 カンチレバー本体
41 変位量測定装置のカンチレバー付きチップ固定ステージ
42 変位量測定装置のカンチレバー付きチップ固定用クランプ
43 レーザ光源
44 レーザ光線
45 レンズ
46、46’ カンチレバー先端部で反射さえた反射光
47 反射光ディテクタ
48 ADコンバータ付きパソコン
51 プローブ顕微鏡用カンチレバーのチップ部分
52 プローブ顕微鏡用カンチレバー本体
53 プローブ顕微鏡用カンチレバー探針
54 カンチレバー撓みの調整用スペーサ
63、63’ カンチレバー本体
71 PPAを含む炭酸カルシウム水溶液
72 水流を起こすためのパドル
73 水溶液の流路
74 水流によって撓まされたカンチレバー本体
81 カンチレバーアレイ付きチップ
82 カンチレバーを納めたスリット
83、83’ V字型カンチレバー本体
84−1〜4 導線
85−1〜4 電極
91 電源装置
92 静電容量計
93、93’ 電磁気力で撓みが導入されたV字型カンチレバー本体
94、94’ ターゲットDNA同士の斥力によって撓んだV字型カンチレバー本体

Claims (3)

  1. カンチレバーセンサを利用して、ターゲット物質を検出する方法であって、
    (A)カンチレバーセンサを構成するカンチレバー表面に、前記ターゲット物質と結合可能なターゲット物質認識物質を固定する工程;
    (C)前記カンチレバーに外力を加えて、一方の面を凸として、撓んだ状態で保持する工程;
    (D)撓んだ状態で保持する前記カンチレバーを、試料と接触させ、ターゲット物質認識物質に対するターゲット物質の結合を可能とする工程;
    (E)前記カンチレバーに加えた外力を取り除く工程;
    (F)ターゲット物質との結合を目的とする、試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量を測定する工程
    を含む
    ことを特徴とするターゲット物質の検出方法。
  2. 前記工程(A)と前記工程(C)の間に、
    (B)前記カンチレバーの初期の撓み量を測定する工程を設け、
    前記工程(F)の後に、
    (G)前記工程(B)で測定される初期の撓み量と、前記工程(F)で測定される、試料との接触を行った後の撓み量との差を算出する工程を設ける
    ことを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
  3. カンチレバーセンサを利用して、ターゲット物質を検出する検出装置であって、
    (a)ターゲット物質認識物質を表面に固定したカンチレバーを具えたカンチレバーセンサ;
    (c)前記カンチレバーに外力を加えて、一方の面を凸として、撓んだ状態で保持する手段;
    (d)前記撓んだ状態で保持する前記カンチレバーを、ターゲット物質認識物質に対するターゲット物質の結合を可能とする状態で、試料と接触させる手段;
    (e)前記カンチレバーに加えた外力を取り除く手段;
    (f)ターゲット物質との結合を目的とする、試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量を測定する手段;
    (h)試料との接触を行った後の前記カンチレバーの撓み量測定値に基づき、該カンチレバー表面に固定されているターゲット物質認識物質に対して結合したターゲット物質の有無、あるいは、結合したターゲット物質の量を算出する手段
    を具えている
    ことを特徴とするターゲット物質検出装置。
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