JP2006272234A - 汚泥の消化処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 消化槽内での微生物反応を安定に維持しつつ消化汚泥を低コストで可溶化する。
【解決手段】 有機性の被処理汚泥10を消化槽12で嫌気的に消化処理する汚泥の消化処理方法において、消化槽12から消化汚泥の一部を引抜き、この引抜いた消化汚泥18を第1工程の酸化処理槽20で予備的に酸化する。次に第1工程を経た消化汚泥18を第2工程の可溶化槽24に導き、この可溶化槽24に二酸化塩素26を添加して消化汚泥18を可溶化する。可溶化後の消化汚泥18Aは消化槽12に返送する。
【選択図】 図1

Description

本発明は汚泥の消化処理方法に係り、特に有機性の汚泥を消化槽で嫌気的に消化処理する汚泥の消化処理方法に関する。
下水や産業廃水などの有機性汚水を生物学的に処理して浄化する施設からは大量の微生物を主要成分とした有機性の汚泥が発生する。このような有機性汚泥は脱水後にそのまま最終処分場に埋立てるか、又は焼却処理することが一般に行われている。しかしながら、最終処分場は立地難の問題を抱えており、焼却処理の場合には処理設備の建設と運転に多大な費用がかかる。このため、有機性汚泥の減量化が強く求められている。
有機性汚泥の減量化の手段として嫌気的消化処理法が知られている。この方法では、有機性汚泥を消化槽内で嫌気的な環境下で36℃前後又は55℃前後に加温し、30日程度の滞留日数をかけて消化処理する。消化処理の結果、有機性汚泥の一部がメタンガスを主成分とする消化ガスとして回収され、有機性汚泥が減量する。しかしながら、この種の嫌気的消化処理法ではほとんどの場合、有機性汚泥の減量率が50〜60%に留まっており、回収した消化ガスもほぼすべてが消化槽の加温に消費され、エネルギ資源としての回収レベルには到達していない。
したがって、有機性汚泥の減量率を向上させて最終的な汚泥処分量を減じるとともに、消化ガスの発生量を多くしてエネルギ資源として回収できる嫌気的消化処理法が望まれる。その一方法として汚泥の可溶化処理が知られている。この可溶化処理は消化槽に供給する汚泥に加熱、超音波などの物理的処理又は薬剤やオゾンを添加して化学的処理を施すことによって可溶化し、上記のニーズを達成しようとする方法である(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法は必ずしも有効とはいえない。すなわち、可溶化処理は汚泥の主要成分である微生物の細胞壁を破壊することによって微生物の細胞質を溶出させる処理である。その結果、消化槽に流入する汚泥中の微生物群の相当量が死滅することになり、消化槽内の微生物濃度が減少し、微生物反応である消化槽での消化作用を不安定にするという問題点がある。
このような問題点に対応するために、消化槽に滞留、保持させた消化汚泥の一部を抜き出して、可溶化した後に消化槽に返送する方法が試みられている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法においても消化汚泥を可溶化するためにオゾンなどの酸化剤を必要とするので、オゾン発生器などの設備費が高額になるとともに、オゾン発生のための電力費が大きくなるという問題点がある。その他の可溶化のための物理的、化学的処理も大同小異で同様の問題を抱えている。
特許文献3には、有機性汚泥の可溶化剤として二酸化塩素を用いる方法が開示されている。この方法は有機性汚泥を比較的低コストで確実に可溶化する目的に対して有効と考えられる。
特開2002−1398号公報 特開平09−206785号公報 特開2003−260491号公報
しかしながら、本発明者が特許文献3に記載された方法を消化汚泥の可溶化に対して適用したところ、二酸化塩素の必要添加量が予想外に多大となることが判明した。すなわち、消化槽で長日数、嫌気条件下に置かれた消化汚泥には酸化を受け易い有機分や金属が相当量含まれている。このため、消化槽から引抜いた消化汚泥を可溶化するために酸化剤である二酸化塩素を直接に添加した場合には、添加した二酸化塩素の相当量が酸化を受け易い有機分や金属の酸化のために消費される。その結果、本来の目的である可溶化に利用されるべき二酸化塩素の量が減少する。このため、十分な可溶化処理を施すためには高価な二酸化塩素の必要添加量が多大となり、運転コストの増大を招く。
本発明の目的は上記従来技術の問題点を改善し、消化槽内での微生物反応を安定に維持しつつ消化汚泥を低コストで可溶化し、もって汚泥の減量率を向上させることができる汚泥の消化処理方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る汚泥の消化処理方法は、有機性の汚泥を消化槽で嫌気的に消化処理する汚泥の消化処理方法において、前記消化槽から消化汚泥の一部を引抜き、この引抜いた消化汚泥を予備的に酸化する第1工程と、第1工程を経た前記消化汚泥に二酸化塩素を添加して当該消化汚泥を可溶化する第2工程とを施した後に、当該消化汚泥を前記消化槽に返送することを特徴とする。
また、本発明に係る汚泥の消化処理方法は、前記第2工程を経た前記消化汚泥に還元剤を添加した後に、当該消化汚泥を前記消化槽に返送することを特徴とする。
本発明によれば、被処理汚泥は可溶化処理することなく消化槽に流入させるので、消化反応に必要な被処理汚泥中の微生物群の活性を維持したまま、消化槽に送り込むことができる。このため、消化槽内での微生物反応を安定に維持することができる。また、可溶化を目的として消化槽から引抜いた消化汚泥中の酸化を受け易い有機分や金属は第1工程で比較的安価な次亜塩素酸ナトリウムなどによって予備的な酸化処理を受ける。したがって、第2工程では添加された二酸化塩素は無駄に消費される割合が減り、本来の目的である可溶化処理のために利用される割合が多くなる。このことは、高価な二酸化塩素の有効活用を意味しており、消化汚泥を低コストで可溶化することができる。
図1は本発明に係る汚泥の消化処理方法の第1実施形態を示す系統図である。二点鎖線で囲んだエリアAは下水などの有機性廃水の処理施設である。最初沈殿池2で原水1中の固形分が沈殿除去され、曝気槽3では原水1が好気条件下で活性汚泥によって処理を受ける。最終沈殿池4では処理水5中の汚泥が沈殿分離され、処理水5は施設外に排出される。沈殿汚泥6の大部分は曝気槽3に返送され活性汚泥として循環利用される。最初沈殿池2で分離された初沈汚泥8と余剰汚泥9とが混合され、又は単独で本発明に係る消化処理対象の被処理汚泥10として消化槽12に供給される。初沈汚泥8と余剰汚泥9はともに有機性の汚泥であり、余剰汚泥9は微生物を主体とした有機物を重量率で80〜95%含んでいる。
消化槽12では供給された被処理汚泥10を嫌気的な環境下で36℃前後に又は55℃前後に加温し、30日程度の滞留日数をかけて消化処理する。消化処理の結果、汚泥中の有機物の一部がメタンガスを主成分とするガスに変換し消化ガス14として回収され、減量した汚泥は処理済の排出消化汚泥16として消化槽12から排出される。
消化槽12には内部の消化汚泥を引抜く管路が接続しており、この管路から引抜いた消化汚泥18が第1工程である酸化処理槽20に供給される。この酸化処理槽20には次亜塩素酸ナトリウム水溶液22が添加され、消化汚泥18と次亜塩素酸ナトリウムとが混合、攪拌される。その結果、消化汚泥18中の酸化を受け易い有機分や金属が次亜塩素酸ナトリウムの作用によって酸化する。このため、比較的安価な次亜塩素酸ナトリウムにより消化汚泥18の予備的な酸化処理が行われる。
酸化処理槽20を経た消化汚泥18は次に第2工程である可溶化槽24に供給される。この可溶化槽24には二酸化塩素26が添加され、消化汚泥18と二酸化塩素26とが混合、攪拌される。二酸化塩素は強力な酸化剤であり、その酸化力によって消化汚泥中の微生物の細胞壁を破壊し微生物の細胞質を溶出させる。このため、この可溶化槽24においては、前段の酸化処理槽20では不十分であった微生物に対する可溶化処理を促進させることができる。前記したように前段の酸化処理槽20では消化汚泥18中の酸化を受け易い有機分や金属が既に次亜塩素酸ナトリウムによって予備的な酸化処理を受けている。したがって、可溶化槽24に添加された二酸化塩素は上記の酸化を受け易い有機分や金属の酸化に消費される割合が減り、本来の目的である可溶化処理のために利用される割合が多くなる。このことは、高価な二酸化塩素の有効活用を意味しており、消化汚泥18を低コストで可溶化することができる。
可溶化槽24で可溶化処理を受けた後の消化汚泥18Aは消化槽12に返送される。その結果、可溶化処理によって分解し易くなった消化汚泥18Aが消化槽12内に保持された醗酵菌によって容易に消化され、その大部分が消化ガスに変換し、汚泥の減量率が向上する。
二酸化塩素は沸点が11℃であるため常温ではガス体であり、水に対する溶解度が非常に大きい。したがって、可溶化槽24にはガス体で添加してもよいが、取り扱いの便を考慮すると水溶液として添加することが望ましい。図2は二酸化塩素水溶液を用いる場合の二酸化塩素供給装置を例示した系統図である。供給タンク28には所定の液位を維持するように二酸化塩素水溶液が張り込まれている。この供給タンク28に貯留した二酸化塩素水溶液を注入ポンプ30付きの注入管32から可溶化槽24に注入する。可溶化槽24では流入した消化汚泥18と二酸化塩素水溶液が攪拌機34によって均一に混合され、所望の可溶化処理が進行する。通常は消化汚泥18の流量に比例して二酸化塩素水溶液の添加率が一定となるように制御器38によって注入ポンプ30の駆動を制御する。可溶化槽24の消化汚泥18の排出側に監視用の酸化還元電位計36を配置し、この酸化還元電位計36の検出結果に応じて、制御器38では消化汚泥18に対する二酸化塩素水溶液の添加率を補正するようにしてもよい。
二酸化塩素水溶液は反応性が高く分解も早い。したがって、貯留期間中にその酸化力が低下すると危惧される場合には、オンサイトにて二酸化塩素水溶液を製造することが好ましい。二酸化塩素は例えば化1に示した2液法や化2に示した3液法によって製造することができる。
Figure 2006272234
Figure 2006272234
図2の供給タンク28の液位が所定値以下に達した段階で、そのつどオンサイトで製造した二酸化塩素水溶液を供給タンク28にこまめに供給すれば、二酸化塩素水溶液の貯留期間を短縮させることができる。あるいは、オンサイトの二酸化塩素発生装置から直接可溶化槽24へ注入してもよい。したがって、常に酸化力の強い二酸化塩素を可溶化槽24に注入することができる。化2に示した3液法の場合には原料の一部である次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を前記酸化処理槽20で添加する次亜塩素酸ナトリウム用の貯留タンクから共用して引き出せるので便利である。
消化槽12から引抜く消化汚泥18の流量は、消化槽12に供給した被処理汚泥10の0.5〜2倍程度にする。また、二酸化塩素の添加量は第1工程における予備的酸化のレベルによって左右されるが、通常は可溶化槽24に流入する消化汚泥18中の有機成分に対して重量比で0.2〜1%にすることが好ましい。二酸化塩素の添加量が0.2%以下では可溶化処理が不十分となる。また、1%を越えると可溶化槽24から排出され、消化槽12に返送される消化汚泥18A中に二酸化塩素が残存し、消化槽12内に保持された醗酵菌などの微生物群に悪影響を及ぼす。
上記二酸化塩素の添加量は第1工程の予備的な酸化処理をしない場合に比べて約2分の1で済む。すなわち、予備的な酸化処理をせずに、消化槽12から引抜いた消化汚泥18に直接に二酸化塩素を添加し、本実施形態と同レベルの可溶化を達成しようとすると可溶化槽に流入する消化汚泥中の有機成分に対して重量比で1〜2%の二酸化塩素の添加が必要である。本実施形態の上記二酸化塩素の添加量0.2〜1%はその半分程度である。したがって、本実施形態の方法によれば、第1工程の予備的な酸化処理に要する諸費用を配慮しても、消化汚泥を可溶化するための処理コストを少なくとも2〜3割程度、削減することができる。
図3は本実施形態に係る消化槽12における概略物質収支をドライベースの固形物量で例示した説明図である。図3において四角で囲んだ数値はドライベースの固形物量の重量であり、括弧内の数値は有機物の内数を示している。有機物比率が85%の被処理汚泥10が100量、消化槽12に供給される。消化槽12内では被処理汚泥10の滞留日数30日分に相当する約1050量の消化汚泥が保持される。その結果、被処理汚泥10が消化処理によって減量し、減量率65%を達成したとする。すなわち、被処理汚泥10が100量の内、65量が消化ガス14となり、35量が排出消化汚泥16として消化槽12から排出される。
これを有機物ベースで換算すると、被処理汚泥10中の有機物85量の内、65量が消化ガス14に変換したので、有機物ベースのガス変換率は65/85=76%と計算される。消化槽12から排出される35量の排出消化汚泥16は、無機物が15量、有機物20量で有機物比率が20/35=57%の比較的取り扱い易い汚泥となる。
この消化槽12から被処理汚泥10の供給量と同量の100量(被処理汚泥10との有機物比率では57/85=67%)の消化汚泥18が引抜かれ、前記したように酸化処理槽20で予備的な酸化処理を受けた後に、可溶化槽24で可溶化処理を受ける。可溶化槽24における二酸化塩素の添加量は消化汚泥18中の有機物57量に対して例えば0.7%の0.4量とする。可溶化処理を経た消化汚泥18Aを消化槽12に返送することによって、消化槽12内での消化処理が効率よく促進し、上記したように例えば減量率65%、有機物ベースのガス変換率76%の運転が安定に維持される。ただし、上記した物質収支はあくまでも説明便宜上の概算値である。実際には有機物の一部が水になり、また、消化ガス中には無機物である炭酸ガスなどが含まれるので、上記とはかなり異なった物質収支となる。
図4〜図6に本発明に係る汚泥の消化処理方法につき、いくつかの他の実施形態を示す。各図において図1と同一の符号を付した要素は第1実施形態と同様の要素であり、説明を省略する。
図4は本発明に係る汚泥の消化処理方法の第2実施形態を示す系統図である。本実施形態では可溶化槽24の後段に中和槽44が配設されている。この中和槽44では流入した消化汚泥18Aに対して亜硫酸ナトリウムなどの還元剤46を添加される。すなわち、第2工程の可溶化槽24では可溶化処理を安定に促進させるために、やや過剰の二酸化塩素を添加する場合が多い。この場合には可溶化槽24から流出した消化汚泥18A中に過剰分の二酸化塩素が残存することになり、このような消化汚泥18Aをそのまま消化槽12に返送すると、前記したように消化槽12内に保持された醗酵菌などの微生物群に悪影響を及ぼす。そこで、中和槽44では流入した消化汚泥18Aに還元剤46を添加し、残存した二酸化塩素を中和する。還元剤46の添加量は例えば中和槽44に流出入する消化汚泥の酸化還元電位に基いて調節すればよい。
図5は本発明に係る汚泥の消化処理方法の第3実施形態を示す系統図である。本実施形態では消化槽12から引抜く消化汚泥18を排出消化汚泥16から分流させるとともに、第2工程を経た可溶化後の消化汚泥18Aを被処理汚泥10に合流させることによって、間接的に消化槽12に返送する。この実施形態によれば、消化汚泥18の引抜き管や可溶化後の消化汚泥18Aの返送管を消化槽12に対して直接に接続しない。このため、密閉構造でかつ半地中や卵型の複雑な形状をしている既設の消化槽に対して、本発明に係る可溶化装置を付設する場合でも、消化槽に対する直接的な改造工事が不要になるので、工事が簡単になるという利点がある。
図6は本発明に係る汚泥の消化処理方法の第4実施形態を示す系統図である。本実施形態では消化槽が前段の酸醗酵槽50Aと後段のメタン醗酵槽50Bに分割された2相式の消化槽とされている。メタン醗酵槽50Bの排出消化汚泥16から分流させ消化汚泥18を可溶化し、可溶化した消化汚泥18Aをメタン醗酵槽50B又は酸醗酵槽50Aに返送する。
本発明に係る汚泥の消化処理方法の第1実施形態を示す系統図である。 二酸化塩素水溶液を用いる場合の二酸化塩素供給装置を例示した系統図である。 消化槽12における概略物質収支をドライ重量ベースで例示した説明図である。 本発明に係る汚泥の消化処理方法の第2実施形態を示す系統図である。 本発明に係る汚泥の消化処理方法の第3実施形態を示す系統図である。 本発明に係る汚泥の消化処理方法の第4実施形態を示す系統図である。
符号の説明
10……被処理汚泥、12……消化槽、14……消化ガス、16……排出消化汚泥、18……(可溶化前の)消化汚泥、18A……(可溶化後の)消化汚泥、20,20A……酸化処理槽、22……次亜塩素酸ナトリウム水溶液、24……可溶化槽、26……二酸化塩素、28……(二酸化塩素の)供給タンク、30……注入ポンプ、38……制御器、44……中和槽、46……還元剤、50A……酸醗酵槽、50B……メタン醗酵槽。

Claims (2)

  1. 有機性の汚泥を消化槽で嫌気的に消化処理する汚泥の消化処理方法において、前記消化槽から消化汚泥の一部を引抜き、この引抜いた消化汚泥を予備的に酸化する第1工程と、第1工程を経た前記消化汚泥に二酸化塩素を添加して当該消化汚泥を可溶化する第2工程とを施した後に、当該消化汚泥を前記消化槽に返送することを特徴とする汚泥の消化処理方法。
  2. 前記第2工程を経た前記消化汚泥に還元剤を添加した後に、当該消化汚泥を前記消化槽に返送することを特徴とする請求項1に記載の汚泥の消化処理方法。
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