JP2006304668A - タンパク質の生産に用いることが可能なf9胚性腫瘍細胞、およびその利用 - Google Patents

タンパク質の生産に用いることが可能なf9胚性腫瘍細胞、およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】 各種細胞外マトリックス分子を組み込んだ細胞外基質や分泌タンパク質を、効率よく大量調製する用途に好適に用いることのできるF9胚性腫瘍細胞と、その代表的な利用技術を提供する。
【解決手段】 少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なF9胚性腫瘍細胞であって、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座には、ラミニンα1遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列が設けられているF9胚性腫瘍細胞によれば、各種細胞外マトリックス分子を組み込んだ細胞外基質や分泌タンパク質を、効率よく大量調製する用途に好適に用いることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なF9胚性腫瘍細胞とその利用とに関するものであり、特に、ラミニンα1遺伝子を改変することにより、ラミニンをはじめとするさまざまなタンパク質や組み換えタンパク質を組み込んだ細胞外マトリックスや分泌タンパク質等を大量かつ安価に生産する用途に好適に用いることができるF9胚性腫瘍細胞とその代表的な利用技術とに関するものである。
基底膜は、ラミニン、IV型コラーゲン、ナイドジェンおよびパールカンを主成分として含む厚さ100nm程度の構造物である。近年、上皮細胞や実質細胞の極性の維持、増殖、生存および分化が、基底膜と細胞表面のレセプター分子との相互作用によって制御されていることを示す証拠が多く得られている。
基底膜の主要構成タンパク質の一つであるラミニンは、α鎖、β鎖、γ鎖の3本のサブユニットからなるヘテロ3量体タンパク質であって、それぞれのサブユニットには、5種類、3種類(または4種類)および3種類のアイソフォームの存在が知られている。それらの組み合わせによって、種々の機能を示すラミニンアイソフォームが構成される。
ラミニン−1は、α1β1γ1、ラミニン−2は、α2β1γ1、ラミニン−3は、α1β2γ1、ラミニン−4は、α2β2γ1、ラミニン−5は、α3β3γ2、ラミニン−6は、α3β1γ1、ラミニン−7は、α3β2γ1、ラミニン−8は、α4β1γ1、ラミニン−9は、α4β2γ1、ラミニン−10は、α5β1γ1、ラミニン−11は、α5β2γ1、ラミニン−12は、α2β1γ3、ラミニン−13は、α3β2γ3、ラミニン−14は、α4β2γ3、ラミニン−15は、α5β2γ3の各組み合わせである。
以上のように、ラミニンは、多くのラミニンアイソフォームからなり、他の基底膜主要構成タンパク質と比較して多様性に富む。したがって、各ラミニンアイソフォームが基底膜の多様性を規定する重要な分子であることが示唆されている。実際、これらラミニンアイソフォームは、様々の組織において発生段階に応じた特異的な発現パターンを示す。またラミニンの各サブユニットのノックアウトマウスは特異的な表現型を示す。以上のことは、各ラミニンアイソフォームが細胞の増殖、生存および分化の制御において、特異的な働きを有することを示している。
ラミニンアイソフォームの中には、研究および産業分野において多く用いられているものもある。そのため、生理活性を有するラミニンアイソフォームを含む基底膜様基質を大量に安定的かつ安価に調整する技術が求められている。
従来から、上記ラミニンアイソフォームを調製する技術として、生体組織や細胞培養液から直接精製する技術が知られている(非特許文献1および非特許文献2参照)。
また、ラミニン−1を調製する技術として、マウスのEngelbreth−Holm−Swarm(EHS)腫瘍を用いる技術が知られている。上記EHS腫瘍を用いると、基底膜成分を高濃度で含む粗抽出物(例えば、ラミニン−1を3−10mg/ml程度で含む粗抽出物)が容易に得られる。この粗抽出物は、ラミニン−1の精製原料としてのみならず、基底膜様基質として様々な細胞の培養やアッセイに広く使用され、組織工学、発生工学および再生医学の分野において非常に重要な材料となっている(非特許文献3参照)。
さらに、所望のラミニンアイソフォームを生産するために、培養細胞中で各種ラミニンサブユニットを組換え蛋白質として強制発現する技術も用いられている。この技術では、培養細胞として、ヒト腎由来293細胞などを用い、発現ベクターとしては、CMVプロモーター、EF−1プロモーターを有する発現ベクター等が用いられる(非特許文献4乃至7参照)。
Wewer UM et al, Methods Enzymol 1994;245:85-104 Kikkawa Y et al, J. Biol. Chem 1998,273,15854-9 Kleinman HK et al, Biochemistry, 1986, 25:312-8 Kortesmaa J, J. Biol Chem, 2000,275:14853-9 Doi M et al, J Biol Chem, 2002,277:12741-8 Hayashi Y et al , Biochem Biophys Res Commun 2002,299:498-504 Ido H et al, J. Biol. Chem, 2004, 279:10946-54
しかしながら、上記従来の技術は、生理活性を有する所望のラミニンアイソフォームを含む基底膜様基質を大量に安定的かつ安価に調製することが困難であるという課題を有する。
まず、非特許文献1に開示されているような、生体から直接精製する技術では、一般にラミニンをはじめとする基底膜の構成成分の精製は困難である。これは、生体での基底膜の厚さは、殆どの組織において100nm程度というサブマイクロメートルのレベルに保たれているため、基底膜様基質の量を十分に確保することが困難であることによる。
また、非特許文献3に開示されているような、EHS腫瘍を用いる技術では、EHS腫瘍は、ラミニン1を精製するために精製原料として用いられるが、他のラミニンアイソフォームは、ほとんど発現していないため、上記他のラミニンアイソフォームの精製原料としては適しているとはいえない。
さらに、非特許文献4乃至7に開示されているような、組み換えタンパク質としてラミニンを発現させて精製する技術では、組み換えタンパク質の発現および精製の効率が悪いことが知られている。これは、ラミニンは複雑な糖鎖修飾をうける3本のサブユニットからなる3量体であることによる。しかも、この精製ラミニンは生理的に不活性なラミニンをも含んでいるので、上記精製ラミニン中に活性なラミニンが、どの程度含有されているかという点も実用上大きな問題となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、各種細胞外マトリックス分子を組み込んだ細胞外基質や分泌タンパク質を、効率よく大量調製する用途に好適に用いることのできるF9胚性腫瘍細胞と、その代表的な利用技術を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ラミニンα1遺伝子座に、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入することで、細胞外マトリックス分子を組み込んだ細胞外基質や分泌タンパク質を、効率的に生産することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるF9胚性腫瘍細胞は、上記の課題を解決するために、少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なF9胚性腫瘍細胞であって、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座には、ラミニンα1遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列が設けられていることを特徴としている。
上記F9胚性腫瘍細胞においては、他方の遺伝子座では、ラミニンα1遺伝子が破壊されていることが好ましい。また、前記外来遺伝子挿入配列には、基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子を挿入することがより好ましい。ここで、前記基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子としては、ラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子等を挙げることができる。
また、前記外来遺伝子挿入配列には、マーカー遺伝子が含まれることが好ましく、当該マーカー遺伝子としては、蛍光蛋白質をコードする遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子または分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子を用いることが好ましい。また、蛍光蛋白質をコードする遺伝子としては、EGFP遺伝子、AcGFP遺伝子、AmCyan遺伝子、AsRed遺伝子、DsRed遺伝子、EBFP遺伝子、ECFP遺伝子、EYFP遺伝子、HcRed遺伝子、ZsGreen遺伝子、ZsYellow遺伝子(クロンテック社)を挙げることができる。
本発明には、上記F9胚性腫瘍細胞を用いる細胞外マトリックスの生産方法や、上記F9胚性腫瘍細胞を用いて、細胞分化誘導因子、分化阻害因子または抗癌剤をスクリーニングする方法も含まれる。
さらに、本発明には、上記F9胚性腫瘍細胞の作製方法(生産方法)も含まれる。具体的には、少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なF9胚性腫瘍細胞の作製方法であって、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座に、ラミニン遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を組み込む工程を含む方法を挙げることができる。
上記作製方法においては、さらに、上記外来遺伝子挿入配列に、基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子を挿入する工程を含むことが好ましく、さらに、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、他方の遺伝子座のラミニンα1遺伝子を破壊する工程を含むことが好ましい。
以上のように、本発明では、F9胚性腫瘍細胞において、ラミニンα1遺伝子座に、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するか、挿入可能としている。これによって、所望の遺伝子の発現をラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御下にて行うことが可能となる。それゆえ、分化誘導剤などにより上記F9胚性腫瘍細胞を分化誘導すれば、所望の遺伝子の発現を誘導することが可能となる。その結果、各種細胞外マトリックス分子を組み込んだ細胞外基質や分泌タンパク質を、効率よく大量調製することが可能になるという効果を奏する。
本発明の一実施形態につい具体的に説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
(I)本発明にかかるF9胚性腫瘍細胞
本発明にかかるF9胚性腫瘍細胞(以下、単に「F9細胞」と称する場合もある)は、少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なものであり、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座には、ラミニンα1遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列が設けられているものである。
〔ラミニン遺伝子座〕
上記ラミニンα1遺伝子座は、第17番染色体上に位置する。ラミニンα1遺伝子のプロモーターは、さまざまな刺激によって活性化することができる、例えば、F9胚性腫瘍細胞を分化誘導することによってラミニンα1遺伝子のプロモーターを活性化することができる。また、後述する実施例では、レチノイン酸及びcAMPを用いてF9胚性腫瘍細胞を分化誘導して、ラミニンα1遺伝子のプロモーターを活性化させている。
本発明では、上記ラミニンα1遺伝子座において、少なくとも一方の遺伝子座には、上記外来遺伝子挿入配列が組み込まれているが、他方の遺伝子座では、ラミニンα1遺伝子が破壊されていることが好ましい。これによって、α1サブユニットの発現が完全に無くなっている。したがって、F9−/−細胞は、ラミニンα1ノックアウト細胞としてラミニンα1遺伝子の機能解析に利用することが可能となる。また、例えば、ラミニンα1サブユニットの生成を抑制でき、所望の構成(例えば、ラミニンα1サブユニット以外のα鎖を有する)のラミニンアイソフォームを効率的に生産することができる。より具体的には、例えば、F9胚性腫瘍細胞は、内在性にラミニン−1(α1β1γ1)を発現している。このF9胚性腫瘍細胞に、ラミニンα5サブユニットを発現さることによってラミニン−10(α5β1γ1)を生産しようとした場合、内在性のβ1サブユニットおよびγ1サブユニットは、外来性に発現するα5サブユニットよりも内在性に発現するα1サブユニットとヘテロ3量体タンパク質を形成する。その結果、ラミニン−10をはじめとする所望のラミニンアイソフォームの生産効率を上げることができなかった。しかし、上述のように、ラミニンα1サブユニットの遺伝子を破壊することにより、所望のラミニンα1サブユニット以外のα鎖を有するラミニンアイソフォームを効率的に生産することができる。
ここで、上記「ラミニンα1遺伝子の破壊」とは、ラミニンα1サブユニットの生成が阻害される状態になっていること指すものとする。上記ラミニンα1遺伝子を破壊するための具体的な手法としては特に限定されるものではなく、従来公知の分子生物学的方法を用いることができる。具体的には、後述する実施例に示すように、相同組換えにより外来配列を挿入し、α1サブユニットのエクソンの一部を欠損することによって発現を抑制する技術を採用している。
〔外来遺伝子挿入配列〕
上記外来遺伝子挿入配列としては、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座には、ラミニンα1遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための遺伝子配列であれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、lox配列、Flp recombination target配列(インビトロジェン社)、att関連配列(インビトロジェン社)などを挙げることができる。このとき組換え酵素としては、それぞれCREリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ、gatewayクロナーゼを用いることが可能であるが、組換えを生じさせることが可能な酵素であればよく、特に限定するものではない。
上記外来遺伝子挿入配列に挿入される遺伝子としては、特に限定されるものではなく、多種多様な外来遺伝子を挿入することができる。例えば、基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。より具体的には、例えば、ラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子を挙げることができる。
また、上記外来遺伝子挿入配列には、さらに、マーカー遺伝子が含まれることが好ましい。このようなマーカー遺伝子としては、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの転写状態(転写が活性化しているか抑制しているか)を判定するための指標として使用可能なものであればよく、従来公知のマーカー遺伝子を用いることができる。具体的には、例えば、EGFP遺伝子、AcGFP遺伝子、AmCyan遺伝子、AsRed遺伝子、DsRed遺伝子、EBFP遺伝子、ECFP遺伝子、EYFP遺伝子、HcRed遺伝子、ZsGreen遺伝子、ZsYellow遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子または分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子などを挙げることができる。
上述のようにマーカー遺伝子を有することにより、後述するスクリーニング方法に利用することができる。
〔その他の構成〕
本発明に用いるF9胚性腫瘍細胞は、少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なものであればよい。具体的には、例えば、後述の実施例に示すように、常法(例えば、市販されている細胞を購入すること)により取得できるF9細胞を好適に使用できる。
上記の構成によれば、ラミニンα1遺伝子のプロモーター制御を受けて発現するように外来性の遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を有するため、所望の遺伝子をラミニンα1遺伝子のプロモーター制御下で発現させることが可能となる。また、上記外来遺伝子挿入配列に所望の遺伝子を挿入した本発明に係るF9胚性腫瘍細胞は、レチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導することによって所望の遺伝子の発現タイミングを制御することが可能となる。さらに、レチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導する前の上記F9胚性腫瘍細胞は、速やかに増殖する。このため、所望の遺伝子を発現する細胞を大量に得るためには、分化誘導する前に、上記外来遺伝子挿入配列に所望の遺伝子を挿入したF9胚性腫瘍細胞を大量培養し、その後分化誘導することによって所望の遺伝子を発現する細胞を大量に得ることが可能となる。つまり、本発明のF9胚性腫瘍細胞を用いれば、所望の遺伝子を大量に発現させるためのシステムを容易にスケールアップすることが可能である。
(II)本発明にかかるF9胚性腫瘍細胞の作製方法
本発明にかかるF9胚性腫瘍細胞の作製方法(生産方法または製造方法)は特に限定されるものではなく、上記(I)の項で述べたF9胚性腫瘍細胞を作製(生産または製造)できる方法であればよい。例えば、具体的には、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座に、ラミニン遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を組み込む工程(外来遺伝子挿入配列組込み工程)を含んでいればよい。
上記外来遺伝子挿入配列組込み工程では、前述した外来遺伝子挿入配列をラミニン遺伝子座に組み込めばよいが、その具体的な方法は特に限定されるものではなく、本発明において公知の遺伝子組換え技術を用いればよい。後述する実施例では、相同組換え法を利用している。さらに、上記外来遺伝子挿入配列に、基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子を挿入する工程を含むことが好ましい。
本発明にかかる作製方法においては、さらに、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、他方の遺伝子座のラミニンα1遺伝子を破壊する工程(ラミニンα1遺伝子破壊工程)を含むことが好ましい。上記ラミニンα1遺伝子破壊工程では、従来公知の遺伝子破壊の常法を好適に使用でき、その具体的な方法は特に限定されるものではない。例えば、後述する実施例では、相同組換え法により、外来配列をラミニンα1遺伝子に挿入し、エクソンの一部を欠損することによって発現を抑制する方法を用いている。
上記の方法によれば、簡便かつ効率的に本発明に係るF9胚性腫瘍細胞を作製することができる。
(III)本発明の利用
本発明の利用分野は特に限定されるものではないが、具体的には、上記F9胚性腫瘍細胞を用いる細胞外マトリックスの生産方法、上記F9胚性腫瘍細胞を用いて、細胞分化誘導因子、分化阻害因子または抗癌剤をスクリーニングする方法等を挙げることができる。
具体的には、本発明に係る細胞外マトリックスの生産方法は、上述のF9胚性腫瘍細胞を用いておればよく、その他の具体的な構成や材料等については特に限定されるものではない。上記方法によれば、上述のF9胚性腫瘍細胞を用いて所望の細胞外マトリックスを効率的に生産することができる。
また、本発明に係るスクリーニング方法は、上述のF9胚性腫瘍細胞を用いていればよく、その他の具体的な構成については特に限定されるものではない。なお、上述のF9胚性腫瘍細胞のなかでも、特に、上記外来遺伝子挿入配列にマーカー遺伝子が含まれるものが好ましい。
具体的には、上述のF9胚性腫瘍細胞において、マーカー遺伝子の発現は、ラミニンα1遺伝子と同じ発現制御を受ける。ラミニンα1遺伝子の発現は、細胞の分化マーカーとして用いられるので、ラミニンα1遺伝子と同じ発現制御を受けるマーカー遺伝子の発現は、細胞の分化マーカーとして用いることが可能となる。
例えば、後述する実施例に示すF9+/−EGFP細胞をレチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導した場合、ラミニンα1遺伝子の発現は誘導されるとともに、EGFP遺伝子の発現も誘導される。このとき、分化阻害因子が存在した場合、ラミニンα1遺伝子の発現は誘導されず、かつEGFP遺伝子の発現も誘導されない。したがって、EGFP遺伝子が発現されないことを蛍光顕微鏡などによって確認することによって、分化阻害因子が存在することを確認することが可能となる。以上のように本発明の上記外来遺伝子挿入配列にEGFP等のマーカー遺伝子を挿入したF9胚性腫瘍細胞は、分化阻害因子のスクリーニングに用いられることが可能となる。
一方、レチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導をしない場合、ラミニンα1遺伝子の発現は誘導されず、かつEGFP遺伝子の発現も誘導されない。ここに、例えば分化誘導因子が存在した場合、ラミニンα1遺伝子の発現は誘導され、かつEGFP遺伝子の発現も誘導される。したがって、EGFP遺伝子が発現されることを蛍光顕微鏡などによって確認することによって、分化誘導因子が存在することを確認することが可能となる。公知の抗癌剤の中には、分化誘導作用を持つものが知られているので、このスクリーニング系は、分化誘導作用を指標とした抗癌剤のスクリーニングに用いることが可能である。
また、上記分化阻害因子、分化誘導因子および抗癌剤は発現cDNAライブラリーであってもよい。例えば、発現cDNAライブラリーを本発明に係るF9胚性腫瘍細胞に導入し、蛍光強度が強くなった細胞をフローサイトメリーによって分離した後、発現cDNAライブラリーベクターを回収することによって分化誘導因子を同定することができる。また、同様に、発現cDNAライブラリーを上記F9胚性腫瘍細胞に導入した後、分化を誘導し、そのとき蛍光強度が強くならない細胞をフローサイトメトリーによって分離した後、発現cDNAライブラリーベクターを回収することによって分化阻害因子を同定することができる。
EGFP遺伝子の発現の確認は、蛍光顕微鏡などによって簡便かつ安価に行うことが可能となる。したがって、上記外来遺伝子挿入配列にEGFP遺伝子を挿入したF9胚性腫瘍細胞(例えば、F9−/−EGFP細胞またはF9+/−EGFP細胞)は、小規模から大規模にいたるまで、細胞分化誘導因子、分化阻害因子または抗癌剤のスクリーニングに好適に用いることが可能である。
なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
本発明について、実施例および比較例、並びに図1〜図12に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
なお、本明細書中、「F9−/−細胞」とは、一対のラミニンα1遺伝子のうち、一方が破壊されており、他方に外来遺伝子挿入配列が存在しており、ラミニンα1遺伝子の両方が欠損している細胞を示す。また「F9+/−細胞」とは、一対のラミニンα1遺伝子のうち、一方に外来遺伝子挿入配列が存在しているが、他方はそのまま残っており、ラミニンα1遺伝子の片方のみが欠損している細胞を示す。
〔相同組み換えF9胚性腫瘍細胞を得るための遺伝子ターゲティングベクターの構造〕
図1に、本発明の相同組み換えF9胚性腫瘍細胞を得るためのloxPターゲティングベクターおよびlox2272-loxPターゲティングベクターの構造を示す。
図1(a)に示すように、lox2272-loxPターゲティングベクターは、ジフテリアトキシン発現カセット(MC1-Diphteria toxin-PGK polyA)、lox2272配列(外来遺伝子挿入配列)、G418耐性カセット(G418r-PGK polyA)、loxp配列(外来遺伝子挿入配列)を有する。
本発明のlox2272-loxPターゲティングベクターでは、マウスラミニンα1遺伝子の第1エクソンの転写開始起点の下流に、マウスラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けるように、G418耐性遺伝子にフォスフォグルセロキナーゼ由来ポリアデニレーション配列を付加したG418耐性カセット(G418r-PGK polyA)を組み込み、マウスラミニンα1遺伝子の第1エクソンの下流配列および第1イントロンの配列の一部を取り除いた。上記G418耐性カセットの上流端にはlox2272配列を、下流端にはloxP配列を挿入した(Araki K et al,Nucleic Acid Res(2002)30:e103)。またプロモーター上流側にジフテリアトキシン発現カセットを備えている。
上記lox2272-loxPターゲティングベクターでは、G418耐性遺伝子は、ラミニンα1遺伝子プロモーターの制御を受けて発現する。したがってG418耐性遺伝子は、lox2272-loxPターゲティングベクターが組み込まれた細胞を選択するためのマーカーとして機能する。また、ジフテリアトキシン発現カセットは、lox2272-loxPターゲティングベクターのゲノムへの非特異的な組み込みを抑制する。lox2272-loxPターゲティングベクターが、非特異的にゲノムに組み込まれた場合、細胞内においてジフテリアトキシンAフラグメントが発現し、その細胞を死滅させることが可能となる。また、本実施例において、G418耐性カセットの上流端にはlox2272配列を、下流端にはloxP配列を挿入した。このlox2272配列およびloxP配列によって挟まれた領域は、CREリコンビナーゼによって、他のDNA断片中のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれた領域と組み換えを起こすことが可能となる。つまり本発明のlox2272-loxPターゲティングベクターによってラミニンα1遺伝子座を組み換えたF9胚性腫瘍細胞は、後述する遺伝子転換ベクターとCREリコンビナーゼの発現ベクターとを同時に導入することによって、lox2272配列およびloxP配列によって挟まれた領域間で組み換えを生じることが可能となる。したがって、遺伝子転換ベクターのlox2272配列およびloxP配列によって挟まれた領域に挿入される所望の遺伝子は、組み換えによって、ラミニンα1遺伝子プロモーターの下流に挿入されることとなる。その結果、所望の遺伝子をラミニンα1遺伝子プロモーターの制御下で発現させることが可能となる。本実施例においては、外来遺伝子挿入配列としてlox2272配列およびloxP配列を用い、組み換えを生じさせる酵素としてCREリコンビナーゼを用いたが、CREリコンビナーゼによって組み換えを起こす配列であればよく、上記配列に限定するものではない。また、組み換えを生じさせる酵素としてCREリコンビナーゼを用いたが、組み換えを生じさせ得るものであればよく、上記酵素に限定するものではない。このとき、上記外来遺伝子挿入配列は、組み換えを生じさせ得る酵素に合わせて選択することが可能である。
また、図1(b)に示すように、loxPターゲティングベクターは、ジフテリアトキシン発現カセット(MC1-Diphteria toxin-PGK polyA)、フォスフォグルセロキナーゼプロモーター、G418耐性カセット(G418r-PGK polyA)およびloxP配列を有する。
マウスラミニンα1遺伝子の第1エクソンの転写開始起点の下流に、フォスフォグルセロキナーゼプロモーターの制御を受けるように、G418耐性遺伝子にフォスフォグルセロキナーゼ由来ポリアデニレーション配列を付加したG418耐性カセット(G418r-PGK polyA)を組み込み、マウスラミニンα1遺伝子の第1エクソンの下流配列および第1イントロンの配列の一部を取り除いた。上記G418耐性カセットの上流端および下流端には、loxP配列を挿入した。またプロモーター上流側にジフテリアトキシン発現カセットを備えている。
上記loxPターゲティングベクターでは、G418耐性遺伝子は、フォスフォグルセロキナーゼプロモーターの制御を受けて発現する。したがってG418耐性遺伝子は、loxPターゲティングベクターが組み込まれた細胞を選択するためのマーカーとして機能する。また、ジフテリアトキシン発現カセットは、loxPターゲティングベクターのゲノムへの非特異的な組み込みを抑制する。loxPターゲティングベクターが、非特異的にゲノムに組み込まれた場合、細胞内においてジフテリアトキシンAフラグメントが発現し、その細胞を死滅させることが可能となる。
〔破壊された一方のラミニンα1遺伝子座と、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を有する他方のラミニンα1遺伝子座とを有するF9胚性腫瘍細胞(F9−/−細胞)の樹立〕
図2に、F9−/−細胞を樹立する方法を示す。
F9胚性腫瘍細胞は、核型39WOで、第8染色体のトリソミー、第14染色体のモノソミーを持つマウス由来胚性癌細胞である。上記F9胚性腫瘍細胞において、ラミニンα1遺伝子の遺伝子座であるLAMA1は、17番染色体上に存在する。
まず、F9胚性腫瘍細胞に、制限酵素処理によって直線化したloxPターゲティングベクターを電気穿孔法により導入した後、loxPターゲティングベクターが組み込まれた細胞を選択した。細胞の選択は、G418耐性遺伝子の発現を指標として行った。つまり、geneticinに耐性であるクローンを選択した。更に、選択されたクローンをサザンブロット法によって解析することによって、相同組み換えによって一方のLAMA1遺伝子座の第1エクソンが改変された細胞(#54)を得た。
図3(a)に、相同組み換えによってLAMA1遺伝子座の第1エクソンが改変されたF9胚性腫瘍細胞(#54)と相同組み換えを起こしていないF9胚性腫瘍細胞(wt)のサザンブロット法による解析結果を示す。また、図3(b)に、loxPターゲティングベクターが組み込まれたラミニンα1遺伝子近傍の制限酵素の配置を示す。
F9胚性腫瘍細胞(#54)およびF9胚性腫瘍細胞(wt)から精製されたゲノムDNAを、それぞれSphI、NdeI、EcoRI+EcoRV、MluI+EcoRIまたはBamHIによって酵素消化した。酵素消化産物を、電気泳動後、サザンブロット法によって解析した。このとき、SphI、NdeI、EcoRI+EcoRVおよびMluI+EcoRIによる酵素消化産物のサザンブロット法による解析には、配列番号1で示されるLAMA1プローブを用い、BamHIによる酵素消化産物のサザンブロット法による解析には、配列番号2で示されるNeoプローブを用いた。
SphIによる酵素消化産物の解析では、F9胚性腫瘍細胞(#54)は、3382bpおよび8075bpのバンドを示し、F9胚性腫瘍細胞(wt)は、8075bpのバンドを示した。NdeIによる酵素消化産物の解析では、F9胚性腫瘍細胞(#54)は、7194bpおよび6772bpのバンドを示し、F9胚性腫瘍細胞(wt)は、6772bpのバンドを示した。EcoRI+EcoRVによる酵素消化産物の解析では、F9胚性腫瘍細胞(#54)は、2927bpおよび9550bpのバンドを示し、F9胚性腫瘍細胞(wt)は、9550bpのバンドを示した。MluI+EcoRIによる酵素消化産物の解析では、F9胚性腫瘍細胞(#54)は、5.2kbpおよび3.6kbpのバンドを示し、F9胚性腫瘍細胞(wt)は、3.6kbpのバンドを示した。BamHIによる酵素消化産物の解析では、#54は、7.8kbpのバンドを示した。以上のようにして、相同組み換えによって一方のLAMA1遺伝子座の第1エクソンが改変されたF9胚性腫瘍細胞(#54)を選択した。
次にLAMA1遺伝子座の第1エクソンが改変されたF9胚性腫瘍細胞(#54)にCREリコンビナーゼを一過性に導入したのち、限界希釈法によって単細胞クローンを得た。このときCREリコンビナーゼを発現することによってloxP配列間で組み換えが生じ、G418耐性カセットを欠損したF9胚性腫瘍細胞が得られる。したがって、G418耐性カセットを欠損したF9胚性腫瘍細胞を選択するために、上記単細胞クローンの中でG418感受性を示すものを選別した。このクローンでは、図2右上に示すように、2コピーのラミニンα1遺伝子座のうち、1コピーのラミニンα1遺伝子座が破壊されている。
さらに、そのクローンに直線化したlox2272―loxPターゲティングベクターを電気穿孔法により導入した後、再びgeneticinによってクローンを選択した。このクローンでは、lox2272―loxPターゲティングベクターは、破壊されていない1コピーのラミニンα1遺伝子座と相同組み換えを起こす。その結果、ラミニンα1遺伝子座が2コピーとも破壊されたクローンが得られることになる。選択されたクローンはサザンブロット法によって解析され、内在性ラミニンα1遺伝子座の一方を破壊し、かつ他方のラミニンα1遺伝子座に、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を有するF9胚性腫瘍細胞(F9−/−細胞)を得た。
本発明のF9−/−細胞は、ラミニンα1遺伝子のプロモーター制御を受けて発現するように外来性の遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を有するため、所望の遺伝子をラミニンα1遺伝子のプロモーター制御下で発現させることが可能となる。ラミニンα1遺伝子のプロモーターは、F9胚性腫瘍細胞をレチノイン酸およびcAMP処理などすることによって分化誘導した場合、正に制御される。したがって、上記外来遺伝子挿入配列に所望の遺伝子を挿入した本発明のF9−/−細胞は、レチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導する前、所望の遺伝子の発現は低く抑えられているが、分化誘導した後、所望の遺伝子の発現が高く誘導される。つまり所望の遺伝子の発現タイミングを制御することが可能となる。
また、レチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導する前の上記F9−/−細胞は、速やかに増殖する。また、例えば、上記外来遺伝子挿入配列に挿入する遺伝子が細胞増殖抑制効果を有する遺伝子である場合、分化誘導しなければ、上記所望の遺伝子の発現は低く抑えられている。したがって、分化誘導する前の上記F9−/−細胞は、速やかに増殖する。したがって、所望の遺伝子を発現する細胞を大量に得るためには、分化誘導する前に、上記外来遺伝子挿入配列に所望の遺伝子を挿入したF9−/−細胞を大量培養し、その後分化誘導することによって所望の遺伝子を発現する細胞を大量に得ることが可能となる。つまり、本発明のF9−/−細胞を用いれば、所望の遺伝子を大量に発現させるためのシステムを容易にスケールアップすることが可能である。
また、上記F9−/−細胞は、両方のラミニンα1遺伝子座が破壊されている。したがって、上記F9−/−細胞は、内在性のラミニンα1遺伝子を発現しないので、内在性に発現するラミニンβ1およびラミニンγ1は、内在性のラミニンα1とヘテロ3量体蛋白質を形成することがない。一方、外来性にαサブユニットを発現させた場合は、F9−/−細胞が内在性に発現するラミニンβ1およびラミニンγ1と共にヘテロ3量体蛋白質を形成する。その結果、外来性に発現するαサブユニットに由来する所望のラミニンアイソフォームを優先的に発現することが可能となる。このとき外来性に発現するαサブユニットは、F9−/−細胞の上記外来遺伝子挿入配列に挿入することによって発現されてもよく、別の発現ベクターによって発現されてもよく、特に限定されるものではない。
また、上記F9−/−細胞は、両方のラミニンα1遺伝子座が破壊されているため、α1サブユニットの発現が完全に無くなっている。したがって、F9−/−細胞は、ラミニンα1ノックアウト細胞としてラミニンα1遺伝子の機能解析に利用することが可能となる。
〔ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を有するラミニンα1遺伝子座を有するF9胚性腫瘍細胞(F9+/−細胞)の樹立〕
図4に、F9+/−細胞を樹立する方法を示す。
まず、F9胚性腫瘍細胞に、制限酵素処理によって直線化したlox2272-loxPターゲティングベクターを電気穿孔法により導入した後、lox2272-loxPターゲティングベクターが組み込まれた細胞を選択した。細胞の選択は、G418耐性遺伝子の発現を指標として行った。つまり、geneticinに耐性であるクローンを選択した。更に、選択されたクローンをサザンブロット法によって解析することによって、相同組み換えによって一方のLAMA1遺伝子座の第1エクソンが改変されたF9+/−細胞を得た。
本発明のF9+/−細胞は、一方のラミニンα1遺伝子のプロモーター制御を受けて発現するように外来性の遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を有するため、所望の遺伝子をラミニンα1遺伝子のプロモーター制御下で発現させることが可能となる。ラミニンα1遺伝子のプロモーターは、F9胚性腫瘍細胞をレチノイン酸およびcAMP処理などすることによって分化誘導した場合、正に制御される。したがって、上記外来遺伝子挿入配列に所望の遺伝子を挿入した本発明のF9+/−細胞は、レチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導する前、所望の遺伝子の発現は低く抑えられているが、分化誘導した後、所望の遺伝子の発現が高く誘導される。つまり所望の遺伝子の発現タイミングを制御することが可能となる。
また、レチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導する前の上記F9+/−細胞は、速やかに増殖する。また、例えば、上記外来遺伝子挿入配列に挿入する遺伝子が細胞増殖抑制効果を有する遺伝子である場合、分化誘導しなければ、上記所望の遺伝子の発現は低く抑えられている。したがって、分化誘導する前の上記F9+/−細胞は、速やかに増殖する。したがって、所望の遺伝子を発現する細胞を大量に得るためには、分化誘導する前に、上記外来遺伝子挿入配列に所望の遺伝子を挿入したF9+/−細胞を大量培養し、その後分化誘導することによって所望の遺伝子を発現する細胞を大量に得ることが可能となる。つまり、本発明のF9+/−細胞を用いれば、所望の遺伝子を大量に発現させるためのシステムを容易にスケールアップすることが可能である。
このとき、上記F9+/−細胞は、一方のラミニンα1遺伝子座から内在性のラミニンα1遺伝子を発現し、他方のラミニンα1遺伝子座から所望の遺伝子を発現する。したがって、上記F9+/−細胞の内在性に発現するラミニンβ1およびラミニンγ1は、内在性に発現するラミニンα1とヘテロ3量体蛋白質を形成するとともに、外来性に発現するαサブユニットともヘテロ3量体蛋白質を形成する。その結果、本発明のF9+/−細胞は、ラミニン−1と外来性に発現するαサブユニットに由来する所望のラミニンアイソフォームとを同時に発現することが可能となる。
〔遺伝子転換プラスミドの構造〕
図2および図4に示したように、F9−/−細胞およびF9+/−細胞は、一方のラミニンα1遺伝子座に、lox2272配列およびloxP配列によって挟まれたG418耐性カセットを有する。F9−/−細胞およびF9+/−細胞中に、上流にlox2272配列を有し、かつ下流にloxP配列を有する任意のDNA断片(遺伝子転換プラスミド)とCREリコンビナーゼ発現プラスミドとを同時に発現させることによって、細胞内のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたG418耐性カセットをlox2272配列およびloxP配列によって挟まれた任意のDNA断片に転換することが可能となる。
図5に、遺伝子転換プラスミドの構造を示す。
遺伝子転換プラスミドは、lox2272配列、pCINeoプラスミド(プロメガ社)由来イントロン配列、マルチクローニングサイト、牛成長ホルモンpolyA、ピューロマイシン耐性カセット(PGK promoter-Puromycin-resistance-PGK polyA)、loxP配列を有する。
遺伝子転換プラスミド中のマルチクローニングサイトは、任意の遺伝子を挿入することが可能であるように1種類以上の制限酵素配列を含む配列であるが、任意の遺伝子を挿入することが可能であればよく、特に限定されるものではない。上記マルチクローニングサイトに任意の外来遺伝子のcDNAを挿入し、この遺伝子転換プラスミドとCREリコンビナーゼ発現プラスミドとを同時にF9−/−細胞またはF9+/−細胞中で発現させることによって、細胞内のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたG418耐性カセットを遺伝子転換プラスミド中のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたDNA断片に転換することが可能となる。その結果、F9−/−細胞またはF9+/−細胞中の一方のラミニンα1遺伝子座に外来遺伝子のcDNAが挿入される。上記外来遺伝子は、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの下流に挿入されるので、外来遺伝子はラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現する。したがって、外来遺伝子としてラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子などを挿入した場合、外来性のαサブユニットに由来するラミニンは、他の内在性の基底膜構成蛋白遺伝子と協調的に発現される。その結果、内在性の基底膜構成蛋白質と共に協調的に基底膜様の細胞外基質を形成することが可能となる。
本実施例においては、外来遺伝子挿入配列としてlox2272配列およびloxP配列を用い、組み換えを生じさせる酵素としてCREリコンビナーゼを用いたが、CREリコンビナーゼによって組み換えを起こす配列であればよく、上記配列に限定するものではない。また、組み換えを生じさせる酵素としてCREリコンビナーゼを用いたが、組み換えを生じさせ得る酵素であればよく、上記酵素に限定するものではない。このとき、上記外来遺伝子挿入配列は、組み換えを生じさせ得る酵素に合わせて選択することが可能である。
また、本発明の遺伝子転換プラスミドのピューロマイシン耐性カセットは、フォスフォグルセロキナーゼ由来ポリアデニレーション配列を付加したピューロマイシン耐性遺伝子の上流に、フォスフォグルセロキナーゼ由来プロモーター配列を付加した構造である。上記遺伝子転換ベクターによって遺伝子転換を受けたF9−/−細胞またはF9+/−細胞ではG418耐性カセットが取り除かれ、ピューロマイシン耐性カセットが挿入される。したがって、遺伝子転換された細胞はピューロマイシン耐性であると同時にG418感受性となるため、これら薬剤耐性を指標に高い効率で遺伝子転換された細胞を選択することができる。
〔相同組み換えF9胚性腫瘍細胞(F9+/−EGFP細胞)の樹立方法および同細胞の用途〕
図6にF9+/−EGFP細胞の樹立方法を示す。
ここで、F9+/−EGFP細胞とは、上記F9+/−細胞の外来遺伝子挿入配列に、EGFP遺伝子を挿入したF9胚性腫瘍細胞のことをいう。
上記遺伝子転換ベクターのマルチクローニングサイトにオワンクラゲ由来緑色蛍光蛋白質(EGFP:クロンテック社)cDNAを組み込んだ。この遺伝子転換ベクターをCREリコンビナーゼ発現プラスミドとともにF9+/−細胞に導入した。F9+/−細胞内のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたG418耐性カセットは、遺伝子転換プラスミド中のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたEGFP遺伝子およびピューロマイシン耐性カセットを含むDNA断片に転換される。したがって、部位特異的組み換えが起こったF9+/−EGFP細胞を選択するために、まずピューロマイシン耐性クローンを選択した後、得られたクローンからG418感受性を示すクローンを選択した。その後、選択した細胞をサザンブロット法によって解析し、部位特異的組み換えが起こっているF9+/−EGFP細胞を得た。
F9+/−EGFP細胞では、EGFPの発現はラミニンα1遺伝子のプロモーターによる発現制御を受けるので、EGFPは、LAMA1遺伝子と同じ様式で発現する事が期待される。ラミニンα1遺伝子は、未分化F9胚性腫瘍細胞においては非常に低いレベルでしか発現しないが、レチノイン酸およびcAMPによりF9胚性腫瘍細胞を壁側内胚葉類似細胞へと分化すると高いレベルで発現される。そこで、F9+/−EGFP細胞をレチノイン酸およびcAMPによって分化を誘導したあと、EGFP蛋白質の発現レベルを蛍光顕微鏡によって、またEGFPmRNAの発現レベルをリアルタイムPCR法によって確認した。
図7(a)は、蛍光顕微鏡によって観察した、レチノイン酸およびcAMPで分化誘導して48時間後および分化誘導前の、F9+/−EGFP細胞の形態とEGFP蛋白質の発現レベルとを示した図である。
F9+/−EGFP細胞を1cmあたり1×10個の細胞密度となるように、フィブロネクチンによってコートされたガラススライド上に蒔き、10%のFBSを含むDMEM培地中で96時間の培養をおこなった。このとき、上記DMEM培地には、レチノイン酸およびcAMPを、最終濃度が、それぞれ1μMおよび1mMとなるように加えた。96時間の培養の後、F9+/−EGFP細胞をPascal LSM5共焦点レーザー顕微鏡によって観察した。
図7(a)に示すように、F9+/−EGFP細胞は、分化誘導する前、細胞は分化形態を示さないとともにEGFP蛋白質の発現レベルが非常に低い。一方、分化誘導処理して96時間後、細胞は分化形態を示すとともにEGFP蛋白質の発現レベルが上昇する。したがって、EGFP遺伝子の発現は、ラミニンα1遺伝子のプロモーターによる制御を受けており、EGFP遺伝子の発現様式を知ることによって、ラミニンα1遺伝子の発現様式を知ることが可能となることが確認された。
図7(b)は、リアルタイムPCRによって定量した、レチノイン酸およびcAMPで分化誘導処理して96時間後のF9+/−EGFP細胞の内在性のラミニンα1mRNA(MLA)、内在性のラミニンγ1mRNA(MLC)およびEGFPmRNA(egfp)の発現量を示した図である。
F9+/−EGFP細胞を1cmあたり1×10個の細胞密度となるように、ゼラチンによってコートされた培養皿上に蒔き、10%のFBSを含むDMEM培地中で96時間の培養をおこなった。このとき、上記DMEM培地には、レチノイン酸およびcAMPを、最終濃度が、それぞれ1μMおよび1mMとなるように加えた。96時間の培養の後、RNAeasy kit(キアゲン社)を用い、細胞からRNAを抽出した。SuperScriptII(インビトロジェン社)およびランダムプライマーを用い、1μgのtotal RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAの50分の1量を用い、QuantiTect Cyber SYBR green PCR kit(キアゲン社)およびSmart cycler(Cepheid社)によってリアルタイムPCRを行った。このときPCRの反応条件は、95℃で900秒間の前変性処理の後、95℃で10秒間の変性反応、60℃で30秒間のアニーリング反応および72℃で60秒間の伸長反応からなる反応サイクルを45サイクル行うものであった。検出した各遺伝子の発現量は、GAPDH(Glyseraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)遺伝子の発現量に基づき、補正を行った。
また、リアルタイムPCRに用いたプライマーは、以下に示すものを用いた。
ラミニンα1を検出するために、MLAフォワードプライマー:5’-CTACCACAGCCTGAACTGTG-3’(配列番号3)およびMLAリバースプライマー:5’-TGTATTCTGTCTTGACTGTGTG-3’(配列番号4)を用いた。ラミニンγ1を検出するために、MLCフォワードプライマー:5’-TGTACCATGCCTGGTCACGT-3’(配列番号5)およびMLCリバースプライマー:5’-TGGCAATCTCCGAGATGGAG-3’(配列番号6)を用いた。EGFPを検出するために、egfpフォワードプライマー:5’-GGCGATGCCACCTACGGCAAG-3’(配列番号7)およびegfpリバースプライマー:5’-GTTGCCGTCCTCCTTGAAGTCG-3’(配列番号8)を用いた。GAPDHを検出するために、gapdhフォワードプライマー:5’-GCAAAGTGGAGATTGTTGCCAT-3’(配列番号9)およびgapdhリバースプライマー:5’-GATGCAGGGATGATGTTCTGG-3’(配列番号10)を用いた。
図7(b)に示すように、F9+/−EGFP細胞を分化誘導する前、内在性に発現するラミニンα1およびラミニンγ1のmRNAの量は、低く抑えられている。同様に、外来性に発現させるEGFPのmRNAの量も、低く抑えられている。一方、F9+/−EGFP細胞を分化誘導すると、ラミニンα1、ラミニンγ1およびEGFPのmRNAの量は平行して増加することが確認された。したがって、EGFP遺伝子の発現は、ラミニンα1遺伝子のプロモーターによる制御を受けており、EGFP遺伝子の発現様式を知ることによって、ラミニンα1遺伝子の発現様式を知ることが可能となることが確認された。
本発明のF9+/−EGFP細胞は、マーカー遺伝子としてEGFP遺伝子が用いられる。その結果、上記EGFP遺伝子の発現は、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けることになる。したがって、上記EGFP遺伝子は、ラミニンα1遺伝子と同じ様式で発現されることとなり、EGFP遺伝子の発現様式を知ることによって、ラミニンα1遺伝子の発現様式を知ることが可能となる。
このとき、EGFP遺伝子の発現の確認は、蛍光顕微鏡などによって簡便かつ安価に行うことが可能となる。発現の確認を簡便かつ安価に行うことを可能とするがゆえに、大量の細胞サンプルにおいて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターが活性化したか否かを知ることを可能とする。
〔相同組み換えF9胚性腫瘍細胞(F9+/−LAMA5細胞)の樹立法〕
図8に、F9+/−LAMA5細胞の樹立方法を示す。
ここで、F9+/−LAMA5細胞とは、上記F9+/−細胞の外来遺伝子挿入配列に、ラミニンα5遺伝子を挿入したF9胚性腫瘍細胞のことをいう。
上記遺伝子転換ベクターのマルチクローニングサイトにラミニンα5cDNAを組み込んだ。この遺伝子転換ベクターをCREリコンビナーゼ発現プラスミドとともにF9+/−細胞に導入した。F9+/−細胞内のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたG418耐性カセットは、遺伝子転換プラスミド中のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたラミニンα5遺伝子およびピューロマイシン耐性カセットを含むDNA断片に転換される。したがって、部位特異的組み換えが起こったF9+/−LAMA5細胞を選択するために、まずピューロマイシン耐性クローンを選択した後、得られたクローンからG418感受性を示すクローンを選択した。その後、選択した細胞をサザンブロット法によって解析し、部位特異的組み換えが起こっているF9+/−LAMA5細胞を得た。
この細胞は分化誘導により、内在性に発現するα1サブユニットを含むラミニン−1(α1β1γ1)および外来性に発現するα5サブユニットを含むラミニン−10(α5β1γ1)を分泌する。
本発明のF9+/−細胞は、上記外来遺伝子挿入配列にラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子が挿入されてもよい。その結果、上記F9+/−細胞をレチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導することによって、ラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子の発現を誘導することが可能となる。このとき、上記F9+/−細胞は、一方のラミニンα1遺伝子座から内在性のラミニンα1遺伝子を発現し、他方のラミニンα1遺伝子座から上記外来遺伝子挿入配列に挿入したラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子を発現する。
上記F9+/−細胞の内在性に発現するラミニンβ1およびラミニンγ1は、内在性に発現するラミニンα1とヘテロ3量体蛋白質を形成するとともに、外来性に発現するラミニンα1、α2、α3、α4またはα5ともヘテロ3量体蛋白質を形成する。その結果、所望のラミニンアイソフォームとラミニン−1とを同時に発現することが可能となる。つまり、ラミニンα1により遺伝子転換されたF9+/−細胞ではラミニン−1、ラミニンα2により遺伝子転換されたF9+/−細胞ではラミニン−2およびラミニン−1、ラミニンα3により遺伝子転換されたF9+/−細胞ではラミニン−6およびラミニン−1、ラミニンα4により遺伝子転換されたF9+/−細胞ではラミニン−8およびラミニン−1、ラミニンα5により遺伝子転換されたF9+/−細胞ではラミニン−10およびラミニン−1を発現することが可能となる。その結果、所望のラミニンアイソフォームおよびラミニン−1を含む基底膜様構造物を得ることが可能となる。
また、本発明のF9+/−細胞が外来性に発現したラミニンアイソフォームは、分泌されて基底膜様構造物を形成するので、上記外来性に発現したラミニンアイソフォームは、容易に精製することが可能である。
〔相同組み換えF9胚性腫瘍細胞(F9−/−LAMA5細胞)の樹立法〕
図9に、F9−/−LAMA5細胞の樹立方法を示す。
ここで、F9−/−LAMA5細胞とは、上記F9−/−細胞の外来遺伝子挿入配列に、ラミニンα5遺伝子を挿入したF9胚性腫瘍細胞のことをいう。
上記遺伝子転換ベクターのマルチクローニングサイトにラミニンα5cDNAを組み込んだ。この遺伝子転換ベクターをCREリコンビナーゼ発現プラスミドとともにF9−/−細胞に導入した。F9−/−細胞内のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたG418耐性カセットは、遺伝子転換プラスミド中のlox2272配列およびloxP配列によって挟まれたラミニンα5遺伝子およびピューロマイシン耐性カセットを含むDNA断片に転換される。したがって、部位特異的組み換えが起こったF9−/−LAMA5細胞を選択するために、まずピューロマイシン耐性クローンを選択した後、得られたクローンからG418感受性を示すクローンを選択した。その後、選択した細胞をサザンブロット法によって解析し、部位特異的組み換えが起こっているF9−/−LAMA5細胞を得た。
この細胞では内在性に発現するα1サブユニットが全く発現していないため、内在性に発現するβ1サブユニットおよびγ1サブユニットは、外来性に発現するα5サブユニットとヘテロ3量体蛋白質を形成する。その結果、分泌されるラミニンの殆どが外来性のα5サブユニットを含むラミニン−10となる。こうして得られた細胞を分化誘導した後、培養液を抗ラミニンα5抗体を用いたウエスタンブロッティングによって解析し、分泌されるラミニン−10の量を推定した。
分泌されるラミニン−10のウエスタンブロッティング法による解析結果を図10に示す。
F9細胞、F9−/−細胞およびF9−/−LAMA5細胞のそれぞれを1cmあたり1×10個の細胞密度となるように、ゼラチンによってコートされた培養皿上に蒔き、10%のFBSを含むDMEM培地中で96時間の培養をおこなった。このとき、上記DMEM培地には、レチノイン酸およびcAMPを、最終濃度が、それぞれ1μMおよび1mMとなるように加えた。96時間の培養の後、培養皿から培地を回収した。回収した培地10μlを非還元条件下で電気泳動した後、抗ラミニンα5抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行った。このとき、F9細胞、F9−/−細胞およびF9−/−LAMA5細胞は、それぞれ1種類、1種類および4種類の細胞系統に関して、抗ラミニンα5特異的モノクローナル抗体(非特許文献2参照)を用いてウエスタンブロッティング解析を行った。なお、培地中に分泌されたラミニンα5を定量するために、500ngの組み換えラミニン−10も電気泳動し、抗ラミニンα5抗体を用いて、ウエスタンブロッティング解析を行った
図10において、分子量の大きなバンドは、ラミニン−10、すなわちラミニンβ1およびラミニンγ1と3量体を形成したラミニンα5を示し、分子量の小さなバンドは、ラミニンα5の単量体を示す。図10に示すように、F9細胞およびF9−/−細胞では、分化誘導の前後ともに、ラミニン−10の発現が確認できない。一方、4系統のF9−/−LAMA5細胞は、分化誘導後、培地中にラミニン−10を分泌することが示された。このとき、ウエスタンブロッティング解析における、F9−/−LAMA5細胞のラミニン−10のバンド強度と500ngの組み換えラミニン−10のバンド強度とを比較することによって、培地中のラミニン−10の濃度は、少なくとも10ng/μlであると推定された。
本発明のF9−/−細胞は、上記外来遺伝子挿入配列にラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子が挿入されてもよい。その結果、上記F9−/−細胞をレチノイン酸およびcAMP処理などによって分化誘導することによって、ラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子の発現を誘導することが可能となる。このとき、上記F9−/−細胞は、両方のラミニンα1遺伝子座が破壊されている。したがって、上記F9−/−細胞は、内在性のラミニンα1遺伝子を発現しないので、上記F9−/−細胞の内在性に発現するラミニンβ1およびラミニンγ1は、内在性のラミニンα1とヘテロ3量体蛋白質を形成することがない。一方、外来性にラミニンα1、α2、α3、α4またはα5を発現させた場合、外来性に発現されたラミニンα鎖は、内在性に発現するラミニンβ1およびラミニンγ1と共にヘテロ3量体蛋白質を形成する。その結果、所望のラミニンアイソフォームを優先的に発現することが可能となる。つまり、ラミニンα1により遺伝子転換されたF9−/−細胞ではラミニン−1、ラミニンα2により遺伝子転換されたF9−/−細胞ではラミニン−2、ラミニンα3により遺伝子転換されたF9−/−細胞ではラミニン−6、ラミニンα4により遺伝子転換されたF9−/−細胞ではラミニン−8、ラミニンα5により遺伝子転換されたF9−/−細胞ではラミニン−10を優先的に発現することが可能となる。その結果、所望のラミニンアイソフォームを含む基底膜様構造物を得ることが可能となる。
また、本発明のF9−/−細胞が外来性に発現したラミニンアイソフォームは、分泌されて基底膜様構造物を形成するので、上記外来性に発現したラミニンアイソフォームは、容易に精製することが可能である。
〔F9+/−LAMA5細胞およびF9−/−LAMA5細胞を用いたラミニン−1及びラミニン−10を含む基底膜様構造物あるいはラミニン−10を含みラミニン−1を含まない基底膜様構造物の作製法〕
F9細胞、F9+/−LAMA5細胞、F9−/−LAMA5細胞およびF9−/−細胞のそれぞれを1cmあたり1×10個の細胞密度となるように、フィブロネクチンによってコートされた2枚のスライドガラス上に蒔き、10%のFBSを含むDMEM培地中で96時間の培養をおこなった。このとき、上記DMEM培地には、レチノイン酸およびcAMPを、最終濃度が、それぞれ1μMおよび1mMとなるように加えた。96時間培養をして、壁側内胚葉類似細胞へ分化誘導した上記細胞を4%パラフォルムアルデヒドによって固定した。一枚のスライドガラス上に固定された細胞は、1% TritonX−100および20mM NHOHを含む溶液によって細胞を溶解し、除去した。その後、蛍光免疫組織化学法によって、細胞膜上または基底膜様構造物中に存在するラミニンα1蛋白質、ラミニンα5蛋白質およIV型コラーゲン蛋白質を可視化した。1次抗体として、ラット抗ラミニンα1モノクローナル抗体(Sanzen N et al. unpublished)、マウス抗ラミニンα5モノクローナル抗体(非特許文献2参照)またはウサギ抗IV型コラーゲンポリクローナル抗体(エル・エス・エル社)を反応させた後、それぞれに、FITC標識抗ラットIgG抗体(American Qualex社)、FITC標識抗マウスIgG抗体(American Qualex社)またはRhodamine標識抗ウサギIgG抗体(BIOSOURCE社)を二次抗体として反応させた。封入処理のあと、Pascal LSM5共焦点レーザー顕微鏡によって観察した。
図11に、F9細胞、F9+/−LAMA5細胞、F9−/−LAMA5細胞およびF9−/−細胞よる基底膜構成成分の沈着を蛍光免疫組織化学法により解析した結果を示す。図11において、ラミニンα1およびラミニンα5は緑色に可視化されておりIV型コラーゲンは赤色に可視化されている。
図11(a)に示すように、内在性のラミニンα1を発現するF9細胞およびF9+/−LAMA5細胞は、ラミニン−1(α1β1γ1)を含む基底膜様構造物を沈着する。一方、ラミニンα1を発現しないF9−/−LAMA5細胞およびF9−/−細胞は、ラミニン−1(α1β1γ1)を含む基底膜様構造物を沈着しない。また、図11(b)に示すように、ラミニンα5遺伝子が導入されていないF9細胞およびF9−/−細胞は、ラミニン−10(α5β1γ1)を含む構造物を沈着しない。一方、ラミニンα5遺伝子が導入されているF9+/−LAMA5細胞およびF9−/−LAMA5細胞は、ラミニン−10(α5β1γ1)を含む構造物を沈着する。
上記のように、本発明のF9+/−LAMA5細胞は、ラミニン−1およびラミニン−10を発現し、発現されたラミニン−1およびラミニン−10は、分泌されて基底膜様構造物として沈着する。また、本発明のF9−/−LAMA5細胞は、ラミニン−10を発現し、発現されたラミニン−10は分泌されて基底膜様構造物として沈着する。したがって、本発明のF9胚性腫瘍細胞を、ゼラチン、フィブロネクチンまたはコラーゲンなどによってコートされた構造物上で培養し、分化誘導をおこなうことによって、上記構造物上に所望の蛋白質を含む基底膜様構造物を沈着することが可能となる。例えば、コラーゲンで作製したスポンジ上で本発明のF9胚性腫瘍細胞を培養し、分化誘導をおこなえば、基底膜様基質によって覆われた三次元構造物を作製することが可能となる。
また、細胞成分を0.5% TritonX−100、20mM NHOHを含むリン酸緩衝生理食塩水により溶解除去する事によって、無細胞基底膜様構造物を容易に得ることも可能である。
〔F9−/−LAMA5細胞培養上清からのラミニン−10の精製および精製ラミニン−10の用途〕
F9−/−LAMA5細胞をゼラチンコートした100mm培養皿 20枚上で培養した。各培養皿には、1×10個の細胞を蒔き、10%のFBSを含むDMEM培地中で培養をおこなった。このとき、各培養皿にDMEM培地を10ml加え、さらにレチノイン酸およびcAMPを、最終濃度が、それぞれ1μMおよび1mMとなるように加えた。培養開始72時間後に各培養皿の培地を新しい上記DMEM培地と交換した。培養開始120時間後に各培養皿中の培地を回収するとともに、各培養皿に新しい上記DMEM培地を10ml加え、さらに培養した。培養開始168時間後に、再び各培養皿中の培地を回収するとともに、各培養皿に新しい上記DMEM培地を10ml加え、さらに培養した。そして、培養開始240時間後に培地をすべて回収した。以上のようにして、600mlの培地を回収した。
この集められた600mlの培養液を、抗ラミニンα5モノクローナル抗体を固相化したカラムを用いて精製した。1回のカラム通過によりおよそ600μgのラミニン−10が精製された。
F9−/−LAMA5細胞およびF9+/−LAMA5が生産するラミニン−10は、αサブユニットがヒト由来であって、βおよびγサブユニットがマウス由来である。また、ラミニンは、複雑な糖修飾をうける3本のサブユニットからなる3量体蛋白質である。したがって、精製されたラミニンが生理活性を有するか否かということは重要な問題である。そこで、細胞伸展活性を指標として上記F9−/−LAMA5細胞培養上清から精製したラミニン−10の生理活性を測定した。
96穴プレート(Nunc社)に0nM、0.625nM、1.25nM、2.5nM、5nM,10nM、20nMまたは40nM(32μg/ml)のEHS腫瘍由来ラミニン(シグマ社)あるいは精製ラミニン−10を含むPBSを、1穴あたり50μlずつ加え、4℃で12時間のコーティング処理をおこなった。コーティング処理の後、96穴プレートを2%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝食塩水でブロッキング処理した。0.5%ウシ血清アルブミンを含むDMEM培地に、3×10細胞/mlの濃度となるようにHT1080ヒト線維肉腫細胞を懸濁し、この懸濁液100μlを上記96穴プレートに加え、COインキュベーター内で30分間インキュベートした。30分間のインキュベート中に96穴プレート上に接着した細胞を、3.7%のホルマリンを含むリン酸緩衝水溶液によって固定した。その後、Diff quik試薬によって染色し、細胞を観察した(Hayashi Y et al , Biochem Biophys Res Commun 2002,299:498-504参照)。
その結果、ラミニン−10では、2.5nM以上の濃度で培養皿をコーティングした場合、HT1080細胞は、細胞接着活性を示し、5nM以上の濃度で培養皿をコーティングした場合、HT1080細胞は、強い細胞伸展活性を示した。一方、EHS腫瘍由来のラミニンでは、10nM以上の濃度で培養皿をコーティングした場合、HT1080細胞は、細胞接着活性を示したが、40nMの濃度で培養皿をコーティングした場合においても、10nMの濃度のラミニン−10で培養皿をコーティングした場合と比べて、細胞伸展活性は弱かった。
したがって、本発明のF9−/−LAMA5細胞の培養上清から精製したラミニン−10は、生理活性を有すると共に、その活性は、EHS腫瘍から精製したラミニンの活性よりも高いことが明らかとなった。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以上のように、本発明にかかるF9胚性腫瘍細胞は、大量かつ安価にラミニンアイソフォームをはじめとする所望のタンパク質を生産することを可能とするため、培養皿に代表される各種培養装置や皮膚、肝臓および脾臓などに代表される各種人工組織または人工臓器、およびそれらの部品を製造する分野に利用できるのみならず、組織工学、発生工学および再生医学の分野において広く利用することが可能である。
本発明にかかるラミニンα1遺伝子改変F9胚性腫瘍細胞株を得るためのloxPターゲティングベクターおよびlox2272-loxPターゲティングベクターの構造を示す模式図である。 本発明にかかるF9−/−細胞の樹立方法を示すフローチャートである。 本発明にかかるラミニンα1遺伝子改変F9胚性腫瘍細胞株のサザンブロット法による解析結果を示す図である。 本発明にかかるF9+/−細胞の樹立方法を示すフローチャートである。 本発明にかかる遺伝子転換プラスミドの構造を示す模式図である。 本発明にかかるF9+/−EGFP細胞の樹立方法を示すフローチャートである。 本発明にかかるF9+/−EGFP細胞の分化誘導に伴うEGFPタンパク質およびEGFPmRNAの発現量の変化を示す図である。 本発明にかかるF9+/−LAMA5細胞の樹立方法を示すフローチャートである。 本発明にかかるF9−/−LAMA5細胞の樹立方法を示すフローチャートである。 本発明にかかるF9−/−LAMA5細胞が分泌するラミニン−10のウエスタンブロッティング法による解析結果を示す図である。 本発明にかかるラミニンα1遺伝子改変F9胚性腫瘍細胞株が分泌する基底膜様構造物の蛍光免疫組織化学法による解析結果を示す図である。 本発明にかかるラミニンα1遺伝子改変F9胚性腫瘍細胞株から精製したラミニン−10を用いた細胞接着アッセイの結果を示す図である。

Claims (11)

  1. 少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なF9胚性腫瘍細胞であって、
    一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座には、ラミニンα1遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列が設けられていることを特徴とするF9胚性腫瘍細胞。
  2. 他方の遺伝子座では、ラミニンα1遺伝子が破壊されていることを特徴とする請求項1に記載のF9胚性腫瘍細胞。
  3. 前記外来遺伝子挿入配列には、基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子を挿入することを特徴とする請求項1または2に記載のF9胚性腫瘍細胞。
  4. 前記基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子が、ラミニンα1、α2、α3、α4またはα5遺伝子であることを特徴とする請求項3に記載のF9胚性腫瘍細胞。
  5. 前記外来遺伝子挿入配列には、マーカー遺伝子が含まれることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のF9胚性腫瘍細胞。
  6. 前記マーカー遺伝子が、蛍光蛋白質をコードする遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子または分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子であることを特徴とする請求項5に記載のF9胚性腫瘍細胞。
  7. 請求項1ないし6の何れか1項に記載のF9胚性腫瘍細胞を用いる細胞外マトリックスの生産方法。
  8. 請求項1ないし6の何れか1項に記載のF9胚性腫瘍細胞を用いて、細胞分化誘導因子、分化阻害因子または抗癌剤をスクリーニングする方法。
  9. 少なくともタンパク質の生産に用いることが可能なF9胚性腫瘍細胞の作製方法であって、
    一対のラミニンα1遺伝子座のうち、一方の遺伝子座に、ラミニン遺伝子に代えて、ラミニンα1遺伝子のプロモーターの制御を受けて発現するように外来性遺伝子を挿入するための外来遺伝子挿入配列を組み込む工程を含むことを特徴とするF9胚性腫瘍細胞の作製方法。
  10. さらに、上記外来遺伝子挿入配列に、基底膜を構成するタンパク質または分泌タンパク質をコードする遺伝子を挿入する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載のF9胚性腫瘍細胞の作製方法。
  11. さらに、一対のラミニンα1遺伝子座のうち、他方の遺伝子座のラミニンα1遺伝子を破壊する工程を含むことを特徴とする請求項9または10に記載のF9胚性腫瘍細胞の作製方法。
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