JP2006286536A - プラズマ生成方法、誘導結合型プラズマ源、およびプラズマ処理装置 - Google Patents
プラズマ生成方法、誘導結合型プラズマ源、およびプラズマ処理装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができる誘導結合型プラズマ源を提供する。
【解決手段】誘導結合型プラズマ源は、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室2と、プラズマ生成室2の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポート3と、プラズマ生成室2の壁に沿って配置されたアンテナ20とを備えている。アンテナ20の両端部21,22の中間点25は電気的に接地される。誘導結合型プラズマ源は、アンテナ20の両端部25に高周波電力を供給してプラズマ生成室2の内部に誘導結合型プラズマPを生成する高周波電源8を備えている。
【選択図】図3
【解決手段】誘導結合型プラズマ源は、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室2と、プラズマ生成室2の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポート3と、プラズマ生成室2の壁に沿って配置されたアンテナ20とを備えている。アンテナ20の両端部21,22の中間点25は電気的に接地される。誘導結合型プラズマ源は、アンテナ20の両端部25に高周波電力を供給してプラズマ生成室2の内部に誘導結合型プラズマPを生成する高周波電源8を備えている。
【選択図】図3
Description
本発明は、プラズマ生成方法に係り、特に半導体集積デバイス、液晶ディスプレイやマイクロマシンの作製、半導体基板やガラス基板などに対する微細加工、半導体製造技術を応用したMEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)やNEMS(Nano-Electro Mechanical Systems)、CVD(Chemical Vapor Deposition)などによる基板表面への微小構造物の形成や成膜、ナノテクノロジーやμ−TAS(Total Analysis System)に用いられる誘導結合型プラズマを生成する方法に関するものである。また、本発明は、かかる誘導結合型プラズマを生成する誘導結合型プラズマ源に関するものである。さらに、本発明は、かかる誘導結合型プラズマ源を備えたプラズマ処理装置に関するものである。
近年、半導体集積デバイスの高集積化に伴い、微細加工に対する要求が高まってきた。被処理物に対して微細加工を施すためのエッチングや成膜を行うために、プラズマを利用したプラズマ処理装置が多く用いられている。このようなプラズマ処理装置はプラズマを生成するためのプラズマ源を含んでいるが、高速な微細加工の要求に応えるために、高密度プラズマを発生させる技術の研究開発が進展してきた。このような高密度プラズマを発生させるための代表的な技術として、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma)を生成する方法が知られており、現在、誘導結合型プラズマ源の開発が進んでいる。
誘導結合型プラズマの場合、高周波をプラズマ生成領域(プラズマ生成空間)に伝えるためのアンテナ構造が必要とされる。このようなアンテナ構造は、例えば、石英などの誘電体、すなわち電磁波が透過する材料からなるプラズマ生成室の周りに、中空の空芯コイル(以下、単にコイルという)を巻くだけという単純な構造である。加えて、この誘導結合型プラズマは、従来の容量結合型プラズマ(CCP:Capacitance Coupled Plasma)よりも高い密度のプラズマを容易に生成できることから、その研究開発が急速に活発化している。
上述したように、高周波を印加するためのアンテナ構造はコイル状になっているため、本明細書においては、このようなアンテナ構造を、便宜上「コイル」ということとする。したがって、単に「コイル」という場合であっても、高周波を印加するためのコイル状アンテナを意味する。
例えば、従来の誘導結合型プラズマ源を用いた微細加工装置としては、図1に示すような装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この加工装置は、石英などの絶縁物で形成されたプラズマ生成室1000と、プラズマ生成室1000の外側に配置された高周波のアンテナとして作用するコイル1010と、被処理物1020が配置された加工室1030とを備えている。コイル1010の一端は接地され、他端はマッチングボックス1040を介して高周波電源1050に接続されている。コイル1010は、銅などからなる空芯コイルであり、コイル1010の内部には水を流して水冷する場合が多い。
プラズマ生成室1000の内部は真空排気装置1060により真空排気され、ガス供給源1070からガス導入ポート1080を介して被処理物1020の微細加工等に必要な所定のプロセスガスがプラズマ生成室1000の内部に導入される。このような構成により、プラズマ生成室1000の内部に導入されたプロセスガスをプラズマ化して、プラズマP中のイオンや電気的に中性な活性な分子や原子であるラジカルを被処理物1020に照射することができる。このようにして、被処理物1020の表面に微細加工を施し、あるいは成膜を行う。
図1の加工装置は、被処理物1020を中性粒子により加工する装置に誘導結合型プラズマを応用した例を示している。すなわち、図1に示すように、プラズマ生成室1000には、電位制御電源1090に接続された電位制御電極1100が配置されており、この電位制御電極1100にバイアス電圧を印加することで、プラズマP中のイオンを加速するようになっている。そして、プラズマ生成室1000と加工室1030との間には、多数の細孔1110が形成された平板1120が配置されており、この平板1120付近においてイオンの電荷交換を行ってイオンを中性化し、中性粒子ビームを処理物1020に照射して微細加工を施すようになっている。
図1で示すように、プラズマ生成室1000は一般に円筒形状をなしており、誘導結合型プラズマ生成用のコイル1010は、プラズマ生成室1000の外部であって軸方向の略中間位置に配置されている。そして、プラズマ生成室1000の内部の概略コイル1010が配置されている軸方向の範囲(プラズマ生成領域)にプラズマPが生成される。
ところで、半導体産業においては、近年の半導体製造技術の急速な発展に伴い、主として生産性の向上を目的としたウェハの大口径化と高密度プラズマ源の採用が進められている。その結果、径が300mm以上という大口径の被処理物を、高密度プラズマ源を有するプラズマ処理装置で処理する必要が生じてきている。高密度プラズマ源としては、構造の単純さなどの理由から、上述した誘導結合型プラズマ源が採用されることが多く、近年のウェハ径の拡大に伴い、必然的にプラズマ源の口径も大きくなってきている。プラズマ源の口径が大きくなると、プラズマ処理装置における誘導結合型プラズマ源のコイル状アンテナの径も大きくなることになる。
ここで、誘導結合型プラズマの生成を電気回路の見地から簡単に考察する。誘導結合型プラズマの生成には、例えば13.56MHzの発振周波数を有する高周波電源を用いる。誘導結合型プラズマを生成するための電気回路は高周波回路とよばれ、上述した周波数(13.56MHz)のように1MHzを超える高周波回路の場合は、インピーダンス整合を取る必要がある。
インピーダンスとは交流抵抗のことであり、直流では現れなかった抵抗、すなわち回路内のコイル成分(インダクタンス:L)とコンデンサ成分(キャパシタンス:C)が周波数特性を有するために現れてくる抵抗である。インピーダンスの単位は、直流抵抗と同じオーム(Ω)である。一般に、負荷の総インピーダンスZは、以下の式(1)で表される。
Z=ZR+ZL+ZC (Ω)・・・(1)
ここで、ZRは周波数依存性のない直流抵抗分(Ω)、ZLはコイル成分によるインピーダンス(Ω)、ZCはコンデンサ成分によるインピーダンス(Ω)である。なお、各インピーダンスはベクトル量であるが、ここでは概念的説明にとどめるので、単にスカラーで表すこととする。
Z=ZR+ZL+ZC (Ω)・・・(1)
ここで、ZRは周波数依存性のない直流抵抗分(Ω)、ZLはコイル成分によるインピーダンス(Ω)、ZCはコンデンサ成分によるインピーダンス(Ω)である。なお、各インピーダンスはベクトル量であるが、ここでは概念的説明にとどめるので、単にスカラーで表すこととする。
ZRは周波数依存性がないので、直流抵抗分R(Ω)をそのまま適用することができるが、ZLおよびZCは周波数依存性を有している。高周波の周波数をf(Hz)とすると、ZR、ZL、ZCは、それぞれ以下の式(2)〜式(4)のように表される。
ZR=R (Ω)・・・(2)
ZL=2πfL (Ω)・・・(3)
ZC=1/2πfC (Ω)・・・(4)
ここで、Lはコイルのインダクタンス(単位ヘンリー(H))、Cはコンデンサ容量(単位ファラッド(F))である。
ZR=R (Ω)・・・(2)
ZL=2πfL (Ω)・・・(3)
ZC=1/2πfC (Ω)・・・(4)
ここで、Lはコイルのインダクタンス(単位ヘンリー(H))、Cはコンデンサ容量(単位ファラッド(F))である。
上記式(2)〜式(4)により、式(1)は、以下の式(5)のように書き換えることができる。
Z=R+2πfL+1/2πfC (Ω)・・・(5)
Z=R+2πfL+1/2πfC (Ω)・・・(5)
次に、「インピーダンス整合を取る」とは、高周波回路を形成する上で、インピーダンスが一致しない部分を一致させることを意味するが、具体的に誘導結合型プラズマの生成にあてはめて考えると理解しやすい。プラズマ生成に際しては、高周波電源から高周波電力が供給されるが、この高周波電力は、一般に、50Ωのインピーダンス(正しくは特性インピーダンスという)を持つコネクターおよびケーブルを介して負荷に供給される。誘導結合型プラズマ生成における負荷は、プラズマ生成用のアンテナのインピーダンスと生成されたプラズマ自身のインピーダンス、およびケーブルやアンテナ、プラズマ自身を介して大地(アース)と形成されるキャパシタンスを含む、これらの総インピーダンスによって決まる。
上述したように、プラズマ生成用の高周波電源から供給された高周波電力は、インピーダンス50Ωの配線等を介して供給されるが、プラズマ生成用のアンテナのインピーダンスは50Ωでないことがほとんどである。ましてや、プラズマ等を含めた総インピーダンスが50Ωでないことは言うまでもない。したがって、高周波電力を供給する高周波電源を直接アンテナに接続した場合、ケーブルとアンテナとの接続部でインピーダンスの不一致が生じることになる。これをインピーダンス不整合という。そして、このようなインピーダンス不整合を電気回路的に解消することを「インピーダンス整合を取る」という。
インピーダンス整合を取らなかった場合は、インピーダンス不整合が生じている場所で電力の反射が生じる。プラズマ処理装置など高出力の高周波電源を用いるような装置や機器においては、インピーダンス不整合により、電源の破壊や回路の焼損、高周波火傷や火災に至ることすらある。このようにインピーダンス不整合は危険であるため、高周波回路を形成するときには必ずインピーダンス整合を取る必要がある。
インピーダンス整合を取るためは、図1に示すように、高周波電源1050と負荷との間にマッチングボックス1040を挿入する。このマッチングボックス1040は、負荷であるプラズマ(図1に示す場合は誘導結合型プラズマP)、アンテナ(コイル1010)、およびマッチングボックス1040を含めたインピーダンス、すなわち総インピーダンスが高周波電源1050から見て50Ωとなるように、真空バリコンを逆L字接続と呼ばれる結線方法などで結線した整合回路を設けたものである。この整合回路が組み込まれた箱状の回路ボックスをマッチングボックスと呼んでいる。
マッチングボックスには、大きく分けて誘導結合型プラズマ用のマッチングボックスと容量結合型プラズマ用のマッチングボックスとがある。誘導結合型プラズマ用マッチングボックスは、誘導結合型プラズマ生成用コイルのインダクタンスに合わせて設計されている。一般的で安価な誘導結合型プラズマ用マッチングボックスの負荷インダクタンス対応値は、真空バリコンの入手しやすさなどを考慮すると、およそ0.5μH〜2μH程度の範囲である。本明細書においては、このような範囲にある負荷インダクタンス対応値を有するマッチングボックスのことを「一般的なマッチングボックス」ということとする。負荷のインダクタンスが上述した範囲にない場合には、マッチングボックス内に用いている回路を再設計し、真空バリコンの性能仕様から見直さなければならないため、装置価格の上昇を招くことになる。なお、容量結合型プラズマ用マッチングボックスについては、本出願内容との関連性が低いので、ここでは説明を省略する。
コイルとマッチングボックスとを備えた誘導結合型プラズマ源の場合、負荷の総インピーダンスを決める主たる成分はコイルのインダクタンスである。したがって、実用上は、コンデンサ成分であるZCを無視してもよく、上記式(5)は以下の式(6)のようになる。
Z=R+2πfL (Ω)・・・(6)
Z=R+2πfL (Ω)・・・(6)
この式(6)から、誘導結合型プラズマを生成するために印加する高周波の周波数が高くなればなるほど、コイルのインピーダンスが大きくなることがわかる。誘導結合型プラズマ生成用のアンテナは、単純なコイル状をしているなど、R成分は非常に小さいことが一般的である。したがって、印加する高周波の周波数が高くなればなるほど、総インピーダンスに占めるコイルのインダクタンスによるインピーダンスの占める割合が大きくなる。
誘導結合型プラズマの生成に用いるコイル状アンテナのインピーダンスは、印加する周波数で変化するだけではなく、コイルの形状によっても変化する。これは、コイルの形状によってコイルのインダクタンスが変化するからである。これを図2および以下の式(7)を用いて説明する。
図2において、誘導結合型プラズマに用いられるコイル状アンテナ1200のインダクタンスL(単位ヘンリー(H))は、以下の式(7)で表される。
L=K×μ×π×a2×N2÷x ・・・(7)
この式(7)は、長岡公式と呼ばれる経験則を元にした計算式であり(非特許文献1参照)、Kは長岡係数(Nagaoka coefficient)、μは透磁率(真空や非磁性体なら4π×10−7)、aはコイル1200の半径(m)、Nはコイル1200の巻数(回)、xはコイル1200の全長(m)である。
L=K×μ×π×a2×N2÷x ・・・(7)
この式(7)は、長岡公式と呼ばれる経験則を元にした計算式であり(非特許文献1参照)、Kは長岡係数(Nagaoka coefficient)、μは透磁率(真空や非磁性体なら4π×10−7)、aはコイル1200の半径(m)、Nはコイル1200の巻数(回)、xはコイル1200の全長(m)である。
式(7)から、コイル1200のインダクタンスLは、コイル1200の半径aの自乗およびコイル1200の巻数Nの自乗に比例し、コイル1200の全長xに反比例することがわかる。誘導結合型プラズマは、コイル1200を構成する巻線を水冷式銅パイプで構成することが多いため、巻線には太さがある。この場合のコイル1200の半径aは、コイル1200の中心から巻線の中心までとして近似する。コイル1200の全長xは、図2に示すように、N回巻いたコイル1200の軸方向の長さとする。
ここで、誘導結合型プラズマを生成するためのコイルのインダクタンスを実際に求めてみた。例えば、コイル長が50mmで、内径が100mm、200mm、300mm、500mm、巻数が1、2、3、5、10のコイルのインダクタンスは、それぞれ表1のように求められた。
次に、例えば300mmウェハに対応するプラズマ処理装置に誘導結合型プラズマ源を適用する場合を考える。加工均一性、プラズマ生成室の物理的な大きさ、プラズマ生成室と誘導結合型プラズマ生成用コイルとの間隙などを考慮すると、誘導結合型プラズマ源のコイルの内径として500mm程度は必要となる。表1から、コイル内径が500mmで巻数1の場合にはコイルのインダクタンスは1.00μHであることがわかる。このコイルのインダクタンスは、一般的なマッチングボックスにおける負荷インダクタンスの範囲内である0.5μH〜2μH程度の範囲にあるため、一般的なマッチングボックスを使用することができる。
プロセスによってはプラズマが生成される領域(空間体積)を大きくしたい場合がある。プラズマ生成室の外径またはコイルの内径を一定とすると、プラズマの生じる空間体積を増加させるためには、プラズマ生成領域をプラズマ生成室の軸心方向に長くするしかない。このため、コイルの巻数を増やすことがある。例えば、内径が500mmのコイルにおいて巻数を1から2に増やすと、コイルのインダクタンスは4.01μHとなり、上述した一般的なマッチングボックスにおける負荷インダクタンスの範囲から大きく外れてしまい、一般的なマッチングボックスを使用することができなくなってしまう。
このような不都合を解決するためには、マッチングボックス内の回路定数を変える必要がある。例えば、使用している真空バリコンの容量を変更する必要がある。しかしながら、この方法では、上述したように、真空バリコンの性能仕様から見直しを行う必要が生じ、装置価格の上昇を招くこととなる。さらに、この方法では、コイルの巻数を増やしているためコイルのインダクタンスが大きいままであるので、放電開始電圧および放電維持電圧が高くなり、これに伴う弊害が発生してしまう。
ここでいう弊害とは、以下に示すようなことである。まず、コイルに高周波電力を供給する部分(高周波電力給電部)の電圧が、場合によっては10kVを超えるなど非常に高くなり、装置の取り扱い上危険となる。また、この高電圧部から人身を保護するための装置やインターロックなど新たな装置仕様の追加による装置のコストアップが懸念される。さらに致命的なことに、コイルの高周波電力給電部の電位が高いために、ここで生じた電場によりプラズマ生成室内に生成されたプラズマ中のイオンが加速され、主に石英を主体とする誘電体で構成されたプラズマ生成室の壁面内側がスパッタされる。そして、このスパッタリングにより生じた飛散物が被処理物の表面に達することによって、被処理物が汚染され、歩留まりの低下が起き、プロセス全体のコストアップを招いてしまう。すなわち、装置のコストのみならず、加工対象である被処理物のコストも割高になってしまう。
あるいは、マッチングボックスの回路定数を変更することなく、コイルに直列にコンデンサを挿入する方法がある。これは、コイルの給電部の電位が高くなることを抑制するために、高周波のアンテナとして働くコイルのインピーダンスを低下させることにより、アンテナ電位を低下させるものである。例えば、コイルと直列にコンデンサを設け、コイルのインダクタンスを変えることなく、アンテナ全体のインピーダンスを低下させることにより、アンテナ電位を低下させる技術が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、この方法で取り付けるコンデンサとしては、大容量、大電力で高耐圧に対応するものが必要となる。このようなコンデンサは、しばしば特別に注文せざるを得ず、高価なものである。ましてや、このようなコンデンサを複数用いる場合には、プラズマ処理装置のコストが高くなり、ひいてはプロセスのコスト高の要因となってしまう。
また、プラズマとコイルの間にできる半径方向の電場を打ち消しあうようにして、被処理物の処理における不均一性を改善する誘導結合型プラズマ源も知られている(特許文献3参照)。この誘導結合型プラズマ源では、プラズマ生成室の周囲側壁に沿って、一端を高周波電源に接続し、他端をアース電位に接続した複数の1ターンのコイルが、プラズマ生成室の軸方向に所定の間隔をもって、しかもそれぞれの1ターンのコイルの一端を相互に周方向に一定の角度だけ変位させて配置されている。この方法によれば、高周波電力給電部の高電圧が互いに打ち消しあうので、プラズマ生成室の内部に生成される誘導結合型プラズマの密度分布を改善することができる。
しかしながら、この方法では、複数の1ターンコイルに対してそれぞれ高価な高周波電源が必要となるため、プラズマ処理装置のコストが高くなり、ひいてはプロセスのコスト高の要因となってしまう。さらに、局所的には高周波電力給電部の高電圧が残っているため、プラズマ生成室の内壁のイオンによるスパッタリングを完全に防ぐことができない。
このような問題点の本質的な解決方法として、コイルのインダクタンスを下げることが考えられる。コイルのインダクタンスを下げる手法としては、以下のような方法が考えられる。
まず、上述した式(7)から明らかなように、巻数を変えないでコイルの全長を長くする方法がある。しかしながら、コイル長の自由度は、装置設計上の制約があるためにそれほど大きくなく、現実的でないことが多い。コイルのインダクタンスを下げるためには、巻数を少なくすることが最も効果的であるが、コイルの内径が、例えば上述の例のように500mm程度もある場合には、巻数を1より少なくするほかないが、これはプラズマの均一性の問題から現実的ではない。巻数を0.5回とするなどして対応した場合は、同一のコイルを位相をずらしてプラズマ生成室の外壁に沿って配置すればよいが、高価な高周波電原やマッチングボックスなどを複数台用意しなければならないため、装置のコストアップとなり、結果としてプロセスのコストアップとなってしまう。
その他にも、プラズマ生成用アンテナ(コイル)をプラズマ生成室内に挿入し、アンテナとプラズマとの間で直接電子の授受を行うことで、アンテナのインダクタンスを低減させる方法もあるが、アンテナの材質がスパッタされることによる被処理物の表面汚染が懸念されるため、実用的ではない。
上述のように、プラズマ処理装置のプラズマ生成用アンテナであるコイルに高周波を印加する場合、コイルのインダクタンスが大きいと、適合するインダクタンスが0.5μHから2μH程度の一般的で安価なマッチングボックスを用いることができず、回路設計の変更による工数の増加、主要回路部品である高価な真空バリコンの変更などのコストアップが生じる。さらに、アンテナのインピーダンスが高くなるため、アンテナであるコイルの給電部の電位が高くなり、この電場によりプラズマ内部のイオンが加速され、主に石英を主体とする誘電体である放電管内壁がスパッタされるという現象が生じ、この現象により被処理物の表面が汚染されるという問題がある。
上述したように、このような問題を解決するために、コイルに対して直列にコンデンサを配置する方法が提案されているが、この方法では、大容量および大電力に対応するコンデンサが必要となる。このようなコンデンサはしばしば特別に注文せざるを得ず、高価なものである。したがって、プラズマ処理装置のコストが高くなり、ひいてはこのプロセスのコスト高の要因となってしまう。
さらに、上述したように、複数の巻数1のコイル状アンテナを等角度間隔で配置し、複数の高周波電源を用いるという方法が提案されているが、複数の巻数1のコイルに対してそれぞれ高価な高周波電源が必要となるため、プラズマ処理装置のコストが高くなり、ひいてはプロセスのコスト高の要因となってしまう。
また、一般に、プラズマ生成用アンテナを放電管内に挿入することでインピーダンスを低減することができるが、コイルまたはアンテナの材質がスパッタされることによる被処理物の表面汚染が発生しやすく、本発明の属する技術分野においては実用的ではない。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができるプラズマ生成方法を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができる誘導結合型プラズマ源を提供することを第2の目的とする。
さらに、本発明は、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができるプラズマ処理装置を提供することを第3の目的とする。
本発明の第1の態様によれば、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができるプラズマ生成方法が提供される。このプラズマ生成方法によれば、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入し、上記プラズマ生成室の壁に沿って配置されたアンテナの両端部の中間点を電気的に接地する。上記アンテナの両端部に高周波電力を供給して上記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する。
本発明の第2の態様によれば、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができるプラズマ生成方法が提供される。このプラズマ生成方法によれば、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入し、上記プラズマ生成室の壁に沿って配置されたアンテナの両端部を電気的に接地する。上記アンテナの両端部の中間点に高周波電力を供給して上記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する。
この方法によれば、アンテナのインダクタンスを低減し、該アンテナのインピーダンスを減らすことができる。したがって、上述したようなプラズマ生成用のアンテナの高周波電力給電部の電位が高くなることに起因する問題点をなくすことができる。このため、簡素な構成で、かつ、安価に誘導結合型プラズマを生成することができるとともに、被処理物の歩留まりも向上させることができる。
上記アンテナは、コイル状のアンテナまたは渦巻状のアンテナとすることができる。また、上記中間点は、上記アンテナの両端部から略等距離の位置とすることができる。単純なコイル状のアンテナであれば、上記中間点をコイル全長の真中点とすればよいが、渦巻状のアンテナの場合には、前後のインピーダンスを考慮して中間点を決定することが好ましい。このようにすることで、プラズマ密度の不均一を防止し、被処理物の加工の面内均一性を向上させることができる。
本発明の第3の態様によれば、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができるプラズマ生成方法が提供される。このプラズマ生成方法によれば、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入し、上記プラズマ生成室の壁に沿って配置された複数のループコイルのそれぞれの一端部を電気的に接地する。上記複数のループコイルのそれぞれの他端部に高周波電力を供給して上記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する。
上述の第1および第2の態様は、アンテナの端部と中間部とにおいてそれぞれ給電または接地される形態であるが、この第3の態様によれば、アンテナは端部でのみ給電または接地される。このような方法によっても、アンテナのインピーダンスを減らすことができるので、上述の第1および第2の態様と同様の効果を奏することができる。
本発明の第4の態様によれば、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができる誘導結合型プラズマ源が提供される。この誘導結合型プラズマ源は、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室と、上記プラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポートと、上記プラズマ生成室の壁に沿って配置されたアンテナとを備えている。上記アンテナの両端部の中間点は電気的に接地される。また、上記誘導結合型プラズマ源は、上記アンテナの両端部に高周波電力を供給して上記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する高周波電源を備えている。
本発明の第5の態様によれば、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができる誘導結合型プラズマ源が提供される。この誘導結合型プラズマ源は、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室と、上記プラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポートと、上記プラズマ生成室の壁に沿って配置されたアンテナとを備えている。上記アンテナの両端部は電気的に接地される。また、上記誘導結合型プラズマ源は、上記アンテナの両端部の中間点に高周波電力を供給して上記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する高周波電源を備えている。
上記アンテナは、コイル状のアンテナまたは渦巻状のアンテナとすることができる。上記中間点は、上記アンテナの両端部から略等距離の位置とすることができる。
本発明の第6の態様によれば、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができる誘導結合型プラズマ源が提供される。この誘導結合型プラズマ源は、電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室と、上記プラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポートと、上記プラズマ生成室の壁に沿って配置されるアンテナとを備えている。上記アンテナは、その一端部が電気的に接地された複数のループコイルを有する。また、上記誘導結合型プラズマ源は、上記アンテナの各ループコイルの他端部に高周波電力を供給して上記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する高周波電源を備えている。
このような構成により、大口径化するウェハなどの被処理物に対応することができ、また、安価で安全に、かつ被処理物への汚染が少ない誘導結合型プラズマ源を提供することができる。これによりプロセス全体のコストを低減できる。
上記誘導結合型プラズマ源は、上記誘導結合型プラズマの電位を制御する少なくとも1つの電位制御電極と、上記電位制御電極に電圧を印加する電位制御電源とをさらに備えていることが好ましい。電位制御電極に任意の電圧を印加することで、プラズマ生成室内に生成されたプラズマの電位を任意に制御し、被処理物に照射されるイオンのエネルギーを制御することができる。したがって、被処理物が樹脂のように軟らかく高温に弱い材質のものやガラスなどの絶縁物であっても、損傷が少ない加工を実現することができる。また、多数の小さな孔が形成された電位制御電極をプラズマ生成室内の下部に配置することにより、イオンの電荷交換等を利用して中性化し、中性ビームを得ることもできる。このように、上記電位制御電極により、低ダメージで絶縁物である被処理物の加工を行うことができる。
また、上記高周波電源は、正弦波による連続運転を行ってもよいし、高周波電力の出力に変調を掛けた変調運転を行ってもよい。また、一般に、プラズマ生成用のプロセスガスとして負性ガスを用いる場合には、生成したプラズマ中に負イオンができることが知られている。高周波電源を変調運転して誘導結合型プラズマを生成した場合、負イオンが連続運転の場合よりも著しく増加する。したがって、上記電位制御電極と組み合わせることで、正イオン、負イオン、中性粒子を任意に引き出し、被処理物に応じて選択的に照射し、損傷のない加工を実現することができる。
また、上記電位制御用電源は、直流、交流、または高周波の連続運転を行ってもよいし、交流または高周波の変調運転を行ってもよい。変調運転を行う場合は、基準信号となる変調信号を外部から導入してもよいし、電位制御用電源の内部に基準信号となる変調信号を有していてもよい。あるいは、上述した変調運転が可能な高周波電源から変調信号を得てもよい。また、上記高周波電源と上記電位制御用電源とを同期させるような変調信号であってもよい。高周波電源と電位制御用電源の変調の同期を行った場合には、プラズマ生成用プロセスガスに負性ガスを組み合わせることで、効率的な中性粒子の引き出しが可能になる。
本発明の第7の態様によれば、一般的で安価なマッチングボックスを用いて装置のコストを低く抑えるとともに、被処理物の歩留まりを高く維持することでプロセス全体のコストを下げることができるプラズマ処理装置が提供される。このプラズマ処理装置は、上述した誘導結合型プラズマ源と、被加工物を保持する保持台と、上記保持台が配置された加工室と、上記プロセスガスを排気する排気装置とを備えている。
近年のウェハ径の拡大に伴い、プラズマ処理用プラズマ源も対応して大きくなった。単純な構成で高密度プラズマが生成できる誘導結合型プラズマ源が活用されてきたが、プラズマ生成用アンテナのインピーダンスが高くなり、次第に対応が困難になってきた。このような問題を解決するために高価な真空バリコンを用いることなどもなされるが、上述した誘導結合型プラズマ源を用いることにより、プラズマ生成用のアンテナのインピーダンスを下げることができる。換言すると、口径300mm以上の大口径ウェハに対応したプラズマ処理装置においても、従来からの一般的なマッチングボックスを活用することが可能となるため、装置にかかるコストを低減することができる。さらに、プラズマ生成用アンテナのインピーダンスを低くできるので、プラズマ生成用高周波電力給電部の電位を低く保つことができ、誘電体でできたプラズマ生成室の内壁がイオンによってスパッタされることがなく、被加工物への汚染の心配がなくなる。
本発明によれば、半導体産業などで要請されている、被処理物の表面で汚染が生じず、高速加工可能な微細加工装置を、単純な構成でかつ低コストで提供することが可能となる。
以下、本発明に係る誘導結合型プラズマ源の実施形態について図3から図16を参照して詳細に説明する。なお、図3から図16において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る誘導結合型プラズマ源を有するプラズマ処理装置1を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態におけるプラズマ処理装置1は、電磁波が透過する材質(例えば石英などの誘電体)で形成された壁を有するプラズマ生成室2と、プラズマ生成室2の内部にプロセスガスを導入するためのガス導入ポート3と、半導体基板、ガラス、有機物、セラミックなどの被処理物4を保持する保持台5と、保持台5が配置された加工室6とを備えている。
プラズマ生成室2の外周には、プラズマ生成室2内に誘導結合型プラズマPを生成するためのアンテナとして、低インピーダンスコイル20が配置されている。このコイル20は、例えば水冷パイプにより構成される外径8mm程度のコイルである。本実施形態においては、コイル20は、プラズマ生成室2の外周に2回巻かれており、その両端部21,22はマッチングボックス7と高周波電源8とに接続されている。また、コイル20の両端部21,22からそれぞれコイル20に沿った長さで等距離にある点(中間点)25は接地されている。
高周波電源8からは、例えば13.56MHzの高周波電圧がコイル20に印加される。このコイル20と高周波電源8とによってプラズマ生成室2内に誘導結合型プラズマPが発生する。すなわち、コイル20に高周波電流を流すことでプラズマ生成室2内に磁界が生じ、磁界の時間変化によって電界が誘導され、その電界で電子が加速されて誘導結合型プラズマPが発生する。例えば、高周波電源8を変調運転した場合においても、同様にして誘導結合型プラズマPが生成される。また、例えば、負性ガスであるSF6を用い、高周波電源8の変調周期を10kHz、Duty(電源出力のON/OFFの割合)を50%とすると、正イオンと同等の数の負イオンを生成することができる。
プラズマ生成室2の上部に設けられたガス導入ポート3は、ガス供給配管(図示せず)を介してガス供給源(図示せず)に接続されている。このガス供給源からガス導入ポート3を通して、SF6,CHF3,CF4,Cl2,Ar,O2,N2,C4F8,CF3I,C2F4などのプロセスガスがプラズマ生成室2に供給される。ガスの供給量は、プロセスに対して最適になるように、例えば5〜50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute:標準状態(0℃、1気圧)における1分間あたりの流量)の流量となるように、マスフローコントローラーなどのガス流量制御装置(図示せず)で制御する。
加工室6に設けられた保持台5の上面には被処理物4が載置され、加工室6にはプロセスガスを排気するための排気装置としての排気ポンプ9が接続されている。この排気ポンプ9の排気量の調整およびプロセスガスの供給量の調整により、加工室6内がプロセスに最適な圧力に制御される。
なお、加工室6と排気ポンプ9との間にはゲートバルブなどのバルブ(図示せず)を配置することが好ましい。また、加工室6内には、被処理物4のエッチング状態を計測してエッチング終点を検出する終点検出器(図示せず)を配置することが好ましい。このような終点検出器としては、例えば四重極質量分析器やレーザ干渉型膜厚計、エリプソメトリなどの膜厚計を用いることができる。
図3に示すように、プラズマ生成室2の上部空間には、プラズマPの電位を制御するための導電体からなる電位制御電極10が配置されており、この電位制御電極10は電位制御電源11に接続されている。この電位制御電極10としては、孔が形成されていない金属やシリコン、グラファイトで形成された板を用いることができる。あるいは、多数の孔を形成した板をガス導入ポート3と一体化し、プロセスガスが均一にプラズマ生成室2に導入されるようにしてもよい。
電位制御電源11に電圧を印加することで、被処理物4が配置され接地された保持台5と電位制御用電極10との間に所定の電圧を印加することができる。この印加電圧により、プラズマP中に生じたイオンを加速するなどして、イオンやラジカルなどの活性種が被処理物4に照射される量や強度を制御することができる。この印加電圧は、直流もしくは100MHzまでの高周波であってもよい。また、電位制御電源11は、直流もしくは100MHzまでの発振が可能なバイポーラ電源であってもよい。さらに、電位制御電源11は、プラズマ生成用の高周波電源8に同期して変調運転を行うことができるものであればより好ましい。
例えば、上述した高周波電源8の変調運転と同様に、電位制御電源11の変調周波数を10kHz、Dutyを50%とすれば、電位制御電源11が直流電源で、電位制御用電極10の極性が正の場合、正イオンを加速することができ、電位制御用電極10の極性が負の場合は、負イオンを加速することができる。同様に、電位制御電源11をバイポーラ電源とし、変調信号に従って電位制御用電極10に正と負の双方を印加できるようにした場合、電位制御用電極10の極性が正のときには正イオンが、負のときには負イオンが、それぞれ変調周期に応じて加速され、交互に被処理物4の表面に照射される。このようにすることによって、さらに低ダメージでの加工が可能になる。
次に、このようなプラズマ処理装置の動作について説明する。本実施形態では、一例として半導体基板のシリコン酸化膜上に形成された多結晶シリコンをエッチング(ゲートエッチング)する場合を例に説明する。
まず、排気ポンプ9を作動させることにより、プラズマ生成室2および加工室6の内部を真空排気した後に、ガス導入ポート3から例えばSF6などのプロセスガスをプラズマ生成室2の内部に導入する。そして、高周波電源8によって、例えば13.56MHzの高周波電力をマッチングボックス7を介して低インピーダンスコイル20に印加する。この高周波電力の印加によってプラズマ生成室2内には高周波電界が形成される。プラズマ生成室2内に導入されたプロセスガスは、この高周波電界によって加速された電子により電離され、プラズマ生成室2内に高密度な誘導結合型プラズマPが生成される。
誘導結合型プラズマP生成されたフッ素系イオン(フラグメントイオン)は、電位制御電源11によって印加される電圧により加速され、被処理物4に照射される。このとき、フッ素系のイオンは、変調された放電電源の出力がOFFのときに、アフターグローにおけるプラズマ消滅過程においてエネルギーを消耗し、その一部または全てが活性化された活性種としてのフッ素系原子や分子になる。すなわち、これらのフッ素系原子や分子は、保持台5に載置された半導体基板などの被処理物4に照射される。
照射されたフッ素系原子や分子は、被処理物4の被処理層(例えば多結晶シリコン層)において、Si+4F→SiF4↑という熱的化学反応により、SiF4として自発的に昇華する。このようにして、被処理物4の表面のうちマスクで覆われていない部分については多結晶シリコン層エッチングが進行する。ここで、マスクは、例えば有機物から構成されるレジストである。なお、フッ素系のイオンやフッ素系の原子や分子が保持台5に載置された被処理物4に照射されるときに、例えば外部電源12により直流、交流、または高周波電界を保持台5を介して被処理物4に印加してもよい。
次に、本実施形態における低インピーダンスアンテナとしてのコイル20についてより詳細に説明する。例えば、内径500mm、全長50mm、巻数2のプラズマ生成用コイルの場合、そのインダクタンスは、表1から約4μHである。このままでは、上述した一般的なマッチングボックスを使用することができないため、コイルのインダクタンスを低減する必要がある。
表1は、コイルの全長を50mmと一定にして求めたものである。コイルの全長を変えずにコイルのインダクタンスを低減したとしても、軸方向のプラズマ生成領域の増大にはほとんど寄与しない。したがって、本実施形態では、コイルの全長を伸ばすことにより、コイルのインダクタンスを低減するとともに、軸方向のプラズマ生成領域を拡大する方法を提案する。
コイルの全長を伸ばすことでコイルのインダクタンスが低減できることは、上記式(7)から明らかである。すなわち、上記式(7)において、コイルのインダクタンスはコイルの全長に反比例している。したがって、上述した内径500mm、巻数2のコイルの全長を50mmから2倍の100mmにした場合、このコイルのインダクタンスは2分の1の約2μHとなる。このようにコイルの全長を延ばすことにより、コイルのインダクタンスを低減して上述した一般的なマッチングボックスをそのまま使用することが可能となる。また、同時に、プラズマ生成領域を軸方向に拡大することが可能となる。
図4は、図3に示す誘導結合型プラズマ源の主要部を示す模式図である。この誘導結合型プラズマ源は、プラズマ生成室2(図3参照)の周囲を取り囲むように配置された高周波コイル20を備えている。例えば、この高周波コイル20は、内径500mm、全長100mm、巻数2である。この高周波コイル20の両端部21,22は相互に接続され、その接続部23にはマッチングボックス7と高周波電源8とが接続されている。高周波コイル20の両端部21,22の中間に位置する点(中間点)25は接地されている。
接地された中間点25より上側のコイル20aおよび下側のコイル20bのインダクタンスは、それぞれ内径500mm、全長50mm、巻数1のコイルのインダクタンスに相当する。したがって、表1から、コイル20aおよびコイル20bのインダクタンスは、それぞれ約1μHとなる。マッチングボックス7から見ると、コイル20aおよびコイル20bは並列に接続されているため、コイル20aとコイル20bとを併せたインダクタンスZLは、コイル20aのインダクタンスをZL1、コイル20bのインダクタンスをZL2として、以下の式(8)により表される。
1/ZL=1/ZL1+1/ZL2 ・・・(8)
ここで、ZL1とZL2はともに約1μHであるから、式(8)の右辺の各項の分母は1μHとなり、式(8)は、以下の式(9)のように書き改めることができる。
1/ZL=2/(1μH) ・・・(9)
1/ZL=1/ZL1+1/ZL2 ・・・(8)
ここで、ZL1とZL2はともに約1μHであるから、式(8)の右辺の各項の分母は1μHとなり、式(8)は、以下の式(9)のように書き改めることができる。
1/ZL=2/(1μH) ・・・(9)
したがって、式(9)から、図4のコイル20のインダクタンスZLは、以下の式(10)のようになる。
ZL=(1μH)/2=0.5(μH) ・・・(10)
ZL=(1μH)/2=0.5(μH) ・・・(10)
上述したように、内径500mm、全長100mm、巻数2のコイルのインダクタンスは約4μHであるが、図4に示すような接続方法を施すだけで、コイル20のインダクタンスを0.5μHに低減することができ、コイル20のインダクタンスを一般的なマッチングボックスで対応できるインダクタンス範囲である0.5μH〜2μH程度の範囲に入れることができる。
このように、本実施形態では、コイル20の全長を100mm、巻数を2として、プラズマ生成室2内のプラズマ生成領域を軸方向に拡大することができる。したがって、プラズマ生成室2の内部に生成された誘導結合型プラズマPのプラズマ自身の拡散によってプラズマ密度の均一性を改善し、被処理物4の加工可能な面積を広くすることができる。
本発明に係る誘導結合型プラズマ源は、中性粒子による加工プロセスにも適用することができる。図5は、図4に示す誘導結合型プラズマ源を組み込んだ中性粒子ビーム加工装置を示す模式図である。図5に示すように、この加工装置においては、プラズマ生成室2の下端の被処理物4の直上に中性化電極13が配置されている。この中性化電極13は、例えばカーボンなどから構成される電極に多数の小孔が形成されたものである。中性化電極13は中性化電源14に接続されており、この中性化電源14により直流、交流、または高周波電界が中性化電極13に印加される。
中性化電源14は、連続運転を行ってもよいが、プラズマ生成用の高周波電源8が変調運転されている場合には、高周波電源8に同期して変調運転を行うことが好ましい。このようにすることで、プラズマ生成室2の上部にある電位制御電極10とともに、誘導結合型プラズマPに傾斜電界を印加し、あるときは正イオンを、あるときは負イオンをそれぞれ中性化電極13に向かって加速することができる。
中性化電極13に向かって加速された正と負のイオンは、中性化電極13に形成された小孔を通過し、これらの小孔を通過する際に、正と負のイオンは電荷交換などにより電気的に中性な中性粒子ビームとなって、被処理物4に照射される。そして、上述したようなエッチングプロセスと同様に加工が進行する。この場合において、低エネルギーでなおかつ中性の粒子により加工を行うので、被処理物4に対するダメージが少なく、歩留まりが向上し、プロセスコストを低減することができる。このように中性粒子を用いて加工を行えば、被処理物4の表面でのチャージアップや、電荷による被処理物4に形成された素子へのダメージがないため、良好な加工を実現することができる。なお、装置内に終点検出器を設けた場合には、終点検出器によってエッチングの終点の検出を行うことができるので、過度なエッチングがなされるのを防止することができる。
図6は、本発明の第2の実施形態における誘導結合型プラズマ源の主要部を示す模式図である。図4に示す例では、コイル20の中間点25を接地し、コイル20の両端部21,22を高周波電源8に接続した例を説明したが、本実施形態では、接地点と高周波電源8に接続される点を図4に示すものと逆にしている。すなわち、この誘導結合型プラズマ源は、プラズマ生成室2(図3参照)の周囲を取り囲むように配置された高周波コイル20を備えており、高周波コイル20の両端部21,22の中間に位置する点(中間点)25にはマッチングボックス7と高周波電源8とが接続され、高周波コイル20の両端部21,22は接地されている。このような構成によって、上述した第1の実施形態と同様の効果が得られる。
なお、図4および図6においては、コイル20の巻数が2である場合について説明したが、コイル20の巻数は2に限られるものではなく、プラズマ源の大きさやプロセスの要求に応じて、適宜変更することができる。また、コイル20の巻数は必ずしも整数である必要はなく、プラズマ源の大きさやプロセスの要求に応じて、例えば3.5回巻きなどとすることもできる。
図7は、本発明の第3の実施形態の誘導結合型プラズマ源の主要部を示す模式図であるが、この誘導結合型プラズマ源においては、巻数4のコイル30が用いられている。図7では、図4に示す例と同様に、コイル30の両端部31,32を相互に接続して、その接続部33にマッチングボックス7と高周波電源8とを接続し、コイル30の両端部31,32の中間に位置する点(中間点)35を接地している。
ここで、コイル30の内径が500mm、全長が100mm、巻数が4である場合、接地された中間点35より上側のコイル30aおよび下側のコイル30bのインダクタンスは、それぞれ内径500mm、全長50mm、巻数2のコイルのインダクタンスに相当し、約4μHとなる(表1参照)。マッチングボックス7から見ると、コイル30aおよびコイル30bは並列に接続されているため、コイル30全体のインダクタンスは約2μHとなる。したがって、図7に示す場合においても、一般的で安価なマッチングボックスを用いることができ、かつ、プラズマ生成室2の軸方向に十分な長さを持ったプラズマを生成することができる。このように、本実施形態においても、プラズマ生成室2の内部に生成された誘導結合型プラズマPのプラズマ自身の拡散によってプラズマ密度の均一性を改善し、被処理物4の加工可能な面積を広くすることができる。
図8は、本発明の第4の実施形態の誘導結合型プラズマ源の主要部を示す模式図である。この誘導結合型プラズマ源は、プラズマ生成室2(図3参照)の周囲を取り囲むように配置された高周波コイル40を備えている。この高周波コイル40は、やや複雑な形状をしているが、高周波コイル40の両端部41,42の中間に位置する点(中間点)45で折り返して、それまでとは逆方向にコイルを巻いた形状となっている。高周波コイル40の両端部41,42は相互に接続され、その接続部43にはマッチングボックス7と高周波電源8とが接続されている。また、高周波コイル40の中間点45は接地されている。
図9は、本発明の第5の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。この誘導結合型プラズマ源は、プラズマ生成室2(図3参照)の周囲を取り囲むように配置された高周波コイル40を備えている。この高周波コイル40は、高周波コイル40の両端部41,42の中間に位置する点(中間点)45で折り返して、それまでとは逆方向にコイルを巻いた形状となっている。高周波コイル40の中間点45にはマッチングボックス7と高周波電源8とが接続され、高周波コイル40の両端部41,42は接地されている。
なお、図8および図9においては、コイル40の巻数が2である場合について説明したが、コイル40の巻数は2に限られるものではなく、コイルの巻数が3以上の場合でも、その中間点で折り返し、この中間点を接地することにより、あるいは中間点に高周波電源8を接続することができる。また、コイル40の巻数は必ずしも整数である必要はなく、プラズマ源の大きさやプロセスの要求に応じて、例えば3.5回巻きなどとすることもできる。すなわち、被処理物4を最適に処理するために最適なプラズマを発生するために、コイルの巻数を選択することができる。
また、接地点または高周波電源8を接続する点は、コイルの両端部からの距離(コイルの配線に沿った距離)が同一である真中点であることが好ましいが、図4、図6、および図7に示すように、コイルの形状が単なる空芯ソレノイド状ではない場合は、真中点である必要はない。単純な空芯ソレノイド状のコイルであっても、接地点または高周波電源8を接続する点を真中点よりコイルの一方の端部(高周波電源8を接続する点または接地点)に近づけてもよい。なお、例えば、単純な空芯ソレノイド状のコイルの場合には、真中点、すなわちコイルの両端部からコイルに沿って等しい長さの位置で接地すれば、例えば上下のコイルに印加される高周波電力の不均一がなくなる。したがって、単純な空芯ソレノイド状のコイルの場合には、生成された誘導結合型プラズマPの軸方向密度分布をなくし、プラズマの均一性を向上させる上で、真中点で接地することがより好ましい。
上述したプラズマ生成方法においては、石英など主として誘電体で形成されたプラズマ生成室2の外側に、プラズマ生成室2と略同一径かそれよりも若干大きな径のコイルを配置することができるが、プラズマ生成室2の形状などによってはプラズマ生成室2と略同一径でなくてもよい。また、真空容器であるプラズマ生成室2の上面、すなわち図3におけるガス導入ポート3の周囲に渦巻状のアンテナを配置してもよい。
図10は、本発明の第6の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。本実施形態では、ガス導入ポート3の周囲に渦巻状の高周波アンテナ50を電気的に絶縁された状態で配置している。この高周波アンテナ50の両端部51,52は相互に接続され、その接続部53にはマッチングボックス7と高周波電源8とが接続されている。高周波アンテナ50の両端部51,52の中間に位置する点(中間点)55は接地されている。
図10に示す場合には、接地位置である中間点55は、以下のように決めるとよい。すなわち、中間点55でアンテナ50を2つに分けて、中間点55よりも内側のアンテナ50aと外側のアンテナ50bとを考える。アンテナ50aとアンテナ50bは、形状や寸法が大きく異なるため、図4から図9で説明したような各コイルのインダクタンスを同一にする幾何学的な中間点を設定することが困難である。したがって、図10に示すアンテナ50の場合、内側アンテナ50aと外側アンテナ50bのインダクタンスが、それぞれの端部51,52からコイルに沿った中間点55までの間で相互に同一になるように、中間点55を決めることが好ましい。
このため、アンテナ50に沿った全長の半分の位置が中間点として最適ではない場合がある。図10に示すように、アンテナ50に沿って径や形状が変化するような場合には、インダクタンスを考慮した上で最適な中間点55を決めるか、あるいは、インダクタンスが同一になるようにアンテナ50を設計する必要がある。これらの点を考慮すると、接地点または高周波電源8を接続する点は、アンテナ50のそれぞれの端部51,52からアンテナ50に沿って略等距離の位置とするのが適切であると考える。
図11は、本発明の第7の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。図11に示す例は、図10に示す例における接地点と高周波電源8に接続される点とを入れ替えたものであり、インダクタンスの低減やプラズマの発生などについての考え方および効果は、図10に示す例と同様である。
図12は、本発明の第8の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。ここで、巻数1、全長0mmのコイルをループということとする。図12に示すように、本実施形態における誘導結合型プラズマ源は、2つのループ70,80を並列接続したアンテナ60aを備えている。このように、複数のループを用いて構成されたプラズマ生成用コイル状アンテナ(以下、ループコイルという)によっても、アンテナのインダクタンスを低減し、すなわちインピーダンスを低減することができる。
図12に示すように、各ループ70,80の両端部は相互に接続されている。すなわち、上側ループ70の一端部71と下側ループ80の一端部81とが接続され、上側ループ70の他端部72と下側ループ80の他端部82とが接続されている。図12に示す例では、ループ70,80の端部のうち互いに隣り合う端部同士が接続されている。上側ループ70の端部71と下側ループ80の端部81との接続部63にはマッチングボックス7と高周波電源8とが接続されており、上側ループ70の端部72と下側ループ80の端部82との接続部64は接地されている。
ここで、各ループ70,80の接続部63,64における位相は、互いに一致させることが好ましい。これは、位相をずらすことによって余分な配線が必要となり、その余分な配線により新たなインダクタンスが発生するからである。ただし、上述の結線方法によって低下したインダクタンスが一般的なマッチングボックスの適用範囲外となった場合に、このようにして発生した余分なインダクタンスによって一般的なマッチングボックスの適用範囲内に調整する目的であれば、各ループ70,80の接続部63,64における位相をずらしてもよい。
図13は、本発明の第9の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。本実施形態における誘導結合型プラズマ源は、2つのループ70,80を接続したアンテナ60bを備えている。本実施形態では、図12に示す例と同様に、2つのループ70,80の両端部は相互に接続されているが、上側ループ70の端部71と下側ループ80の端部82とが接続され、上側ループ70の端部72と下側ループ80の端部81とが接続されている。すなわち、図13に示す例では、ループ70,80の端部のうち互いに離れた方の端部同士(対角線上にある端部同士)が接続されている。上側ループ70の端部71と下側ループ80の端部82との接続部65にはマッチングボックス7と高周波電源8とが接続されており、上側ループ70の端部72と下側ループ80の端部81との接続部66は接地されている。
図12に示す例では、ある瞬間に各ループ70,80に流れる電流の向きは同じであるが、図13に示す例では、各ループ70,80に流れる電流の向きは互いに逆になる。いずれの結線方法でも同等な効果を得ることができるが、図13に示す例では、上側ループ70で生じたコイル上の電界と、下側ループ80で生じた電界とが打ち消しあう効果がある。したがって、図13に示す誘導結合型プラズマ源は、インダクタンスを低減する効果に加えて、各ループ70,80に生じる電界を打ち消すことによって、主として石英などの誘電体で構成されたプラズマ生成室2の内壁をイオンがスパッタして被処理物4を汚染することをさらに防止することができる。
例えば、図12および図13において、内径500mmの2つのループ70,80を有するループコイルのインダクタンスは、約0.7μHとなる。これは以下のようにして導くことができる。まず、内径500mmのループのインダクタンスLLP(μH)は、ループの平均半径をR(cm)、ループを構成する配線の線径をr(cm)とすると、次式(11)により求められる(小林、広瀬監訳「コンパクト物理学ハンドブック」初版、丸善株式会社、p.30)。
LLP=0.01257×R[ln(8R/r)−1.75](μH) ・・・(11)
ここで、ループの平均半径Rとは、ループを構成する配線に有限の太さがあるため、その配線の中心からループの幾何学的中心までの距離をいう。
LLP=0.01257×R[ln(8R/r)−1.75](μH) ・・・(11)
ここで、ループの平均半径Rとは、ループを構成する配線に有限の太さがあるため、その配線の中心からループの幾何学的中心までの距離をいう。
内径500mmのループを構成する配線として直径8mmの配線を使用した場合には、R=25cm、r=0.4cmを式(11)に代入すると、ループのインダクタンスLLPは、1.40(μH)と求められる。
このようなループが2つ並列に接続されているため、式(8)〜式(10)で説明したのと同様の方法により、2つのループで構成されるループコイルのインダクタンスLLCは、以下の式(12)により求められる。
LLC=LLP/2
=1.40/2
=0.7(μH) ・・・(12)
このように、内径500mmのループを2つ並列に接続したループコイルのインダクタンスは約0.7μHとなるので、上述した一般的なマッチングボックスで対応することができる。
LLC=LLP/2
=1.40/2
=0.7(μH) ・・・(12)
このように、内径500mmのループを2つ並列に接続したループコイルのインダクタンスは約0.7μHとなるので、上述した一般的なマッチングボックスで対応することができる。
なお、図12および図13においては、ループコイルが2つのループ70,80により構成される例を説明したが、ループコイルのループ数は2つに限られるものではない。
図14は、本発明の第10の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。図14に示すように、本実施形態における誘導結合型プラズマ源は、3つのループ100,102,104を並列接続したループコイル90を備えている。このような構成の場合、さらにループコイル90のインダクタンスが低減されて0.47μHとなる。したがって、さらに大口径の被処理物(ウェハ)を対象とするプラズマ処理装置、あるいは小口径の被処理物(ウェハ)を一度に複数枚処理するようなプラズマ処理装置、すなわちプラズマ生成用コイル状アンテナの内径が500mmを超えるようなプラズマ処理装置におけるプラズマ源に好適に用いることができる。
図15は、本発明の第11の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。図15に示すように、本実施形態における誘導結合型プラズマ源は、図12に示すループコイル60a,60aを直列に2組接続したものである。図15に示す例では、ループコイル60a,60aを2つ直列に接続しているが、これらを並列に接続してもよい。また、図13に示すループコイル60b,60b同士を組み合わせてもよいし、図12に示すループコイル60aと図13に示すループコイル60bとを組み合わせてもよい。
図16は、本発明の第12の実施形態の誘導結合型プラズマ源を示す模式図である。図16に示すように、本実施形態における誘導結合型プラズマ源は、図12に示すループコイル60aと、1つのループ106とを直列に接続したものである。図16に示す例では、図12に示すループコイル60aと1つのループ106とを直列に接続しているが、これらを並列に接続してもよい。また、複数または単数のループからなるループコイルを任意に組み合わせて、これらを並列または直列に接続してもよい。
上述したように、本発明によれば、半導体集積デバイス、液晶ディスプレイやマイクロマシンの作製、半導体基板やガラス基板などに対する微細加工、半導体製造技術を応用したMEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)やNEMS(Nano-Electro Mechanical
Systems)、CVD(Chemical Vapor Deposition)などによる基板表面への微小構造物の形成や成膜、ナノテクノロジーやμ−TAS(Total Analysis System)に用いられる誘導結合型プラズマを効果的に生成することができる。また、本発明によれば、特殊なマッチングボックスを必要としない簡単な構成の誘導結合型プラズマ源により、安価に誘導結合型プラズマを生成することができる。また、安全性が高く、被処理物の歩留まりを向上することができる。
Systems)、CVD(Chemical Vapor Deposition)などによる基板表面への微小構造物の形成や成膜、ナノテクノロジーやμ−TAS(Total Analysis System)に用いられる誘導結合型プラズマを効果的に生成することができる。また、本発明によれば、特殊なマッチングボックスを必要としない簡単な構成の誘導結合型プラズマ源により、安価に誘導結合型プラズマを生成することができる。また、安全性が高く、被処理物の歩留まりを向上することができる。
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
1 プラズマ処理装置
2 プラズマ生成室
3 ガス導入ポート
4 被処理物
5 保持台
6 加工室
7 マッチングボックス
8 高周波電源
9 排気ポンプ
10 電位制御電極
11 電位制御電源
20,30,40,50 アンテナ(コイル)
60a,60b,90 ループコイル
70,80,100,102,104,106 ループ
2 プラズマ生成室
3 ガス導入ポート
4 被処理物
5 保持台
6 加工室
7 マッチングボックス
8 高周波電源
9 排気ポンプ
10 電位制御電極
11 電位制御電源
20,30,40,50 アンテナ(コイル)
60a,60b,90 ループコイル
70,80,100,102,104,106 ループ
Claims (15)
- 電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入し、
前記プラズマ生成室の壁に沿って配置されたアンテナの両端部の中間点を電気的に接地し、
前記アンテナの両端部に高周波電力を供給して前記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成することを特徴とするプラズマ生成方法。 - 電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入し、
前記プラズマ生成室の壁に沿って配置されたアンテナの両端部を電気的に接地し、
前記アンテナの両端部の中間点に高周波電力を供給して前記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成することを特徴とするプラズマ生成方法。 - 前記アンテナは、コイル状のアンテナまたは渦巻状のアンテナであることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ生成方法。
- 前記中間点は、前記アンテナの両端部から略等距離の位置にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプラズマ生成方法。
- 電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入し、
前記プラズマ生成室の壁に沿って配置された複数のループコイルのそれぞれの一端部を電気的に接地し、
前記複数のループコイルのそれぞれの他端部に高周波電力を供給して前記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成することを特徴とするプラズマ生成方法。 - 電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポートと、
前記プラズマ生成室の壁に沿って配置され、その両端部の中間点が電気的に接地されたアンテナと、
前記アンテナの両端部に高周波電力を供給して前記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する高周波電源と、
を備えたことを特徴とする誘導結合型プラズマ源。 - 電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポートと、
前記プラズマ生成室の壁に沿って配置され、その両端部が電気的に接地されたアンテナと、
前記アンテナの両端部の中間点に高周波電力を供給して前記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する高周波電源と、
を備えたことを特徴とする誘導結合型プラズマ源。 - 前記アンテナは、コイル状のアンテナまたは渦巻状のアンテナであることを特徴とする請求項6または7に記載の誘導結合型プラズマ源。
- 前記中間点は、前記アンテナの両端部から略等距離の位置にあることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の誘導結合型プラズマ源。
- 電磁波を透過する材質で形成された壁を有するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室の内部にプロセスガスを導入するガス導入ポートと、
前記プラズマ生成室の壁に沿って配置され、その一端部が電気的に接地された複数のループコイルを有するアンテナと、
前記アンテナの各ループコイルの他端部に高周波電力を供給して前記プラズマ生成室の内部に誘導結合型プラズマを生成する高周波電源と、
を備えたことを特徴とする誘導結合型プラズマ源。 - 前記誘導結合型プラズマの電位を制御する少なくとも1つの電位制御電極と、
前記電位制御電極に電圧を印加する電位制御電源と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載の誘導結合型プラズマ源。 - 前記電位制御電源は、連続運転可能または変調運転可能に構成されていることを特徴とする請求項11に記載の誘導結合型プラズマ源。
- 前記高周波電源は、連続運転可能または変調運転可能に構成されていることを特徴とする請求項12に記載の誘導結合型プラズマ源。
- 前記電位制御用電源は、前記高周波電源と同期可能に構成されていることを特徴とする請求項13に記載の誘導結合型プラズマ源。
- 請求項6から14のいずれか一項に記載の誘導結合型プラズマ源と、
被加工物を保持する保持台と、
前記保持台が配置された加工室と、
前記プロセスガスを排気する排気装置と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005107843A JP2006286536A (ja) | 2005-04-04 | 2005-04-04 | プラズマ生成方法、誘導結合型プラズマ源、およびプラズマ処理装置 |
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-
2005
- 2005-04-04 JP JP2005107843A patent/JP2006286536A/ja not_active Withdrawn
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