JP2006302578A - 燃料電池の運転方法及び燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 過酸化水素(H2O2)による固体高分子電解質膜の局所的な劣化を防ぎ、固体高分子電解質膜及び燃料電池スタックの耐久性を向上させた燃料電池の運転方法を提供する。耐久性が向上し、さらに低コスト化した燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 固体高分子電解質膜の両面側に燃料電極と酸化剤電極とを配置して膜電極接合体とし、膜電極接合体の両面側にセパレータを配置して構成された単セルを含み、水素ガスを含む燃料ガスと酸素ガスを含む空気とを反応させて発電を行う燃料電池スタック2を備えた燃料電池の運転方法であって、規定のタイミングによって、固体高分子電解質膜中に白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を変えて、燃料電池の運転をすることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】 固体高分子電解質膜の両面側に燃料電極と酸化剤電極とを配置して膜電極接合体とし、膜電極接合体の両面側にセパレータを配置して構成された単セルを含み、水素ガスを含む燃料ガスと酸素ガスを含む空気とを反応させて発電を行う燃料電池スタック2を備えた燃料電池の運転方法であって、規定のタイミングによって、固体高分子電解質膜中に白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を変えて、燃料電池の運転をすることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車に代表される車輌などの搭載に適した燃料電池の運転方法及び燃料電池システムに関する。
燃料電池は、燃料として燃料ガス(例えば、水素ガス)を使用し、燃料ガスと酸化剤ガス(例えば、酸素ガス)とを電気化学的に反応させて発電する装置である。燃料電池は低公害であり、さらに発電効率も高いことから、内燃機関に代えて作動するモータ用の電源として燃料電池を利用する気運が高まっている。車輌搭載用の燃料電池は、小型、高出力であることが要求されることから、特に、分子中にプロトン交換基を持つ固体高分子電解質膜を電解質として用いた固体高分子型燃料電池の研究開発が進められている。
固体高分子型燃料電池は、発電の最小単位である単位セル(単セル)を複数個積層した燃料電池スタックから構成される。単セルは、固体高分子電解質膜の両面側に燃料電極と酸化剤電極とを配置して膜電極接合体(MEA)とし、膜電極接合体の両面側にセパレータを配置している。燃料電極と酸化剤電極とは、燃料ガスや生成物などを放出するガス拡散層と、触媒(例えば、Pt、Pt合金など)が担持されて、実際の電気化学的な反応場となる電極触媒層と、の2層の構造を有し、電極触媒層を固体高分子電解質膜側に配置している。
従来、電極触媒層としては、炭素粒子に触媒粒子(例えば、Pt粒子、Pt合金粒子など)が担持された複合粒子とプロトン伝導性ポリマからなる触媒組成物を薄くシート化したものが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。また、ガス拡散層としては、カーボン繊維から形成したカーボンペーパやカーボンクロス等から構成される基材に、撥水処理剤(例えば、フッ素系樹脂など)を含浸させて形成されたものが用いられている(例えば、特許文献2参照)。
上記固体高分子型燃料電池において、燃料電極に水素ガス(水素分子)が供給されると、水素はガス拡散層を通過して電極触媒層にまで達して、電極触媒層中の触媒(Pt粒子、Pt合金粒子など)表面で酸化反応を起こし、式1に示すように、水素から2個の水素イオンと2個の電子とが放出される。
燃料電極側: H2 → 2H+ + 2e- …(式1)
水素イオンは、固体高分子電解質膜中に入り、電解質膜中のクラスターは水を伴い酸化剤電極側に移動する。一方、放出された電子は外部回路を通り酸化剤電極に到達する。この電流は、電力として外部に取り出される。
水素イオンは、固体高分子電解質膜中に入り、電解質膜中のクラスターは水を伴い酸化剤電極側に移動する。一方、放出された電子は外部回路を通り酸化剤電極に到達する。この電流は、電力として外部に取り出される。
一方、酸化剤電極では、以下の式2に示すように、外部回路を経て到達した電子と、電解質膜中を移動してきた水素イオンと、酸化剤電極のガス拡散層を経て導入された酸素分子とが、触媒上で反応して水となる。
酸化剤電極側: 1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O + Q (反応熱) …(式2)
そして、燃料電池全体としては、以下の式3に示す化学反応が進行し、起電力が生じ、外部負荷に対して仕事がなされる。
そして、燃料電池全体としては、以下の式3に示す化学反応が進行し、起電力が生じ、外部負荷に対して仕事がなされる。
H2 + 1/2O2 → H2O + Q (反応熱) …(式3)
Journal of Applied electrochemistry,22, p.1-7 (1992) 特開2002−56851号公報
Journal of Applied electrochemistry,22, p.1-7 (1992)
しかしながら、長期に亘り燃料電池の運転を継続すると、燃料電極の触媒層中の触媒(例えば、Pt粒子など)が溶出し、溶出した白金イオン(Pt2+)が固体高分子電解質膜中に移動して、固体高分子電解質膜を劣化させてしまうという恐れを有していた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、すなわち、本発明の燃料電池の運転方法は、固体高分子電解質膜の両面側に燃料電極と酸化剤電極とを配置して膜電極接合体とし、膜電極接合体の両面側にセパレータを配置して構成された単セルを含み、水素ガスを含む燃料ガスと酸素ガスを含む空気とを反応させて発電を行う燃料電池スタックを備えた燃料電池の運転方法であって、規定のタイミングによって、固体高分子電解質膜中に白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を変えて、燃料電池の運転をすることを要旨とする。
また、本発明の燃料電池システムは、固体高分子電解質膜の両面側に燃料電極と酸化剤電極とを配置して膜電極接合体とし、膜電極接合体の両面側にセパレータを配置して構成された単セルを含み、水素ガスを含む燃料ガスと酸素ガスを含む空気とを反応させて発電を行う燃料電池スタックと、燃料電池スタックの固体高分子電解質膜中に、白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を規定のタイミングにより変える制御装置と、を備えることを要旨とする。
本発明の燃料電池の運転方法によれば、規定のタイミングによって白金バンドの位置を変えることができるため、過酸化水素(H2O2)による固体高分子電解質膜の局所的な劣化を防止し、固体高分子電解質膜及び燃料電池スタックの耐久性を向上させることができる。
本発明の燃料電池システムによれば、触媒層の構造や白金等の貴金属の担持量を変えることなく、固体高分子電解質膜の局所的な劣化を防げるため、耐久性が向上し、さらに低コスト化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態に係る燃料電池の運転方法及び燃料電池システムを図1〜図6により説明する。
本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの構成を図1に示す。図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料として水素ガスを使用し、水素ガスと酸素ガスを含む空気とを電気化学的に反応させて発電を行う燃料電池スタック2を設置し、燃料電池スタック2の固体高分子電解質膜中に存在する白金粒子が凝集して形成される、いわゆる白金バンドの位置を規定のタイミングで変える制御装置3と、を備える。
燃料電池スタック2の上流側には、酸素ガスを含む空気を供給する空気供給手段4と、水素ガスを供給する水素ガス供給手段5とが接続され、燃料電池スタック2の下流側には、水と未反応の水素ガスを排出する排出手段6が接続される。空気供給手段4は、燃料電池スタック2に接続された空気供給配管7にコンプレッサ8が設置されている。水素ガス供給手段5は、水素ガスタンク9を設置し、水素ガスタンク9と燃料電池スタック2とを連結する水素ガス供給配管10上にバルブ11が設置されている。さらに、空気供給配管7と水素ガス供給配管10とには加湿器12が接続され、酸素ガスを含む空気と水素ガスとを加湿している。また、排出手段6は、燃料電池スタック2に接続された水を排水する排水管13と、未反応の水素ガスを排出する排出管14とが接続され、排水管13にバルブ15が設置されている。
制御装置3は、規定のタイミングによって、固体高分子電解質膜中に存在する白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を変える装置である。白金バンドの位置を変えるためには、固体高分子電解質膜の両側の酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えることが好ましい。後述するが、制御装置3は、水素ガス供給手段5のバルブ11、加湿器12及び排水手段6のバルブ15に制御信号を送信し、水素ガスと酸素ガスとの分圧比を変えている。
まず、固体高分子電解質膜中に存在する白金粒子が凝集して形成された白金バンドの位置について説明する。
負荷サイクルにより燃料電池を耐久させて実験を行った後、膜のポスト分析を行うと、固体高分子電解質膜の厚さの中心よりもカソード側に、白金粒子が凝集して、白金バンドが形成されることが明らかになった。これは、燃料電池を負荷サイクルにより耐久させると、カソード側の触媒層中の白金(Pt)が溶出して白金イオン(Pt2+)となり、白金イオン(Pt2+)が固体高分子電解質膜中の濃度勾配によりアノード側に移動することに起因するものである。そして、図2に示すように、固体高分子電解質中では、カソード側から酸素ガスが拡散し、アノード側から水素ガスが拡散する。カソード側の触媒層から溶出した白金イオン(Pt2+)は、アノード側から拡散してきた水素ガスと反応すると還元され、白金イオン(Pt2+)は再結晶して白金(Pt)粒子となる。この白金(Pt)粒子は、固体高分子電解質膜中の特定の位置で凝集して白金バンド16となる。白金バンド16が形成される位置は、以下に説明するように、白金の混成電位と関係していることも判った。
図3は、固体高分子電解質膜中における白金の混成電位の分布を示す図である。なお、図中、縦軸は白金の混成電位を示し、横軸は固体高分子電解質膜の厚さ方向の位置を示す。横軸の0に近い位置はカソード側を意味し、数値が大きくなるとアノード側を意味する。固体高分子電解質膜中における白金の混成電位は、アノード側から拡散する水素の酸化反応と、カソード側から拡散する酸素の還元反応によって決定される。図3に示すように、アノード近傍の白金の混成電位とカソード近傍の白金の混成電位とには大きな電位差があり、アノード側からカソード側に向かうまでに、白金の混成電位が急激に高くなる場所Aが存在する。白金の混成電位が急激に高くなる位置Aに、いわゆる白金バンド16が形成されることが判明した。この理由として、白金イオン(Pt2+)は、低電位になると還元される速度が早く、さらに安定して存在する傾向があるからであり、図3に示すように、白金の混成電位が急激に高くなる場所A手前の低電位の位置で、白金(Pt)が優先的に析出、成長し、白金バンド16が形成されるものと考えられる。
固体高分子電解質膜中に白金バンド16が形成されて、白金バンド16中の白金粒子と酸素とが反応すると、中間生成物である過酸化水素(H2O2)が発生する。特に、過酸化水素(H2O2)は、低電位になると多量に発生する傾向があることも判明している(同志社大学、稲葉 稔博士、206thECS学会講演No.1885)。過酸化水素(H2O2)は、酸化力が強く、固体高分子電解質膜を破壊して劣化させてしまう恐れがある。さらに、過酸化水素(H2O2)は、以下の式に示すように、単セルを構成する構成部材(例えば、セパレータなど)から溶け出した金属イオン(例えば、Fe2+)の存在下でラジカル化される傾向も強くなる。
Fe2++H2O2→Fe3++OH-+OH・
ラジカル(OH・)は、固体高分子電解質膜の直鎖及び側鎖を攻撃すると、固体高分子電解質膜中で特異な結合が生じ、あるいは側鎖が切断されるなどの損傷が生じ、固体高分子電解質膜の本来の役目であるプロトン(H+)の移動に寄与しなくなる可能性がある。
ラジカル(OH・)は、固体高分子電解質膜の直鎖及び側鎖を攻撃すると、固体高分子電解質膜中で特異な結合が生じ、あるいは側鎖が切断されるなどの損傷が生じ、固体高分子電解質膜の本来の役目であるプロトン(H+)の移動に寄与しなくなる可能性がある。
このため、固体高分子電解質膜中に白金バンド16が形成されると、白金バンド16近傍の過酸化水素(H2O2)の濃度が高まり、白金バンド16周辺の固体高分子電解質膜が劣化し易くなる。
そこで、本発明の燃料電池システム1において、前述した制御装置3を設置し、規定のタイミングによって固体高分子電解質膜中の白金バンド16の位置を変えることにより、過酸化水素(H2O2)による固体高分子電解質膜の劣化を抑制するものである。
さらに、燃料電池システム1には劣化検出手段を設けても良い。この場合、劣化検出手段からの検出情報によって規定のタイミングを設定し、劣化していると判定されたときに、固体高分子電解質膜中の白金バンド16の位置を変えると良い。
劣化検出手段としては、例えば、開回路電圧(OCV:open circuit voltage)の観測、リーク電流の観測または排水の分析などが挙げられる。
図4は、開回路電圧(OCV)と燃料電池の運転時間との関係を示す図である。図4に示すように、燃料電池を一定時間運転すると(運転時間X、運転時間Y)、開回路電圧(OCV)は低下するが、運転時間X、運転時間Yが経過して開回路電圧(OCV)が低下した時点で、制御装置3により固体高分子電解質膜中の白金バンド16の位置を変えている。これにより、固体高分子電解質膜の局所での過酸化水素(H2O2)の発生を抑制することができる。
さらに、劣化検出手段として、図示しないが、セルの運転履歴を記録した運転履歴記録手段、あるいは、セルの運転時間を記録した運転時間記録手段を用いても良い。
運転履歴記録手段は、例えば、電位変動などの負荷変動を観測して記録したものであり、電位変動回数が一定値を超えた場合を規定のタイミングと設定し、白金バンド16の位置を変えるものである。規定のタイミングを運転履歴とすることにより、耐久性が改善されると同時に、性能への跳ね返り、制御装置3への負担を軽減することができる。
運転時間記録手段は、セルの運転時間を積算して記録したものであり、セルの運転積算時間が一定値を超えた場合を規定のタイミングとして、白金バンド16の位置を変えるものである。規定のタイミングを運転時間とすることにより、制御装置3への要求を簡略化することができる。
さらに、燃料電池の起動停止、燃費点運転、定格点運転等の燃料電池の運転モードを変更するタイミングを規定のタイミングに設定して、白金バンド16の位置を変えるよう、制御装置3を設定しても良い。運転モードが切り替わる短時間の間隔で白金バンド16の位置を頻繁に変えることにより、固体高分子電解質膜の劣化をより一層抑制することができる。
白金バンド16の位置を変えるためには、前述したように、固体高分子電解質膜の両側の酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えることが好ましいが、酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えるために、具体的には、制御装置3からバルブ11及び加湿器12に制御信号を送り、両極側の酸素ガスと水素ガスとの分圧比、両極の差圧、あるいは酸素ガス及び水素ガスの加湿量を変えると良い。
カソードとアノードの両極の差圧を調節した場合における、固体高分子電解質膜中における白金の混成電位分布の変化を図5に示す。なお、図5の縦軸は白金の混成電位、横軸は固体高分子電解質膜の厚さ方向の位置を示し、横軸の左側はアノード側、右側はカソード側を示す。図5に示すように、酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えてカソード側の酸素ガスの分圧が上昇すると、白金の混成電位の値が急激に上昇する位置Aはアノード側に移動し、波線に示す位置A´となる。この結果、固体高分子電解質膜中の白金バンド16は、アノード側に移動する。逆に、アノード側の水素分圧が上昇すると、白金の混成電位の値が急激に上昇する位置Aはカソード側に移動し、白金バンド16はカソード側に移動する。このため、カソードとアノードの両極のガス差圧を調節することにより、固体高分子電解質膜中の白金バンド16の位置を変えることができる。なお、カソードとアノードとの両極の差圧を調節する場合には、当然に固体高分子電解質膜が破壊されない程度のガス差圧に設定する必要がある。
次に、酸素ガスと水素ガスとの相対湿度を調整した場合における、固体高分子電解質膜中における白金の混成電位分布の変化を図6に示す。なお、図5と同様に、図6の縦軸は白金の混成電位、横軸は固体高分子電解質膜の厚さ方向の位置を示し、横軸の左側はアノード側、右側はカソード側を示す。図6に示すように、アノードガスの相対湿度が低下すると、白金の混成電位の値が急激に上昇する位置Aはカソード側に移動し、波線に示す位置A´となる。この結果、固体高分子電解質膜中の白金バンド16は、カソード側に移動する。逆に、カソードガスの相対湿度が低下すると、混成電位の値が急激に上昇する位置Aはアノード側に移動し、白金バンド16の位置もカソード側に移動する。
このように両極の差圧あるいは酸素ガス及び水素ガスの加湿量を変えて、酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えて白金バンド16の位置を変えることができる。
さらに、燃料電池システム1には、図示しない乱数発生器を設置しても良い。この乱数発生器から得られる均一分布の乱数の情報に基づいて規定のタイミングを設定して、運転条件を許容範囲内においてランダムに変更し、白金バンド16の位置を変えても良い。なお、この時、燃料電池の運転条件を許容範囲内でランダムに変更することはもちろん可能であるが、ランダムに変更すると、固体高分子電解質膜中に形成される白金バンドの位置をある範囲内で均一に分散することが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態に係る燃料電池システムによれば、規定のタイミングによって、固体高分子電解質膜中の白金バンドの位置を変えることにより、過酸化水素による局所的な膜の劣化を防止し、膜の寿命を延ばすことができる。
次に、本発明の実施の形態に係る燃料電池の運転方法を説明する。
本発明の実施の形態に係る燃料電池の運転方法は、水素含有燃料ガスと、酸素を含有するガスとを原料として発電を行い、固体高分子電解質膜を有する単セルを含む燃料電池スタックを備え、規定のタイミングによって、固体高分子電解質膜中に白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を変えて、燃料電池の運転をするものである。
白金バンドの位置を変えるタイミングとしては、前述したように、運転履歴、セル運転履歴記録、セル運転時間又は運転モードの切り替えなどのタイミングなどが挙げられる。また、例えば、開回路電圧(OCV:open circuit voltage)の観測、リーク電流の観測または排水の分析などを行い、セルが劣化したときのタイミングによって、白金バンドの位置を変えても良い。
さらに、本発明の実施の形態に係る燃料電池の運転方法においては、低電流密度領域、あるいは低外気温の環境下であるときに、白金バンドの位置を変えることが好ましい。
燃費点では燃料電池の稼働率が一番高いため、低電流密度領域であり流量が少ない状態であるときに、白金バンドの位置を変えることにより、圧力変化、湿度変更に伴うシステム(コンプレッサ、加湿器など)への負担を減らすことができる。この結果、性能に大きな影響を与えることなく、耐久性を大幅に向上することができる。
また、低外気温の環境では、燃料電池システムの運転条件の許容範囲が広くなるため、運転条件を大幅に変えた場合であっても性能に大きな影響を与えることなく、耐久性を大幅に向上させることができる。
さらに、白金バンド16の位置を変えるために、前述したように、例えば、両極側の酸素ガスと水素ガスとの分圧比、両極の差圧、あるいは酸素ガス及び水素ガスの加湿量を変えて、固体高分子電解質膜の両側の酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えることが好ましい。また、片極(例えば、水マネに影響の小さいアノード側)の流れ方向を逆転して、固体高分子電解質膜の両側の酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えても良い。水素ガスと酸素ガスがそれぞれの流路で上流から下流まで流されると、圧損と反応ガスの消費により、水素ガスと酸素ガスの分圧が減少する。また、燃料電池の使用寿命中、両極の流れ方向を長期間固定すると、固体高分子電解質膜の両側の水素ガスと酸素ガスとの分圧比の変動幅が狭くなり、固体高分子電解質中に白金粒子が局所的に集中する。しかし、片極の流れ方向を逆転することにより、固体高分子電解質膜両側の水素ガスと酸素ガスとの分圧比を大きく変更できるため、白金バンド16の位置をより広い幅に分散させることができる。
従って、本実施の形態によれば、触媒層の構成や白金担持量を変えることなく、固体高分子電解質膜の局所的な劣化を防ぎ、固体高分子電解質膜及び燃料電池スタックの寿命を延ばし、この結果、耐久性を高めることができる。
なお、従来、一般的な固体高分子型燃料電池の運転方法として、可変負荷に対する運転をする場合、負荷の大きさに応じてガスの圧力を変更することがある。この場合にも、燃料電池の出力に応じて結果的に両極端さ圧が変動し、白金バンドが変更される可能性があるが、本実施の形態によれば、同じ運転条件(同じ出力)とした場合においても白金バンドの位置を意図的に変更することが可能である。さらに、本実施の形態によれば、固体高分子電解質膜の劣化を検出した上で、白金バンドの位置を意図的に変更することも可能となるものである。
1…燃料電池システム,
2…燃料電池スタック,
3…制御装置,
4…空気供給手段,
5…水素ガス供給手段,
6…排出手段,
7…空気供給配管,
8…コンプレッサ,
9…水素ガスタンク,
10…水素ガス供給配管,
11…バルブ,
12…加湿器,
13…排水管,
14…排出管,
15…バルブ,
2…燃料電池スタック,
3…制御装置,
4…空気供給手段,
5…水素ガス供給手段,
6…排出手段,
7…空気供給配管,
8…コンプレッサ,
9…水素ガスタンク,
10…水素ガス供給配管,
11…バルブ,
12…加湿器,
13…排水管,
14…排出管,
15…バルブ,
Claims (18)
- 固体高分子電解質膜の両面側に燃料電極と酸化剤電極とを配置して膜電極接合体とし、前記膜電極接合体の両面側にセパレータを配置して構成された単セルを含み、水素ガスを含む燃料ガスと酸素ガスを含む空気とを反応させて発電を行う燃料電池スタックを備えた燃料電池の運転方法であって、
規定のタイミングによって、前記固体高分子電解質膜中に白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を変えて、燃料電池の運転をすることを特徴とする燃料電池の運転方法。 - 前記規定のタイミングは、セルの劣化が検出されたタイミングであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転方法。
- 前記セルの劣化は、セルの運転履歴により検出されることを特徴とする請求項2記載の燃料電池の運転方法。
- 燃料電池の運転時間が一定値を超えたときに、前記セルの劣化が検出されたタイミングとすることを特徴とする請求項2記載の燃料電池の運転方法。
- 前記規定のタイミングは、運転モードを切り替えるタイミングであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転方法。
- 水素ガスと酸素ガスとの分圧比を変えて、前記白金バンドの位置を変えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
- 燃料電極と酸化剤電極の両極側の差圧を変えて、前記酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
- 燃料電極と酸化剤電極の両極側の流路に流れる酸素ガスと水素ガスの湿度を変えて、前記酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
- 燃料電極と酸化剤電極とに流れるガスの方向を逆転させて、前記酸素ガスと水素ガスとの分圧比を変えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
- 低電流密度領域であるときに、白金バンドの位置を変えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
- 低外気温であるときに、白金バンドの位置を変えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の燃料電池の運転方法。
- 固体高分子電解質膜の両面側に燃料電極と酸化剤電極とを配置して膜電極接合体とし、前記膜電極接合体の両面側にセパレータを配置して構成された単セルを含み、水素ガスを含む燃料ガスと酸素ガスを含む空気とを反応させて発電を行う燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックの固体高分子電解質膜中に、白金粒子が凝集して形成される白金バンドの位置を規定のタイミングにより変える制御装置と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。 - 前記制御装置は、運転モードを切り替える度に、白金バンドの位置を変える制御信号を送信することを特徴とする請求項12記載の燃料電池システム。
- さらに、前記燃料電池スタック中のセルの劣化を検出するセル劣化検出手段を備え、
前記制御装置は、前記セル劣化検出手段から検出される劣化検出情報に基づき、白金バンドの位置を変える制御信号を送信することを特徴とする請求項12記載の燃料電池システム。 - 前記セル劣化検出手段は、セルの運転履歴を記録した運転履歴記録手段であることを特徴とする請求項14記載の燃料電池システム。
- 前記セル劣化検出手段は、セルの運転時間を記録した運転時間記録手段であることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池システム。
- さらに、乱数発生器を備え、
前記制御装置は、前記乱数発生器から得られる乱数情報に基づき、白金バンドの位置を変える制御信号を送信することを特徴とする請求項12記載の燃料電池システム。 - 前記制御装置は、白金バンドの位置を変える制御信号を送信して、酸素ガスと水素ガスの分圧比を変えることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
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