JP2006290267A - 燃料蒸気抑制部材を有する燃料貯留装置 - Google Patents

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充 大澤
Yoshiyuki Morita
善幸 森田
Ayako Omori
彩子 大森
Manabu Hatano
学 畑野
Takahiro Imamura
貴博 今村
Shigeo Hishiro
茂夫 樋代
Shoichi Kitamoto
昌一 北本
Koichi Hidano
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Abstract

【課題】 燃料の蒸気圧上昇を抑制し、かつ、蓄熱材による燃料の被毒・燃料流通経路の詰まりを防止することができる燃料貯留装置を提供する。
【解決手段】 燃料を貯留するタンクを有する燃料貯留装置であって、タンクの容器壁は、蓄熱カプセルを含有しないポリエチレン層、バリア層、および蓄熱カプセルを含有する蓄熱カプセル層を内側から順に積層したことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料貯留装置に係り、特に、燃料貯留装置における燃料蒸気発生を抑制する技術に関する。
自動車エンジン等の内燃機関においては、ガソリン等の高揮発性燃料を燃料タンク内に貯留し、エンジン等に供給して用いている。ガソリンは高い揮発性を有するため、燃料タンク内で気化し、タンク内の蒸気圧が過度に上昇するおそれがある。特に、エンジンおよび燃料タンク周囲の温度が上昇した場合、ガソリンの気化が促進されてタンク内の蒸気圧がさらに上昇する。
このような蒸気圧上昇を抑制するための蒸発燃料処理装置が知られている。この装置は、蒸気圧が上昇した場合に蒸発燃料を一時的に吸着材に吸着させ、内燃機関の運転時に吸気管負圧を利用して蒸発燃料を脱離させ、内燃機関の吸気系に送出して、インジェクタから供給される燃料と共に燃焼室で燃料として利用するものである。
しかしながら、直噴式の内燃機関や、ハイブリッド車に搭載されている内燃機関では、間欠的にエンジンが停止したり、スロットルバルブの開度が相対的に全開側に設定されることから、吸気管負圧が小さくなる。このため、吸着された蒸発燃料を脱離させる能力が低下する。
上記のような問題に対し、冷却手段を有する凝縮器により、蒸発燃料を凝縮・液化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、耐圧構造の燃料タンク内に弾性膜でできた燃料室を設けて、燃料は燃料室内に貯留し、燃料室外を加圧ポンプで所定圧力に維持する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、燃料室内の蒸気圧を一定に維持し、燃料の蒸発を維持することができる。さらに、燃料部分と気体部分とを分離し、燃料の貯留量に応じて上下に移動する分離膜を設けるとともに、この分離膜をキャニスタに通じるポートに近い側ほど位置が高くなるように傾斜させて設ける技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この技術では、蒸発燃料が分離膜の皺でできた空間に閉じ込められ、一時的に蒸発燃料がキャニスタに送出されるのを防止することができる。
しかしながら、特許文献1および2に記載の技術では、冷却手段や加圧ポンプを作動させるのに電力が別途必要になるため、燃費が低下する。また、内燃機関を使用しない状態においてもこれらの装置を駆動状態としているため、好ましくない。さらに、これら装置を搭載することによって、システムの複雑化およびコストの上昇を招くだけでなく、近年の車両小型化の要請に応えることが困難である。特許文献3に記載の技術は、構成も簡素で燃費も低下しないが、この技術はキャニスタの小型化を図る技術であり、蒸発燃料の発生を抑制するというものではない。
このような問題に対し、燃料タンクの内壁に蓄熱材を封入したカプセルを設けるか、または燃料タンク壁を構成する構造材中に多数のマイクロカプセルを分散させ、外界から加熱状態にあるときにこの蓄熱材に熱エネルギーを吸収させて、タンク内の燃料の温度上昇および蒸気圧上昇を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平11−93784号公報 特開平8−324266号公報 特開平9−203359号公報 特開2004−324562号公報
しかしながら、タンク内壁にカプセルを配置した形態においては、カプセルが常時燃料にさらされているため、経時的にカプセル材が劣化して、内部の蓄熱材が溶出するおそれがある。また、タンク壁構造材中にマイクロカプセルを分散させた形態においても、一部のマイクロカプセルが内壁に露出しているため、同様にカプセル材が劣化して蓄熱材が溶出したり、マイクロカプセル自体が脱落して燃料中に浮遊し、結果として燃料の被毒および燃料流通経路の詰まりの発生が懸念されている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、燃料の蒸気圧上昇を抑制するのはもちろんのこと、蓄熱材による燃料の被毒・燃料流通経路の詰まりを防止することができる燃料貯留装置を提供することを目的としている。
本発明は、燃料を貯留するタンクを有する燃料貯留装置であって、タンクの容器壁は、蓄熱カプセルを含有しないポリエチレン層、バリア層、および蓄熱カプセルを含有する蓄熱カプセル層を内側から順に積層したことを特徴としている。
上記構成の燃料貯留装置によれば、タンク容器壁は、燃料と接触するポリエチレン層(内壁)には蓄熱カプセルが含まれておらず、バリア層を介して蓄熱カプセル層(外壁)にのみ含まれているので、燃料によって蓄熱カプセルが溶出・脱落することがなく、燃料の被毒および燃料流通経路の詰まりの発生を防止することができる。
以下、本発明の燃料貯留装置の好適な実施形態について説明する。
図1に、本発明の燃料貯留装置の第1実施形態における模式断面図を示す。図1において、下側が燃料タンク内側であり、貯留されるガソリン等の燃料と直接接触する。図面上側がタンク外側である。符号1は、タンクの基材としてのポリエチレン層である。ポリエチレン層1上には、接着層2を介してバリア層3が積層されている。このバリア層3は、燃料の浸透・拡散を抑制する材質で構成されており、燃料を外側に漏洩させないように設けられている。バリア層3上には、さらに接着層2を介してリグラインド層40が積層されている。リグラインド樹脂は、熱可塑性樹脂の成形不良品やランナ、スプル、吹込成形や押出成形で発生するスクラップを破砕して得た再生材料である。リグラインド層40上には、燃料タンクの最外層をなすポリオレフィン層41が設けられている。さらに、本発明においては、リグラインド層40およびポリオレフィン層41中に、微小な蓄熱カプセル5が多数分散され、蓄熱カプセル層42となっている。この蓄熱カプセル5は、例えば合成樹脂製の小容器体中に蓄熱材を封入した構成となっている。
このような燃料貯留装置によれば、雰囲気温度が上昇した際、燃料タンクの外側から内側へ流入する熱エネルギーが燃料タンク壁内に分散配置された蓄熱カプセルによって吸収されるため、燃料の温度上昇を抑制することができ、結果として燃料の蒸気圧上昇をも抑制することができる。また、蓄熱カプセル5は、バリア層3を介して燃料タンクの外壁中のみに配置されているため、蓄熱カプセル5が内壁中にも添加された従来の燃料タンクのように、蓄熱カプセルが燃料によって溶かされて燃料を被毒させることもなく、また、蓄熱カプセル自体が燃料中に脱落して燃料流通経路を詰まらせることも防止することができる。さらに、蓄熱カプセルが燃料タンクの外側に配されているため、温度上昇による熱エネルギーの流入に対して敏感に反応して受放熱することができる。
蓄熱材としては特に限定されるものではないが、熱容量が大きいほど、流入する熱エネルギーを吸収して燃料の温度上昇を抑制するため、好ましい。また、蓄熱材は、燃料貯留装置を使用する温度範囲に融点を有するとさらに好ましい。このような蓄熱材を用いると、流入する熱エネルギーは蓄熱材を融解するために用いられるため、蓄熱材が完全に融解するまでの間は熱エネルギーが蓄熱材によって吸収され、燃料の温度上昇をさらに抑制することができる。このような物質としては、例えば、一般的に燃料貯留装置が用いられる常温付近の27℃に融点を有する塩化カルシウム6水塩(CaCl・6HO)が挙げられ、この温度近辺での燃料の温度上昇を好適に抑制することができる。蓄熱材の融点範囲としては、常温である20〜30℃が好ましい。蓄熱材としては、塩化カルシウム6水塩等の無機化合物以外にも、オクタデカン(融点28℃)やシクロヘキサノール(融点24℃)等の有機化合物や、これらの混合物を用いることができる。
上記のように蓄熱材が固体から液体に変化する際、物質によっては体積の膨張が大きい。これにより蓄熱カプセルが破損することを防止するため、蓄熱カプセル内には蓄熱材を完全には満たさず、体積変化に相当する空間を設けておくことが好ましい。
上記とは逆に燃料貯留装置の雰囲気温度が低下した場合は、タンク内部から熱エネルギーが外部に放出されるが、この場合は、蓄熱カプセルから熱エネルギーが燃料に対して供給され、温度低下を抑制し、結果として蒸気圧の低下を抑制する。このように、本発明の燃料貯留装置では、蒸気圧の上昇抑制作用と低下抑制作用の相反する効果を奏するが、飽和蒸気圧は温度に対して指数関数的相関関係を有しており、燃料温度が高いほど、温度変化に対する飽和蒸気圧変化は大きい。したがって、蒸気圧の上昇抑制作用と低下抑制作用を比較すると、上昇抑制作用の方が大きい。すなわち、本発明により、蒸気圧の上昇抑制効果が得られることが分かる。
図2に、本発明の燃料貯留装置の第2実施形態における模式断面図を示す。燃料タンク内側より順に、ポリエチレン層1、接着層2を介してバリア層3、接着層2を介してリグラインド層40、ポリオレフィン層41が積層されている。この実施形態においては、さらに、ポリオレフィン層41上に、微小な蓄熱カプセル5が多数分散された付加層43が貼り付けられている。この付加層43は、蓄熱カプセル5を樹脂等に分散させてシート状に成形したものを別途作製し、付加するものである。この付加層43の貼り付けによって作製された本実施形態によれば、第1実施形態同様、温度上昇抑制効果および蒸気圧上昇抑制効果を得られるだけでなく、付加層を貼り付けることによって、既存の燃料貯留装置に本発明の効果を与えることができる。
図3に、本発明の燃料貯留装置の第3実施形態における模式断面図を示す。第2実施形態と同様、ポリエチレン層1、バリア層3、リグラインド層40、ポリオレフィン層41が積層されて燃料貯留装置を構成している。この実施形態においては、さらに、ポリオレフィン層41上に、微小な蓄熱カプセル5が多数分散されたスラリーを吹き付けて蓄熱カプセル層を形成している。この実施形態によれば、他の実施形態同様に温度上昇抑制効果および蒸気圧上昇抑制効果を得られるだけでなく、第2実施形態と同様に、既存の燃料貯留装置に本発明の効果を与えることができ、しかも、第2実施形態では対応できない複雑な形状を有する燃料貯留装置であっても、容易に蓄熱カプセル層を形成することができる。
以上、燃料タンクの最外層に蓄熱カプセル含有層を設けた実施形態について述べたが、本発明はこれら形態のみに制限されず、例えば、図4に示す本発明の第4実施形態のように、蓄熱カプセル層42を燃料タンク壁の中間層に設け、最外層をリグラインド層40またはポリオレフィン層41とすることもできる。蓄熱カプセル層42がバリア層3の外側に設けられている限り、蓄熱カプセル層42が必ずしも最外層でなくとも、本発明の効果を得ることができる。
また、第4実施形態において最外層のリグラインド層40(ポリオレフィン層41)の代わりに断熱材層60またはアルミシート61、あるいはこれらを共に設けた第5実施形態の模式断面図を図5に示す。この実施形態によれば、蓄熱カプセル層42によって温度上昇抑制効果および蒸気圧上昇抑制効果が得られると共に、断熱材層60またはアルミシート61によって外界から燃料タンク内への熱の出入りが制限されるため、上記効果が促進される。
図6には、第1実施形態の蓄熱カプセル層42に代えて、蓄熱カプセル含有パック9を配置した第6実施形態の模式断面図を示す。蓄熱カプセル含有パック9は、袋状容器に蓄熱カプセル5を封入し、内部を真空または低負圧の状態にして密封したパックであり、このパックを燃料タンクを覆うように燃料タンクの外側に配置することによって、本発明の温度上昇抑制効果および蒸気圧上昇抑制効果が得られる。本実施形態は、第2および第3実施形態と同様、既存の燃料貯留装置に対して本発明の効果を与えることができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明の燃料貯留装置を具体的に説明する。
[実施例]
図2に示すように、内側からポリエチレン層、接着層、バリア層、接着層、リグラインド層、ポリオレフィン層、および蓄熱カプセル層の順に以下の仕様で積層し、本発明の第2実施形態の構造を有する燃料タンク(容量50L)を作製した。この燃料タンクに、あらかじめ重量を測定した活性炭入りキャニスタを接続し、下記に述べる試験の前後におけるキャニスタ重量変化よりガソリン蒸発量の測定を行った。
・ポリエチレン層
材質:高密度ポリエチレン
厚さ:ポリエチレン層、リグラインド層、およびポリオレフィン層の合計厚さが5.4〜5.8mmとなるように設けた。
・接着層
材質:接着性ポリオレフィン
厚さ:2層の合計が0.06〜0.24mmとなるように設けた。
・バリア層
材質:エチレンビニルアルコール
厚さ:0.1〜0.3mm
・蓄熱カプセル層
層の材質:低密度ポリオレフィン(d=0.86)
層の厚さ:10.0〜12.0mm
カプセル仕様:融点31度のパラフィンワックスを、メラミン製の樹脂壁で界面重合法によってカプセル化した粉体
カプセル含有率:60%
なお、ポリエチレン層〜ポリオレフィン層までの合計厚さが6.0〜6.5mmになるように各層の厚さを調整した。
[比較例]
蓄熱カプセルを含有させなかった以外は実施例1と同様の構成のタンクを作製し、比較例のタンクとした。
[性能測定・評価]
実施例および比較例のタンクにガソリンを充填し、半日かけて昇温し、続いて半日かけて降温する過程を3日間繰り返した。この試験における外気温変化と実施例のタンク内温度変化を図7に示す。図7から明らかなように、実施例のタンクの温度変化は23.0〜37.3℃であったが、比較例のタンクでは、20.4〜40.9℃の範囲であり、高温側で3.6℃、低温側で2.6℃の温度変化抑制効果が見られる。本発明の燃料貯留装置によれば、外気温が上昇した場合に、蓄熱材の熱吸収によって、タンク内温度上昇を抑制し、結果的に蒸気圧上昇をも抑制することができる。
また、上記試験期間の開始前後のキャニスタ重量を測定し、ガソリン蒸気の発生量を比較した。その結果を図8に示す。図8に示すように、実施例の燃料貯留装置では、蒸気発生量が約19%抑制されていた。
以上説明したように、本発明によれば、蓄熱材による燃料の被毒・燃料流通経路の詰まりを防止することができ、燃料タンク内の蒸気圧上昇を抑制することができる燃料貯留装置が得られる。
本発明の第1実施形態における燃料貯留装置壁の断面図である。 本発明の第2実施形態における燃料貯留装置壁の断面図である。 本発明の第3実施形態における燃料貯留装置壁の断面図である。 本発明の第4実施形態における燃料貯留装置壁の断面図である。 本発明の第5実施形態における燃料貯留装置壁の断面図である。 本発明の第6実施形態における燃料貯留装置壁の断面図である。 性能評価試験における温度変化を示すグラフである。 実施例および比較例の燃料蒸気発生量を示すグラフである。
符号の説明
1 ポリエチレン層(内側)
2 接着層
3 バリア層
40 リグラインド層(外側)
41 ポリオレフィン層(外側)
42 蓄熱カプセル層
43 付加層
5 蓄熱カプセル
60 断熱材層
61 アルミシート
9 蓄熱カプセル含有パック

Claims (3)

  1. 燃料を貯留するタンクを有する燃料貯留装置であって、上記タンクの容器壁は、蓄熱カプセルを含有しないポリエチレン層、バリア層、および蓄熱カプセルを含有する蓄熱カプセル層を内側から順に積層したことを特徴とする燃料貯留装置。
  2. 前記蓄熱カプセルを含有する樹脂層の外側に、さらに蓄熱カプセルを含有しない樹脂層、アルミシート、断熱材のいずれか1つを設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃料貯留装置。
  3. 前記タンクの容器壁は、蓄熱カプセルを含有しないポリエチレン層およびバリア層を内側から順に積層したものであり、さらに、バリア層の外側に、蓄熱カプセルの集合体を真空または低負圧でパックしたものを設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃料貯留装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009241625A (ja) * 2008-03-28 2009-10-22 Toyota Motor Corp 燃料タンク

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