JP2006280636A - 吸引カテーテルおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ディスタルプロテクションデバイスを併用する場合においても、体内に容易に挿入することができ、治療を迅速に行うことができる吸引カテーテルを提供する。
【解決手段】 それぞれ遠位端および近位端に開口を有する第一ルーメン、第二ルーメンおよび第三ルーメンを備えたカテーテル管を有するカテーテルであって、第一ルーメン、第二ルーメン、および第三ルーメンの各遠位端開口が、カテーテル管の遠位端部に位置し、第一ルーメンの近位端開口が、カテーテル管の近位端部に位置し、第二ルーメンおよび第三ルーメンの近位端開口が、カテーテル管の側壁部に位置している吸引カテーテルとする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、血管内の血栓等を吸引して除去するために用いられる吸引カテーテルに関し、より詳しくは、体内への導入が容易で、かつ、ディスタルプロテクションデバイスとの併用が容易である吸引カテーテルに関する。
冠動脈が血栓により閉塞し、冠動脈中の血流が妨げられる心筋梗塞に対しては、バルーンカテーテルにより閉塞部位を拡張する治療法が主に用いられてきた。
しかしながら、バルーンカテーテルによって閉塞部位を拡張すると、閉塞部位から血栓が剥離して流出し、末梢血管でその血栓が詰まることがある。そのため、多量の血栓により冠動脈が閉塞した症例においてバルーンカテーテルを使用すると、重篤な末梢塞栓症を誘発する場合があった。
近年、このような症例に対しては、特許文献1〜3に記載されているような吸引カテーテルを用いて、血栓を吸引して除去する治療法(冠動脈血栓吸引療法)が有効であることが明らかとなってきている。
特許文献1〜3に記載された吸引カテーテルは、血管に挿入したガイドワイヤに沿わせて挿入するために、ガイドワイヤを挿通するためのルーメン(ガイドワイヤルーメン)を有している。そして、これらの吸引カテーテル(特許文献1に記載された一部のものを除く)では、カテーテルの遠位端部と中腹部にわたってガイドワイヤルーメンを有する構造(ラピッドエクスチェンジ型構造)を採用している。
このラピッドエクスチェンジ型構造の吸引カテーテルでは、遠位端部と近位端部にわたってガイドワイヤルーメンを有する構造(オーバーザワイヤ型構造)のカテーテルと異なり、近位端側(体外側)においてガイドワイヤとカテーテルが分離されているので、ガイドワイヤを移動させることなく、カテーテルのみを引き戻すことが可能である。したがって、この吸引カテーテルで血栓を吸引し終わった後は、ガイドワイヤを血管内に残したまま、カテーテルのみを血管から抜き出すことができるので、血管内に残したガイドワイヤをそのまま利用して、他のカテーテルをこれに沿わせて挿入し、迅速に後続の治療を行うことができる。この利点により、吸引カテーテルとしては、ラピッドエクスチェンジ型構造のものが賞用されている。
ところで、吸引カテーテル等を用いた冠動脈インターベンション治療では、上記したような末梢栓塞症を防止するために、しばしば、特許文献1に記載された脈管フィルタサック等の、末梢血管へ血栓等が流れていくことを防止するための器具である、ディスタルプロテクションデバイスが用いられる。吸引カテーテルは、このようなディスタルプロテクションデバイスによって血管内に塞き止められた血栓等を回収して体外に排出するためにも有用であることが知られている。
また、冠動脈血栓吸引療法によっても、完全には閉塞部位からの血栓の剥離を防止することは困難であるため、吸引カテーテルを用いる前に、予め、治療する閉塞部位よりも末梢側にディスタルプロテクションデバイスを配置してから、冠動脈の血栓吸引が行われる場合もある。このように、ディスタルプロテクションデバイスを併用することによって、末梢血管への血栓の流入が防止され、血栓を効果的に吸引カテーテルで吸引することができる。
吸引カテーテルとディスタルプロテクションデバイスを併用する場合は、通常、まず、ディスタルプロテクションデバイスが単独で、血管を選択しながら冠動脈の閉塞部分に挿入され、そのディスタルプロテクションデバイスのワイヤ状部分に沿って吸引カテーテルが挿入される。
特表2004−535885号公報 特開2004−65326号公報 特開2004−222946号公報
しかしながら、ディスタルプロテクションデバイスは、先端部にある程度の大きさを有する血栓を塞き止めるための部材を有しているために、これを単独で、血管を選択しながら挿入して保護すべき部分まで導く操作は容易なものではなく、さらに、ディスタルプロテクションデバイスのワイヤ状部分に沿って吸引カテーテルを挿入しようとしても、術者の意図するように吸引カテーテルが操作されない場合があった。これらのことから、吸引カテーテルとディスタルプロテクションデバイスを併用しようとすると、吸引カテーテルの挿入が完了するまでに時間を要し、術者および患者への負担が大きくなるという問題があった。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ディスタルプロテクションデバイスを併用する場合においても、体内に容易に挿入することができ、治療を迅速に行うことができる吸引カテーテルを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、吸引カテーテルを、複数の器具を同時に受け入ることができるような特定の構造にすることによって上記の課題が解決されることを見出し、この知見により本発明を完成するに至った。
かくして、本発明の第一の観点によれば、それぞれ遠位端および近位端に開口を有する第一ルーメン、第二ルーメンおよび第三ルーメンを備えたカテーテル管を有するカテーテルであって、第一ルーメン、第二ルーメン、および第三ルーメンの各遠位端開口が、カテーテル管の遠位端部に位置し、第一ルーメンの近位端開口が、カテーテル管の近位端部に位置し、第二ルーメンおよび第三ルーメンの近位端開口が、カテーテル管の側壁部に位置している吸引カテーテルが提供される。
上記の吸引カテーテルにおいて、第二ルーメンおよび第三ルーメンの近位端開口は、カテーテル管の長手方向軸を基準として、互いに反対側に位置していることが好ましい。
上記の吸引カテーテルにおいて、第二ルーメンおよび第三ルーメンは、それぞれカテーテル管とは異なる管状体により形成され、これらの管状体が第一ルーメン内に位置していることが好ましく、さらに、第二ルーメンを形成する管状体と、第三ルーメンを形成する管状体とが、第一ルーメン内において、互いの側面の少なくとも一部分において接合されていることが好ましく、さらに、また、カテーテル管の遠位端部において、第二ルーメンを形成する管状体と、第三ルーメンを形成する管状体とがカテーテル管の軸心近傍に位置していることが好ましい。
上記の吸引カテーテルにおいて、第二ルーメンおよび第三ルーメンのルーメン径は、それぞれ0.2〜1.0mmであることが好ましい。
上記の吸引カテーテルにおいて、第一ルーメンが吸引ルーメンであり、第二ルーメンおよび第三ルーメンのいずれか一方がガイドワイヤルーメンであり、他方がディスタルプロテクションデバイスルーメンであることが好ましい。
第一ルーメンの遠位端開口が、複数の吸引口として形成されていることが好ましい。
複数の吸引口は、カテーテル管の周方向に実質的に等間隔に配置されていることが好ましい。
また、本発明の第二の観点によれば、第一のチューブの側壁部に二つの開口を設ける工程、第一のチューブの一方の端部を、少なくとも三つの開口を有する形状に加工する工程、第一のチューブの側壁部の開口の一つと第一のチューブの端部の開口の一つとにわたって、第二のチューブを挿入し、第一のチューブの側壁部の開口の他の一つと第一のチューブの端部の開口の他の一つとにわたって、第三のチューブを挿入する工程、第一のチューブの側壁部の開口の縁と第二のチューブおよび第三のチューブの外周面とを、液密に接合する工程、第一のチューブの端部の開口の縁と第二のチューブおよび第三のチューブの外周面とを接合する工程を有する上記の吸引カテーテルの製造方法が提供される。
本発明の吸引カテーテルは、吸引ルーメンの他に、二つのルーメンを有するので、ディスタルプロテクションデバイスを併用する場合においても、さらにガイドワイヤを併用して、吸引カテーテルおよびディスタルプロテクションデバイスを冠動脈の閉塞部の位置まで容易に挿入することができ、治療を迅速に行うことができる。また、第二ルーメンおよび第三ルーメンがカテーテル管の側壁部に近位端開口を有している、ラピッドエクスチェンジ型の構造をしているため、二つのルーメンにそれぞれ挿入したガイドワイヤおよびディスタルプロテクションデバイスを血管内に残したまま、吸引カテーテルのみを血管から抜き出すことが可能であり、これらの器具をそのまま利用して、迅速に後続の治療を行うことが可能である。
以下、本発明の吸引カテーテルにおいて、第一ルーメンを吸引ルーメンとして使用し、第二ルーメンをガイドワイヤルーメンとして使用し、第三ルーメンをディスタルプロテクションデバイスルーメンとして使用する場合を、本発明の一実施形態として説明する。第二ルーメンおよび第三ルーメンは、一方をガイドワイヤルーメン、他方をディスタルプロテクションデバイスルーメンとして使用することができ、両ルーメンの用途は区別されない。
また、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「近位端」とは、吸引カテーテルを体内に挿入した際に、体外側にくる側の末端を意味し、「遠位端」とは、その逆に位置する末端のことを意味する。そして、「近位端部」および「遠位端部」とは、これら末端を含むその近傍の部分を意味する。
図1は、本発明の実施形態の一例である、吸引カテーテル100の側面図である。吸引カテーテル100は、カテーテル管60が、その近位端においてコネクタ80に接続され、その接続箇所にストレインリリーフ70が外嵌されることにより構成されている。
図2は、吸引カテーテル100における、カテーテル管60の先端部分の拡大側断面図である。図示されたカテーテル管60には、吸引口である遠位端開口34からカテーテル管60の近位端にある近位端開口(図示せず)まで連なる吸引ルーメン30、遠位端開口22からカテーテル管60の側壁部に位置する近位端開口24まで連なるガイドワイヤルーメン20、および遠位端開口12からカテーテル管60の側壁部に位置する近位端開口14まで連なるディスタルプロテクションデバイスルーメン10が設けられている。
ここで、ディスタルプロテクションデバイスルーメン10に挿通されるディスタルプロテクションデバイスは、線状体(ワイヤまたはチューブ)の遠位端部に、血管内に流れる固形物を塞き止める機能を有する部材が取り付けられた器具であり、固形物を塞き止める機能を果たす部材の形状によって、血流全体を塞き止めるものと、血流は塞き止めず一定の大きさ以上の固形物のみを塞き止めるものとがある。ディスタルプロテクションデバイスの固形物を塞き止める機能を有する部材としては、バルーン状、サック状、網状、有孔板状のものが知られている。
図2に示したように、ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10の、カテーテル管60の側壁にある近位端開口24、14は、カテーテル管60の長手方向軸Pを基準として、互いに軸対称となるような、反対側の位置に配置されていることが好ましい。ただし、近位端開口24、近位端開口14、および長手方向軸Pが同一線上となるように、開口14、開口24が厳密な意味で反対側にある必要はなく、開口14、24がカテーテル管周上において、お互いに離れた位置に存在していればよいという意味である。これにより、ガイドワイヤとディスタルプロテクションデバイスがそれぞれのルーメン内に同時に挿入されても絡みにくい構造となっている。
ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10は、吸引ルーメン30内に位置しており、カテーテル管60とは別個の管状体により形成されている。ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10の遠位端開口22、12と、近位端開口24、14において、これらを形成する管状体がカテーテル管60と接合される。これにより、これらの管状体がカテーテル管60と一体化された一つの部材となる。このように二つの管状体が吸引ルーメン30内に配されることで、カテーテル管60の外径を大きくすることなく二つのルーメン20、10を形成することができる。
ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成する二つの管状体は、カテーテル管60の遠位端部において、互いの側面の少なくとも一部分において接合されていることが好ましい。このような構造とすることにより、カテーテル管60の吸引ルーメン30における流路抵抗が小さくなり、吸引カテーテル100の吸引効率を向上させることができる。
また、カテーテル管60の遠位端部において、ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成する二つの管状体が、カテーテル管60の軸心近傍に位置していることが好ましい。ここで、カテーテル管60の軸心とは、図2に示したカテーテル管60の長手方向軸Pである。上記二つの管状体は、この軸Pを中心としてお互いに寄せ集まって、軸Pの近傍に位置していることが好ましい。このような構造とすることにより、吸引カテーテル100をガイドワイヤに沿わせて体内に挿入する際の挿入性を良好にすることができる。
図2に示した実施形態においては、ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成する二つの管状体の外周面には、これらを結束するように、造影マーカー40が装着されている。
造影マーカー40は、X線透視によりその位置が検出されて体内における標識となるものであり、例えば金、白金、タングステン等の金属材料により形成される。造影マーカー40を装着すると、X線透視によって造影マーカー40の位置が検出されることで、カテーテル管60の先端部分の位置を正確に把握し、吸引カテーテル100を血栓等にまで正確に誘導することができるため好ましい。造影マーカー40の形状は特に限定されないが、リング状であることが好ましい。造影マーカー40を装着する位置は特に限定されず、カテーテル管60の内周面あるいは外周面に装着したり、ガイドワイヤルーメン20やディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成する管状体の内周面あるいは外周面に装着したりすることができる。ガイドワイヤルーメン20を形成する管状体と、ディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成する管状体の両方に装着してもよい。造影マーカー40は、好ましくは、ガイドワイヤルーメン20を形成する管状体および/またはディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成する管状体の、外周面側に装着される。この部分に装着すると、吸引やガイドワイヤ等の挿通の障害となるおそれがなく、また、万一造影マーカー40が剥離しても、造影マーカー40が管状体から外れなくなり、体内への脱落を防止することができる。
図3は、図2のA−A’に相当する部分で切断した吸引カテーテル100の拡大断面図である。ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成する二つの管状体が、カテーテル管60の軸心近傍に配置されている。図3に示した実施形態においては、吸引ルーメン30の遠位端開口34が、同一形状で二つ設けられている。遠位端開口34は、カテーテル管60の軸心を基準として、互いに反対となる位置に設けられている。この場合、上記の二つの管状体がカテーテル管60の軸心近傍に配置されていることから、上記二つの遠位端開口34に、均等に吸引力を配分することができる。
吸引ルーメン30の遠位端開口34は、複数の吸引口として形成することが好ましい。これにより、吸引力を効果的に振り分けて、効果的に血栓を吸引することができる。また、それぞれの吸引口34が異なる方向を向いているので、血管の周方向に散在している血栓を効果的に吸引することができる。吸引ルーメン30の遠位端開口(吸引口)34の数は通常1〜10個、好ましくは1〜6個、最も好ましくは2〜3個である。
吸引ルーメン30の遠位端開口34を複数設ける場合は、カテーテル管の周方向に実質的に等間隔に配置されていることが好ましい。なお、「実質的に等間隔に配置されている」とは、遠位端開口34が厳密に等しい間隔で配置されている必要はなく、カテーテル管60の周方向において遠位端開口34が一部に偏らずに、周方向に分散されて配置されていればよいことを意味する。
ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10の長さは、それぞれ5〜400mmであることが好ましく、10〜200mmであることがさらに好ましい。ガイドワイヤおよびディスタルプロテクションデバイスのワイヤ部分の断面形状は、通常円形であることから、各ルーメン20、10の断面形状は、円形であることが好ましい。各ルーメン径は、好ましくは0.2〜1.0mm、より好ましくは0.4〜0.5mmである。
ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10は、同じ形態であってもよいし、異なる形態であってもよいが、使用上の煩雑さを避ける観点から、これらのルーメンを区別なく使用できるように、図示の実施形態の吸引カテーテル100のように同じ形態であることが好ましい。
それぞれの遠位端開口34の大きさは、特に限定されないが、カテーテル管60長さ方向が、通常1〜10mm、好ましくは2〜4mmであり、カテーテル管60の周方向が、通常0.5mm〜2mmであり、それぞれの遠位端開口34の面積は、0.3〜20mm、好ましくは1〜5mmである。その形状は特には制限されないが、吸引効率等の点から、概ね楕円形であることが好ましい。
図4は、本発明の他の実施形態の吸引カテーテル200の、カテーテル管60先端部分の拡大側断面図である。B−B’線およびC−C’線における断面図もあわせて示されている。このカテーテル管60の先端部分には、遠位端開口34からカテーテル管60の近位端における近位端開口(図示せず)まで連なる吸引ルーメン30の一部と、ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10が設けられている。ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10は、それぞれカテーテル管60の遠位端に位置する遠位端開口22、12(図示せず)と、カテーテル管60の側壁に位置する近位端開口24、14(図示せず)とを有し、それぞれ互いに平行に、同じ形状および大きさで隣接して配置されている。そして、これらのルーメン20、10の先端付近には、造影マーカー40が装着されている。吸引カテーテル200において、ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10は、同一の形状を有し、一方のルーメンをガイドワイヤに使用すれば、他方をディスタルプロテクションに使用することになり、両ルーメンの用途は限定されない。
吸引ルーメン30は、近位端から遠位端へ向かってガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10側に近づく方向に、傾斜をもって形成されている。そして、ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10の近位端開口24、14は、吸引ルーメン30の遠位端開口34の最近位端31よりも、遠位端方向に配置されている。つまり、吸引ルーメン30の遠位端開口34の最近位端31を通る、カテーテルの長手方向(Y方向)に対する垂直線(L1)よりも、ガイドワイヤルーメン20の近位端開口24の最近位端21を通る、Y方向に対する垂直線(L2)が、遠位端方向に位置するように、各ルーメン10、20、30の開口14、24、34が配置されている。
この態様の吸引カテーテル200においては、カテーテル管60の長手方向に対する垂直方向において、吸引ルーメン30と、ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10とが、それぞれのルーメンの開口部分を除いては、相互に重複していない。よって、ガイドワイヤルーメン20やディスタルプロテクションデバイスルーメン10が存在することで、吸引ルーメン30の径が制限されることがなく、カテーテル管60の先端部分においても吸引ルーメン30の開口を、カテーテル管60の断面積の最大限にまで大きくすることができる。これにより、吸引ルーメン30において、径が狭くなっているボトルネックがないため、血栓等を効果的に吸引することができる。
この態様の吸引カテーテル200における吸引ルーメン30の径は、通常0.5〜3.0mmであり、ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10の径は、0.2〜1.0mm、好ましくは0.4〜0.5mmである。また、これらルーメン30、20、10の周壁の厚さは、通常0.05〜0.5mmである。ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン10の長さは、1〜50mmであることが好ましく、5〜20mmであることがさらに好ましい。
吸引カテーテル100、200におけるカテーテル管60の全長は、体内への挿入位置から血栓等の閉塞位置までの距離等により定まり、通常は500〜2000mmである。カテーテル管60の外径は、吸引カテーテル100、200を挿入する血管の内径等により定まり、通常は0.51〜4.0mmである。
カテーテル管60は、可撓性を有する有機高分子材料で形成されていることが好ましく、その具体例としては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂のいずれかを用いることが特に好ましい。また、図2に示されたカテーテル管100のように、ガイドワイヤルーメン20およびディスタルプロテクションデバイスルーメン20が、カテーテル管60とは異なる管状体により形成される場合、その管状体の材質は特に限定されないが、通常、熱可塑性高分子材料が用いられる。好ましくは、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマーである。
また、カテーテル管60は、二種類以上の高分子材料を積層して、積層チューブとしてもよい。さらに、吸引カテーテル100、200の長手方向において、用いる材料を変化させてカテーテル管60を構成してもよい。この場合、近位端から遠位端に向かってカテーテル管60が柔軟になるように材料を変化させると、吸引カテーテル100、200の血管への挿入性が向上するので好ましい。
さらに、カテーテル管60には、金属製網状材や金属製線材などの補強部材を埋設することもできる。補強部材を埋設すると、カテーテル管60として必要な強度を維持しながら、カテーテル管60の肉厚を薄くすることができるため好ましい。これにより、カテーテル管60の外径を大きくすることなく、吸引ルーメン30の断面積を大きくして、吸引カテーテル100、200の吸引性能を向上させることができる。ただし、この補強部材は、先端部分以外の吸引ルーメン30の周囲にのみ設けることが好ましい。先端部分に補強部材を設けると、先端部分が剛直になりすぎて、吸引カテーテル100、200を冠動脈に挿入することが困難になったり、また、挿入する際に、血管を傷つけたりする恐れがあるからである。
カテーテル管60の構造の一例としては、先端部分がポリアミドエラストマーで形成され、残りの部分が三層構造となっているカテーテル管60が挙げられる。この三層構造とは、内層がポリテトラフルオロエチレンで形成され、中間層が補強部材としてのステンレス鋼等の網状部材で形成され、外層が、吸引カテーテル100、200の長手方向において近位端側から遠位端に向かって、ポリアミド、比較的剛直なポリアミドエラストマー、比較的柔軟なポリアミドエラストマーの順に材料を変化させて形成された三層構造である。
なお、カテーテル管60の外周面は、吸引カテーテル100、200を血管内に挿入する際の摩擦を低減させるという観点から、潤滑性を有する親水性高分子物質で被覆することが好ましい。上記の親水性高分子物質には、天然高分子系のものと、合成高分子系のものとがある。天然高分子系のものとしては、デンプン系、セルロース系、タンニン・リグニン系、多糖類系、タンパク質系等が例示される。合成高分子系のものとしては、PVA系、ポリエチレンオキサイド系、アクリル酸系、無水マレイン酸系、フタル酸系、水溶性ポリエステル、ケトンアルデヒド樹脂、(メタ)アクリルアミド系、ポリアミン系、水溶性ナイロン系等が例示される。
これらのなかでも、セルロース系高分子物質(例えばヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(例えばポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質(例えばメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えばポリジメチルアクリルアミド)は、低摩擦係数の被膜が安定して得られるので、上記の親水性高分子物質として特に好ましい。
以上説明したカテーテル管60は、その近位端においてコネクタ80に接続される。コネクタ80は、内部にポートが設けられた筒状体であり、その近位端は、シリンジあるいはトラップを備えた吸引ポンプ等の負圧発生源に接続することができる構造になっている。コネクタ80の材質は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
カテーテル管60とコネクタ80の接続箇所に外嵌されるストレインリリーフ70は、カテーテル管60とコネクタ80との接続箇所に外嵌された筒状体であり、吸引カテーテル、200の長手方向に対して垂直方向から、カテーテル管60に対して加えられた力を吸収する役割を有する。剛性の低いカテーテル管60と剛性の高いコネクタ80との間で剛性の差が大きいため、カテーテル管60とコネクタ80との接続箇所ではカテーテル管60に応力集中しやすく、カテーテル管60が折れ曲がり損傷する現象(キンク現象)が起こる恐れがある。ストレインリリーフ70は、この問題を解決するものであり、カテーテル管60とコネクタ80との接続箇所に外嵌することにより、吸引カテーテル100、200の長手方向に対して垂直方向から、カテーテル管60とコネクタ80との接続箇所付近に対してかかる力を分散し、キンク現象を防止することができる。ストレインリリーフ70の材料としては、ポリオレフィン系エラストマー等のカテーテル管60とコネクタ80の中間程度の剛性を有する、弾性に富んだ材料が好ましい。
本発明の吸引カテーテル100、200のカテーテル管60を製造する方法は限定されないが、例として、吸引カテーテル100について、特に好ましい製造方法を以下説明する。
まず、カテーテル管60となる第一のチューブと、ガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10を形成するための第二のチューブおよび第三のチューブを用意し、第一のチューブの側壁部の、ガイドワイヤルーメン20の近位端開口24となるべき位置と、ディスタルプロテクションデバイスルーメン10の近位端開口14となるべき位置に、第二および第三のチューブの外径とほぼ等しいか、それよりやや小さい開口をそれぞれ設ける。次に、第一のチューブの一方の端部に、第二および第三のチューブの受入孔および吸引口となる遠位端開口34を形成する加工を行う。この加工方法は特に限定されず、例えば、予め三個以上の開口を有する形状に加工された別の部材を取り付ける方法や、加熱成形によりチューブの端部を一度封止してから三個以上の開口を設ける方法が挙げられる。なお、この加工の際にあわせて、カテーテル管60の遠位端部をテーパー状にする加工を行ってもよい。
次に、それぞれ第二のチューブの受入孔として形成した第一のチューブの側壁部の開口と端部の開口とにわたって、第二のチューブを挿入し、さらに、それぞれ第三のチューブの受入孔として形成した第一のチューブの側壁部の開口と端部の開口とにわたって第三のチューブを挿入する。なお、これらのチューブに造影マーカー40を装着する場合は、予め装着を行っておくことが好ましい。そして、第一のチューブの側壁部の開口の縁と、第二および第三のチューブの外周面とを熱融着や接着等によってそれぞれ液密に接合する。この接合方法としては、熱融着が好ましく、具体的には、予め第二および第三のチューブにそれぞれ開口を保持するための芯棒を挿入した上で、融着する二つのチューブを覆うように熱収縮チューブを被せて、該熱収縮チューブを加熱することにより融着する方法が好ましい。そして、第一のチューブの端部に形成した開口の縁と、第二および第三のチューブの外周面とも同様に接合する。この接合は、必ずしも液密である必要はない。
接合の後、第二および第三のチューブの不要な部分があればそれを切除し、このように形成されたカテーテル管60の近位端をコネクタ80に接続して、この接続箇所にストレインリリーフ70を外嵌することにより、本発明の吸引カテーテル100が製造される。なお、本発明の吸引カテーテル100の製造方法は、必ずしもこれまで記載した順で行われる必要はなく、適宜工程の順序を入れ替えることができる。
上述した構成を有する吸引カテーテル100、200を、冠動脈血栓吸引療法に適用する場合の使用例を以下説明する。
まず、患者の大腿動脈等に穿刺されたシースイントロデューサーを介して、冠動脈の入口近傍までガイディングカテーテルを挿入する。次に、予めガイドワイヤルーメン20とディスタルプロテクションデバイスルーメン10のそれぞれに、ガイドワイヤとディスタルプロテクションデバイスを挿通しておいた吸引カテーテル100、200を、ガイディングカテーテル内に通して、冠動脈の入口近傍まで導く。そして、ガイドワイヤのみを血管を選択しながらさらに押し進めて冠動脈内の閉塞部位まで導き、次にガイドワイヤに沿わせて、吸引カテーテル100、200を閉塞部位まで導く。このとき、吸引カテーテル100、200に挿通されたディスタルプロテクションデバイスも一緒に導かれる。その後、ディスタルプロテクションデバイスのみをさらに押し進めて閉塞部位のやや末梢側に位置させ、末梢血管への血栓の流入を防止するための操作を行う。例えば、バルーン型のディスタルプロテクションデバイスを用いる場合には、バルーンを拡張して血管を閉塞させる。
ディスタルプロテクションデバイスによって血栓を塞き止めた後、コネクタ80に、シリンジあるいはトラップを備えた吸引ポンプ等の負圧発生源を接続して、吸引ルーメン30の遠位端開口34に吸引力を発生させる。この吸引力により、冠動脈内の血栓等を吸引ルーメン30内に吸い取る。血栓等が吸い取られ、除去された冠動脈では血流が回復する。ガイドワイヤや、ディスタルプロテクションデバイスを残したまま、他のカテーテル等によって後続の治療を行う場合は、血管内で吸引カテーテル100、200から、ガイドワイヤとディスタルプロテクションデバイスを抜き出してから、吸引カテーテル100、200のみを体外に抜き出せばよい。
このように、本発明の吸引カテーテル100、200を用いてガイドワイヤとディスタルプロテクションデバイスを併用すれば、ディスタルプロテクションデバイスよりも血管選択性能に優れるガイドワイヤによって血管を選択する挿入操作を行って、その後にディスタルプロテクションデバイスを吸引カテーテル100、200と共にガイドワイヤに沿わせて挿入することができるため、一般的にガイドワイヤよりも血管選択性能に劣るディスタルプロテクションデバイスに血管を選択させる必要がなく、ディスタルプロテクションデバイスおよび吸引カテーテル100、200の体内への挿入が容易となる。また、本発明の吸引カテーテル100、200はラピッドエクスチェンジ構造を有しているため、ガイドワイヤやディスタルプロテクションデバイスを体内に残したままカテーテルを交換して、迅速に後続の治療を行うことができる。したがって、吸引カテーテル100、200とディスタルプロテクションデバイスとを併用する場合であっても、吸引カテーテル100、200の挿入や交換を短時間で行うことが可能となり、術者および患者の負担を軽減することができる。
本発明の実施形態の一例である吸引カテーテル100の全体を示す側面図である。 吸引カテーテル100のカテーテル管60の先端部分を示す拡大側断面図である。 図2のA−A’に相当する部分の拡大断面図である。 吸引カテーテル200のカテーテル管60の先端部分を示す拡大側断面図である。
符号の説明
100、200 吸引カテーテル
10 第三ルーメン(ディスタルプロテクションデバイスルーメン)
12 遠位端開口
14 近位端開口
20 第二ルーメン(ガイドワイヤルーメン)
21 最近位端
22 遠位端開口
24 近位端開口
30 第一ルーメン(吸引ルーメン)
31 最近位端
34 遠位端開口
40 造影マーカー
60 カテーテル管
70 ストレインリリーフ
80 コネクタ

Claims (10)

  1. それぞれ遠位端および近位端に開口を有する第一ルーメン、第二ルーメンおよび第三ルーメンを備えたカテーテル管を有するカテーテルであって、
    前記第一ルーメン、第二ルーメン、および第三ルーメンの各遠位端開口が、前記カテーテル管の遠位端部に位置し、
    前記第一ルーメンの近位端開口が、前記カテーテル管の近位端部に位置し、
    前記第二ルーメンおよび第三ルーメンの近位端開口が、前記カテーテル管の側壁部に位置している吸引カテーテル。
  2. 前記第二ルーメンおよび第三ルーメンの近位端開口が、前記カテーテル管の長手方向軸を基準として、互いに反対側に位置している、請求項1に記載の吸引カテーテル。
  3. 前記第二ルーメンおよび第三ルーメンが、それぞれ前記カテーテル管とは異なる管状体により形成され、これらの管状体が第一ルーメン内に位置している、請求項1または2に記載の吸引カテーテル。
  4. 前記第二ルーメンを形成する管状体と、前記第三ルーメンを形成する管状体とが、前記第一ルーメン内において、互いの側面の少なくとも一部分において接合されている、請求項3に記載の吸引カテーテル。
  5. 前記カテーテル管の遠位端部において、前記第二ルーメンを形成する管状体と、前記第三ルーメンを形成する管状体とが前記カテーテル管の軸心近傍に位置している、請求項3または4に記載の吸引カテーテル。
  6. 前記第二ルーメンおよび第三ルーメンのルーメン径が、それぞれ0.2〜1.0mmである請求項1〜5のいずれかに記載の吸引カテーテル。
  7. 前記第一ルーメンが吸引ルーメンであり、前記第二ルーメンおよび前記第三ルーメンのいずれか一方がガイドワイヤルーメンであり、他方がディスタルプロテクションデバイスルーメンである、請求項1〜6のいずれかに記載の吸引カテーテル。
  8. 前記第一ルーメンの遠位端開口が、複数の吸引口として形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の吸引カテーテル。
  9. 前記複数の吸引口が、前記カテーテル管の周方向に実質的に等間隔に配置されている、請求項8に記載の吸引カテーテル。
  10. 第一のチューブの側壁部に二つの開口を設ける工程、
    前記第一のチューブの一方の端部を、少なくとも三つの開口を有する形状に加工する工程、
    前記第一のチューブの側壁部の開口の一つと前記第一のチューブの端部の開口の一つとにわたって、第二のチューブを挿入し、前記第一のチューブの側壁部の開口の他の一つと前記第一のチューブの端部の開口の他の一つとにわたって、第三のチューブを挿入する工程、
    前記第一のチューブの側壁部の開口の縁と前記第二のチューブおよび前記第三のチューブの外周面とを、液密に接合する工程、
    前記第一のチューブの端部の開口の縁と前記第二のチューブおよび前記第三のチューブの外周面とを、接合する工程、
    を有する請求項1〜9のいずれかに記載の吸引カテーテルの製造方法。
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