JP2006316974A - 合成樹脂製プーリ - Google Patents
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Abstract
【課題】 製造コストを徒に高くする事なく、外周面の真円度を向上できる合成樹脂製プーリを提供する。
【解決手段】 合成樹脂性プーリ1aは、互いに同心に設けられた内径側円筒部15及び外径側円筒部16を備え、熱可塑性樹脂を射出成形によりモールドすることで、内径側円筒部15をラジアル転がり軸受12を構成する外輪13の外周寄り部分に固設される。外径側円筒部16の外周面に設けたベルト案内面16aは、射出成形後に加熱矯正される。
【選択図】 図1
【解決手段】 合成樹脂性プーリ1aは、互いに同心に設けられた内径側円筒部15及び外径側円筒部16を備え、熱可塑性樹脂を射出成形によりモールドすることで、内径側円筒部15をラジアル転がり軸受12を構成する外輪13の外周寄り部分に固設される。外径側円筒部16の外周面に設けたベルト案内面16aは、射出成形後に加熱矯正される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、合成樹脂製プーリに関し、例えば、自動車用エンジンの補機或はカムシャフトを駆動する為の無端ベルトやタイミングベルト(以下、単に「ベルト」とする。)に所望の張力を付与する為に、或はベルトの巻き掛け角を確保すべくこのベルトを案内する為に使用するアイドラプーリとして利用される合成樹脂製プーリに関する。
従来から、自動車用エンジンの補機或はカムシャフトを駆動する為のベルトに所望の張力を付与する等の為のアイドラプーリとして、プレスプーリが広く使用されている。プレスプーリは、転がり軸受の外周側に、鋼板等の金属板にプレス加工を施して造ったものを、転がり軸受を構成する外輪に外嵌固定する状態で設けられる。又、アイドラプーリとして、転がり軸受を構成する外輪の周囲に、この外輪の外周寄り部分をその内周側にモールドした状態で一体的に固設した合成樹脂製プーリも使用されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。特に、近年は、この合成樹脂製プーリが、アイドラプーリの軽量化及び低コスト化を図れると言った理由により、その採用が増加しつつある。
また、合成樹脂製プーリは、ベルトに所望の張力を付与する為の張力付与装置に組み込んで使用されている。例えば、図12〜14に示す様に、特許文献1に記載の合成樹脂製のアイドラプーリ1を使用した張力付与装置14では、シリンダブロック等の固定の部分に結合固定するベースプレート2に長孔3が形成され、この長孔3に沿う変位を自在とした支持軸4の基端部(図12の右端部)の頭部5に形成したねじ孔に、調整ボルト6の先端部が螺合されている。
この調整ボルト6の基端部は、ベースプレート2の一端部(図12の上端部)に設けた折り曲げ板部7に形成した通孔8に挿通されている。又、調整ボルト6の中間部で上記折り曲げ板部7よりも頭部5寄り部分には、調整ナット9とロックナット10とが螺合されている。
支持部4には、支持スリーブ11を介して、深溝型ラジアル玉軸受である転がり軸受12の内輪21が支持されている。又、この転がり軸受12の外輪13の周囲には、合成樹脂製のアイドラプーリ1が固定されている。このアイドラプーリ1は、互いに同心に設けられた内径側円筒部15及び外径側円筒部16を有する。この内径側円筒部15の中間部外周面と外径側円筒部16の中間部内周面とは、円輪状の連結部17により連結されており、この連結部17の両側面にそれぞれ複数本ずつの補強リブ18、18が、それぞれ放射状に設けられている。
この様なアイドラプーリ1は、内径側円筒部15を外輪13の周囲に、射出成形用の金型19(図5及び図6参照。)により、この外輪13の外周寄り部分をその内周側にモールドした状態で固設している。即ち、金型19内に設けた、アイドラプーリ1の外形に対応した内形を有するキャビティ20内に、図示しないゲートから溶融した熱可塑性樹脂を注入する。そして、この熱可塑性樹脂が冷却・固化した後に金型19を開いて、アイドラプーリ1を転がり軸受12と共に、キャビティ20内から取り出す。
上述のようなアイドラプーリ1を含んで構成される、張力付与装置14により、ベルトに所望の張力を付与するには、このベルトをアイドラプーリ1の一部で、調整ナット9と反対側面(図12の下面)に掛け渡す。そして、調整ナット9を回転させる事によりアイドラプーリ1の位置を変えて、このアイドラプーリ1によりベルトに付与する力を調整する。そして、この張力が所望値になった状態で、ロックナット10を緊締し、アイドラプーリ1の位置を固定する。
ところで、上述の様な合成樹脂を射出成形する事により得られる合成樹脂製プーリの場合、従来から広く使用されている、金属板にプレス加工を施して造るプレスプーリに比べて、軽量化とコスト低減とを図れる反面、射出成形後に合成樹脂の体積収縮により一部が変形する、所謂引けが発生し、アイドラプーリの形状精度を確保するのが難しい。より具体的には、図12において、このアイドラプーリ1の外周面の真円度が悪化するため、ベルトの走行に伴って、アイドラプーリ1の外周面とベルトの周面とが衝突して(互いに叩き合って)、比較的高い周波数を伴う噛み合い音が生じる可能性がある。又、ベルトが振れを伴いながら走行したり、或いはアイドラプーリ1並びにこのアイドラプーリ1を支持したベースプレート2が振動する事により、不快な異音が発生し易くなる。更に、上記外周面の真円度の悪化が著しくなる場合には、上記アイドラプーリ1の外周面からベルトが外れて、このベルトによる駆動部材から従動部材への動力の伝達が不能となる可能性がある。この為、合成樹脂製のアイドラプーリ1に於いては、ベルトを案内する為の外周面の成形精度を向上させる事が、製品の品質を確保する際に最も重要となっている。
一方、合成樹脂製のアイドラプーリ1には、ベルトの張力に耐え得る強度特性や、温度変化に耐え得るヒートショック性能、及び小石等の噛み込みや衝突に耐え得る耐衝撃性等を確保する事も要求される。これに対して、合成樹脂として、変形し易いものを使用した場合には、これらの性能を確保できなくなる。この為、上記噛み合い音や異音の発生を抑制する為に、上記合成樹脂として変形し易い、所謂低剛性の合成樹脂を使用する事はできない。
この様な事情に鑑みて、特許文献1〜4のアイドラプーリでは、アイドラプーリの外周面の真円度を向上させ、凹凸を減少させる事を考慮した技術が提案されている。即ち、特許文献1〜4に記載された技術の場合には、アイドラプーリの外周面の真円度を向上させ、凹凸を減少させる事を考慮して、アイドラプーリを射出成形する金型(成形型)のキャビティに溶融樹脂を送り込む為のゲートの配設位置を工夫し、この溶融樹脂の金型内での流動状態を制御したり、アイドラプーリ自体の形状を工夫している。又、特許文献3に記載されたアイドラプーリの場合には、成形に使用する合成樹脂材料として、ガラス繊維を15〜40%程度充填した強化ポリアミド66、強化ポリアミド610、強化ポリアミド612、或いはポリフェニレンサルファイド(PPS)とミネラルとの複合材料を使用している。又、特許文献4に記載されたアイドラプーリの場合には、成形に使用する合成樹脂材料として、ガラス繊維を43%含有したポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミド樹脂を使用している。
又、特許文献5では、円筒状の内周面を有する金型のキャビティ内に、溶融した合成樹脂を注入し、このキャビティの内周面に沿った円筒状の外周面を有するアイドラプーリを射出成形するアイドラプーリの製造方法が記載されている。この製造方法の場合には、上記キャビティの内周面に、このキャビティ内に注入した合成樹脂が冷却・固化する際に生じる変形分を考慮した凹凸を形成し、これら変形分と凹凸とを互いに相殺させる事により、得られるアイドラプーリの外周面の形状精度を向上させている。
特開平10−122339号公報
特開平4−107355号公報
特開平7−63249号公報
特開平8−4883号公報
特開2000−310315号公報
ところで、特許文献2〜4に記載されたアイドラプーリの場合には、必ずしも外周面の真円度を向上させると言った効果を十分に発揮できない。また、特許文献1に記載のアイドラプーリの場合には、外周面の真円度の向上が図られているが、さらなる改良の余地がある。
また、特許文献5に記載されたアイドラプーリの製造方法は、アイドラプーリの外周面の真円度の向上と、この外周面の凹凸の低減とを図る面からは非常に有効であるが、キャビティの内周面に凹凸を形成する事が非常に高度な技術と多大な時間とを必要とする。この為、円周面に凹凸を形成したキャビティを有する金型の製造コストは、技術面から一般的に使用されている金型の製造コストよりも嵩む可能性がある。又、内周面に凹凸を形成したキャビティを有する金型により製造されるアイドラプーリの場合には、予め内周面に凹凸を形成しないキャビティを有する金型により製造されるアイドラプーリの成形条件と合成樹脂材料とによる外周面の形状精度を基準として加工している為、成形条件の許容幅が狭い。又、合成樹脂材料の製造ロット毎の流動特性に代表される、成形加工特性の変動許容幅も狭い。これらにより、特許文献5に記載のアイドラプーリの製造方法を用いてアイドラプーリを安定して多量に供給する為には、非常に精緻な成形条件の管理と合成樹脂材料の成形加工特性の管理とが必要になる可能性がある。
この様な要因により、特許文献5に記載されたアイドラプーリの製造方法は、従来から広く行なわれているアイドラプーリの製造方法に比べて製造コストが高くなる可能性がある。さらに、一旦射出成形によりプーリを製造した後に、ベルトの案内面となる外径側円筒部の外周面に切削加工を施し、アイドラプーリの外周面の真円度を向上させ、凹凸を減少させる試みがなされている。このような加工は、アイドラプーリの外周面の真円度の向上と、この外周面の凹凸の低減とを図る面からは非常に有効であるが、機械加工であるため、従来から広く行なわれているアイドラプーリの製造方法に比べて製造コストが高くなる可能性がある。
また、一般に合成樹脂製プーリを形成する樹脂材料は、補強のため、ガラス繊維等の補強繊維を含有している。成形後の合成樹脂製プーリの表面近傍には樹脂の割合が多い所謂スキン層が形成されることが知られているが、切削加工等によりそのスキン層が除去されると、ガラス繊維等が当初より露出することとなる。ガラス繊維等の補強繊維は、硬質であるためベルトの摩耗を促進させる可能性がある。
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを徒に高くする事なく、外周面の真円度を向上できる合成樹脂製プーリを提供することにある。
本発明の目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 互いに同心に設けられた内径側円筒部及び外径側円筒部を備え、熱可塑性樹脂を射出成形によりモールドすることで、前記内径側円筒部をラジアル転がり軸受を構成する外輪の外周寄り部分に固設した合成樹脂性プーリであって、
前記外径側円筒部の外周面に設けたベルト案内面は、射出成形後に加熱矯正されることを特徴とする合成樹脂製プーリ。
(1) 互いに同心に設けられた内径側円筒部及び外径側円筒部を備え、熱可塑性樹脂を射出成形によりモールドすることで、前記内径側円筒部をラジアル転がり軸受を構成する外輪の外周寄り部分に固設した合成樹脂性プーリであって、
前記外径側円筒部の外周面に設けたベルト案内面は、射出成形後に加熱矯正されることを特徴とする合成樹脂製プーリ。
上述の様に構成する本発明の合成樹脂製プーリは、特殊な合成樹脂材料や特殊な金型を使用する事なく、また、切削加工を施すことなく外径側円筒部の外周面の凹凸の高さを低減でき、この外周面の真円度を向上できる。この結果、合成樹脂製プーリの製造コストを徒に高くする事なく、ベルトの振れに起因する振動や、合成樹脂製プーリの外周面の凹凸とこのベルトとが噛み合う事による異音の発生を低減できる。
以下、本発明に係る合成樹脂製プーリについて図面を参照して詳細に説明する。
図1〜2は、Vリブドベルトの背面側(リブを設けていない側)を案内する本発明の合成樹脂製プーリであるアイドラプーリ1aを示し、図3〜4は、Vリブドベルトの正面側(リブを設けている側)を案内する本発明の合成樹脂製プーリであるアイドラプーリ1bを示している。なお、これらの合成樹脂製プーリ1a,1bは、図12〜14に示したアイドラプーリ1と同様に、張力付与装置に組み込んで使用することができる。
Vリブドベルトの背面側を案内するアイドラプーリ1aは、前述の図12〜14に示したアイドラプーリ1と同様に、互いに同心に設けられた内径側円筒部15及び外径側円筒部16を有する。この外径側円筒部16の外周面は、ベルトの背面を案内する為の平坦な案内面である。又、上記内径側円筒部15の中間部外周面とこの外径側円筒部16の中間部内周面とは円輪状の連結部17により連結しており、この連結部17の両側面にそれぞれ同数である、48本ずつ合計96本の補強リブ18、18を、それぞれ各側面に等間隔で放射状に設けている。又、連結部17の両側面に形成する複数リブ18、18の円周方向位置は、互いに一致させている(両側面で補強リブ18、18の位相を互いに一致させている)。
又、Vリブドベルトの正面側を案内するアイドラプーリ1bも、互いに同心に設けられた内径側円筒部15及び外径側円筒部16と、内径側円筒部15の中間部外周面とこの外径側円筒部16の中間部内周面とを連結する円輪状の連結部17と、を有する。この外径側円筒部16の外周面は、ベルトの正面を案内する為の波型の案内面である。又、連結部17の両側面にそれぞれ同数である、48本ずつ合計96本の補強リブ18、18を、両側面の円周方向位置を互いに一致させ、それぞれ各側面に等間隔で放射状に設けている。
特に、背面側を案内するアイドラプーリ1aは、ベルトとの接触部が少なく、正面側を案内するアイドラプーリ1bの様にベルトのリブとプーリの案内面の波型のリブが摺れ合うことによる減衰効果が期待できないため、アイドラプーリ1aの外周面の凹凸とベルトが噛み合うことによる異音の発生し易いところとなる。
本実施形態において、アイドラプーリ1a,1bを構成する合成樹脂材料として、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、芳香環を有する芳香族ポリアミド、シクロ環を有する非晶性ポリアミドの単独又は複数を混合したもの、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂を母材として、ガラス繊維等の強化繊維やタルク、マイカ等のミネラル等の充填剤を添加した複合材料等を使用できる。より詳しくは、上記充填剤として、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカ等を使用でき、粒子状充填剤として、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)の粒子、炭酸カルシウム(CaO3)、タルク、マイカ、グラファイト等を使用できる。更に、上記充填剤は、それぞれ単独でも使用できるが、繊維系充填剤と粒子状充填剤とを組み合わせた場合には、粒子状充填剤により合成樹脂の体積収縮の異方性を抑制できると共に、繊維系充填剤により機械的強度の低下を抑制する事ができる。
尚、合成樹脂材料の母材及び充填剤としては、その他にも使用できるものがあり得ると考えられるが、自動車の補機駆動用のベルトの張力調整用又は案内用として使用する為には、高い耐熱性を有する合成樹脂材料を使用する事が好ましく、より好ましくは、UL規格の長期耐熱規格に規定される温度指数が少なくとも100℃以上であるものを使用する。又、上記充填剤と合成樹脂材料の母材との密着性を向上させる為に、更に好ましくは、シランカップリング剤等の添加剤を適宜添加する。
この様なアイドラプーリ1a,1bは、上述したような合成樹脂材料を射出成形によりモールドすることで、内径側円筒部15をラジアル転がり軸受12を構成する外輪13の外周寄り部分に固設して構成される。具体的には、図5及び図6(図は、アイドラプーリ1aの場合を示す。)に示すように、ラジアル転がり軸受12を外輪13の外周寄り部分がキャビティ20の一部を構成するようにして金型19(成形型)内に収容する。そして、図1に丸印で示す様に、内径側円筒部15の片端面(図1の表側端面)で円周方向等間隔の複数個所に整合する位置に設けられたゲート22,22から溶融樹脂をキャビティ20内に送り込み、アイドラプーリ1a,1bを射出成形する。なお、本例の場合には、アイドラプーリ1aの直径(=外径側円筒部の直径)を、70mmとなるように成形した。
ここで、射出成形された後のアイドラプーリ1a,1bの外径面は、形状精度(真円度、凹凸)を十分に確保するのが難しい。具体的に、最も影響が大きいものとして、外径側円筒部16のうちで補強リブ18、18と連接する部分が、大きく体積収縮しやすくなる(ひけが生じ易くなる)事に起因して、上記外周面に凹部が発生することによる。又、次に影響が大きいものとして、上記外周側円筒部16での合成樹脂の融合個所に生じるウェルドに起因して、上記外周面に凸部が発生することによる。
このため、本実施形態のアイドラプーリ1a,1bでは、射出成形後、外径側円筒部16の外周面に設けたベルト案内面16a,16bに、以下に述べるようにして加熱矯正が施されている。
まず、図7は図1,2に記載のVリブドベルトの背面側を案内するアイドラプーリ1aの加熱矯正の方法を示している。アイドラプーリ1aは、そのアイドラプーリ1aの外径より若干小径に形成した円孔31aを有する加熱した金属製のバレル31内をピストン41(負荷装置)により押されて通過することにより矯正される。
より詳細には、加熱バレル31の内径は、アイドラプーリ1aの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小径から最小径−0.2mmの範囲が好ましい。これは、アイドラプーリ1aの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小径より加熱バレル31の内径を大きく設定した場合、アイドラプーリ1aの外径の真円度及び凹凸の矯正が十分ではなく、逆に加熱バレル31の内径を、アイドラプーリ1aの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小径より0.2mmを越えて小さく設定した場合、加熱矯正時のピストン41の押圧により外径側円筒部16、連結部17、補強リブ18、18が破損する可能性があるためである。
次に、加熱バレル31の温度はアイドラプーリ1aを構成する合成樹脂材料の融解温度(融点)−70℃以上で融解温度未満が好ましく、より好ましくは、合成樹脂材料の融解温度(融点)−50℃以上で融解温度−5℃未満である。これは、アイドラプーリ1aを構成する合成樹脂材料の融解温度(融点)−70℃を下回った場合、樹脂の弾性が大きく塑性変形し難いためアイドラプーリ1aの外径の真円度及び凹凸の矯正が十分ではなく、逆に融解温度(融点)場合、アイドラプーリ1aの外径面(案内面)が溶融するため、かえって真円度を低下させる可能性があるためである。
図8は、この様な形状及び寸法を有するアイドラプーリ1aの外周面の真円度を示す概念図として、軸方向中央部の外周面の凹凸の測定結果を誇張して示しており、(a)は矯正前、(b)は矯正後を示している。従って、図7に示す方法によりアイドラプーリ1aを加熱矯正した後のベルト案内面16aの凹凸は、より凸部が矯正されることになる。
また、図9は、図3,4に記載のVリブドベルトの正面側を案内するアイドラプーリ1bの加熱矯正の方法を示している。アイドラプーリ1bは、その外径より若干幅狭に設定された熱板32の間に挟まれて上記アイドラプーリ1bが転がる事により、ベルト案内面16b全体が矯正される。なお、図9に示した熱板32の表面にはアイドラプーリ1bの波型の案内面を矯正するため、対応する波型を形成している。ただし、図9では、正面側を案内するアイドラプーリ1bの加熱矯正を示しているが、熱板32の表面を平坦にすることで、Vリブドベルトの背面側を案内するアイドラプーリ1aの加熱矯正を行なうことが可能である。
より詳細に説明すると熱板32、32間の距離は、高温時にアイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小径から最小径−0.3mmが好ましい。これは、アイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小径より熱板32、32間の距離を大きく設定した場合、アイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸の矯正が十分ではなく、逆に熱板32,32間の距離を、アイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小径より0.3mmを越えて小さく設定した場合、加熱矯正時にアイドラプーリ1bの外径側円筒部16、連結部17、補強リブ18、18が破損する可能性があるためである。ここで図7の方法と異なり、熱板32、32間の距離をアイドラプーリ1bの最小径−0.3mm以上に設定したのは、図9の方法では、アイドラプーリ1bの外径側円筒部全体を拘束しないため、より大きく押圧が可能なためである。
次に、熱板32、32の温度はアイドラプーリ1bを構成する合成樹脂材料の融解温度(融点)−70℃以上で融解温度未満が好ましく、より好ましくは、合成樹脂材料の融解温度(融点)−50℃以上で融解温度−5℃未満である。これは、アイドラプーリ1bを構成する合成樹脂材料の融解温度(融点)−70℃を下回った場合、樹脂の弾性が大きく塑性変形し難いためアイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸の矯正が十分ではなく、逆に融解温度(融点)場合、アイドラプーリ1bの外径面(案内面)が溶融するため、かえって真円度を低下させる可能性があるためである。
更に、図10は、図3,4に記載のVリブドベルトの正面側を案内するアイドラプーリ1bの加熱矯正の他の方法を示している。アイドラプーリ1bは、その軸受12の内輪21に軸42を挿入し回転自在に保持している。その状態で、加熱された回転輪33を外径面に押付けて回転し、それに伴ない上記アイドラプーリ1bが回転することにより、ベルト案内面16b全体が矯正される。なお、図10に示した加熱された回転輪33の外径面にはアイドラプーリ1bの波型の案内面を矯正するため対応する波型を形成している。ただし、図10では、正面側を案内するアイドラプーリ1bの加熱矯正を示しているが、加熱された回転輪33の外径面を平坦にする事で、Vリブドベルトの背面側を案内するアイドラプーリ1aの加熱矯正を行なうことが可能である。
より詳細には、加熱された回転輪33の押圧位置は、高温時にアイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小半径から最小半径−0.2mmが好ましい。これは、アイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小半径より加熱された回転輪33の位置を離して設定した場合、アイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸の矯正が十分ではなく、逆に回転輪33の位置を、アイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小半径−0.2mmより近づけて設定した場合、加熱矯正時にアイドラプーリ1bの外径側円筒部16、連結部17、補強リブ18、18が破損する可能性があるためである。
次に、加熱された回転輪33の温度はアイドラプーリ1bを構成する合成樹脂材料の融解温度(融点)−70℃以上で融解温度未満が好ましく、より好ましくは、合成樹脂材料の融解温度(融点)−50℃以上で融解温度−5℃未満である。これは、アイドラプーリ1bを構成する合成樹脂材料の融解温度(融点)−70℃を下回った場合、樹脂の弾性が大きく塑性変形し難いためアイドラプーリ1bの外径の真円度及び凹凸の矯正が十分ではなく、逆に融解温度(融点)場合、アイドラプーリ1bの外径面(案内面)が溶融するため、かえって真円度を低下させる可能性があるためである。
従って、本実施形態のアイドラプーリ1a,1bによれば、外径側円筒部16の外周面に設けたベルト案内面16a,16bは、射出成形後に加熱矯正されるので、特殊な合成樹脂材料や特殊な金型を使用する事なく、また、切削加工を施すことなく外径側円筒部16の外周面の凹凸の高さを低減でき、この外周面の真円度を向上できる。この結果、アイドラプーリ1a,1bの製造コストを徒に高くする事なく、ベルトの振れに起因する振動や、アイドラプーリ1a,1bの外周面の凹凸とこのベルトとが噛み合う事による異音の発生を低減できる。また、ベルト案内面16a,16bは、合成樹脂材料の割合が多いスキン層によって形成されるので、切削加工によって、ガラス繊維の露出量が増加することがないため、ベルトの摩耗を抑制することができる。
(実施例1)
次に、本発明の効果を確認すべく行なった騒音試験に就いて説明する。尚、本発明が、以下に示す実施例により何ら制限されるものではない事は勿論である。本試験に使用する実施例1は、前述の図1〜2に示したアイドラプーリ1aと同様の構造を有するもので、合成樹脂材料として、ガラス繊維強化ポリアミド66(「商品名 アミラン CM3006G−30」;東レ株式会社製)を用いた。この金型を開き、予め100℃に予熱した転がり軸受(JIS呼び番号が6203の単列深溝型玉軸受)を金型の所定位置に装着した後、型締めを行なった。そして、その後、この金型の内面と、上記転がり軸受を構成する外輪の内径寄り部分側面との内側に形成される空間部分に、溶融樹脂を射出した(注入した)。そして、この溶融樹脂が冷却・固化した後に上記金型を開いて、成形品を取り出し、上記転がり軸受を構成する外輪と一体成形した、アイドラプーリ1aを得た。
次に、本発明の効果を確認すべく行なった騒音試験に就いて説明する。尚、本発明が、以下に示す実施例により何ら制限されるものではない事は勿論である。本試験に使用する実施例1は、前述の図1〜2に示したアイドラプーリ1aと同様の構造を有するもので、合成樹脂材料として、ガラス繊維強化ポリアミド66(「商品名 アミラン CM3006G−30」;東レ株式会社製)を用いた。この金型を開き、予め100℃に予熱した転がり軸受(JIS呼び番号が6203の単列深溝型玉軸受)を金型の所定位置に装着した後、型締めを行なった。そして、その後、この金型の内面と、上記転がり軸受を構成する外輪の内径寄り部分側面との内側に形成される空間部分に、溶融樹脂を射出した(注入した)。そして、この溶融樹脂が冷却・固化した後に上記金型を開いて、成形品を取り出し、上記転がり軸受を構成する外輪と一体成形した、アイドラプーリ1aを得た。
又、この実施例のアイドラプーリの主な成形条件は、以下の通りである。
・溶融樹脂温度:288℃
・金型温度:100℃
・射出圧力:100MPa
・溶融樹脂温度:288℃
・金型温度:100℃
・射出圧力:100MPa
更に、実施例1としては、図7に示す方法で加熱矯正した合成樹脂製プーリを得た。なお、射出成形したのみのアイドラプーリ1aの外径の真円度及び凹凸を含んだ最小径は70.21mmであり、金属製のバレル31の内径70.05mmとし、更に設定温度は252℃とし、その金属製のバレル31をピストン41(負荷装置)により押されて通過することにより矯正した。また、比較例として射出成形したのみの合成樹脂製プーリと、切削加工により案内面を加工した合成樹脂製プーリを用いた。
試験は、図11に略示するようなプーリ回転試験機に、この様にして得られた実施例及び比較例のアイドラプーリを、試験プーリ27として組み込み、運転時のこの試験プーリ27の周囲の騒音(音圧)を測定した。このプーリ回転試験機は、一対の回転軸23、23にそれぞれ固定された駆動輪24と従動輪25との間にベルト26を掛け渡し、このベルト26の外周面の一部に試験プーリ27を、荷重Fにより押し付ける。この試験プーリ27は、図示しない固定の部分に対し変位自在に支持した支持軸28に、転がり軸受12を構成する内輪21(図1,2参照)を外嵌固定している。本試験は、この様なプーリ回転試験機に、試験プーリ27として実施例のアイドラプーリを組み込んだ状態で、「SOUND LEVEL METER RION NA−24」を用いて、このアイドラプーリから100mm離れた位置での音圧(dB)を測定した。
又、本試験における他の試験条件は、次の通りである。
・アイドラプーリの回転速度:8000min−1
・アイドラプーリをベルト26に押し付ける荷重F:1200N
・アイドラプーリの回転速度:8000min−1
・アイドラプーリをベルト26に押し付ける荷重F:1200N
表1には、この様な条件で行なった騒音試験の測定結果を示している。また、実施例及び比較例の合成樹脂製プーリの軸方向中央部の真円度と凹凸の最大高さを併記した。この表1に示した測定結果から明らかなように、加熱矯正した本発明の合成樹脂製プーリの場合には、外径面の真円度及び凹凸の精度が向上し、しかも凹凸部の凸部が選択的に矯正されるため、切削加工した合成樹脂プーリとほぼ同等に騒音を小さくできた。この事から、本発明の場合には、上記外径側円筒部16の外周面の真円度の向上を図れる事が分かった。
(実施例2)
更に、本発明の効果を確認すべく行ったベルトの傷つけ性を評価する樹脂製プーリの回転試験について説明する。試験には、前述の実施例1で用いたものと全く同一の加熱矯正した合成樹脂製プーリと切削加工により案内面を加工した合成樹脂製プーリを用いた。
本試験も、実施例1で用いたものと全く同一の図11に略示するようなプーリ回転試験機を用いて以下に示す条件以外は同様な方法で行った。
更に、本発明の効果を確認すべく行ったベルトの傷つけ性を評価する樹脂製プーリの回転試験について説明する。試験には、前述の実施例1で用いたものと全く同一の加熱矯正した合成樹脂製プーリと切削加工により案内面を加工した合成樹脂製プーリを用いた。
本試験も、実施例1で用いたものと全く同一の図11に略示するようなプーリ回転試験機を用いて以下に示す条件以外は同様な方法で行った。
・ アイドラプーリの回転速度:14000min−1
・ アイドラプーリをベルト26に押し付ける荷重F:3000N
・ ベルト:バンドー化学社製「バンドーリブエースオート 6PK−670」
・ アイドラプーリをベルト26に押し付ける荷重F:3000N
・ ベルト:バンドー化学社製「バンドーリブエースオート 6PK−670」
ベルトの傷つけ性の評価は、ベルトが破損するまでの時間により求めた。その結果を表2に示す。
表2に示した試験結果から明らかな様に、本発明の加熱矯正合成樹脂プーリの場合には、表面にガラス繊維が露出していないため、ベルトへの傷つけ性を低減でき、その結果、ベルト寿命を向上する事が分かった。
1a,1b アイドラプーリ(合成樹脂製プーリ)
12 ラジアル転がり軸受
13 外輪
15 内側円筒部
16 外側円筒部
16a,16b ベルト案内面
18 補強リブ
21 内輪
22 ゲート
31 バレル
32 熱板
33 回転輪
41 ピストン
42 軸
12 ラジアル転がり軸受
13 外輪
15 内側円筒部
16 外側円筒部
16a,16b ベルト案内面
18 補強リブ
21 内輪
22 ゲート
31 バレル
32 熱板
33 回転輪
41 ピストン
42 軸
Claims (1)
- 互いに同心に設けられた内径側円筒部及び外径側円筒部を備え、熱可塑性樹脂を射出成形によりモールドすることで、前記内径側円筒部をラジアル転がり軸受を構成する外輪の外周寄り部分に固設した合成樹脂性プーリであって、
前記外径側円筒部の外周面に設けたベルト案内面は、射出成形後に加熱矯正されることを特徴とする合成樹脂製プーリ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005142861A JP2006316974A (ja) | 2005-05-16 | 2005-05-16 | 合成樹脂製プーリ |
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Publications (1)
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JP2006316974A true JP2006316974A (ja) | 2006-11-24 |
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Country Status (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2083195A1 (en) * | 2008-01-24 | 2009-07-29 | JTEKT Corporation | Resin pulley |
JP2011017378A (ja) * | 2009-07-08 | 2011-01-27 | Jfe Pipe Fitting Mfg Co Ltd | 樹脂製管継手およびその製造方法 |
EP2577110A1 (en) * | 2010-06-02 | 2013-04-10 | Dayco IP Holdings, LLC | Low-noise pulley |
-
2005
- 2005-05-16 JP JP2005142861A patent/JP2006316974A/ja active Pending
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EP2577110A4 (en) * | 2010-06-02 | 2014-03-26 | Dayco Ip Holdings Llc | DRIVE DISC WITH LOW VOLUME |
US9671007B2 (en) | 2010-06-02 | 2017-06-06 | Dayco Ip Holdings, Llc | Low noise pulley |
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