JP2006298782A - 合成ガスを用いたジメチルエーテル合成触媒によるジメチルエーテル製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バイオマスを熱化学的に分解することにより水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを生成し、それを用いてジメチルエーテルを製造する方法であって、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを酸素共存状態でゾル−ゲル法により製造されたジメチルエーテル合成触媒上にて大気圧以上で反応させてジメチルエーテルを合成するジメチルエーテルの製造方法。
【選択図】図1
Description
最近は、バイオマスをガス化して水素などのガス燃料製造や、メタノール、ジメチルエーテルなどの液体燃料を製造する方法が提案されている。
例えば、バイオマスを用いてジメチルエーテル等を合成する方法としては、バイオマスを水(水蒸気を含む)とともに熱処理して水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を含むガスを取り出し、このガスから触媒を用いてジメチルエーテルやメタノールを合成する方法が提案されている(特許文献1参照)。
以下H2・CO混合ガスという)とタール分(即ち炭素を主成分とする固形や液状の物質)が生成される。
このバイオマスの熱化学的分解では、主に次の4つの化学反応によりバイオマス(CxHyOz)がH2及びCOに分解すると考えられている(後述する特許文献2参照)。
CxHyOz→(x−z)C+zCO+(y/2)H2…(1)
C+H2O→H2+CO…(2)
CO+H2O→CO2+H2…(3)
C+CO2→2CO…(4)
因みに、式(3)の反応は平衡反応であるが、上記の条件ではH2Oが多量に存在し、CO2は式(4)の反応によりCOになって減少するため、反応が右向きに進む。
3H2+3CO→CH3OCH3+CO2…(5)
しかし、特許文献1にも記載されているように、これまでのガス化法では、H2・CO合成ガスの組成は、一般的に、ジメチルエーテル生成にはH2が不足する。
バイオマスをガス化して、生成したH2とCOからなる合成ガスから直接ジメチルエーテルを製造する、一体化したジメチルエーテル製造には、適切なジメチルエーテル合成触媒を用いて大気圧以上で効果的にジメチルエーテルを製造するのが望ましい。
一般に木質系バイオマスをガス化して得られるガスは酸素が共存する場合が多い。
なお、本発明における大気圧以上とは、ゲージ圧で0MPa以上の圧力を意味するものとする。
図1は、バイオマスによるジメチルエーテルの製造方法を分かりやすく説明するための模式図である。
本発明における、合成ガス生成工程Aでは、バイオマスを水蒸気、又は水蒸気及び二酸化炭素と共にガス化炉に供給して加熱して、先述した式(1)〜式(4)等の化学反応により熱化学的に分解してガス化して合成ガスを生成させる。
より具体的に言えば、例えば、スクリューフィーダーなどの供給手段から固形状(例えば木粉状)のバイオマスがガス化炉に供給できる。
何故なら固定床型は実験室規模のガス化実験に際し作製が容易で、且つタールの発生量が少なくなるからである。
また、バイオマスがガス化しないうちに反応管内を落下してしまうのを防止するために、ガス化炉の反応管の内部に目皿(即ち複数の目を有する受け皿状のもの)が配置されている。
バイオマスは、水蒸気とともに供給手段1から供給されると、先述した式(1)〜式(4)等の化学反応が起こって、バイオマスが熱化学的に分解されH2・CO合成ガスが生成されるのである。
ガス化炉内の温度は、温度センサーによって温度管理されており、この温度範囲に保たれていることが好ましい。
この場合、ガス化炉の反応管の内部に配置された目皿(即ち複数の目を有する受け皿状のもの)の上にガス化触媒(例えば1〜2mm大の顆粒状のペレット)が積層されている。
ガス化触媒としては、例えば、Ni、Fe、Mn、Cr、Ru、Pt又はPd等を担持したγ−アルミナ触媒やZrO2等が好ましく用いられる。
先述した合成ガス生成工程Aにおいて、バイオマスを熱化学的に分解させる式(1)〜式(4)の化学反応のうち、式(2)の反応(即ちC+H2O→H2+CO)は比較的大きなエンタルピー変化を伴う吸熱反応である。
そのため、式(2)の反応を生じさせるためには大きな熱量が要求され、ガス化炉の電気炉にかかる負担が大きなものとなる。
また、燃焼によりバイオマス中の炭素分が減るため、タール分の発生量を減らすことにもつながる。
そのため、供給する酸素の量をある程度制限する必要がある。
また、供給した酸素がバイオマスのガス化による合成ガス生成工程Aですべてバイオマスと反応するとしても、それによってジメチルエーテルの合成に何ら役立たないCO2が発生したのではあまり意味がない。
発明者等の実験によれば、ガス化炉内の酸素の体積濃度が5vol%以下になるように酸素を供給すると、良好にCOが生成されることが分かっている。
バイオマスのガス化による合成ガス生成工程Aの供給手段において、前述の酸素の代わりに空気を用いて供給することもでき、実用的な面においても好ましい。
触媒の耐久性を考えた場合、ジメチルエーテルを製造時の水素及び一酸化炭素を含む合成ガスに共存する酸素の体積濃度は5vol%以下が好ましく、3vol%以下がより好ましい。
尚、N2やCH4は、後述するジメチルエーテル合成工程Bにおける反応には何ら関与せず影響を与えるものでもないし、ジメチルエーテル合成触媒を劣化・失活させるものでもないので、H2・COを含む合成ガス中に含まれていても何ら問題はない。
そのため、ジメチルエーテルの合成工程に移る前に、従来の公知の方法でこうした未反応のタール分やチャー等を除去してH2・COを含む合成ガスを精製することもできる。
この貯蔵タンク9は、合成ガス生成工程AにおけるH2・COを含む合成ガスの生成速度が、ジメチルエーテル合成工程Bにおけるジメチルエーテルの合成速度(即ちH2・CO含有合成ガスの消費速度)より大き過ぎる場合等にH2・CO含有合成ガスを一旦貯蔵するバッファーの役割をするものである。
貯蔵タンク9を出たH2・CO含有合成合ガスは、貯蔵タンクに貯蔵された後、反応炉に送られる。
また、H2・CO含有合成ガスを加圧下で反応させるときは、H2・CO含有合成ガスは、例えば昇圧器8により必要に応じて加圧され、貯蔵タンクに貯蔵された後、ジメチルエーテル合成工程Bの反応管12に送られる。
ジメチルエーテル合成触媒としては、ゾル−ゲル法によって製造された銅系アルミナ触媒、例えば、Cu担持γ−アルミナ触媒(Cu/γ−アルミナ触媒)、Cu、Zn担持γ−アルミナ触媒(Cu、Zn/γ−アルミナ触媒)、Cu、Mn担持γ−アルミナ触媒(Cu、Mn/γ−アルミナ触媒)、Cu、Fe担持γ−アルミナ触媒(Cu、Fe/γ−アルミナ触媒)、Cu、Pd担持γ−アルミナ触媒(Cu、Pd/γ−アルミナ触媒)等が好ましく用いられる。
また、Cu/γ−アルミナ触媒ではCuを1〜50wt%含むことが好ましい。
Cu、Zn担持γ−アルミナ触媒では、Cu+Znを2〜50wt%含み、ZnとCuとの比率は2/1〜1/100の範囲であるのが好ましい。
Cu、Mn担持γ−アルミナ触媒では、Cu+Mnを2〜50wt%含み、MnとCuとの比率は2/1〜1/100の範囲であるのが好ましい。
Cu、Fe担持γ−アルミナ触媒では、Cu+Feを2〜50wt%含み、FeとCuとの比率は2/1〜1/50の範囲であるのが好ましい。
Cu、Pd担持γ−アルミナ触媒では、Cu+Pdを2〜30wt%含み、PdとCuとの比率は1/1〜1/50の範囲であるのが好ましい。
またCr、Zn担持γ−アルミナ触媒では、Cr+Znを2〜30wt%含み、ZnとCrとの比率は1/1〜1/10の範囲であるのが好ましい。
これによって、加水分解反応を起こさせ、均一なゾルを形成する。
このゾルに、触媒活性成分を含む溶液、すなわち硝酸銅、および硝酸亜鉛などの添加金属硝酸塩水溶液および少量のグリコールなどを水などに均一に分散させ、徐々に酸を加え,pH1〜3に調整し、加水分解反応を起こさせ、均一なゾルを形成することも可能である。
一般的には、エバポレータで混合溶液を蒸発乾燥させることによってゲル化する。さらに、このゲルを乾燥、焼成後、還元処理することによってジメチルエーテル合成触媒を調製する。
そのために耐熱性も高く、シンタリングしにくい。
このため、含浸法や共沈法等で調製された触媒が、共存する酸素によって酸化され、発生する熱でシンタリングしてしまい活性が低下するのに比べ、触媒活性が高く、そのうえシンタリングが起きにくく、酸素共存下でも安定な活性を有するものと考えられる。
また、ゾル−ゲル法によって調製されたジメチルエーテル合成触媒では、ある程度の酸素濃度が存在する方が、酸素がないときに比べて、活性が高い。
これは、ある程度の酸素濃度の場合は、活性なCuの他に活性なCu+やCu2+も生成するからと考えている。
150℃より低いと化学反応が促進されにくく、350℃より高いと温度制御が困難となる。
このような条件下で、ジメチルエーテル合成触媒上で先述した式(5)の化学反応が有効に進行し、H2・COを含む合成ガス中のH2とCOとが効率よくジメチルエーテルに合成されるのである。
合成されたジメチルエーテルは常温で気体であるが、H2・CO含有合成ガス中のN2やCO2、CH4(或いは残存するH2やCO)と比較して沸点が−24.8℃と高いため、冷却して容易に分離することができる。
さて、上記のように、ジメチルエーテルは、先述した式(5)(即ち3H2+3CO→CH3OCH3+CO2)の反応式に沿って合成される。
つまり、H2とCOのモル比(即ち〔H2〕/〔CO〕)が1(=3/3)になるように生成されれば、H2やCOが余ることなくすべてジメチルエーテルに合成される。
そのため、合成ガス生成工程Aで生成されるH2とCOのモル比を1に近づけるように、バイオマス中の炭素に対する水蒸気のモル比を調整することが好ましい。
本発明のジメチルエーテル合成触媒を用いれば、大気圧以上に加圧し、150〜350℃の温度範囲で反応させれば、H2とCOのモル比(即ち〔H2〕/〔CO〕)が0.5〜3の範囲では比較的効率良くジメチルエーテル生成量特性が得られる。
そして、単位時間当たりにバイオマスガス化による合成ガス生成工程Aに供給されるバイオマスの重量から、バイオマス中の炭素の単位時間当たりのモル数(以下〔C〕という)を計算する。
実用的にはバイオマス中の炭素に対する水蒸気のモル比〔H2O〕/〔C〕が0.5以上になるようにするのが好ましい。
より好ましくは0.5〜8の範囲がよい。
0.5より小さいとタール改質が十分に促進されずバイオマスのガス化率の低下となる。
一方、モル比が8より大きいと式(3)の水性ガスシフト反応が進み過ぎ、ジメチルエーテル合成に必要なCOの生成量が減少する。
モル比が2以上であれば、COの生成が減少し、H2とCOのモル比(〔H2〕/〔CO〕)が0.5以上になり、高いジメチルエーテル生成特性が得られる。
例えば、図1に示した実験装置は、本発明のバイオマスによるジメチルエーテルの製造方法を説明するために示したものであるが、本発明を実施するものである限り原理的に同じであれば他の形態のものを採用することは当然可能である。
実際、実用化の段階では、装置の大規模化やそれに伴う形態の変更等が必要であろう。
尚、本発明は、これらの実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
〔実施例1〕
バイオマスとしては、0.1〜0.25mm大に細粉化したコナラ材を用い、キャリアガスはN2ガスを用いた。
バイオマスガス化による合成ガス生成工程Aにおいては、上記のモル比〔H2O〕/〔C〕が4.0になるように水蒸気を供給して、大気圧状態、950℃でガス化させた。
H2…35.0vol%
CO…35.0vol%
CO2…15.0vol%
CH4…7.0vol%
O2…0.3vol%
N2…7.0vol%
また、〔H2〕/〔CO〕モル比は1であった。
ジメチルエーテル合成工程Bでは、ジメチルエーテル合成触媒としてCu−Zn(36−4wt%)/γ−Al2O3ゾル−ゲル触媒(150μm以下に粉砕)2.0gを用いて、200℃でジメチルエーテルの合成を今回は常圧で行った。
合成ガス中に0.43vol%の酸素を含有するときは、4時間ほどの反応で安定なジメチルエーテル合成特性を示し、選択性も96%以上だった( 図2,図3参照(CO2、CH4フリー)) 。
また、酸素が存在しないときも、多くのジメチルエーテル合成、選択性が見られた。
ジメチルエーテル合成は加圧下での反応のほうが望ましいが,今回は常圧で行った。
追加実験として、バイオマスガス化による合成ガス生成工程Aにおいて、モル比〔H2O〕/〔C〕が4.0になるように水蒸気に加えて二酸化炭素を供給して、大気圧状態、950℃でガス化させた。
この場合も、図2及び図3とほぼ同じような結果が出た。
更なる追加実験として、合成ガス中に5.6vol%の酸素を含有させた場合の実験も行ったが、この場合、ジメチルエーテルの生成速度は、反応時間の経過にもかかわらず零に近かった。
市販のCu−Zn(50−50wt%)触媒(日揮化学製N211)1.0gとAl2O3(住友化学工業製BK103)1.0gを物理的に混合した粉体混合触媒(150μm以下)2.0gを用いて、実施例1と同じ条件でジメチルエーテルの合成を行った。
酸素が共存しないときは、4時間程の反応でジメチルエーテルの合成が見られたが、酸素が存在すると、24時間の反応中、ほとんどジメチルエーテルの合成はみられなかった。(図3参照)
バイオマス炭素分のジメチルエーテルへの変換率は、以下の通りであった。
実施例1…19.4%
比較例1…0.0%
尚、変換率とは、実験装置に供給したバイオマス中の炭素(C)のモル数に対する、生成されたジメチルエーテル中の炭素(C)のモル数の割合である。
実施例1と比較例1を比較すると、ゾル−ゲル法で調製された触媒の場合は、酸素共存下でも顕著なジメチルエーテル合成がなされるが、従来の触媒では、顕著な特性低下となり、殆どジメチルエーテル生成がみられなくなる。
また、合成ガス生成工程で水と共に適量の二酸化炭素を加えると、〔H2〕/〔CO〕モル比も1に近づき、バイオマス炭素分のジメチルエーテルへの変換率も向上する。
B…ジメチルエーテル合成工程
1…供給手段
2…反応管
3…電気炉
4…目皿
5…セラミックボール
6…温度センサー
7…積算流量計
8…昇圧器
9…貯蔵タンク
10…温度センサー
11…ジメチルエーテル合成触媒
12…反応管
13…電気炉
Claims (8)
- バイオマスを熱化学的に分解することにより水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを生成し、それを用いてジメチルエーテルを製造する方法であって、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスをゾル−ゲル法により製造されたジメチルエーテル合成触媒上にて大気圧以上で反応させてジメチルエーテルを合成することを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
- バイオマスを熱化学的に分解することにより水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを生成し、それを用いてジメチルエーテルを製造する方法であって、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを酸素共存状態でゾル−ゲル法により製造されたジメチルエーテル合成触媒上にて大気圧以上で反応させてジメチルエーテルを合成することを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
- 酸素共存状態の酸素濃度が5vol%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の合成ガスによるジメチルエーテルの製造方法。
- ゾル−ゲル法により製造されたジメチルエーテル合成触媒が、Cuに加え、更にZn、Mn、Fe、Cr、Pdからなる活性成分を1種類以上、γ−アルミナに担持されていることを特徴とする請求項2に記載の合成ガスによるジメチルエーテルの製造方法。
- 150〜350℃の温度範囲において反応させることを特徴とする請求項2に記載の合成ガスによるジメチルエーテルの製造方法。
- 水素と一酸化炭素のモル比を1に近づくようにバイオマス中の炭素に対する水蒸気のモル比を調整することを特徴とする請求項2記載の合成ガスによるジメチルエーテルの製造方法。
- 水素及び一酸化炭素を含む合成ガスが、バイオマスを水蒸気及び二酸化炭素と800〜1200℃で反応させることにより生成されることを特徴とする請求項2記載の合成ガスによるジメチルエーテルの製造方法。
- 水素及び一酸化炭素を含む合成ガスが、バイオマスを水蒸気と800〜1200℃で反応させることにより生成させることを特徴とする請求項2に記載の合成ガスによるジメチルエーテルの製造方法。
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