JP2006266955A - 水硫化アンモニウム環境下における材料の耐腐食性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 水硫化アンモニウム環境下における材料の耐腐食性を評価するに際し、予め試験溶液の水硫化アンモニウム濃度と圧力との関係をシミュレートしておき、圧力から水硫化アンモニウム濃度を判断し、材料の耐腐食性を評価する。
【選択図】 なし
Description
The International Corrosion Forum Devoted Exclusively to the Protection of Materials/March 6-10,1978,PAPER NUMBER 131「PREVENTION OF CORROSION IN HYDRODESULFURIZER AIR COOLERS AND CONDENSERS」
1)Long-Range electrostatic term(溶媒静電作用;LR)
2)Local Composition model term(分子間相互作用;LC)
3)Ionic Interaction term(イオン相互作用;II)
MSEで採用されている高濃度電解質系のギブスエネルギーの計算式を以下に示す。
LC Local composition model (UNIQUAC) for neutral molrcule interactions
II Second viral coefficient expression with ionic strength dependence
1)溶媒静電作用(LR)
LRでは、Pitzer-Debye-Huckel理論に従い、混合溶媒の誘電率、混合物質のモル体積、イオン間距離等のデータからギブスエネルギーを計算している。Debye-Huckel理論に基づく溶媒静電作用に関する修正理論は幾つか提案されているが、高濃度電解質における実験結果とよく一致しているのは、Pitzer-Debye-Huckel理論とされている。
2)局所組成モデル項(LC)
LCは分子間相互作用を表現し、UNIQUACモデルを用いて、分子サイズ、分子表面積、双極相互作用係数等のデータからギブスエネルギーを計算している。UNIQUACモデルでは、温度依存性、溶液中の分子サイズ等を考慮して精度良く計算できる特徴がある。
3)イオン相互作用項(II)
IIはイオン−イオン、イオン−分子間の相互作用を表現し、イオンの双極子作用を考慮してギブスエネルギーを計算している。
[湿潤水硫化アンモニウム溶液の作成手順]
(1) ガス腐食試験室(GCL)のドラフト内にて、図3の試験溶液作成装置(図中の1〜8はバルブである)を組み立て、H2Sボンベの代わりにArボンベを接続し、0.98MPa(10kgf/cm2)にて配管の気密チェックを行った。終了後、H2Sボンベに付け替え、バルブ2開放、バルブ1閉として集中配管よりArガスを一晩通気させ、オートクレーブ試験槽(東伸工業製)・配管内をArガスで置換した。酸素濃度が充分に低下しているかは、排ガス吸収槽に設置した酸素濃度計(横河電機製OX100)で確認した。オートクレーブ試験槽内部の拡大図を図4に示す。
(2) バルブ5を開にしヒドラジンを100ppm添加した21.8%アンモニア水を、流量計からのArガスを用いてアンモニア水注入槽からオートクレーブ試験槽内に900ml注入した。
(3) H2Sガスを通気し、オートクレーブ試験槽の内圧を0.29MPa(3kgf/cm2)とした。オートクレーブ試験槽のバルブを閉じ、内圧の変化を確認した。H2Sがアンモニア水に吸収されると内圧が減少する。
(4) 手順(3) を5回繰り返し、5回目は0.29MPa(3kgf/cm2)で一晩保持した。
(5) 配管内に残った高圧のH2Sガスを徐々に逃がし、次いで配管内を、Arガスを用いて排気する。
(6) オートクレーブ試験槽を配管から取り外し、GCL隣にあるオートクレーブ用の釜にセットし、オートクレーブ試験槽をフードで囲い、送風機を用いて簡易局所排気装置とした。オートクレーブ試験槽を90℃まで1時間で昇温し、オートクレーブ試験槽の内圧を確認して、水硫化アンモニウム濃度を把握してから実験に供した。
(7) 実験終了後、オートクレーブ試験槽を常温まで冷却した後、GCLに運び、封入装置に接続した。アンモニア水注入槽を密閉できる分取装置に付け替え、試験槽内の内圧を利用し試験溶液を徐々に噴出させ、大気と触れないように100mlフラン瓶と500mlポリ瓶に分取した(内圧が足りないときは迂回路を利用し排気側からArガスを通気する。)。
[試験溶液の分析用サンプル作成要領]
事前に、硫化物イオン固定液として、硫酸亜鉛7水和物200g/l溶液5Lと炭酸ナトリウム100g/l溶液5Lを作製しておく。この混合液10mlで硫化物イオン約50mgを固定することができる(JIS K0101-39.1備考2.)。室温まで冷えた試験槽をGCLのドラフト内に運び、封入装置に接続する。
(8) 分取した溶液について、アンモニア濃度(蒸留・中和滴定法)とH2S濃度(塩酸活性・ヨウ素滴定法)およびpHを、JIS K0102に準ずる溶液分析により測定した。
(9) 尚、事後処理として、オートクレーブ試験槽内に残った試験溶液は、アンモニア水注入側より迂回路を利用し排気側から通気したArガスを利用し排出した。このとき、排出させる容器にNaOH溶液を入れておき、H2Sを吸収させるとともに、高濃度の試験溶液を希釈した。集中配管よりArガスを通気させ試験槽・配管内に残ったH2S・NH3を排気した。オートクレーブ試験槽から配管を外し、試験槽の蓋を開けて残った試験溶液を回収し、試験槽・配管内を純水洗浄した。
[湿潤水硫化アンモニウム環境中での電気化学測定の要領]
(1) 分解して純水洗浄しておいた封入装置を組み立てる。このとき頻繁に取り外すパッキンは金属製ではなくテフロン製を用い、劣化によるガス漏れ予防に1バッチごとに交換する。また外部照合電極と冷却槽との接続部にテフロンゴムパッキンをかませる。このとき使用する圧力調整器は、Arボンベには高圧用を、H2Sボンベには水素ガス用(逆ネジ)を用いる。組み立てが済んだら、脱気用のArガスを用いて内圧5MPaにて気密チェック(石鹸水)を行う。このとき圧力調整器体の故障を防ぐため、H2Sボンベ側のバルブ1は閉めておく。
(2) 一旦、封入装置から試験槽、更に外部照合電極を取り外す。再度、外部照合電極を組み立てる。このとき、この試験に一度使用したAg/AgCl電極は多少腐食しているので、再度使用しない。次に、試験中に電極内に侵入したH2SによりAg/AgCl電極が腐食して電位が変化するため、組み立てた外部照合電極と基準電極との電位差を確認し、記録する。
(3) オートクレーブ試験槽に、直前に600番の粗さになるまでエメリー紙(研磨紙)で全面研磨し、アセトンにて超音波洗浄し、秤量した電気化学測定用旗方試験片をセットし封入装置に組み込む。
(4) Arガスを通気させ、試験槽・配管内をArガスで置換する。ある程度通気したところで一旦通気を止め、内圧を0.3MPaにあげた状態で全てのバルブを閉じ、1時間経過しても内圧が減少しないことで漏れがないことを確認する。漏れがなければArガスを二次圧0.2MPaほどで一晩通気させる(流量50ml/min程度目算)。酸素濃度が充分に低下しているかは、排ガス吸収槽に設置した酸素濃度計で流量を300ml/min程度に増やした状態で確認する。
(5) ドラフト内でアンモニア水に純水を加えて良く攪拌する。この溶液にヒドラジン一水和物をメスピペットを使用して添加し更に攪拌して、ヒドラジンを添加したアンモニア水を作製する。この溶液を1L三角フラスコ(目盛記入)に定量入れ、アンモニア水注入部に組み込む(アンモニアの蒸気圧が高いので、注入用のSUS管付きシリコン栓で蓋した時溶液が噴出することがあるので注意する。)。Arボンベから分岐させた配管から導入したArガスを用いて試験槽内に注入する。注入を止めるときは、バルブ5をまず閉じ、つづいて速やかにArガスを止める。ガスを止めただけでは残圧で注入が止まらず、バルブ5を止めて時間がかかるとシリコン栓が外れてガスが噴出することがある。
(6) H2Sガスを徐々に通気し、試験槽の内圧を0.3MPaにする。通気始めは、なかなか内圧が上昇しない。音や振動に留意し、一度に吹き込まないよう注意する。
(7) オートクレーブ試験槽のバルブを閉じ、内圧の変化を確認する。H2Sがアンモニア水に吸収されると内圧が減少する。
繰り返し初期は反応熱により、液温が50℃程度まで上昇するので注意する。
(8) 手順(6) 、(7) を約15分間隔で定時まで(十数回)繰り返す。定時後は全てのバルブを閉じ、オートクレーブ試験槽内が加圧状態のまま一晩置き、朝の時点で内圧が十分(0.1MPa以上)残っているのを確認し、常圧下では十分飽和状態であるとみなした。外部照合電極のせいか、予備試験時より内圧の低下が大きい。念のため、朝の時点で内圧を0.5MPaまで上昇させ、30分経過させて半分程度減少することを確認する。
(9) オートクレーブ試験槽内の内圧を用いて外部照合電極に試験液を満たす。
(10) 配管内に残った高圧のH2Sガスを、一度に流して吸収槽で吸収しきれないことの無いよう、徐々に排気する。
(11) 配管内を、Arガスを用いて排気する。つづいて、試験槽内の加圧状態を解放し常圧に戻す。このとき、一度に流して吸収槽で吸収しきれないことの無いよう、またオートクレーブ試験槽内に空気が逆流しないよう注意する。次に、オートクレーブ試験槽本体のバルブを閉じ、配管内に残ったH2Sガスを、Arガスを用いて排気する。
(12) 試験槽(電極付オートクレーブ)を配管から取り外し、オートクレーブ用の釜にセットする。
(13) H2Sの漏洩対策として、オートクレーブをフードで囲い、送風機付きのダクトを用いて屋外に排気することで簡易局所排気装置とする。
(14) オートクレーブ試験槽にポテンショスタットを接続し、常温の電気化学測定用試験片の浸漬電位を測定する。
(15) オートクレーブを90℃まで約1.5時間で昇温し、オートクレーブの内圧を確認しつつ温度を保持する。昇温中・保温中も電位・温度の経時変化をデータロガーを用いて記録する。
(16) 浸漬電位の変化を2時間ほど確認したのち陰分極を行い、測定後の浸漬電位を確認してから陽分極を行う(掃引速度10mV/min)。
(17) 試験終了後、十分に冷えたオートクレーブ試験槽をGCLに運び、封入装置に接続する。
(18) Arガスを通気させ試験槽・配管内に残ったH2S・NH3を排気する。
(19) 試験槽から配管を外して試験場に移し、オートクレーブ試験槽の蓋を開けて試験片を取り出す。内部には多分にH2Sが残留しているので、防毒マスクを着用し作業する。取り出した試験片は、純水で洗浄後乾燥させ、重量を測定し、外観写真を撮影する。
(20) オートクレーブ試験槽から外した外部照合電極と(1) で使用した基準電極との電位差を確認し、電極の劣化の状況を確認する。
Claims (3)
- 水硫化アンモニウム環境下における材料の耐腐食性を評価するに際し、予め試験溶液の水硫化アンモニウム濃度と圧力との関係をシミュレートしておき、圧力から水硫化アンモニウム濃度を判断し、材料の耐腐食性を評価する方法。
- 試験溶液にヒドラジンを配合する請求項1記載の材料の耐腐食性評価方法。
- 高濃度電解質のシミュレーションを用いた腐食環境評価方法。
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