JP2006331709A - 異方導電性材料、機械要素及び素子 - Google Patents

異方導電性材料、機械要素及び素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 高圧及び高剪断下で摺動する面の摩擦及び帯電の軽減に寄与する新規な異方導電性材料を提供する。
【解決手段】 電位差を有する二面間に介在する、円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子を少なくとも含む薄膜からなる異方導電性材料であって、1MPa以上の圧力下、剪断を加えることによって、剪断面と垂直な方向の電気伝導率が増加する異方導電性材料である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アクティブ制御が可能な異方導電性材料に関し、通常は絶縁性であるが、高圧力下、剪断面に垂直方向の導電性が向上する異方導電性材料、およびそれを用いた導電または帯電防止機能を有する摺動部品等の機械要素、ならびにそれを用いた素子に関する。
過去数年間にわたり、導電性を持つ潤滑グリースへの関心が高まっており、とりわけ自動車分野への応用に対する関心が高い。そのような導電性グリースは、使用中の軸受における静電気の発生防止や、軸受のアースとして利用できる。また、軸受を通る電気伝導に使用することができ、特に軸受を構成する部品や面の間に用いることができる。
金属セッケン増粘剤の存在にも拘らず、従来のセッケン基濃縮潤滑グリースは絶縁体に分類される。これは、使用中、軸受の表面に形成される油膜の電気抵抗が高いことに起因すると考えられる(オーム計で1010以上)。
従来公知の導電性潤滑剤の一例に、オラピ(Orapi)GRN という商標名で市販されている潤滑剤がある。これは、潤滑剤基油中に黒鉛を分散したものである。オラピ(Orapi )GRN およびそれと類似の導電性潤滑剤は、増粘剤を含まない。そのため、潤滑性が不十分であるか、従来の導電性を持たないグリースに比べて低い。特に、既知の導電性潤滑剤は機械的な安定度が不十分であり、高速回転に制限があったため、例えば自動車分野に応用するには信頼性が低かった。
ところで、一般の事務機器や情報機器、例えば複写機においては、その可動部分には多数の転がり軸受が使用されている。このような転がり軸受の内外輪の軌道面と転動体との間には回転中は油膜が形成されていて、軌道面と転動体とは非接触となっている。このような転がり軸受においては回転に伴って静電気が発生するため、その放射ノイズが複写機の複写画像に歪み等の悪影響を及ぼす等の不都合が生じる場合がある。このような不都合が生じることを防止するため、導電性グリースを転がり軸受内部に封入することにより、内外の軌道輪及び転動体を導電状態にするとともに、内外の軌道輪のうち一方を接地することにより、静電気を該転がり軸受から除去するという対策が取られている。そして、導電性グリースとしては、カーボンブラックを増ちょう剤及び導電性付与添加剤として添加したものが主流であった(例えば、特許文献2に記載のもの)。
しかしながら、このような導電性グリースを封入した転がり軸受は、初期においては優れた導電性を示す(内外の軌道輪及び転動体が導電状態となっている)ものの、導電性が経時的に低下して転がり軸受の内外輪間の電気抵抗値(以降は軸受抵抗値と記す)が大きくなることがあるという問題点があった。そして、このような現象の原因としては、以下のようなことが考えられた。
まず、導電性グリースは当初は転がり軸受の軌道輪の軌道面と転動体との接触面に十分に存在していて、その導電性グリース中のカーボンブラックにより、軌道輪と転動体との間の導電性が確保されるが、軌道輪と転動体との相対運動により、時間の経過とともに導電性グリースが前記接触面から排除されたり、また、カーボンブラック粒子のチェーンストラクチャーが破壊されたりするため、導電性が低下して軸受抵抗値が経時的に大きくなるという現象が生じるのである。
また、特許文献3にも記載されているように、長時間にわたって転がり軸受を回転させた場合には、転がり軸受の軌道面に生じる酸化被膜が内外輪間の電気抵抗値を上昇させるとも言われている。この対策としては、転がり軸受の転がり接触面を保護するために極圧添加剤や摩耗防止剤を用いる方法(特許文献3を参照)や、無機化合物微粒子を配合する方法(特許文献4を参照)がある。しかしながら、極圧添加剤は、一般的には高温では効果が小さい場合が多い。また、単に無機化合物微粒子を添加した場合は、グリースが経時的に硬化又は軟化したり、長期的に離油度が安定しないことが多い。
さらに、複写機、レーザービームプリンタ等の事務機器のヒートローラ支持部や定着部などは、約200℃の高温となる場合がある。よって、該部分に使用される転がり軸受に用いる導電性グリースは、通常の潤滑油を基油として用いたものでは耐熱性が十分ではないため、長期にわたって十分な導電性を確保することは困難であった。
通常、導電性グリースの基油として使用される潤滑油としては、例えば、鉱油、ポリα−オレフィン、エーテル油、エステル油などがあげられるが、これらの基油の使用限界温度はせいぜい160℃である。そのため、上記のような高温となる部分に用いられる転がり軸受においては、導電ブラシを用いて静電気を除去するという旧来の方法が依然として用いられている。
さらに、特許文献5には、フタル酸ジブチル吸収量(以降はDBP吸収量と記す)の小さいカーボンブラックを比較的多量に配合して、長期間にわたる導電性の安定化を図った導電性グリースが記載されている。事務機器や情報機器には、グリースや油分により劣化が促進されやすい樹脂部品が多用されているため、転がり軸受からのグリース漏れや油分の分離は極力少ない方が好ましいが、特許文献5に記載の導電性グリースは、増ちょう剤でもあるカーボンブラックのDBP吸収量が小さいため、特に高温において離油度が高くなるおそれがある。
また、特許文献6及び7には、高温耐久性を考慮してフッ素油及びカーボンブラックを基本成分とする導電性グリースが記載されているが、離油度や転がり軸受に封入して使用した場合のグリース漏洩の問題について、改善の余地がある。
上記のように帯電防止のために摩擦摺動部位の導電性の必要は明白であるが、有機化合物基油自体にその導電性が付与された潤滑剤という概念はこれまでなかった。
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と記す)としては、1960年代にアントラセン単結晶などの有機固体でのキャリア注入型EL素子が詳しく研究されていた。現在一般に有機EL素子に用いられているキャリア輸送層の移動度は10-5〜10-3cm2/Vsecであり、アモルファス材料でも10-3cm2/Vsec程度が限界といわれている。
キャリア輸送層として導電性液晶を用いた例が知られている。例えば、非特許文献1には長鎖トリフェニレン系化合物である、ディスコティック液晶の液晶相(Dh相)の移動度が10-3〜10-2cm2/Vsecであり、メゾフェーズでの移動度が10-1cm2/Vsecであることが報告されている。
このような液晶をエレクトロルミネッセンスに利用する試みとしては、非特許文献2には、トリフェニレン系のディスコティック液晶を用いた有機EL素子が報告されている。他に、非特許文献3や、非特許文献4にも示されている。
また、Wendorff等は、ディスコティック液晶からなる膜をスピンコーティング法を用いて形成し、その上にLB法(ラングミュア・ブロジェット法)により発光層を形成した発光素子について報告している(非特許文献5)。この報告の中で、上記構成の発光素子がEL発光した旨の記載がある。液晶の配向に関しては、成膜後の状態では好ましくないホモジニアス配向であり、一旦、液体相になる温度まで加熱した後、液晶相に冷却して再配向処理を施すことで望ましい液晶配向を得ている。
しかし、本発明者等の実験によると、スピンコート法により成膜した導電性液晶層は、膜厚ムラや、ミクロな液晶の均一配向性、膜の均質性に問題がある。均一配向性に関しては、クロスニコル下の偏光顕微鏡で観察すると、液晶の複屈折による光漏れの有無により配向性の良し悪しが判定できる。スピンコート法による導電性液晶層は、配向性の良い部分と悪い部分が混在し、これは溶媒の蒸発時の不均一性を反映したものと考えられる。スピンコート法によって比較的配向性のムラの小さい液晶層を形成したとしても、電流特性や発光特性は満足できるものではない。
特開平2005−97532号公報 特公昭63−24038号公報 特開2002−80879号公報 特開2003−42166号公報 特開2002−53890号公報 特開2001−304276号公報 特開2002−250353号公報 特開平2001−167888号公報 Nature, Vol.371, p.141, D. Adam et al Liquid Crystals,1997,Vol.23,No.4,pp613−617,INGAH.STAPFF et al POLYMERS FOR ADVANCED TECHNOLOGIES,Vol.9,p.443−460,1998 ADVANCED MATERIALS 1997,Vol.9,No.1,p.48 Polym.Adv.Technol.p.443(1998)
本発明は、高圧及び高剪断下で摺動する面の摩擦及び帯電の軽減に寄与する新規な異方導電性材料を提供することを課題とする。高圧・高剪断が負荷された場合も、摺動部の摩擦によって生じする磨耗及び帯電が軽減された摩擦摺動部品等の機械要素、及び圧力/電気変換可能な素子を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 電位差を有する二面間に介在する、円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子を少なくとも含む薄膜からなる異方導電性材料であって、1MPa以上の圧力下、剪断を加えることによって、剪断面と垂直な方向の電気伝導率が増加する異方導電性材料。
[2] 前記円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子が、その分子構造中にπ電子共鳴構造を有する[1]の異方導電性材料。
[3] 前記円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子の40℃での粘度圧力係数が20GPa-1以下である[1]又は[2]の異方導電性材料。
[4] 互いに異なる周速で運動する二面間に介在して剪断をうけている際に、前記円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子が、その拡散断面積が最も大きくなる分子面を前記二面に対して平行にして配向した分子集合体を形成する[1]〜[3]のいずれかの異方導電性材料。
[5] 電気伝導率が、光照射の強度に応じて増減する[1]〜[4]のいずれかの異方導電性材料。
[6] 前記薄膜の膜厚が、10MPa以上の圧力と剪断のかかった状態で1μm以下である[1]〜[5]のいずれかの異方導電性材料。
[7] 相対運動し且つ電位差を有する二面と、該二面間に配置された[1]〜[6]のいずれかの異方導電性材料とを有する機械要素。
[8] 少なくとも一方がピエゾ素子であり且つ電位差を有する二面と、該二面間に配置された[1]〜[6]のいずれかの異方導電性材料とを有する素子。
[9] 電位差を有し対向配置された二面間に、少なくとも一種の円盤状メソゲン骨格を有する有機化合物を含有する組成物を供給して、前記有機化合物の分子を配向させて薄膜を形成する工程と、前記二面を相対運動させることによって、前記組成物に1MPa以上の圧力と、剪断とを加えて、前記薄膜の剪断面と垂直な方向の電気伝導率を増加させる工程とを含む摺動面の摩擦および帯電を防止する方法。
[10] 電位差を有し対向配置された二面間に、少なくとも一種の有機化合物を含有する組成物を供給して、前記有機化合物の分子を会合させて円盤状構造の分子集合体からなる薄膜を形成する工程と、前記二面を相対運動させることによって、前記組成物に1MPa以上の圧力と、剪断とを加えて、前記薄膜の剪断面と垂直な方向の電気伝導率を増加させる工程とを含む摺動面の摩擦および帯電を防止する方法。
本発明によれば、高圧及び高剪断下で摺動する面の摩擦及び帯電の軽減に寄与する新規な異方導電性材料を提供することができる。また本発明によれば、高圧・高剪断が負荷された場合も、摺動部の摩擦及び帯電が軽減された摺動部品等の機械要素、及び圧力/電気変換可能な素子を提供することができる。
発明の実施の形態
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明は、電位差を有する二面間に介在する、円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子を少なくとも含む薄膜からなる異方導電性材料に関する。該薄膜に、1MPa以上の圧力下、剪断を加えることによって、剪断面と垂直な方向の電気伝導率が増加する。本発明に使用可能な有機化合物は、円盤状メソゲン骨格を有する化合物であるか、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する化合物であれば、いずれも使用することができる。液晶・非液晶いずれであってもよい。したがって、材料の選択の幅が広がり、導電(or電荷輸送)性に優れた性能を具備した化合物から選択できる。また、本発明では、円盤状メソゲン骨格を有する分子の動力学的な配向を利用しているので、高速の剪断速度にも容易に追随することができる。さらに、動力学的配向の秩序度は、熱力学的配向秩序の最高秩序度を実現する場合もあり、温度の影響を受けず、しかも条件を調整することでサーモトロピック液晶系での最高値を常に得ることができ、最高度の導電性を発現することができる。さらに、本発明は、光照射の有無、その強度によって光伝導性の機能を発現させ、電気伝導度をさらに自由に制御することができる。また、ピエゾ素子の素早い駆動速度に追随して、分子配向を生じさせることができるので、高速なアクティブ制御が可能となる。
本発明では、円盤状メソゲン骨格を有する有機化合物を用いるか、もしくは会合により円盤状構造の分子集合体を形成する有機化合物を用いる。円盤状構造の分子集合体は、分子の会合によって組織化されて全体として円盤状構造を形成するものである。水素結合性基等の分子間相互作用を誘起させる基を有する分子を用いた場合は、分子間相互作用により分子が会合し、組織化されて、所定の条件下で円盤状構造の分子集合体が形成される。また、円盤状メソゲン骨格を有する液晶性円盤状分子を用いる場合は、所定の条件下で、該液晶性分子が高秩序に配向して、薄膜が形成される。
なお、本発明において「有機化合物」の用語は、有機化合物を配位子とする金属錯体を含む意味で用いるものとする。
本発明には、メソゲン骨格を有する有機化合物として、円盤状液晶を用いてもよく、かかる場合は、電気導電性の高い円盤状液晶を用いるのが好ましい。円盤状液晶の電気伝導性に関しては、液晶便覧 液晶便覧編集委員会 編 丸善(株)発行 (2000)の第6章2項 導電性材料 に詳細に記載されており、ルイス酸や電荷移動錯体をドーパントとして添加することがさらに好ましいと記載されている。本発明の異方導電性材料中にもかかる材料を添加してもよい。
メソゲン構造とは、中間相(=液晶相)形成分子(液晶辞典、日本学術振興会、情報科学用有機材料第142委員会、液晶部会編、1989年等参照)とも称され、液晶性分子構造とほぼ同義である。典型的メソゲンとして具体的には、棒状構造でネマティック相及びスメクティック相を呈するものでは、アゾメチン基、フェニルアゾ基、フェニルアゾキシ基、安息香酸エステル基、ビフェニル基、ターフェニル基、シクロヘキシルカルボン酸エステル基、フェニルシクロヘキサン基、ビフェニルシクロヘキサン基、ピリミジン基、ジオキサン基、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル基、シクロヘキシルエチル基、トラン基、2,3−ジフルオロフェニレン基、アルケニル基、シクロヘキシル基またはそれらの複合、連結した基が挙げられる。コレステリック相を呈するものでは、コレステロール誘導体エステルが挙げられる。平板状及び円盤状構造でディスコティックネマティック相およびカラムナー相を呈するものでは、六置換ベンゼン、1,3,5−トリアジン、ヘキサアリールエチニルベンゼン、2,3,6,7,10,11−六置換トリフェニレン、2,3,7,8,12,13−六置換トルキセン、六置換トリオキサトルキセン、1,2,3,5,6,7−六置換アントラキノン、八置換フタロシアニンまたはポルフィリン、六置換マクロサイクレン、ビス(1,3−ジケトン)銅錯体、テトラアリールビピラニリデン、テトラチアフルバレン、イノシトール等が挙げられる。
円盤状メソゲン骨格を有する化合物とは、その母核に円盤状メソゲン骨格を含む化合物をいう。側鎖部を除いた母核部分の円盤状の形態的特徴は、例えば、その原形化合物である水素置換体について、以下のように表現され得る。まず、分子の大きさを以下のようにして求める。
1)該分子につき、できる限り平面に近い、好ましくは平面分子構造を構築する。この場合、結合距離、結合角としては、軌道の混成に応じた標準値を用いることが好ましく、例えば日本化学会編、化学便覧改訂4版基礎編、第II分冊15章(1993年刊 丸善)を参照することができる。
2)前記1)で得られた構造を初期値として、分子軌道法や分子力場法にて構造最適化する。方法としては例えば、Gaussian98、MOPAC2000、CHARMm/QUANTA、MM3が挙げられ、好ましくはGaussian98である。
3)構造最適化によって得られた構造の重心を原点に移動させ、座標軸を慣性主軸(慣性テンソル楕円体の主軸)にとる。
4)各原子にファンデルワールス半径で定義される球を付与し、これによって分子の形状を記述する。
5)ファンデルワールス表面上で各座標軸方向の長さを計測し、それらそれぞれをa、b、cとする。
以上の手順により求められたa、b、cを用いて円盤状の形態を定義すると、c≦b<aかつa/2≦b≦a、好ましくはc≦b<aかつ0.7a≦b≦aと表すことができる。また、b/2>cであることが好ましい。
また、本発明に使用可能な有機化合物の具体例を挙げると、例えば、日本化学会編、季刊化学総説No.22「液晶の化学」第5章、第10章2節(1994年刊 学会出版センター);Mol.Cryst.Liq.Cryst.71巻、111頁(1981年);C.Destradeらの研究報告;Angew.Chem.96巻、70頁(1984年) B.Kohneらの研究報告;J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1794頁(1985年) J.M.Lehnらの研究報告;及びJ.Am.Chem.Soc.,116巻、2655頁(1994年) J.Zhang、J.S.Mooreらの研究報告;に記載の母核化合物の誘導体が挙げられる。例えば、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、ヘキサエチニルベンゼン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、コロネン誘導体およびフェニルアセチレンマクロサイクルの誘導体が挙げられる。さらに、日本化学会編、“化学総説No.15 新しい芳香族の化学”(1977年東京大学出版会刊)に記載の環状化合物およびそれらの複素原子置換等電子構造体を挙げることができる。また、上記金属錯体の場合と同様に、水素結合、配位結合等により複数の分子の集合体を形成して円盤状の分子となるものでもよい。これらを分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された構造により円盤状液晶化合物が形成される。
円盤状メソゲン骨格を有する化合物の分子の中心の母核の好ましい例には、下記一般式[1]〜[6]のいずれかで表される構造が含まれる。なお、*は側鎖に結合する部位を表すが、全ての箇所に側鎖が結合している必要はなく、また式中の結合可能な他の部位に側鎖が結合していてもよい。Mは金属イオン又は2つの水素原子を表し、即ち、[5]及び[6]は中心金属を含んでいても、含んでいなくてもよい。
Figure 2006331709
本発明において、前記有機化合物は、その分子構造中にπ電子共鳴構造を有しているのが好ましく、より具体的には、分子中の母核に、極性元素を含むπ共役系の骨格を有するのが好ましく、特に好ましくは合成的に安価に入手できる1,3,5−トリス(アリールアミノ)−2,4,6−トリアジン環が挙げられる。
側鎖としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基が挙げられ、側鎖中にアリール基、複素環基を含んでいても良い。また、C.Hansch、A.Leo、R.W.Taft著、ケミカルレビュー誌(Chem.Rev.)1991年、91巻、165〜195ページ(アメリカ化学会)に記載されている置換基で置換されていてもよく、代表例としてアルコキシ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子が挙げられる。更に側鎖中に、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基のような官能基を有していても良い。
より詳細には、側鎖部分としては、例えば、アルカノイルオキシ基(炭素数2〜40、好ましくは4〜30のアルカノイルオキシ基で、例えば、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ノナノイルオキシ、デカノイルオキシ、ウンデカノイルオキシ)、アルキルスルホニル基(炭素数1〜40、好ましくは4〜30のアルキルスルホニル基で、例えば、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、ノニルスルホニル、デシルスルホニル、ウンデシルスルホニル)、アルキルチオ基(炭素数1〜40、好ましくは4〜30のアルキルチオ基で、例えば、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、ドデシルチオ)、アルコキシ基(炭素数1〜40、好ましくは3〜30のアルコキシ基で、例えば、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ)、2−(4−アルキルフェニル)エチニル基(例えば、アルキル基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル)、末端ビニルオキシ基(炭素数3〜40、好ましくは4〜30の、末端ビニルオキシ基で、例えば、7−ビニルヘプチルオキシ、8−ビニルオクチルオキシ、9−ビニルノニルオキシ)、4−アルコキシフェニル基(炭素数7〜40、好ましくは8〜30の4−アルコキシフェニル基で、例えば、アルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシフェニル基)、アルコキシメチル基(炭素数2〜40、好ましくは3〜30のアルコキシメチル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有するアルコキシメチル基)、アルキルチオメチル基(炭素数2〜40、好ましくは3〜30のアルコキシチオメチル基で、例えばアルキルチオ基として、前述のアルキルチオ基で挙げたものを有するアルコキシチオメチル基)、2−アルキルチオエチル(炭素数3〜40、好ましくは4〜30の2−アルキルチオエチル基で、例えばアルキルチオ基として、前述のアルキルチオ基で挙げたものを有する2−アルキルチオエチル基)、2−アルキルチオエトキシメチル(炭素数4〜40、好ましくは5〜30の2−アルキルチオエトキシメチル基で、例えばアルキルチオ基として、前述のアルキルチオ基で挙げたものを有する2−アルキルチオエトキシメチル基)、2−アルコキシエトキシメチル基(炭素数4〜40、好ましくは5〜30の2−アルコキシエトキシメチル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する2−アルコキシエトキシメチル基)、2−アルコキシカルボニルエチル基(炭素数4〜40、好ましくは5〜30の2−アルコキシカルボニルエチル基、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する2−アルコキシカルボニルエチル基)、コレステリルオキシカルボニル基、β−シトステリルオキシカルボニル基、4−アルコキシフェノキシカルボニル基(炭素数8〜40、好ましくは9〜30の4−アルコキシフェノキシカルボニル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシフェノキシカルボニル基)、4−アルコキシベンゾイルオキシ基(炭素数7〜40、好ましくは8〜30の4−アルコキシベンゾイルオキシ基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシベンゾイルオキシ基)、4−アルキルベンゾイルオキシ基(炭素数8〜40、好ましくは9〜30の4−アルキルベンゾイルオキシ基で、例えばアルキル基として、前述のアルキル基で挙げたものを有する4−アルキルベンゾイルオキシ基)、4−アルコキシベンゾイル基(炭素数8〜40、好ましくは9〜30の4−アルコキシベンゾイル基で、例えばアルコキシ基として、前述のアルコキシ基で挙げたものを有する4−アルコキシベンゾイル基)が挙げられる。また、前述のもののうち、フェニル基は他のアリール基(例えば、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセン基)でもよいし、また前述の置換基に加えて更に置換されてもよい。また、該フェニル基は複素芳香環(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアリル基、オキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基)であってもよい。
一つの側鎖に含まれる炭素原子の数は1以上40以下が好ましく、1以上30以下がさらに好ましい。
ここで、液晶性にとっては、立体的要因である直線性や平面性と剛直性、及び静電的要因である分極率の異方性が重要である。ほぼすべての液晶性化合物の構造は、模式的に、剛直なコア構造とフレキシブルな側鎖で表すことができる。メソゲン構造とは、中間相(メソフェーズ)が誘起(ジェネレート)される構造という造語であり、前者の剛直なコア構造部分を指す。液晶性化合物は、単独で、ある特定の温度、圧力範囲で熱力学的に安定な液晶相を呈するサーモトロピック液晶と、溶媒中である特定の温度、圧力、濃度範囲で液晶相を呈するリオトロピック液晶とに分類される。しかし、メソゲン構造とフレキシブルな側鎖を有する化合物でも必ずしも液晶性を呈するわけではない。従って、本発明の異方導電性材料に用いられる有機化合物は、メソゲン構造を分子内に有することは必須だが、液晶性化合物である必要はない。
液晶相を形成し得るメソゲン構造は、例えば、環構造、結合基及び側方置換基に分けられる。環構造の例には、上記した様に、ベンゼン環やシクロヘキサン環などの六員環構造;ビフェニルやターフェニルなどのように環構造が直結しているもの;トランやフキサフェニルエチニルベンゼンのように環が結合基を介して連結しているもの;ナフタレン、キノリン、アントラセン、トリフェニレンやピレンなどの縮合環;及び環のなかに窒素、酸素あるいは硫黄元素などを含むヘテロ環から構成されるアザクラウン、ポルフィリンやフタロシアニン;などがある。また、結合基としては、エステル、エーテル、チオエーテル、イミノ、アゾメチンおよびビニル、アセチレンなどがある。側方置換基はその大きさ、双極子モーメント及び置換位置が液晶性に影響し、その例には、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、メチル基などが含まれる。液晶相を形成し得るメソゲン構造については、液晶便覧 第三章「分子構造と液晶性」pp259 液晶便覧編集委員会編 丸善株式会社発行 (2000)に記載がある。
有機化合物が有するこの剛直な平面構造による剛体的斥力が液晶性発現に重要な因子となっているが、同時に存在するフレキシブルな側鎖が自由に振舞える空間、すなわち自由体積が大きいことが重要であることを見出した。すなわち、円盤状メソゲン構造を有する化合物は、剛直な平面構造の環のまわりにフレキシブルな側鎖を数本配するがゆえに、相対的にそれら側鎖の自由体積が大きくなり、圧力がかかり、自由体積が圧縮される状況下でもその自由体積を確保しうることが期待される。それゆえに、相対的に圧力に対する粘度の上昇率が小さくなり、動植物油脂と同等の小さな粘度圧力係数を呈する。したがって、高圧下でも、剪断方向には低い粘性係数を示し、界面方向には平面分子が高い吸着力と配向(積層)性による高い粘性係数を発現し、これまでのいわゆる等方性の油性化合物では発現し得なかった極圧下での低粘性と耐摩耗性を両立しているものと推定される。さらに、かかる構造により、動的配向が可能になり、高圧・高剪断下における電気伝導率の増加を引き起こすものと推定される。
以下に、本発明に使用可能な円盤状メソゲン骨格を有する有機化合物の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
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会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
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本発明の異方導電性材料は、前記有機化合物の少なくとも一種を含有する組成物から形成される。勿論、該組成物は、前記有機化合物のみからなっていてもよい。該組成物は、40℃での粘度圧力係数が、20GPa-1以下であるのが好ましく、13GPa-1であるのがより好ましい。粘度圧力係数は、トライボロジスト 第38巻 第10号 pp927 (1993)に記載される方法によって、算出することができる。
但し、40℃で固体の化合物の場合は、測定条件で液体を呈する2以上の温度で粘度圧力係数を求め、それらの値を低温側に外挿して求めた40℃の値と定義する。
また、本発明の異方導電性材料に、光を照射してさらに電気導電性を高めることもできる。円盤状化合物の光伝導性は活発に研究されている。光伝導性の材料を用いることで、光照射の強度に応じて、電気導電性をさらに高め、所望の範囲の電気伝導率を得ることができる。
また、前記組成物にキャリヤとよばれる電荷を運搬する化合物(ドーパント)を微量添加して異方導電性材料を調製することにより、その導電性を飛躍的に高めることも可能である。ドーパントとしては、ルイス酸を用いることが一般的であるが、TCNQとの電荷移動錯体の形成による導電性の向上も可能である。
本発明の異方導電性材料は、摩擦摺動部品の摺動面における摩擦及び帯電の軽減に寄与する。例えば、相対運動し、且つ電位差を有する二面と、該二面間に配置された本発明の異方導電性材料とを有する摩擦摺動部品は、高圧・高剪断の条件下においても、摩擦による摺動面の磨耗や摺動面の帯電による静電気の発生等がない、または抑制されている。
かかる摩擦摺動する二面の周速度については特に限定されず、大きい周速度をu1(>0)、小さい周速度をu2、即ち|u1|>|u2|と定義すると、平均速度(u2+u1)/2はゼロより大きく無限に可能であるが、通常は二面の平均速度は1000m/s以下であり、好ましくは1cm/s以上50m/s以下である。2×(u2−u1)/(u2+u1)で定義される滑り率Σの絶対値もゼロより大きく無限に可能であるが、u2がゼロすなわち停止している機械要素では−2となり、−2≦Σ<0の範囲で用いられるが、通常は−2以上で−0.01以下の範囲で用いられる機械要素が多い。
(u1−u2)/二面間の厚さで定義される剪断速度は、ゼロより大きく無限に可能であるが、通常は109/s以下で用いられ、好ましくは10/s以上107/s以下で用いられる。前記組成物が、常圧で液晶性を呈する場合は、小さな剪断速度で所望の高秩序配向度が維持されるが、非液晶性の場合は剪断による高秩序配向化が必要であり、たとえば104/s以上の剪断速度を要することもあるが、それは組成物に含有される前記有機化合物の構造や、圧力又は温度等によって変化するので、適正な範囲を一義的に定義することは困難である。組成物に含有される前記有機化合物の配向秩序度は、通常、液晶の配向秩序度の定義を用いると、好ましくは0.3以上0.99以下である。また、二面間の膜厚は、通常10nm以上100μm以下であり、好ましくは50nm以上5μm以下であるが、特に、本発明では、10MPa以上の圧力と剪断のかかった状態で1μm以下であるのが好ましい。
二面間の平均圧力に関しては、通常、100MPa程度の圧力下から有機化合物が非圧縮性となり、化学反応に対する「質量作用」の効果があまり重要でなくなり、圧力が有機化合物の立体障害を克服して反応する例があることが、K.E.WEALE著 「高圧化学反応」 培風館発行(1969)p1.に記載されている。本発明では、前記組成物は、10MPa以上の圧力下で圧力上昇に伴いより低いトラクション係数を発現し、トラクション係数の最小値を発現させるのが好ましい。さらに、100MPa以上の圧力下で最小のトラクション係数を発現させるのがより好ましい。また、前記組成物は、0.07以下の低トラクション係数を発現させるのが好ましく、0.05以下の低トラクション係数を発現させるのがさらに好ましい。10MPa以上の領域の圧力下から、ガラスや鋼でもその界面に弾性歪みの影響が出始めることが分かっている。従って、本発明の機械要素は、主な運動が10MPa以上の圧力下で行われるのが好ましく、50MPa以上の圧力で行われるのがより好ましく、100MPa以上の圧力下で行われるのがさらに好ましい。
前記二面間の電位差の範囲は100mV〜1000Vまで、その用途に応じて用いられるが、好ましくは5〜50Vの範囲である。
前記二面の材質としては、機械構造用炭素鋼、ニッケルクロム鋼材・ニッケルクロムモリブデン鋼材・クロム鋼材・クロムモリブデン鋼材・アルミニウムクロムモリブデン鋼材などの構造機械用合金鋼、ステンレス鋼、マルチエージング鋼、炭化珪素・窒化珪素・アルミナ・ジルコニアなどのセラミックス、鋳鉄、銅・銅−鉛・アルミニウム合金とその鋳物、ホワイトメタル、高密度ポリエチレン(HDPE)・四フッ化エチレン樹脂(PFPE)・ポリアセタール(POM)・ポリフェニレンサルファイド(PPS)・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・ポリアミドイミド(PAI)・ポリイミド(PI)などの各種プラスチック、プラスチックにガラス・カーボン・アラミドなどの繊維を複合化した有機−無機複合材料、セラミックと金属の複合材料サーメットなどが挙げられる。
また、本発明の異方導電性材料は、圧力/電気変換素子に利用することができる。例えば、少なくとも一方がピエゾ素子であり且つ電位差を有する二面と、該二面間に配置された本発明の異方導電性材料とを有する素子は、高速駆動が可能な圧力/電気変換素子となる。ピエゾ素子は、摩擦摺動機械ではなく、高圧、高剪断場を微小素子として実現させうる。ピエゾ素子は、電圧がかかると伸縮する圧電素子で、ピエゾ素子は機械的に動くのではなく、電圧により微小な動きで伸縮する。ピエゾ素子の制御は10KHz程度の高速で行われるため、分子を緩和時間内で一定の配向状態に保つことが可能になる。そこで、OFF状態では無配向の絶縁状態、ON状態で高電気伝導性という二値制御が可能になる。
本発明の異方導電性材料は上記用途に限定されず、例えば、軸受における静電気発生の防止もしくは減少、回転する電気的接触部分を持つころ軸受、電気エネルギーを機械エネルギーに変換したり、その逆に変換する装置におけるスパーク形成の防止もしくは減少;および軸受を流れるあるいは軸受の部品間や面間を流れる電気伝導を得る等の目的に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
2本の銅製電極(10mm離す)に、500Vの電圧を印加し、該電極間に下記表1に示す例示化合物を介在させて、静的電気抵抗を測定した。この方法は、DIN 53482に規定されている標準的手法に似たものである(DIN 53482は電気用途に用いる材質の試験方法であり、非金属物質の電気抵抗を測定する国際基準・規格である)。
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静的導電性の点では、用いた素材はすべて絶縁性といえる高抵抗であったが、円盤状メソゲン骨格を有する有機化合物は、比較対照の導電性グリース(フロイル 関東化成工業(株))に比べてさらに高い電気抵抗を示した。このことは、静的試験の条件下では、いずれの円盤状化合物は配向しておらず、ホッピング伝導もイオン伝導も実質的に電流の流れとして寄与しておらず、円盤状化合物またその絶縁性側鎖が電気伝導性を抑制または阻害することを示唆している。
次に、標準型DGBB 6205の軸受における本発明の素材の電気抵抗は、次のような方法で測定した。DGBB 6205軸受をSKF A−0スピンドルおよびハウジングに装着した。SKF A−0スピンドルを平ベルト滑車および電気モータによって駆動し、それらの滑車およびモータを変周器によって制御した。これによって、スピンドルを0〜3000rpmの速度で作動させた。被験軸受には機械的な負荷を加えた。その手法としては、被験軸受のハウジングに接続したねじ込みバーの上のナットを回転させた。加えられた負荷はロードセルおよびひずみ度インジケータを使って監視し、0〜3000N(ラジアル荷重)の範囲に調節した。軸受中の抵抗を測定し、そのデータを汎用システムを使用して処理した。較正した電圧抵抗ミリアンペア計(オーム計)を利用して転がり接触による電気抵抗を測定した。採用した試験条件を以下に示す。
SKF社ERCでの軸受の試験条件
被験軸受 SKF 6205 2RZ/C3
速度(回転数/分) 速度漸増の場合 250、500、2500
速度漸減の場合 2000、500、250
負荷 2100N
軸受中の素材量 1.6g
5分間作動させた後、各速度段階における電気抵抗の平均を記録した。なお、表2(a)は、回転数の上昇時、表2(b)は回転数の下降時の、各剪断速度におけるころ軸受の動的抵抗の測定値である。
Figure 2006331709
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円盤状メソゲン骨格を有する有機化合物の例示化合物を用いると、剪断速度が高い(2000rpm)領域では、市販の導電性グリースと比較して、いずれも格段に低い接触抵抗を示した。これは円盤状メソゲン分子が、剪断によって配向することで電気伝導性が向上したことを示唆している。一方、比較対照のグリース、フロイルは、剪断速度が上昇するにつれて、接触抵抗が大きくなった。
本実施例の結果から理解できるように、円盤状メソゲン骨格を有する化合物(もしくは会合による円盤状構造の分子集合体を形成する化合物)を用い、高圧下、高剪断場で高秩序配向させて薄膜を形成すると、ころ軸受に流れる静電気を放電するのに必要な特性が容易に得られる。
本発明に用いているメソゲン骨格を有する有機化合物、又は会合により円盤状構造の分子集合体を形成する化合物は、粘度圧力係数が小さいので、現行の潤滑油に比較し、高圧力でより高潤滑性を発揮するという基本的特徴を有する。さらに、アルキル部位等の脂肪族基部位を相対的に少なくすることにより、耐熱性、耐酸化性を高くすることができる。通常は絶縁性であるが、高圧力下、剪断面に対し垂直方向の導電性が向上するように自己組織化する有機化合物を用いて、導電あるいは帯電防止機能を発現させているので、摩擦摺動部位に導電性潤滑油として効果的に用いることができる。
すなわち、現行の脂肪族化合物の潤滑油基油は絶縁性であるため、摺動によって発生する静電気の防止が大きな課題になっているが、本発明によれば、より厳しい摩擦摺動条件下で導電性が増加するために、効果的に帯電防止を行うことができる。
技術革新によるハイテク化が進む中、摩擦摺動部材の樹脂化またセラミックス化および有機無機複合材料化は加速度的に進んでおり、その帯電防止策が求められている。その用途には、従来導電性フィラーや導電性微粒子を含有する導電性グリースが開発されてきたが、激しい摩擦摺動条件での二面間の膜厚は数十ナノメートルのオーダーに及び、上記微粒子がその間隙に入り込み有効に機能することは困難である。
一方、本発明では、所定の有機化合物を基油そのものとして使用することができるので、その間隙に入り込み、そこでより高秩序に分子が配向するため導電性も向上し、帯電防止と高潤滑性を同時に発現することができる。
さらにその導電性の強度は膜厚に対応するため、その値を計測しフィードバック制御することで、厳しい摩擦条件を回避することが可能となり、摩耗抑制、機器の長寿命化につなげることが期待される。

Claims (8)

  1. 電位差を有する二面間に介在する、円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子を少なくとも含む薄膜からなる異方導電性材料であって、1MPa以上の圧力下、剪断を加えることによって、剪断面と垂直な方向の電気伝導率が増加する異方導電性材料。
  2. 前記円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子が、その分子構造中にπ電子共鳴構造を有する請求項1に記載の異方導電性材料。
  3. 前記円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子の40℃での粘度圧力係数が20GPa-1以下である請求項1又は2に記載の異方導電性材料。
  4. 互いに異なる周速で運動する二面間に介在して剪断をうけている際に、前記円盤状メソゲン分子、又は会合によって円盤状構造の分子集合体を形成する分子が、その拡散断面積が最も大きくなる分子面を前記二面に対して平行にして配向した分子集合体を形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方導電性材料。
  5. 電気伝導率が、光照射の強度に応じて増減する請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性材料。
  6. 前記薄膜の膜厚が、10MPa以上の圧力と剪断のかかった状態で1μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方導電性材料。
  7. 相対運動し且つ電位差を有する二面と、該二面間に配置された請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方導電性材料とを有する機械要素。
  8. 少なくとも一方がピエゾ素子であり且つ電位差を有する二面と、該二面間に配置された請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方導電性材料とを有する素子。
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