JP2006274107A - 塩化ビニル系樹脂の回収方法及びその回収処理設備 - Google Patents

塩化ビニル系樹脂の回収方法及びその回収処理設備 Download PDF

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Abstract

【課題】 シート状廃棄物を溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂を回収する場合に、溶解工程での処理の効率化が可能な回収方法を提供する。
【解決手段】 シート状廃棄物を加熱溶融した後、造粒して塩化ビニル系樹脂含有造粒物とする造粒工程と、前記塩化ビニル系樹脂含有造粒物を前記塩化ビニル系樹脂が溶解可能な溶媒に溶解し、塩化ビニル系樹脂含有溶液を得る溶解工程と、前記塩化ビニル系樹脂含有溶液から不溶物を分離する分離工程と、前記不溶物を除去した溶液から前記塩化ビニル系樹脂を回収する回収工程を備えるシート状廃棄物から塩化ビニル系樹脂を回収する方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は廃棄物から塩化ビニル系樹脂を回収する方法及び回収処理設備に関し、詳しくは塩化ビニル系樹脂を含有するシート状廃棄物からの回収方法及び回収処理設備に関する。
塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの塩化ビニル系樹脂は加工性に優れると共に安価なポリマーであるので、ポリエステルやポリオレフィン(例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなど)等の他の汎用ポリマーと同様に様々な用途に使用されている。しかしながら、このような汎用ポリマーは、ライフサイクルの長い基素材分野だけでなく、日用品等の使用寿命の短い商品材料として大量生産され、従って大量廃棄に伴う環境汚染が問題となっている。
塩化ビニル系樹脂を主成分とする廃棄物としては、例えば廃電線被覆、建築資材での壁紙など以外に、家庭用のレジャーシート、グランドシート、あるいはハウス栽培に用いられる農業用ビニールシート、建築工事現場での建築物のカバーシートなどが挙げられる。このような廃棄物の大部分は埋立てあるいは焼却などにより処理されているが、塩化ビニル系樹脂は自然界では分解することができず、また良く知られているように焼却によりダイオキシンを生成する原因物質のひとつであるため、環境への影響も考慮する必要がある。
このため、塩化ビニル系樹脂を主成分とする廃棄物から塩化ビニル系樹脂を回収し再利用するための種々の回収方法が検討されている。例えば、粉砕、遠心分離などによる機械的な回収方法以外に、最近では廃棄物を塩化ビニル系樹脂が溶解可能な溶媒に溶解し、溶液から塩化ビニル系樹脂を回収する方法が検討されている(例えば、特許文献1〜3)。
特開平11−310660号公報 特表2003−510436号公報 特開2004−292549号公報
上記のような溶媒を用いた回収方法は安全性も高く高純度で塩化ビニル系樹脂を回収できるため好ましいが、廃棄物に含まれる塩化ビニル系樹脂は高分子であるため溶媒への溶解速度が遅く、溶液とするためには一定時間必要となる。このため、連続的に溶媒に投入することができず、投入すると溶液に濃度差が生じて固形分が残存しやすい。特にシート状廃棄物の場合、比重が小さく嵩張るため溶解させる際に大きな溶解槽が必要となり、投入できる量がチップ状の廃電線被覆と異なり限界がある。また、無理に大量に投入すると溶解処理時に溶け残りが生じやすく、このため溶液濃度を最大で15重量%程度まででしか使用することができないという問題があった。このような溶解工程の溶解時間の長時間化や低濃度での処理は一度に大量処理を必要とする廃棄物処理の効率を低下させることとなる。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、その目的はシート状廃棄物を溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂を回収する場合に、溶解工程での処理の効率化が可能な回収方法及び回収処理設備を提供することにある。
本発明の上記課題を解決するための塩化ビニル系樹脂を含有するシート状廃棄物から塩化ビニル系樹脂を回収する方法とは、前記シート状廃棄物を加熱溶融した後、造粒して塩化ビニル系樹脂含有造粒物とする造粒工程と、前記塩化ビニル系樹脂含有造粒物を前記塩化ビニル系樹脂が溶解可能な溶媒に溶解し、塩化ビニル系樹脂含有溶液を得る溶解工程と、前記塩化ビニル系樹脂含有溶液から不溶物を分離する分離工程と、前記不溶物を除去した溶液から前記塩化ビニル系樹脂を回収する回収工程とを備えることを要旨とする。
上記のような造粒工程で予めシート状廃棄物を造粒することにより、溶解工程での処理速度をシート状廃棄物に比較して速めることができる。また、溶液中で大きな濃度差が生じ難いためシート状廃棄物では溶液中に最大で15重量%程度までしか溶解することができなかったのに対し、20重量%以上での処理も可能となる。
また本発明は、前記塩化ビニル系樹脂含有造粒物のみかけ比重が、0.3〜0.5g/cmであることが好ましい。このような大きな比重の造粒物とすることにより一度に多量の廃棄物処理が可能となるためさらに処理効率を上げることができる。
本発明の前記回収工程は前記不溶物を除去した溶液に熱水及び/またはスチーム(以下、単に「熱水等」ということがある)を接触させて塩化ビニル系樹脂を析出する工程を備えることが好ましい。このような回収工程により高純度で塩化ビニル系樹脂を回収することができる。
また本発明の前記回収工程は前記不溶物を除去した溶液に塩化ビニル系樹脂の非溶媒を添加して塩化ビニル系樹脂を析出する工程を備えることが好ましい。このような回収工程によっても高純度で塩化ビニル系樹脂を回収することができる。
また本発明は、上記回収方法を備えることを特徴とする塩化ビニル系樹脂回収処理設備である。本発明の回収処理設備によれば、シート状廃棄物から塩化ビニル系樹脂を高純度で、効率的に回収することができる。
本発明の回収方法によれば、溶解に時間がかかり、高濃度での処理が困難なシート状廃棄物を処理対象とする場合であっても、造粒物とすることにより比重が大きくなり一度の処理で大量の廃棄物を処理可能となる。また、溶液中の溶液濃度の濃度差を低下できるため、溶液濃度をシート状廃棄物に比較して高くしても溶け残りが生じることもない。従って、本発明を溶解工程により回収する方法に用いることにより、回収処理の効率化を図ることができる。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る発明の洗浄工程から回収工程を示すフロー図である。本発明において処理される、例えば塩化ビニル樹脂や塩化ビニリデン樹脂などの塩化ビニル系樹脂を主成分として含有する原料には農業用ビニールシート、建築現場用シートなどのシート状廃棄物が挙げられる。このようなシート状廃棄物は比重が0.05g/cm未満の低比重のものであるため嵩高い廃棄物となっており、回収処理の効率を低下させている。このため本発明では溶解工程前に予めシート状廃棄物を加熱溶融し、造粒を行って塩化ビニル系樹脂含有造粒物とするものである。
本発明において原料であるシート状廃棄物の大きさは特に限定されるものではないが、長尺のシートなどは余りに大きいと加熱溶融を効率的に行うことができず、また溶融装置も大型化するため、予め400mm四方程度以下の大きさまで裁断することが好ましい。この裁断は従来公知のシート裁断機を使用することができる。
造粒工程では、まずシート状廃棄物を加熱溶融する。溶融温度は120〜150℃が好ましい。温度が余りに低いと溶融状態とならず均一な造粒物が得られにくくなる。一方、溶融温度が高すぎると塩化ビニル系樹脂の特質として分解が生じやすくなり、塩化水素ガスなどが発生するという問題がある。溶融時間は塩化ビニル系樹脂の種類にもよるが、1バッチ当たりの処理量が10〜30kgの場合、2〜20分とすることが好ましい。次に、溶融物を造粒するが、その際溶融状態から造粒し、さらにそれを冷却し、固化して塩化ビニル系樹脂含有造粒物とする。冷却条件としては2〜5分で60℃以下まで急冷することが好ましい。
本発明のシート状廃棄物を溶融し、造粒する装置としては合成樹脂を通常製造する場合に用いられるヘンシェルミキサー、アドオンミキサー等を用いることができる。このような装置を用いると、同一ミキサー内で溶融及び造粒が可能となる。特にヘンシェルミキサーを使用すると内部に空隙を有する造粒物とすることができ溶媒への溶解が速くなるため好ましい。そして、造粒後にクーラーミキサーなどの冷却装置に供給し、冷却、固化することにより塩化ビニル系樹脂含有造粒物を得ることができる。
本発明の上記造粒物はみかけ比重を0.1〜0.6g/cmとすることが好ましく、0.3〜0.5g/cmとすることがより好ましい。上記みかけ比重はJIS K 6720−2に記載の測定方法に従って測定したものである。一般に樹脂の溶媒への溶解には比重を小さくした微粒子のものほど好ましいとも考えられるが、本発明では大量処理を必要とするため余りに低比重であると廃棄物を大量に投入した時に溶液表面に造粒物が堆積し一定量以上溶解し難くなることから、ある程度の比重を有している方が好ましいためである。一方、比重の大きな造粒物は造粒時間が長時間化するため経済的に好ましくない。従って、上記のようなみかけ比重の造粒物とすることにより大量に溶媒に投入することができ、シート状の場合と比較して回収処理全体の処理効率を格段に上げることができる。なお、本発明でみかけ比重としているのは、得られる造粒物は内部に空隙を有するものがあり、溶媒で溶解するためにはそのような内部に空隙を有する造粒物の方が好ましいからである。
また本発明の造粒物は粒径が10mm以下、特に5mm以下が好ましい。粒径が余りに大きいと溶媒への溶解に時間を要するばかりでなく、不溶物として溶解槽の底部に堆積する傾向がある。
次に、上記のようにして得られる造粒物を溶解処理する。本発明では上記の造粒工程により塩化ビニル系樹脂含有造粒物としているため、溶液濃度を20重量%以上とすることもできる。
溶解処理にはシート中に含まれる塩化ビニル系樹脂が溶解可能な溶媒が用いられる。具体的には、例えば、極性溶媒、特にケトン類溶媒が好適に利用でき、これによってポリオレフイン類などのポリマーを含有する廃棄物からでも塩化ビニル系樹脂を選択溶解させることができる。しかも、ケトン類溶媒を用いると、高分子量の塩化ビニル系樹脂まで処理可能である。ケトン類溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。また、本発明においては塩化ビニル系樹脂の溶解性の高いテトラヒドロフランなどのエーテル類、N−メチルピロリドンなどの水溶性アミド化合物、γ−ブチロラクトンなどの水溶性ラクトン化合物も使用可能である。使用される溶媒は廃棄物中に含まれる塩化ビニル系樹脂の溶解性や、塩化ビニル系樹脂を回収処理する処理方法などによって適宜選択することができる。
溶解処理時に溶媒を加熱する温度は使用する溶媒の種類によって異なるが、溶媒が揮発する温度未満であれば特に限定されず、安全に操業できる範囲で温度を制御すれば良い。なお溶解する方法としては特に限定されず、洗浄したシート状廃棄物を容器に予め投入し、そこへ溶媒を添加して加熱撹拌することもできるし、予め加熱した溶媒に廃棄物を混合して撹拌しても良い。
次に、得られた溶液は塩化ビニル系樹脂などの溶解物と溶媒に不溶な不溶物に分離する。分離する手段は特に限定されず、スクリーン、遠心分離や沈澱法など公知の方法を利用することができる。
不溶物を分離した溶液は次に回収工程に移送される。この回収工程においては従来から公知の回収方法を利用することができる。例えば、(a)溶液に熱水及び/またはスチームを接触させて溶媒を蒸発させながら塩化ビニル系樹脂を沈殿により析出させ回収する方法、(b)溶液を加熱して溶媒を蒸発させることにより塩化ビニル系樹脂を析出させ加熱溶融して回収する方法などを用いることができる。図1は上記のうち(a)の析出工程を備えた回収方法を利用するものであり、この方法によれば塩化ビニル系樹脂の回収と溶媒の蒸発を同時に行うことができるため好ましい。以下は、この回収方法に用いられる処理方法の一例である。なお、上記方法としては、例えば特開平11−310660号などに記載の方法を参考にすることができる。
まず、不溶物を分離した溶液と熱水等を接触させると溶媒に対する塩化ビニル系樹脂の溶解度が極端に低下すると共に、溶液中の溶媒が揮発し、溶液から塩化ビニル系樹脂を順次粒子状の沈殿物として析出させることができる。そして、沈澱物を分離し粒子状の塩化ビニル系樹脂を含む溶液から残存溶剤を除去することにより塩化ビニル系樹脂を回収することができる。
本発明では溶液と熱水等を接触させる方法は特に限定されるものではないが、熱水等を前記溶液に注入する方法が推奨される。この方法であれば、塩化ビニル系樹脂を溶解している溶液の注入量が一定でない場合や操業を突然停止した場合などでも、塩化ビニル系樹脂が一時的に析出しないという事態を招くに止まり、溶液注入量を厳密に制御することなく操業できる。
本発明では前記溶液から析出した塩化ビニル系樹脂を残存溶剤などから分離することによって、塩化ビニル系樹脂を回収することができる。分離方法は、特に限定されず公知の方法が採用でき、例えば、スクリーンや遠心分離が例示できる。そして、分離された水は必要に応じて析出工程に戻すことができる。
次に、本発明の目的を達成することのできる塩化ビニル系樹脂の回収処理設備の一形態について説明する。図2は塩化ビニル系樹脂含有造粒物を溶解し、溶液から塩化ビニル系樹脂を回収する溶解、分離、回収工程の各構成を示す概略図である。
造粒工程により造粒された塩化ビニル系樹脂含有造粒物は、移送手段L3により溶解装置2に投入される。この溶解装置2は塩化ビニル系樹脂を溶解可能な溶媒を供給する配管L4、撹拌機21を備えている。そして、投入された塩化ビニル系樹脂含有造粒物は溶媒と撹拌混合することにより塩化ビニル系樹脂が溶解しスラリー状の溶液22となる。この時溶解を促進するため溶解装置2はヒーターなどの加熱装置を備えているものが使用される。なお、溶液はさらにスタティックミキサーなどを用いて完全に塩化ビニル系樹脂を溶解させることもできる。
次に、上記の溶液を配管L5を介して分離装置3に導入し、不溶物を配管L6から排出し、溶解物を配管L7により析出装置4に供給する。この分離装置には例えばスクリーンなどの分離装置を用いることができる。
析出装置4は溶解装置2と同様に撹拌機41及び装置内に熱水等を供給する配管L8を備えている。この熱水等を溶液42内に供給することにより、溶媒が蒸発しつつ溶媒に対する塩化ビニル系樹脂の溶解量が下がるので粒子状の沈殿物が析出する。蒸発した溶媒は所望により配管L9を介して凝縮され、溶解装置2での溶媒として再利用される。
沈殿した塩化ビニル系樹脂は配管L10を介してポンプ(図示せず)に送られ、さらに残存溶剤と塩化ビニル系樹脂に分離するための分離機43に導入される。この分離機43には例えばフィルターや遠心分離機などを用いることができる。残存溶剤は水を主成分とするものであるため配管L11を介して、所望により蒸留された後、析出装置4で再利用される。
そして、回収された塩化ビニル系樹脂は配管L12を介して移送され、必要により乾燥処理などを行い再生塩化ビニル系樹脂が得られる。
以上の造粒工程、溶解工程、分離工程及び回収工程の一連の工程によりシート状廃棄物に含まれる塩化ビニル系樹脂を高純度で効率的に回収することが可能となる。
(実施の形態2)
本発明は実施の形態1において、造粒工程前に洗浄工程及び脱水工程を設けることも好ましい形態である。
シート状廃棄物は土壌物などによる付着物が多量にシート表面あるいはシート内部に含有されている場合が多く、そのまま加熱溶融して造粒すると造粒物の成形が阻害されやすい。また得られる造粒物を溶媒に投入して溶解すると不溶物が大量に発生し、処理効率が極めて低下する。このため、本発明では洗浄工程及び脱水工程を予め行って造粒することが好ましい。
図3は本実施の形態のフローを示す図であり、洗浄工程及び脱水工程が造粒工程前に設けられている以外は実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同じ部分については説明を省略し、洗浄工程及び脱水工程について以下に述べる。
洗浄工程ではシート状廃棄物を洗浄装置に投入して洗浄し、付着物の量を低減する。洗浄工程における条件としては水による洗浄が好ましい。シート状廃棄物に付着している付着物の多くは土壌物に由来するため、水による洗浄が効果的なためである。
また、水による洗浄を行う場合には、温度が40〜70℃の水で洗浄することが好ましい。農業用ビニールシートなどに使用されている塩化ビニル系樹脂は重合度が1,100〜1,300程度の塩化ビニル系樹脂であり、このような塩化ビニル系樹脂は40℃以上となると軟化してくる。この軟化によって表面に付着した土壌物だけでなく、内部に入り込んだ土壌物が水流により洗い流されやすくなり、多量の付着物を効率的に除去することができる。本発明者らの検討によれば、常温の水を用いた場合と比較して3倍量以上の付着物を除去する効果があることを確認している。一方、洗浄水の温度が余りに高くなりすぎるとシートが軟化し過ぎてしまい、付着物がシート内に取り込まれて除去量が減少することとなる。このため、洗浄に使用する水の温度は40〜70℃が好ましく、40〜60℃が最適である。
また、洗浄工程での装置内のシート状廃棄物の滞留時間は10〜50秒で、水の量は廃棄物1t当たり0.1〜0.5t供給することが好ましい。滞留時間が10秒未満であったり、水の供給量が0.1t未満である場合は廃棄物と水との接触する時間が少なすぎ、また水が廃棄物全体に行き渡らず十分な洗浄が行えない傾向にある。一方、滞留時間を長時間とすることや、水量を多くすることにより除去量は増えていくが、余りに長時間としても洗浄効果にそれほど差がなく経済的でない。
本発明の溶解処理により塩化ビニル系樹脂の回収処理を行う場合に、上記で得られる洗浄後のシート状廃棄物中の付着物の目安としては、廃棄物1t当たり0.05t以下とすることが好ましい。この程度まで付着物量を低減したシートであれば、後の分離工程における短縮化を十分に図れるとともに回収される塩化ビニル系樹脂の純度を高めることができ、再生塩化ビニル系樹脂として各種用途に使用することが可能となる。なお、本発明で使用される洗浄装置は特に限定されるものではなく、所定の滞留時間とすることができ、洗浄のための水を供給できる構造であればよい。
洗浄工程後、造粒工程前には脱水工程を行うことが好ましい。洗浄工程によりシート状廃棄物に水が多量に付着していると造粒工程で造粒物の生成が阻害されやすい。脱水工程では、洗浄されたシート状廃棄物に付着した水を脱水機により脱水を行う。この際、脱水洗浄と脱水の2工程を行うことが好ましい。脱水洗浄を行うことにより、シート状廃棄物の付着物をさらに低減することができる。この洗浄には常温の水を用いることができる。脱水洗浄後の脱水工程では、例えば遠心脱水などにより水を除去することができる。このようにして得られるシート状廃棄物の水の量は造粒工程での効率化を図るため、シート状廃棄物1t当たり0.1t以下とすることを目安とする。
(実施の形態3)
本発明は実施の形態2において洗浄工程後、脱水工程前にシート状廃棄物を冷却、裁断する工程を設けることも好ましい形態である。
シート状廃棄物を予め小片のフラフとすることにより脱水が容易になるとともに、造粒を行う際に溶融が速やかとなり、さらに処理効率を向上することができる。
図4は本実施の形態のフローを示す図であり、冷却、裁断工程が洗浄工程と脱水工程の間に設けられている以外は、実施の形態2と同様である。このため、実施の形態1及び2と同じ部分については説明を省略し、冷却、裁断工程について以下に述べる。
洗浄工程での洗浄時にシート状廃棄物は温水で加熱され軟化しているため、小片のフラフを作製するのに直接破砕機に投入すると機械の噛み込みが生じやすい。例えば農業用ビニールシートでは30℃以上に加温されたシート状廃棄物の場合、破砕時に装置の噛み込みが確認された。このため、洗浄後に冷却を行うことにより農業用ビニールシートのような軟質の破砕しにくいシートであっても効率的に破砕することができる。この場合、洗浄後のシート状廃棄物を室温で放置することにより冷却することもできるが、処理速度の低下をもたらすため、洗浄工程後、空冷あるいは水冷により室温〜10℃程度まで冷却を行なうことが好ましい。
次に、冷却されたシート状廃棄物を裁断する。裁断には通常フラフを作製するのに用いられる破砕機を利用することができる。このフラフの大きさは脱水を容易にし、溶融を促進するため50mm四方以下とすることが好ましい。なお、本裁断工程においても、シート状廃棄物に付着した土壌等の汚染物の除去を行い洗浄性を高めるために、加水を行いながら裁断を行うのが好ましい。
(実施の形態4)
本発明は実施の形態1において、回収工程で塩化ビニル系樹脂含有溶液に塩化ビニル系樹脂の非溶媒を接触させて溶液中で塩化ビニル系樹脂を析出させ、析出した塩化ビニル系樹脂を分離して回収する方法を用いることも好ましい形態である。実施の形態1では熱水等による回収工程を用いる場合については説明したが、このような回収工程によっても塩化ビニル系樹脂を高純度で回収することができる。
図5は本実施の形態のフローを示す図であり、回収工程で熱水等の代わりに比較的温度の低い、例えば常温の非溶媒を用いて塩化ビニル系樹脂を沈殿させる以外は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同じ部分については説明を省略し、回収工程について以下に述べる。
本実施の形態の回収工程では塩化ビニル系樹脂を溶解しない非溶媒として、水や、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを用いることができ、これらの中でも取り扱いが容易であり、かつ、コストの面から水が好ましい。なお、この実施の形態において塩化ビニル系樹脂を溶解するために用いられる溶媒としては、他の実施の形態と同様の溶媒を利用できる。
このような非溶媒を不溶物を分離した塩化ビニル系樹脂含有溶液中に供給することにより溶媒に対する塩化ビニル系樹脂の溶解度が低下し、塊状の塩化ビニル系樹脂を沈殿物として析出させることができる。極力小さな塊状の塩化ビニル系樹脂を得たい場合は非溶媒の添加を撹拌下で行うことが好ましい。また、非溶媒を供給する際の溶液の温度としては、特に限定されず、常温で添加しても良い。
本実施の形態では、実施の形態1と同様に沈澱物を分離し塊状の塩化ビニル系樹脂を含む溶液から残存溶剤を除去することにより塩化ビニル系樹脂を回収することができる。
本実施の形態に用いられる回収処理設備としては、実施の形態1と同様の設備を使用することができるが、析出装置では溶媒を揮発しないため得られる塩化ビニル系樹脂を固液分離後、回収した塩化ビニル系樹脂を加熱することにより、塩化ビニル系樹脂中に残存している溶媒を蒸発除去させる装置を別途設ける必要がある。その際に、混練を行い、ペレット化を行っても良い。
(その他の実施の形態)
上記で説明された各実施の形態はいずれも一例であり、上記実施の形態で説明されていない各形態を組み合わせた形態とすることもできる。また、本発明は以下の工程をさらに採用することもできる。
(1)磁気処理工程
本発明では溶解工程前に磁気処理工程を設けることも好ましい形態である。例えば、洗浄工程前に磁石などにより磁気処理工程を行い、シート状廃棄物から金属類を除去することができる。
(2)振動スクリーン工程
本発明ではさらに溶解工程前に振動スクリーン工程を設けることも好ましい形態である。例えば、洗浄工程前に振動スクリーンでシート状廃棄物を振動させて付着物を除去することもできる。
以下本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、下記実施例は単なる一例であり本発明を限定する性質のものでなく、前・後記の趣旨に基づき設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
約100mm四方の大きさに裁断された塩化ビニル樹脂を含有する農業用ビニールシート(比重:0.05g/cm未満)の廃棄物を原料とし、比重の異なる塩化ビニル樹脂含有造粒物を作製した。
造粒にあたって、まず各シート状廃棄物をヘンシェルミキサーに供給し、130〜140℃に加熱溶融して5〜10分撹拌した後造粒し、これをクーラーミキサーに供給して2分で50〜60℃まで冷却しながらミキサー条件を変更することによって粒径及びみかけ比重の異なる塩化ビニル樹脂含有造粒物を作製した。
上記のようにして得られた塩化ビニル樹脂含有造粒物を溶媒中に投入し、溶液濃度が20重量%となるスラリー状の溶液を作製するのに要した時間を比較した。溶媒にはメチルエチルケトンを用い、溶解は装置を70℃で加熱撹拌して行った。この結果を表1に示す。
Figure 2006274107
表1に示すように、本発明の溶解工程前に造粒工程を設けることにより溶媒への溶解時間の短縮が図れることがわかる。
参考として、造粒工程を行うことなくシート状廃棄物のまま溶解処理した場合、溶液濃度20重量%では70℃で、1.5時間撹拌を行ってもシート状廃棄物の固形物が溶液中に確認された。また、10重量%の溶液濃度とした場合でも溶解処理に長時間を要した。
実施の形態3の処理工程を利用し、実施例1と同様に約100mm四方の大きさに裁断された農業用ビニールシートの廃棄物(土壌物の付着量:廃棄物1t当たり約0.055t)から塩化ビニル樹脂(重合度:1,300)の回収処理を行い、洗浄工程なども合せて行った場合の溶液処理による塩化ビニル樹脂の回収を確認した。各工程の処理条件は以下の通りである。
(洗浄工程)
回転ドラム式の洗浄機を用い、洗浄水の温度を50℃、水の供給量を0.3t/廃棄物1t、滞留時間30秒で洗浄を行なった。
(冷却、裁断工程及び脱水工程)
洗浄工程で加温された各シート状廃棄物を室温まで冷却し、破砕機を用いて約30mm四方のフラフを作製し、常温の水を0.3t/廃棄物1tの量で供給しながら脱水洗浄を行い、さらに遠心脱水を行って水を除去した。
(造粒工程)
次に、得られたフラフをヘンシェルミキサーを用いて130〜140℃に加熱溶融した後造粒し、クーラーミキサーを用いて2分で50〜60℃まで冷却しながら塩化ビニル系樹脂含有造粒物(粒径3.0mm、みかけ比重:0.3〜0.5g/cm)を作製した。
(溶解工程)
上記で作製した塩化ビニル樹脂含有造粒物を溶解装置に投入し、溶液濃度が20重量%となるスラリー状の溶液を作製した。溶媒にはメチルエチルケトン(沸点:79.6℃)を用い、溶解は装置を70℃、0.5時間加熱撹拌して行った。
(分離工程)
上記溶液をポンプで送りながら、100μmのナイロン製メッシュフィルタを使用して不溶物を除去した。
(回収工程)
上記分離工程から得られた溶液をポンプで連続的に析出装置に送り、析出装置内に投入した。溶液を50〜60℃に加温しながらスチーム(100℃)を溶液中に供給し、メチルエチルケトンを蒸発させながら塩化ビニル樹脂を沈殿させた。得られた粒子状の沈殿物のスラリーをさらに残存溶剤を除去するため遠心分離を行ない、乾燥させて塩化ビニル樹脂を回収した。回収した塩化ビニル樹脂は不純物量が少ないことが確認された。
以上説明したように、本発明の造粒工程により溶解処理時の溶液濃度を高くできるとともに、短時間で行うことができる。従って、本発明をシート状廃棄物からの塩化ビニル系樹脂の回収に利用すれば処理効率の向上が図ることができる。また、造粒工程とともに洗浄工程、脱水工程及び冷却、裁断工程を組み合わせることにより、付着物の多いシート状廃棄物であっても高純度の塩化ビニル系樹脂を効率的に回収することができる。
本発明の実施の形態1の各工程を示すフロー図である。 本発明の溶解工程、分離工程及び回収工程の一構成例を示す概略図である。 本発明の実施の形態2の各工程を示すフロー図である。 本発明の実施の形態3の各工程を示すフロー図である。 本発明の実施の形態4の各工程を示すフロー図である。
符号の説明
2 溶解装置
3 分離装置
4 析出装置
21 41 撹拌機
22 42 溶液

Claims (5)

  1. 塩化ビニル系樹脂を含有するシート状廃棄物から塩化ビニル系樹脂を回収する方法であって、
    前記シート状廃棄物を加熱溶融した後、造粒して塩化ビニル系樹脂含有造粒物とする造粒工程と、
    前記塩化ビニル系樹脂含有造粒物を前記塩化ビニル系樹脂が溶解可能な溶媒に溶解し、塩化ビニル系樹脂含有溶液を得る溶解工程と、
    前記塩化ビニル系樹脂含有溶液から不溶物を分離する分離工程と、
    前記不溶物を除去した溶液から前記塩化ビニル系樹脂を回収する回収工程と、
    を備える塩化ビニル系樹脂の回収方法。
  2. 前記塩化ビニル系樹脂含有造粒物のみかけ比重が、0.3〜0.5g/cmである請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂の回収方法。
  3. 前記回収工程が、前記不溶物を除去した溶液に熱水及び/またはスチームを接触させて塩化ビニル系樹脂を析出する工程を備える請求項1または2に記載の塩化ビニル系樹脂の回収方法。
  4. 前記回収工程が、前記不溶物を除去した溶液に塩化ビニル系樹脂の非溶媒を接触させて塩化ビニル系樹脂を析出する工程を備える請求項1または2に記載の塩化ビニル系樹脂の回収方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂の回収方法を備えることを特徴とする塩化ビニル系樹脂回収処理設備。
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