JP2006265776A - 織物用ポリアミドモノフィラメント - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れるとともに、十分な引張強伸度を有し、特に抄紙プレスフェルト基布等の工業織物の構成素材として好適な織物用ポリアミドモノフィラメントの提供。
【解決手段】ポリアミド樹脂80〜99.7重量%と環状オレフィン・コポリマー樹脂20〜0.3重量%との熱可塑性樹脂組成物から得られるポリアミドモノフィラメントであって、炭酸カルシウム摩耗破断時間をY(分)、モノフィラメントの直径をX(mm)とした場合に、式Y≧−70X+330Xの関係を満たすことを特徴とする織物用ポリアミドモノフィラメント。
【選択図】なし

Description

本発明は、従来の織物用ポリアミドモノフィラメントに比べ、耐摩耗性に優れるとともに、十分な引張強伸度を有し、特に抄紙プレスフェルト基布を代表とする工業織物の構成素材として好適な織物用ポリアミドモノフィラメントに関するものである。
ポリアミドモノフィラメントは、抄紙ワイヤー(紙漉き用の網)、抄紙プレスフェルト基布、抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙用織物、コンベヤベルトや脱水ベルトなどのベルト用織物、および各種ベルトプレス用フィルターなどのフィルター用織物のほか、各種工業織物の素材として従来から広く用いられている。
そして、これら工業織物を上記の用途に対し実際に使用する場合は、いずれも走行中に抄紙機やベルト機器などの駆動ロールや制御ロールと接触して摩耗を受けることから、使用される織物用モノフィラメントには優れた耐摩耗性が要求されている。
ポリアミドモノフィラメントは、ポリエステルモノフィラメントなどに比べ、圧縮を受けても割れ難く、さらに擦過を受けても摩耗し難いなどの特性を有していることから、例えば、抄紙プレスフェルト基布などの抄紙用織物やベルト用織物、各種フィルター用織物の構成素材などの様々な織物用途に使用されてきた。
しかるに、近年では、生産性や処理能力を高める目的で、抄紙機やベルト機器などの高速化、高能力化が進み、工業織物には、さらに強い耐摩耗性、圧搾脱水時の高圧力耐久性や高吸引力耐久性、軽量化、広面積化など、従来のものよりもさらなる高性能が要求されるようになり、その構成素材である織物用ポリアミドモノフィラメントにもより高度な特性が要求されるようになってきた。
近年、特に、紙の耐用年数を向上させる目的で中性紙の要求が高まっており、中性抄造のために填料として炭酸カルシウムが多く用いられるようになった。しかし、炭酸カルシウムは抄紙用織物を著しく摩耗させるため、抄紙用織物用素材には炭酸カルシウムに対する耐摩耗性が強く要求されるようになってきている。
また、抄紙プレスフェルトは、織物用モノフィラメントからなる抄紙プレスフェルト基布と短繊維からなるバットとから構成されており、従来の抄紙プレスフェルト基布が抄紙プレスフェルトの補強を担っていたのに対し、近年の抄紙プレスフェルト基布は、抄紙プレスフェルトの補強のほかにも、圧搾反発と通水体積の維持、さらに屈曲摩耗耐久性の維持をも担っており、抄紙プレスフェルトの内部で発生する抄紙プレスフェルト基布とバットとの擦過摩耗に対しても十分な耐摩耗性が必要になってきている。
このような要求に対処するための一手段としては、特定量のε−カプロラクタムとエチレン・ビスステアリルアミドとを含有する柔軟性ポリアミドモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)や、ヒンダードフェノール系化合物とビスアミド系化合物とを含有し、耐摩耗性と耐熱性に優れたポリアミドモノフィラメント(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、これら従来のポリアミドモノフィラメントは、その耐摩耗性改善効果には限界があるため、工業織物の構成素材として適用するには未だに不十分であり、従来のものよりもさらに耐摩耗性に優れた織物用ポリアミドモノフィラメントの実現がしきりに求められていた。
特開昭62−41315号公報 特開平2002−69748号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を目的に検討した結果達成されたものである。
すなわち、本発明の目的は、従来の織物用ポリアミドモノフィラメントに比べ、耐摩耗性に優れるとともに、十分な引張強伸度を有し、特に抄紙プレスフェルト基布を代表とする工業織物の構成素材として好適な織物用ポリアミドモノフィラメントを提供することにある。
上記の目的を達成するために本発明によれば、ポリアミド樹脂80〜99.7重量%と環状オレフィン・コポリマー樹脂20〜0.3重量%との熱可塑性樹脂組成物から得られるポリアミドモノフィラメントであって、下記の方法により測定した炭酸カルシウム摩耗破断時間をY(分)、モノフィラメントの直径をX(mm)とした場合に、式Y≧−70X+330Xの関係を満たすことを特徴とする織物用ポリアミドモノフィラメントが提供される。
炭酸カルシウム摩耗破断時間の測定方法:
ポリアミドモノフィラメントの先端に0.22cN/dtexの荷重をかけ、炭酸カルシウム粉末を0.5%含む35±5℃の水懸濁液を0.6リットル/分の滴下速度で滴下させながら、1500rpmで回転する直径15cmのセラミック製円筒側面とポリアミドモノフィラメントとを連続接触させ、ポリアミドモノフィラメントが破断するまでの時間を測定した。そして、同一試料につき各5本のポリアミドモノフィラメントについて夫々破断するまでの時間を測定し、その平均値を炭酸カルシウム摩耗破断時間とする。
なお、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントにおいては、
前記環状オレフィン・コポリマー樹脂が、エチレンとノルボルネンの共重合体であること、
前記ポリアミド樹脂が、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミドおよびポリカプラミドとポリヘキサメチレンアジパミドとの共重合体から選ばれた少なくとも1種類であること、
JIS L−1013の規定に準じて測定した引張強度が4.5cN/dtex以上、引張伸度が15%以上であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たすことにより、工業織物、特に抄紙プレスフェルト基布の少なくとも一部に使用した場合には、さらに優れた効果を取得することができる。
本発明によれば、以下に説明するとおり、従来の織物用ポリアミドモノフィラメントに比べ、耐摩耗性に優れるとともに、十分な引張強伸度を有し、特に抄紙プレスフェルト基布を代表とする工業織物の構成素材として好適な織物用ポリアミドモノフィラメントを得ることができる。
以下、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントについて詳細に説明する。
本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントは、ポリアミド樹脂と環状オレフィン・コポリマー樹脂との熱可塑性樹脂組成物から得られるものである。
ここでいうポリアミド樹脂とは、各種ラクタム類の開環重合、各種ジアミン類と各種ジカルボン酸類との重縮合および各種アミノカルボン酸類の重縮合によって得られる各種ポリアミド類、およびこれらの重縮合と開環重合とを組み合わせた共重合ポリアミド類であり、具体的には、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ナイロン610、ナイロン46、ナイロンMDX6、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12およびポリカプラミドとポリヘキサメチレンアジパミドとの共重合体などが挙げられ、これらポリアミド樹脂の中でも、織物用ポリアミドモノフィラメントとしては、ポリカプラミド(以下、ナイロン6という)、ポリヘキサメチレンアジパミド(以下、ナイロン66という)およびポリカプラミドとポリヘキサメチレンアジパミドとの共重合体(以下、ナイロン6/66という)から選ばれた少なくとも一種の使用が好ましく、さらにはナイロン6の使用がより好ましい。
一方、ここでいう環状オレフィン・コポリマー樹脂とは、特に限定されるものではないが、耐摩耗性に優れた織物用ポリアミドモノフィラメントが得られやすいとの理由から、メタロセン触媒を使用し、エチレンとノルボルネンを共重合したシクロオレフィン・コポリマータイプの使用が好ましい。なお、この環状オレフィン・コポリマー樹脂には、市販品として、基本グレード6013、6015および特殊グレード6017などのグレードを持つTOPAS(登録商標)(Ticona GmbH製品/ポリプラスチック株式会社販売)が知られており、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントを得る上では、これらを入手して使用することもできる。
そして、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントは、ポリアミド樹脂80〜99.7重量%と環状オレフィン・コポリマー樹脂20〜0.3重量%との熱可塑性樹脂組成物から得られることが必要である。
環状オレフィン・コポリマー樹脂の含有量が上記範囲を下回る場合は、耐摩耗性に欠けた織物用ポリアミドモノフィラメントとなり、逆に上記範囲を上回る場合は、耐摩耗性と引張強伸度に欠けた織物用ポリアミドモノフィラメントとなりやすいばかりか、織物用ポリアミドモノフィラメントを溶融紡糸するに際して糸切れが多発し、原料の押し込みも不安定性になるため好ましくない。
したがって、環状オレフィン・コポリマー樹脂の含有量は、上記範囲を満たしておれば、織物用ポリアミドモノフィラメントの使用用途に応じて適宜選定することができるが、さらに優れた効果を取得するためには、0.4〜10重量%含有することがより好ましい。
なお、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントにおいては、目的に応じて公知の有機・無機の各種材料を添加することができ、添加物の具体的なものとしては、例えば、各種抗酸化剤、耐光剤、難燃剤、およびヨウ化銅、ヨウ化カリウム、2−メルカプトベンズイミダゾールなどの老化防止剤、酸化チタン、酸化珪素、硫酸バリウム、クレイ、タルク、カーボンブラックなどの無機粒子・顔料類、フタロシアニン金属系、コバルト青などの各種顔料、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウムなどのステアリン酸金属塩類、ε−カプロラクタム、エチレン・ビスステアリルアミド、ステアリン酸、メタ珪酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム、アミノシラン、およびメラミンシアヌレートなどが挙げられる。
また、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントが、抄紙用織物、ベルト用織物、フィルター用織物などの各種工業織物の素材として、優れた耐摩耗性を有し、実用可能なものであるためには、炭酸カルシウム摩耗破断時間をY(分)、モノフィラメントの直径をX(mm)とした場合に、式Y≧−70X+330Xの関係を満たすことが必要であり、さらには、Y≧−70X+380Xの関係式を満たすことがより好ましい。
なお、炭酸カルシウム摩耗破断時間は次の方法により測定した時間である。すなわち、ポリアミドモノフィラメントの先端に0.22cN/dtexの荷重をかけ、炭酸カルシウム粉末を0.5%含む35±5℃の水懸濁液を0.6リットル/分の滴下速度で滴下させながら、1500rpmで回転する直径15cmのセラミック製円筒側面とポリアミドモノフィラメントとを連続接触させ、ポリアミドモノフィラメントが破断するまでの時間を測定した。そして、同一試料につき各5本のポリアミドモノフィラメントについて夫々破断するまでの時間を測定し、その平均値を炭酸カルシウム摩耗破断時間とした。
ここで、一般に、モノフィラメントの直径と炭酸カルシウム摩耗破断時間との間には相関関係があり、環状オレフィン・コポリマー樹脂を添加しないナイロン6のみからなる織物用ポリアミドモノフィラメントの炭酸カルシウム摩耗破断時間(Y)と、モノフィラメントの直径(X)との関係式については、本発明者等が検討した結果、Y=−70X+300Xで表される関係式に近似できることが明らかとなっている(図1参照)。
しかし、実際に抄紙プレスフェルト基布を代表とする工業織物の構成素材として使用できるものであるためには、ナイロン6のみからなるポリアミドモノフィラメントの約1.1倍以上の炭酸カルシウム摩耗破断時間が必要であり、Y=−70X+300Xの1.1倍以上に相当する近似式、すなわちY≧−70X+330Xの関係式を満たすことが本発明においては必要である。
そして、炭酸カルシウム摩耗破断時間が上記範囲を下回る場合は、耐摩耗性の低い織物用ポリアミドモノフィラメントとなり、この織物用ポリアミドモノフィラメントを工業用織物の構成素材として使用した場合には、耐摩耗性に欠けた工業用織物しか得られない。
以上の条件を満たすことにより、従来の織物用ポリアミドモノフィラメントに比べ、耐摩耗性に優れるとともに、十分な引張強伸度を有し、特に抄紙プレスフェルト基布を代表する工業織物の構成素材として使用した場合には、至って好適な織物用ポリアミドモノフィラメントを取得することができるのである。
さらに、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントにおいては、JIS L−1013の規定に準じて測定した引張強度が4.5cN/dtex以上、特に5.0cN/dtex以上、また引張伸度が15%以上、特に20%以上であることがより好ましい条件として挙げられる。
引張強伸度が上記範囲を下回る場合は、十分な引張強伸度を持った織物用ポリアミドモノフィラメントとは言いにくく、さらには、上述の炭酸カルシウムを含む水懸濁液を使用した摩耗評価においては、破断時間が短くなる傾向となり、この織物用ポリアミドモノフィラメントを工業用織物の構成素材として使用した場合には、引張強伸度と耐摩耗性に欠けた工業用織物となりやすい。
本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントの製造方法については、何ら特殊な方法を必要とせず、例えば、次の方法により製造することができる。
まず、ポリアミド樹脂と環状オレフィン・コポリマー樹脂とを上記の所定量になるように混合し、その混合物を先端に計量用ギヤポンプとスピンブロックを有するエクストルダー型紡糸機に供給し、ポリアミド樹脂の融点より20〜60℃高い温度で溶融混練した後、溶融物を紡糸口金から紡出する。
次いで、溶融状態の紡出糸を冷却水槽中に導いて冷却固化せしめた後、巻き取ることなく第1および第2延伸ゾーンで延伸し、さらにヒートセットゾーンで熱セットした後、必要に応じて油剤を付与し、ボビンに巻き取ることによって、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントを得ることができる。
また、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントの製造の際しては、上記製造方法に記載するように、ポリアミド樹脂と環状オレフィン・コポリマー樹脂とをそれぞれ単独で使用する方法以外にも、環状オレフィン・コポリマー樹脂を含有するポリアミドペレットを予め作成し、このポリアミドペレットを直接紡糸機に供給して溶融紡糸する方法、このポリアミドペレットとポリアミド樹脂との混合物を紡糸機に供給して溶融紡糸する方法などを採用することもできる。
なお、この場合におけるポリアミドペレット中の環状オレフィン・コポリマー樹脂の含有量は、織物用ポリアミドモノフィラメントに含有させたい濃度に設定するか、もしくはモノフィラメントに含有させたい濃度よりも高濃度に設定する。
また、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントは、一本の連続糸であるが、必要に応じて複数本合わせて撚糸・熱セットしたものも含む。
さらに、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントの断面形状については、その用途に応じて適宜選定することができ、特に限定されるものではないが、例えば、丸、楕円、3角、T、Y、H、+、5葉,6葉,7葉,8葉などの多葉形状、正方形、長方形、菱形、繭型および馬蹄型などが挙げられ、また、これらの形状を一部変更したものであってもよい。
さらにまた、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントの直径についても、その用途に応じて適宜選定することができ、特に限定されるものではないが、例えば、工業織物用途としては、一般に、直径0.10〜0.85mmのものが使用される。
そして、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントは、抄紙ワイヤー(紙漉き用の網)、抄紙プレスフェルト基布、抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙用織物、コンベヤベルトや脱水ベルトなどのベルト用織物および各種ベルトプレス用フィルターなどのフィルター用織物のなどの各種工業織物の素材として極めて有用である。
以下、実施例を挙げて本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントをさらに詳細に説明する。
なお、実施例における炭酸カルシウム摩耗破断時間、引張強伸度および製糸工程における操業性の評価は次の方法で行った。
[炭酸カルシウム摩耗破断時間の測定方法]
ポリアミドモノフィラメントの先端に0.22cN/dtexの荷重をかけ、三共製薬(株)製の炭酸カルシウム粉末“エスカロン”(登録商標)#800を0.5%含む35±5℃の水懸濁液を0.6リットル/分の滴下速度で滴下させながら、1500rpmで回転する直径15cmのセラミック製円筒側面とポリアミドモノフィラメントとを連続接触させ、ポリアミドモノフィラメントが破断するまでの時間(破断時間)を測定した。
そして、同一試料につき各5本のポリアミドモノフィラメントについて夫々破断するまでの時間を測定し、その平均値を炭酸カルシウム摩耗破断時間とした。炭酸カルシウム摩耗破断時間が長いほど、耐摩耗性に優れたポリアミドモノフィラメントであることを示す。
[繊度]
JIS L1013:1999の8.3に準じて測定した。
[引張強伸度]
JIS L1013:1999の8.5に準じて、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で測定した。なお、引張強度は測定試料の繊度(デシテックス)単位当たりに換算して得た値である。
[操業性]
連続押出し紡糸を行う際の状況を観察し、糸切れや原料の紡糸機への押し込み安定性などについて、次の規準で評価した。
○…糸切れはなく、原料の押し込みも安定で、問題はなかった、
×…糸切れが多発し、原料の押し込みも不安定であるなど、操業が難しかった。
[実施例1〜3、比較例1〜2]
ポリアミド樹脂としてナイロン6(東レ(株)社製、“アミラン”ポリアミドチップM1041T)、環状オレフィン・コポリマー樹脂としてTOPAS(登録商標)基本グレード6013S−04チップ(Ticona GmbH製品/ポリプラスチック株式会社販売。以下、TOPAS 6013S−04という)を使用した。
上記のナイロン6チップとTOPAS 6013S−04とを表1に示した重量比で混合し、その混合物を1軸エクストルダー型紡糸機に供給し、270℃で溶融混練した後、計量用ギヤポンプを介して、口金孔から溶融押出し、20℃の冷却水槽に導き冷却固化した。
次に、冷却固化した未延伸糸を、まず60℃の熱水浴中で3.04倍に延伸し、引き続き210℃の熱風浴中で延伸し、トータル倍率4.50倍の延伸を行った。そしてさらに、225℃の熱風浴中で0.90倍に熱セットすることにより、直径約0.330mmのポリアミドモノフィラメントを得た。
得られたポリアミドモノフィラメントの炭酸カルシウム摩耗破断時間、引張強伸度および製糸工程における操業性について評価した結果を表1に示す。
[実施例4〜5]
ポリアミド樹脂としてのナイロン6を、ナイロン66(東レ(株)社製、“アミラン”ポリアミドチップM3001)またはナイロン6/66(東レ(株)社製、“アミラン”ポリアミドチップM6021)に変更した以外は、実施例2と同じ条件で織物用ポリアミドモノフィラメントを得た。
得られたポリアミドモノフィラメントの炭酸カルシウム摩耗破断時間、引張強伸度および製糸工程における操業性について評価した結果を表1に示す。
[実施例6〜9]
直径を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じ条件で織物用ポリアミドモノフィラメントを得た。
得られたポリアミドモノフィラメントの炭酸カルシウム摩耗破断時間、引張強伸度および製糸工程における操業性について評価した結果を表1に示す。
[比較例3〜7]
環状オレフィン・コポリマー樹脂を添加せず、ナイロン6のみを原料として使用し、直径を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で織物用ポリアミドモノフィラメントを得た。
得られたポリアミドモノフィラメントの炭酸カルシウム摩耗破断時間、引張強伸度および製糸工程における操業性について評価した結果を表1に示す。
また、上記実施例1,2,5,6,7,9および比較例1,5,7について、炭酸カルシウム摩耗破断時間とモノフィラメント直径との関係を、図1のグラフにプロットして示した。
Figure 2006265776
表1の結果から明らかなように、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメント(実施例1〜9)は、炭酸カルシウム摩耗破断時間がいずれも長く、耐摩耗性に優れ、また十分な引張強伸度を有するものであった。
これに対し、環状オレフィン・コポリマーが含有されていない織物用ポリアミドモノフィラメント(比較例3〜7)は、同じ直径であっても、環状オレフィン・コポリマーが含有された織物用ポリアミドモノフィラメント(実施例1、6〜9)に比べ明らかに炭酸カルシウム摩耗破断時間が短く、耐摩耗性に欠けたものであることが分かる。
また、環状オレフィン・コポリマーの含有量が所定量より多い織物用ポリアミドモノフィラメント(比較例1)は、炭酸カルシウム摩耗破断時間が短くなるばかりか、引張強伸度も十分なものであるとは言えず、さらに操業性についても不安定であった。
さらに、環状オレフィン・コポリマーの含有量が所定量より少ない織物用ポリアミドモノフィラメント(比較例2)は、引張強伸度および操業性が十分満足したものであるものの、炭酸カルシウム摩耗破断時間は短く、耐摩耗性に欠けるものであった。
[実施例10、比較例8〜9]
実施例2で得られた織物用ポリアミドモノフィラメントの3本撚糸を経糸および緯糸として使用し、無端状二重織の織物を製織した。さらに、この織物を160℃でヒートセットし、坪量600g/mの抄紙プレスフェルト基布を得た。
次に、得られた抄紙プレスフェルト基布を、ニードルパンチング機に仕掛け、抄紙プレスフェルト基布の上下に、カーディングマシンからナイロン66短繊維製バットを表目付400g/m、裏目付200g/mで供給し、ニードリングすることにより、抄紙プレスフェルト基布とナイロン66短繊維製バットが絡合一体化した無端状抄紙プレスフェルト(実施例10)を作成した。
また、実施例10と同じように、比較例2と比較例3で得られた織物用ポリアミドモノフィラメントをそれぞれ使用して無端状抄紙プレスフェルト(比較例8、9)を作成した。
そして、得られた上記3種類の無端状抄紙プレスフェルトを抄紙工程において実際に使用し、その実用性について評価を行ったところ、実施例10の無端状抄紙プレスフェルトは、比較例8および9の無端状抄紙プレスフェルトに比べ、耐摩耗性に優れるとともに、十分な耐久性を有し、極めて実用性の高いものであることが確認された。
以上説明したように、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントは、従来の織物用ポリアミドモノフィラメントに比べ、優れた耐摩耗性と十分な引張強伸度を有していることから、特に抄紙プレスフェルト基布を代表とする各種工業織物の構成素材として好適であり、工業織物を使用する各産業において極めて利用価値の高いものである。
そして、本発明の織物用ポリアミドモノフィラメントは、その特性を生かして工業織物以外の用途にも利用することができ、その利用例としては、釣り糸、スポーツ用品、弦楽器弦、草類刈り払い用線材、屋外用張り線、各種ブラシおよび筆毛などが挙げられる。
図1は織物用ポリアミドモノフィラメントの直径と炭酸カルシウム摩耗破断時間の関係を表したグラフである。

Claims (6)

  1. ポリアミド樹脂80〜99.7重量%と環状オレフィン・コポリマー樹脂20〜0.3重量%との熱可塑性樹脂組成物から得られるポリアミドモノフィラメントであって、下記の方法により測定した炭酸カルシウム摩耗破断時間をY(分)、モノフィラメントの直径をX(mm)とした場合に、式Y≧−70X+330Xの関係を満たすことを特徴とする織物用ポリアミドモノフィラメント。
    炭酸カルシウム摩耗破断時間の測定方法:
    ポリアミドモノフィラメントの先端に0.22cN/dtexの荷重をかけ、炭酸カルシウム粉末を0.5%含む35±5℃の水懸濁液を0.6リットル/分の滴下速度で滴下させながら、1500rpmで回転する直径15cmのセラミック製円筒側面とポリアミドモノフィラメントとを連続接触させ、ポリアミドモノフィラメントが破断するまでの時間を測定した。そして、同一試料につき各5本のポリアミドモノフィラメントについて夫々破断するまでの時間を測定し、その平均値を炭酸カルシウム摩耗破断時間とする。
  2. 前記環状オレフィン・コポリマー樹脂が、エチレンとノルボルネンの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の織物用ポリアミドモノフィラメント。
  3. 前記ポリアミド樹脂が、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミドおよびポリカプラミドとポリヘキサメチレンアジパミドとの共重合体から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2記載に記載の織物用ポリアミドモノフィラメント。
  4. JIS L−1013の規定に準じて測定した引張強度が4.5cN/dtex以上、引張伸度が15%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の織物用ポリアミドモノフィラメント。
  5. 工業織物の少なくとも一部に使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の織物用ポリアミドモノフィラメント。
  6. 前記工業織物が抄紙プレスフェルト基布であることを特徴とする請求項5に記載の織物用ポリアミドモノフィラメント。
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