JP2006335149A - 操舵支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 操舵制御を行う際に、ドライバのハンドルフィーリングが悪化することを防止する。
【解決手段】 目標横加速度Gが増加傾向である場合(区間A,C)の操舵トルクTの値が、目標横加速度Gが減少傾向である場合(区間B,D)の操舵トルクの値より大きくなるよう設定する。これで、操舵摩擦による操舵トルクの損失分又は剰余分を補償でき、目標横加速度Gに合致した操舵トルクTを操舵機構に付与することができる。また、目標横加速度Gが増加傾向から減少傾向へと変わる場合(時刻T,T)の操舵トルクは、中間段階を表す線図Zを経て変化する。これにより、操舵機構に付与する操舵トルクが一気に大幅変動することが防止できる。したがって、操舵トルクの変動がハンドルに伝わることにより、ドライバのハンドルフィーリングが悪化することが防止できる。
【選択図】 図9

Description

本発明は、車両などの操舵支援を行う操舵支援装置に関する。
車両が走行車線を維持しながら走行するように、ドライバの操舵を支援する車両用操舵支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような支援装置では、まず、CCDカメラなどを利用して車両が走行する車線の画像を取得する。取得した画像から画像認識処理によって走行車線を区画する一対の白線(道路区画線)を検出することで、自車が走行すべき走行車線に対する道路形状データを得る。そして、その道路形状データを基に、自車が走行車線を維持するための適切な操舵トルクを求めて、その操舵トルクを車両に備えられている操舵機構に付与することで、ドライバの操舵を支援する。
特許文献1の技術では、走行車線の曲率、車線オフセット(車両の前後方向の中心線と走行車線の中心線との横ずれ量)、及び、偏向角(車両の前後方向の中心線と走行車線の中心線のなす角度)の微分値を用いて操舵トルクを算出することで、車線維持制御の精度を向上させると記載されている。
特開2001−10518号公報
ところで、車両が備えている操舵機構は、ギヤボックスやサスペンションジョイント等によって接続されており、それらの摩擦力による抵抗(操舵摩擦)が存在する。このような操舵摩擦が存在することにより、車両を走行車線に沿って走行させるために演算した例えば目標横加速度と、その目標横加速度に応じて操舵機構に付与する操舵トルクとは、一対一で合致する関係にはならない。すなわち、目標横加速度の増減に対する操舵トルクの変化(増減)には、同一の目標横加速度においてもその増加時と減少時とで操舵機構に付与する操舵トルクの値が異なるという、いわゆるヒステリシスが存在する。このため、任意の目標横加速度において操舵機構に付与する操舵トルクの値を演算する際には、目標横加速度が増加する場合の特性曲線(目標横加速度VS操舵トルクの特性曲線)と目標横加速度が減少する場合の特性曲線との間にヒステリシス幅を設けることで、適正な操舵制御が期待される。
しかしながら、このようなヒステリシス幅を設けた特性曲線において、目標横加速度の増減傾向が変わった際には参照すべき特性曲線も変える必要があるので、その時においては目標横加速度が同一であっても操舵機構に付与する操舵トルクを異ならせざるを得ない。すなわち、例えば目標横加速度が増加傾向から減少傾向に変わった際に、操舵機構に付与する操舵トルクの値は、目標横加速度の増加時の操舵トルクの値から目標横加速度の減少時の操舵トルクの値に変わる。この時、設けたヒステリシス幅の分だけが、操舵トルクの変動量になる。この操舵トルクの変動量は、操舵機構を介してハンドルに伝わるため、これによりドライバのハンドルフィーリングが悪化するおそれがある。
そこで、本発明は、操舵トルクを変更する際に、ドライバのハンドルフィーリングの悪化を防止できる操舵支援装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明に係る操舵支援装置は、走行路の所定の位置を走行するように操舵機構に操舵トルクを付与する操舵支援装置において、前記走行路の所定の位置を走行する為の操舵トルク値が増加傾向である場合に減少傾向である場合に比べて大きい値に設定されるとともに、前記操舵トルク値が増加傾向から減少傾向に変わる際には、前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値との間の値に前記操舵トルク値が設定されることを特徴とする。 ここで、操舵トルク値が増加傾向である場合とは、操舵を切り増ししている場合である。また、操舵トルク値が減少傾向である場合とは、操舵を切り戻ししている場合である。
また本発明に係る操舵支援装置において、前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値との間の操舵トルク値は、前記増加傾向時の値に比べて小さく、かつ、前記減少傾向時の値に比べて大きく設定されることが好ましい。
また本発明に係る操舵支援装置において、前記操舵トルク値が前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値との間の値に設定された場合に、前記操舵トルク値を前記増加傾向時の値に設定すべきか前記減少傾向時の値に設定すべきかを判断する手段を備え、その判断に基づいて前記操舵トルク値を前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値のいずれかに選択することが好ましい。
これらの発明によれば、走行路の所定の位置を走行するために操舵機構に付与する任意の操舵トルクにおいて、その操舵トルクが増加しているときの値は、その操舵トルクが減少しているときの値より大きく設定される。すなわち、増加時の操舵トルクの値は、減少時の操舵トルクの値より、操舵機構に存在するヒステリシス幅の分だけ大きく設定される。これにより、操舵機構にて発生する操舵摩擦による操舵トルクの損失分または剰余分を補償することができる。従って、走行路の所定の位置を走行するために適切な操舵トルクを操舵機構に付与することができる。
また、操舵トルク値が増加傾向から減少傾向に変わった際に、操舵機構に付与する操舵トルク値を増加傾向時の値から減少傾向時の値に変更する。この変更の際、中間段階を経て、操舵トルク値を変化させる。更に、この中間段階における操舵トルク値を増加傾向時の値と減少傾向時の値との間の値に設定する。これにより、操舵機構に付与する操舵トルクが大幅変動することを防止することができる。従って、操舵トルクの大幅な変動がハンドルに伝わりドライバのハンドルフィーリングが悪化することが抑えられる。また、操舵機構に付与する操舵トルクを中間段階の値に設定した後に、更に、増加傾向時の値にすべきか減少傾向時の値にすべきかを判断することにより、操舵トルクの変更に対する適切な判断を行うことができる。
本発明によれば、操舵トルクを変更する際に、ドライバのハンドルフィーリングが悪化することを防止できる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
先ず、本発明の実施形態に係る操舵支援装置を備えた車両1の構成について、図1、図2、及び、図3を参照しながら詳しく説明する。図1は、本実施形態の操舵支援装置の構成概要図である。また、図2は車両1に搭載されている画像部2により走行車線10の画像データが取得される状況を説明するための図であり、図3は車両1が走行車線10を走行する際の各種道路パラメータ及び走行パラメータを説明するための図である。
図1に示されるように、車両1は、走行車線10の前方を撮像した画像データからカーブ曲率、オフセット、ヨー角等の道路パラメータ及び走行パラメータを取得する画像部2、車両1の操舵角、走行速度、ヨーレート等の走行パラメータを検出するセンサ部3、画像処理部2及びセンサ部3から各種道路パラメータ及び走行パラメータを入力され車両操舵支援制御(車線維持制御)を実行する電子制御ユニット(ECU:Electrical Control Unit)4、ECU4から入力される操舵制御信号に従って車輪FL,FRを転舵する操舵機構5、を備えて構成されている。以下、各構成要素をより詳細に説明する。
画像部2は、CCDカメラ21及び画像処理部22を備えて構成されている。図2に示すように、CCDカメラ21は例えばルームミラー23に内蔵されている。このCCDカメラ21は、車両1の前方の画像データ、特に車両1の走行車線10の周辺の画像データを取得するものである。CCDカメラ21は、例えば、取得した画像情報をAD(Analog to Digital)変換によりデジタル画像データに変換して、画像処理部22に出力する。
画像処理部22は、CCDカメラ21から入力された画像データに対する一連の画像認識処理を施し、車両1が走行する道路上に描かれた一対の白線(道路区画線)10L,Rを認識することで、走行車線10を検出するものである。CCDカメラ21が撮像した画像データ内において、路面とその上に描かれた白線10L,Rとの輝度差が大きいことから、走行車線10を区画する白線10L,Rはエッジ検出等によって比較的検出しやすく、車両1の前方の走行車線10を検出するのに都合がいい。
図3に示すように、画像処理部22は、検出した走行車線10に基づいて、走行車線10前方のカーブ曲率x(カーブ半径Rの逆数)、走行車線10に対する車両1のオフセットD(車両1の前後方向の中心軸1aと走行車線10の中心線10Cの車両重心位置における接線10aとの横ずれ量)、及び、ヨー角θ(車両1の前後方向の中心軸1aと走行車線10の中心線10Cの車両重心位置における接線10aとのなす角度)を、一連の演算を施すことで検出する。そして、その検出結果をECU4に出力する。なお、カーブ曲率x、オフセットD、ヨー角θはいずれも正負いずれの値も取ることがあり、符号は方向、または向きを示す。以上のように、画像データに基づいて、カーブ曲率x、オフセットD、及び、ヨー角θを検出する方法は、公知の方法を用いることができる。
センサ部3は、図1に示すように、舵角センサ31、車速センサ32、及び、ヨーレートセンサ33を備えて構成されている。舵角センサ31は、車両1の操舵角を検出してECU4に出力するものである。本実施形態において、舵角センサ31は、図1に示すステアリングホイール51またはステアリングシャフト52と接続され、ステアリングホイール51の操舵角を検出し、その検出結果をECU4に出力する。車速センサ32は、例えば、車両1の各車輪の回転速度を検出することで、車両1の走行速度を検出するものである。本実施形態において、車速センサ32は、図1に示す左右前輪FR,FLなどに取り付けられ、各車輪の回転速度に応じた周期でパルス信号を発生する。そして、車速センサ32は、このパルス信号をECU4に出力する。また、ヨーレートセンサ33は、車両1の重心近傍に配置され、重心鉛直軸回りのヨーレートを検出し、その検出信号をECU4に出力するものである。
このように、センサ部3により検出された各種信号は、センサ部3と接続されているECU4に出力される。ECU4は、舵角センサ31からの出力信号に基づいてステア角を検出すると共に、車速センサ32からの出力信号に基づいて車速を検出する。なお、センサ部3は、ナビゲーションシステム(図示しない)を備えるようにしてもよい。この場合、ナビゲーションシステムはGPS(全地球測位システム、Global Positioning System)を利用して、CCDカメラ21の視野範囲外における車両1前方の道路パラメータを探知する。そして、ECU4は、センサ部3からの検出信号から各種データを検出する際に、このナビゲーションシステムが探知した道路パラメータを参照するようにしてもよい。
操舵機構5は、図1に示すように、ステアリングホイール51、ステアリングシャフト52、ステアリングギヤボックス53、ラックバー54、ナックルアーム55、モータドライバ56、及び、モータ57を備えて構成されている。ステアリングホイール51は、車両1の車室内に配設されており、運転者によって操作されることで車輪FR,FLを転舵させる。このステアリングホイール51は、ステアリングシャフト52の一端に固定されている。ステアリングシャフト52は、ステアリングホイール51の回転に伴って回転する。
ステアリングシャフト52の他端には、ステアリングギヤボックス53を介してラックバー54が連結されている。ステアリングギヤボックス53は、ステアリングシャフト52の回転運動をラックバー54の軸方向への直進運動に変換する機能を有している。ラックバー54の両端は、ナックルアーム55を介して車輪FL,FRの各ハブキャリア(図示しない)に連結されている。このような構成から、ステアリングホイール51が回転されると、ステアリングシャフト52、ステアリングギヤボックス53、ラックバー54、及び、ナックルアーム55を介して、車輪FL,FRが転舵される。
モータドライバ56はECU4に接続されている。ECU4は、後述する論理に従ってモータドライバ56に操舵制御信号を供給する。そして、モータドライバ56は、この操舵制御信号に従って、ステアリングギヤボックス53に配設されたモータ(アクチュエータ)57に駆動電流を供給することで、モータ57を駆動させる。モータ57は、モータドライバ56から供給された駆動電流に応じた操舵トルクをラックバー54に付与する。図示されていないが、ラックバー54の一部外周面にはボールスクリュー溝が形成されており、モータ57のロータにはこのボールスクリュー溝に対応するボールスクリュー溝を内周面上に有するボールナットが固定されている。一対のボールスクリュー溝の間には複数のベアリングボールが収納されており、モータ57を駆動させるとロータが回転して、ラックバー54の軸方向の直進運動、即ち、車輪の転舵を制御することができる。
次に、本実施形態に係る操舵支援装置における操舵支援制御について説明する。
図4は、本実施形態に係る操舵支援装置における操舵支援制御を示すブロック図である。図4に示すように、画像部2及びセンサ部3からECU4に道路パラメータ及び走行パラメータが入力され、ECU4により操舵制御信号が算出され、操舵機構5により操舵トルクTが車輪FL,FRに付与される。ここで、車両1が走行車線10を適切に維持しながら走行するための目標となるオフセットやヨー角は、例えば、目標オフセットD及び目標ヨー角θとして予め設定されたものが用いられる。
具体的に説明すると、まず、画像部2のCCDカメラ21によって、車両1の前方が撮像される。そして、撮像された画像に基づいて、画像処理部22は、走行車線10のカーブ曲率x、車両1のオフセットD及びヨー角θを算出する。なお、カーブ曲率xは、撮像された画像から前方のカーブ半径Rを幾何学的に求め、この逆数を取ることで求められる。幾何学的な求め方としては、車両1の所定距離前方における白線の横方向への偏位量や車両1の所定距離前方における白線の接線の傾きを参照して行えばよい。
操舵機構5に出力する操舵制御信号を算出するにあたっては、まず、その制御量となる目標ヨーレートωを算出する必要がある。このヨーレートωは、下記の式(1)に基づいて算出される。
ω=ω+ω+ωθ…(1)
ここで、ωは、車両1を走行車線10(カーブ)に沿って走行させるために必要なヨーレートである。このヨーレートωは、例えば、画像部2から入力されたカーブ曲率xから、所定の特性に基づいてフィードフォワードコントローラ(F/Fコントローラ)41により算出される。また、式(1)において、ωはオフセットDを補償するためのヨーレートである。このヨーレートωは、画像部2から入力されたオフセットDと目標オフセットDとの偏差ΔD、すなわち(D−D)に係数Kを乗じることで算出される。また、式(1)において、ωθはヨー角θを補償するためのヨーレートである。このヨーレートωθは、画像部2から入力されたヨー角θと目標ヨー角θとの偏差Δθ、すなわち(θ−θ)に係数Kθを乗じることで算出される。このようにして算出された3つのヨーレートω,ω及びωθを式(1)に従って合算することで、目標ヨーレートωが算出される。
ECU4のトルク演算部42は、このように算出された目標ヨーレートωを目標横加速度Gに変換する。このとき、トルク演算部42は、センサ部3によって検出された車速Vを用いる。そして、トルク演算部42は、この目標横加速度Gに応じた操舵トルクTを演算する。この操舵トルクTは、操舵制御信号として操舵機構5に出力される。そして、操舵機構5のモータドライバ56は、トルク演算部42から入力された操舵トルクTに応じた駆動電流Iをモータ57に流すことで、モータ57を駆動する。これで、操舵トルクTが車輪FL,FRに付与され、車両1の操舵制御が行われる。
ここで、例えば、操舵機構5を構成するステアリングギヤボックス53内の各連動機構、ラックバー54、ナックルアーム55の間で発生する摩擦のため、モータ57の駆動力すべてが、車輪FL、FRの転舵に利用されるわけではない。このため、実際には、車輪FL、FRの転舵に必要な力と、操舵機構5内で発生する操舵摩擦とを釣り合う駆動力を付与する必要がある。この操舵摩擦は転舵を行おうとする方向への反力として作用するから、舵角を増大させるときには、(転舵に必要な力+操舵摩擦)に合致する操舵力が必要となる。一方、舵角を減少させるときは、(操舵に必要な力−操舵摩擦)に合致する操舵力で足りることになる。
そこで、本実施形態に係る操舵支援装置は、車輪FL,FRに付与する操舵トルクTの量を演算するときに、目標横加速度G(操舵トルクT)が増加する場合の特性曲線と目標横加速度G(操舵トルクT)が減少する場合の特性曲線との間にヒステリシス幅を設けた特性曲線を参照する。これにより、舵角の増減傾向、及び、操舵機構5にて発生する操舵摩擦の損失分または剰余分に対応する操舵トルクTを車輪FL,FRに付与する。以下、車両1が図5に示すような道路を走行する際に、本実施形態に係る操舵支援装置が目標横加速度G(以下、「目標G」という。)に基づいて車両1に付与する操舵トルクについて図6を参照しながら説明する。この目標Gは、カーブ半径(曲率)、車線の所定位置である車線中央部からのずれに相当するオフセット量、及び、車線に対する車両1の角度に基づき、車両1が走行路の所定の位置を走行する為に必要な横加速度として設定されている。
図5は、以下に説明する操舵支援装置の動作において、車両1が走行する道路をイメージした図である。図5において、車両1は、時刻T〜Tにおいて右折し、時刻T〜Tにおいて直進し、時刻T〜Tにおいて左折する。車両1が右折を進めている時刻T〜Tには、ステアリングホイール51を右に切り増すための操舵トルクが与えられる。このときの目標G及び操舵トルクTは正の値を有し、それらの絶対値が増加する。この時刻T〜Tにおける区間Aは、右操舵の切り増し区間である。
また、時刻T〜Tにおいて、右折を終えて直線に進入するためステアリングホイール51を中立点に切り戻すための操舵トルクが与えられる。このときの目標G及び操舵トルクTは正の値を有し、それらの絶対値が減少する。この時刻T〜Tにおける区間Bは、右操舵の切り戻し区間である。
同様に、車両1が左折する際に、時刻T〜Tには、ステアリングホイール51を左に切り増すための操舵トルクが与えられる。このときの目標G及び操舵トルクTは負の値を有し、それらの絶対値が減少する。この時刻T〜Tにおける区間Cは、左操舵の切り増し区間である。
また、時刻T〜Tにおいて、左折を終えて直線に進入するためステアリングホイール51を中立点に切り戻すための操舵トルクが与えられる。このときの目標G及び操舵トルクTは負の値を有し、それらの絶対値が増加する。この時刻T〜Tにおける区間Dは、左操舵の切り戻し区間である。
なお、以下の説明において、操舵トルクの量の変化、例えば操舵トルク値の増加、操舵トルク値の減少などは、操舵トルクの絶対値で考えることとする。すなわち、右操舵の切り増し区間A及び左操舵の切り増し区間Cにおいて操舵トルク値は増加し、右操舵の切り戻し区間B及び左操舵の切り戻し区間Dにおいて操舵トルク値は減少する。
図6は、本実施形態の操舵支援装置が目標Gに基づいて車両1に操舵トルクTを付与する際に参照するグラフである。
この図6のグラフにおける区間A〜Dは、図5の区間A〜Dに対応するものである。すなわち、区間Aは、車両1が図5の右操舵の切り増し区間Aを走行している時(T〜T:目標Gが正の値を有しその絶対値が増加している時)に対応する。同様に、区間Bは図5の右操舵の切り戻し区間B(T〜T:目標Gが正の値を有しその絶対値が減少している時)に対応する。区間Cは、図5の左操舵の切り増し区間C(T〜T:目標Gが負の値を有しその絶対値が増加している時)に対応する。また、区間Dは図5の左操舵の切り戻し区間D(T〜T:目標Gが負の値を有しその絶対値が減少している時)に対応する。
区間A、Cのように目標Gの絶対値が増加傾向である場合には実線で表示し、区間B、Dのように目標Gの絶対値が減少傾向である場合には点線で表示している。区間Aと区間Bの間、及び、区間Cと区間Dの間には、ヒステリシス幅wが設けられている。
図6に示される区間A〜Dの線図は、例えば、以下のように設定される。
Figure 2006335149
ここで、係数a,b,G1,G2,wは、車両特性に応じて予め設定されている。これは、実際の車両における操舵トルクTに対する目標Gを計測することでその特性から求めることができる。係数aは、目標Gの増加量に対する操舵トルクTの増加量であり、図6に示す傾きaに対応する。係数bは、操舵トルクTの絶対値を増大していった場合に、目標Gが初めて発生する値であり、図6の切片bに相当する。また、G1,G2は、目標Gの値がゼロになる際に、すなわち車両1が直線上の道路を走行している際(図5では、時刻T〜T)に、制御に安定性を与えるための定数である。係数wは、ヒステリシス幅wとして表されるが、これは、目標Gが増加傾向にあるときの操舵トルクTの増加量と、目標Gが減少傾向にあるときの操舵トルクTの減少量との差に相当する。
ECU4は、図5のような走行状況にて図6を参照して求めた操舵トルクTに応じて、モータドライバ56を介して、モータ57を駆動する。その結果、車輪FR,FLが転舵され、車両1は車線を維持すべく旋回される。車両1が旋回すると、再度CCDカメラ21によって前方の状況が撮像され、上述したことが繰り返される。
このように、目標Gの増減傾向により、同じ目標Gにおいても、切り増しの時と切り戻しの時とで、車輪FR,FLに与える操舵トルクを異ならせる。これで、結果的に実現される操舵トルクTを目標値にできるだけ一致させることが可能となる。このため、安定した制御を行うことができ、制御性が向上する。
しかしながら、目標Gの増減傾向が変わり、参照する特性曲線を変える必要がある際においては、操舵機構5に与えられる操舵トルクにも変動が予想される。図7は、このような状況を示している。例えば、時刻Tでは、切り増しから切り戻しへと操舵状況が変わるので、区間Aから区間Bへと参照する特性曲線を変え、時刻Tでは区間Cから区間Dへと参照する特性曲線を変える必要がある。この時、設けたヒステリシス幅wの分だけが、操舵トルクの変動量になる。この操舵トルクの変動量は、操舵機構を介してハンドルに伝わるため、これによりドライバのハンドルフィーリングが悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態に係る操舵支援装置においては、図7の区間Aと区間Bとの間に例えば1つの中間段階を設けることで、トルクの変動を2段階に分けて行わせる。以下、このような操舵支援処理について、図8〜10を参照しながら詳細に説明する。
図8は、本実施形態に係る操舵支援装置の操舵支援制御を示すフローチャートである。
この図8に示す操舵支援制御は、例えばECU4及び操舵機構5により繰り返し行われる。図9及び図10は、図8に示す操舵支援制御が行われる際に、目標Gに応じて演算された操舵トルクTを表すグラフである。図9及び図10には、区間Aと区間Bとの間、及び、区間Cと区間Dとの間に、中間段階を表す線図Z(一点鎖線で表示)が設けられている。
図8において、まず、目標Gが演算される(ステップS101)。この目標Gを演算する際には、例えばローパスフィルタ処理を行うことで、演算の精度が高められる。
次に、ステップS102〜ステップS106にて、目標Gの増減傾向が判断される。まず、目標Gが基準GからΔGを減じた値(基準G―ΔG)より小さいか否かが判断される(ステップS102)。この基準Gは、目標Gの変化に応じて変化する変数値であり、例えば初期値として0が設定される。また、ΔGは所定の定数である。基準GからΔGを減じておくことにより、目標Gが基準Gを細かく上下する場合に、操舵トルクにハンチングが生ずるような事態を防止することができる。
ステップS102にて、目標Gが基準GからΔGを減じた値より小さい場合には、目標Gは減少していると判断され、目標Gの増減状態を表すフラグであるフラグF1に、目標Gが減少傾向であることを示す値Downが格納される(ステップS103)。
一方、ステップS102にて、目標Gが基準GからΔGを減じた値(基準G―ΔG)より小さくない場合には、目標Gが基準GにΔGを加えた値(基準G+ΔG)より大きいか否かが判断される(ステップS104)。ステップS104にて、目標Gが基準GにΔGを加えた値より大きい場合には、目標Gは増加していると判断され、目標Gの増減状態を表すフラグであるフラグF1に、目標Gが増加傾向であることを示す値Upが格納される(ステップS105)。一方、ステップS104にて、目標Gが基準GにΔGを加えた値より大きくない場合には、目標Gの増減傾向に変化はないと判断され、処理の流れはステップS107へと移行する。
そして、ステップS103又はステップS105において、目標Gの増減傾向に変化があると判断されフラグF1にその変化を反映する値が格納された場合には、基準Gの値が現在の目標Gの値に設定される(ステップS106)。この設定された基準Gの値は、ステップ102及びステップS104の処理が次回の制御ルーチンで繰り返し実行される際に用いられる。
次に、前回の制御ルーチンにおけるフラグF2にMidの値が格納されているか否かが判断される(ステップS107)。このフラグF2とは、本実施形態に係る操舵支援装置が操舵トルクTを演算するためにどのグラフを参照しているかを表すフラグである。フラグF2にUpが格納されている場合には、図9、10において、区間A(右操舵の切り増し区間)又は区間C(左操舵の切り増し区間)が参照される。また、フラグF2にDownが格納されている場合には、図6において、区間B(右操舵の切り戻し区間)又は区間D(左操舵の切り戻し区間)が参照される。
また、フラグF2にMidが格納されている場合には、図9,10に示す中間段階の線図Zが参照されていることを表す。すなわち、ステップS107の動作は、前回の制御ルーチンで中間段階の線図Zが参照されていたか否かを判断することと等価である。
このステップS107にて、前回のフラグF2にMidが格納されている場合には、フラグF2にMidの値が格納されてから経った時間(例えば、中間段階の線図Zを参照する状態で繰り返された制御ルーチンの回数)を計るタイマが増加される(ステップS108)。一方、前回のフラグF2にMidが格納されていない場合には、タイマがリセットされる(ステップS109)。
そして、今回の制御ルーチンでフラグF1に格納されている値と前回の制御ルーチンでフラグF1に格納されていた値とが同一であるか否かが判断される(ステップS110)。ステップS110にて、今回のF1に格納されている値と前回のF1に格納されていた値とが同一でない場合には、フラグF3にONの値が格納される。一方、ステップS110にて、今回のF1に格納されている値と前回のF1に格納されていた値とが同一である場合には、フラグF3にOFFの値が格納される(ステップS112)。このフラグF3とは、前回の制御ルーチンと今回の制御ルーチンとでF1に格納されていた値が変わっているのか否かを表すフラグであり、ONの場合は変わっていること、OFFの場合は変わっていないことを表す。
次に、フラグF3の値がONであるか否かが判断される(ステップS113)。ステップS113にて、フラグF3の値がONである場合には、フラグF2にMidの値が格納される(ステップS114)。このフラグF2にMidという値が格納されることによって、本実施形態の操舵支援装置は中間段階の線図Zを参照して操舵トルクTを演算することとなる。
一方、ステップS113にて、フラグF3の値がONでない場合には、前回の制御におけるフラグF2に格納されている値がMidでなく、又は、中間段階の線図Zを参照してから経った時間を計るタイマがΔT以上であるか否かが判断される(ステップS115)。この判断は、参照するグラフの領域を変更する際に、その変更処理を本当に行っても良いか否かを見極めるために行われるものである。すなわち、予め設定されているタイマしきい値ΔT以内で目標Gまたは操舵トルクTがどれだけ変化しているかを確認し(例えば、予め設定されている目標Gの変化量しきい値または操舵トルクTの変化量しきい値以上に変化しているかを確認するなど)、その目標Gまたは操舵トルクTの変化量に基づいて参照グラフの変更処理を実行するか否かを判断している。
ステップS115にて、前回の制御ルーチンにおけるフラグF2の値がMidではない場合(目標Gが予め設定されている目標Gの変化量しきい値以上に変化している場合、または、操舵トルクTが予め設定されている操舵トルクTの変化量しきい値以上に変化している場合)、または、タイマが所定のタイマしきい値ΔT以上である場合には、フラグF2にはフラグF1に格納されていた値が格納される(ステップS116)。このフラグF1にはUpまたはDownの値が格納されており、フラグF2にそれらの値が格納されることによって、本実施形態の操舵支援装置は図9、10の区間A、B、C又はDのいずれかを参照して操舵トルクTを演算することとなる。
一方、ステップS115にて、前回の制御ルーチンにおけるフラグF2の値がMidであり(目標Gが目標Gの変化量しきい値以上に、または、操舵トルクTが操舵トルクTの変化量しきい値以上に変化しておらず)、かつ、タイマが所定のタイマしきい値ΔT以上でない場合には、フラグF2には前回の制御ルーチンにおけるフラグF2に格納されていた値が再度格納され、処理の流れは目標Gを演算するステップS101に戻る(ステップS117)。この場合は、参照グラフの変更処理を実行するか否かについての判断がまだ確実ではない状況などであり、中間段階の線図Zを参照し続ける場合などである。
図9及び図10は、車両1が、例えば右操舵の切り増し区間Aから右操舵の切り戻し区間Bに進入する際(図5では時刻T)に、または、左操舵の切り増し区間Cから左操舵の切り戻し区間Dに進入する際(図5では時刻T)に、図8に示した本実施形態の操舵支援装置の動作の結果を表す図である。
図9は、例えば時刻Tの前は切り増しの操舵に相当する区間Aを参照し、時刻Tの後は切り戻しの操舵に相当する区間Bを参照する場合を表している。これは、区間Aから中間段階の線図Zに変更する動作、中間段階の線図Zを参照しながら区間Aから区間Bへの変更の必要性を見極める動作、そして、区間Bに変更する動作の3つの動作に大別される。
より具体的には、動作Zにて区間Aから中間段階の線図Zへと参照するグラフ領域を変更する。これは図8のステップS114に相当する。その後、動作Zにて、目標Gまたは操舵トルクTの変化に基づいて、中間段階の線図Zから区間Bへと参照するグラフ領域を変更する必要があるか否かをタイマしきい値ΔT以内で判断する。これはタイマしきい値ΔT以内でどれだけ目標Gまたは操舵トルクTの変化が現れたのかを検出することで判断でき、切り戻し方向に十分大きい変化が現れたときに、参照するグラフ領域を変更する必要があると判断される。この動作は図8のステップS117に相当する。
そして、動作Zにて目標Gまたは操舵トルクTの変化に基づき参照するグラフを変更する必要があると判断されたため、動作Zにて中間段階の線図Zから区間Bと参照するグラフ領域を最終的に変更する。これは図8のステップS116に相当する。なお、時刻Tに、参照するグラフ領域を区間Cから区間Dに変更する場合も同様である。
図10は、例えば時刻Tの前は区間Aを参照し時刻Tになって参照するグラフ領域を区間Aから区間Bに変えようとしたが、目標Gまたは操舵トルクTの変化に基づき区間Aを維持した方が良いと判断されたため、時刻Tの後も区間Aを参照する場合を表している。これは、区間Aから中間段階の線図Zに変更する動作、中間段階の線図Zを参照しながら区間Aから区間Bへの変更の必要性を見極める動作、そして、区間Aを参照することを維持する動作の3つの動作に大別される。
より具体的には、動作Zにて区間Aから中間段階の線図Zへと参照するグラフ領域を変更する。これは図8のステップS114に相当する。その後、動作Z’にて、目標Gまたは操舵トルクTの変化に基づいて、中間段階の線図Zから区間Bへと参照するグラフ領域を変更する必要があるか否かをタイマしきい値ΔT以内で判断する。これはタイマしきい値ΔT以内でどれだけ目標Gまたは操舵トルクTの変化が現れたのかを検出することで判断でき、切り増し方向に十分大きい変化が現れたときに、参照するグラフ領域を変更する必要がないと判断される。この動作は図8のステップS117に相当する。
そして、動作Z’にて目標Gまたは操舵トルクTの変化に基づき参照するグラフ領域を変更する必要がないと判断されたため、動作Z’にて中間段階の線図Zから区間Aへと参照するグラフ領域を切り替え本来参照していた区間Aを維持する。これは図8のステップS116に相当する。なお、時刻Tにおいても同様である。
以上の説明のように、本実施形態の操舵支援装置によれば、操舵トルクを演算する際に、参照されるグラフ領域が区間Aから区間Bに変わる際に、または、区間Cから区間Dに変わる際に、中間段階の線図Zを経由する。すなわち、操舵トルクが増加傾向から減少傾向に変わる際に、増加傾向時のトルク設定値と減少傾向時のトルク設定値の中間の値を経て、操舵トルク値が変更される。このため、操舵機構5に付与される操舵トルクTが一気に大幅変動されることが防止される。したがって、操舵トルクTの大幅な変動がハンドルに伝わることにより、ドライバのハンドルフィーリングが悪化することが抑えられる。
また、参照するグラフを一旦中間段階の線図Zに設定した後に、更に、切り増しの操舵に相当するグラフに変更すべきか切り戻しの操舵に相当するグラフに変更すべきかを目標横加速度Gまたは操舵トルクTの変化量に基づき判断することで、走行状況に応じて操舵トルクTの変更可否に対する適切な判断を行うことができる。これにより、例えば走行車線10の白線10R,Lを認識する際に発生するノイズなどによる不要反転などを防止することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
例えば、操舵トルクの増加傾向時のトルク設定値と減少傾向時のトルク設定値の間に設ける中間段階の値は上記のように一つのものに限られなく、2つ以上設けてもよい。また、図6,7,9,10に示す目標Gに対する操舵トルクTのグラフは、直線に限られなく、車両特性等に応じた曲線等で適宜変更可能である。更に、中間段階の線図Zは、目標Gが増加傾向から減少傾向に変わった際の中間段階の線図と、目標Gが減少傾向から増加傾向に変わった際の中間段階の線図とに分けて、別々に設けてもよい。
本発明の実施形態に係る操舵支援装置の構成概要図である。 走行車線10の画像データが取得される状況を説明するための図である。 走行車線10の各種パラメータを説明するための図である。 図1の操舵支援装置の動作を示すためのブロック図である。 車両1が走行する道路をイメージした図である。 目標横加速度Gに対する操舵トルクTを表すグラフである。 目標横加速度Gに対する操舵トルクTを表すグラフである。 図1の操舵支援装置の動作を示すためのフローチャートである。 目標横加速度Gに対する操舵トルクTを表すグラフである。 目標横加速度Gに対する操舵トルクTを表すグラフである。
符号の説明
1…車両、10…走行車線、2…画像部、21…CCDカメラ、22…画像処理部、3…センサ部、31…舵角センサ、32…車速センサ、33…ヨーレートセンサ、4…ECU、41…F/Fコントローラ、42…トルク演算部、5…操舵機構、56…モータドライバ、57…モータ、FL,FR…車輪。

Claims (3)

  1. 走行路の所定の位置を走行するように操舵機構に操舵トルクを付与する操舵支援装置において、
    前記走行路の所定の位置を走行する為の操舵トルク値が増加傾向である場合に、減少傾向である場合と比べて大きい値に設定されるとともに、
    前記操舵トルク値が増加傾向から減少傾向に変わる際には、前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値との間の値に前記操舵トルク値が設定されること、
    を特徴とする操舵支援装置。
  2. 前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値との間の操舵トルク値は、前記増加傾向時の値に比べて小さく、かつ、前記減少傾向時の値に比べて大きく設定されることを特徴とする請求項1に記載の操舵支援装置。
  3. 前記操舵トルク値が前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値との間の値に設定された場合に、前記操舵トルク値を前記増加傾向時の値に設定すべきか前記減少傾向時の値に設定すべきかを判断する手段を備え、
    その判断に基づいて前記操舵トルク値を前記増加傾向時の値と前記減少傾向時の値のいずれかに選択すること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の操舵支援装置。

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JP2014118024A (ja) * 2012-12-15 2014-06-30 Mazda Motor Corp 車線維持支援装置

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