以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1〜図8に本発明に係る筒内噴射式のレシプロ型エンジンが適用された二輪車の駆動装置を示しており、まずこの二輪車の駆動装置について説明する。この駆動装置は単気筒のエンジンEと、図示しない変速機とを備え、エンジンEのエンジンクランクシャフト16の回転駆動力を変速機で変速して図示しない二輪車の後輪を駆動するように構成されている。
エンジンEは、エンジンシリンダ空間10aを有したエンジンシリンダボディ10と、エンジンシリンダボディ10の上面を覆って取り付けられたエンジンシリンダ12と、エンジンシリンダ空間10aに嵌合して配設され、エンジンシリンダ空間10a内を往復摺動可能なエンジンピストン13と、エンジンシリンダボディ10に結合されて内部空間がエンジンシリンダ空間10aに連通するエンジンクランクケース18と、エンジンクランクケース18の内部空間にベアリング17a,17b等により回転自在に支持されたエンジンクランクシャフト16と、先端部14aがピストンピン13aを介してエンジンピストン13に枢結されるとともに基端部14bがクランクピン15を介してエンジンクランクシャフト16のクランク部16aに枢結されたコンロッド14とを有して構成される。
エンジンシリンダ空間10aは、エンジンピストン13によりピストン上面側の空間10a1とピストン下面側の空間10a2とに仕切られ、ピストン下面側の空間10a2がエンジンクランクケース18の内部空間に連通する。ピストン上面側の空間10a1は、ピストンシリンダ空間10aの内周面と、エンジンピストン13の上面と、エンジンシリンダヘッド12とに囲まれる燃焼室11が形成される。なお、エンジンピストン13の上面には、混合気インジェクタ100のノズル部113より噴射される混合気を受け止めてその混合気を燃え易い状態にするためのキャビティ部13bが設けられている。
エンジンシリンダ12およびエンジンヘッドカバー26にそれぞれ跨って点火プラグ21及び混合気インジェクタ100が取り付けられており、混合気インジェクタ100より圧縮エアと霧化された燃料の混合気を燃焼室11に噴射し、点火プラグ21により燃焼室11内の混合気を点火燃焼させるようになっている。また、エンジンシリンダ12には吸気バルブ23及び排気バルブ24がバルブスプリング23a,24aにより閉止方向に付勢されて取り付けられており、吸気バルブ23はエンジンシリンダ12に形成された吸気通路12aを開閉し、排気バルブ24は排気通路12bを開閉する。なお、吸気通路12aには吸気マニホールド25が繋がり、排気通路12bの出口端12cには排気マニホールド(図示せず)が繋がる。
このエンジンEは4サイクル式のエンジンからなり、ピストン13が2往復する間に吸気、圧縮、燃焼、排気行程が行われ、これに合わせて吸排気バルブ23,24が開閉作動される。この吸排気バルブ23,24の開閉作動のため、エンジンクランクシャフト16の端部に第1スプロケット31が結合して設けられ、エンジンシリンダボディ10の側部に回転自在に設けられたカムシャフト34に第2スプロケット33が設けられ、第1及び第2スプロケット31,33に第1チェーン32が掛け回されている。第1及び第2スプロケット31,33の歯数は1:2に設定されており、エンジンクランクシャフト16の1/2の回転速度でカムシャフト34が回転駆動される。カムシャフト34には吸気用カム部34aと排気用カム部34bとが形成されており、それぞれ連結ピン35a,36aによりエンジンシリンダボディ10に枢結されたカムフォロア35,36のローラ35b,36bが各カム部34a,34bに当接している。このように第1チェーンが設けられており、エンジンクランクケース18の内部空間とエンジンシリンダボディ10の内部空間とは連通している。
一方、エンジンシリンダ12の上面には吸排気バルブ23,24作動用のロッカーアーム39,40が枢結ピン39a,40aにより枢結されて揺動自在に取り付けられており、これらロッカーアーム39,40の一端と上記カムフォロア35,36を繋いでプッシュロッド37,38が図示のように配設されている。ロッカーアーム39,40の他端は上記吸排気バルブ23,24の先端に当接しており、ロッカーアーム39,40の揺動により吸排気バルブ23,24をバルブスプリング23a,24aの付勢に抗して押し下げてこれを開放させる。
上記構成の機構においては、エンジンクランクシャフト16の1/2の回転速度でカムシャフト34が回転駆動され、これに応じてカムフォロア35,36がカムシャフト34の一回転ごとに一回(すなわち、エンジンクランクシャフト16の二回転ごとに一回)上下に揺動される。この揺動に応じてプッシュロッド37,38が上下に往復動されてロッカーアーム39,40が枢結ピン39a,40aを介して揺動され、吸排気バルブ23,24がバルブスプリング23a,24aの付勢力に抗して押し下げられて開放され、吸気及び排気通路12a,12bを燃焼室11と連通させる。なお、吸気バルブ23は吸気行程において開放され、排気バルブ24は排気行程において開放されるようにカム部34a,34bが設定されている。
また、所定のタイミングで混合気インジェクタ100から燃焼室11内に圧縮エアと燃料との混合気が噴射され、点火プラグ21の先端部21aにおける放電によりこの混合気を点火燃焼させ、燃焼行程が行われる。
混合気インジェクタ100は、図3に示すように、キャビティ部13bに対向して設けられて混合気室111内の圧縮エアを燃焼室11内に噴射するエアインジェクタ110と、エアインジェクタ110に対して直列的に配置され、燃料ポンプFPから燃料室121に供給される燃料をエアインジェクタ110の混合気室111内に噴射する燃料インジェクタ120とから構成される。
エアインジェクタ110および燃料インジェクタ120はそれぞれ、図示しないECU(電子制御装置)からの信号を受けて開閉駆動されるソレノイドバルブ110a,120aを有して構成される。燃料インジェクタ120は、ECUによるソレノイドバルブ120aの開閉弁制御により、燃料室121からこのソレノイドバルブ120aのバルブボディ122に形成された燃料導入口123を通ってバルブボディ122に流入した燃料を、エンジンEの状態に応じて予め設定された所定の噴射タイミング、所定の燃料量でノズル部124から噴射する。ノズル部124からの燃料は、エア導入部125を通ってエアインジェクタのバルブボディ112の内部に噴射される。エアインジェクタ110も同様にして、ECUによるソレノイドバルブ110aの開閉弁制御により、予め設定された所定の噴射タイミングおよび噴射量で、混合気室111内の圧縮エアにバルブボディ112の内部に噴射された燃料が混合されて生成される混合気をノズル部113から燃焼室11に噴射する。
燃料インジェクタ120の燃料室121に燃料を供給する燃料供給系Fは、燃料タンクFTから汲み上げた液体燃料を高圧にして圧送する燃料ポンプFPと、燃料ポンプFPから燃料室121に供給される燃料の圧力を所定の設定燃料圧PFに調圧する燃料圧レギュレータFRと、燃料タンクFT、燃料ポンプFP、燃料レギュレータFR、および燃料室121を連通する燃料供給通路系90とから構成される。なお、燃料ポンプFPからの高圧の燃料が設定燃料圧PFを超えており、燃料レギュレータFRによる調圧で余剰とされた燃料は、余剰燃料戻し通路91を介して燃料タンクFTに還流される。
エアインジェクタ110の混合気室111に圧縮エアを供給するエア供給系Aは、外気を清浄化するエアクリーナACと、エアクリーナACからの清浄化されたエアを高圧の圧縮エアにして吐出するエアポンプAPと、エアポンプAPから吐出される圧縮エアの圧力を所定の設定空気圧PAに調圧する空気圧レギュレータARと、これらエアクリーナAC、エアポンプAP、エアレギュレータARおよび混合気室111を連通するエア供給通路系95とから構成される。
エアクリーナACは、吸気マニホールド25の上流端に取り付けられており、内部に空間を形成するとともに入口開口及び出口開口が設けられたクリーナケース(図示せず)と、クリーナケースの内部空間を入口開口が連通する入口側空間(ダーティ側空間)と出口側空間(クリーン側空間)とに仕切って配設されるフィルタエレメント(図示せず)とから構成される。エアクリーナACは、入口開口から入口側空間に取り入れた外気をフィルタエレメントを通過させて濾過し、出口側空間の清浄エアが出口開口から排出され、吸気マニホールド25内に導かれる。
図4〜図8に示すように、エアポンプAPは、エンジンシリンダボディ10と一体に繋がって構成されており、ポンプシリンダ空間50aを有したポンプシリンダボディ51と、ポンプシリンダボディ51の上面を覆って取り付けられたポンプシリンダヘッド52と、ポンプシリンダ空間50aに嵌合してポンプシリンダ空間50a内を往復摺動可能なポンプピストン53と、ポンプピストン53を往復動させるためのスコッチヨーク機構SYとを有して構成される。ポンプシリンダ空間50aは、ポンプピストン53によりポンプピストンの上面側に形成されたポンプ圧縮室50a1と、ポンプピストンの下面側に形成されてポンプピストン53の下面およびポンプシリンダ空間50aの内周面により囲まれたピストン下面側空間50a2とに仕切って配設される。
スコッチヨーク機構SYは、ポンプピストン53と一体に繋がった平板状のピストンロッド54の先端に形成された摺動孔54a内に嵌合してポンプシリンダ空間50aのシリンダ軸と直角方向に摺動自在に設けられたスライダ55と、エンジンシリンダボディ10の側部に設けられたポンプ駆動シャフト56の先端に偏芯して形成された偏芯シャフト57とを有して構成され、偏芯シャフト57がスライダ55に回転自在に嵌合連結されている。なお、ポンプ駆動シャフト56はベアリング58a,58bを介してエンジンシリンダボディ10により回転自在に支持されている。なお、一体に成形されるポンプ駆動シャフト56および偏心シャフト57は、エンジンシリンダボディ10に設けられる連通孔10bを介して、エンジンシリンダボディ10内およびポンプシリンダボディ51内に跨って配設される。このように、連通孔10bを介して、エンジンシリンダボディ10の内部空間とポンプシリンダボディ51のピストン下面側空間50a2が連通されている。
このような構成において、ポンプ駆動シャフト56を回転駆動すると、スコッチヨークSYの作用によりポンプピストン53をシリンダ内周面51aに摺接させながら往復運動させることができる。このポンプ駆動シャフト56を回転駆動するため、カムシャフト34に結合して設けられた第2スプロケット33と一体に第3スプロケット60が設けられ、ポンプ駆動シャフト56には第4スプロケット61が結合して設けられ、第3及び第4スプロケット60,61に第2チェーン62が掛け回されている。第3及び第4スプロケット60,61の歯数は2:1に設定されており、カムシャフト34の2倍の回転速度でポンプ駆動シャフト56が回転駆動される。このように、第1及び第2スプロケット31,33、第1チェーン32、カムシャフト34、第3及び第4スプロケット60,61、および第2チェーン62からなる駆動力伝達機構TMにより、ポンプ駆動シャフト56は、エンジンクランクシャフト16の回転を受けてエンジンクランクシャフト16と同一回転速度で回転され、エンジンクランクシャフト16が一回転するとポンプピストン53は一往復する。このようにしてポンプピストン53が往復動されるのに応じてポンプ圧縮室50a1内にエアを吸入して圧縮する。
ポンプシリンダボディ51とポンプシリンダヘッド52との間には薄い金属板からなるバルブプレート63が挟持されてガスケットとしての機能を果たしている。このバルブプレート63には吸気孔52aを塞ぐようにして吸気リード弁64が舌片状に打ち抜き加工して形成されている。吸気リード弁64は、ポンプピストン53が下方に移動するときに、ポンプ圧縮室50a1内に発生する負圧を受けて下方に撓んで吸気孔52aを開放し、吸気孔52aからのエアがポンプ圧縮室50a1に導入される。なお、吸気孔52aには、吸気マニホールド25の上流部における側壁から分岐して設けられる清浄エア供給通路(図示せず)が接続されており、エアクリーナACから吸気マニホールド25に導かれた清浄エアがこの清浄エア供給通路を経て吸気孔52aからポンプ圧縮室50a1内に導入される。また、上記バルブプレート63には、ポンプピストン53に形成された凸部53aが嵌入し得る円形孔65が形成されている。
バルブプレート63の上方には排気ポペット弁70が設けられている。この排気ポペット弁70は、図8に示すように、ポンプシリンダヘッド52に形成された圧縮エア通過空間52d内における着座面52cに着座するように設けられた円盤状の弁体71と、この弁体71を着座面52cに着座する方向に付勢する圧縮ばね74とから構成される。圧縮エア通過空間52dにおける着座面52cからポンプ圧縮室50a1内に連通してエア連通孔52dが形成されており、弁体71が着座面52cに着座した状態でエア通過孔52bが弁体71により覆われて閉止される。このような構成の排気ポペット弁71は、図8に矢印Aで示すようにポンプピストン53が下方に移動されるときに、ポンプ圧縮室50a1内に発生する負圧を受けて弁体71が着座面52cに着座した状態で保持されてエア通過孔52bを閉塞し、圧縮エア通過空間52d内の圧縮エアがポンプ圧縮室50a1内に逆流するのを防止する。
このようにエアポンプAPは、エンジンクランクシャフト16が回転されると、駆動力伝達機構TMにより回転力が伝達され、ポンプ駆動シャフト56がエンジンクランクシャフト16と同一回転速度で回転駆動される。そして、ポンプピストン53がポンプ駆動シャフト56の回転に対応して往復動され、その結果、エンジンクランクシャフト16の一回転ごとにポンプピストン53が一回往復動される。ポンプピストン53が往復動されるときに、ポンプピストン53の下動行程(図8中の矢印A方向に移動する行程)では吸気リード弁64が開放されて吸気孔52aからポンプ圧縮室50a1内に清浄エアを吸入し、上動行程(図8中に矢印B方向に移動する行程)では排気ポペット弁70が開放されて、ポンプピストン53の上動に応じて圧縮されたポンプ圧縮室50a1内の圧縮エアが圧縮エア通過空間52d内に押し出される。また、ポンプピストン53が上死点近傍まで上動したときには、ポンプピストン53に形成された前述の凸部53aはバルブプレート63に形成された円形孔65からポンプシリンダ52に形成されたエア通過孔52b内に嵌入する。これにより、エア通過孔52bの内部空間のエアが凸部53aにより圧縮されて圧縮エア通過空間52d内に押し出されることになるので、圧縮デッドスペースが小さくなって圧縮効率が高められる。
上記のように圧縮エアが供給される圧縮エア通過空間52dには圧縮エア供給管95aが接続されている。この圧縮エア供給管95aは、図5に示すように、エンジンシリンダ12およびエンジンヘッドカバー26に形成された圧縮エア供給路95bと繋がっており、圧縮エア供給路95bはエアインジェクタ110の前述の混合気室111に開口している。
エアポンプAPから混合気室111内に供給される圧縮エアの圧力を調整する空気圧レギュレータARは、オリフィスOを介して上記圧縮エア供給路95bに繋がって設けられる。圧縮エアの圧力が所定の設定空気圧PAを超えており、空気圧レギュレータARの調圧で余剰とされたエアは、余剰エア戻し通路96を経てエアクリーナACに還流される。また、オリフィスOにより空気圧レギュレータARに導かれるエアの脈動が抑制され、空気圧レギュレータの調圧性能を向上させるようになっている。
図6に示すように、エンジンヘッドカバー26には、エアインジェクタ110の混合気室111の近傍に、圧縮エア供給路95bに連通してエアポンプAPから吐出される圧縮エアを蓄える蓄圧室26aが一体に成形されている。この蓄圧室26aは、エアポンプAPが1回の作動で吐出するエア量を蓄えることができる容量を有して成形されている。
このように構成されるエンジンEの作動タイミングについて、図9を参照して説明する。このエンジンEは上記の通り4サイクル式のエンジンからなり、クランク角が0度で上死点に位置するエンジンピストン13が下動すると、排気バルブ24が閉弁され、前の作動サイクルの排気行程中に開弁された吸気バルブ23を介して吸気マニホールド25からのエアが吸気通路12aを経て燃焼室11内に吸気される(吸気行程)。クランク角が180度でエンジンピストン13が下死点に達すると、エンジンピストン13がエンジンクランクシャフト16の慣性力で上動し、吸気バルブ23が閉弁され、燃焼室11内のエアが圧縮される(圧縮行程)。この圧縮行程中に混合気インジェクタ100のノズル113から混合気が噴射され、点火プラグ21により混合気が点火燃焼され、クランク角が360度で上死点に達したエンジンピストン13が燃焼膨張により再び下動する(燃焼行程)。エンジンピストン13が下動し、クランク角が540度となって下死点に達すると、再びエンジンクランクシャフト16の慣性力を受けて上動する。この過程で排気バルブ24が開弁され、燃焼室11内のエアが排気通路12bに排出される(排気行程)。
なお、燃焼行程に係る作動タイミングについては、吸気行程中に燃料インジェクタ120のソレノイドバルブ120aが開弁されて燃料室122内の燃料の噴射が行われ、次いでエアポンプAPによる圧縮エアの吐出が行われ、圧縮行程中にエアインジェクタ110のソレノイドバルブ110aが開弁されて混合気室111から燃焼室11への混合気の噴射が行われ、エンジンピストン13が上死点に達する直前に点火プラグ21の先端部21aの放電が行われるようになっている。
燃料インジェクタ120、エアインジェクタ110、および点火プラグ21の作動タイミングは、図示しないクランク角検出器等、エンジンEの状態を検出する検出手段からの検出信号を基にしてECUにより制御されており、吸気行程から排気行程に至る上記一連のエンジンEの作動サイクルにおいてそれぞれ1回ずつ作動する。
このようにエンジンクランクシャフト16が2回転、エンジンピストン13が2往復して一連のエンジンEの作動サイクルが行われるが、このエンジンピストン13の往復動により、エンジンピストン13の下面側の空間10a2に連通するエンジンクランクケース18の内部空間が圧縮、膨張を繰り返すことから、エンジンクランクケース18の内圧が変動する。図9に示すように、エンジンピストン13が上動するとエンジンクランクケース18の内部空間が膨張されてエンジンクランクケース18の内圧は下降し、エンジンピストン13が下動するとエンジンクランクケース18の内部空間が圧縮されてエンジンクランクケース18の内圧は上昇する。
ここで、本実施例のエアポンプAPは、エンジンクランクシャフト16の回転を駆動力伝達機構TMを介して機械的に伝達し、エンジンクランクシャフト16の回転に同期してポンプピストン56を摺動させることにより駆動されている。このため、エアポンプAPの圧縮エアを吐出するタイミングは、クランク角に応じたポンプピストン56の位置で決まる。本実施例においては、エアポンプAPは、クランク角が180度および540度であるとき、すなわちエンジンピストン13が下死点に位置するときに、ポンプピストン56が上死点に位置するように設定されている。
これによりエアポンプAPは、エンジンピストン13が下死点近傍に位置するとき、すなわち、燃焼行程から排気行程への移行時(以下「第1作動タイミングT1」と称する)および吸気行程から圧縮行程への移行時(以下「第2作動タイミングT2」と称する)をそれぞれ作動タイミングとして、ポンプ圧縮室50a1から圧縮エアを吐出してエアインジェクタ110に供給する。
第1作動タイミングT1で吐出される圧縮エアは、圧縮エア供給管95a、圧縮エア供給路95bを通り、圧縮エア供給路95bに連通する蓄圧室26a内に供給され、蓄圧室26a内で圧力を保持されたまま蓄えられる。上記のように蓄圧室26aの容量はエアポンプAPが1回の作動で吐出する圧縮エアの量に相当することから、蓄圧室26aは第1作動タイミングT1で吐出された圧縮エアで満たされる。次いで、第2作動タイミングT2で吐出される圧縮エアは、蓄圧室26aが第1作動タイミングT1において吐出された圧縮エアで満たされていることから、エアインジェクタ110の混合気室111内に蓄えられる。
その後、エアインジェクタ110のソレノイドバルブ110aが開弁されると、混合気室111内に蓄えられていた圧縮エアが開放されて燃焼室11内に噴射されるとともに、蓄圧室26aに蓄えられていた圧縮エアがともに混合気室111を経て燃焼室11内に噴射される。圧縮エアの噴射の終了はソレノイドバルブ110aの閉弁により行われ、ソレノイドバルブ110aが閉弁された後の蓄圧室26aおよび混合気室111内の空気圧は、圧縮エアが蓄えられる前の圧力状態に戻される。
上記のように構成されるエアポンプAPにおいて、ポンプ圧縮室50a1内のエアを圧縮するポンプピストン53の上動時に、エンジンピストン13が下動するようになっており、エンジンクランクケース18の内圧が上昇する。ポンプピストン53の上動時に体積が膨張されるピストン下面側空間50a2は、エンジンクランクケース18の内部空間と、連通孔10b、エンジンシリンダボディ10の内部空間を介して連通している。このため、ポンプピストン53が上動する第1および第2作動タイミングT1,T2において、ピストン下面側空間50a2に、上昇するエンジンクランクケース18の内圧が作用し、この内圧によってポンプピストン53の上動がアシストされる。
また逆に、ポンプ圧縮室50a1内に清浄エアを取り入れるポンプピストン53の下動時においても、エンジンピストン13が上動してエンジンクランクケース18の内圧が下降する。このとき、ピストン下面側空間50a2は圧縮されるが、下降するエンジンクランクケース18の内圧がピストン下面側空間50a2に作用するため、ポンプピストン53の下動がアシストされる。このように、本発明に係る筒内噴射式のレシプロ型エンジンによると、エンジンクランクケース18の内圧を利用してポンプピストン53の往復動をアシストできることから、ポンプピストン53のポンピングロスが低減され、エアポンプAPの作動効率を向上させることができる。
また、このように、エンジンピストン13とポンプピストン53の往復動周期を同期させているため、本実施例のようにエンジンEが4サイクル式であると、吸気行程から排気行程に至るまでにエアポンプの圧縮が2回行われる。一方、エアインジェクタ110による燃焼室11への圧縮エアの噴射は従来と同様に1回である。このように、1回に噴射される圧縮エアを2回に分けて吐出する構成であるため、混合気インジェクタ100の噴射に必要なエア量を1回の吐出で賄う構成のエアポンプと比較して、ポンプ容量をおよそ半分にすることができ、筒内噴射式のレシプロ型エンジンのエアポンプをコンパクトに構成することができる。
また、2回に分けて吐出される圧縮エアのうち、1回分の吐出量に相当するエア量を蓄えることができる容量を有した蓄圧室26aを、ポンプ圧縮室50a1からエアインジェクタ110の混合気室111に至る通路に備えている。これにより、燃焼行程から排気行程への移行時(第1作動タイミングT1)に吐出されるエアが蓄圧室26aに蓄えられ、吸気行程から圧縮行程への移行時(第2作動タイミングT2)に吐出されるエアが混合気室111に蓄えられ、エアインジェクタ110のソレノイドバルブ110aの開弁時に、蓄圧室26aおよび混合気室111に蓄えられたエアが燃焼室11に噴射されるようになっている。このため、上記同様、噴射に必要なエアを混合気室111のみで蓄える構成の混合気インジェクタ100と比較して、混合気室111の容量をおよそ半分にして構成することができ、筒内噴射式のレシプロ型エンジンをコンパクトに構成することができる。
また、このような蓄圧室26aはエンジンヘッドカバー26の内部に一体に形成されているため、上記効果を有する筒内噴射式のレシプロ型エンジンを複雑化させることなく構成できる。また、蓄圧室26aをエンジンヘッドカバー26の外部に設けた際には、外気温の影響を受けて圧縮エア内の水分が蓄圧室26a内に結露するおそれがあるが、エンジンEの作動に伴って高温となるエンジンヘッドカバー26の内部に設けていることから蓄圧室内の保温性を高くすることができ、このような結露のおそれが低減して蓄圧室26aの耐久性を向上することができる。さらに、この蓄圧室26aはエアインジェクタ110の混合気室110aの近傍に設けられていることから、蓄圧室26a内のエアは圧力損失を小さくしてエアインジェクタ110に供給され、蓄圧室26aに蓄えられた圧力を噴射に有効利用することができる。
以上、本発明に係る筒内噴射式のレシプロ型エンジンの実施例について説明したが、必ずしも上記実施例の形態に限られない。例えば、エンジンクランクシャフト16の回転駆動力をポンプ駆動シャフト56に伝達する伝達機構は、エンジンクランクシャフト16とポンプ駆動シャフト56がエンジンクランクシャフト16と同一回転速度で回転駆動されるように構成され、また、エンジンピストンが下死点に位置するときにポンプピストンが上死点に位置するようにして駆動されていればていればどのような形態のものであってもよい。
また、本実施例では単気筒4サイクル式のエンジンを例示したが、多気筒のエンジンであってもよい。また、本発明に係る内燃機関を有した車両として二輪車を例示したが、四輪車など、他の形態の車両に適用しても同様に実施可能であり、同様の効果を得ることができる。