JP2006299387A - チタン−チタン酸化物複合体 - Google Patents

チタン−チタン酸化物複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】 工業的生産性に優れ、十分な表面粗度をもち、かつ低次のチタン酸化物の含有量が少ないチタン−チタン酸化物複合体を提供する。
【解決手段】 チタンもしくはこれらの金属を主成分とする合金を、ハロゲン原子を含有するイオンを含む電解質溶液中で電解酸化することにより、層状構造のチタン酸化物およびそれに連なるチタン酸化物の構造間に空隙を含むことで十分な表面粗度をもち、低次のチタン酸化物の含有量が少ないチタン−チタン酸化物複合体を製造することができる。
【選択図】図1

Description

本発明はチタン−チタン酸化物複合体に関する。
チタンは実用金属中、最も耐蝕性が強く、比重も鉄鋼などと比較して小さく、比強度も非常に優れている金属であり、工場プラント用材料、医療用材料などに広く使用されている。そして近年、その高い耐蝕性により屋根材を始めとして、建築材料への利用が急速に進んでいる。
また、その酸化体であるチタニアは優れた紫外線吸収性および吸着性等の特性を有することから、顔料・塗料・化粧料・紫外線遮断材・触媒・触媒担体および各種のエレクトロニクス材料等に利用されている。さらに最近では、チタン酸化物が紫外線を吸収した際に発現する光触媒効果および両親媒性効果が注目されており、有害有機物の分解・大気汚染物質の除去・殺菌・セルフクリーニング効果等が確認されている。
さらに、チタニアは各種センサー、複写機、光発電装置等に用いられる光電変換素子への適用が検討されている。例えば、1991年にグレッツェルらが発表した色素増感型太陽電池は、ルテニウム錯体によって分光増感されたチタニア多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池であり、シリコン太陽電池並みの性能が得られることが報告されている(非特許文献1参照)。この技術によれば、チタニア等の安価な酸化物半導体微粒子をその支持体である透明電極上に塗布することで成膜し、色素を吸着させるだけで優れた光電変換素子となるため、安価な光電変換素子を提供することができるという利点がある。
ビィ・オレガン 外,「ネイチャー(Nature)」,1991年,第353巻,p.737−739
チタンもしくはチタンを主成分とする合金の表面にチタニア等のチタン酸化物の皮膜を形成させる方法としては、熱酸化法、化学酸化法、電解酸化法などがあるが、中でもチタン酸化物皮膜の均一性、再現性などに優れた電解酸化法が一般に利用されている。チタンの陽極酸化に関する研究は古くから行われているが、得られる皮膜の大部分は1μm以下の薄膜で、色も干渉色を示し、チタンへの装飾用途に使用されている一方、投影面積に対する表面積の割合、すなわち表面粗度が小さく、チタン酸化物の有する様々な特性を発揮するには至っていない。
電解酸化により得られるチタン酸化物皮膜の表面積を増加させる方法として、チタンを火花放電が発生する電圧以上の電圧で陽極酸化し、数μm以上の厚さを有する硬い灰色系の多孔質の厚膜型電解酸化皮膜を形成する方法が報告されている。しかし、これらのチタン電解酸化皮膜は通常、Ti2n−1(nは正の整数)で示される、TiOやTiなどの低次チタン酸化物が副生することが知られており、それが原因で電解酸化皮膜の光触媒活性の発現等が阻害されていると言われている。
本発明はこのような実状に鑑み成されたものであり、工業的生産性に優れ、十分な表面粗度をもち、かつ低次のチタン酸化物の含有量が少ないチタン−チタン酸化物複合体を提供するものである。
すなわち、本発明は、チタンもしくはチタンを主成分とする合金の最表面に層状構造のチタン酸化物が一層以上存在し、かつその層状構造とそれに連なるチタン酸化物の構造間に空隙が存在することを特徴とするチタン−チタン酸化物複合体に関する。
また、本発明は、チタン酸化物の層状構造の厚さが5nm〜100nm、その層状構造とそれに連なるチタン酸化物の構造間に存在する空隙が2nm〜100nmであることを特徴とする前記記載のチタン−チタン酸化物複合体に関する。
また、本発明は、チタン酸化物を形成するチタン原子の90%以上が、価数が4価であることを特徴とする前記記載のチタン−チタン酸化物複合体に関する。
また、本発明は、チタンもしくはチタンを主成分とする合金を、ハロゲン原子を含有するイオンを含む電解質溶液中で電解酸化することにより製造することを特徴とする前記記載のチタン−チタン酸化物複合体に関する。
また、本発明は、前記記載のハロゲン原子が塩素原子であることを特徴とする前記記載のチタン−チタン酸化物複合体に関する。
以下、本発明について詳述する。
本発明のチタン−チタン酸化物複合体は、以下に記載する方法で、チタン金属もしくはチタンを主成分とする合金(以下、チタン合金という。)を電解酸化することにより得ることができる。
本発明において用いられるチタンまたはチタン合金としては、酸素、鉄、窒素、水素等で材質を調製した工業用純チタンや、ある程度のプレス成形性を有するチタン合金を用いることができ、JIS(日本工業規格)1種、2種、3種、4種の各種工業用純チタンや、ニッケル、ルテニウム、タンタル、パラジウム等を添加し耐食性を向上させた合金、アルミニウム、バナジウム、モリブデン、錫、鉄、クロム、ニオブ等を添加した合金等をその一例として挙げることができる。チタンまたはチタン合金の結晶型としては、単結晶、多結晶にかかわらず、α型、α+β型、β型を用いることができる。また形状に関しては、チタンまたはチタン合金そのものが板状、ロッド状、メッシュ状等の様々な形状に加え、板、ロッド、メッシュといった形状の異種導電性材料表面にチタンまたはチタン合金を膜として成長させたもの、板、ロッド、メッシュといった形状の半導体もしくは絶縁性材料表面にチタンまたはチタン合金を膜として成長させたもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、表面の平滑性に関しては、電解酸化工程においては、複雑な形状の表面構造であってもチタニアを成長させることが可能であり、その平滑性は制限されない。
本発明において電解酸化は、電解質溶液中でチタンまたはチタン合金を陽極、任意の導電材料を陰極とし、電圧をかけることにより、陽極表面上にチタンの酸化物を形成する技術であり、電解酸化処理中にチタンまたはチタン合金が陽極である状態が一度でもあればよく、陽極と陰極を交互に実施する場合も含む。
電解酸化は、通常、印加電圧が5〜200V、好ましくは10〜150V、より好ましくは14〜110Vであり、電流密度が0.2〜500mA/cm、好ましくは0.5〜100mA/cmの範囲で、時間は1分〜24時間、好ましくは5分〜10時間行われる。電解中、これらの印加電圧や電流密度を変化させることも可能であり、この際は周波数が1×10−6Hz〜1×10Hzのパルスを印加して電解を行う。
また、陽極酸化時の電解質溶液の温度は0〜50℃が好ましく、より好ましくは0〜40℃である。
電解酸化に用いられる電解質溶液としては、チタンまたはチタン合金をアノード分極した際に、チタンまたはチタン合金を溶解させることができる溶解力が必要である。本発明において用いる電解質溶液には、ハロゲン原子を含有するイオンが含まれることが必須である。ここでいうハロゲン原子を含有するイオンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の原子のいずれかを含有するイオンであり、具体的には、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜塩素酸イオン、亜臭素酸イオン、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン等が挙げられる。これらのイオンは、単独でもよいし、二種以上の混合物として用いることも可能である。
本発明においては、ハロゲン原子としては塩素原子が特に好ましい。
これらのイオンを含む電解質溶液としては、水系、非水系のいずれも使用可能であるが、水系が好ましい。具体的には、ハロゲン原子を含有するイオンを形成する酸もしくは塩の水溶液が用いられる。その濃度は、酸もしくは塩として、0.0001〜10容量%が好ましく、より好ましくは0.0005〜5容量%、さらに好ましくは0.0005〜1容量%の範囲である。
電解質溶液には、ハロゲン原子を含有するイオンを形成する酸もしくは塩とは異種の酸性化合物あるいは塩基性化合物を含有させても良い。このような異種の酸性化合物、塩基性化合物を含有させることにより、陽極酸化速度を促進または抑制するといった、反応速度を制御することができる。
かかる酸性化合物としては、前述のハロゲン化物もしくはその酸化体イオンの酸の他、硫酸、硝酸、酢酸、過酸化水素、シュウ酸、リン酸、クロム酸、グリセロリン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
かかる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
その濃度は、ハロゲン原子含有イオンに対して、モル比で0.001〜1000の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜50、さらに好ましくは0.04〜5の範囲で用いられる。
電解質溶液には、水溶性のチタン化合物を含有させても良い。水溶性のチタン化合物は一般的に水溶液中で加水分解してチタニアを生成するため、これを含有させることにより、電解酸化により生じたチタン酸化物の表面に、さらに加水分解によりチタニアが生成することで、チタン酸化物の電解質溶液への再溶解を防ぎ、構造を強固にすることができる。
かかる水溶性のチタン化合物としては、チタンイソプロポキシド等のチタンアルコキシド、三塩化チタン、四塩化チタン、フッ化チタン、テトラフルオロチタン酸アンモニウム、硫酸チタン、硫酸チタニル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その濃度は、ハロゲン原子含有イオンに対して、モル比で0.001〜1000の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜50、さらに好ましくは0.04〜5の範囲で用いられる。
また、電解質溶液には、チタニア微粒子を含有させても良い。チタニア微粒子を含有させることにより、生成したチタン酸化物が電解質溶液に再溶解することを防ぎ、チタン酸化物を強固にすることができる。
かかるチタニア微粒子としては、粒径が0.5〜100nmのものが好ましく、より好ましくは2〜30nmのものが使用される。具体的には、チタン鉱石から液相法により調製したものや、気相法、ゾル・ゲル法、液相成長法で合成したものを挙げることができる。ここで、気相法とは、チタン鉱石を、硫酸等の強酸で、加熱加水分解して得られる含水酸化チタンを800℃〜850℃で焼成してチタニアを製造する方法である。液相法とは、塩化チタンに酸素及び水素を接触させて、チタニアを製造する方法である。ゾル・ゲル法とは、チタンアルコキシドをアルコール水溶液中で加水分解させてゾルを生成させ、さらに、該ゾルに加水分解触媒を加えて、放置してゲル化させ、該ゲル化物を焼成してチタニアを製造する方法である。液相成長法とは、フッ化チタンやテトラフルオロチタン酸アンモニウム、硫酸チタニル等の加水分解でチタニアを得る方法である。
上記の方法により電解酸化を行い、チタンもしくはチタン合金の最表面に、一層の厚さが5nm〜100nmの層状構造のチタン酸化物が一層以上存在し、かつその層状構造とそれに連なるチタン酸化物の構造間に、一つの大きさが2nm〜100nmの空隙が存在するチタン−チタン酸化物複合体を得ることができる。
本発明の層状構造とは、図1のモデル図に示すような、チタンもしくはチタン合金の基板に対してチタン酸化物シート状に二次元の平行方向に成長した構造のことであり、本発明のチタン−チタン酸化物複合体では、最表面にこうした構造を一層以上有することを特徴としている。その一層の厚さは製造条件等により異なるが、5nm〜100nmであり、好ましくは7nm〜50nm、さらに好ましくは10nm〜40nmである。この最表面の層状構造のチタン酸化物と連なるチタン酸化物の構造は、製造方法等により異なるが、同様の層状構造である場合も、それ自体が2nm〜100nmの空隙を有する多孔質構造である場合もある。
本発明のチタン酸化物の層状構造とそれに連なるチタン酸化物間の空隙とは、図1〜図4のモデル図に示すような、生成したチタン酸化物の間に生成する空隙3のことであり、場所によって図1のように凹凸の少ない層状構造間の空隙や、図2のような凹凸が多く波打ったように見える層状構造間の空隙、図3のように凹凸の多い波打った層状構造が上下で重なり網目のように見える構造の空隙、図4のように網目構造がさらに繋がることで生成するチューブ構造が密集した構造の空隙、およびこれらの構造が混ざり合った構造の空隙がこれに当たる。その大きさは場所や製造条件等により異なるが、2nm〜100nmであり、好ましくは5nm〜50nm、さらに好ましくは5nm〜30nmである。チタン−チタン酸化物複合体の界面の構造、大きさの測定方法としては、その断面構造を電子顕微鏡により観察する方法等が挙げられる。
上記のように得られたチタン酸化物は、低次酸化物の含有量が少なく、具体的にはチタン酸化物を形成するチタン原子の90%以上が、価数が4価であり、全体としてはTiOに近い組成となっている。このことはX線光電子分光法等で確認できる。
上記のように得られたチタン酸化物は、必要により、加熱処理、加圧処理、電子線照射、光照射等の後処理を行うことで、任意の結晶型に結晶化させることができる。例えば、加熱処理の場合、100℃〜1200℃、好ましくは150℃〜800℃の温度で、10分〜500分、好ましくは10分〜300分処理を行うことで結晶化する。これらの処理後もチタン酸化物の構造は崩壊しない。
得られたチタン−チタン酸化物複合体上には、表面積を増大させる目的でさらに酸化物半導体を形成してもよい。酸化物半導体を形成する方法としては、真空蒸着法、化学的蒸着法、スパッタリング法などの気相法、スピンコート法、ディップコート法、液相成長法などの液相法、溶射法や固相反応を用いた方法などの固相法、熱処理法、半導体微粒子コロイドを塗布する方法が挙げられる。
半導体微粒子の粒径は一般にnm〜μmのオーダーであるが、投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子の粒径は好ましくは5〜200nm、より好ましくは8〜100nmである。また、分散液中の二次粒子の平均粒径は好ましくは0.01〜10μmである。
半導体微粒子を塗布する方法としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法等、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分にできるものとしてワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が挙げられる。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましい。湿式印刷方法としては凸版、オフセット及びグラビアの三大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から液粘度やウェット厚さに応じて成膜方法を選択してよい。
半導体微粒子をチタン−チタン酸化物複合体上に塗布した後、半導体微粒子同士の電気的接触を向上させるとともに、塗膜強度やチタン−チタン酸化物複合体との密着性を向上させるために、加熱処理するのが好ましい。加熱処理においては、100℃〜1200℃、好ましくは300℃〜800℃の温度で、10分〜500分、好ましくは30分〜160分処理を行う。
加熱処理後、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理、またはフッ化チタンやヘキサフルオロチタン酸アンモニウム、硫酸チタニルを含む水溶液を用いた結晶の液相成長を施すことで、半導体微粒子同士及びチタン−チタン酸化物複合体と半導体微粒子との密着性をさらに向上させることもできる。
上記のようにして調製したチタン−チタン酸化物複合体は、触媒もしくは触媒担体として好適に使用することができる。本発明のチタン−チタン酸化物複合体は通常の電解酸化皮膜と比べて、比表面積が格段に大きく、低次酸化物が少ないために生じる電子、正孔、フォノンあるいはそれらの複合体をトラップする不純物サイトが少なく、それらが伝播する効率が良い。そのため、紫外線吸収剤、遮蔽剤、吸着剤や光活性触媒等に使用した場合、特に光触媒に使用した場合に、従来と比較して、それらの作用の大幅な向上が期待できる。なお、触媒担体として使用する場合には、通常、白金、ニッケル、銀等の金属を担持して使用することができる。
上記のように作製されたチタン−チタン酸化物複合体は色素増感型光電変換素子に好ましく用いることができる。色素増感型光電変換素子は、導電層、感光層、電荷輸送層および透明対極導電層をこの順に積層した構成を有する。本発明では導電層にチタン−チタン酸化物複合体のチタン部分を用い、感光層にチタン−チタン酸化物複合体のチタン酸化物部分を用いる。光電変換素子に強度を付与するために、透明導電層の下地として透明基板を設けてもよい。なお、本発明では対極導電層および任意で設ける基板からなる層を対極と呼び、対極は透明であることを要する。このような光電変換素子のうち、発電をさせるために外部負荷に接続したものが光電池であり、光学的情報のセンシングを目的に作られたものが光センサーである。光電池の中で、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなるものを光電気化学電池と呼び、また太陽光による発電を主目的とするものを太陽電池と呼ぶ。
上記光電変換素子において、色素により増感したチタン酸化物を含む感光層に入射した光は色素等を励起し、励起された色素等中の高エネルギーの電子はチタン酸化物の伝導体に渡され、さらに拡散して導電層に到達する。このとき色素は酸化体となっている。光電池において、導電層中の電子が外部回路で仕事をしながら透明対極導電層及び電荷輸送層を経て色素の酸化体に戻り、色素が再生する。感光層はアノードとして働き、透明対極導電層はカソードとして働く。それぞれの層の境界では、各層の構成成分同士が相互に拡散混合してもよい。
チタン−チタン酸化物複合体は、適切な増感色素を吸着させることによりチタン部分が導電層に、チタン酸化物部分が感光層になる。感光層において、色素増感したチタン酸化物は感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生じる。光吸収及びこれによる電子及び正孔の発生は主として色素において起こり、チタン酸化物はこの電子を受け取り伝達する役割を担う。すなわち、チタン酸化物は光励起下で伝導体電子によるアノード電流を与えるn型半導体である。
感光層に用いるチタン酸化物は、金属化合物の溶液で処理してもよい。金属化合物としては、例えばスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、ハフニウム、ニオブ、タンタル、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、アルミニウム、亜鉛、ストロンチウム、タングステン、ジルコニウム及びスズからなる群から選ばれる金属のアルコキシド、ハロゲン化物等が使用できる。金属化合物の溶液は通常水溶液またはアルコール溶液である。なお、処理とはチタン酸化物に色素を吸着させる前に、該チタン酸化物と上記溶液をある時間接触させる操作をいう。接触後にチタン酸化物に上記金属化合物が吸着していてもしていなくてもよい。処理の具体的方法としては、チタン酸化物を該溶液に浸漬する方法が好ましい例として挙げられる。また、溶液をスプレー状に一定時間吹き付ける方法も適用できる。浸漬する際の溶液の温度は特に限定されないが、典型的には−10℃〜70℃であり、好ましくは0℃〜40℃である。浸漬する時間は特に限定されず、典型的には1分から24時間であり、好ましくは30分から15時間である。浸漬の後、チタン酸化物を水等の溶媒で洗浄してもよい。また、浸漬やスプレー処理によってチタン酸化物に付着した物質の結合を強めるために加熱してもよい。加熱条件は、上述した条件と同様に設定すればよい。
感光層に用いる増感色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し半導体を増感し得るものであれば特に限定されないが、金属錯体色素、有機色素、天然色素、半導体が好ましい。色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基などの官能基を有するものが好適に用いられる。金属錯体色素としては、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛、水銀の錯体(例えばメリクルクロム)や、金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。また、有機色素としては、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。色素として用いることができる半導体としては、i型の光吸収係数が大きなアモルファス半導体や直接遷移型半導体、量子サイズ効果を示し、可視光を効率よく吸収する微粒子半導体が好ましい。通常、各種の半導体や金属錯体色素や有機色素の一種、または光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
色素を金属酸化物に付着させる方法としては、溶媒に色素を溶解させた溶液を、金属酸化物上にスプレーコートやスピンコートなどにより塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。またはチタン酸化物を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることも出来る。浸漬する時間は色素が十分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは10分〜30時間、より好ましくは10分〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。好ましくは溶液にする場合の色素の濃度としては、1〜1000mmol/L、好ましくは10〜500mmol/L程度である。
用いる溶媒は特に制限されるものではないが、水及び有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、チタン酸化物に共吸着させてもよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等のステロイド化合物やスルホン酸塩類等が挙げられる。
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶媒等を用いて行うのが好ましい。
色素を吸着させた後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて、チタン酸化物の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としては、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としてはテトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する。本発明で用いる電荷輸送材料は、イオンが関わる電荷輸送材料であっても、固体中のキャリア移動が関わる電荷輸送材料であってもよい。イオンが関わる電荷輸送材料としては、酸化還元対イオンが溶解した溶液、酸化還元対の溶液をポリマーマトリックスのゲルに含浸したゲル電解質組成物、固体電解質組成物等が挙げられ、固体中のキャリア移動が関わる電荷輸送材料としては、電子輸送材料や正孔輸送材料等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は複数併用してもよい。
イオンがかかわる電荷輸送材料としての電解液は、電解質、溶媒及び添加物から構成されることが好ましい。電解液に用いる電解質の例としては、ヨウ素とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、臭素と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr、CaBr等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合わせ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等が挙げられる。中でも、Iと、LiI又はピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩とを組み合わせた電解質が好ましい。電解質は混合して用いてもよい。
溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられる溶媒であればいずれも使用することができる。具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが好ましい。また、常温溶融塩類も用いることができる。ここで、常温溶融塩とは、常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示すものである。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
また、4−t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を前述の溶融塩電解質組成物や電解液に添加することが好ましい。塩基性化合物を電解液に添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2mol/Lである。溶融塩電解質組成物に添加する場合、塩基性化合物はイオン性基を有することが好ましい。溶融塩電解質組成物全体に対する塩基性化合物の質量比は、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。
ポリマーマトリックスとして使用できる材料としては、高分子マトリックス単体で、あるいは可塑剤の添加や、支持電解質の添加、または可塑剤と支持電解質の添加によって固体状態またはゲル状態が形成されれば特に制限は無く、一般的に用いられるいわゆる高分子化合物を用いることができる。
上記高分子マトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、フッ化ビニリデンなどのモノマーを重合または共重合して得られる高分子化合物を挙げることができる。またこれらの高分子化合物は単独で用いても良く、また混合して用いても良い。これらの中でも、特にポリフッ化ビニリデン系高分子化合物が好ましい。
また、イオン伝導性電解質の代わりに、有機固体正孔輸送材料、無機固体正孔輸送材料、或いはこの両者を組み合わせた材料を使用することもできる。
好ましく使用できる有機正孔輸送材料の例としては、トリフェニレン誘導体類、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアセチレン及び/又はその誘導体、ポリ(p−フェニレン)及び/又はその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及び/又はその誘導体、ポリチエニレンビニレン及び/又はその誘導体、ポリチオフェン及び/又はその誘導体、ポリアニリン及び/又はその誘導体、ポリトルイジン及び/又はその誘導体等の導電性高分子も好ましく使用することができる。その際、ドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を正孔輸送材料に添加してもよい。また、金属酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CFSON]のような塩を添加してもよい。
無機正孔輸送材料としてはp型無機化合物半導体を用いることができ、そのバンドギャップは好ましくは2eV以上、より好ましくは2.5eV以上である。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは、色素の正孔を還元するためには色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なるが、一般に好ましくは4.5〜5.5eV、より好ましくは4.7〜5.3eVである。好ましいp型無機化合物半導体は1価の銅を含む化合物半導体であり、その例としてはCuI、CuSCN、CuInSe、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe、CuO、CuS、CuGaS、CuInS、CuAlSe等が挙げられる。中でも、CuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。他のp型無機化合物半導体の例としては、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi、MoO、Cr等が挙げられる。
電荷輸送層は2通りの方法のいずれかにより形成できる。1つ目の方法は感光層と対極を貼り合わせておき、その間隙に液状の電荷輸送層を挟み込む方法である。2つ目の方法は感光層上に直接電荷輸送層を付与する方法で、対極はその後付与することになる。
前者の方法の場合、電荷輸送層を挟み込む際には、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス、または常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
後者の方法において湿式の電荷輸送層を用いる場合は、通常未乾燥のまま対極を付与しエッジ部の液漏洩防止措置を施す。またゲル電解質組成物を用いる場合には、これを湿式で塗布した後で重合等の方法により固体化してよい。固体化は対極を付与する前に行っても後に行ってもよい。電解液、湿式有機正孔輸送材料、ゲル電解質組成物等からなる電荷輸送層を形成する場合は、前述の半導体微粒子層の形成方法と同様の方法を利用できる。
固体電解質組成物や固体正孔輸送材料を用いる場合には、真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷輸送層を形成し、その後対極を付与することもできる。有機正孔輸送材料は真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等により電極内部に導入することができる。無機固体化合物はキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解析出法、無電解メッキ法等により電極内部に導入することができる。
対極は導電性材料からなる対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。支持基板は、好ましくは透明なガラス基板又はプラスチック基板であり、これに上記の導電剤を塗布又は蒸着して用いることができる。色素増感光電変換素子は対極側から光を照射するので、光透過率が大きいことが必要であり、具体的には光透過率は30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。一方、対極の表面抵抗は低いほうが好ましいが、光透過率が大きくなるほど対極の表面抵抗は大きくなり、好ましくは50Ω/sq.以下、より好ましくは20Ω/sq.以下である。
対極導電層に用いるのは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属や、炭素材料、導電性有機物等の比抵抗の小さな材料であれば制限されないが、透明性の低い材料を用いた場合は、全体の光透過率を向上させるため、支持基板上に導電材の細線パターンを形成して表面抵抗が低く、かつ透明性の高い対極を作製する必要がある。
また、透明性の高い導電性材料としては、錫や亜鉛などの金属酸化物に、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Indium Zinc Oxide(IZO(In:Zn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などの金属酸化物からなる導電膜等などがあり、これに金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)や炭素等を少量併用しても良い。
対極は電荷輸送層上に直接導電剤を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基板の導電層側を貼り付けて設置すればよい。対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いても良い。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。透明基板上に金属リードを蒸着、スパッタリング等で設置し、その上にフッ素をドープした酸化スズ、ITO膜等からなる透明対極導電層を設けるのが好ましい。また、透明対極導電層を透明基板に設けた後、透明対極導電層上に金属リードを設置することも好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は、好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とする。
本発明によれば工業的生産性に優れ、十分な表面粗度をもち、かつ低次のチタン酸化物の含有量が少ないチタン−チタン酸化物複合体が提供される。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
[実施例1]
本発明にかかるチタン−チタン酸化物複合体を以下のような手順で製作した。
まず、大きさが5cm×0.5cm、厚さ1mmのチタン基板(純度99.7重量%)を用意し、アセトン中で5分間超音波洗浄を施した。次に、濃度が0.3容量%、温度が16℃の過塩素酸水溶液からなる電解質水溶液中でチタンを20Vで30分間陽極酸化することによってチタン−チタン酸化物複合体を得た。
得られたチタン−チタン酸化物複合体の断面をイオンミリングにより研磨を行い、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行ったところ、図5に示すようにチタンの最表面に厚さ約40nmの層状構造が存在することが確認された。またこの層状構造と連なって上部にさらに層状構造、または波打った層状構造が存在することが確認された。これらの層構造の間に存在する空隙は、場所によってサイズは異なるが、平均するとおおよそ20nmであった。
得られたチタン酸化物中のチタン原子の価数を、X線光電子分光法を用いて確認したところ、Ti4+が93.6%、Ti3+が6.4%という結果であった。
[実施例2]
本発明にかかるチタン−チタン酸化物複合体を以下のような手順で製作した。
まず、まず、大きさが6cm×1.5cm、厚さ1mmのチタン板(純度99.7重量%)を用意し、エタノール中で5分間超音波洗浄を施した。次に、濃度が0.01容量%、温度が16℃の塩酸水溶液からなる電解質水溶液中でチタンを3.5mA/cmで1時間定電流電解酸化することによってチタン表面にチタン酸化物を得た。この電解での最大電圧は29Vであった。
得られたチタン−チタン酸化物複合体の断面をイオンミリングにより研磨を行い、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行ったところ、チタン板表面の平行方向に、厚さ約30nmの層状構造のチタン酸化物が10層以上連なって存在することが確認された。層間に存在する空隙は、場所によってサイズは異なるが、平均するとおおよそ10nmであった。
得られたチタン酸化物中のチタン原子の価数を、X線光電子分光法を用いて確認したところ、Ti4+が93.9%、Ti3+が6.1%という結果であった。
[実施例3]
本発明にかかるチタン−チタン酸化物複合体を以下のような手順で製作した。
まず、大きさが6cm×1.5cm、厚さ1mmのチタン板(純度99.7重量%)を用意し、エタノール中で5分間超音波洗浄を施した。次に、濃度が0.01容量%、温度が16℃の過塩素酸水溶液からなる電解質水溶液中で、チタンを電流密度が6mA/cmで〜0mA/cm、100Hzの方形波を印加して1時間電解酸化することによってチタン表面にチタン酸化物を得た。
得られたチタン−チタン酸化物複合体の断面をイオンミリングにより研磨を行い、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行ったところ、チタンの最表面に厚さ約20nmの層状構造が存在することが確認された。また、層構造同士の密着が顕著であり、層間に存在する空隙は50nmの網目構造が多数確認された。
得られたチタン酸化物中のチタン原子の価数を、X線光電子分光法を用いて確認したところ、Ti4+が97.6%、Ti3+が2.4%という結果であった。
[比較例1]
チタン−チタン酸化物複合体を以下のような手順で製作した。
まず、大きさが6cm×1.5cm、厚さ1mmのチタン板(純度99.7重量%)を用意し、エタノール中で5分間超音波洗浄を施した。次に、濃度が0.5容量%、温度が16℃の硫酸水溶液からなる電解質水溶液中でチタンを25Vで30分間陽極酸化することによってチタン−チタン酸化物複合体を得た。得られた複合体は青色を呈していた。得られたチタン−チタン酸化物複合体の断面をイオンミリングにより研磨を行い、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行ったところ、厚さ約20nmの緻密な酸化皮膜が存在することが確認された。しかしながら、この皮膜には層状構造の連なりは見られなかった。
得られたチタン酸化物中のチタン原子の価数を、X線光電子分光法を用いて確認したところ、チタンとの界面に近い箇所ほどTi4+の割合が少なく、界面から離れるにつれてその割合が増加する傾向が見られ、平均するとTi4+が72.4%、Ti3+が18.2%、Ti2+とTiを合わせて9.4%という結果であった。
本発明のチタン−チタン酸化物複合体の一例を示す断面概略図である。 本発明のチタン−チタン酸化物複合体の一例を示す断面概略図である。 本発明のチタン−チタン酸化物複合体の一例を示す断面概略図である。 本発明のチタン−チタン酸化物複合体の一例を示す断面概略図である。 実施例1で得られたチタン−チタン酸化物複合体の電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1 チタンもしくはチタン合金
2 チタン酸化物
3 空隙

Claims (5)

  1. チタンもしくはチタンを主成分とする合金の最表面に層状構造のチタン酸化物が一層以上存在し、かつその層状構造とそれに連なるチタン酸化物の構造間に空隙が存在することを特徴とするチタン−チタン酸化物複合体。
  2. 層状構造の厚さが5nm〜100nm、その層状構造とそれに連なるチタン酸化物の構造間に存在する空隙が2nm〜100nmであることを特徴とする請求項1記載のチタン−チタン酸化物複合体。
  3. チタン酸化物を形成するチタン原子の90%以上が、価数が4価であることを特徴とする請求項1または2に記載のチタン−チタン酸化物複合体。
  4. チタンもしくはチタンを主成分とする合金を、ハロゲン原子を含有するイオンを含む電解質溶液中で電解酸化することにより製造することを特徴とする請求項1〜3に記載のチタン−チタン酸化物複合体。
  5. ハロゲン原子が塩素原子であることを特徴とする請求項4に記載のチタン−チタン酸化物複合体。
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