JP2006307301A - 酸化膜の形成方法及び酸化膜を有する人工歯根材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 金属部材の表面に、タングステン、タングステンカーバイド、シリコンカーバイド及びチタンカーバイドから成る群から選択される金属及び/又は金属カーバイドを含む過酸化水素溶液を接触させ、前記金属部材表面を対応する金属酸化物に変換し酸化膜33を形成する。本酸化膜形成方法によると、従来の酸化膜形成方法より短時間で同じ厚さの酸化膜を形成でき、この酸化膜を形成した人工歯根材ボディ1及びヘッド8では、ネジの緩みと腐食電流の発生を防止できる。
【選択図】 図1
Description
生体インプラントは生体内で劣化や破壊などの変化を生じ易くまた異物反応などを伴うことから生体に対して無害かつ親和性があり、化学的に安定で、かつ機械的強度の大きい材料が要求される。従って通常生体インプラントは、機械的性質に優れた金属基材の表面に、生体親和性に優れたリン酸カルシウム材料をコーティングして製造される。
図示の例では、人工歯根材である生体インプラント材のボディ1は下部の骨内埋込部2と上部のカラー部3から成り、両者は一体成型されている。骨内埋込部2の下半分の周囲には凹状の切り欠き4が形成されるとともに、下端を除く骨内埋込部2の全周の前記切り欠き4以外の部分にはネジ山5が形成され、このネジ山5を骨などに挿入することにより、ボディ1を骨に固定している。
ヘッド8は、断面が下向き台形状で下端面から下向きに雄ネジ9が刻設された下部ヘッド10と、この下部ヘッド10の上に一体成形された断面が上向き台形状の上部ヘッド11とから成っている。このヘッド8は、前記雄ネジ9を前記雌ネジ7に螺合させることにより、前記ボディ1に固定され、更に前記上部ヘッド11の周面及び上面に接着剤を使用して単冠12が固定される。
ヘッド8の雄ネジ9と螺合された状態で顎骨等に装着され、長年使用される。
しかし永年使用によりネジに緩みが生じると、単冠の固定が不安定になり、応力が生じて各部材の破損が生じるおそれがある。
更に前記雌ネジ7と雄ネジ9の材料が異なった金属であると、界面にガルバニック電流が発生し、当該電流による腐食作用が前記雌ネジ7と雄ネジ9に及び、ネジに緩みが生じるのと同じ状況が発生する。
この方法でも酸化膜は形成されるが、形成速度が満足できるレベルに達していないため、膜形成に時間が掛かり過ぎたり、厚さの不十分な膜しか形成できないといった問題点があった。
本発明の酸化膜の形成方法では、金属部材をタングステン、タングステンカーバイド、シリコンカーバイド及びチタンカーバイド等から選択される金属及び/又は金属カーバイドを含む過酸化水素溶液に接触させることにより、前記金属部材の表面を酸化して酸化膜を生成させる。
タングステン等を含む過酸化水素水を使用すると、過酸化水素水単独、又は過酸化水素水と可視光の併用と比較して、酸化膜形成が促進され、短時間で酸化膜を形成できる。
その理由は、タングステン、タングステンカーバイド、シリコンカーバイドあるいはチタンカーバイド等が、過酸化水素を活性化してヒドロキシラジカルを発生させ、このラジカルが過酸化水素の有する酸化力を更に向上させる能力を有するからであると推測できる。
なお従来の人工歯根材ではチタンとして純チタン2種が使用されてきたが、噛み合わせ等の応力により折損が生じる場合がある。純チタン4種は純チタン2種より強度が強く、特に人工歯根材を含めた生体インプラント材の材料として好ましく使用できる。
この過酸化水素水に添付する金属等には、タングステン、タングステンカーバイド、シリコンカーバイド及びチタンカーバイド等が含まれ、これらの金属及び/又は金属カーバイドの粉末を前記過酸化水素水中で攪拌して懸濁させた後に、使用することが好ましい。前記粉末の粒径は望ましくは1〜200μm、より望ましくは5〜100μm、更に望ましくは10〜50μmであるが、これらに限定されない。
接触時間は長くするほど、厚い酸化膜が得られるが、60分程度の接触で満足できる厚さ(通常は0.05〜2μm、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.3〜0.5μmであるがこれらに限定されない)の酸化膜が得られる。
人工歯根材に限らず、各種ネジでは、雄ネジと雌ネジは加工精度にも依るが、当初から相互間に僅かな間隙が生じていることが多い。特に人工歯根材の場合には永年使用によりボディとヘッドの間に緩みが生じて単冠がぐらついて適正な噛み合わせを保持できなることが多い。
本発明のように、ボディ及びヘッドの少なくとも一方のネジに酸化膜を形成しておくと、当初の螺合時に両ネジ間に酸化膜が存在するため、大きな抵抗が生じるが、一旦両者が互いに嵌合してしまえば、実質的に間隙を生じさせることなく、ボディとヘッドが一体化される。従って永年使用しても緩みが生じることが殆ど無く、長期間に亘って単冠が安定な状態に保持される。
しかし本発明では前記間隙を酸化膜により閉塞してあるため、細菌の進入を防止でき、細菌の繁殖も生じない。
人工歯根材の単冠との接合部分、つまり前記ヘッドに酸化膜を形成することは特許文献1等から公知であるが、本発明方法により、タングステン、タングステンカーバイド、シリコンカーバイド及びチタンカーバイド等から選択される金属及び/又は金属カーバイドを含む過酸化水素溶液を前記ヘッドに接触させることにより、短時間で所望厚さの酸化膜を形成できる。
人工歯根材のボディは、通常、骨に埋め込まれる骨内埋込部とヘッドを介して単冠が固定されるカラー部からなり、骨内埋込部が埋め込まれて骨に接触する。この骨内埋込部の表面に酸化膜が形成されていると、人工歯根材と骨の接合あるいは骨の生育が促進される。従って骨内埋込部の少なくとも一部に酸化膜を形成した人工歯根材は、骨に対する親和性が高くなる。
このように本発明の人工歯根材は、ネジにより互いに螺合した人工歯根材のボディ及びヘッドの少なくとも一方のネジに酸化膜を形成しものと、骨内埋込部の周面の少なくとも一部に酸化膜を形成したものである。
しかし本発明方法自体は人工歯根材の上記部位への酸化膜形成に限定されるものではなく、人工歯根材の他の部位、他の生体インプラント材や金属製品への酸化膜形成に使用できる。
更に前述した金属及び/又は金属カーバイドを含む過酸化水素溶液は、人間を含めた生体内の歯や入れ歯のホワイトニングにも使用できる。
ボディ及び前記ヘッドをネジにより互いに螺合した人工歯根材の前記ボディ及びヘッドの少なくとも一方のネジに酸化膜を形成すると、ネジの緩みと腐食電流の発生を防止でき、更に骨内埋込部の少なくとも一部に酸化膜を形成しておくと、骨との接合が促進される。
図示の例では、人工歯根材である生体インプラント材のボディ21は下部の骨内埋込部22と上部のカラー部23から成り、両者は一体成型されている。骨内埋込部22の下半分の周囲には凹状の切り欠き24が形成されるとともに、下端を除く骨内埋込部22の全周の前記切り欠き24以外の部分にはネジ山25が形成され、このネジ山25を骨などに挿入することにより、ボディ21を骨に固定している。
ヘッド28は、断面が下向き台形状で下端面から下向きに雄ネジ29が刻設された下部ヘッド30と、この下部ヘッド30の上に一体成形された断面が上向き台形状の上部ヘッド31とから成っている。このヘッド28は、前記雄ネジ29を前記雌ネジ27に螺合させることにより、前記ボディ21に固定され、更に前記上部ヘッド31の周面及び上面に接着剤を使用して単冠32が固定される。
図示のヘッド28をその酸化膜33が形成された雄ネジ29を、同じく酸化膜33が形成されたボディ21の雌ネジ27に螺合させて一体化すると、両ネジ27、29に形成された酸化膜33が互いに擦れ合って一部が粉末状に剥離し、この粉末が両ネジ27、29間に生じる間隙を閉塞する。従って長期間ネジの緩みを生じさせることなく使用できる。
前記一体化されたボディ21とヘッド28は上部ヘッド31の外周面を単冠32の内面に接着剤を使用して接着することにより、前記単冠32を固定するが、上部ヘッド31の外周面に存在する酸化膜33により強固な結合が形成できる。
更に図示の例では、骨内埋込部22の周囲にも酸化膜23が形成されており、この酸化膜23は骨内埋込部22の顎骨等との接合の促進に寄与する。
市販の34%過酸化水素水(関東化学株式会社製)30mLに、市販の粒径が10〜50μmのタングステンカーバイド粒子(大同特殊鋼株式会社製)3gを攪拌懸濁させた。
図1と同じ構造の株式会社ヨシオカ製の人工歯根材(純チタン4種製)の中空部に前記過酸化水素水を注ぎ、60分放置した。
その後、過酸化水素水を除去し、中空部をイオン交換水で洗浄した後、分光反射率測定機にて色の表示方法であるa*(赤味)、b*(黄味)、L*(明度)表色系(JIS−Z−8729:1994)の変化について測定した。それらの結果を順に図2、図3及び図4にH2O2WCとして示す。
前記中空部に生理食塩水を満たし、流れる腐食電流密度を測定したところ、1.894±0.259A/cm2であった。その結果を図5にH2O2WCとして示す。
図1のヘッドを、前述のタングステンカーバイド粒子を懸濁させた34%過酸化水素水に浸漬させて60分放置し、酸化膜を形成させた。
このヘッドにレジン系接着剤を使用して単冠を接着させた。乾燥後、接着強度を測定したところ、23.5±4.0MPaであった。その結果を図6にH2O2WCとして示す。
実施例1で使用した人工歯根材に対し処理を行わず、そのままa*、b*、L*表色系の変化について測定した。それらの結果を順に図2、図3及び図4にASとして示す。
前記中空部に生理食塩水を満たし、流れる腐食電流密度を測定したところ、4.34±0.557A/cm2であった。その結果を図5にASとして示す。
更に実施例1と同様にして接着強度を測定した。その結果を図6にASとして示す。
過酸化水素水にタングステンカーバイド粒子を添付せず、過酸化水素水のみとしたこと以外は実施例1と同じ条件で酸化膜を形成し、かつa*、b*、L*表色系の変化について測定した。それらの結果を順に図2、図3及び図4にH2O2として示す。
更に実施例1と同様にして腐食電流密度と接着強度を測定した。その結果を図6にH2O2として示す。
タングステンカーバイド粒子の代わりにシリコンカーバイドを使用したこと以外は実施例1と同じ条件で酸化膜を形成し、かつa*、b*、L*表色系の変化を観察し、かつヘッドとボディ間に流れる腐食電流密度、及び接着強度を測定した。
本実施例でも実施例1と同じように、酸化膜形成が観察され、腐食電流密度が従来より低く、接着強度は従来より高かった。
タングステンカーバイド粒子の代わりにタングステンを使用したこと以外は実施例1と同じ条件で酸化膜を形成し、かつa*、b*、L*表色系の変化を観察し、かつヘッドとボディ間に流れる腐食電流密度、及び接着強度を測定した。
本実施例でも実施例1と同じように、酸化膜形成が観察され、腐食電流密度が従来より低く、接着強度は従来より高かった。
Claims (6)
- 金属部材を酸化してその表面に酸化膜を形成する酸化膜形成方法において、前記金属部材の表面に、金属及び/又は金属カーバイドを含む過酸化水素溶液を接触させ、前記金属部材表面を対応する金属酸化物に変換することを特徴とする酸化膜の形成方法。
- 金属及び/又は金属カーバイドが、タングステン、タングステンカーバイド、シリコンカーバイド及びチタンカーバイドから成る群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の酸化膜の形成方法。
- 金属部材の材質が、コバルト・クロム合金、ニッケル・クロム合金、ステンレス、純チタン、チタン合金、金銀パラジウム合金、銀合金、及び金合金のうちの一種である請求項1又は2記載の酸化膜の形成方法。
- 金属部材がインプラント部材である請求項1から3までのいずれか1項記載の酸化膜の形成方法。
- ボディとヘッドを含んで成り、前記ボディ及び前記ヘッドをネジにより互いに螺合した人工歯根材において、前記ボディ及びヘッドの少なくとも一方のネジに酸化膜を形成したことを特徴とする人工歯根材。
- 骨内埋込部とカラー部を含んで成り、前記骨内埋込部の周面に酸化膜を形成したことを特徴とする人工歯根材。
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ITTO20100255A1 (it) * | 2010-03-31 | 2011-10-01 | Giorgio Lorenzon | Impianto per implantologia orale e relativo procedimento di realizzazione. |
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JP2001192853A (ja) * | 1999-10-29 | 2001-07-17 | Matsumoto Shika Univ | 合着用金属部材の酸化膜形成方法、及び金属部材の合着方法 |
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2005
- 2005-05-02 JP JP2005134061A patent/JP2006307301A/ja active Pending
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