JP2006309903A - 光ピックアップ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
適切な球面収差を行うことで、光情報記録媒体に対してより適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】
エキスパンダー光学系EXPにより、保護層の厚さの誤差に起因して生じる主に3次の球面収差が補正され、液晶素子LCにより、所定の位相パターンを与えることで、光ピックアップ装置固有の5次以上の球面収差を補正できることができ、それにより保護層の厚さの異なる光ディスクのいずれに対しても適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、光ピックアップ装置に関し、特に高次の球面収差を補正することによって適切な情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置に関する。
CDやDVDに対して情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置が知られている。ところで、例えばCDとDVDとに対して互換可能に光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置においては、構成のコンパクト化や低コスト化を図るために、1つのパッケージ内に異なる波長の半導体レーザを配置した2レーザ1パッケージと呼ばれる光源と、共通の対物レンズとを用いる例が多い。
しかるに、CDとDVDの保護基板の厚さが異なるため、ほぼ等しい位置から出射された光源から出射された光束を共通の対物レンズを用いて集光すると、保護層厚さに起因して球面収差が生じる。そこで、この球面収差を補正するために、光ピックアップ装置において球面収差を補正する手段が設けられている(特許文献1,2参照)。
特開平9−330529号公報 特開2003−132573号公報
特許文献1の技術によれば、対物レンズと光ディスクの間に平行平板の誘導体からなるプレートを、使用する光ディスクの種類に応じて進退自在に移動させ、光路内に挿入した場合は収差を補正し、光路から退出させたときは収差を残存させることにより、保護層の厚さが異なる光ディスクのいずれに対しても、適切に情報の記録及び/又は再生を行えるようにしている。
一方、特許文献2の技術によれば、光源と対物レンズとの間に、光軸間距離を変更可能な正レンズと負レンズとからなるエキスパンダー光学系或いは液晶素子を配置し、保護層の厚さ誤差に起因した球面収差を検出し、それを補正するようにエキスパンダー光学系或いは液晶素子を駆動することによって、適切に情報の記録及び/又は再生を行えるようにしている。
ここで、上述した従来技術では、光ディスクの保護層の厚さ誤差が生じた場合、光ディスクの情報記録面に対する集光光学系では主に3次の球面収差が発生することを前提としている。ところが、主に3次の球面収差を補正するのみでは、必ずしも最適な情報の記録及び/又は再生を行えない場合がある。特に、3次の球面収差を適切に補正した場合でも、5次以上の球面収差が残存する場合、たとえ光ディスク記録面への結像スポットに対して許容される範囲であっても、光検出器の受光面に集光されたスポット形状が崩れ、それにより誤検出を招く恐れがあり、何らかの対策が必要とされる。
更に、近年、光源波長405nm、NA0.85、保護層の厚さ0.1mmの仕様により情報記録/再生を行う、いわゆるBlu−ray Disc(BD)や、同じ光源波長、NA0.6前後、保護層の厚さ0.6mmの仕様で情報記録/再生を行うHD DVDなどの光ディスクなどが開発されている。しかるに、特に高開口数で用いられる記録密度の異なる光ディスクに対して、共通する対物レンズを用いて互換可能に情報の記録及び/又は再生を行う場合、光ディスクの保護層の厚さ誤差に起因する球面収差補正以外に、別の原因に起因する球面収差補正も必要である。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、適切な球面収差を行うことで、光情報記録媒体に対してより適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の光ピックアップ装置は、光源と、光源から出射した光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光するための対物レンズと、前記情報記録面で反射した光束を受光するための光検出器とを有し、前記光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
前記光源と前記対物レンズとの間に、主に3次の球面収差を補正するための第1球面収差補正手段と、主に5次以上の球面収差を補正するための第2球面収差補正手段とが設けられていることを特徴とする。
本発明者は、光ピックアップ装置に用いるレンズ等の光学素子自身の形状精度誤差などによって、3次の球面収差のほかに5次以上の球面収差も発生することに着目した。上述したように、光情報記録媒体の保護層の厚さ誤差で発生する球面収差の補正を行う場合、主に3次の球面収差(低次の球面収差という)のみが補正されることが求められる。その補正量は、光情報記録媒体の入射面から記録面までの保護層の厚さ誤差に依存するので、その厚さ誤差の変化に応じて収差補正量も変化させる必要がある。この際、光ピックアップ装置に固有な3次の球面収差もあわせた形で補正されれば一層効果的な補正となる。
一方で、光ピックアップ装置に固有な5次以上の球面収差(高次の球面収差という)が存在する。これは、光情報記録媒体の保護層の厚さに依存することはないので、この補正量は常に一定である。そこで、本発明においては、前記光源と前記対物レンズとの間に、主に3次の球面収差を補正するための第1球面収差補正手段と、主に5次以上の球面収差を補正するための第2球面収差補正手段とを設けており、低高次の球面収差のみならず高次の球面収差を補正することにより、任意の光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うようにしている。
ここで、「主に3次の球面収差を補正する」及び「主に5次以上の球面収差を補正する」について説明する。例えば、前記第1球面収差補正手段により補正される3次の球面収差量をΔ13とし,前記第1球面収差補正手段により補正される5次以上の球面収差量をΔ15とし、前記第2球面収差補正手段により補正される3次の球面収差量をΔ23とし、前記第2球面収差補正手段により補正される5次以上の球面収差量をΔ25とすると、Δ13>Δ15且つΔ23<Δ25である場合、前記第1球面収差補正手段が、主に3次の球面収差を補正する補正機能を有し、前記第2球面収差補正手段が、主に5次以上の球面収差を補正する補正機能を有するものとする。なお、0.8×Δ13>Δ15且つΔ23<0.8×Δ25が成り立つとより好ましい。
保護層の厚さが異なる光情報記録媒体の情報記録面に、対物レンズから出射した光束を集光させる場合、例えば前記第1球面収差補正手段としてのレンズを出射した光束の発散度または収束度を適当な状態とすることで、対物レンズを含む集光光学系の主に3次球面収差が補正され、この結果、収差が軽減された集光スポットが得られる。このとき同時に対物レンズや上記レンズ或いは他の光学素子自身の有する3次球面収差も補正することができる。
一方、5次以上の球面収差については、前記第2球面収差補正手段によって補正する。たとえば透過光に対して3次の球面収差に対しては変化をあまり与えず、主に5次以上の球面収差を低減するような位相分布を与える液晶素子を用いることによって補正を行うことができる。なお、3次の球面収差を補正する位相分布と5次以上の球面収差とは異なるので、主に5次以上のみの球面収差補正を別個に行うことが有効となる。また、5次より大きい球面収差、例えば7次球面収差を補正する位相分布は5次の球面収差と異なるが、これらは互いに寄与度比率を考慮した位相分布を与えるような設計を行ったり、あるいは5次のみの球面収差を補正するようにしてもよい。更に、9次以上の高次球面収差についても補正するようにしても良いが、一般に9次以上の球面収差は、残存させても大きな影響がないことが多い。
従来、光ディスク厚さ誤差による球面収差を補正する手段として、液晶素子が用いられる例が挙げられる。しかし、特開平9−128785号公報、特開2001−250256号公報などに見られるように、液晶をある領域に複数分割することで、ディスク厚誤差によって発生する3次の球面収差を補正するようにしているため、効率よく3次球面収差だけを補正することはできない。つまりディスク厚による球面を補正しようとすると、同時に高次球面収差も変化させてしまうことになり、たとえ3次球面収差を適切な値に抑えることができても、高次球面収差については適切な値に抑えることが困難になる。
そこで効率よく3次球面収差を補正しようとすると、3次球面収差補正のための位相分布をできるだけ精度良く与えなければならず、この結果液晶の分割数を大きくせざるを得ない。この場合、これを駆動するための配線量が増えて重くなるため、対物レンズをフォーカシング、トラッキングするためのアクチュエータに、これを固設することが困難になり、しかも補正駆動のドライブシステムが複雑になるという問題を有する。こういった問題は、主に3次球面収差を補正する液晶素子と、主に5次以上の球面収差を補正する液晶素子とを別個に設けることで解決される。
また5次以上の球面収差を補正するための前記第2球面収差補正手段としては、出射光に対して適当な位相分布を与えることのできる手段であれば液晶素子に限るものではなく、例えば、5次以上の球面収差による位相分布をキャンセルするような屈折率分布を持たせたノンパワーレンズや、非周期的位相構造を有す位相補償素子を用いるなどの方法もある。このような位相補償素子については、P6548 APPLIED OPTICS /Vol.40,No.35/10 December 2001に記載されている。これらは、位相分布のパターンが固定されるので、位相補償量に応じたパターンを幾通りか予め用意し、光ピックアップ装置が持つ5次以上の球面収差を補償するのに近いパターンを対物レンズ手前に設ければよい。
請求項2に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記第2球面収差補正手段は、透過する光束波面の位相分布が印加電圧によって制御される液晶素子を含むことを特徴とする。液晶素子に関しては、例えば特開平9−128785号公報、特開2001−250256号公報に記載されている。
請求項3に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記第2球面収差補正手段は、所定の厚さ分布を有し、入射面と出射面が平行でかつ平面状の透明部材を、光軸に対して垂直面内に配置してなる光学素子を含むことを特徴とする。このような光学素子OEの概略断面図を図1に示す。なお、かかる光学素子OEにおいて、光学面に所定の厚さ分布を有する回折構造DOEが形成されており、かかる回折構造DOEを通過する際に、輪帯状の階段領域ごとに、通過する光束に異なる位相を与えるようになっている。なお、図1に示す回折構造DOEでは、実際の段差より誇張されて図示されている。
請求項4に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記第1球面収差補正手段は、透過する光束波面の位相分布が印加電圧によって制御される液晶素子を含むことを特徴とする。
請求項5に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記第1球面収差補正手段は、透過光束の発散度(収束度を含む)を変化させる作用を有する光学素子を含むことを特徴とする。透過光束の発散度を変化させる作用を有する光学素子としては、エキスパンダー光学系、コリメータ光学系など光学素子を光軸方向に変位させるものの他、液体レンズ(特開2005−84387参照)などを用いることができる。
請求項6に記載の光ピックアップ装置は、請求項5に記載の発明において、前記光学素子を少なくとも光軸方向に移動させることで、透過光束の発散度を変化させることを特徴とする。
請求項7に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記第1球面収差補正手段は、所定の厚さ分布を有し、入射面と出射面が平行でかつ平面状の透明部材を、光軸に対して垂直面内に配置してなる光学素子を含むことを特徴とする。
請求項8に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、異なる波長の光束を出射する光源を有し、前記光源から出射された波長の異なる光束を用いて、記録密度が異なる光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、少なくとも一つの波長の光束に関して、前記第1球面収差補正手段と前記第2球面収差補正手段とにより球面収差が補正されることを特徴とするので、例えばCD、DVD、BD或いはHD DVDなどに対しても互換可能に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
請求項9に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記光源から出射された波長の等しい光束を用いて、保護層の厚さが異なる光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、少なくとも一つの光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う際に、前記第1球面収差補正手段と前記第2球面収差補正手段とにより球面収差が補正されることを特徴とするので、例えばBDとHD DVDとに対しても互換可能に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
請求項10に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、前記光情報記録媒体の情報記録面に対する対物レンズの焦点位置誤差信号が、非点収差法(ホログラムを用いる場合を含む)によって検出される光学系を有することを特徴とするので、本発明の効果をより発揮できる。非点収差法に関しては、特開2004−133999に開示されている。
請求項11に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、前記光情報記録媒体の情報記録面に対する対物レンズの焦点位置誤差信号が、ナイフエッジ法によって検出される光学系を有することを特徴とするので、本発明の効果をより発揮できる。
図15は、ナイフエッジ法(フーコー法と呼ばれる場合もある)の原理を説明するための図面である。図15において、光ディスク反射光は複合プリズムCPSに入射し、ここで2つの半円に分割され、領域a〜dからなる田の字状の光検出器PD上に受光されるようになっている。対物レンズがオンフォーカス位置にある場合は、2つの半円光は微小サイズとなり、双方の半円ともに上方の領域a、dと下方の領域b、cの境界線(横方向分割線)Eに乗る。又、対物レンズがオンフォーカス位置を過ぎると、2つの半円光は、境界線Eを境界としてb、d側に広がる半円となる。フォーカスエラー信号FESは、FES=(領域aの出力+領域cの出力)−(領域bの出力+領域dの出力)で求められ、オンフォーカス時にはFES=0となる。
図16,17は、複合プリズムCPSで分離される2つの半円の一方の形状を、焦点近傍のフォーカス状態で示したものであり、ここでは、中央のオンフォーカス位置のスポット形状に対して、両側にゆくほどフォーカス位置から遠ざかっていることを示している。なお、ナイフエッジ法では、複合プリズムの代わりにホログラムが用いられる場合がある。又、焦点検出のために用いられる分割光束は、2個に限られるものではない。
尚、本明細書中、「レンズ」とは、研磨ガラス、成形プラスチックレンズなどの表面が曲面状のレンズのみでなく、ホログラムや回折格子でできたレンズやGRINレンズ等も含む。これらレンズは、必ずしも結像性能を有さなくても良く、レンズが構成する光学素子に入射した光線の発散角を変更して出射するよう、入射光線を屈折させて出射する作用を有すれば足りる。
本明細書中において、対物レンズとは、狭義には光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有するレンズを指し、広義にはそのレンズと共に、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能な光学素子を指すものとする。
本発明によれば、適切な球面収差を行うことで、光情報記録媒体に対してより適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、光情報記録媒体(光ディスクともいう)に対して情報の記録/再生を行える光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。本実施の形態においては、異なる記録密度の光ディスクとして、BDとHD DVDとに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行えるようになっている。なお、本実施の形態においては、BDに対して球面収差を最適に抑えるように、対物レンズOBJを設計している。
図2において、BDに対して情報の記録及び/又は再生を行う場合、第1球面収差補正手段であるエキスパンダー光学系EXPの正レンズL2を実線で示す光軸方向位置に配置すると共に、液晶素子LCにおいて通過する光束に位相パターンを与えないよう制御する。まず、半導体レーザLDから出射された波長405nmの光束は、コリメータCUL、偏光ビームスプリッタPBSを通過し、負レンズL1と正レンズL2とからなるエキスパンダー光学系EXPを介して、光束の発散度を所定角度(ゼロを含む)にされ、第2球面収差補正手段である液晶素子LCを通過し、1/4波長板QWPを通過し、対物レンズOBJを介して、厚さ0.1mmの保護層PLを通過して、BDの情報記録面RLに集光される。
BDの情報記録面RLで情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJを通過し、更に1/4波長板QWP、液晶素子LC、エキスパンダー光学系EXPを通過し、偏光ビームスプリッタPBSで反射され、シリンドリカルレンズCYを通過し、光検出器PDの受光面で受光されるようになっている。光検出器PDは、非点収差法に基づいて集光スポットを検出するので、その出力信号を用いて、BDに情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化や光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて対物レンズOBJのフォーカシングアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータ(不図示)が半導体レーザLDからの光束をBDの情報記録面上に適切に結像するように、対物レンズOBJを移動させるようになっている。
次に、HD DVDに対して情報の記録及び/又は再生を行う場合、エキスパンダー光学系EXPの正レンズL2を点線で示す光軸方向位置に変位させると共に、液晶素子LCにおいて通過する光束に位相パターンを与えるよう制御する。半導体レーザLDから出射された波長405nmの光束は、コリメータCUL、偏光ビームスプリッタPBSを通過し、負レンズL1と正レンズL2とからなるエキスパンダー光学系EXPを介して、光束の発散度を所定角度から変更され、液晶素子LCを通過することで位相パターンが与えられ、更に1/4波長板QWPを通過し、対物レンズOBJを介して、厚さ0.6mmの保護層PLを通過して、HD DVDの情報記録面RLに集光される。
HD DVDの情報記録面RLで情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJを通過し、更に1/4波長板QWP、液晶素子LC、エキスパンダー光学系EXPを通過し、偏光ビームスプリッタPBSで反射され、シリンドリカルレンズCYを通過し、光検出器PDの受光面で受光されるようになっている。光検出器PDは、非点収差法に基づいて集光スポットを検出するので、その出力信号を用いて、HD DVDに情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化や光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて対物レンズOBJのフォーカシングアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータ(不図示)が半導体レーザLDからの光束をHD DVDの情報記録面上に適切に結像するように、対物レンズOBJを移動させるようになっている。
次に、エキスパンダー光学系EXPと液晶素子LCの機能について説明する。上述したように、対物レンズOBJは、BDの保護層PLの厚さに対して最適な球面収差を得られるような設計がなされているものとする。この場合、保護層の厚さが異なるHD DVDに対して、共通する対物レンズOBJを用いて集光スポットを形成した場合、3次の球面収差が大きくなって、光検出器PDの受光面上での、スポット形状が劣化する。そこで、エキスパンダー光学系EXPの正レンズL2を光軸方向に変位させて、3次の球面収差を補正するようにしている。ところが、3次の球面収差を補正しただけでは、光検出器PDの受光面のスポット形状は必ずしも適正なものとはならない。
図3〜5は、光検出器PDの受光面における集光スポット形状をシミュレーションしたものである。まず低次及び高次の球面収差が残存した状態では、図3に示すように、集光スポット形状は、所定の方向に引き延ばされたようなフレア光を有する形状となる。このフレア光が誤検出を招来する恐れがある。より具体的には、光検出器PDの受光面において、光ディスクからの反射光束が最小錯乱円状態のスポットを形成するように受光系(ここではシリンドリカルレンズCY)が調整される。しかし、高次球面収差が出射系(光源から光ディスクの情報記録面に至るまでの光学系)にある場合、光検出器PDの受光面上スポット周辺にフレア光がかかることになり(図3参照)、適切な最小錯乱円が得られない。この結果、光検出器PDが田の字の4分割受光素子からなる場合、それら受光素子から導かれるフォーカス誤差信号に対して外乱要因となるので、フォーカス誤差信号にオフセットが乗ったり、フォーカス感度が不適切になるなどの問題が生じる。
これに対し、エキスパンダー光学系EXPを用いて、主に3次の球面収差を補正すると、図4に示すごとき集光スポット形状となる。図4から明らかであるが、3次の球面収差を補正したのみでは、フレア光を完全に排除することはできない。これは、3次の球面収差が補正されても、5次以上の球面収差が残存しているからである。
これに対し、3次の球面収差に加えて、5次以上の球面収差を補正した場合、図5に示すように、光検出器PDの受光面上の集光スポットは円形に近づくこととなる。そこで、本実施の形態においては、液晶素子LCを用いて、主に5次以上の球面収差の補正を行うこととする。
本実施の形態で用いた非点収差法においては、特に出射系の5次以上の球面収差の影響を受ける傾向があり、これをできる限り排除することが、適切な情報の記録及び/又は再生を行う上で必要になる。5次以上の球面収差を低減することは、光ディスクの情報記録面での結像スポット品質を向上させるだけでなく、特に非点収差法ではフォーカスサーボ制御の安定化につながる。
ここで、球面収差の補正をどのようにして行うかについて、図面を参照して説明する。図6〜9は、光ディスク記録面に対する結像系において球面収差がある場合の対物レンズ瞳面の位相分布例をシミュレーションした図であり、3次球面収差の場合と5次以上の球面収差の場合とに分けて図示している。図で平面より下側は位相が進んだ部位であることを示し、平面より上側は位相が遅れた部位であることを示す。最も外側の円は、開口絞りを表す。
対物レンズの瞳面において光の位相差が生じると、それが球面収差となって現れる。例えば、図6に示す例では、比較的低い3次の球面収差のみが生じ、図7に示す例では、比較的高い3次の球面収差のみが生じている。一方、図8に示す例では、比較的低い5次の球面収差のみが生じ、図9に示す例では、比較的高い5次の球面収差のみが生じている。このように、球面収差は位相パターンと密接な関係がある。
本実施の形態においては、上述したように、エキスパンダー光学系EXPの正レンズL2を光軸方向に変位させて、対物レンズへの入射光束の発散度(収束度)を適宜調整することで、光ディスクの保護層の厚さ誤差によって発生する3次球面収差を補償する機能を持たせている。図6,7に示す3次の球面収差位相分布はほぼフラット(平面に一致)となる。ただし、正レンズL2の移動によっては、図8,9に示すごとき5次以上の球面収差には大きな変化を与えることができない。そこで、本実施の形態においては、5次以上の球面収差を補償するために、この位相分布をキャンセルするような逆位相パターンを、例えば液晶素子により与えるようにしている。以下、各次数における位相分布の例を示す。
図10は、3次の球面収差に関する、入射瞳面(x、y)における数値化された位相の分布を示す3次元図である。このような位相分布は、以下の式に基づき数値化することができる。
A=1−6(x2+y2)+6(x2+y22
図11は、5次の球面収差に関する、入射瞳面(x、y)における数値化された位相の分布を示す3次元図である。このような位相分布は、以下の式に基づき数値化することができる。
A=−1−12(x2+y2)−30(x2+y22+20(x2+y23
図12は、7次の球面収差に関する、入射瞳面(x、y)における数値化された位相の分布を示す3次元図である。このような位相分布は、以下の式に基づき数値化することができる。
A=1−20(x2+y2)+90(x2+y22−140(x2+y23 +70(x2+y24
図13は、縦軸に位相、横軸に光軸からの距離を取って示すグラフであり、3次球面収差を補正するための位相パターンと、5次球面収差を補正するための位相パターンが異なることを示している。
ここで、5次以上の球面収差を補正する場合、図11に示す位相と、図12に示す位相とを足し合わせた位相分布を形成し、かかる位相分布をキャンセルするために、逆の位相パターンを与えることができるよう液晶素子LCへの印加電圧を制御すればよい。
図14(a)は、液晶素子LCを光軸方向に見た図であり、光軸を中心として複数の輪帯状の領域(電極パターン)R1〜R4が形成されており、各領域R1〜R4を通過する光束に対して、外部からの電力供給によって任意の位相分布を与えることができるようになっている。図14(b)は、液晶素子LCを通過した光束に与えられる位相分布を示す図である。
以上より明らかである、本実施の形態においては、第1球面収差補正手段であるエキスパンダー光学系EXPにより、保護層の厚さの誤差に起因して生じる主に3次の球面収差が補正され、第2球面収差補正手段である液晶素子LCにより、所定の位相パターンを与えることで、光ピックアップ装置固有の5次以上の球面収差を補正できることができ、それにより保護層の厚さの異なる光ディスクのいずれに対しても適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
なお、例えば図10に示す位相分布と逆の位相パターンを与えることで、液晶素子LCにより3次の球面収差を補正することもできる。かかる場合、エキスパンダー光学系を設ける代わりに、光源と対物レンズとの間に2つの収差補正用液晶素子を設け、1つの液晶素子には主に3次の球面収差補正のための電極パターンを設け、別の液晶素子には主に5次以上の球面収差を補正するような電極パターンを設けることができる。或いは1つの液晶素子で、3次用と5次以上用の電極パターンを、入射面と出射面といったように別面に設けるようにして、低コスト化を図ってもよい。また、3次の球面収差或いは5次以上の球面収差による位相分布をキャンセルするような屈折率分布を持たせたノンパワーレンズや、非周期的位相構造を有す位相補償素子、図1に示す透明板など、液晶素子以外の素子によって、少なくとも一方の球面収差を補正するようにしてもよい。
本実施の形態の光ピックアップ装置においては、半導体レーザLDから出射される同一の波長の光束を用いて、保護層の厚さが異なる光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行うようにしているが、例えば半導体レーザLDの代わりに、異なる波長の光束を出射する複数の光源を備えた2レーザ1パッケージを用いて、同様に3次の球面収差と5次以上の球面収差とを補正して、保護層の厚さが異なる光ディスク(CD、DVD、BDもしくはHD DVDの少なくとも2種)に対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行うようにすることもできる。
表1に、各図に示す例における3次の球面収差(SA3)、5次の球面収差(SA5)、7次の球面収差(SA7)、9次以上の球面収差(SA9)をまとめて示す。
回折構造DOEを有する光学素子OEを示す図である。 本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。 光検出器PDの受光面における集光スポット形状をシミュレーションしたものである。 光検出器PDの受光面における集光スポット形状をシミュレーションしたものである。 光検出器PDの受光面における集光スポット形状をシミュレーションしたものである。 光ディスク記録面に対する結像系において球面収差がある場合の対物レンズ瞳面の位相分布例をシミュレーションした図である。 光ディスク記録面に対する結像系において球面収差がある場合の対物レンズ瞳面の位相分布例をシミュレーションした図である。 光ディスク記録面に対する結像系において球面収差がある場合の対物レンズ瞳面の位相分布例をシミュレーションした図である。 光ディスク記録面に対する結像系において球面収差がある場合の対物レンズ瞳面の位相分布例をシミュレーションした図である。 3次の球面収差に関する、入射瞳面(x、y)における数値化された位相の分布を示す3次元図である。 5次の球面収差に関する、入射瞳面(x、y)における数値化された位相の分布を示す3次元図である。 7次の球面収差に関する、入射瞳面(x、y)における数値化された位相の分布を示す3次元図である。 縦軸に位相、横軸に光軸からの距離を取って示すグラフである。 図14(a)は、液晶素子LCを光軸方向に見た図であり、図14(b)は、液晶素子LCを通過した光束に与えられる位相分布を示す図である。 ナイフエッジ法(フーコー法と呼ばれる場合もある)の原理を説明するための図面である。 複合プリズムCPSで分離される2つの半円の一方の形状を、焦点近傍のフォーカス状態で示したものである。 複合プリズムCPSで分離される2つの半円の一方の形状を、焦点近傍のフォーカス状態で示したものである。
符号の説明
CUL コリメータ
CY シリンドリカルレンズ
DOE 回折構造
EXP エキスパンダー光学系
L1 負レンズ
L2 正レンズ
LC 液晶素子
LD 半導体レーザ
OBJ 対物レンズ
OE 光学素子
PBS 偏光ビームスプリッタ
PD 光検出器
PL 保護層
QWP 1/4波長板
R1〜R4 領域
RL 情報記録面

Claims (11)

  1. 光源と、光源から出射した光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光するための対物レンズと、前記情報記録面で反射した光束を受光するための光検出器とを有し、前記光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
    前記光源と前記対物レンズとの間に、主に3次の球面収差を補正するための第1球面収差補正手段と、主に5次以上の球面収差を補正するための第2球面収差補正手段とが設けられていることを特徴とする光ピックアップ装置。
  2. 前記第2球面収差補正手段は、透過する光束波面の位相分布が印加電圧によって制御される液晶素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
  3. 前記第2球面収差補正手段は、所定の厚さ分布を有し、入射面と出射面が平行でかつ平面状の透明部材を、光軸に対して垂直面内に配置してなる光学素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
  4. 前記第1球面収差補正手段は、透過する光束波面の位相分布が印加電圧によって制御される液晶素子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  5. 前記第1球面収差補正手段は、透過光束の発散度を変化させる作用を有する光学素子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  6. 前記光学素子を少なくとも光軸方向に移動させることで、透過光束の発散度を変化させることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
  7. 前記第1球面収差補正手段は、所定の厚さ分布を有し、入射面と出射面が平行でかつ平面状の透明部材を、光軸に対して垂直面内に配置してなる光学素子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  8. 異なる波長の光束を出射する光源を有し、前記光源から出射された波長の異なる光束を用いて、記録密度が異なる光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、少なくとも一つの波長の光束に関して、前記第1球面収差補正手段と前記第2球面収差補正手段とにより球面収差が補正されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  9. 前記光源から出射された波長の等しい光束を用いて、保護層の厚さが異なる光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、少なくとも一つの光情報記録媒体の情報記録面に対して情報の記録及び/又は再生を行う際に、前記第1球面収差補正手段と前記第2球面収差補正手段とにより球面収差が補正されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  10. 前記光情報記録媒体の情報記録面に対する対物レンズの焦点位置誤差信号が、非点収差法によって検出される光学系を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  11. 前記光情報記録媒体の情報記録面に対する対物レンズの焦点位置誤差信号が、ナイフエッジ法によって検出される光学系を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光ピックアップ装置。

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