JP2006328131A - 二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物およびその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】 経時的に性能が低下することが少ない二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を、良好な作業性で形成できる二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を提供する。また、二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を提供する。さらに、中性化が抑制されたコンクリート成形物を提供する。
【解決手段】 平均粒子径が3〜50μmである水膨潤性合成無機層状珪酸塩および平均粒子径が0.5μm以下である疎水性樹脂が水性媒体に分散された水性分散体ならびにアミノアルコールを含み、疎水性樹脂100質量部を基準とした水膨潤性合成無機層状珪酸塩およびアミノアルコールの割合がそれぞれ1〜50質量部および0.1〜10質量部である二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 平均粒子径が3〜50μmである水膨潤性合成無機層状珪酸塩および平均粒子径が0.5μm以下である疎水性樹脂が水性媒体に分散された水性分散体ならびにアミノアルコールを含み、疎水性樹脂100質量部を基準とした水膨潤性合成無機層状珪酸塩およびアミノアルコールの割合がそれぞれ1〜50質量部および0.1〜10質量部である二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、二酸化炭素遮蔽機能を有する被膜を与える水性のコーティング剤組成物に関するものである。また本発明は、上記組成物から得られる二酸化炭素遮蔽機能を有する被膜とその利用、特にコンクリートの保護に関するものである。
コンクリートは耐久性に優れた材料として知られている。しかし、空気中の二酸化炭素の浸透によりコンクリートが中性化すると内部の鉄筋が腐蝕されたり、コンクリート自体も強度が大幅に低下するだけでなく、体積膨張によるコンクリートのひび割れや剥離・破壊をもたらすことがある。
そこで、コンクリートの保護対策として、グリコールエーテル誘導体等を混和材として使用し、コンクリート自体を緻密化し強度を高めることがおこなわれている。しかし、緻密化は耐凍害性や軽量化に効果的な気泡量を少なくする方向であり、気泡を多く含むコンクリートに対して有効な耐中性化策が切望されている。また、すでに出来上がったコンクリート構造物に対しても、簡易な方法で二酸化炭素を遮蔽し、寿命の延命化がすることを求められてきている。
コンクリートを中性化から保護するための被覆材として、例えばウレタン変性エポキシ樹脂にアルミニウム粉末を特定量含有する塗料組成物(特許文献1参照)、2液型エポキシ樹脂(特許文献2参照)が提案されている。しかし、これらは2液型であるため作業性が悪い。また、得られる被膜は二酸化炭素の遮蔽性が充分で無い為、コンクリートの中性化防止や内部鉄筋の腐蝕防止の効果が不充分であり、かなり厚膜にしないと所望の効果が得られなかった。
水性の1液型コーティング剤としては、塩化ビニリデン共重合体の水性分散体が古くから知られている(特許文献3参照)。しかし、二酸化炭素遮蔽性を高くする為に共重合体中の塩化ビニリデン単位の割合を大きくすると、条件によっては塩化水素が脱離しやすくなり、重合体の被覆機能が低下したり生成した塩化水素がコンクリートを侵食したりする場合もあり、使用が制限されるものであった。
ところで、上記技術とは課題がまったく異なるものであるが、本願発明と構成が類似した組成物も知られている(特許文献4参照)。
そこで、コンクリートの保護対策として、グリコールエーテル誘導体等を混和材として使用し、コンクリート自体を緻密化し強度を高めることがおこなわれている。しかし、緻密化は耐凍害性や軽量化に効果的な気泡量を少なくする方向であり、気泡を多く含むコンクリートに対して有効な耐中性化策が切望されている。また、すでに出来上がったコンクリート構造物に対しても、簡易な方法で二酸化炭素を遮蔽し、寿命の延命化がすることを求められてきている。
コンクリートを中性化から保護するための被覆材として、例えばウレタン変性エポキシ樹脂にアルミニウム粉末を特定量含有する塗料組成物(特許文献1参照)、2液型エポキシ樹脂(特許文献2参照)が提案されている。しかし、これらは2液型であるため作業性が悪い。また、得られる被膜は二酸化炭素の遮蔽性が充分で無い為、コンクリートの中性化防止や内部鉄筋の腐蝕防止の効果が不充分であり、かなり厚膜にしないと所望の効果が得られなかった。
水性の1液型コーティング剤としては、塩化ビニリデン共重合体の水性分散体が古くから知られている(特許文献3参照)。しかし、二酸化炭素遮蔽性を高くする為に共重合体中の塩化ビニリデン単位の割合を大きくすると、条件によっては塩化水素が脱離しやすくなり、重合体の被覆機能が低下したり生成した塩化水素がコンクリートを侵食したりする場合もあり、使用が制限されるものであった。
ところで、上記技術とは課題がまったく異なるものであるが、本願発明と構成が類似した組成物も知られている(特許文献4参照)。
本発明は、経時的に性能が低下することが少ない二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を、良好な作業性で形成できる二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を提供することを目的とする。また、上記組成物から得られる二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を提供することを目的とする。さらに、上記二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を有し中性化が抑制されたコンクリート成形物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物は、平均粒子径が3〜50μmである水膨潤性合成無機層状珪酸塩および平均粒子径が0.5μm以下である疎水性樹脂が水性媒体に分散された水性分散体ならびにアミノアルコールを含み、疎水性樹脂100質量部を基準とした水膨潤性合成無機層状珪酸塩およびアミノアルコールの割合がそれぞれ1〜50質量部および0.1〜10質量部であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物は、請求項1に記載の発明において、水膨潤性合成無機層状珪酸塩は水膨潤性合成フッ素雲母または水膨潤性合成フッ素ヘクトライトであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物は、請求項1に記載の発明において、疎水性樹脂は、芳香環を有する単量体単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位および炭素数が8以上であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位からなる群から選ばれる単量体単位30〜99質量%および上記の群に含まれない(メタ)アクリル酸エステル単位1〜70質量%を構成単位として有するビニル重合体であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜の製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を乾燥させることを特徴とする。
請求項5に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜は、請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を乾燥させて得られるものであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明のコンクリート成形物は、請求項5に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物は、請求項1に記載の発明において、水膨潤性合成無機層状珪酸塩は水膨潤性合成フッ素雲母または水膨潤性合成フッ素ヘクトライトであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物は、請求項1に記載の発明において、疎水性樹脂は、芳香環を有する単量体単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位および炭素数が8以上であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位からなる群から選ばれる単量体単位30〜99質量%および上記の群に含まれない(メタ)アクリル酸エステル単位1〜70質量%を構成単位として有するビニル重合体であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜の製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を乾燥させることを特徴とする。
請求項5に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜は、請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を乾燥させて得られるものであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明のコンクリート成形物は、請求項5に記載の発明の二酸化炭素遮蔽性被膜を有することを特徴とする。
経時的に性能が低下することが少ない二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を、良好な作業性で形成できた。上記二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を有するコンクリート成形物は、中性化が抑制された。
水膨潤性合成無機層状珪酸塩は、得られる被膜に二酸化炭素遮蔽性を付与するために必要な成分である。
水膨潤性合成無機層状珪酸塩(以下、単に層状珪酸塩ともいう。)は、2層の珪酸四面体層がマグネシウムまたはアルミニウムを含む八面体層を間にはさんだサンドイッチ型の3層構造となって1枚の板状結晶層を形成し、この結晶層が積層されて層状となったものである。1枚の板状結晶層は、厚さが1nm程度、厚さと垂直方向の面の大きさが縦横平均して100nm〜100μm程度というのが標準的である。珪酸層は負の電荷を有し、これは通常結晶層の間に存在するナトリウムイオンまたはリチウムイオンなどの金属カチオンにより中和されている。層状珪酸塩は、上記のように珪酸層が有する負の電荷に由来するカチオン交換能を持つものであり、カチオン交換容量が30〜150meq/100g(層状珪酸塩100gあたりのミリ当量数)であるものが好ましい。カチオン交換容量が小さすぎても大きすぎても後述する膨潤が不充分になる場合がある。金属カチオンは一般にナトリウムまたはリチウムを指し、カリウムや多価の金属カチオンの割合が多い場合はイオン交換性や水膨潤性が著しく低いので好ましくない。
水膨潤性合成無機層状珪酸塩(以下、単に層状珪酸塩ともいう。)は、2層の珪酸四面体層がマグネシウムまたはアルミニウムを含む八面体層を間にはさんだサンドイッチ型の3層構造となって1枚の板状結晶層を形成し、この結晶層が積層されて層状となったものである。1枚の板状結晶層は、厚さが1nm程度、厚さと垂直方向の面の大きさが縦横平均して100nm〜100μm程度というのが標準的である。珪酸層は負の電荷を有し、これは通常結晶層の間に存在するナトリウムイオンまたはリチウムイオンなどの金属カチオンにより中和されている。層状珪酸塩は、上記のように珪酸層が有する負の電荷に由来するカチオン交換能を持つものであり、カチオン交換容量が30〜150meq/100g(層状珪酸塩100gあたりのミリ当量数)であるものが好ましい。カチオン交換容量が小さすぎても大きすぎても後述する膨潤が不充分になる場合がある。金属カチオンは一般にナトリウムまたはリチウムを指し、カリウムや多価の金属カチオンの割合が多い場合はイオン交換性や水膨潤性が著しく低いので好ましくない。
水膨潤性とは、結晶層間に水分子を引き入れることにより、水を吸って膨潤する性質をいい、水膨潤性の大きさは日本ベントナイト工業会標準試験方法 JBAS−104−77に準じた方法で測定できる。層状珪酸塩は、水膨潤性の値が15ml/2g〜80ml/2gのものが好ましい。このような層状珪酸塩は、水中で結晶層の層間が広がり、単層または数層にまで分散する性質を有している。すなわち数μmの大きさの層状珪酸塩粒子が、厚さが1〜数nm程度の薄片にまで分散する。水膨潤性の値が小さすぎても大きすぎても、層状珪酸塩が疎水性樹脂に均一に分散されない場合がある。
このような水膨潤性合成無機層状珪酸塩としては、水膨潤性の合成フッ素雲母、合成フッ素ヘクトライト、合成フッ素化マイカなどを主成分とするものが挙げられる。このような水膨潤性合成無機層状珪酸塩は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
水膨潤性合成無機層状珪酸塩の水中で分散した状態での平均粒子径は3〜50μmであり、6〜50μmが好ましく、6〜20μmがより好ましい。3μm未満の場合には水膨潤性合成無機層状珪酸塩同士の凝集する割合が多くなり、組成物中に緻密に分散されないために、得られる被膜が二酸化炭素遮蔽性の不充分なものとなりやすい。50μmを超える場合は得られる被膜の平滑性が損なわれ、外観が悪いものとなりやすい。
水膨潤性合成無機層状珪酸塩の水中で分散した状態での平均粒子径の測定方法には、回析/散乱法による方法、動的光散乱法による方法、電気抵抗変化による方法、液中顕微鏡撮影後画像処理による方法などが可能であるが、本発明で採用している平均粒子径の測定は回析/散乱法によるものである。
回析/散乱法による粒度分布・平均粒子径測定は、膨潤してへき開した水膨潤性合成無機層状珪酸塩をイオン交換水中に分散した分散液について、光を透過させた時に得られる回析/散乱パターンをミー散乱理論などを用いてパターンに最も矛盾の無い粒度分布を計算することによりなされる。
回析/散乱法による粒度分布・平均粒子径測定は、膨潤してへき開した水膨潤性合成無機層状珪酸塩をイオン交換水中に分散した分散液について、光を透過させた時に得られる回析/散乱パターンをミー散乱理論などを用いてパターンに最も矛盾の無い粒度分布を計算することによりなされる。
回析/散乱法による粒度分布・平均粒子径測定ができる市販の装置としては、レーザー回析・光散乱法による粒度測定装置(LS230コールター社製)、レーザー回析式粒度分布測定装置(SALD3000、島津製作所製)、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(LA910、LA700,LA500、堀場製作所製、及びマイクロトラックSPA、日機装製MT3000)などが挙げられる。
疎水性樹脂は、得られる被膜の主要構成成分であり、水膨潤性合成無機層状珪酸塩が分散される際の分散媒すなわちマトリックスとなるものである。得られる被膜の二酸化炭素遮蔽性は水膨潤性合成無機層状珪酸塩の分散状態により左右されるため、水膨潤性合成無機層状珪酸塩の分散状態に影響する疎水性樹脂の選択は重要な因子である。
疎水性樹脂とは、水を分散媒とし該疎水性樹脂を分散質とするエマルションを形成可能な樹脂である。疎水性樹脂は、該疎水性樹脂を構成する重合体の単量体単位の合計量を基準として疎水性単量体単位および親水性単量体単位の割合がそれぞれ50質量%以上および50質量%以下であるものが好ましく、60〜99.9質量%および0.1〜40質量%であるものがより好ましく、70〜99.5質量%および0.5〜30質量%であるものがさらに好ましい。疎水性単量体単位の割合が少なすぎると水性制振性組成物から形成される被膜が耐水性が悪く、ひいては制振性が不充分となる場合があり、疎水性単量体単位の割合が多すぎると組成物の分散安定性が不充分となる場合がある。
疎水性単量体とは20℃における水への溶解度が2質量%以下の単量体を意味し、親水性単量体とは20℃における水への溶解度が2質量%を超える単量体を意味する。
疎水性単量体とは20℃における水への溶解度が2質量%以下の単量体を意味し、親水性単量体とは20℃における水への溶解度が2質量%を超える単量体を意味する。
疎水性樹脂の例としては、スチレンアクリル共重合体、アクリル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのビニル重合体が挙げられる。耐候性や基材への密着性の点から、アクリル共重合体が特に好ましいものである。これらは一種を単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル共重合体としては、芳香環を有する単量体単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位および炭素数が8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位からなる群から選ばれる単量体単位を有するものであることが好ましい。また、芳香環を有する単量体単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位および炭素数が8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位からなる群から選ばれる単量体単位30〜99質量%、上記の群に含まれない(メタ)アクリル酸エステル単位1〜70質量%を構成単量体単位として有するビニル重合体であることが特に好ましい。
疎水性樹脂は、通常水性媒体に分散されたものとして提供される。水性媒体に分散された疎水性樹脂の平均粒子径は0.5μm以下である。好ましくは0.05〜0.3μmであり、より好ましくは0.05〜0.2μmである。0.5μmより大きいと、得られる被膜の二酸化炭素遮蔽性が大きく低下する。
疎水性樹脂は、水性媒体にアニオン型乳化剤若しくはノニオン型乳化剤で分散されていることが好ましい。特にアニオン型乳化剤が好ましい。乳化剤としては一般の低分子乳化剤の他に、高分子乳化剤、反応性乳化剤でもよく、自己乳化型樹脂でも構わない。
水性媒体は、水そのものであってもよいし、水および水と混和する溶剤を主成分とする混合溶剤であってもよい。混合溶剤の場合は水の割合が混合溶剤全体の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。水と混和する溶剤としては、プロトン供与性を有する溶剤が好ましく、具体例としてはアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。混合溶剤は、水およびプロトン供与性を有する溶剤以外の溶剤を含むものであってもよい。
疎水性樹脂と水膨潤性合成無機層状珪酸塩の割合は、疎水性樹脂100質量部を基準とした水膨潤性合成無機層状珪酸塩の割合が1〜50質量部であり、5〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。1質量部未満であっても50質量部を越えても、得られる被膜の二酸化炭素遮蔽性が低下する。
アミノアルコールは、アミノ基および水酸基を有する化合物であり、被膜の二酸化炭素遮蔽性を優れたものにするために必要な成分である。アミノアルコールは、アンモニア又はアルキルアミンとアルキレンオキサイドの反応によっても得られる。アミノアルコールの例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル、N,N−ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール等がある。これらの例以外にも、アルキルアミン(エチルアミン、メチルアミン等)、及びアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)の組み合わせによって種々のアミノアルコールが選択可能である。
疎水性樹脂とアミノアルコールの割合は、疎水性樹脂100質量部を基準としたアミノアルコールの割合が0.1〜10質量部であり、0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。0.1質量部未満であっても10質量部を越えても、得られる被膜の二酸化炭素遮蔽性が低下する。
なお、特許文献4(特開2005−47967号公報)には、本願発明と類似の組成物が開示されているが、二酸化炭素遮蔽という課題の開示はなく、アミノアルコールが特定割合で配合された組成物は得られる被膜の二酸化炭素遮蔽性が優れたものとなることを開示も示唆もしていない。
なお、特許文献4(特開2005−47967号公報)には、本願発明と類似の組成物が開示されているが、二酸化炭素遮蔽という課題の開示はなく、アミノアルコールが特定割合で配合された組成物は得られる被膜の二酸化炭素遮蔽性が優れたものとなることを開示も示唆もしていない。
二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物は、上記成分のほか、必要に応じてその他の添加剤が添加されたものであってもよい。
上記の組成物、すなわち水膨潤性合成無機層状珪酸塩、疎水性樹脂、アミノアルコールおよび水性媒体を特定割合で含有するエマルション組成物は、基材に塗布され、乾燥されて二酸化炭素遮蔽性被膜を形成する。乾燥は過熱乾燥であってもよいし、自然乾燥であってもよい。被膜の厚さは、特に制限はないが、10μm〜数mm程度が現実的である。厚い被膜を必要とする場合は、2回以上重ね塗りをすることもよい。
基材としては、コンクリート、紙、プラスチック、木、布、不織布などが挙げられる。コンクリート成形物やコンクリート構造物は、上記二酸化炭素遮蔽性被膜により極めて効果的に保護されるものであり、本発明にとってコンクリートは特に好ましい基材である。
表1に示す原料からなるエマルション組成物を紙基材またはコンクリート基材に塗布し、自然乾燥させて、基材上に被膜が形成された試験片を作成した。得られた試験片について、二酸化炭素遮蔽性およびコンクリート中性化度を評価した。評価結果を表1に示した。表1における原料は以下のものである。原料の配合量は質量部であり、疎水性樹脂水性分散体の量は固形分を意味する。
アクリル樹脂A:スチレン/オクチルアクリレート/メタクリル酸=45/50/5(質量比)の共重合体エマルション。平均粒子径0.13μm。
アクリル樹脂B:シクロヘキシルアクリレート/オクチルアクリレート/メタクリル酸=65/30/5(質量比)の共重合体エマルション。平均粒子径0.13μm。
アクリル樹脂C:メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸=60/35/5(質量比)の共重合体エマルション。 平均粒子径0.14μm。
アクリル樹脂D:スチレン/オクチルアクリレート/メタクリル酸=45/50/5(質量比)の共重合体エマルション。平均粒子径0.53μm。
フッ素雲母A:膨潤度29ml/2g 、平均粒子径=5.2μm 、F/Si原子比=0.40
フッ素雲母B:膨潤度32ml/2g 、平均粒子径=11μm 、F/Si原子比=0.39
アクリル樹脂A:スチレン/オクチルアクリレート/メタクリル酸=45/50/5(質量比)の共重合体エマルション。平均粒子径0.13μm。
アクリル樹脂B:シクロヘキシルアクリレート/オクチルアクリレート/メタクリル酸=65/30/5(質量比)の共重合体エマルション。平均粒子径0.13μm。
アクリル樹脂C:メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸=60/35/5(質量比)の共重合体エマルション。 平均粒子径0.14μm。
アクリル樹脂D:スチレン/オクチルアクリレート/メタクリル酸=45/50/5(質量比)の共重合体エマルション。平均粒子径0.53μm。
フッ素雲母A:膨潤度29ml/2g 、平均粒子径=5.2μm 、F/Si原子比=0.40
フッ素雲母B:膨潤度32ml/2g 、平均粒子径=11μm 、F/Si原子比=0.39
(1)二酸化炭素遮蔽性
上質紙に、乾燥後の被膜の厚さが約50μmとなるようにエマルション組成物を塗工し、自然乾燥させて二酸化炭素遮蔽性被膜付き上質紙を作成した。ASTM D1434に準拠して25℃で二酸化炭素透過率を測定した。二酸化炭素透過率が小さいほど二酸化炭素遮蔽性が優れていることを意味する。
(2)コンクリートの中性化抑制性
新規コンクリートの表面に、固形分で約50g/m2の膜厚となるようにエマルション組成物を塗工し、自然乾燥させて二酸化炭素遮蔽性被膜付きコンクリートを作成した。室温30℃、二酸化炭素濃度5%の雰囲気において39週間静置後、サンプルを切断して、その断面にフェノールフタレインの1%エチルアルコール溶液を塗布した。赤色に変化した範囲を表面からの深さとして測定し、その深さを中性化深長を求めた。この中性化深長が短いほど中性化が抑制されたことを示す。
上質紙に、乾燥後の被膜の厚さが約50μmとなるようにエマルション組成物を塗工し、自然乾燥させて二酸化炭素遮蔽性被膜付き上質紙を作成した。ASTM D1434に準拠して25℃で二酸化炭素透過率を測定した。二酸化炭素透過率が小さいほど二酸化炭素遮蔽性が優れていることを意味する。
(2)コンクリートの中性化抑制性
新規コンクリートの表面に、固形分で約50g/m2の膜厚となるようにエマルション組成物を塗工し、自然乾燥させて二酸化炭素遮蔽性被膜付きコンクリートを作成した。室温30℃、二酸化炭素濃度5%の雰囲気において39週間静置後、サンプルを切断して、その断面にフェノールフタレインの1%エチルアルコール溶液を塗布した。赤色に変化した範囲を表面からの深さとして測定し、その深さを中性化深長を求めた。この中性化深長が短いほど中性化が抑制されたことを示す。
経時的に性能が低下することが少ない二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜を、良好な作業性で形成できる。上記二酸化炭素遮蔽性に優れた被膜により被覆されたコンクリート成形物、コンクリート構造物は中性化が抑制され、寿命の長いものとなる。
Claims (6)
- 平均粒子径が3〜50μmである水膨潤性合成無機層状珪酸塩および平均粒子径が0.5μm以下である疎水性樹脂が水性媒体に分散された水性分散体ならびにアミノアルコールを含み、疎水性樹脂100質量部を基準とした水膨潤性合成無機層状珪酸塩およびアミノアルコールの割合がそれぞれ1〜50質量部および0.1〜10質量部である二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物。
- 水膨潤性合成無機層状珪酸塩は水膨潤性合成フッ素雲母または水膨潤性合成フッ素ヘクトライトである請求項1に記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物。
- 疎水性樹脂は、芳香環を有する単量体単位、シクロヘキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位および炭素数が8以上であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位からなる群から選ばれる単量体単位30〜99質量%および上記の群に含まれない(メタ)アクリル酸エステル単位1〜70質量%を構成単位として有するビニル重合体である請求項1に記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を乾燥させることを特徴とする二酸化炭素遮蔽性被膜の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物を乾燥させて得られる二酸化炭素遮蔽性被膜。
- 請求項5に記載の二酸化炭素遮蔽性被膜を有するコンクリート成形物。
Priority Applications (1)
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JP2005150559A JP2006328131A (ja) | 2005-05-24 | 2005-05-24 | 二酸化炭素遮蔽性被膜製造用エマルション組成物およびその利用 |
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