JP2006272361A - ダイカスト用スリーブ - Google Patents
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Abstract
【課題】 溶融金属注入口の直下近傍のスリーブ内周面の耐溶損性を向上させたダイカスト用スリーブを提供する。
【解決手段】 中空円筒状の鋼製材料からなる外筒の内面の溶融金属と接触する部分に内層を形成し、該内層を溶融金属注湯口より射出口側に配した第一内層部材と、該第一内層部材の後方に配した第二内層部材とに分けて構成したダイカスト用スリーブであって、前記第一内層部材は、外筒の内面に遠心力鋳造法により溶着された被覆層であり、Fe基合金からなり、前記第二内層部材は、外筒の内面に嵌着された筒体であり、Fe基合金からなる。
【選択図】 図1
【解決手段】 中空円筒状の鋼製材料からなる外筒の内面の溶融金属と接触する部分に内層を形成し、該内層を溶融金属注湯口より射出口側に配した第一内層部材と、該第一内層部材の後方に配した第二内層部材とに分けて構成したダイカスト用スリーブであって、前記第一内層部材は、外筒の内面に遠心力鋳造法により溶着された被覆層であり、Fe基合金からなり、前記第二内層部材は、外筒の内面に嵌着された筒体であり、Fe基合金からなる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ダイカストマシンの溶融金属射出装置を構成するダイカスト用スリーブに関する。
ダイカスト法は、アルミニウム、亜鉛等からなる金属製品を高速、高精度に鋳造することができる方法であり、自動車製品、家電製品等の各種構成部材の製造に広く利用されている。ダイカスト用スリーブは、ダイカストマシンの溶融金属射出装置を構成するものであり、溶融金属に対する耐溶損性やプランジャーチップの摺動に対する耐摩耗性などが要求される。
従来のダイカスト用スリーブとして、SKD61に代表される熱間金型用合金鋼からなるものがあるが、耐溶損性、耐摩耗性が十分でないため比較的短期間のうちに損傷が進み、メンテナンスに多大な工数とコストを要する問題があった。
そこで、溶融金属と接触する部分を耐溶損性、耐摩耗性に優れる材料で形成したダイカスト用スリーブ、なかでも溶融金属注入口の直下近傍のスリーブ内周面が溶損されやすいため、この部位の耐溶損性を向上させたダイカスト用スリーブが数多く提案されている
特許文献1には、中空円筒状の鋼製材料からなる外筒の溶融金属と接触する少なくとも一部分の内面に、耐摩耗性に優れる被覆層を形成したダイカスト用スリーブであって、該被覆層が重量比で、C:1.0〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni≦4.5%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:0.1〜9.0%、W≦10.0%、V:1.0〜10.0%を含有するFe基合金からなるダイカスト用スリーブが記載されている。
特許文献2には、鋼製の外筒と、この外筒に嵌入されチタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料からなる内筒とを有し、注入溶湯が当たる前記内筒の湯当たり部におけるセラミックス含有率は残部のセラミックス含有率に比して高いことを特徴とするダイカストマシン用スリーブが記載されている。この構成により、湯当たり部における耐溶損性を著しく向上することができる。
特許文献3には、ダイカストマシン用のプランジャースリーブにおいて、その内周側の溶湯落下部に該当する部分に、鋼製の母材の内周面にセラミックスからなる内張り層が形成された内筒が、プランジャースリーブの本体に対して交換可能に嵌め合わされていることを特徴とするプランジャースリーブが記載されている。この構成により、溶湯落下部において溶損が発生しにくく、かつ耐熱衝撃性に優れているので長い寿命を備えている。また、内筒部が損傷した時には、当該内筒部のみを交換することによって補修することができるので、プランジャースリーブの製造コストを削減することができる。
特許文献4には、筒体の中心にプランジャー穴を貫通して開口すると共に、一方の端面近傍の側面に前記プランジャー穴に通じる給湯口を開口したプランジャースリーブにおいて、前記筒体を本体部分と給湯口を開口した給湯筒に二分して形成し、両者を連結具によって着脱自在に連結すると共に、前記本体部分の一端面に、固着された給湯筒は、常温に於いては前記本体部分の軸芯に対して直線状ではなく、給湯口が上向きの状態で、給湯筒の軸芯が前記本体部分の軸芯に対して僅かに下向きに湾曲するように固着してなるダイカスト用プランジャースリーブが記載されている。
また、特許文献4には、外筒部分は強度を重視し変形と内圧に耐えるため、SCM440、SNCM439、SKT−4、SKD−61等の素材を使用して、高強度と靱性を持たせる熱処理を施したものを使用する。内筒部分は、熱間強度と耐摩耗性を重視し、プランジャーとの摩擦による摩耗と、高温の溶湯が繰り返し注入されておこる熱応力疲労、瞬間的な射出圧による変形に耐えるため、SKD−61又はその改良鋼種からなる材料を選択し、焼入れ焼戻後に窒化処理等の表面処理を施している。また、給湯筒は、給湯口直下の溶損に対向するために、SKH−51、SUH−616又は焼結材等を使用し、窒化処理、溶射処理、セラミックコーテング等を施して使用することが記載されている。
特許文献5には、注湯口の下部位置に注湯に伴う溶損防止用の冷却水室を形成するようにしたダイカスト機用射出スリーブにおいて、スリーブ本体の注湯口の下部位置外側に凹部を形成し、該凹部を略樋形状に形成した蓋板で被覆密閉すると共に蓋板をスリーブ本体に溶接して溶損防止用の冷却水室を形成せしめ、蓋板の外側面にスリーブ本体の軸方向と直交する方向に凹溝を形成せしめたダイカスト機用射出スリーブが記載されている。
特許文献6には、プランジャースリーブの冷却構造を溶接構造とするダイカスト装置において、前記部分溶接構造は、冷却無しプランジャースリーブのアルミ溶湯投入口底部に冷却循環溝を有し、その溝部を円弧型の鉄板にて溶接でカバーする方式、又円弧型の鉄板には冷却水の出入口を有する構造とすることを特徴とするダイカスト装置用スリーブが記載されている。この構成により、溶接構造であるため、熱影響による膨張に起因する水洩れトラブルも皆無となり、しかもそれに伴う寿命も大幅に延ばすことができる。
本発明の目的は、前記のようなダイカスト用スリーブ同様、溶融金属注入口の直下近傍のスリーブ内周面の耐溶損性を向上させたダイカスト用スリーブを提供することである。
すなわち、本発明のダイカスト用スリーブは、中空円筒状の鋼製材料からなる外筒の内面の溶融金属と接触する部分に内層を形成し、該内層を溶融金属注湯口より射出口側に配した第一内層部材と、該第一内層部材の後方に配した第二内層部材とに分けて構成したダイカスト用スリーブであって、前記第一内層部材は、外筒の内面に遠心力鋳造法により溶着された被覆層であり、質量%で、C:1.0〜4.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni≦4.5%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:0.1〜9.0%、W≦10.0%、V:1.0〜10.0%を含有するFe基合金からなり、前記第二内層部材は、外筒の内面に嵌着された筒体であり、質量%で、C:1.0〜4.0%、Si:0.2〜4.0%、Mn:0.1〜3.0%、Ni:4.0〜10.0%、Cr:10.0〜25.0%、Mo:0.1〜9.0%、V:4.0〜15.0%を含有するFe基合金からなることを特徴とする。
また前記本発明において、第一内層部材が、さらに質量%で、Co≦10.0%、Nb≦10.0%のいずれか一種以上を含有することを特徴とする。また、第二内層部材が、さらに質量%で、Co≦10.0%、Nb≦10.0%、W<2.0%、Al≦3.0%のいずれか一種以上を含有することを特徴とする。
また、前記第一内層部材の表面に、窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする。さらに、前記第一内層部材の窒化物からなる皮膜層の表面に、Crの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする。また同様に、前記第二内層部材の表面に、窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする。さらに、前記第二内層部材の窒化物からなる皮膜層の表面に、Crの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする。
本発明のダイカスト用スリーブは、外筒の内面に内層を形成したものであり、溶融金属と接触する内層をスリーブ軸方向に分けて、溶融金属注湯口より射出口側に配した第一内層部材と、この第一内層部材の後方に配した第二内層部材で構成した。
第一内層部材は外筒の内面に遠心力鋳造法により溶着された被覆層であり、耐溶損性、耐摩耗性および靭性に優れ、遠心力鋳造法で形成するため製造が簡易かつコストを安価に抑えることができる。第二内層部材は溶融金属が供給される注湯口の直下の領域に配置されるため第一内層部材に比べ耐溶損性に優れる合金を筒体状に形成して、外筒の内面に嵌着させた。また、第二内層部材は、その熱伝導率が約16W/m・Kと小さいため、第二内層部材からダイカスト用スリーブの外筒への熱の移動がほとんど無く、保温性が良好なものとなる。第二内層部材はそれ単体からなる筒体でもよいし、第二内層部材用の外筒の内面に第二内層部材の合金を溶着させた複合構造の筒体でもよい。
本発明の第一内層部材の各元素の含有範囲(質量%)の限定理由について説明する。
C:1.0〜4.0%
Cは、耐摩耗性向上のための炭化物の形成と、基地への固溶による焼入れ・焼戻し時の基地硬さの向上に必要である。Cは、耐摩耗性を付与すべきMC、M2C、M6C、M7C3、M4C3、M23C6系炭化物を生成する。Cが1.0%未満であると耐摩耗性を向上させるために有効な炭化物の晶出が少なく、さらに、基地に固溶するCが不足し、焼入れによっても十分な基地硬さが得られなくなると同時に高合金化が難しくなる。一方、4.0%を超えると炭化物が粗大化しその晶出量も過大となり被覆層として必要な靭性が劣化するため上限を4.0%とした。
Cは、耐摩耗性向上のための炭化物の形成と、基地への固溶による焼入れ・焼戻し時の基地硬さの向上に必要である。Cは、耐摩耗性を付与すべきMC、M2C、M6C、M7C3、M4C3、M23C6系炭化物を生成する。Cが1.0%未満であると耐摩耗性を向上させるために有効な炭化物の晶出が少なく、さらに、基地に固溶するCが不足し、焼入れによっても十分な基地硬さが得られなくなると同時に高合金化が難しくなる。一方、4.0%を超えると炭化物が粗大化しその晶出量も過大となり被覆層として必要な靭性が劣化するため上限を4.0%とした。
Si:0.1〜2.0%
Siの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Siは、脱酸剤として作用し、またM6C炭化物中に固溶してW、Moなどの元素を置換して含有されるため、W、Moなどの高価な元素の節減を図るために有効である。Siが0.1%未満では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、2.0%を超えると脆化が生じやすい。
Siの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Siは、脱酸剤として作用し、またM6C炭化物中に固溶してW、Moなどの元素を置換して含有されるため、W、Moなどの高価な元素の節減を図るために有効である。Siが0.1%未満では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、2.0%を超えると脆化が生じやすい。
Mn:0.1〜2.0%
Mnの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Mnは、Siと同様に脱酸作用がある。また、不純物であるSをMnSとして固定する作用がある。Mnが0.1%未満では脱酸性に乏しい。また、2.0%を超えると残留オーステナイトが生じやすくなり、安定して十分な硬さを維持できない。
Mnの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Mnは、Siと同様に脱酸作用がある。また、不純物であるSをMnSとして固定する作用がある。Mnが0.1%未満では脱酸性に乏しい。また、2.0%を超えると残留オーステナイトが生じやすくなり、安定して十分な硬さを維持できない。
Ni≦4.5%
Niは焼入性を向上させ高硬度化させる効果を有する。Niの下限は0%である。4.5%を超えると残留オーステナイトが過剰となりかえって高硬度が得られなくなるためその上限を4.5%とした。より好ましいNi含有量は2.0%以下である。
Niは焼入性を向上させ高硬度化させる効果を有する。Niの下限は0%である。4.5%を超えると残留オーステナイトが過剰となりかえって高硬度が得られなくなるためその上限を4.5%とした。より好ましいNi含有量は2.0%以下である。
Cr:3.0〜10.0%
CrはCと結合し炭化物を晶出生成し、また基地に固溶し基地硬さをあげることで、耐摩耗性を向上させる。Crが3.0%未満ではその効果が小さい。また、10.0%を超えると、常温での残留オーステナイトが多くなるので、焼戻し回数が多くなり不経済となる。さらに、Crは比較的硬さの低いM7C3やM23C6系炭化物を形成し、多量の添加はこれらの炭化物が過剰となり耐摩耗性が劣化する。しかしながら、添加量が少ないとその効果が十分確保できず、多すぎると炭化物が粗大化し靱性が低下する。そこで最適な範囲は3.0%〜10.0%とした。
CrはCと結合し炭化物を晶出生成し、また基地に固溶し基地硬さをあげることで、耐摩耗性を向上させる。Crが3.0%未満ではその効果が小さい。また、10.0%を超えると、常温での残留オーステナイトが多くなるので、焼戻し回数が多くなり不経済となる。さらに、Crは比較的硬さの低いM7C3やM23C6系炭化物を形成し、多量の添加はこれらの炭化物が過剰となり耐摩耗性が劣化する。しかしながら、添加量が少ないとその効果が十分確保できず、多すぎると炭化物が粗大化し靱性が低下する。そこで最適な範囲は3.0%〜10.0%とした。
Mo:0.1〜9.0%
MoはCrと同様に硬質の炭化物が得られ、また高温で焼戻しを行う場合、その二次硬化に強く寄与する元素である。MoはCと結合して硬質のM2C、M6C系炭化物を生成する。Moが0.1%未満ではその効果が小さい。また、9.0%を超えると、CとVとMoのバランスにおいてM2C、M6C系炭化物が多く晶出しすぎ、靭性が低下するため、その適切な範囲を0.1%〜9.0%とした。より好ましいMo含有量は1.0〜8.0%である。
MoはCrと同様に硬質の炭化物が得られ、また高温で焼戻しを行う場合、その二次硬化に強く寄与する元素である。MoはCと結合して硬質のM2C、M6C系炭化物を生成する。Moが0.1%未満ではその効果が小さい。また、9.0%を超えると、CとVとMoのバランスにおいてM2C、M6C系炭化物が多く晶出しすぎ、靭性が低下するため、その適切な範囲を0.1%〜9.0%とした。より好ましいMo含有量は1.0〜8.0%である。
W≦10.0%
Wは、Moと同様に焼入れ性の向上と基地の高温硬さを得るために必要である。また、WはCrやMoと同様に硬い炭化物を生成する為これらの元素に置換して添加することも有効である。さらに、基地の焼入れ性を上げ、Cと結合して硬質のM2C、M6C系炭化物を生成する。Wの下限は0%である。また、10.0%を超えると、M6C系炭化物が粗大化し脆性が劣化するため、その適切な範囲を10.0%以下とした。
Wは、Moと同様に焼入れ性の向上と基地の高温硬さを得るために必要である。また、WはCrやMoと同様に硬い炭化物を生成する為これらの元素に置換して添加することも有効である。さらに、基地の焼入れ性を上げ、Cと結合して硬質のM2C、M6C系炭化物を生成する。Wの下限は0%である。また、10.0%を超えると、M6C系炭化物が粗大化し脆性が劣化するため、その適切な範囲を10.0%以下とした。
V:1.0〜10.0%
Vは、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質な炭化物であるMC、M4C3を形成する。Vが1.0%未満では炭化物の生成が少なく耐摩耗性が劣化する。Vが10.0%を超えると、C含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M4C3系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、M4C3が初晶で晶出すれば凝固中に凝集し、ダイカスト用スリーブとして使用した場合、硬質炭化物であるMC、M4C3の凝集偏析が脆性の劣化を引き起こすので好ましくない。より好ましいVの含有量は、2.0〜8.0%である。
Vは、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質な炭化物であるMC、M4C3を形成する。Vが1.0%未満では炭化物の生成が少なく耐摩耗性が劣化する。Vが10.0%を超えると、C含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M4C3系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、M4C3が初晶で晶出すれば凝固中に凝集し、ダイカスト用スリーブとして使用した場合、硬質炭化物であるMC、M4C3の凝集偏析が脆性の劣化を引き起こすので好ましくない。より好ましいVの含有量は、2.0〜8.0%である。
Co≦10.0%
Coは炭化物の生成とは無関係に基地に固溶し、強靭性を増すとともに高温硬さと耐摩耗性を向上する効果がある。Coの下限は0%である。Coが10.0%を超えるとその効果が飽和し、かつ高価になるのでその上限を10.0%以下とした。
Coは炭化物の生成とは無関係に基地に固溶し、強靭性を増すとともに高温硬さと耐摩耗性を向上する効果がある。Coの下限は0%である。Coが10.0%を超えるとその効果が飽和し、かつ高価になるのでその上限を10.0%以下とした。
Nb≦10.0%
NbはVと同様に、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質な炭化物であるMC、M4C3を形成する。Nbの下限は0%である。Nbが10.0%を超えると、靭性の低下とともにC含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M4C3系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、M4C3が初晶で晶出すれば凝固中に凝集し、ダイカスト用スリーブとして使用した場合、硬質炭化物であるMC、M4C3の凝集偏析が脆性の劣化を引き起こすので好ましくない。また、NbはVと置換可能である。よって、より好ましいNbおよびVの含有量は、(Nb+V)≦2.0〜8.0%である。
NbはVと同様に、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質な炭化物であるMC、M4C3を形成する。Nbの下限は0%である。Nbが10.0%を超えると、靭性の低下とともにC含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M4C3系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、M4C3が初晶で晶出すれば凝固中に凝集し、ダイカスト用スリーブとして使用した場合、硬質炭化物であるMC、M4C3の凝集偏析が脆性の劣化を引き起こすので好ましくない。また、NbはVと置換可能である。よって、より好ましいNbおよびVの含有量は、(Nb+V)≦2.0〜8.0%である。
本発明の第二内層部材の各元素の含有範囲(質量%)の限定理由について説明する。C、Si、Mn、Mo、V、W、CoおよびNbは、基本的に第一内層部材と同様の作用を有する。
Ni:4.0〜10.0%
Ni含有量は4.0〜10.0%が好ましい。これは含有量が4.0%未満では金属組織のマルテンサイト化が起こりやすくなり、一方10%を越えると偏析を起こし、しかも基地が軟らかくなるため、いずれの場合も好ましくない。また、4.0%以上配合することにより、耐溶損性も改善される。
Ni含有量は4.0〜10.0%が好ましい。これは含有量が4.0%未満では金属組織のマルテンサイト化が起こりやすくなり、一方10%を越えると偏析を起こし、しかも基地が軟らかくなるため、いずれの場合も好ましくない。また、4.0%以上配合することにより、耐溶損性も改善される。
Cr:10.0〜25.0%
Cr含有量は10.0〜25.0%が好ましい。これは含有量が10.0%未満では、安定したオーステナイト(γ)を晶出させることができず、耐溶損性を低下させてしまい、一方、25.0%を超えると偏析を起こして強度を劣化させる原因となる。
Cr含有量は10.0〜25.0%が好ましい。これは含有量が10.0%未満では、安定したオーステナイト(γ)を晶出させることができず、耐溶損性を低下させてしまい、一方、25.0%を超えると偏析を起こして強度を劣化させる原因となる。
Al≦3.0%
Alは耐酸化性を向上させる効果がある。また、溶湯中のNおよびOと結合して酸窒化物を形成し、これらが溶湯中に懸濁されて核となり、硬質炭化物を粒状とし微細均一に晶出させる。硬質炭化物の形状を微細な粒状の粒にするとともに、金属組織中に均一に分散させる。Alが3.0%を超えると、その効果が飽和する。
Alは耐酸化性を向上させる効果がある。また、溶湯中のNおよびOと結合して酸窒化物を形成し、これらが溶湯中に懸濁されて核となり、硬質炭化物を粒状とし微細均一に晶出させる。硬質炭化物の形状を微細な粒状の粒にするとともに、金属組織中に均一に分散させる。Alが3.0%を超えると、その効果が飽和する。
また、本発明のダイカスト用スリーブは、第一内層部材および第二内層部材の表面の溶融金属と接触する内面に窒化処理を施すことにより、主に窒化物からなる皮膜層を形成することで耐溶損性を向上できる。さらに、前記窒化物からなる皮膜層の表面に対して、金属Cr粉末を含む溶融塩に浸漬処理を行い、窒化物からなる皮膜層の表面にCrの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層を形成することで、なお一層、耐溶損性を向上させることができる。
本発明のダイカスト用スリーブの実施例について以下に説明する。図1に、本発明のダイカスト用スリーブの概略断面図を示す。図1において、ダイカスト用スリーブは、鋼製の中空円筒状の外筒1の内面に、溶融金属注湯口6より射出口側に配置した第一内層部材2と、この第一内層部材2の後方に配置した第二内層部材3で構成される。
まず、外筒1の片端側に鉄板を溶接して塞ぎ、この片端側を下にして外筒1を長手鉛直方向に立て、加熱炉内へセットした後、1200℃に加熱した。第一内層部材2として、質量%で、C:1.9%、Si:0.8%、Mn:0.4%、Cr:4.7%、Mo:5.7%、V:6.5%、残部Feの成分を持つインゴットを1600℃で溶解し、前述の1200℃に加熱した外筒1の開口端側から溶湯を鋳込んだ。そして素早く開口端側の穴に栓を打ち込み、遠心力鋳造機に移動させた。遠心力鋳造機には、長手方向が水平になるようにセットした。遠心力鋳造機を作動させ、1000rpmで回転させ、外筒1の外表面温度が、450℃に達したら回転を停止させ、徐冷炉へ入れた。
回転を停止した後、所定の温度まで空冷し焼入れを行った。その後、歪取り焼鈍および焼きなましを400〜600℃で3回行った。このようにして外筒1の内面に金属接合した被覆層(第一内層部材2)を得た。
次いで、この外筒1の内面に被覆層を溶着させたスリーブに対して、溶融金属注湯口より射出口側に相当する領域を仕上加工して第一内層部材2とし、第一内層部材2より後方の溶融金属注入口の直下近傍の領域から第一内層部材2の被覆層を加工除去した。
また、第一内層部材2とは別に、第二内層部材3として、質量%で、C:3.1%、Si:2.5%、Mn:0.18%、Ni:5.9%、Cr:15.6%、Mo:0.15%、V:10.4%、W:0.03%、Co:0.1%、残部Feからなる中空円筒体を作製した。これは第二内層部材2が単体からなる筒体の例である。
そして、外筒1の内面の第一内層部材2より後方の溶融金属注入口6の直下近傍の領域に第二内層部材3の筒体を嵌着させた。このようにして本発明のダイカスト用スリーブを作製した。
この本発明のダイカスト用スリーブを、実機ダイカストマシンに装備し、アルミ溶湯の射出成形に供したところ、耐溶損性、耐摩耗性に優れ、溶融金属注入口の直下近傍のスリーブ内周面の耐溶損性を向上させることができた。
図2に、本発明の他実施形態のダイカスト用スリーブの概略断面図を示す。図2において、第二内層部材3は、第二内層部材3用の外筒4の内面に第二内層部材の合金を溶着させた複合構造の筒体である。その他の構成は図1同様である。
図3に、本発明の他実施形態のダイカスト用スリーブの概略断面図を示す。図3において、第二内層部材3は、第二内層部材3用の外筒4の内面に第二内層部材の合金を溶着させた複合構造の筒体である。さらに、保温性を高めるため、溶融金属注入口6の直下近傍の領域に半円環状の閉じた空間5を穿設した。その他の構成は図1同様である。
本発明のダイカスト用スリーブによれば、耐溶損性、耐摩耗性に優れ、溶融金属注入口の直下近傍のスリーブ内周面の耐溶損性を向上させることができ、安定して長期間操業できるため、メンテナンスの工数、コストおよび時間を低減することができ、生産効率を向上させる。
1 外筒、 2 第一内層部材、 3 第二内層部材、
4 第二内層部材用の外筒、 5 空間
4 第二内層部材用の外筒、 5 空間
Claims (7)
- 中空円筒状の鋼製材料からなる外筒の内面の溶融金属と接触する部分に内層を形成し、該内層を溶融金属注湯口より射出口側に配した第一内層部材と、該第一内層部材の後方に配した第二内層部材とに分けて構成したダイカスト用スリーブであって、前記第一内層部材は、外筒の内面に遠心力鋳造法により溶着された被覆層であり、質量%で、C:1.0〜4.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni≦4.5%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:0.1〜9.0%、W≦10.0%、V:1.0〜10.0%を含有するFe基合金からなり、前記第二内層部材は、外筒の内面に嵌着された筒体であり、質量%で、C:1.0〜4.0%、Si:0.2〜4.0%、Mn:0.1〜3.0%、Ni:4.0〜10.0%、Cr:10.0〜25.0%、Mo:0.1〜9.0%、V:4.0〜15.0%を含有するFe基合金からなることを特徴とするダイカスト用スリーブ。
- 前記第一内層部材が、さらに質量%で、Co≦10.0%、Nb≦10.0%のいずれか一種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用スリーブ。
- 前記第二内層部材が、さらに質量%で、Co≦10.0%、Nb≦10.0%、W<2.0%、Al≦3.0%のいずれか一種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用スリーブ。
- 前記第一内層部材の表面に、窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のダイカスト用スリーブ。
- 前記第一内層部材の窒化物からなる皮膜層の表面に、Crの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする請求項4に記載のダイカスト用スリーブ。
- 前記第二内層部材の表面に、窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする請求項1または3に記載のダイカスト用スリーブ。
- 前記第二内層部材の窒化物からなる皮膜層の表面に、Crの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層を形成したことを特徴とする請求項6に記載のダイカスト用スリーブ。
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