JP2006289728A - 積層シート及びこのシートで構成された医療材料 - Google Patents

積層シート及びこのシートで構成された医療材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 毛羽立ちや繊維屑の発生を抑制できるとともに、高いドレープ性を有する積層シートを提供する。
【解決手段】 本発明の積層シートは、不織布と防水層とで形成された積層シートであって、前記不織布が、平均繊度0.5dtex以下であり、かつ水不溶性熱可塑性樹脂で構成された極細長繊維で形成され、かつ水溶性熱可塑性樹脂を前記不織布中0.001〜10重量%の割合で含有している。このシートは、20℃の水中に5分間浸漬した後の保水量が300ml/m2以上であってもよい。さらに、前記不織布表面の30%以上が水溶性熱可塑性樹脂で被覆されていてもよい。さらに、前記不織布は、水流絡合、熱エンボス加工、ニードルパンチ加工などで処理されていてもよい。このような積層シートは、手術用ドレープなどの医療材料として適している。
【選択図】 なし

Description

本発明は、極細長繊維で構成された不織布と防水層とで構成された積層シート及びこのシートで構成された医療材料(例えば、ドレープ、手術着、ガウン、キャップ、マスクなど)に関する。
病院の手術においては、手術着、キャップ、マスクの他、患者の手術箇所以外を保護する手術用ドレープ(覆布)なども使用されるが、これらの医療材料としては、主として、手術において飛散する血液や体液、薬液などを吸収できる素材が使用される。従来、このような医療材料としては、綿で構成された織布や不織布などが使用されていた。これらの医療材料のうち、特に、手術用ドレープには、前述の高い吸収性と、内部への浸透によって、患者の身体に薬液などが接触することを避ける防漏性とを両立させる特性(いわゆる、ドレープ性)も要求される。しかし、綿で構成された一枚布において、このようなドレープ性を発現させるためには、布の厚みで調整する他なかった。
そこで、特開2001−150580号公報(特許文献1)には、液体不透過性フィルムの両面に、セルロース素材で構成された不織布を接着させた医療用素材が提案されている。しかし、セルロース素材では、表面が毛羽立ち、繊維屑も発生し易いため、環境衛生面が低下するとともに、手術室の空調機に備えられたフィルターが目詰まりを起こす。
また、特開2001−178742号公報(特許文献2)には、ポリエチレンフィルムなどの不透液素材で構成された中間層の両面に、親水性又は親水化処理が施された繊維で形成された不織布で構成された表面層を有する手術用ドレープが提案されている。しかし、この文献には、具体的に、親水性繊維の種類、繊維の親水化処理について何も記載されていない。
このような毛羽立ちによる汚染などの弊害を抑制するために、例えば、特開2001−232707号公報(特許文献3)には、長繊維不織布層、吸水性短繊維不織布層および防水層がこの順に積層された多層シート及びこのシートで形成されたメディカルドレープが提案されている。しかし、このシートでは、表面がポリエチレンやポリエステルなどで構成された不織布で形成されているため、吸水性が充分でない。さらに、層構造も複雑であり、シートの柔軟性が低下するとともに、生産性などが低下する。
さらに、特開2002−263117号公報(特許文献4)には、表面側のシート部と不織布などの吸液性シート部とを具備し、前記表面側のシート部が吸液性シート部の繊維の抜け出しを防止し且つ液体の導入が可能な複数の孔部を有する吸液性シートが提案されている。しかし、このシートでも、毛羽の飛散を充分に防止することはできない。また、ポリエチレンやポリプロピレンで構成されたシート部で表面側が覆われているため、吸水性も低下する。
特開2001−150580号公報(請求項1、段落番号[0010]) 特開2001−178742号公報(請求項6、段落番号[0021][0012]) 特開2001−232707号公報(請求項1及び8、段落番号[0016]、実施例) 特開2002−263117号公報(請求項1、段落番号[0016])。
本発明の目的は、毛羽立ちや繊維屑の発生を抑制できるとともに、高いドレープ性を有する積層シート及びこのシートで構成された医療材料を提供することにある。
本発明の他の目的は、高い柔軟性及びドレープ性を有する積層シート及びこのシートで構成された医療材料を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高いドレープ性を有する積層シートを簡便に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、水不溶性熱可塑性樹脂で構成された特定の極細長繊維で形成され、かつ水溶性熱可塑性樹脂を0.001〜10重量%の割合で含有する不織布と、防水層とを組み合わせると、毛羽立ちや繊維屑の発生を抑制できるとともに、高いドレープ性を発現できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の積層シートは、不織布と防水層とで形成された積層シートであって、前記不織布が、平均繊度0.5dtex以下であり、かつ水不溶性熱可塑性樹脂で構成された極細長繊維で形成され、かつ水溶性熱可塑性樹脂を前記不織布中0.001〜10重量%の割合で含有している。このシートは、20℃の水中に5分間浸漬した後の保水量が300ml/m2以上であってもよい。さらに、前記不織布表面の30%以上が水溶性熱可塑性樹脂で被覆されていてもよい。前記水溶性熱可塑性樹脂は、例えば、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール、例えば、炭素数4以下のα−オレフィン単位(特にエチレン単位)及びC1-4アルキル−ビニルエーテル単位からなる群より選択された少なくとも1種の単位を0.1〜20モル%(特に3〜20モル%)程度含有する変性ポリビニルアルコールなどであってもよい。前記水溶性熱可塑性樹脂の割合は、例えば、不織布中0.001〜4重量%程度であってもよい。前記水不溶性熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特にポリエステル系樹脂)などであってもよい。さらに、前記不織布は、水流絡合、熱エンボス加工、及びニードルパンチ加工からなる群より選択された少なくとも1種の加工が施されていてもよい。前記防水層は、例えば、オレフィン系樹脂や熱可塑性エラストマーなどの軟性樹脂(特にポリエチレン系樹脂)で構成されていてもよい。
本発明には、前記積層シートで構成された医療材料(例えば、手術用ドレープなど)も含まれる。さらに、本発明には、水溶性熱可塑性樹脂及び水不溶性熱可塑性樹脂で構成された複合長繊維の不織布又は不織ウエブから前記水溶性熱可塑性樹脂を除去して得られた不織布に、防水層を積層する前記積層シートの製造方法も含まれる。
本発明では、水溶性熱可塑性樹脂を0.001〜10重量%の割合で含有する極細長繊維で構成された不織布と防水層とを組み合わせているため、毛羽立ちや繊維屑の発生を抑制できるとともに、高いドレープ性を有している。また、高い柔軟性とドレープ性とを両立できる。従って、このようなシートは、手術用ドレープなどの医療材料として適している。さらに、本発明では、このような特性を有する積層シートを簡便に製造できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[積層シート]
本発明の積層シートは、不織布と防水層とで構成されている。さらに、前記不織布は、平均繊度0.5dtex以下の極細長繊維で構成されている。
(極細長繊維)
本発明における極細長繊維は水不溶性熱可塑性樹脂で構成されている。水不溶性熱可塑性樹脂としては、親水性溶媒(特に水)によって溶解されず、かつ溶融紡糸が可能であれば、特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂[芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂など)、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ヒドロキシブチレート−ヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル又はコポリエステルなど)など]、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン6−12などの脂肪族ポリアミド又はコポリアミドなど)、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのオレフィンの単独又は共重合体など)、疎水性モノマー(特に、エチレン)単位を20モル%超70モル%以下含有する水不溶性の変性ポリビニルアルコール、熱可塑性エラストマー(ポリスチレン系、ポリジエン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系のエラストマーなど)、ハロゲン化ビニル系樹脂(例えば、塩化ビニル系樹脂、フッ素含有ビニル系樹脂など)などが挙げられる。これらの水不溶性熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの水不溶性熱可塑性樹脂のうち、水溶性熱可塑性樹脂(特に水溶性熱可塑性PVA)と複合紡糸しやすい点から、ポリエステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリC2-4アルキレンアリレート、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(特に、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族ポリアミド系樹脂)、ポリオレフィン系樹脂(特に、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリC2-4オレフィン系樹脂)、およびエチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコールが好ましい。特に、親水性溶媒で抽出後、不織布中に水溶性熱可塑性樹脂(例えば、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA))が残存し易い点からは、水不溶性熱可塑性樹脂は、水溶性熱可塑性樹脂に対する反応性又は親和性基を有する樹脂であってもよい。例えば、水溶性熱可塑性PVAの場合には、水不溶性熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、変性ポリビニルアルコールなどであってもよい。特に、強度や耐摩耗などの機械的特性と、吸水性とのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2-4アルキレンアリレートなど)が好ましい。
さらに、極細長繊維は、平均0.5dtex以下の繊度を有している必要があり、例えば、0.4dtex以下(例えば、0.001〜0.4dtex)、好ましくは0.3dtex以下(例えば、0.01〜0.3dtex)、さらに好ましくは0.25dtex以下(例えば、0.05〜0.25dtex)の平均繊度を有する。極細長繊維の平均繊度が0.5dtexよりも大きい場合には、極細化が充分でなく、繊維表面積が低下し、さらに柔軟性や吸液性などが著しく低下する。また、下限値に関しては特に限定はないが、生産のし易さの点で0.001dtex以上が好ましい。
(不織布)
このような極細長繊維で構成された不織布は、他の不織布(例えば、短繊維で構成されたウエブをニードルパンチや水流絡合させて得られる乾式不織布や、水に分散させたショートカット繊維を漉き上げて乾燥させて得られる湿式不織布など)に比べて、生産性が高い。さらに、長繊維で構成されているため、不織布から繊維の脱落も生じにくい。更に、長繊維不織布は、短繊維で構成された不織布やショートカット繊維で構成された不織布と比べて、不織布の強度も高い。
このような不織布は、さらに水溶性熱可塑性樹脂を不織布中0.001〜10重量%の割合で含有している。不織布中に存在する水溶性熱可塑性樹脂の割合は、不織布中、好ましくは0.001〜4重量%(例えば、0.01〜4重量%)、さらに好ましくは0.03〜3.5重量%(特に0.05〜3重量%)程度であってもよい。水溶性熱可塑性樹脂の割合が10重量%より多い場合には、使用時に水溶性熱可塑性樹脂の溶出が高くなり、また不織布の柔軟性が低下する。一方、水溶性熱可塑性樹脂の割合が0.001重量%未満の場合は、不織布の吸液性(特に吸水性)が低下する。
本発明では、不織布表面(不織布の表層部や不織布内部の繊維表面も含む)の30%以上(例えば、30〜100%)が水溶性熱可塑性樹脂で被覆されているのが好ましく、さらに好ましくは35%以上(例えば、35〜99%)であり、より好ましくは40%以上(例えば40〜90%)である。このような被覆率は、例えば、45%以上(例えば、45〜80%)、好ましくは50%以上(例えば、50〜70%)であってもよい。水溶性熱可塑性樹脂による被覆率が低すぎると、極細長繊維不織布の吸液性(特に吸水性)が低下する。不織布表面の水溶性熱可塑性樹脂による被覆率はX線光電子分光法により測定できる。
水溶性熱可塑性樹脂としては、常温で固体であれば、120℃以下の温度で親水性溶媒(特に水)によって溶解除去できると共に、溶融紡糸が可能であれば、特に限定されない。このような水溶性熱可塑性樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂(メチルセルロースなどのC1-3アルキルセルロースエーテル、ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシC1-3アルキルセルロースエーテル、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1-3アルキルセルロースエーテルなど)、ポリアルキレングリコール(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリC2-4アルキレンオキシドなど)、ポリビニル系樹脂(ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなど)、アクリル系共重合体およびそのアルカリ金属塩((メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドなどのアクリル系単量体で構成された単位を含む共重合体など)、ビニル系共重合体又はそのアルカリ金属塩(イソブチレン、スチレン、エチレン、ビニルエーテルなどのビニル系単量体と、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体など)、可溶化置換基を有する樹脂又はそのアルカリ金属塩(スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などを導入したポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンなど)などを挙げることができる。これらの水溶性熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの水溶性熱可塑性樹脂の中でも、吸水性に優れ、前記水不溶性熱可塑性樹脂とともに溶融紡糸する場合には溶融紡糸安定性に優れている点から、ポリビニルアルコール(PVA)などのポリビニルアルコール系樹脂、特に、水溶性熱可塑性PVAが好ましい。
PVAは、ホモポリマーの他、例えば、共重合、末端や側鎖の変性などにより官能基を導入した変性PVAも包括する。通常の一般に市販されているPVAは溶融温度と熱分解温度が近接しているため溶融紡糸することはできず(すなわち熱可塑性ではなく)、水溶性熱可塑性PVAとするためには、種々の工夫が必要である。
水溶性熱可塑性PVAの粘度平均重合度(以下、単に「重合度」と略記する)は、例えば、200〜800程度であり、好ましくは230〜600、さらに好ましくは250〜500程度である。通常の繊維用に使用されるPVAは、重合度が高いほど高強度繊維が得られることから、1500以上の重合度(例えば、約1700や約2100の重合度など)が一般的である。そのことから考えると、本発明で用いられる水溶性熱可塑性PVAの重合度200〜800は極めて低いと言える。重合度が小さすぎると紡糸する場合に充分な曳糸性が得られず、その結果として満足な複合長繊維不織布が得られない場合がある。一方、重合度が大きすぎると溶融粘度が高すぎて、紡糸する場合に紡糸ノズルからポリマーを吐出することができず、満足な複合長繊維不織布を得られない場合がある。
水溶性熱可塑性PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。水溶性熱可塑性PVAの重合度は、水溶性熱可塑性PVAを完全に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められる。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
本発明に用いられる水溶性熱可塑性PVAのけん化度は90〜99.99モル%の範囲が好ましく、92〜99.9モル%の範囲がより好ましく、94〜99.8モル%の範囲が特に好ましい。けん化度が低すぎると、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって安定な複合溶融紡糸を行うことができない場合がある。一方、けん化度が高すぎると、水溶性熱可塑性PVAを安定に製造するのが困難である。
水溶性熱可塑性PVAは、ビニルエステル系重合体のビニルエステル単位をけん化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニルなどが挙げられる。これらのビニル化合物単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも水溶性熱可塑性PVAの生産性が高い点から、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニルなどの低級脂肪族カルボン酸ビニルが好ましく、通常、酢酸ビニルが用いられる。
水溶性熱可塑性PVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、複合溶融紡糸性、吸水性、繊維物性および不織布物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いるのが好ましい。変性PVAにおける共重合性単量体の種類としては、例えば、α−オレフィン類(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−C2-10オレフィンなど)、(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸エステル類[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピルなどの(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルなど]、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等のN−C1-6アルキル(メタ)アクリルアミドなど]、ビニルエーテル類[メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのC1-10アルキルビニルエーテルなど]、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル類[エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのC2-10アルカンジオール−モノビニルエーテルなど]、アリルエステル類(アリルアセテートなど)、アリルエーテル類[プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのC1-10アルキルアリルエーテルなど]、オキシアルキレン基を有する単量体[ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等のポリオキシC2-6アルキレン基を有するビニル系単量体など]、ビニルシラン類(ビニルトリメトキシシラン等のビニルトリC1-4アルコキシシランなど)、ヒドロキシル基含有のα−オレフィン類またはそのエステル化物[酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのC3-12アルケノール又はそのエステル化物など]、N−ビニルアミド類[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなど]、不飽和カルボン酸類[フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸など]、スルホン酸基を有する単量体[エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]、カチオン基を有する単量体[ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのビニロキシテトラC1-10アルキルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミンなどのビニロキシトリC1-10アルキルアミン、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドブチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのN−アクリルアミドテトラC1-10アルキルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミンなどのN−アクリルアミドジC1-10アルキルアミン、(メタ)アリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの(メタ)アリルトリC1-10アルキルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミンなどのジC1-3アルキルアリルアミン、アリルエチルアミンなどのアリルC1-3アルキルアミンなど]などが挙げられる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの単量体の含有量は、変性PVA(又は共重合PVA)を構成する全単位のモル数を100%とした場合、通常その20モル%以下である。また、共重合されていることのメリットを発揮するためには、0.01モル%以上が上記共重合単位であることが好ましい。
変性PVAにおいて、これらの共重合性単量体の中でも、入手のしやすさなどから、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−C2-6オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのC1-6アルキルビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのC2-6アルカンジオール−ビニルエーテル、アリルアセテートで代表されるアリルエステル類、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのC1-6アルキルアリルエーテル類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類、ポリオキシエチレンなどのオキシC2-4アルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのC3-10アルケノール類などが好ましい。
特に、共重合性単量体は、共重合性、混合溶融紡糸性および繊維物性などの点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのC1-4アルキル−ビニルエーテル類がより好ましい。共重合性単量体(特に炭素数4以下のα−オレフィン類およびC1-4アルキル−ビニルエーテル類に由来する単位)の含有割合は、水溶性熱可塑性PVA中、例えば、0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜18モル%程度である。
さらに、共重合性単量体は、繊維物性を高める点から、エチレンが特に好ましい。共重合性単量体がエチレンである場合に、エチレン単位の含有割合は、特に、水溶性熱可塑性PVA中、例えば、3〜20モル%、好ましくは5〜18モル%程度であってもよい。
本発明で使用する水溶性熱可塑性PVAの製造方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、通常、無溶媒又はアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が採用される。例えば、水溶性熱可塑性PVAの溶液重合において溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。これらの開始剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。重合温度については特に制限はないが、0〜200℃の範囲が適当である。
本発明で使用する水溶性熱可塑性PVAにおけるアルカリ金属イオンの含有割合は、水溶性熱可塑性PVA100重量部に対して、ナトリウムイオン換算で、例えば、0.00001〜0.05重量部、好ましくは0.0001〜0.03重量部、さらに好ましくは0.0005〜0.01重量部程度である。アルカリ金属イオンの含有割合が0.00001重量部未満のPVAは工業的に製造が困難である。また、アルカリ金属イオンの含有量が多すぎると、複合溶融紡糸時のポリマー分解、ゲル化および断糸が著しく、安定に繊維化することができない場合がある。なお、アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオンなどが挙げられる。
本発明において、特定量のアルカリ金属イオンを水溶性熱可塑性PVA中に含有させる方法は特に制限されない。
水溶性熱可塑性PVAについて、アルカリ金属イオンをPVA中に含有させる方法を例示すると、例えば、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中においてけん化するに際し、けん化触媒としてアルカリ金属イオンを含有するアルカリ性物質を使用することによりPVA中にアルカリ金属イオンを配合し、けん化して得られたPVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含まれるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙げられるが、後者の方法が好ましい。なお、アルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
けん化触媒として使用するアルカリ性物質としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。けん化触媒に使用するアルカリ性物質の割合(モル比)は、ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル単位1モルに対して、例えば、0.004〜0.5モル、好ましくは0.005〜0.05モル程度である。けん化触媒の添加方法は、特に限定されず、けん化反応の初期に一括添加する方法であってもよいし、けん化反応の初期に添加した後、途中で追加して添加する方法であってもよい。
けん化反応の溶媒としては、例えば、メタノールなどのアルコール類、酢酸メチルなどのエステル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒の中でもメタノールなどのアルコール類が好ましく、含水率を0.001〜1重量%(好ましくは0.003〜0.9重量%、さらに好ましくは0.005〜0.8重量%)程度に制御したメタノールがより好ましい。洗浄液としては、例えば、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、ヘキサンなどの炭化水素類、水などが挙げられる。これらのうち、メタノール、酢酸メチル、水又はこれらの混合液が好ましい。
洗浄液の量は、アルカリ金属イオンの含有割合を満足するように適宜選択できるが、水溶性熱可塑性PVA100重量部に対して、通常、300〜10000重量部、好ましくは500〜5000重量部程度である。洗浄温度は、例えば、5〜80℃、好ましくは20〜70℃程度である。洗浄時間は、例えば、20分間〜100時間、好ましくは1時間〜50時間程度である。
また、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、水溶性熱可塑性PVAには、融点や溶融粘度の調整などの目的で、可塑剤を添加することが可能である。可塑剤としては、従来公知の可塑剤が使用できるが、例えば、ジグリセリン、ポリグリセリンアルキルモノカルボン酸エステル類、グリコール類にエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加した化合物などが挙げられる。これらのなかでも、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを1〜30モル%程度付加した化合物が好ましい。
このような不織布は、前記水不溶性熱可塑性樹脂で構成された極細長繊維で形成され、かつ前記水溶性熱可塑性樹脂を特定割合で含むことにより、水性及び油性のいずれの液状物に対する吸液性が高い。特に、このような不織布は、不織布中(特にその表面)に水溶性熱可塑性樹脂の一部を含有するため、特に吸水性が高い。具体的には、不織布(積層シート)の保水量は200ml/m2以上であり、例えば、300ml/m2以上(例えば、300〜1000ml/m2程度)、好ましくは320ml/m2以上(例えば、320〜800ml/m2程度)、さらに好ましくは350ml/m2以上(例えば、350〜600ml/m2程度)である。なお、本発明における保水量は、20℃の水中に5分間浸漬した後の保水量であり、詳細は実施例で説明する。保水量が低すぎると、充分な吸水機能を果たすことができず、液状物の保持が不充分となる。
さらに、不織布(積層シート)の吸水性(JIS L1906に準じた吸水性)は10秒以下であり、例えば、0.05〜8秒、好ましくは0.1〜7秒、さらに好ましくは0.1〜5秒(特に0.1〜2秒)程度である。このような吸水性は、特定太さの極細繊維で構成された不織布に水溶性熱可塑性樹脂が含まれ、必要に応じて、それが特定の条件で乾燥され、特定の条件下でカレンダー処理することなどにより達成される。
本発明の不織布の縦方向および横方向の引張強度(B)(単位N/5cm)は、目付(A)(単位g/m2)に対して、(B)/(A)≧0.25の関係を充足することが好ましく、例えば、(B)/(A)≧0.3(例えば、10≧(B)/(A)≧0.3)、好ましくは(B)/(A)≧0.4(例えば、5≧(B)/(A)≧0.4)、さらに好ましくは(B)/(A)≧0.5(例えば、3≧(B)/(A)≧0.5)である。(B)/(A)<0.25の場合、不織布の強度が不充分であり、単独で充分な機能を果たすことができない。
一方で、引張強度(B)(単位N/5cm)及び目付(A)(単位g/m2)は、(B)/(A)≦10の関係を満足するのが好ましい。(B)/(A)が大きすぎると、不織布の柔軟性が低下する場合がある。なお、(B)/(A)の値は、平均繊度、紡糸引取速度、熱圧着・絡合条件などにより変えることが可能で、具体的には、平均繊度を大きくする、紡糸引取速度を大きくする、あるいは熱圧着・絡合条件を強化する等により、(B)/(A)の値を高くすることができる。
不織布は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、微粒子、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、重合反応時、又はその後の工程で添加することができる。特に、熱安定剤としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅などのハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウムなどのハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞留安定性が向上するので好ましい。
また、不織布を後述する方法(水溶性熱可塑性樹脂を抽出除去する方法)で製造する場合には、微粒子、特に無機微粒子などの不活性微粒子を、紡糸前の水溶性熱可塑性樹脂又は水不溶性熱可塑性樹脂に添加すると、紡糸性や延伸性を向上できる。微粒子の平均粒子径は、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.02〜3μm、さらに好ましくは0.02〜1μm程度である。微粒子の種類は特に限定されず、例えば、ケイ素含有化合物(シリカなど)、金属酸化物(酸化チタンなど)、金属炭酸塩(炭酸カルシウムなど)、金属硫酸塩(硫酸バリウムなど)等の無機微粒子を挙げることができる。これらの微粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの微粒子のうち、シリカなどの酸化ケイ素、特に、平均粒子径0.02〜1μm程度のシリカが好ましい。
(不織布の製造方法)
不織布の製造方法は、特に限定されず、前記割合の水不溶性熱可塑性樹脂と水溶性熱可塑性樹脂とで構成された極細繊維を紡糸して不織布を製造する方法や、水不溶性熱可塑性樹脂で構成された極細繊維で形成された不織布に前記割合の水溶性熱可塑性樹脂を添加する方法などであってもよいが、水溶性熱可塑性樹脂と水不溶性熱可塑性樹脂とで構成された複合長繊維で形成された不織布から、前記水溶性熱可塑性樹脂を親水性溶媒で溶解(抽出)除去することにより製造する方法が好ましい。
このような水溶性熱可塑性樹脂を抽出除去する製造方法において、水溶性熱可塑性樹脂と水不溶性熱可塑性樹脂とで構成された複合長繊維不織布は、溶融紡糸と不織布形成を直結した製造方法(いわゆるスパンボンド不織布の製造方法)によって効率良く製造することができる。
スパンボンド不織布の製造方法としては、例えば、次のような方法を例示できる。まず、水溶性熱可塑性樹脂と水不溶性熱可塑性樹脂とをそれぞれ別の押出機で溶融混練し、引き続きこれら溶融したポリマーの流れをそれぞれ紡糸頭に導き、合流し、流量を計量して、紡糸ノズル孔から吐出させる。次に、この吐出糸条を冷却装置により冷却せしめた後、エアジェット・ノズルのような吸引装置を用いて、目的の繊度となるように、高速気流により牽引細化させる。その後、開繊させながら移動式の捕集面の上に堆積させて不織ウエブを形成させる。最後に、このウエブを部分熱圧着して巻き取ることによって複合長繊維不織布を得ることができる。
複合長繊維不織布を構成する複合長繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、特に限定されず、異形断面[例えば、中空状、偏平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など]であってもよいが、通常、丸型断面である。本発明では、横断面内部は、極細長繊維を形成するために、水不溶性熱可塑性樹脂で構成された相と水溶性熱可塑性樹脂で構成された相とで構成された複合的な構造である。
具体的には、複合長繊維は、複合長繊維の軸方向(長さ方向)に水溶性熱可塑性樹脂と水不溶性熱可塑性樹脂とが分離可能な構造、すなわち、水溶性熱可塑性樹脂が、軸方向に連続して溶解除去されて、残存する水不溶性熱可塑性樹脂による極細長繊維が得られる構造を有している必要がある。従って、複合長繊維は、軸方向に延びる水溶性樹脂相と、この水溶性樹脂相と同軸に延びる複数の水不溶性樹脂相とで構成されており、横断面形成においては、水不溶性熱可塑性樹脂で構成された極細繊維成分と、極細繊維成分を複数に分割するための水溶性熱可塑性樹脂とで構成されている。このような複合長繊維の複合断面構造としては、分割性や極細化後の長繊維の均一性を考慮すると、ミカンの横断面型の構造または扇型の構造(すなわち、水不溶性熱可塑性樹脂で構成された相と、水溶性熱可塑性樹脂で構成された相とが、断面の中心より放射状に交互に配列された構造)、貼り合せ型の構造(すなわち、水不溶性熱可塑性樹脂で構成された相と、水溶性熱可塑性樹脂で構成された相とが、短冊状に交互に配列された構造)、海島型構造(すなわち、水溶性熱可塑性樹脂で構成された海成分と、水不溶性熱可塑性樹脂で構成された島成分とからなる構造)などが好ましい。これらの構造は、組み合わされていてもよい。
複合長繊維を構成する極細繊維形成成分(すなわち、水不溶性熱可塑性樹脂成分)は、水溶性熱可塑性樹脂により、例えば、2〜800個、好ましくは3〜500個、さらに好ましくは3〜200個程度に分割されているのが好ましい。複合長繊維の複合断面構造が、例えば、ミカンの横断面型もしくは扇型構造、又は貼り合せ型の構造を有する場合には、複合長繊維を構成する極細繊維形成成分は、水溶性熱可塑性樹脂により2〜50個(好ましくは2〜20個、さらに好ましくは3〜15個)程度に分割されているのが生産性の点で好ましい。また、複合断面構造が海島型である場合には、極細繊維形成成分である島成分の数としては2〜800個の範囲が生産性の点で好ましく、より好ましくは5〜500個(特に10〜200個)程度の範囲である。特に、複合断面構造がミカンの横断面型もしくは扇型、又は貼り合せ型などの異型断面構造であり、極細繊維形成性成分が6〜15個に分割されている複合長繊維は吸水性の点で特に優れている。なお、用途に応じて適宜選択するのが好ましく、高度な吸水性が要求される場合には、放射状に配列したミカンの横断面型または扇型の構造、短冊状に配列した貼り合せ型構造を選択するのが好ましく、優れた肌触りや皮膚との密着性が要求される場合は、細い繊維が得られやすい海島型構造を選択するのが好ましい。
本発明に用いる複合長繊維不織布における水不溶性熱可塑性樹脂と水溶性熱可塑性樹脂との割合(重量比)は目的に応じて適宜設定されるので特に制限はないが、水不溶性熱可塑性樹脂/水溶性熱可塑性樹脂=5/95〜90/10程度の範囲から選択でき、例えば、10/90〜85/15、好ましくは20/80〜85/15、さらに好ましくは30/70〜85/15(特に50/50〜85/15)程度である。
本発明において、複合長繊維不織布を構成する複合長繊維の繊維化条件は、ポリマーの組み合せ、複合断面の構造に応じて適宜設定する必要があるが、主に、以下のような点に留意して繊維化条件を決めることが望ましい。
紡糸口金温度は、複合長繊維を構成するポリマーのうち高い融点を持つポリマーの融点をMp(℃)とするとき、例えば、Mp+10℃〜Mp+80℃程度であり、好ましくはMp+15℃〜Mp+70℃、さらに好ましくはMp+20℃〜Mp+60℃程度である。紡糸におけるせん断速度(γ)は、例えば、500〜25000sec-1、好ましくは1000〜20000sec-1、さらに好ましくは1500〜10000sec-1程度である。紡糸におけるドラフト(V)は、例えば、50〜2000、好ましくは100〜1500程度である。また、複合紡糸するポリマーの組み合わせから見た場合、紡糸時の口金温度において、ノズル通過時のせん断速度で測定した溶融粘度が近接したポリマーの組み合わせ、例えば、溶融紡糸口金温度において、せん断速度1000sec-1における溶融粘度差が2000ポイズ(poise)以内(好ましくは1500ポイズ以内)である組み合せで複合紡糸することが紡糸安定性の面から好ましい。
本発明におけるポリマーの融点Tmとは、示差走査熱量計(DSC:例えば、メトラー(Mettler)社製、商品名「TA3000」など)で観察される主吸熱ピークのピーク温度である。せん断速度(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単孔あたりのポリマー吐出量をQ(cm3/秒)とするとき、γ=4Q/πr3で計算される。またドラフト(V)は、引取速度をA(cm/秒)とするとき、V=A・πr2/Qで計算される。
複合繊維の製造において、紡糸口金温度が低すぎると、ポリマーの溶融粘度が高すぎて、高速気流による曳糸・細化性に劣り、また高すぎると、水溶性熱可塑性樹脂が熱分解しやすくなるために安定した紡糸ができない。また、せん断速度が低すぎると断糸しやすく、高すぎるとノズルの背圧が高くなり紡糸性が低下する。さらに、ドラフトが低すぎると繊度むらが大きくなって安定に紡糸しにくくなり、ドラフトが高すぎると断糸しやすくなる。
本発明において、エアジェット・ノズルのような吸引装置を用いて吐出糸条を牽引細化させる場合には、糸条の引取速度が1000〜6000m/分(好ましくは2000〜5000m/分)程度になるように、高速気流により牽引細化させるのが好ましい。吸引装置による糸条の引取条件は、紡糸ノズル孔から吐出する溶融ポリマーの溶融粘度、吐出速度、紡糸ノズル温度、冷却条件などにより適宜選択するが、引取速度が小さすぎると、吐出糸条の冷却固化遅れによる隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配向・結晶化が進まず、得られる複合不織布は、粗雑で機械的強度の低いものになってしまい好ましくない。一方、引取速度が大きすぎると、吐出糸条の曳糸・細化性が追随できず糸条の切断が発生して、安定した複合長繊維不織布の製造ができない。
さらに、複合長繊維不織布を安定に製造するために、紡糸ノズル孔とエアジェット・ノズルのような吸引装置との間隔は30〜200cm(特に40〜150cm)程度であるのが好ましい。このような間隔は使用するポリマー、組成、前述の紡糸条件にもよるが、前記間隔が小さすぎる場合には、吐出糸条の冷却固化遅れによる隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配向・結晶化が進まず、得られる複合不織布は、粗雑で機械的強度の低いものになってしまう。一方、前記間隔が広すぎると、吐出糸条の冷却固化が進みすぎて吐出糸条の曳糸・細化性が追随できず糸条の切断が発生して、安定した複合長繊維不織布の製造ができない。
エアジェット・ノズルのような吸引装置で細化された複合長繊維は、捕集用シート面上にほぼ均一な厚さとなるように分散捕集してウエブを形成する。吸引装置と捕集面との間隔は、生産性、得られる不織布の繊維物性の観点から、例えば、30〜200cm、好ましくは40〜150cm程度である。ウエブの目付は、不織布の生産性および後加工性の点不織布の生産性および後加工性の点から、例えば、5〜500g/m2、好ましくは10〜400g/m2、さらに好ましくは50〜300g/m2程度である。吸引細化されたウエブ形成複合長繊維の太さは、生産性の点から、例えば、0.2〜8dtex、好ましくは0.5〜7dtex、さらに好ましくは1〜6dtex程度である。
本発明では、複合長繊維不織布から水溶性熱可塑性樹脂を親水性溶媒で抽出除去することにより、水不溶性熱可塑性樹脂の極細化が可能である。親水性溶媒としては、水の他、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(カルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなど)などが挙げられる。これらの親水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの親水性溶媒のうち、水、エタノールなどのC1-3アルコール類、アセトンなどのケトン類、水と他の親水性溶媒との混合溶媒などが好ましく、通常、水が使用される。
複合長繊維不織布から水溶性熱可塑性樹脂を親水性溶媒で抽出する方法としては、特に制約はなく、慣用の方法、例えば、サーキュラー、ビーム、ジッカー、ウィーンスなどの染色機やバイブロウォッシャー、リラクサーなどの熱水処理設備を使用する方法、高圧水流を噴射する方法などを適宜選択できる。これらの方法のうち、高圧水流を噴射する方法は、分割極細長繊維が相互に強く絡まされ、さらには毛細管現象により吸水性がより向上するという点で、非常に有効な方法あるが、高圧水流を噴射するだけでは、水溶性熱可塑性樹脂の付着量を本発明で規定する範囲にまで減少させることが難しい場合が多い。したがって、高圧水流で処理した後、親水性溶媒浴中で不織布を攪拌処理して水溶性熱可塑性樹脂の付着量を本発明で既定する範囲にする方法を用いるのが好ましい。親水性溶媒として水を用いる場合、抽出水は中性であってもよく、アルカリ水溶液、酸性水溶液、又は界面活性剤などを添加した水溶液であってもよい。
特に、本発明では、親水性溶媒による水溶性熱可塑性樹脂の抽出除去において、不織布内に水溶性熱可塑性樹脂の一部が残存するように、除去処理を行なう。そのためには、予め、除去処理に使用する親水性溶媒の量、処理方法、処理時間、処理温度などを適宜選択して、本発明で規定する吸液性(吸水性)が得られるように、これらの条件を決めておくのが好ましい。
具体的には、水溶性熱可塑性樹脂を親水性溶媒で抽出除去する方法として、親水性溶媒浴中で複合長繊維不織布を攪拌処理して、水溶性熱可塑性樹脂を溶解除去する方法が好ましい。親水性溶媒の割合は、複合長繊維不織布に対して100〜2000倍(重量基準)程度であり、好ましくは200〜1000倍、さらに好ましくは200〜500倍程度である。親水性溶媒の量が少なすぎると、水溶性熱可塑性樹脂の溶解除去が不十分となり、目的とする極細長繊維不織布が得られないことがある。また、親水性溶媒の量が多すぎると、複合長繊維から極細長繊維への分割性が低下することがある。なお、抽出除去が不十分な場合には、水溶性熱可塑性樹脂を含まないフレッシュな親水性溶媒を用いて、再度水溶性熱可塑性樹脂を抽出除去する方法が用いられる。
抽出処理温度は目的や溶媒の種類に応じて適宜調整すればよいが、例えば、熱水を用いて抽出する場合には、40〜120℃で処理するのが好ましく、60〜110℃で処理するのがより好ましく、80〜100℃で抽出処理を行うのが特に好ましい。処理温度が低すぎると、水溶性熱可塑性樹脂の抽出性が充分でなく、生産性が低下する。また、処理温度が高すぎると、水溶性熱可塑性樹脂の溶解時間が極端に短くなり、目的とする水溶性熱可塑性樹脂の割合での安定な生産が困難な場合がある。なお、一旦、水溶性熱可塑性樹脂が不織布から完全に抽出除去された場合には、その後で、水溶性熱可塑性樹脂を含む溶液を付与する等の方法を用いて水溶性熱可塑性樹脂を不織布に添加しととしても本発明で規定するような優れた吸水性は得られ難い。
抽出処理時間についても、目的や使用する装置、処理温度に応じて適宜調整が可能であるが、生産効率、安定性、得られる極細長繊維不織布の品質・性能等を考慮すると、バッチ処理の場合には合計で10〜200分(特に10〜150分)程度であるのが好ましく、連続処理の場合は1〜50分(特に1〜20分)であるのが好ましい。
抽出処理(特に、水による抽出処理)については、複合長繊維から極細長繊維への分割性及び分繊性を向上させる目的で、50℃以下(例えば、10〜50℃程度、通常、室温付近)の温度から抽出処理を開始し、徐々に水温を高めて、所定の温度(例えば、80〜120℃、好ましくは80〜110℃程度)まで昇温し、この温度範囲で5分〜10時間(特に10分〜5時間)程度抽出処理を行う操作を用いるのが効果的である。このような処理は、複合繊維の複合断面構造が、ミカンの横断面型又は扇型構造、貼り合せ型構造、海島型構造などである場合に特に効果的である。
徐々に昇温する速度としては0.2〜30℃/分(特に、1〜20℃/分)程度が好ましい。このような条件で徐々に昇温すると、水溶性熱可塑性樹脂成分が溶解時に収縮し、その結果、残存成分である水不溶性熱可塑性樹脂で構成された極細長繊維が微細な捲縮を有することとなり、極細長繊維の分割性が向上し、得られる極細長繊維不織布の吸水性がより向上する。好ましい収縮率としては0.1〜10%(特に、0.3〜7%)程度である。微細な捲縮の程度としては、例えば、捲縮率1〜50%、好ましくは1〜40%、さらに好ましくは1〜30%程度である。公知の長繊維不織布は、一般に、溶融紡糸した繊維を延伸して、捕集面に単に積層させているため、不織布を構成する繊維は捲縮を有していない。一方、不織布を構成している繊維は、その製造途中で水溶性熱可塑性樹脂(特に水溶性熱可塑性PVA)が収縮することが原因で捲縮を有する。そのため、用途によっては、優れた吸着効果を有する。
このような方法以外にも、複合長繊維の分割性を向上させる方法として、高圧水流の噴射により分割する方法、加圧ロール間を通過させることによる分割方法など、種々の方法が適用可能であり、水溶性熱可塑性樹脂を抽出除去する方法と併用して行われる。
不織布の含水率は、例えば、不織布中0.001重量%以上(例えば、0.001〜5重量%)程度であり、好ましくは0.005重量%以上(例えば、0.005〜1重量%)、さらに好ましくは0.01重量%以上(例えば、0.01〜0.5重量%)である。さらに、含水率は0.05〜0.5重量%程度であってもよい。含水率が少なすぎると、不織布の吸水性が低下する。
本発明では、前記含水率を維持するため、乾燥後、もしくは熱カレンダーロールなどによる加圧処理後、新たに極細長繊維不織布に水分を付与する工程を設けることができる。水分を付与する方法に特に制限はなく、例えば、不織布表面に水を噴霧する方法、恒温恒湿器内で調湿する方法、水浴などに短時間浸漬処理する方法等、適宜選択することができる。
本発明で規定する吸水性を満足するため、水溶性熱可塑性樹脂を抽出処理した後の乾燥温度は、例えば、120℃以下(例えば、30〜120℃)、好ましくは100℃以下(例えば、40〜100℃)、さらに好ましくは90℃以下(例えば、50〜90℃)程度であり、室温であってもよい。乾燥温度が高すぎると、残存する水溶性熱可塑性樹脂(特に水溶性熱可塑性PVA)の結晶化が進行することにより不織布中の含水率が低下し、吸水性能が低下する。
乾燥時間も、目的や使用する装置、乾燥温度に応じて適宜調整が可能であるが、生産効率、安定性、得られる極細長繊維不織布の品質や性能などを考慮すると、バッチ処理を行う場合には24時間以内(例えば、1分〜24時間)程度であり、連続処理の場合は1時間以内(例えば、1分〜1時間)程度である。
水溶性熱可塑性樹脂の大部分を除去した不織布は、極細長繊維の集束体である極細長繊維束から実質的に形成されている。その結果、本発明の極細長繊維不織布は、集束体であることにより、従来の一般的な個々の極細繊維がそれぞれ独立している場合と比べ、毛羽が発生しにくく、所定量の水溶性熱可塑性樹脂を残存させ易くなる。そのため、不織布の吸水性が向上し、更に不織布の形態安定性も向上する。
なお、水流絡合などの絡合方法を用いて集束状態を解き、極細長繊維を集束体から離れて独立して存在させることも可能である。このような方法は柔軟性を付与したい場合に効果的であり、絡合の程度を変更することにより、適宜調整が可能である。
更に、本発明では、残存している水溶性熱可塑性樹脂が多い場合、例えば、不織布中に水溶性熱可塑性樹脂が1重量%以上存在している場合には、不織布を構成する繊維同士を残存している水溶性熱可塑性樹脂により固定されるため、不織布の形態を保つ上からも好ましくなる。
本発明において、不織布の目付けは、生産性及び得られた不織布の加工性などの点から、例えば、5〜500g/m2、好ましくは10〜400g/m2、さらに好ましくは30〜300g/m2(特に40〜300g/m2)程度であり、例えば、50〜300g/m2程度であってもよい。
本発明で使用される水溶性熱可塑性樹脂のうち、水溶性熱可塑性PVAなどは、生分解性を有しており、活性汚泥処理に供したり、土壌に埋めておくと、水と二酸化炭素に分解される。PVAを溶解した後の廃液(排水)の処理には活性汚泥法が好ましい。PVAを溶解した水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
本発明では、このようにして得られた極細長繊維不織布(又は極細長繊維不織布ウエブ)は、水流絡合や部分的な熱圧融着(熱エンボス加工など)、機械的圧縮(ニードルパンチなど)などの処理により形態を保持する方法が適用できる。これらの処理は、単独で処理してもよく、二種以上を組み合わせて処理してもよい。これらのうち、形態保持性などの点から、水流絡合、熱エンボス加工などの熱圧融着が好ましく、特に、水流絡合と熱エンボス加工とを組み合わせてもよい。
水流絡合においては、具体的には、高圧の水流絡合機を用いて、不織布に対して、高圧水流を噴射させることにより、極細長繊維を交絡処理することにより、不織布としての形態安定性を向上させる。水流絡合における圧力としては、例えば、0.1〜300MPa、好ましくは1〜100MPa、さらに好ましくは5〜50MPa程度である。水流絡合機の通過速度としては、例えば、0.1〜50m/分、好ましくは0.5〜30m/分、さらに好ましくは1〜10m/分程度である。水流絡合は、どの段階で行ってもよいが、水溶性熱可塑性樹脂を親水性溶媒で抽出する場合には、通常、抽出前に行われる。
熱エンボス加工においては、具体的には、加熱された凹凸模様の金属ロール(エンボスロール)と加熱平滑ロールとの間に、得られたウエブを通して、部分的な熱圧融着により長繊維同士を結合させ、不織布としての形態安定性を向上させる。熱圧着処理における加熱ロールの温度、熱圧する圧力、処理速度、エンボスロールの模様などは目的に応じて適宜選択することができる。また、熱圧着をどの段階で行うかについても特に制限はなく、必要に応じて適宜実施することが可能である。例えば、水溶性熱可塑性樹脂を親水性溶媒で抽出する前であってもよいし、高圧水流の噴射による分割極細化の後でもよい。このようなエンボス模様で熱圧着された部分は、形態安定性と柔軟性、吸水性の観点から、不織布の表面積の1〜40%(好ましくは5〜30%、さらに好ましくは10〜25%)程度である。
特に、本発明では、熱エンボス加工の後、水流絡合すると、柔軟性などの不織布の特性を向上できるとともに、形態保持性も向上できる。
さらに、不織布は目的に応じ、プラズマ放電処理やコロナ放電処理による親水化処理などの後加工処理を行ってもよい。
不織布は良好な吸液性能(特に吸水性能)を示すが、さらに吸水性を向上させる目的で、必要に応じて各種親水化処理を行ってもよい。親水化処理方法としては、例えば、スルホン化処理、コロナ放電やプラズマ放電などの放電処理、グラフト重合処理、フッ素ガス処理などが挙げられる。
不織布は、用途や防水層の厚みなどに適宜選択できるが、例えば、10μm〜5mm程度の範囲から選択でき、例えば、30μm〜3mm、好ましくは50μm〜2mm、さらに好ましくは100μm〜1mm(特に200〜500μm)程度である。
(防水層)
防水層は、防水性を有し、かつ積層シートの柔軟性を損なわない点から、軟質成分で構成されている。軟質成分には、熱可塑性樹脂(例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂など)、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなど)、ゴム成分(例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、アクリル系ラテックス、エチレン−α−オレフィン系共重合体、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴムなど)などが含まれる。これらの軟質成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、硬質樹脂であってもゴム成分や可塑剤(鉱物オイルやパラフィンオイルなど)などと組み合わせて、軟質樹脂組成物として使用してもよい。これらの軟質成分のうち、柔軟性及び成形性などの点から、軟性樹脂、特に、オレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーが好ましい。
オレフィン系樹脂には、オレフィンの単独又は共重合体が含まれる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどのα−C2-16オレフィン(好ましくはα−C2-10オレフィン、さらに好ましくはα−C2-8オレフィン、特にα−C2-4オレフィン)などが挙げられる。これらのオレフィンは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらのオレフィンのうち、エチレンが好ましい。また、オレフィン系樹脂は、オレフィンと共重合性モノマー(ビニル系単量体など)との共重合体であってもよい。
熱可塑性エラストマーのうち、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、軟質相がポリブタジエン、ポリイソプレン又はそれらの水添物などのジエン成分で構成され、硬質相がポリスチレンで構成されたエラストマーなど挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、軟質相がエチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムで構成され、硬質相がポリエチレンやポリプロピレンで構成されたエラストマーなどが挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、軟質相がポリオキシテトラメチレングリコールなどの脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルで構成され、硬質相がポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレートで構成されたエラストマーなどが挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、軟質相がポリオキシテトラメチレングリコールなどの脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルで構成され、硬質相がエチレングリコールなどの短鎖グリコールとジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートとから得られるポリウレタン単位で構成されたエラストマーなどが挙げられる。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、軟質相がポリオキシテトラメチレングリコールなどの脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルで構成され、硬質相がポリアミド6やポリアミド12などのポリアミド単位で構成されたエラストマーなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーの分子構造は、特に制限されず、トリブロック共重合体、星型ブロック共重合体、マルチブロック共重合体、グラフト共重合体、イオン架橋重合体などであってもよい。これらの熱可塑性エラストマーのうち、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどが好ましい。
さらに、医療材料として使用する場合には、γ線などの活性光線による滅菌処理がなされるが、このような滅菌処理に対する耐性の点から、オレフィン単位としてエチレン単位を含むポリエチレン系樹脂が特に好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリレート共重合体などが挙げられる。
防水層の厚みは、例えば、用途や材質、不織布の厚みなどに適宜選択できるが、シートの柔軟性を損なわない範囲、例えば、1μm〜1mm程度の範囲から選択でき、通常、3〜500μm、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜100μm(特に10〜50μm)程度である。
本発明の積層シートは、通常、前記不織布と防水層との二層で構成されているが、用途に応じて三層で構成してもよい。例えば、表面、裏面の両面からの吸水性を向上させる目的で使用する場合には、防水層の両面に不織布を形成してもよい。
本発明の積層シートの製造方法としては、慣用のラミネート方法を使用できる。ラミネートは、例えば、接着成分を介在させて積層してもよいが、通常、防水層を構成する軟質成分を溶融させて、不織布と積層する熱ラミネート法が用いられる。防水層を構成する軟質成分を、軟質成分を構成する樹脂の溶融温度よりも高い温度で、不織布の上に、溶融押出しすることによりラミネートできる。溶融押出後、必要に応じて、圧力を加えて熱プレスしてもよい。本発明では、二層構造で高いドレープ性を発現できるため、このような簡便な方法で積層シートを製造できる。
本発明の積層シートは、毛羽立ちや繊維屑の発生が抑制され、高いドレープ性及び柔軟性を有しているため、このような特性を必要とする様々な用途に有用である。特に、本発明の積層シートは、体液や血液、薬液などの液体に晒される機会が多く、高度な衛生性を要求される医療材料として使用できる。さらに、柔軟性が高く、肌触りも良いため、人体に接触することの多い医療材料に適している。このような医療材料としては、例えば、手術室用品類、病棟検査用品類、滅菌用品類、ペイシェントケア用品類などの各種医療材料などが挙げられる。
中でも、本発明の積層シートは、毛羽立ちが少なく、繊維屑の発生も抑制されるため、手術室での医療材料、例えば、ドレープ、パック、手術着、ガウン、キャップ、マスク、タオル、ガーゼ、シーツなどに適している。手術室内では、二次汚染を防ぐため、特に高度な衛生性が必要とされるとともに、空調管理も厳重に行われているため、毛羽立ちが少ないと、空調機のフィルターの目詰まりも抑制される。さらに、手術における患部に適用され、高度なドレープ性を要求される手術用ドレープに本発明の積層シートを用いると特に効果的である。
このような医療材料において、本発明の積層シートの使用形態は、特に限定されず、用途に応じて、使い分けることができ、例えば、手術用ドレープにおいて、手術箇所近傍の開口部では、血液や体液の吸収性を向上させるため、表面を不織布として使用してもよく、また、防水層の両面に不織布を形成した三層構造の積層シートを使用してもよい。また、手術用ガウンや手術着などにおいて、撥水性が要求される場合には、防水層を表面として使用してもよい。
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例で使用した可塑剤及び熱可塑性ポリマー(水不溶性熱可塑性樹脂)の詳細について以下に示す。さらに、実施例において、各物性値は以下のようにして測定した。なお、実施例中の「部」及び「%」はことわりのない限り、重量基準である。
[可塑剤及び熱可塑性ポリマー]
可塑剤:ソルビトール1モルにエチレンオキサイドを平均2モル付加した化合物
PET:ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.7、融点255℃)
Nylon:6−ナイロン(固有粘度2.6、融点222℃)
PP:ポリプロピレン(温度230℃、荷重21.18Nのメルトインデックス(MI)35)。
[PVAの分析方法]
PVAの分析方法は特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。なお、変性量は、変性ポリビニルエステル又は変性PVAを用いて、500MHz 1H−NMR(日本電子(JEOL)(株)製、GX−500)装置によって測定することにより求めた。また、アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光法で求めた。
[融点]
PVAの融点は、示差走査熱量分析(DSC)装置(メトラー社、TA3000)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を調べた。
[紡糸状態]
溶融紡糸の状態を目視で観察して、次の基準で評価した。
◎:極めて良好
○:良好
△:やや難あり
×:不良。
[不織布の状態]
得られた不織布を目視観察および手触観察して、次の基準で評価した。
◎:均質で極めて良好
○:ほぼ均質で良好
△:やや難あり
×:不良。
[不織布中の水溶性熱可塑性樹脂の割合]
30cm×30cmの不織布試料をオートクレーブ中で2000mlの水に浸漬し、120℃で1時間加熱処理した。処理後、熱水中から不織布を取り出して軽く搾り、抽出液を取り換えて同様の操作を実施した。計3回の繰り返し処理により、不織布中のPVAを完全に抽出除去した。処理前後の重量変化より、不織布中の水溶性熱可塑性樹脂の割合を求めた。
[不織布表面のPVAによる被覆率]
X線光電子分光法(XPS)により不織布表面の構成元素および結合状態を解析し、その結果より、不織布表面を占めるPVAの割合を算出した。
[不織布の含水率]
30cm×30cmの不織布試料を105℃で1晩乾燥した。乾燥前後の重量変化より不織布の含水率を求めた。
[平均繊維径]
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布の表面を500倍に拡大した写真を撮影し、この写真に2本の対角線を引き、この対角線と交わった繊維の太さを倍率換算した値を用いた。そしてこれら繊維の100本の平均値を平均繊維径とし、この繊維径を直径とする円を求め、その円を断面積として繊維の繊度を算出した。
[不織布の目付]
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
[不織布の引張強度]
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
[保水量]
予め絶乾した後に精秤した20cm×20cmの積層シートを、20℃の純水500ml中に5分間浸漬後、シートを水上に引き上げた状態で約30秒間保ち、水滴が落ちなくなった時点での全重量を精秤して不織布の保水量を求めた。
[吸水性]
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
[耐摩耗性]
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準じて評価し、不織布表面の状態を以下の基準に従って4段階に官能評価した。
◎:毛羽立ちなく極めて良好
○:わずかに毛羽立ちあるが良好
△:毛羽立ち多くやや難あり
×:表面の荒れが激しく使用難。
実施例1
[エチレン変性PVAの製造]
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル30kgおよびメタノール32kgを仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで、反応槽圧力が5.5kg/cm2(5.5×105Pa)となるようにエチレンを導入した。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。前記重合槽内温を60℃に調整した後、前記開始剤溶液180mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.5kg/cm2(5.5×105Pa)に、重合温度を60℃に維持し、前記開始剤溶液を用いて620ml/時間でAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に重合率が68%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで、減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。
得られたポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液2kg(溶液中のポリ酢酸ビニル1kg)に、480g(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.1)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。アルカリを添加した後、約5分経過した後、ゲル化物を粉砕機にて粉砕し、60℃で3時間放置してけん化を進行させた後、0.5%酢酸濃度の水とメタノールとの混合溶液(酢酸水/メタノール=20/80(重量比))10kgを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAに、水とメタノールとの混合溶液(水/メタノール=20/80(重量比))20kgを加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、さらにメタノール10kgを加えて室温で3時間放置洗浄した。その後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVA(PVA−1)を得た。
得られたエチレン変性PVAのけん化度は98.9モル%であった。また、この変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100部に対して0.0006部であった。
また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。この精製ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(日本電子(株)製、GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は8.3モル%であった。
前記ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレン変性PVAを得た。このPVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ360であった。さらに、この精製された変性PVAの5%水溶液を調製し、厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。このフィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社製、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ211℃であった。
上記で得られたPVAをラボプラストミル(東洋精機(株)製、2軸、20mmφ、L/D=28)を用いて、設定温度225℃、スクリュー回転数200rpmで溶融押出することによりペレットを製造した。得られたPVA及びそのペレットについて、表1に示す。
Figure 2006289728
上記で得られたPVA(PVA−1)ペレットと、固有粘度が0.7、融点が255℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を準備し、それぞれのポリマーを別の押出機で加熱して溶融混練し、不織布を構成する複合長繊維に占める重量比率がPET/PVA=85/15になるように280℃の16分割型(ミカン型(1))複合紡糸パックに導き、ノズル径0.35mmφ×1008ホール、吐出量1050g/分、せん断速度2500sec-1の条件で紡糸口金から吐出させた。吐出された紡出フィラメント群を20℃の冷却風で冷却しながら、ノズルから80cmの距離にあるエジェクターにより高速エアーで3500m/分の引取り速度で牽引細化させ、開繊したフィラメント群をエンドレスに回転している捕集コンベア装置上に捕集堆積させ長繊維ウエブを形成させた。紡糸状態は、断糸は全く見られず、断面形状も極めて良好であった。得られた複合長繊維の断面図(長さ方向に対して垂直方向の断面図)を図1に示す。繊維の断面構造は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールで構成された相1と、熱可塑性ポリマーで構成された相2とからなる16分割型(ミカン型(1))である。
次いで、このウエブを60℃に加熱した凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧50kgf/cm(490N/cm)の圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧着させることにより、単繊維繊度3.3dtexの長繊維からなる目付85g/m2の16分割型複合長繊維不織布を得た。得られた不織布について、水流絡合機(150kgf/cm2(14.7MPa)、不織布通過速度5m/分)を用いて高圧水流を噴射させることにより、複合長繊維を分割処理した。
得られた複合長繊維不織布約50mについて、続いてサーキュラー型染色機(水浴800L、不織布重量に対する水浴比350倍、不織布回転速度約50m/分)を用い、PVA成分の抽出処理を行った。複合長繊維不織布投入後、室温から約5℃/分の速度で95℃まで昇温させ、さらに95℃にて20分間熱水処理を行った。複合長繊維不織布中のPVA成分を抽出除去した。抽出除去後の不織布中PVAの割合は0.1%であった。
次いで、このウエブを連続処理にて80℃で3分間熱風乾燥させることにより、ポリエチレンテレフタレートの極細長繊維不織布を得た。乾燥後の不織布の含水率は0.08%であった。複合長繊維不織布の製造条件を表2に示す。
Figure 2006289728
このようにして得られた不織布のPVA残存率、PVA被覆率、繊度、目付及び各種基礎物性評価結果を表3に示す。
さらに、押出ラミネート装置(30mmφ)を用いてポリエチレンを溶融押出し、得られた不織布上に厚み20μmにて積層した後、ニップロールにて圧着処理し、積層シートを作製した。得られた積層シートの特性の評価結果を表3に示す。
Figure 2006289728
いずれの評価においても良好な性能を示した。また、得られた積層シートをヒートシールにより縫製して作製したメディカルドレープは、柔軟で人体に被覆した際のドレープ性に優れ、毛羽立ちもなく、良好な吸液性及び保液性を示した。
実施例2〜9
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを用い、表2に示す複合紡糸用口金、熱可塑性ポリマーを用い、表2に示す紡糸条件を採用し、適宜ノズル−エジェクター間距離およびラインネット速度を調整する以外は実施例1と同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブを得た後、表2に示すエンボス処理温度にて部分熱圧着して複合長繊維不織布とした。得られた複合長繊維不織布について、実施例1と同様にサーキュラー染色機を用いてPVA成分を抽出し、80℃で3分間熱風乾燥させることにより、目的とする極細長繊維不織布を得た。複合繊維成分の重量比率はパックへのポリマー導入量を変えることで調整させた。得られた不織布のPVA残存率、PVA被覆率、繊度、目付、及び各種基礎物性評価結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様にして得られた積層シートについての評価結果も表3に示す。
なお、実施例2では、水流絡合処理は行わず、実施例4では、水流絡合処理の代わりにニードルパンチ処理を行った。ニードルパンチ条件として、1バーブのニードル針を用い、針深度8mm、パンチ数1000パンチ/cm2を用いた。また、実施例6〜8における複合長繊維の断面図(長さ方向に対して垂直方向の断面図)を図2に示す。図2は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールで構成された相1と、熱可塑性ポリマーで構成された相2とからなる貼り合せ型複合繊維の断面構造を示す。貼り合せ型複合繊維は、繊維断面で熱可塑性ポリマーが6相部分、PVAが5相部分となるように導いた。さらに、実施例9における複合長繊維の断面図(長さ方向に対して垂直方向の断面図)を図3に示す。図3は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールで構成された相1と、熱可塑性ポリマーで構成された相2とからなる海島型複合繊維の断面構造を示す。海島型複合繊維は、繊維断面で熱可塑性ポリマーが島成分、PVAが海成分となるように導いた。
比較例1〜3
表2に示す水不溶性熱可塑性樹脂、紡糸条件を適用し、適宜ノズル−エジェクター間距離およびラインネット速度を調整する以外は実施例1と全く同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブを得た後、表2に示すエンボス処理温度にて部分熱圧着して複合長繊維不織布とした。複合繊維成分の重量比率はパックへのポリマー導入量を変えることで調整させた。紡糸状態はいずれも良好であった。
得られた複合長繊維不織布について、実施例1と同様にPVA成分を抽出し、乾燥させることにより、目的とする極細長繊維不織布を得た。不織布中のPVAの割合は、熱水温度および処理時間を適宜変更することにより調整した。
極細長繊維不織布のPVA残存率、被覆率、繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様にして得られた積層シートについての評価結果も表3に示す。
なお、比較例1及び2における複合長繊維の断面図(長さ方向に対して垂直方向の断面図)を図4に示す。繊維の断面構造は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールで構成された相1と、熱可塑性ポリマーで構成された相2とからなる8分割型(ミカン型(2))である。
比較例1については、長繊維不織布の繊度が大きく、その結果、不織布の吸水性が低下した。比較例2については、熱水処理でPVAがほぼ完全に除去されたことにより、不織布の吸水性が低下した。比較例3については、熱水処理後のPVA残存率が高くなり、吸水性が低下した。
比較例4
固有粘度が0.7、融点が255℃のポリエチレンテレフタレートを準備し、押出機内で加熱して溶融混練し、280℃の紡糸パックに導き、ノズル径0.35mmφ×1008ホール、吐出量620g/分、せん断速度3000sec-1の条件で紡糸口金から吐出させ、紡出フィラメント群を20℃の冷却風で冷却しながら、ノズルから80cmの距離にあるエジェクターにより高速エアーで4000m/分の引取り速度で牽引細化させ、開繊したフィラメント群をエンドレスに回転している捕集コンベア装置上に捕集堆積させ、ポリエチレンテレフタレートからなる長繊維ウエブを形成した。
次いで、このウエブを180℃に加熱した凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧50kgf/cm(490N/cm)の圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧着させることにより、単繊維繊度1.56dtexの長繊維からなる目付54g/m2の長繊維不織布を得た。
得られた不織布のPVA残存率、被覆率、繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様にして得られた積層シートについての評価結果も表3に示す。ポリエチレンテレフタレートのみでは吸水性を示さなかった。
比較例5
比較例4で得られた長繊維不織布をPVA−1の1%水溶液に浸漬し、95℃で1時間加熱処理を行った。処理後、長繊維不織布を引き上げ、そのまま80℃にて3分間熱風乾燥させることにより、不織布中にPVA−1を含有する不織布を得た。不織布中のPVA残存率は3%であった。得られた不織布のPVA残存率、被覆率、繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様にして得られた積層シートについての評価結果も表3に示す。PVAを含有させることで吸水性を付与することができたが、繊維径が大きいため、吸水性能は充分でなかった。
比較例6
メルトフローレート(MFR)が400g/10分のポリプロピレンを溶融押出機を用いて230℃で溶融混練し、溶融したポリマー流をメルトブローダイヘッドに導き、ギヤポンプで計量し、直径0.3mmΦの孔を0.75mmピッチで一列に並べたメルトブローンノズルから吐出させ、同時にこの樹脂に240℃の熱風を噴射して吐出した繊維を成形コンベア上に捕集し、目付70g/m2のポリプロピレン系極細繊維不織布を得た。
得られた極細繊維不織布の繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様にして得られた積層シートについての評価結果も表3に示す。このシートは繊維強度が小さいため、毛羽の発生が激しく、単独での利用が困難であった。
比較例7
比較例6で得られた極細繊維不織布をPVA−1の1%水溶液に浸漬し、95℃で1時間加熱処理を行った。処理後、極細繊維不織布を引き上げ、そのまま80℃にて3分間熱風乾燥させることにより、不織布体中にPVA−1を含有する極細繊維不織布を得た。極細繊維不織布中のPVA残存率は1.8%であった。
得られた極細繊維不織布の繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様にして得られた積層シートについての評価結果も表3に示す。PVAを含有させることで吸水性を付与することができたが、このシートは繊維の強度が小さいため、毛羽の発生が激しく、この不織布単独での利用は困難であった。
比較例8
ポリエチレンテレフタレート短繊維にレーヨン短繊維を載せ、水流絡合機(水圧150kgf/cm2(14.7MPa)、不織布通過速度3m/分)を用いて高圧水流を噴射させることにより、混合繊維不織布を得た。得られた不織布の繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様にして得られた積層シートについての評価結果も表3に示す。このシートは短繊維から構成されるため、繊維の脱落、毛羽立ちが多くみられた。
図1は、本発明に使用される複合長繊維の断面構造の一例を示す断面図である。 図2は、本発明に使用される複合長繊維の断面構造の他の一例を示す断面図である。 図3は、本発明に使用される複合長繊維の断面構造の他の一例を示す断面図である。 図4は、本発明に使用される複合長繊維の断面構造の他の一例を示す断面図である。
符号の説明
1…水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールで構成された相
2…熱可塑性樹脂で構成された相

Claims (15)

  1. 不織布と防水層とで形成された積層シートであって、前記不織布が、平均繊度0.5dtex以下であり、かつ水不溶性熱可塑性樹脂で構成された極細長繊維で形成され、かつ水溶性熱可塑性樹脂を前記不織布中0.001〜10重量%の割合で含有する積層シート。
  2. 20℃の水中に5分間浸漬した後の保水量が300ml/m2以上である請求項1記載の積層シート。
  3. 不織布表面の30%以上が水溶性熱可塑性樹脂で被覆されている請求項1記載の積層シート。
  4. 水溶性熱可塑性樹脂が、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールである請求項1記載の積層シート。
  5. 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが、炭素数4以下のα−オレフィン単位及びC1-4アルキル−ビニルエーテル単位から選択された少なくとも一種の単位を0.1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項4記載の積層シート。
  6. 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが、エチレン単位を3〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項4記載の積層シート。
  7. 水溶性熱可塑性樹脂の割合が不織布中0.001〜4重量%である請求項1記載の積層シート。
  8. 水不溶性熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1記載の積層シート。
  9. 水不溶性熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂である請求項1記載の積層シート。
  10. 不織布が、水流絡合、熱エンボス加工及びニードルパンチ加工から選択された少なくとも一種で処理された不織布である請求項1記載の積層シート。
  11. 防水層が、オレフィン系樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択された少なくとも1種の軟性樹脂で構成されている請求項1記載の積層シート。
  12. 防水層がポリエチレン系樹脂で構成されている請求項1記載の積層シート。
  13. 請求項1記載の積層シートで構成された医療材料。
  14. 手術用ドレープである請求項13記載の医療材料。
  15. 水溶性熱可塑性樹脂及び水不溶性熱可塑性樹脂で構成された複合長繊維の不織布又は不織ウエブから前記水溶性熱可塑性樹脂を除去して得られた不織布に、防水層を積層する請求項1記載の積層シートの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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