JP2006331652A - 透過型干渉電子顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の検出手法では、位相情報の再生において、(1)実時間観察が困難。(2)スループットが低い。という問題があった。
【解決手段】干渉縞を、検出器の上方に配置した1次元周期的なスリットを透過/不透過させて検出する。あるいは試料を電子線の通路から外した状態の干渉縞画像をメモリに記憶しておき、試料を電子線の通路に入れた状態の干渉縞画像と積算する。あるいは検出器から連続して逐次入力した試料を電子線の通路に入れた状態の干渉縞の画像を入力した順にそれぞれ別々の2個以上の数値演算器によって逐次処理した画像を入力した順に逐次出力する。
【選択図】図1

Description

本発明は電子線の干渉を利用して物質あるいは真空中の電磁場を計測する電子顕微鏡などの電子ビーム装置に関する。
電子線ホログラフィー法、あるいは透過型干渉電子顕微鏡法は試料による電子線の位相変化を計測することにより、物質あるいは真空中の電磁場を定量的に計測する手法である。ここで、簡単に電子線ホログラフィー法により試料の電磁場を定量的に計測できることを説明する。まず、試料に電位分布がある場合、試料を透過した電子線と試料近傍(真空)を通過した電子線の間に生じる位相変化は(数1)で与えられる。
ΔΦ=πV・t/(E・λ) (数1)
ここでVは試料の内部電位、tは試料の厚さ、Eは加速電圧、λは電子線の波長を示す。したがって、試料の厚さと加速電圧の実験条件から電子線の位相変化量を試料の内部電位に定量的に変換することができる。一例として半導体トランジスタ試料の場合には、試料のドーピング濃度に応じた内部電位の分布、ひいては半導体シミュレータとの比較によりドーパントプロファイルの評価をおこなうことができる。一方、試料に磁場分布がある場合には電子線の位相変化量は(数2)で与えられる。
ΔΦ=(2πe/h)∫B・dS (数2)
ここでeは素電荷、hはプランク定数、∫B・dSは試料を透過する電子線と参照波となる電子線の両電子線に囲まれる閉曲面における磁場の面積分で磁束量を示す。したがって電位分布を導いたのと同様にして位相変化量から試料内部の磁束量を定量的に導き出すことができる。さて、このような電磁場は電子線の位相のみを変化させるので、電子線の振幅を検出する通常の電子顕微鏡ではコントラストがつかない。干渉電子顕微鏡では電子線の位相変化を干渉縞の強度変調として検出することにより、電磁場を可視化することができる。
ここで、従来の透過型干渉電子顕微鏡法の原理を図2により説明する。第1引き出し電極2及び第2引き出し電極3に電圧を印加することによって電子源1から引き出された電子線は加速電極4により所定の速度に加速される。さらに第1コンデンサレンズ5と第2コンデンサレンズ6などにより平行性の良い電子線が形成され、試料7を照射する。対物レンズ8と結像レンズ系11の間に設置された電子線バイプリズム9に電圧を印加することにより対物レンズ像面において試料7を透過した電子線と試料7の近傍の真空を通過した電子線とを重ね合わせた干渉縞、すなわちホログラム10を形成する。このホログラムは結像レンズ系11によって拡大され、蛍光板13上に結像され、検出器14に入力される。検出器からの入力画像はA/D変換器15を介して演算装置16に取り込まれ、然るべき画像処理を施された後、表示装置18に出力される。
ここで電子源1、第1引き出し電極2、第2引き出し電極3、加速電極4、第1コンデンサレンズ5、第2コンデンサレンズ6、対物レンズ8、電子線バイプリズム9、結像レンズ系11等の動作条件は演算装置16からD/A変換器を介して制御される。この干渉縞は本来,直線となるべきものであるが,試料内部あるいは外部の電磁場により位相変調される。この位相変化を例えばフーリエ変換法などの画像処理によって,再生することが可能である。フーリエ変換法では次のようにして再生をおこなう。すなわち、検出器から入力した干渉縞の画像を2次元フーリエ変換する。フーリエ空間内では干渉縞に重畳された試料の振幅及び位相変化がサイドバンドと呼ばれるピークを中心とした形で含まれており、これを抽出して逆フーリエ変換をおこなうことによって試料による振幅変化及び位相変化を再生することができる。
このように透過型干渉電子顕微鏡法では干渉縞を2次元画像として取得し、しかる後に計算機に転送し、干渉縞画像から位相画像を再生する必要がある。得られる位相画像の空間分解能は2次元画像の細かさに依存するので、しかるべき空間領域を視野とする場合には2次元画像を構成する画素数が多大なものとなり、再生に要する時間が増大する。特に2次元フーリエ変換には画素数が増えるほど長い計算時間を要する。このため、干渉縞画像の取得後、オフラインで位相画像を再生、表示するのが通常であった。したがって,このような従来の手法では実時間での観察が困難であった。
また、真空中または物質中の電磁場が観察対象の場合には位相変化のみで強度変化が無いため、視野を選択することが困難であり、長時間の再生プロセスを経てみないと観察したい対象が視野に含まれていたかどうかを判断できないため、著しく非効率的であった。上記のような問題を解決すべく、位相像を実時間で観察可能にすることが望まれていた。
これまで干渉電子顕微鏡法において実時間で位相像を再生する試みとしては、例えば(特許文献1)のような液晶を利用した方法がある。これは干渉縞の画像を撮像装置によりオンラインでビデオ信号として取り出し、該ビデオ信号を空間的な強度または位相変調機能を有する電気光学的表示素子(例えば各画素がネマチック液晶より成る液晶パネルなど)に表示させる。然る後に該電気光学的表示素子にレーザー光を照射し、波面を光学的に再生する手法である。すなわち、この手法は多大な処理時間を要する2次元フーリエ変換を光学的におこなうことにより、再生を高速化しようとするものである。
特開平5−323859号公報
従来の透過型干渉電子顕微鏡では、実時間で位相画像を観察することが困難であり、観察のスループットが低いという問題があった。また、(特許文献1)の実時間位相画像観察方法では、実時間で位相像を再生するために、レーザー光源やレンズなど光学ベンチを必要とし、装置が大型化してしまうという問題があった。また、干渉縞の間隔など観察条件を変える毎に空間フィルタの位置調整や、光軸の調整が必要であることから、検査の高速化に問題があった。さらに、空間分解能を上げるために画素数を増加させると画像の取り込み/表示に時間を要し、実時間性が失われるという問題もあった。
本発明はこれらの課題を解決するためになされたもので、試料内外部の電磁場による電子線の位相変化を実時間で画像として可視化することができ、かつ高スループット評価をおこなうことが可能な透過型干渉電子顕微鏡を提供することを目的とする。
本発明においては、以下3つの方法のいずれかにより電子線の位相変化を可視化する。第1の方法では、電子線の干渉縞を2次元検出器の上方に1次元周期的なスリットを配置し,該スリットを透過/不透過した電子線を検出することによって記録し表示する。第2の方法では、試料を電子線の通路から外した状態の干渉縞画像を2次元検出器で記録、記憶装置に保存し、該画像と試料を電子線の通路に入れた状態で記録した干渉縞画像とを積算した画像を表示する。第3の方法では、2次元検出器から連続して逐次入力した干渉縞画像を入力した順にそれぞれ別々の2個以上の数値演算器によって逐次処理した画像を入力した順に出力する。
本発明によれば、実時間で位相画像を再生することができ、試料の高スループット評価をおこなうことができる。また、試料を観察しながら即座に結果が得られるので条件に適した観察部位を探すことが容易になり、効率的な観察法を実現できる。さらに、試料に印加する磁場や電位を変化させながら観察したり、試料の温度を変化させながら観察するなどの動的な観察も可能となる。
以下、図1を用いて本発明の一実施例を説明する。図1に本実施例で用いられる装置の電子光学系を含む主要な構成を示す。第1引き出し電極2及び第2引き出し電極3に電圧を印加することによって電子線源1から引き出された電子線は加速電極4により所定の速度に加速される。さらに第1コンデンサレンズ5と第2コンデンサレンズ6などにより平行性の良い電子線が形成され、試料7を照射する。対物レンズ8と結像レンズ系11の間に設置された電子線バイプリズム9に電圧を印加することにより対物レンズ像面において試料7を透過した電子線と試料7の近傍(真空)を通過した電子線とを重ね合わせた干渉縞、すなわちホログラム10を形成する。
このホログラムは結像レンズ系11によって拡大され、蛍光板13上に結像され、検出器14で検出し、入力される。本実施例においては該検出器の上方の近傍に干渉縞の周期と同じ周期を有するスリット12を配置しておき、該スリットを通過した干渉縞を検出器14に入力するようにする。ここで干渉縞とスリットの相対的な位置関係及び干渉縞の間隔とスリットの間隔を調整する必要がある。その方法について図3を用いて説明する。まず、加速電圧を印加、第1引き出し電極及び第2引き出し電極に電圧を印加して電流を引き出す。引き続いて電子線バイプリズムを挿入し、干渉縞を形成する。次に検出器上方のスリットを挿入する。スリットの間隔は数種類のものから一つを選択できるように可動式のホルダを使用するとよい。
ここで電子線バイプリズムに印加する電圧を調整して、選択したスリットの間隔と干渉縞の間隔とを一致させる。これは以下のようにして精密に調整することができる。すなわち、検出器14からの入力画像を観察すると、両者が一致しない場合にはモアレが生じるため、容易に判断できる。モアレの発生が最小となるように電子線バイプリズムの電圧を調整する。もし、スリットと干渉縞の相対的な回転角が一致していない場合にはたとえ両者の間隔が一致していてもモアレが生じるので、その場合には両者の相対的な回転角を再度調整する手順が必要となる。したがって、スリットの回転角を調整する機械的な機構を用意しておくことが好ましい。
モアレが最小となり干渉縞とスリットの間隔及び回転角の調整が終了したら試料を挿入し、観察したい領域を視野に移動する。試料の水平面内の角度を電子線バイプリズムの回転方向に対して調整し、電子線バイプリズムと試料との相対的な回転を調整する。試料による位相分布はその余弦に比例した強度分布に変換されて検出器14に入力されるので、これをそのまま表示装置18に表示するか、または演算装置16により別の演算を施した形で出力することにより、試料の位相分布を可視化することができる。そのまま表示装置18に表示する場合にはほぼ実時間での表示が可能となる。
次に図4を用いて本発明の一実施例について説明する。本手法では図1の装置の構成において、実施例1のようなスリットを用いず、画像メモリを用意する。まず、試料を電子線の通路から外した状態での干渉縞21を検出器14により入力し、A/D変換器15を介して演算装置16に入力する。この画像を画像メモリ19に保存しておく。次に試料を挿入し、試料を電子線の通路に入れた状態にする。この状態における画像を検出器14により入力し、A/D変換器15を介して演算装置16に入力する。この画像を別の画像メモリ20に保存しておく。然る後に画像メモリ19の画像と画像メモリ20の画像を演算装置16によって加算した画像を表示装置18に出力する。もちろん、この加算処理は演算装置16でなく、別の画像演算器を用いてもよいことは言うまでもない。ここで画像メモリ20に保存する画像を逐次更新し、これを画像メモリ19に保存した画像と逐次加算し、表示することで表示装置18に表示される試料の位相分布に対応した画像は逐次更新され、実時間で試料の位相分布を観察することが可能となる。
図5に本実施例の方法を磁性薄膜からの漏洩磁界観察に適用した例を示す。図5(a)では試料を電子線の通路に入れた状態における干渉縞の像23を示しているが、図5(b)はこれに試料を電子線の通路から外した状態における干渉縞の像を積算した画像24を示している。このように磁性薄膜からの漏洩磁界を干渉縞のモアレとして実時間で観察することができる。また、試料の温度、外部磁場等を変化させることにより、動的な応答を観察することも可能である。
本実施例では図1の装置構成において、上述のようなスリットを用いず、2次元検出器14を含む画像入力装置から連続して逐次入力した干渉縞画像を、入力した順にそれぞれ別々の2個以上の数値演算部によって逐次処理した画像を出力する構成とする。以下に図6を用いて本実施例を説明する。
本手法では試料を電子線の通路に入れた状態での干渉縞の画像を2次元検出器14を含む画像入力装置25に逐次入力(検出)する。この画像入力が完了するまでには画像の大きさに応じた長さの入力時間32が必要であり、図6中ではこれを時間軸31に沿ったブロック33として表示してある。ここで第一の画像入力が完了した後、画像入力装置25は次の画像入力操作を開始する。これと同時に第一の入力画像を第一の画像演算部26に転送し、干渉縞から位相を再生するのに必要な画像処理を開始する。図6中ではこの画像処理に要する時間をブロック34で示してある。通常、この画像処理に要する時間は画像入力に要する時間よりも長い。図6では画像処理に要する時間が画像入力に要する時間の4倍の場合を図示した。したがって、画像演算部26によって画像処理が進行している途中で2番目の画像入力が完了する。
この2番目の入力画像は1番目の画像演算部26とは別の2番目の画像演算部27に転送され、1番目の画像処理とは独立に画像処理が進められる。同様に3番目の入力画像は3番目のまた別の画像演算部28に、4番目の入力画像は4番目のさらに別の画像演算部29に転送され、それぞれ独立に画像処理が進められる。この間に第一番目の画像演算部の画像処理が完了するので、処理が完了した画像を画像表示装置30に転送し、出力する。この画像出力に要する時間はブロック38で表示してある。ここで画像演算部は演算装置16内に格納されていても、演算装置とは別に画像演算装置として設けても良い。
また画像入力装置は2次元検出器14であっても良い。簡単のために、画像入力に要する時間と画像出力に要する時間が等しいとすると、1番目の再生画像が出力を完了した時点で2番目の画像演算が終了するので、これを画像表示装置30に転送し表示するということを逐次おこなえば、画像入力を開始してから画像表示までの遅延時間39はあるものの、画像入力時間32の間隔で逐次、再生した位相画像を連続して表示することが可能となる。
図7に実施例1−3の方法を半導体中の不純物分布による内部電位分布観察に適用した例を示す。図7(a)は半導体薄膜試料の不純物を拡散させた領域40を示している。この領域に電子線の干渉縞41を形成したのが図7(b)である。図7(c)では本発明により可視化した不純物による電位分布に対応する濃淡の画像42を示している。本発明ではこのような観察を実時間でおこなうことが可能である。
本発明は、微小領域の電気的及び磁気的特性の評価に用いる透過型干渉電子顕微鏡に関するものである。
本発明の第1の手法の実施方法を説明する図。 従来の実施方法を説明する図。 本発明の第1の手法における実施方法を説明する図。 本発明の第2の手法を説明する図。 本発明の第2の手法における一実施例を説明する図。 本発明の第3の手法を説明する図。 本発明の別の一実施例を説明する図。
符号の説明
1:電子源、2:第一引き出し電極、3:第二引き出し電極、4:加速電極、5:第一コンデンサレンズ、6:第二コンデンサレンズ、7:試料、8:対物レンズ、9:電子線バイプリズム、10:対物レンズ像面に形成されたホログラム、11:結像系レンズ(一段もしくは多段)、12:スリット、13:拡大された干渉縞、14:検出器、15:A/D変換器、16:演算装置、17:D/A変換器、18:表示装置、19:画像メモリ、20:他の画像メモリ、21:試料を電子線の通路から外した状態におけるホログラム、22:試料を電子線の通路に入れた状態におけるホログラム、23:磁性薄膜試料を電子線の通路に入れた電子線の干渉縞、24:電子線の干渉縞23に試料を電子線の通路から外した状態における電子線の干渉縞を積算した画像、25:画像入力装置、26:1番目の画像演算部、27:2番目の画像演算部、28:3番目の画像演算部、29:4番目の画像演算部、30:画像表示装置、31:時間軸、32:画像入力に要する時間、33:画像入力装置が画像入力をおこなっている時間を示すブロック、34:画像入力装置25から最初に入力された画像を1番目の画像演算部26によって処理している時間を示すブロック、35:画像入力装置25から2番目に入力された画像を2番目の画像演算部27によって処理している時間を示すブロック、36:画像入力装置25から3番目に入力された画像を3番目の画像演算部28によって処理している時間を示すブロック、37:画像入力装置25から4番目に入力された画像を4番目の画像演算部29によって処理している時間を示すブロック、38:1番目の画像演算部26によって処理を終了した画像を画像表示装置30に表示している時間を示すブロック、39:画像入力開始から画像表示までの遅延時間、40:半導体薄膜試料中の不純物を拡散させた領域、41:半導体薄膜試料中の不純物を拡散させた領域に電子線の干渉縞を形成した状態を示す図、42:本発明により可視化した半導体薄膜試料中の不純物による電位分布に対応した濃淡を表す図。

Claims (4)

  1. 電子線を発生させる電子線源と、
    試料を保持する試料ステージと、
    該試料を通過した前記電子線と該試料の近傍を通過した前記電子線とを干渉させ干渉縞を形成する手段と、該干渉縞を検出する検出手段とを備えた透過型干渉電子顕微鏡において、
    前記検出器よりも電子源側に前記試料を通過した電子線と試料の近傍を通過した電子線とを1次元周期的に透過及び不透過させるスリットを有することを特徴とする透過型干渉電子顕微鏡。
  2. 電子線を発生させる電子線源と、
    試料を保持する試料ステージと、
    該試料を通過した前記電子線と該試料の近傍を通過した前記電子線とを干渉させ干渉縞を形成する手段と、該干渉縞を検出する検出手段とを備えた透過型干渉電子顕微鏡において、
    前記検出された干渉縞の画像と予め記憶された別の干渉縞の画像とを積算する手段を備えることを特徴とする透過型干渉電子顕微鏡。
  3. 電子線を発生させる電子線源と、
    試料を保持する試料ステージと、
    該試料を通過した前記電子線と該試料の近傍を通過した前記電子線とを干渉させ干渉縞を形成する手段と、該干渉縞を入力する検出手段とを備えた透過型干渉電子顕微鏡において、
    前記検出手段に逐次入力される前記干渉縞のそれぞれを画像処理する演算手段と、
    前記検出手段に入力された順に画像表示する表示手段とを備えることを特徴とする透過型干渉電子顕微鏡。
  4. 請求項3に記載の透過型干渉電子顕微鏡において、
    前記演算手段は複数の画像演算部を備えることを特徴とする透過型干渉電子顕微鏡。
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