JP2006307534A - コンクリート構造物の止水工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 コンクリートに発生した空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法であって、全ての形態の欠陥空隙に適応可能な止水工法を提供すること。
【解決手段】 コンクリート壁面に生じた表面空隙101又は近傍位置に垂直方向の注入穴10をあけ、注入穴10は開口部に止水材を供給する注入具11を装着して注入具11と注入穴10の底部との間に加圧域12を形成する。注入具11から止水材を加圧域12に供給して加圧域12内で止水材の注入圧力を高め、鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力が働くことで加圧域12と内部空隙102との間に新たなひび割れ103を発生させて加圧域12と内部空隙102を接続する。加圧域12の止水材を新たなひび割れ103を介して内部空隙102に注入し、止水材がコンクリート壁面から流出するまで注入作業を行って空隙に溜っていた水を排出して欠陥空隙内に止水材を充填する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、コンクリート構造物の止水工法に関するものであり、主として、コンクリート構造物が地下に建造されているものにおける止水工法に関している。
コンクリート地下構造物における水漏れの原因は、ひび割れ、打継ぎ部、セパレータ周り等に発生する欠陥空隙が水道(みずみち)となって地下水が室内側に漏出する場合である。図6は欠陥空隙の発生原因を示しており、図6Aはコンクリートのひび割れ、図6B(イ)はコンクリートの水平打継ぎ部、図6B(ロ)はセパレータ周りである。
本明細書において、「欠陥空隙」とは、ひび割れ、打継ぎ、セパレータ周り等が原因で連続して発生した空隙をいい、このうち、欠陥空隙がコンクリート壁の表面に現れている部分を「表面空隙」といい、コンクリート内部のものを「内部空隙」という。
また、本明細書において、「加圧域」とは、注入具と注入穴の底部との間に形成された空間のことであり、注入具から供給された止水材が徐々に加圧されてコンクリートや鉄筋の拘束限界を超える拡張力を発生させる空間である。なお、「拡張力」は、加圧域の表面積に止水材の供給圧力を乗じて得られるものである。
従来から、コンクリート構造物の水漏れを解消するための止水方法は知られており、代表的なものとして、本願発明者らが提案した特許文献1に記載の方法がある。
特開2000−1998号公報
特許文献1に記載の止水方法(以下、「先願方法」という。)は、コンクリートの打継ぎ部分又はひび割れによって発生した空隙部に充填材(止水材)を注入して水漏れを解消するものであって、充填材を注入するための注入穴をコンクリート壁面の内側から斜状に穿孔して空隙部を貫通し、かつ、空隙部に開口する開口位置がコンクリート厚みの中心位置となるようにしたものであって、注入穴の開口部に充填材の注入具を装着して当該注入穴の底部と注入具との間に加圧域を形成し、注入具から加圧域に対し充填材を注入し、充填材がコンクリート壁面の内側に流出するまで注入作業を行うことにより、空隙部に溜っていた水を排出するとともに当該空隙部を充填材によって置換することを特徴とするものである。
先願方法は、充填材を注入するための注入穴をコンクリート厚みの中心部を通って斜状に開けたことと、注入穴の開口に注入具を装着したとき注入穴の底部と注入具との間に加圧域を形成したことを特徴としており、注入具から供給した充填材が加圧域を経てひび割れ部又は打継ぎ部に注入され、充填材がコンクリート壁面の内側に流出した時に充填材が空隙部内に注入されたことを確認できるものである。
注入穴の穴あけ作業には電動ハンマードリルが使用されており、小径の長い穴を簡便に形成できる利点があるので多用されている工具であり、能率、経済性などあらゆる面で優れているので、これを使用しないと穴あけ注入は成立しないといっても過言ではない。しかし、電動ハンマードリルで穴あけをすると、穴あけ作業で発生したコンクリート粉(切粉)が空隙部を塞いで目詰まりを発生させ、充填材を空隙部内へ注入できない場合が生じることがある。電動ハンマードリルは、回転運動と打撃運動を同時に行って穴あけをする工具であるから、打撃運動を行う時にコンクリート粉を突き固めてしまうものである。したがって、高効率な注入作業をするためには、穴あけ時に発生する目詰まり障害を克服した注入工法の確立が必要となる。
穴あけ作業をした時、内部空隙のひび割れ幅が1.0mm以上の場合は、発生したコンクリート粉が空隙内にすり抜けて落下するので目詰まりは生じないが、ひび割れ幅が0.5mm以下では目詰まりを起す。また、ひび割れ幅が0.5〜1.0mmの場合、幅が広い部分では注入圧力でコンクリート粉を押出して注入可能であるが、幅が狭い部分はコンクリート粉が強固に突き固められていて注入は難しい。そして、ひび割れ幅が0.5mm未満になると殆ど注入はできない状態になり、特にひび割れ幅が0.3mm以下では全く注入不可となるが、水漏れ補修工事を行う対象物件の90パーセント以上は、ひび割れ幅が0.5mm未満であり、このことが水漏れ補修工事を困難なものにしている。
電動ハンマードリルを使用して穴あけをした場合、穴の内部に圧力空気を送って穴内に残ったコンクリート粉の除去清掃を行っているが、空隙部が穴あけ作業で発生したコンクリート粉によって目詰まりしていると、圧力空気を送った程度で目詰まりは解消されないままである。したがって、空隙部が目詰まりをしていたのでは、止水材が空隙内部に注入できないので止水工事は中止せざるを得ないことになる。
先願方法が注入穴を空隙部の中心を貫通して設けている理由は、充填材を空隙部の中心位置に供給すれば、充填材が空隙部の中心部分からコンクリート壁の両側に向って注入されるから、壁の内側部分から充填材が流出したことが確認できた時点で、充填材はコンクリート構造物の反対側にまで達したと推測できるからであった(特許文献1の図2及び関連説明)。
図7に示すコンクリート地下構造物aにおいて、例えば、コンクリート壁厚が0.5mを越えている場合は、空隙部bの全区域に充填材cが注入されていなくても、壁厚の半分程度の区域に注入されれば、空隙部bに侵入した地下水が室内側に漏出することがなく、止水効果が十分発揮されることが判明した。
また、図8に示す先願方法は、空隙部bに対し斜状の注入穴dをあけけた時に、空隙部bの線方向と注入穴dの間に形成された三角形状部e(網目のハッチングを入れた箇所)に充填材の押入力が作用して、注入作業中に当該三角形状部eが欠け落ちるといった新たな問題も生じている。
また、止水目的で使用される通常の止水材は強度が比較的低いものであるから、高強度樹脂を使用した場合は別として、通常の止水材を使用した補修工事においては、コンクリート内に新たな欠陥部分を放置したとも言えるものであり、当該注入穴が新たなひび割れの原因となることがある。
本発明の課題は、コンクリートのひび割れ、打継ぎ部、セパレータ周り等が原因で発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法を提供することである。
解決手段の第1は、コンクリートのひび割れが原因で発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法であって、コンクリート壁面の表面に現れた表面空隙に対して垂直又は垂直に近い角度の注入穴をあけ、穴あけ作業によって内部空隙に目詰まりを発生させ、上記注入穴の開口部に止水材を供給する注入具を装着して該注入具と当該注入穴の底部との間に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域を形成し、該加圧域に上記注入具から供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、該拡張力によって上記加圧域が拡張して上記内部空隙の目詰まりが解消されて止水材が当該内部空隙に注入され、止水材がコンクリート壁面から流出するまで注入作業を行って上記欠陥空隙内に浸入水を遮断する止水層を形成することを特徴とするものである。
解決手段の第2は、コンクリートのひび割れ、打継ぎ又はセパレータ周り等が原因で発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法であって、コンクリート壁面の表面に現れた表面空隙に対して垂直又は垂直に近い角度の注入穴をあけ、該注入穴の開口部に止水材を供給する注入具を装着して該注入具と当該注入穴の底部との間に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域を形成し、該加圧域に上記注入具から供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、上記注入穴の奥部が内部空隙から離れた位置に形成されている時は、該拡張力によって上記加圧域と上記内部空隙との間に新たなひび割れを発生させて当該加圧域と上記内部空隙を接続し、上記加圧域の止水材を上記新たなひび割れを介して当該内部空隙に注入し、止水材がコンクリート壁面から流出するまで注入作業を行って上記欠陥空隙内に浸入水を遮断する止水層を形成することを特徴とするものである。
解決手段の第3は、コンクリートのひび割れ、打継ぎ又はセパレータ周り等が原因で発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法であって、コンクリート壁面の表面に現れた表面空隙の近傍位置に垂直又は垂直に近い角度の注入穴をあけ、該注入穴の開口部に止水材を供給する注入具を装着して該注入具と当該注入穴の底部との間に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域を形成し、該加圧域に上記注入具から供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、該拡張力よって上記加圧域と上記内部空隙との間に新たなひび割れを発生させて該加圧域と上記内部空隙が接続し、当該加圧域内の止水材を上記新たなひび割れを介して上記内部空隙に注入し、止水材がコンクリート壁面から流出するまで注入作業を行って上記欠陥空隙内に浸入水を遮断する止水層を形成することを特徴とするものである。
解決手段の第4は、解決手段の第1から第3のいずれかにおいて、コンクリートに発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工事において、止水材の注入作業が終了した後に、注入穴に高強度エポキシ樹脂又は高強度マイクロセメントペーストを充填することを特徴とするものである。
請求項1は、注入穴をコンクリート壁面に対し垂直又は垂直に近い角度にあけるものであるから、作業性が良くなっている。また、注入穴を垂直又は垂直に近い角度にあけているので、止水材の拡張力によって欠け落ちる部分が生じないものとなる。さらに、加圧域とひび割れが一体化しているので、加圧域を止水材の注入圧力によって生ずる加圧域の拡張作用によってひび割れも同時に拡がり、止水材が内部空隙に注入される。なお、注入穴の穴あけ作業時に内部空隙に一旦目詰まりを起させ、加圧域内で高められた拡張力によって目詰まり部分を拡張して止水材を注入するものであるから、ひび割れ幅が0.1mm以下の狭い場合であっても止水材を確実に注入することができる。
請求項2は、注入穴の奥部が内部空隙から離れた位置に形成された場合、加圧域内で止水材の押入力を高めて該加圧域と内部空隙との間に新たなひび割れを発生させて両者を接続し、加圧域内の止水材を新たなひび割れを介して内部空隙に注入するものであるから、コンクリート壁面に生じた表面空隙から内部空隙の形状が予測できない場合であっても当該内部空隙に止水材を確実に注入できる効果がある。
請求項3は、注入穴をコンクリート壁面の表面に現れた表面空隙の近傍位置にあけるので、表面空隙から内部空隙の形状が予測できない場合は勿論、内部空隙がセパレータ周り等に発生した場合であっても注入穴を確実にあけることができ、加圧域内で止水材の拡張力を高めて該加圧域と内部空隙との間にひび割れを発生させて両者を接続し、加圧域内で拡張力が高められた止水材をひび割れを介して内部空隙に注入するものであるから、あらゆる形態の空隙に対し確実に止水材を注入することができる効果がある。
請求項4は、止水材の注入後に高強度エポキシ樹脂又は高強度マイクロセメントペーストを充填することで、止水材の注入穴が新たなひび割れの発生原因となることを防止できるものである。
図1はひび割れに本発明を実施した図であって注入穴を表面空隙に直接あけた場合を示す断面図、図2はひび割れに本発明を実施した図であって表面空隙に直接あけた注入穴の奥部が内部空隙から離れた位置に形成された場合を示す断面図、図3はひび割れに本発明を実施した図であって注入穴を表面空隙の近傍位置にあけた場合を示す断面図、図4は打継ぎ部に本発明を実施した断面図、図5はセパレータ周りに本発明を実施した断面図、図6は欠陥空隙の原因を示しており、Aはひび割れ、B(イ)は水平打継ぎ部、B(ロ)はセパレータ周りを示す各断面図、図7はコンクリートの欠陥空隙に注入された止水材の分布状況を示す模式図、図8は先願発明による施工方法を示す断面図である。
図6を参照して欠陥空隙の発生原因を説明する。図6Aはコンクリートのひび割れを示しており、欠陥空隙100は、コンクリート構造物1に生じた亀裂である。また、図6B(イ)はコンクリートの打継ぎ部を示しており、欠陥空隙200は、既設のコンクリート2が硬化した後に新たなコンクリート3を打設した時の継ぎ目4に発生するものである。打継ぎ部の中には継ぎ目4に止水板5を埋め込んだものがあるが、該欠陥空隙200は、前記止水板5の周面にも形成されることがあり、この場合、地下水は継ぎ目4と当該止水板5の周面を通って室内に漏水することがある。
図6B(ロ)はコンクリートのセパレータ周りを示しており、欠陥空隙300は、セパレータ6の全域に発生するものであり微小なものである。セパレータは型枠の組立てに際し所定の幅を確保するために施工する鋼棒部材のことであるが、セパレータ周りに発生する欠陥空隙300は、コンクリート硬化の養生期間が不足しているのに型枠を外したためにセパレータ6が動いたことが原因とされている。また、欠陥空隙300は、コンクリートの沈下、ブリージング、浮上気泡により棒鋼の下部に空隙が生成されることがある。この他、セパレータ周りと同様にコンクリート壁を貫通して設置される配管又は配電管も欠陥空隙が発生する原因となる。
次に、図1ないし図3を参照して、ひび割れによる欠陥空隙100に本発明工法を施工する手順を説明する。図1は、コンクリート構造物1の壁面に現れた表面空隙101に対し垂直又は垂直に近い角度の注入穴10をあけた時に、注入穴10の奥部と内部空隙102が一致している場合を示し、図2は、表面空隙101に対し垂直又は垂直に近い角度の注入穴10をあけたが、注入穴10の奥部と内部空隙102が一致していない場合を示し、図3は、表面空隙101の近傍に垂直又は垂直に近い角度の注入穴10をあけた場合を示している。いずれの場合も、注入穴10の開口部に止水材を注入するための注入具11を装着して該注入具11と当該注入穴10の底部との間に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域12を形成したものである。
図1は、注入穴10を表面空隙101から垂直又は垂直に近い角度に穿孔した時、注入穴10の奥部が内部空隙102と一致している場合であり、穴あけ作業によって、注入穴10と内部空隙102との間を目詰まりさせる。すなわち、穴あけ作業は、電動ハンマードリルよって行われるから、穴あけ作業によって注入穴10と内部空隙102との間に目詰まりが発生する。次いで、加圧域12の開口部に装着した注入具11から止水材を該加圧域10に供給し、供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させる。加圧域12は拡張して目詰まりを解消すると、目詰まりが解消して形成された隙間から止水材が内部空隙102に注入される。止水材が表面空隙101から流出したら、止水材は内部空隙102内に充填されたと推定される。
図2は、注入穴10を表面空隙101から穿孔したが、内部空隙102が注入穴10から外れた位置に発生している場合であり、この場合も、加圧域12は拡張現象を起すに十分な長さを形成する。該加圧域12に供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、加圧域12が拡張すると、加圧域12と内部空隙102との間に新たなひび割れ103が発生して当該加圧域12と内部空隙102が連通し、止水材は新たなひび割れ103を介して内部空隙102に注入される。止水材が表面空隙101から流出した時に止水材が内部空隙102内に充填されたと推定されることは前述したとおりである。
図3は、注入穴10を表面空隙101の近傍に穿孔した場合であり、この場合も、加圧域12は拡張現象を起すに十分な長さに形成しているから、該加圧域12に供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、加圧域12が拡張すると、加圧域12と内部空隙102との間に新たなひび割れ103を発生して当該加圧域12と内部空隙102が連通し、止水材が新たなひび割れ103を介して内部空隙102に注入される。ここでも、止水材が表面空隙101から流出してきた時に止水材が内部空隙102内に充填されたと推定される。
図2,図3において、止水材の注入圧力で加圧域12を拡張して加圧域12と内部空隙102との間に新たなひび割れ103を発生させて止水材の注入経路を確保しているが、この現象は、加圧域12に鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力が加わると、加圧域12と内部空隙102との間で、コンクリート躯体の比較的弱い箇所を探して新たなひび割れを発生させることである。ただし、拡張された加圧域並びに欠陥空隙は、止水材の加圧を解除すると元の幅に戻ろうとする。これは鉄筋、特に横筋による拘束力が働くからであり、RC構造物の特有な現象であって、無筋コンクリート又は岩石にはみられないものである。
図4は、コンクリートの打継ぎ部に発生した欠陥空隙200に本発明工法を施工する場合であり、打ち継ぎラインの近傍に注入穴10を当該壁面に対して垂直又は垂直に近い角度であけ、該注入穴10の奥部に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域12を形成する。加圧域12に止水材が供給されて加圧されると、止水材の注入圧力が高まって鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力が発生し、該加圧域12と内部空隙202との間に新たなひび割れ203が発生して当該加圧域12と内部空隙202が連通するので、止水材は新たなひび割れ203を介して内部空隙202に注入される。
図5は、コンクリートのセパレータ周りに沿って発生した欠陥空隙300に本発明を施工する場合であり、セパレータの近傍に注入穴10を垂直又は垂直に近い角度にあけ、該注入穴10の奥部に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域12を形成する。加圧域12に供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力が発生すると、加圧域12が拡張して内部空隙302と当該加圧域12との間に新たなひび割れ303が発生し、止水材が新たなひび割れ303を介して内部空隙302に注入される。
以上説明したように、本発明は、加圧域に発生する拡張力を利用して止水材を内部空隙に注入している。すなわち、請求項2,3においては、内部空隙の近傍に新たなひび割れを発生させるため、圧力が掛けられると拡張変形する加圧域(密閉空間)を鉄筋籠内に配置し、加圧域内において止水材の圧力を徐々に高めて拡張力を発生させている。そして、拡張力が鉄筋コンクリートの拘束力を超えると、拡張力は、請求項1においては目詰まりを拡げ、請求項2,3においては別な欠陥空隙を探して新たなひび割れを発生させ、いずれの場合も止水材を内部空隙に注入する。なお、拡張作用は、左右方向にのみ発生し上下方向には起こらない。また、拡張力の強弱は、加圧域の長さを調整することによって簡単になし得る。コンクリートの壁厚が薄い場合は、加圧域の長さに制約を受けるが、壁厚が350mm以上であれば、加圧域の長さは余裕を持って確保できるので、拡張作用を通常の注入圧力で起すことができ、あらゆる形態の欠陥空隙に注入することができる。
発明者が行った注入実験
鉄筋コンクリート壁厚W:200mm
鉄筋コンクリートの設計圧縮強度21N/mm3
鉄筋サイズD10(配筋@150mmダブル)
注入穴の穴径R:13mm
加圧域の長さL:80mm
注入圧力P:31.5Mpa
実験は、3箇所で行い注入開始時の圧力を測定した。データは、30Mpa,32Mpa,32.5Mpaであったので、平均をとって上記の数値とした。また、加圧域に発生する拡張力Fは、加圧域の表面積(cm2)に止水材の供給圧力(kg/cm2 )を乗じた数値となるから、「F=R×π×L×P」である。ここで、上記数値を数式に代入すると、「F=1.3×3.14×8×31.5×10.2」であり、得られた拡張力は「10492.4kg」であった。なお、止水材の供給圧力の単位がMpaなので、kg換算するために定数「10.2」を乗じている。
実験で得られた拡張力は「10492.4kg」であったが、実験を繰返した結果、配筋量の多い部位や高強度コンクリートを除いた一般部位においては、必要な拡張力が「10〜15トン」程度であれば、鉄筋コンクリートの拘束限界を超える力となり、加圧域を拡張して内部空隙の目詰まり層を解消して止水材を注入し、または、加圧域から新たなひび割れを誘発させて内部空隙と接続して止水材を注入し得ることが確認できた。
以上のことから、止水材を注入して加圧域を拡張する拡張力は、加圧域が長いほど高くすることができる。したがって、コンクリートの壁厚が厚い条件であれば、加圧域の設置位置に余裕ができ、注入圧力と加圧域長さがバランスした高品質の注入作業ができることになる。
実施形態において、コンクリート地下構造物は、地下水が内部空隙を通って表面空隙に漏れ出ており、その水は圧力を含んでいるので内部空隙の大半は水で満たされている。このため、内部空隙に注入する止水材は、水と急速に反応硬化して水圧に抗する硬化物性を備えていなければならない。なぜなら、止水材が急速反応硬化型であれば、内部空隙に止水遮断層を形成して地下水の漏出を防ぐことができるからである。コンクリート地下構造物の反対側は土中なので一切の作業ができないから、注入された止水材が急速に硬化しないと、仮に内部空隙に止水材が注入されたとしても、急速な硬化反応が生じなければ地下水(圧力水)によって新たな水道が作られてしまい止水遮断層が形成できない。
実施形態において、止水材は、一例として疎水系1液性加水ウレタンを使用した。
実施形態では、コンクリート構造物の欠陥空隙が、ひび割れ、打継ぎ、セパレータ周りが原因で発生する場合を説明した。しかし、欠陥空隙は他の原因でも起り得る。それは、コンクリート打設時の振動不足、モルタルペーストの漏れ、スランプ低下、豆板やコールドジョイント、ブリージングによる鉄筋下端の隙間によっても発生するが、本発明は、いずれの形態の欠陥空隙に対しても適応可能なものであり、あらゆるコンクリート構造物の水漏れを解消することができるものである。
また、本発明工法により止水工事を行う時、加圧域を含む注入穴に高強度樹脂を使用する場合は別として、止水目的で使用される通常の止水材は強度が低いので、コンクリート内に形成された注入穴が新たな欠陥空隙の原因となることがある。これを防ぐためには、注入穴に供給した止水材が内部空隙に注入された後、該注入穴に高強度エポキシ樹脂又は高強度マイクロセメントペーストを充填することが好ましい。
ひび割れに本発明を実施した図であり、注入穴を表面空隙に直接あけた場合を示す断面図。 ひび割れに本発明を実施した図であり、表面空隙に直接あけた注入穴の奥部が内部空隙から離れた位置に形成された場合を示す断面図。 ひび割れに本発明を実施した図であり、注入穴を表面空隙の近傍位置にあけた場合を示す断面図。 打継ぎ部に本発明を実施した断面図。 セパレータ周りに本発明を実施した断面図。 欠陥空隙の形態を示しており、Aはひび割れ、B(イ)は水平打継ぎ部、B(ロ)はセパレータ周りを示す各断面図。 コンクリートの欠陥空隙に注入された止水材の分布状況を示す模式図。 先願発明による施工方法を示す断面図。
符号の説明
1 コンクリート構造物
2 既設のコンクリート
3 新たなコンクリート
4 継ぎ目
5 止水板
6 セパレータ
10 注入穴
11 注入具
12 加圧域
100,200,300 欠陥空隙
101,201,301 表面空隙
102,202,302 内部空隙
103,203,303 新たなひび割れ

Claims (4)

  1. コンクリートのひび割れが原因で発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法であって、コンクリート壁面の表面に現れた表面空隙に対して垂直又は垂直に近い角度の注入穴をあけ、穴あけ作業によって内部空隙に目詰まりを発生させ、上記注入穴の開口部に止水材を供給する注入具を装着して該注入具と当該注入穴の底部との間に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域を形成し、該加圧域に上記注入具から供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、該拡張力によって上記加圧域が拡張して上記内部空隙の目詰まりが解消されて止水材が当該内部空隙に注入され、止水材がコンクリート壁面から流出するまで注入作業を行って上記欠陥空隙内に浸入水を遮断する止水層を形成することを特徴とするコンクリート構造物の止水工法。
  2. コンクリートのひび割れ、打継ぎ又はセパレータ周り等が原因で発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法であって、コンクリート壁面の表面に現れた表面空隙に対して垂直又は垂直に近い角度の注入穴をあけ、該注入穴の開口部に止水材を供給する注入具を装着して該注入具と当該注入穴の底部との間に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域を形成し、該加圧域に上記注入具から供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、上記注入穴の奥部が内部空隙から離れた位置に形成されている時は、該拡張力によって上記加圧域と上記内部空隙との間に新たなひび割れを発生させて当該加圧域と上記内部空隙を接続し、上記加圧域の止水材を上記新たなひび割れを介して当該内部空隙に注入し、止水材がコンクリート壁面から流出するまで注入作業を行って上記欠陥空隙内に浸入水を遮断する止水層を形成することを特徴とするコンクリート構造物の止水工法。
  3. コンクリートのひび割れ、打継ぎ又はセパレータ周り等が原因で発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工法であって、コンクリート壁面の表面に現れた表面空隙の近傍位置に垂直又は垂直に近い角度の注入穴をあけ、該注入穴の開口部に止水材を供給する注入具を装着して該注入具と当該注入穴の底部との間に拡張現象を起すに十分な長さを有する加圧域を形成し、該加圧域に上記注入具から供給された止水材の注入圧力を高めて鉄筋コンクリートの拘束限界を超える拡張力を発生させ、該拡張力よって上記加圧域と上記内部空隙との間に新たなひび割れを発生させて該加圧域と上記内部空隙が接続し、当該加圧域内の止水材を上記新たなひび割れを介して上記内部空隙に注入し、止水材がコンクリート壁面から流出するまで注入作業を行って上記欠陥空隙内に浸入水を遮断する止水層を形成することを特徴とするコンクリート構造物の止水工法。
  4. コンクリートに発生した欠陥空隙に止水材を注入して水漏れを解消する止水工事において、止水材の注入作業が終了した後に、注入穴に高強度エポキシ樹脂又は高強度マイクロセメントペーストを充填することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコンクリート構造物の止水工法。
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