JP2006330274A - 光スイッチおよびプロジェクター - Google Patents

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Abstract

【課題】電気光学効果を有する材料の電界方向に屈折率変化を効率よく利用することが可能な光スイッチを提供すること。
【解決手段】電気光学(electro−optic effect)を有する材料でなる欠陥層14と、欠陥層14の両側に配置された透明電極13と、透明電極13を挟持するように配置された誘電体多層膜12と、を基板11上に形成したキャビティーを有し、透明電極13に対してP波の入射光を所定の斜入射角で入射する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、電気光学効果(electro−optic effect)を有する材料を用いた光スイッチおよびプロジェクターに関するものである。
従来、レーザースキャン型のプロジェクターやそれに類する光学系を含む装置において、光スイッチは重要な部品である。一般的には半導体レーザーの直接変調を利用してきたが、緑や青といった波長のレーザーにはSHG(second harmonic generation,第2高調波発生)が使われ、そのため外部変調器が必要とされていた。従来はAOM(音響光学素子)やPLZTの偏光を利用した光シャッターなどの外部変調器を用いていた。AOMは弾性波を利用して回折格子をつくり、光を回折することでスイッチングを行なうものである。
一方、液晶を誘電体多層膜に挟んだ構造の光スイッチが研究されている。たとえば、誘電体多層膜は屈折率の異なる誘電体を周期的に積層したものでSiO2、Ti02などの屈折率差が大きいペアが利用されている。この誘電体の厚みをコントロールすることで、任意の波長の光を反射する反射膜として機能する。この誘電体多層膜の間に欠陥層として、周期性を乱す層を入れることで、任意の波長だけを透過するフィルターとしての機能を有する。これはバンドパスフィルターなどとして通信分野で利用されている。この欠陥層として液晶を用い、電圧印加によって、光学的な厚みをコントロールすることが研究されている。
誘電体多層膜に電気光学材料を挟みこんだバンドパスフィルターが開示されている(たとえば、特許文献1、2参照)。このバンドパスフィルターは入射光の波長選択を行うデバイスであり、変調器の機能は有していない。バンドパスフィルターは様々な波長の入射光を振り分けるルーターの役割をする。
また、ほぼ同じ形態で、誘電体多層膜の間に半導体を挟んだ系が有る(たとえば、特許文献3参照)。半導体の場合には、高速に反応ができることや薄膜などが精度よく作製できるといったメリットがある。
また、電気光学材料を用いていないパッシブ型のバンドパスフィルターでは、入射角を制御して、透過スペクトルを制御する方法が行われている(たとえば、特許文献4参照)。
ところで、PLZTなどの多結晶体セラミックにおける電気光学効果(electro−optic effect)は、電圧を印加した方向に大きく屈折率を変える。つまり、図3に示すような構成をとった場合、電気光学定数はそれぞれ方向によって異なり、電界に垂直なR3は非常に大きいが、電界に平行なR1,R2は非常に小さい。垂直入射では入射した光が感じる屈折率変化はR1,R2であることから、屈折率変化を大きくとる必要があり印加電圧を押し上げている。KTN結晶やLN(ニオブ酸リチウム)など屈折率変化がR2,R1方向に大きく取れる材料もある。なお、KTN結晶とは、カリウム(K)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)と酸素(O)とからなる透明な光学結晶である。
また、電気光学材料にはLN(ニオブ酸リチウム)、LT(タンタル酸リチウム)、BaTiO(チタン酸バリウム単結晶)などがあるが、結晶であるそれらの材料は一般的に引き上げ法によって作製される。引き上げ法による方法では、製造コストが高くなるなどの問題がある。また、結晶方位が決まっているため、その方向に高い精度で配置する必要があった。
さて、プロジェクターを懐中電灯レベルの小型化するには、発熱および光量の不足が問題である。現在利用されている大型のプロジェクターでは、変調素子として液晶もしくはDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)があり、光源としては白色光源が一般的に用いられる。白色光源を利用してカラー画像を形成するにはカラーフィルターを用いる必要がある。そのため、フィルターでの光量の低下および発熱が問題となっている。液晶を変調素子として用いたプロジェクターは、偏光板を介するため、その偏光板でも光量の低下および発熱が問題となっている。カラーフィルターを利用しないで、発熱の問題を解決する方法として、タイムシーケンシャル法がある。光源から出てくる光を時間毎に3色交互に変化させ、その色に対応した画素を表示する方法であるが、それには液晶デバイスの応答速度が遅く、滑らかな動画か難しい。MEMS技術を利用したDVDでは応答速度は十分にとれるが、反射型であるため、小さな光学系が組むことができない。このような状況で、小型プロジェクターとして、レーザービームをスキャンして画像を形成する方法がもっとも有力であると考えられる。
特開2003−207753号公報 特開2003−233046号公報 特開平7−64277号公報 特開2004−147247号公報
しかしながら、AOMを用いた光学系にあっては、弾性波を発生させる素子が発熱することから、大きな冷却装置が必要とされ、非常にコストの高い部品であった。また、PLZTを用いたシャッターでは、光がPLZTで偏光することを利用してスイッチングを行なう。このシャッターでは、偏光を利用することで光の利用効率が50%となるほか、光吸収があるなどの課題が多い。
また、欠陥層として液晶を用い、電圧印加によって、光学的な厚みをコントロールする場合、液晶でのスイッチングでは、駆動速度が50usec程度であり、速度の面で課題があった。
また、特許文献1、2に開示されているバンドパスフィルターは、入射光の波長選択を行うデバイスであり、変調器の機能は有していない。バンドパスフィルターは様々な波長の入射光を振り分けるルーターの役割をする。そのため、入射光の波長は通信のシステムで決められ、バンドパスフィルターからの制限をかけることは行えない。また、入射角を垂直方向に固定する方法がとられてきた。実装が簡便であり、単純な系であることから、入射光の方向として、垂直方向に固定している。
また、特許文献3に開示されている半導体の場合には、高速に反応ができることや薄膜などが精度よく作製できるといったメリットがある。しかし、半導体では、入射光の波長に自由度がなく、誘電体多層膜部分を半導体によって作製しなくては、欠陥層が作製できないという問題がある。半導体での周期構造では屈折率差がとれないことから、シャープな透過率スペクトルが作れないなどの問題があった。
また、特許文献4の電気光学材料を用いていないパッシブ型のバンドパスフィルターは、アクティブに入射角を制御する方法であるが、反応時間が遅く、これを利用して光スイッチを構成することは困難であった。
また、KTN結晶やLN(ニオブ酸リチウム)など屈折率変化がR2,R1方向に大きく取れる材料の場合。LN(ニオブ酸リチウム)は電気光学定数が小さく1次の電気光学定数として、10pm/V程度である。このような数値では印可電圧として数kv程度必要であり、実際のデバイスとして利用することができない。また、KTNの電気光学定数は1次換算で1000pm/Vと非常に大きいが量産化するに至っていないので、コストが高くなる。PLZTなどR3の大きな電気光学材料を用い、低電圧でスイッチングすることが望まれる。なお、KTN結晶とは、カリウム(K)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)と酸素(O)とからなる透明な光学結晶である。したがって、電気光学材料の電界方向に屈折率変化を効率よく利用する方法が必要となる。
また、LN(ニオブ酸リチウム)、LT(タンタル酸リチウム)、BaTiO(チタン酸バリウム単結晶)などの場合、引き上げ法による方法では、製造コストが高くなるなどの問題がある。また、結晶方位が決まっているため、その方向に高い精度で配置する必要がある。透明度が高く、電気光学定数の高い材料が必要であった。
また、赤色の波長であれば、LD(レーザダイオード)の直接変調が可能であるが、青、緑はSHGを介することで高速変調が不可能となる。このため、青、緑には外部変調器が必要となる。しかし、従来の光スイッチでは小型化や消光比などに問題があった。
プロジェクターを懐中電灯レベルの小型化するには、レーザービームをスキャンして画像を形成する方法がもっとも有力であると考えられるが、レーザーをスキャンするには変調をレーザー光に付加しなければならい。特に青、緑のレーザー光はSHGで形成されているため、外部変調器が必要である。従来のAOM変調器では大きすぎ小型のプロジェクターが作製することができなかった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電気光学材料の電界方向に屈折率変化を効率よく利用することが可能な光スイッチを提供することを第1の目的とする。
また、光スイッチの製造コストが安く、かつ結晶方位に対応可能な製造方法を可能とすることを第2の目的とする。また、光スイッチが透明度が高く、かつ電気光学定数の高い材料を利用可能にすることを第3の目的とする。また、青、緑、赤のそれぞれの波長に対応した光スイッチを実現することを第4の目的とする。また、発熱および光量の不足を解消した超小型のプロジェクターを提供することを第5の目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、電気光学材料でなる欠陥層と、前記欠陥層の両側に配置された透明電極と、前記透明電極を挟持するように配置された誘電体多層膜と、を基板上に形成したキャビティーを有し、前記透明電極に対してP波の入射光を所定の斜入射角で入射することを特徴とする。
この発明によれば、電気光学効果を有する材料を誘電体多層膜で挟んだ光スイッチにおいて、入射角を規定した光スイッチとすることで、スイッチングは欠陥層の電気光学効果によって屈折率変化を起こし、キャビティー長を変調する。このとき入射光を斜入射でP波にすることよって、電気光学材料の電界方向に屈折率変化を効率よく利用することが可能になる。
また、請求項2にかかる発明は、前記斜入射角は、下記式を満足することを特徴とする。
Figure 2006330274
Figure 2006330274
この発明によれば、請求項1において、キャビティー長には電気光学効果、スネルの法則、電歪効果が影響することになるので、定式化して、計算することで所望のスイッチング特性に対し、必要な電界および入射角を決めることが可能になる。
また、請求項3にかかる発明は、前記欠陥層に用いる電気光学材料は、セラミックスであることを特徴とする。
この発明によれば、請求項1または2において、欠陥層に用いる電気光学材料をセラミックスとすることにより、様々な材料を焼結で簡単に作製することが可能になり、少量の場合には低コストが実現する。また、セラミックスで作られる材料は一般的に多結晶体であるので、それぞれの結晶での方位はさまざまな方向へ向いている。そのため、結晶の方位を気にすることなく、デバイスのレイアウトを作製することが可能になる。
また、請求項4にかかる発明は、前記電気光学材料は、PLZTであることを特徴とする。
この発明によれば、請求項3において、欠陥層の電気光学材料としてPLZTを用いることにより、LNなどと異なり屈折率変化が十分に大きくなる。また、屈折率変化が大きく取れることにより、それに対応した透過率のピーク移動量も大きくなる。また、この材料は有機材料ではなく無機系の材料であることから、光の照射に対する熱的変動が小さく安定性が高くなる。
また、請求項5にかかる発明は、前記入射光の波長が青、赤、緑であることを特徴とする。
この発明によれば、請求項1〜4のいずれか一つにおいて、光スイッチは欠陥層の厚さ、および誘電体多層膜の厚さを設計することで、青、緑、赤のそれぞれの波長に対応することが可能になる。
また、請求項6にかかる発明は、少なくとも、レーザー光を出射するレーザー光源と、画像信号に応じて前記レーザー光をON/OFFさせる請求項1〜5のいずれか一つに記載の光スイッチと、前記光スイッチからのレーザ光を所定の面に結像するレンズと、当装置全体に電源を供給するバッテリーと、を備えたことを特徴とする。
この発明によれば、請求項1〜5のいずれか一つに記載の光スイッチを用いてプロジェクターを構成することにより、発熱および光量の不足を解消した小型のプロジェクターを提供することが可能になる。
本発明(請求項1)にかかる光スイッチは、電気光学効果を有する材料を誘電体多層膜で挟んだ光スイッチにおいて、入射角を規定した光スイッチとすることで、スイッチングは欠陥層の電気光学効果によって屈折率変化を起こし、キャビティー長を変調する。このとき入射光を斜入射でP波にすることよって、電気光学材料の電界方向に屈折率変化を効率よく利用することができるという効果を奏する。
また、本発明(請求項2)にかかる光スイッチは、請求項1において、キャビティー長には電気光学効果、スネルの法則、電歪効果が影響することになるので、定式化して、計算することで所望のスイッチング特性に対し、必要な電界および入射角を決めることができるという効果を奏する。
また、本発明(請求項3)にかかる光スイッチは、請求項1または2において、欠陥層に用いる電気光学材料をセラミックスとすることにより、様々な材料を焼結で簡単に作製することができ、少量の場合には低コストが実現する。また、セラミックスで作られる材料は一般的に多結晶体であるので、それぞれの結晶での方位はさまざまな方向へ向いている。そのため、結晶の方位を気にすることなく、デバイスのレイアウトを作製することができるという効果を奏する。
また、本発明(請求項4)にかかる光スイッチは、請求項3において、欠陥層の電気光学材料としてPLZTを用いることにより、LNなどと異なり屈折率変化が十分に大きくなる。また、屈折率変化が大きく取れるので、それに対応した透過率のピーク移動量も大きくなる。また、この材料は有機材料ではなく無機系の材料であることから、光の照射に対する熱的変動が小さく安定性が高くなるという効果を奏する。
また、本発明(請求項5)にかかる光スイッチは、請求項1〜4のいずれか一つにおいて、光スイッチは欠陥層の厚さ、および誘電体多層膜の厚さを設計することで、青、緑、赤のそれぞれの波長に対応することができるという効果を奏する。
また、本発明(請求項6)にかかるプロジェクターは、請求項1〜5のいずれか一つに記載の光スイッチを用いてプロジェクターを構成するため、発熱および光量の不足を解消した小型のプロジェクターを提供することができるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる光スイッチおよびプロジェクターの最良な実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態)
[P波およびS波、および入射光の定義]
まず、P波およびS波の定義について図3および図4を参照し説明する。誘電体多層膜12および透明電極13は図に示されるZ方向に積層され、電界方向はZ方向となる。入射光はY方向に対し垂直であり、光軸はXZ平面上にあるとする(図4参照)。入射光は基板内の伝播する方向であり、入射角はZ軸となす角として定義する。S波は図3に示す紙面にほぼ垂直方向としている。P波はそれに垂直な方向とする。ここではP波として、誘電体多層膜12の電界方向に対し斜入射にし、かつ入射光をP波とすることで、電界方向にかかる屈折率変化R3を感じることができる。反対にS波を入射しても、屈折率変化を感じることはない。これにより、屈折率変化を感じた光はキャビティー長の変調を起こし、スイッチングを行なうことになる。
電気光学効果(electro−optic effect)を有する材料を誘電体多層膜12の反射層で挟んだ光スイッチ10において、入射角を規定した光スイッチとした。スイッチングは欠陥層(電気光学材料)14の電気光学効果によって屈折率変化を起こし、キャビティー長を変調することで行っている。入射光を斜入射でP波にすることよって、キャビティー長には電気光学効果、スネルの法則、電歪効果が影響することになる。それぞれを定式化して、計算することで所望のスイッチング特性に対し、必要な電界および入射角を決めることができる。まず、それぞれの式について順に説明する。
(1)透過スペクトル
屈折率の異なる数種類の誘電体薄膜12を周期的に積層することで誘電体多層膜を得ることができる。この誘電体薄膜12の厚さを入射光の波長λの1/4の光学長とすることで高い反射率の膜として機能する。このとき光学長としては、伝播する角度と屈折率を考慮する。この誘電体多層膜12でつくられた反射層を2ペアもちい、1つの欠陥層(電気光学材料)14を挟むように構成されているものがエタロンと呼ばれる。このエタロン構成では特定の波長のみを透過するバンドパスフィルターとして機能する。エタロンの透過スペクトルは一般的には以下のように書くことができる。また、共鳴波長付近の透過スペクトルは図5のようになる。また、透過スペクトルの計算式は以下に示すようになる。
Figure 2006330274
なお、上記式における各記号は下記のとおりである。
0:入射光量
I:透過光量
R:キャビティーを挟むミラーの反射率
n:キャビティーの屈折率
d:キャビティーの厚さ
θ:伝播角
透過スペクトルは波長によって変化するため、入射光の波長によって透過率が変化する。入射光の波長を固定して、透過スペクトルを数nm程度移動させることで、透過率は変化する。この変化を利用して入射光の光量を制御することができる。
消光比としては以下のように表すことができる。
k=T(λi)−T(λi+λM))/T(λi
(2)キャビティー長
透過スペクトルの式から分かるように、透過スペクトルはある周期をもって、最大値、最小値を繰り返す。透過率が最大値になる特定の波長は共鳴波長と呼ばれ、共鳴波長とキャビティー長とは以下の関係がある。キャビティー長が変化することで共鳴波長が移動し、それに影響される形で透過スペクトルは形状をほとんど変えることなく移動する。つまり、以下の式でキャビティー長が変化する量がわかれば、先の消光比の式でのλMが定義でき、消光比を算出することができる。
LL=m × λ0
λ0:共鳴波長
m:次数
LL=キャビティー長
ここでいうキャビティー長とは光が透過する際の距離であり、斜入射の場合にはその分を考慮する必要がある。また、キャビティー長は屈折率の関数にもなり、以下の式に示される。
LL=n(E,θ) × L(E)/cos(n(E,θ))
L(E,θ):電気光学材料の電界垂直な方向の厚さ
n(E,θ):光伝播方向に垂直な方向の屈折率
θ:キャビティー内での伝播角度
屈折率および、電気光学効果材料の厚さ、伝播角度は印可電圧の関数となっている。電圧を印可することでそれぞれが変化し、キャビティー長を変え、透過スペクトルが移動することになる。
(3)電気光学効果(electro−optic effect)
z(E)=n0−1/2×R33×E2
y=n0
x=n0
E:電界
0:電気光学材料の屈折率(E=0の場合、等方的)
y:y方向の電気光学材料の屈折率(=n0)
z:z方向の電気光学材料の屈折率
33:2次の電気光学定数(電界方向の屈折率変化)
電気光学効果は印可電圧に対し、平行方向に大きくかかる。特にPLZTなどのセラミックではこの方向での電気光学効果が大きい。nz,nyに関してはR1,R2などが効いているが、その効果は非常に小さいため、ここでは無視する。
なお、PLZTとは鉛(Pb),ランタン(La)、ジルコン(Zr),チタン(Ti)を含む酸化物セラミックスである。このPLZTは、透明なセラミックスで光を透過する。このときPLZTにで電圧をかけると光の偏光の向きを変えることができる。偏光素子と組み合わせることで、光の透過/遮断といった光シャッターが実現する。
(4)電歪効果(Electrostrictive effect)
L(E)=(d33 × E+1)× L0
33:電圧をかけた方向の圧電定数
0:電圧が0Vのときの電気光学材料の厚さ
(5)伝播方向の屈折率
等方性の材料であっても、先の電気光学効果によって、屈折率がnx=ny≠nzとなり、複屈折をもつ材料となる。この材料の中を伝播角θで伝播する光が感じる屈折率は屈折率楕円体の式から以下の式で示すことができる。
Figure 2006330274
θ:PLZT内での伝播角度
この屈折率は伝播角と電界の関数となる。
(6)伝播角の算出
伝播角は入射角によって大きく依存するが、欠陥層の屈折率にも影響を受ける。これは屈折率の異なる材料の界面で起きる屈折であり、これはスネルの法則(Snel`s law)で記述できる。
Figure 2006330274
sub:SiO2基板の屈折率
θin:入射角
θ:PLZT内での伝播角度
ここで、n(E,θ)は先の屈折率楕円体で算出したものを利用する。θはnによって決まり、nはθによって決まる循環関数である。しかし、便宜的に、n(E,θ)=n(0,θ)として近似することができる。この近似を利用して、スネルの法則を算出し、θを算出する。このθから屈折率楕円体を出す。
以上の式から計算される結果を図6に示す。図5に示した透過スペクトルの電圧ON/OFFでピーク位置が移動しているが、図6はその移動量を定量化したものである。横軸に示す印可電圧に対し、透過スペクトルピーク位置の波長移動量を縦軸に示したものである。印可電圧が小さい場合には電歪効果が大きく影響するため、プラス側に波長の移動量が示される。印可電圧を上げることで、電気光学効果が大きく現れ、λmを大きくすることは可能である。しかし、電圧をあげるには限界がある。
<条件>
電気光学材料の屈折率:n0=2.5
電気光学材料の電気光学定数
電界の垂直方向:R1=0(m2/V2
電界の垂直方向:R2=0(m2/V2
電界に水平方向:R3=9E−16(m2/V2
電歪効果:d33=300pm/V
基板の屈折率:nsub=1.46
入射光の波長:λi=633nm
電気光学材料の厚さL0=10um
図7に示されるように波長の移動量は入射角度によっても大きく影響を受ける。そこで、入射角を大きくすることで、波長の移動量が大きい構成をとることが可能となる。
さて、この実施の形態では、欠陥層14に用いる電気光学材料をセラミックとする。セラミックであれば、材料を燒結することで、様々な材料を簡単に作製することができる。そのため、少量であったりする場合には低コストで作製することができる。セラミックスで作られる材料は一般的に多結晶体であり、それぞれの結晶での方位はさまざまな方向へ向いている。そのため、結晶の方位を気にすることなく、デバイスのレイアウトを作製することができる。
また、光スイッチ10における欠陥層14の電気光学材料としてPLZT(Pb(1-x)LaxZryTi(1-y)3)を利用したしたた光スイッチとする。なお、このPLZTは、鉛(Pb)・ランタン(La)・ジルコン(Zr)・チタン(Ti)を含む酸化セラミックスでそれぞれの元素記号の頭文字からPLZTと呼ばれている電気光学材料である。このPLZTであれば、LNなどと異なり屈折率変化が300pm/V以上と十分に大きい。屈折率変化が大きく取れることにより、それに対応した透過率のピーク移動量λMも大きくなる。また、この材料は有機材料ではなく無機系の材料であることから、光の照射に対する熱的変動が小さく安定性が高い。無機材料において、PLZT以上に屈折率変化が大きくとれ、安定している材料はない。
光スイッチ10における入射光の波長を赤、緑、青とする。光スイッチ10は欠陥層14の厚さ、および誘電体多層膜12の厚さを設計することで、青、緑、赤のそれぞれの波長に対応することができる。
つぎに、上記光スイッチの具体的な構成、製造方法、動作などについて説明する。
[構成]
図1、図2に実施の形態にかかる光スイッチ10の全体構成を示す。下方に固体レーザーによる連続光(CW光)が入射しており、この光スイッチ10よって変調された光が出射光として上方に出る。入射角は38°とした。変調は電圧による行われ、その透明電極13が左右に出されている。電気信号が透明電極13に入ることによって、光スイッチ10が電気信号を光信号へ変換する。光スイッチ10は基板11に欠陥層14を含む誘電体多層膜12および透明電極13によって構成されている。
光スイッチ10の拡大図を図2に示す。石英の基板11上に誘電体多層膜12として、SiO2、Ti02とを交互に積層した。入射波長λipは633nmとして、SiO2、Ti02と膜厚は入射波長を屈折率で除算した波数λnのちょうどλn/4とした。誘電体多層膜12は、SiO2、Ti02を6層とした。この層数をコントロールすることで、透過スペクトルの半値幅を制御することが可能である。より狭い半値幅にしたいときには、よりペア数を増やすことで可能である。欠陥層14には外場によって屈折率の変わるものであればよく、液晶や熱光学材料などが考えられるが、今回は反応速度の面から電気光学材料を利用した。電気光学材料はLN(ニオブ酸リチウム)やPLZTなどが一般的に知られている。また、光に反応するものであればコバルト酸化物などのフォトリフラクティブ材料なども利用することができる。
本発明では欠陥層14にPLZTを利用し、膜厚は光路長が入射波長の1/4の偶数倍2Nになるようにする。これにより、入射光の波長λipと透過率スペクトルのピーク位置とが一致することになる。
整数Nは164程度として、膜厚は10um程度とした。PLZTはその2次電気光学係数を9E−16[m2-2]とし、20Vの電圧を印加することで、その屈折率変化R3は約0.007程度となる。この屈折率変化で、入射角が38°であれば、透過率のピーク位置の移動量λmは約0.5nmである。これは図7に示すグラフにから読み取れる数値とほぼ同等であり、その他の条件は先に示したものとした。欠陥層14の両端には電極として透明電極13を利用した。透明電極13はITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)として、その膜厚はλ/2とした。
[作製方法]
PLZTはその組成を9/35/65として、直径4インチ、厚さ500nmとして燒結で作製される。このPLZT基板の両面に光学研磨を施す。この上にITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)をスパッタリングによって成膜し、フォトリソグラフィーとドライエッチングによってパターニングする。つぎに誘電体多層膜12を蒸着する。誘電体多層膜12はそれぞれ膜厚をモニターしながら成膜する。成膜する順番は石英の基板11のつぎにTi02を成膜する。つぎにSiO2、そのつぎにTi02の順である。今回はTi02/SiO2のペアを6層積層した。この状態でPLZT基板を屈折率がほぼ石英と同等のUV(紫外線)硬化樹脂によって、石英の基板11に接着する。このとき誘電体多層膜12を成膜した側と石英の基板11とを接着する。
つぎに誘電体多層膜12がない側のPLZTを研磨する。研磨は膜厚を測定しながら行ない、PLZTがほぼ10umになった状態で終了する。このとき、この研磨面もできるだけ平滑になるようにする。つぎに、この研磨した面にITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)の成膜およびパターニングを行う。つぎに誘電体多層膜12を蒸着する。誘電体多層膜12をパターニングし、PLZTの両面に構成されているITOに電極を着ける。これを配線し電気信号を入れる。入射光を入射角が適当な角度になるように微調整する。
[動作]
SiO2/Ti02の6層、PLZTのキャビティー、入射角38°のP波に対して、透過スペクトルはほぼ一意に決まる。透過スペクトルは一般的なエタロン構造と同様に有る周期をもった振動したスペクトル形状となる(図5参照)。周期は約8nmとなり、入射光波長63nm近辺にピーク位置がきた。電圧を印加していな状態での、透過率は約94%程度となった。このデバイスに印加電圧を20Vとして、周波数は100KHz程度とした。この信号を受けて、透過スペクトルが約0.5nm程度低波長側に移動する。0.5nm移動することで、透過率は約13%となる。この透過率変化は出射光の強度変化となり、消光比kにして約0.13となった。
つぎに、プロジェクターの構成および動作について説明する。
(1)スイッチ部の構成および動作
[構成]
このプロジェクターに用いる光スイッチ10の構成は前述の図1に示すとおりである。すなわち、下方に固体レーザーによる連続光(CW光)が入射しており、この光スイッチ10よって変調された光が出射光として上方に出射される。入射角は38°とした。変調は電圧による行われ、その透明電極13が左右に出されている。電気信号が透明電極13に入ることによって、光スイッチ10が電気信号を光信号への変換する。光スイッチ10は基板11に欠陥層14を含む誘電体多層膜12および透明電極13によって構成されている。
光スイッチ10の拡大図を図2に示す。石英の基板11上に誘電体多層膜12として、SiO2とTi02とを交互に積層した。入射波長λipは633nmとして、SiO2とTi02の膜厚は入射波長を屈折率で除算した波数λnのちょうどλn/4とした。また、誘電体多層膜12はSiO2とTi02を12層とした。この層数を適宜コントロールすることで、透過スペクトルの半値幅を制御することが可能である。より狭い半値幅にしたいときには、よりペア数を増やすことで対応することが可能である。
今回は欠陥層14にPLZTを利用し、膜厚は光路長が入射波長の1/4の偶数倍2Nになるようにする。これにより、入射光の波長λipと透過率スペクトルのピーク位置とが一致することになる。
整数Nは10程度として、膜厚は633nm程度とした。PLZTはその2次電気光学係数を9E−16[m2-2]とし、1.5Vの電圧を印加することで、その屈折率変化R3は約0.01程度となる。この屈折率変化で、入射角が38°であれば、透過率のピーク位置の移動量λMは約0.5nmとなる。これは図7に示すグラフから読み取れる数値とほぼ同等であり、その他の条件は先に示したものとした。欠陥層14の両端には電極として透明電極13を利用した。この例では、透明電極13はITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)として、その膜厚はλ/2とした。
[作製方法]
基板11を石英として、その上に誘電体多層膜12を蒸着する。誘電体多層膜12はそれぞれ膜厚をモニターしながら成膜する。成膜する順番は石英の基板11のつぎにTi02を成膜する。つぎにSiO2、そのつぎにTi02の順である。今回はTi02/SiO2のペアを6層積層した。つぎに欠陥層14を成膜する。欠陥層14にはPLZTを利用した。PLZTはゲル状の溶液をスピンコートし、その膜を燒結することで結晶化する。スピンコートで成膜した膜は膜厚が不均一であるため、研磨することで表面性を高める。研磨にはCMP(Chemical and Mechanical Polishing)を利用し、膜厚が633nmになるまで研磨する。膜厚はレーザー顕微鏡でモニターしながら行う。つぎに透明電極14をITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)によって形成する。ITOはスパッタリングによって行ない、フォトリソグラフィによりパターニングする。入射光を入射角が適当な角度になるように微調整する。
[動作]
SiO2/Ti02の6層、PLZTのキャビティー、入射角40°のP波に対して、透過スペクトルはほぼ一意に決まる。透過スペクトルは一般的なエタロン構造と同様に有る周期をもった振動したスペクトル形状となる。入射光波長633nm近辺に透過光のスペクトルピーク位置がくる。電圧を印加していな状態での、透過率は約40%程度となった。このデバイスに印加電圧を1.5Vとして、周波数は100KHz程度とした。この信号を受けて、透過スペクトルが約0.5nm程度低波長側に移動する。0.5nm移動することで、透過率は約45%となる。この透過率変化は出射光の強度変化となり、消光比kにして約0.88となることを確認することができた。
(2)プロジェクターの構成および動作
前述した構成および機能を有する光スイッチ10を利用して、小型のプロジェクター100を作製する。図8にプロジェクターの概要構成を示し、図9にプロジェクターのブロック図を示す。図示するように、この小型のプロジェクター100は電池20を有しており、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)との接続もインターフェイス105をその無線LANの仕様で搭載することで可能である。そのため、完全なコードレスとなっている。電源が電池20であるため、光の利用効率を最大限上げるように設計されており、光源にはランプ光ではなくレーザー光源(LD)102によるレーザー光を利用している。レーザー光は3色それぞれ、個別に作られており、赤外のレーザー光源102から、レーザー結晶の2倍波、3倍波を利用して、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)、の3原色を作り出している。3色のそれぞれのレーザー光はCWで発振しており、その光に光スイッチ10によって信号を与える。信号は無線LANなどから入手した情報であり、この信号をもとに画像処理機能を有している制御部1001によって画像形成がなされる。光スイッチ10はそれぞれの波長に合わせ作製されている。光スイッチ10は前述したように構成された光スイッチ10を用いる。その信号光を走査するスキャニングデバイス103を介し、光は面上に照射される。この光はレンズ106を介して焦点をスクリーン表示画面110に合わせられる。なお、符号104はこのプロジェクター100を操作するためのスイッチなどの入力部や表示機能を有している。
以上のように、本発明にかかる光スイッチおよびプロジェクターは、プロジェクター、光プリンタ、光通信などの光をスイッチングする必要がある小型の装置に有用であり、特に、光のON/OFFを任意に制御可能な光スイッチおよびこれを用いた小型のプロジェクターなどに適している。
本発明の実施の形態にかかる光スイッチの概略構成を示す説明図である。 本発明の実施の形態にかかる光スイッチの構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態にかかる光スイッチにおけるP波、S波の定義を示す説明図である。 本発明の実施の形態にかかる光スイッチにおける入射角を示す説明図である。 本発明の実施の形態にかかる光スイッチにおける透過スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施の形態にかかる光スイッチにおける印加電圧と波長移動の関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態にかかる光スイッチにおける波長移動と入射角の関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態にかかるプロジェクターの構成を示す説明図である。 本発明の実施の形態にかかるプロジェクターの構成を示すブロック図である。
符号の説明
10 光スイッチ
11 基板
12 誘電体多層膜
13 透明電極
14 欠陥層
20 電池
100 プロジェクター
101 制御部
102 レーザー光源
103 スキャンデバイス
104 操作部
105 インターフェイス
106 レンズ
110 スクリーン表示画面

Claims (6)

  1. 電気光学材料でなる欠陥層と、
    前記欠陥層の両側に配置された透明電極と、
    前記透明電極を挟持するように配置された誘電体多層膜と、
    を基板上に形成したキャビティーを有し、
    前記透明電極に対してP波の入射光を所定の斜入射角で入射することを特徴とする光スイッチ。
  2. 前記斜入射角は、下記式を満足することを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
  3. 前記欠陥層に用いる電気光学材料は、セラミックスであることを特徴とする請求項1または2に記載の光スイッチ。
  4. 前記電気光学材料は、PLZTであることを特徴とする請求項3に記載の光スイッチ。
  5. 前記入射光の波長が青、赤、緑であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光スイッチ。
  6. 少なくとも、
    レーザー光を出射するレーザー光源と、
    画像信号に応じて前記レーザー光をON/OFFさせる請求項1〜5のいずれか一つに記載の光スイッチと、
    前記光スイッチからのレーザ光を所定の面に結像するレンズと、
    当装置全体に電源を供給するバッテリーと、
    を備えたことを特徴とするプロジェクター。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005043770A (ja) * 2003-07-24 2005-02-17 Sun Tec Kk 空間光変調器、光記録方法および光記録装置

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