JP2006294933A - 有機太陽電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板1上に少なくとも第1の電極2、配向制御層3、平面構造の有機分子を含む単層または複数層からなり前記配向制御層3に接する有機光電変換層4および第2の電極5が順次積層され、前記配向制御層3は、前記有機分子の平面的な分子面を基板表面と略平行方向に配列させる機能を有し、かつ前記第1の電極2と共有結合している有機太陽電池を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
しかしながら、上記非特許文献1の手法を用いて有機太陽電池を作製した場合、PTCDAからなる配向機能膜は真空蒸着法により形成されているため、配向機能膜と陽極(ITOまたはSnO2)の結合が弱く、素子の耐久性が低下してしまうことが懸念される。
また、本発明の別の観点によれば、基板上に少なくとも第1の電極、配向制御層、平面構造の有機分子を含む単層または複数層からなり前記配向制御層に接する有機光電変換層および第2の電極を順次積層する工程を有し、前記配向制御層は、気相反応により前記第1の電極上に共有結合して形成され、前記有機光電変換層は、蒸着により前記配向制御層上に形成される有機太陽電池の製造方法が提供される。
また、本発明の有機太陽電池の製造方法によれば、電気的特性および耐久性に優れた上記有機太陽電池を作製することができることに加え、配向機能層の形成を気相反応により行うため、液相反応の場合では必要な溶媒の乾燥除去プロセスを省くことができる。この結果、液相反応にて配向機能層を形成した場合に生じる溶媒の残留に由来する膜質の悪化およびピンホールの生成によるリーク電流の増大といったデバイス性能への悪影響を回避することができる。
以下、図1の本発明に係る有機太陽電池の概略構造を示す断面図を参照しながら、有機太陽電池の各構成要素について説明する。
基板1は有機太陽電池の支持体となるものであり、当該分野の一般的な基板材料を用いることができ、例えば石英、ガラス、金属等からなる基板を用いることができる。
陽極2としては、当該分野の一般的な陽極材料を用いることができ、例えばインジウム・スズ酸化物(ITO)、Au、Ag等の仕事関数の大きな導電性材料を用いることができる。
配向制御層3は、陽極の表面に形成された膜厚1〜1000Å(好ましくは1〜50Å)の単層膜である。この配向制御層は、シランカップリング系化合物、チオール系化合物あるいは酸クロライド系化合物を用いて形成することができ、中でもシランカップリング系化合物が好ましい。
シランカップリング系化合物は、陽極と共有結合により化学結合することのできるチオール系化合物や酸クロライド系化合物に比して、より強固な共有結合を形成することができるため、有機太陽電池の耐久性および寿命をより向上させることができる。また、シランカップリング系化合物は、太陽光を透過するITOのような透明電極上への共有結合も良好であるため、透明電極の全面にわたって配向制御層を形成して太陽光の利用効率を上げることができる。なお、酸クロライド系化合物として例えばフェニルアセチルクロライドを用いることができ、陽極がAuやAgといった金属である場合には、金属原子との直接的な共有結合が可能なチオール系化合物として例えばベンジルメルカプタンを用いることができる。
上記シランカップリング系化合物は、下記の一般式(I)の構造を有するものが好まし
い。ここで、R1、R2およびR3は加水分解して水酸基を生じる置換基、Xはアルキレン鎖、Yはπ電子共役系を有する置換基である。
基を生じる基R1、R2およびR3としては、メトキシ、エトキシ、プロピキシ等の炭素数1〜5個程度のアルコキシル基が挙げられ、中でもメトキシ、エトキシが好ましい。
本発明において、配向制御層を構成する分子のπ共役面が基板表面に対して略平行方向に配列(配向)するとは、上記なす角度が0〜35度の範囲で前記π共役面が配列(配向)することを意味する。
トリエトキシシランが好ましいものとして挙げられる。
有機光電変換層4は、配向制御層の表面に形成された単層(膜厚1nm〜1000nm(好ましくは10nm〜100nm))または複数層(合計膜厚1nm〜2000nm(好ましくは10nm〜200nm))の膜からなり、受光することにより電気を発生する。
有機光電変換層としては、フタロシアニン系分子またはポルフィリン系分子を用いて形成することができる。フタロシアニン系分子としては、フタロシアニン骨格を有する分子であって、例えば分子中心が無金属、もしくはCu、 Zn、 Co、 Ni、 Pb、 Pt、 Fe、 Mg 等の二価の金属、もしくはAlCl、 InCl、 GaCl 等のハロゲン原子が配位した三価の金属、もしくはVO、 TiO等の酸素が配位した金属であるものが挙げられる。
単層の場合、銅フタロシアニン分子(CuPc)を用いてp導電型層を形成することができる。このとき、銅フタロシアニン分子からなる層が、薄膜X線回折において2θ=26.6±0.2度かつ27.5±0.2度の範囲に回折ピークを示すことがより好ましい。
2層の場合、前記p導電型層上に、C60を用いてn導電型層を形成することができる。
3層の場合、前記p、n導電型層上に、バソフェナントロリン誘導体(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン:BCP)を用いて励起子ブロック層を形成することができる。
上記2層および3層構造の例はp−n接合型であるが、例えばCuPc層、CuPc/C60混合層、C60層、BCP層を順に積層することで、p−i−n型の構造を作製することも可能である。なお、本発明において、各フタロシアニン系分子やC60やBCPは市販品(例えばアルドリッチ社製)を用いることができる。
陰極6としては、当該分野の一般的な陰極材料を用いることができ、例えば仕事関数の小さなAlやMgAg合金、MgIn合金等が用いられる。
上記構成の有機太陽電池は、以下のようにして製造することができる。
まず、基板1上に陽極2を真空蒸着法やスパッタリング法により形成する。
次いで、形成された陽極2の表面に、配向制御機能を有する配向制御層の形成用材料(好ましくはシランカップリング系化合物)を揮発させ、気相中で接触させて化学反応させることにより、陽極2と共有結合した配向制御層3を形成する。
続いて、配向制御層3の表面に、光電変換機能を有する有機光電変換層の形成用材料(好ましくはフタロシアニン系分子)を用いて真空蒸着により有機光電変換層4を形成する。必要ならば他の有機材料を用いて順次真空蒸着により2層目以降を形成して、有機光電変換層4を複数層に形成する。
その後、有機光電変換層4の表面に、陰極6を真空蒸着やスパッタリングなどにより形成して、目的の有機太陽電池を作製することができる。なお、陰極6の表面を基板や樹脂フィルム等にて被覆してもよい。
シランカップリング系化合物を用いる場合、陽極(例えばITO)表面と容易に共有結合させるために、予め陽極表面に水酸基を付加させることが好ましい。陽極表面に水酸基を付加させる方法としては、酸素プラズマアッシング処理後に超純水に浸す手法等が挙げられる。
シランカップリング系化合物と陽極表面との反応では、先ずシランカップリング系化合物のアルコキシル基が加水分解して水酸基に変わり、この水酸基が陽極表面の水酸基と反応(脱水重合)する。この際、前述の酸素プラズマアッシング処理が適切に行われていれば、陽極表面が多数の水酸基で覆われているため、シランカップリング系化合物の3つの水酸基のうちの多くが陽極上の水酸基と反応し、陽極と強固な化学結合で連結することができる。なお、上述したように陽極がAuやAgといった金属である場合には、陽極表面に水酸基を付加させる工程を省略し、金属原子との直接的な共有結合が可能なチオール系化合物を用いて配向制御層を形成することができる。
図1に示す構造の有機太陽電池を以下の方法で作製した。
まず、縦25mm×横25mm×厚さ0.7mmのガラス基板上にITOを膜厚150nmで堆積して陽極を形成した。次に、ITO陽極表面にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして塩酸にてエッチングして陽極を所望の形状にパターニングした。続いて、クロロホルム中で陽極を超音波洗浄し、さらにアセトンおよびエタノール中でそれぞれ陽極を超音波洗浄した。その後、ブランソン/IPC4000を用いてITO陽極表面に酸素プラズマアッシング処理を150℃、50Wで15分間行い、清浄な陽極表面を露出させた。その後、陽極を5分間超純水に浸し、共有結合を生じやすい水酸基を多数有する陽極表面を形成した。
ン(シランカップリング系化合物:アヅマックス社製)を、耐熱耐圧性を有するテフロン(登録商標)製の容器中に入れ、この容器を防爆オーブンにて100℃で加熱してベンジルトリエトキシシランを揮発させ、90分間陽極表面と気相中にて反応させて配向制御層を形成した。次いで、反応後の基板をアセトン溶液にて10分間超音波洗浄し、未反応のベンジルトリエトキシシランを除去した。
また、得られた配向制御層の膜厚を分光エリプソメトリー測定(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製HS−190モデルを用いた)にて評価すると、5.0Åであった(量子化学計算にて算出した膜厚は4.3Å)。また、量子化学計算の結果から、配向制御層に含まれるベンゼン環のπ共役面は基板表面(平面)に対し23度傾いていることが分かった。
陽極上への配向制御層の形成工程が、陽極上にPTCDA(アルドリッチ社製)を用いて真空蒸着(蒸着速度0.1Å/s、真空度5×10-6Torr)により膜厚1nmの配向制御膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機太陽電池を作製した。
この比較例1の有機太陽電池にAM1.5G 100mW/cm2の擬似太陽光を基板側から照射し、その特性を測ると、Voc=0.51V、Isc=3.91mA/cm2、 ff=0.48および η=0.96%であった。また、同条件の擬似太陽光照射下で3日間大気中に放置した後に再び特性を測ると、Voc=0.50V、 Isc=1.35mA/cm2、 ff=0.26および η=0.18%であり、変換効率の減少量は82%と大きかった。
陽極上への配向制御膜の形成工程において、下記構造式(III)のフェニルトリメト
キシシラン(シランカップリング系化合物:アヅマックス社製)を用い、80℃で60分間陽極と気相反応させて配向制御膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の有機太陽電池を作製した。
2 第1の電極(陽極)
3 配向制御層
4 有機光電変換層
5 第2の電極(陰極)
Claims (11)
- 基板上に少なくとも第1の電極、配向制御層、平面構造の有機分子を含む単層または複数層からなり前記配向制御層に接する有機光電変換層および第2の電極が順次積層され、
前記配向制御層は、前記有機分子の平面的な分子面を基板表面と略平行方向に配列させる機能を有し、かつ前記第1の電極と共有結合していることを特徴とする有機太陽電池。 - 配向制御層が、シランカップリング系化合物から構成された請求項1に記載の有機太陽電池。
- シランカップリング系化合物が、式(I)
の構造を有する請求項2に記載の有機太陽電池。 - 式(I)において、Xがメチレン基である請求項3に記載の有機太陽電池。
- 式(I)において、Yが、基板平面に対し略平行方向に配列可能な平面的分子面を有す
る置換基である請求項3または4に記載の有機太陽電池。 - 式(I)において、Yがアリール基である請求項5に記載の有機太陽電池。
- シランカップリング系化合物が、式(II)
- 有機光電変換層における配向制御層と接している層が、フタロシアニン系分子からなる請求項1〜7の何れか1つに記載の有機太陽電池。
- フタロシアニン系分子が、銅フタロシアニン分子である請求項8に記載の有機太陽電池。
- 銅フタロシアニン分子からなる層が、薄膜X線回折において2θ=26.6±0.2度かつ27.5±0.2度に回折ピークを示す請求項9に記載の有機太陽電池。
- 基板上に少なくとも第1の電極、配向制御層、平面構造の有機分子を含む単層または複数層からなり前記配向制御層に接する有機光電変換層および第2の電極を順次積層する工程を有し、
前記配向制御層は、配向制御層の形成用材料が気相中で前記第1の電極表面と反応し共有結合して形成し、
前記有機光電変換層は、有機光電変換層の形成材料が前記配向制御層上に蒸着して形成することを特徴とする有機太陽電池の製造方法。
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