JP2006265082A - 表面微細加工チタン含有ガラス基材、およびその製造方法 - Google Patents

表面微細加工チタン含有ガラス基材、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】チタン含有ガラス基材の表面形状を制御する。
【解決手段】チタン含有ガラス基材の表面に設定された加工対象面に、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から2J/cmの範囲、1パルス当たりの照射時間が1〜100nsec、パルス数が1〜10000のレーザ光を照射して、加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造を形成させることにより表面微細加工チタン含有ガラス基材を製造する。
【選択図】 図13

Description

本発明は、チタンが含まれたガラスからなるチタン含有ガラス基材の表面に特定のレーザ光を照射して表面を微細加工した(表面形状を制御した)表面微細加工チタン含有ガラス基材、その基材の製造方法およびその基材を用いたマイクロチャンネルチップに関する。
近年、マイクロマシニング技術の進歩に伴って、微小流路を流通する被処理流体に対して、予め定めた処理、例えば混合、合成、分離、分析等の各種処理を施すためのマイクロチャンネルチップが開発されている。ここで、マイクロチャンネルチップとは、ガラスやプラスチック等の基板上に微小流路(マイクロチャンネル)を形成したものをいう。
このようなマイクロチャンネルチップとしては、特許文献1および特許文献2に記載のように、微小流路の底面や壁面に光触媒活性を有する物質である酸化チタンからなる薄膜を形成したものが知られている。
特許文献1では、光触媒活性膜に紫外線を照射することにより酸化チタンからなる薄膜を親水性とし、微小流路を流れる流体の流れを制御している。また、特許文献2では、光触媒活性膜に紫外線を照射して強い酸化作用を発揮させ、膜に接触するほとんど全ての有機物を酸化分解させ、膜表面を超親水性にしている。即ち、光触媒活性膜に紫外線を照射して、防汚作用、防曇作用、抗菌作用、滅菌作用、浄化作用等を発揮させて、洗浄が容易な表面にしている。
このように酸化チタンは光触媒として知られており、微小流路の底面や壁面に形成された酸化チタンの薄膜に対する紫外線の照射/遮断を制御することにより、酸化チタンの光触媒作用を制御することができるので、微小流路を流れる被処理流体に対する処理を紫外線照射の制御によって変えることができる。
ガラス基板の表面に酸化チタンの薄膜を形成する方法としては、スパッタ法あるいは蒸着法等の気相成膜によって形成する方法や、ゾルゲル法によってガラス基板上に形成したゲル膜を焼成して結晶化させて形成する方法等が知られている。特許文献1には、酸化チタン膜をスパッタ法やゾルゲル法によって形成することが記載されており、特許文献2には、酸化チタン膜をスパッタ法やスピンコーティング法で形成することが記載されている。
一方、前記マイクロチャンネルチップの開発とは別に、ガラスのレーザ加工に必要なエネルギを低くする(低加工閾値とする)ために、チタン成分をガラスに含有させたレーザ加工用ガラスが開発されている(特許文献3、特許文献4および特許文献5参照)。
特許文献3、特許文献4および特許文献5では、レーザ加工時の加工閾値を測定するために、レーザ加工用ガラスにNd:YAGレーザの第3高調波(波長:355nm)および第4高調波(波長:266nm)の紫外光(1パルス当たりの照射エネルギが、特許文献3の場合15〜900mW(面積不明)、特許文献4の場合15〜500mW(面積不明)、特許文献5の場合209〜500mJ/cmで、周波数20Hz、パルス幅5〜8nsec程度の紫外光)を焦点距離100mmのレンズで集光し、ガラス試料に2秒間照射することが記載されている。
また、特許文献3、特許文献4および特許文献5に記載のレーザ加工用ガラスと同類で、チタン成分を含有させたガラスにレーザ光(Nd:YAGレーザの第3高調波、第4高調波またはKrFエキシマレーザ(248nm)光、一般に1パルス当たりの照射エネルギ5〜15J/cm、周波数20Hz、パルス幅5〜8nsec程度のレーザ光を使用)を照射することにより、ガラス板に貫通孔や窪みを形成する技術が開示されている(特許文献6参照)。
特開2004−125475号公報 特開2004−202336号公報 特開2003−112945号公報 特開2004−107198号公報 国際公開第2004/063109号パンフレット 特開2003−246638号公報
前述の光触媒活性は膜表面の酸化チタンと流体との界面で発現するので、界面の面積、即ち膜表面の酸化チタンの量が多い方が光触媒活性をより大きくすることができる。しかし、前述のスパッタ法等の気相法やスピンコーティング法で膜表面の酸化チタンを形成した場合、薄膜の表面は平滑面となり、膜の表面積も小さくなり、膜表面の酸化チタンの量も少なくなる。薄膜の表面積を大きくするためには、例えばガラス基板の表面に予め凹凸を形成してから酸化チタン膜を形成することになり、製造工程が増えてしまうという問題がある。
一方、ゾルゲル法で酸化チタン膜を形成すれば、多数の空孔が存在するいわゆるメソポーラス材料を形成することができる。しかし、このメソポーラス材料の形成には、高温下の熱処理が必要であり、また、製造工程も煩雑になるという問題がある。
また、気相法やスピンコーティング法では、酸化チタン膜を基板の所定の位置に選択的に形成することができない。そのため、ガラス基板の表面の一部、例えば前記微小流路の底面の一部に酸化チタン膜を形成する場合、ガラス基板全面に酸化チタン膜を形成し、その後不要部分をエッチングで除去する必要があるので、製造工程が煩雑になるという問題がある。
一方、特許文献3〜6に記載の技術は、レーザ光によるガラスの孔開けなどが目的であり、その加工面に微細構造が形成されるとの記載はない。
本発明の目的は、簡単に例えば結晶化した酸化チタンを含む幅10μm程度以下の微細構造を所望の位置の加工対象面に形成することができる表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法を提供することにある。また、このような製造方法により、様々な用途に使用することができる表面微細加工チタン含有ガラス基材を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、上記製造方法により製造された表面微細加工チタン含有ガラス基材を用いたマイクロチャンネルチップを提供することにある。
本発明の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法によれば、以下の現象が起こり、チタン含有ガラス基材の加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造が形成されるものと考えられる。
すなわち、まずチタン含有ガラス基材の表面にレーザ光を照射すると、そのエネルギの一部は基材に吸収されて熱エネルギに変わる。この熱エネルギによってチタン含有ガラス基材表面の極近傍のみが急速に加熱され、一時的に融液状態になる。また、この基材表面が融液状態になる際にガラスが分相し、冷却されて結晶化される際に部分的に組成比の異なる部分が形成される。例えば、ガラスが分相されたことにより、ある部分のチタン含有率が他の部分に比べて多くなっていた場合には、その部分はレーザ光照射後に急冷される際に、すでに当初の組成とは異なっているので、元のガラス状態にもどることができず、一部で結晶化が起こる。この結果、分相したそれぞれの相は、組成や構造によってレーザ光照射に対する耐性(レーザ光照射による蒸発のしやすさ等)が異なる。このため、酸化チタンを多く含む相がそれ以外の相に比べて耐性が高くなり、レーザ光が照射されたガラス表面に酸化チタンを多く含む相が選択的に残り、微細な凸部群が形成される。
なお、前記レーザ光照射後の急冷は、レーザ光照射工程後のみならず、レーザ光照射中のパルスとパルスとの間のレーザ光を照射していないときにも、雰囲気ガスの冷却作用により起こると考えられる。また、前記説明では、分相・結晶化した後にレーザ光照射に対する耐性が変化することによって凸部群が形成されると考えたが、レーザ光照射中に分相が生じ、融液状態ですでにレーザ光照射に対する耐性が変化している可能性もある。
このようにしてチタン含有ガラス基材の加工対象面にレーザ光を一定の条件で照射することにより、レーザ光照射部分に結晶化した酸化チタンが含まれる微細な凸部群を形成することができる。また、レーザ光の照射条件を変えることにより凸部の形状を含めた表面の微細な形状を制御することができる。
なお、特許文献6の実施例で実施されているレーザ光の照射のように、照射エネルギを大きくし過ぎた場合には、分相した酸化チタンも蒸発するので、レーザ照射部は平坦面になり、微細構造を形成することができない。また、レーザ光の照射エネルギが小さ過ぎる場合には、チタン含有ガラス基材表面温度が充分上昇せず、分相が起こらないので、微細構造を形成することができず平坦面のまま残ることになる。
本発明の請求項1に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明1)では、上記目的を達成するために、チタン含有ガラス基材の表面に設定された加工対象面に、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から2J/cmの範囲、1パルス当たりの照射時間が1〜100nsec、パルス数が1〜10000のレーザ光を照射して、加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造を形成させる。
このように所定のレーザ光を照射して微細構造を形成させるため、例えば特許文献1や特許文献2に記載の場合のように酸化チタンを含む膜(以下、酸化チタン膜ともいう)を成膜する必要がなく、かつ、レーザ光はレンズ等を使用して集光できるので、微小な領域の加工対象面であっても選択的に照射することができる。したがって、酸化チタン膜を成膜した後にエッチング処理するといった煩雑な工程を経ることなく、加工対象面の必要な部分のみに、レーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造を形成することができる。また、特許文献6の実施例で実施されているレーザ光の照射の場合のように、照射エネルギが大き過ぎることにより分相した酸化チタンも蒸発し、加工対象面が平坦面になるということがなく、レーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造を所望の構造に形成することができる。
ここで、本発明における「レーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造」との表現について説明する。まず、「レーザ光の照射部分に形成される照射形状」とは、レーザ光の断面形状やマスクを用いて投影される意図的なパターン等のことである。例えば、レーザ光の断面形状とは、円、楕円、矩形等であり、マスクを用いて投影される意図的なパターンとは、文字や図形等である。つまり、「レーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造」とは、前述の円や楕円、矩形、および文字や図形等の照射形状そのものではなく、それら照射形状内に形成される微細構造のことである。例えば、照射形状が円の場合、レーザ光が照射された加工対象面には、アブレーションまたは蒸発により、その円に近い形状の加工痕が形成され、その加工痕の範囲内に、本発明における微細構造が形成される。この微細構造は、例えば、不規則に形成される凸部群等である。
本発明の請求項2に記載の製造方法(本発明2)によれば、本発明1において、前記チタン含有ガラス基材に加工対象面を複数個設定し、前記レーザ光の照射条件を加工対象面ごとに個別に設定することができる。この場合には、加工対象面ごとに所望の微細構造を形成することができる。すなわち、例えば1つの加工対象面に所定のレーザ光を照射して所定の構造(例えば独立に存在する凸部からなる凸部群を有する構造)を形成した後、照射条件を変更して隣接する別の加工対象面にレーザ光を照射して、別の所定の構造(例えば山脈状または網目状に存在する凸部からなる凸部群を有する構造)を形成することができる。したがって、レーザ光照射という1つのプロセスの中で、複数の加工対象面を連続して形成することができる。また、マスクパターンを通してレーザ光を照射すれば、1回のレーザ光照射プロセスで、複数の微細構造を形成することができる。
本発明の請求項3に記載の製造方法(本発明3)によれば、本発明1または2において、表面微細加工が施される前記チタン含有ガラス基材の加工対象面およびその付近のチタン含有率を、酸化チタンに換算して1≦TiO≦45(モル%)とする。この場合には、低加工閾値のチタン含有ガラス基材を使用することになるため、均一な微細構造の形成を容易に行なうことができ、表面形状の制御も容易に行なうことができる。
本発明の請求項4に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明4)によれば、本発明1〜3における前記微細構造の形成を、不活性ガス雰囲気下、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から0.7J/cmの範囲のレーザ光を照射することにより行なうことができ、前記微細構造を幅10μm以下の凸部からなる凸部群を有する構造にすることができる。
前記幅10μm以下の凸部からなる凸部群とは、レーザ共焦点顕微鏡写真やSEM写真等の画像を用いて、例えば、任意に選んだ10箇所の凸部の幅の平均値が10μm以下になる凸部からなる凸部群のことである。これらの写真の撮影倍率や分解能等の条件は、微細構造の状態を観察可能な条件を適宜選ぶことができる。例えば、倍率2000倍、高さ分解能30nmの条件で測定したレーザ共焦点顕微鏡写真を用いて求めることができる。
また、本発明の請求項5に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明5)によれば、本発明4に記載の凸部群を有する構造を、独立に存在する凸部からなる凸部群を有する構造にすることができる。
また、本発明の請求項6に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明6)によれば、本発明4における凸部群を有する構造を、山脈状または網目状に存在する凸部からなる凸部群を有する構造にすることができる。
前記本発明4〜6では、前記レーザ光の照射条件で表面微細加工チタン含有ガラス基材を製造するため、本発明4〜6に記載の凸部群を有する構造を形成することができる。
本発明の請求項7に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明7)によれば、本発明4〜6における不活性ガス雰囲気を、不活性ガスフロー雰囲気にすることができる。このように、不活性ガスフロー雰囲気で表面微細加工チタン含有ガラス基材の加工を行なうため、チタン含有ガラス基材表面から蒸発する成分の除去を速やかに行なうことができ、凸部群を有する構造の形成・制御を行ないやすくすることができる。
また、本発明の請求項8に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明8)によれば、本発明4〜7における不活性ガスとしてヘリウムガスまたは窒素ガスを使用することができる。前記のごとく不活性ガスを限定することにより、本発明における凸部群を有する構造の形成・制御をさらに行ないやすくすることができる。また、チタン含有ガラス基材表面での化学変化を抑制することができる。特にヘリウムガスを使用する場合、例えば後述する図5〜図7に示すように、凸部群を有する構造の形成・制御を、照射するパルス数を変えるという簡単な方法のみで行なうことができ、得られる構造を凸部群を有する構造が明確に発現したものにすることができる。
本発明の請求項9に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明9)によれば、本発明4〜8において、前記凸部群に含まれる凸部のチタン含有率を、凸部周囲の谷部のチタン含有率よりも高くすることが好ましい。
また、本発明の請求項10に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明10)によれば、本発明4〜9において、前記凸部を、表面に結晶化酸化チタンを含有させたものにするのがさらに好ましい。
さらに、本発明の請求項11に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明11)によれば、本発明10において、前記結晶化酸化チタンをルチル型酸化チタンとするのが特に好ましい。
本発明9〜11では、凸部のチタン含有率を凸部周囲の谷部より高くするため、また、凸部表面に酸化チタンを含有させ、該酸化チタンをルチル型酸化チタンとするため、製造されたチタン含有ガラス基材に酸化チタンに基づく高い光触媒活性を保持させることができる。
本発明の請求項12に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明12)によれば、本発明1〜11において、前記加工対象面に前記レーザ光を照射した後、さらにエッチング処理を施す。この結果、加工対象面の表面形状および特性を、エッチング処理によりさらに制御することができる。例えば結晶化酸化チタンが高い含有率で含まれている凸部を有する構造が形成された加工対象面にエッチング処理を施す際に、酸化チタンを除去しやすいエッチング液を使用すれば凸部を小さくすることができ、逆に凸部周囲の谷部を除去しやすいエッチング液を使用すれば谷部をより深くすることによって凸部の高さを高くすることができる。また、上記エッチング処理においてエッチング時間を長くすることにより、凸部周囲の谷部等に溝を有する構造にすることができる。また、前記レーザ光を空気中で照射した後エッチング処理するか、あるいは、前記レーザ光の照射エネルギを高くして、このレーザ光を不活性ガス雰囲気下で照射した後エッチング処理するようにすれば、加工対象面を、凸部が形成されない平坦な面に溝が形成された構造にすることができる。
本発明の請求項13に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明13)は、本発明12において前記エッチング処理により形成される微細構造を、幅10μm以下の溝を有する構造にしたものである。
前記幅10μm以下の溝とは、レーザ共焦点顕微鏡写真やSEM写真等の画像を用いて、例えば、任意に選んだ10箇所の溝の幅の平均値が10μm以下になる溝のことである。これらの写真の撮影倍率や分解能等の条件は、微細構造の状態を観察可能な条件を適宜選ぶことができる。例えば、倍率2000倍、高さ分解能30nmの条件で測定したレーザ共焦点顕微鏡写真を用いて求めることができる。
本発明の請求項14に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法(本発明14)によれば、本発明1〜13において使用するレーザ光を、エキシマレーザによるレーザ光にするのが好ましい。この場合には、微細構造の形成を行ないやすく、形成される微細構造の形状・特性の制御も行ないやすい。
本発明の請求項15に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材(本発明15)は、チタン含有ガラス基材の表面に設定された加工対象面に、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から2J/cmの範囲、1パルス当たりの照射時間が1〜100nsec、パルス数が1〜10000のレーザ光を照射することにより、または該レーザ光の照射後さらにエッチング処理を施すことにより、加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造が形成されてなる表面微細加工チタン含有ガラス基材である。この場合、表面微細加工チタン含有ガラス基材の表面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造が形成され、該微細構造として凸部群を有する構造や溝を有する構造が形成されるため、表面積を大きくすることができる。その結果、例えばマイクロチャンネルチップ、フィルタ、微小流路表面の濡れ性制御等の微細構造が凸部群を有する構造の場合の用途、および微小流路表面の濡れ性制御等の微細構造が溝を有する構造の場合の用途等に使用することができる。
本発明の請求項16に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材(本発明16)によれば、本発明15において、微細構造が形成される前記チタン含有ガラス基材の加工対象面およびその付近のチタン含有率が、酸化チタンに換算して1≦TiO≦45(モル%)であるのが好ましい。
本発明の請求項17に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材(本発明17)によれば、本発明15または16における微細構造が幅10μm以下の微細構造であることが好ましい。
また、本発明の請求項18に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材(本発明18)によれば、本発明15〜17における微細構造が、独立に存在する凸部からなる凸部群を有する構造、山脈状または網目状に存在する凸部からなる凸部群を有する構造、または溝を有する構造であるのが好ましい。
これらの場合には、該微細構造を形成した部分に特定の構造や寸法の微細構造が形成され、表面積をさらに大きくすることができる。その結果、例えばマイクロチャンネルチップ、フィルタ、微小流路表面の濡れ性制御等で微細構造が幅10μm以下の微細構造であることが望まれる用途に好適に使用することができる。
また、本発明の請求項19に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材(本発明19)によれば、本発明18において、前記凸部のチタン含有率が、凸部周囲の谷部よりも高いチタン含有率であることが好ましい。
さらに、本発明の請求項20に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材(本発明20)によれば、本発明18または19において、前記凸部が表面に結晶化酸化チタンを含有するのが好ましい。
また、本発明の請求項21に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材(本発明21)によれば、本発明20において、前記結晶化酸化チタンがルチル型酸化チタンであるのが好ましい。
本発明19〜21の表面微細加工チタン含有ガラス基板は、前記のごとくチタン含有率が限定されているので、形成された凸部は周囲の谷部よりもチタン含有率が高くなる。そして、凸部に結晶化酸化チタンが含有され、該酸化チタンがルチル型酸化チタンの場合には、特に酸化チタンに基づく高い光触媒活性を利用する用途、例えば光触媒反応を利用した反応、分解機能を有する微小流路等の用途に好適に使用することができる。
本発明の請求項22に記載のマイクロチャンネルチップ(本発明22)は、表面に微小流路が形成されたチャンネル部材と、該チャンネル部材の蓋部材とからなるマイクロチャンネルチップであって、該チャンネル部材が本発明15〜21のいずれかに記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材からなり、少なくとも前記微小流路の内表面の所定の位置に、チャンネル部材に用いた表面微細加工チタン含有ガラス基材に形成された微細構造が設けられている。
また、本発明の請求項23に記載のマイクロチャンネルチップ(本発明23)によれば、本発明22において、前記蓋部材が、本発明15〜21のいずれかに記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材からなり、前記チャンネル部材に設けられた微小流路の内表面の微細構造が設けられた位置に対応する前記蓋部材の位置に、蓋部材に用いた表面微細加工チタン含有ガラス基材に形成された微細構造が設けられている。
これらの場合には、マイクロチャンネルチップの微小流路の少なくとも一部に本発明15〜21のいずれかに記載の微細構造が設けられているため、マイクロチャンネルチップに微細構造が設けられていることによる効果、たとえば微小流路に流れる流体を混合する効果、該微細構造に光を照射した場合に光触媒として作用する効果等の効果が得られるマイクロチャンネルチップを得ることができる。
本発明における凸部の幅の求め方を図1に示す。図1(a)は、独立に存在する凸部101であり、円に近い形状を有している例である。このような凸部101の幅Wは、外接する円100の直径で近似することができる。図1(b)は、同じく独立に存在する凸部102であるが、細長い形状を有している例である。このような凸部102の幅Wは、中央付近の幅とすることができる。図1(c)は、同じく独立に存在する凸部103であり、細長い形状を有しているが、分岐を伴っている例である。このような場合、各枝をそれぞれ1つの凸部と見なし、凸部の幅は、分岐部分を避けた各枝の中央付近の幅、この場合3つの枝それぞれの中央付近の幅W31、W32、W33とすることができる。
ここで、凸部の輪郭は、前記の画像から目視で判断してもよいし、画像処理の手法を用いて、例えば、2値化等の手法により判断してもよい。また、幅の測定は、画像と同じ倍率の目盛との比較により求めてもよいし、画像処理の手法を用いて、例えば、粒子の直径を測定する手法や、2点間の距離を測定する手法等を用いてもよい。これらの画像処理の手法は、周知の技術を適宜用いることができる。
前記凸部が山脈状または網目状に存在し、もはや独立に存在していない場合、前記の図1(c)の場合と同様にして幅を測定することができる。もし、凸部が山のように斜面を形成しており、輪郭の識別が困難な場合は、凸部の両側に隣接する2つの谷部の間隔を幅と見なすことができる。また、谷部の識別が困難な場合は、隣り合う凸部との間隔を幅の代わりに用いてもよい。同軸落射照明を用いて撮影したレーザ共焦点顕微鏡写真の場合、凸部の頂上の連なりや谷部の連なりが明るく観察されるので、識別しやすくなる。
また、微細構造が溝である場合も、前記凸部と同様にして、幅を測定することができる。
さらに、前記チタン含有ガラス基材とは、チタン含有ガラス基材そのもののみならず、チタン含有ガラス基材の表面に例えばパターン化加工を施したもの等をも含む概念である。
また、前記チタン含有ガラス基材の加工対象面およびその付近のチタン含有率とは、深さについては、加工を行なうチタン含有ガラス基材の表面から少なくとも加工を行なう深さ+500μmまでの深さ、広さについては、少なくともレーザ光を照射する形状の外縁+500μmまでの広さまでのチタン含有率のことである。通常は基材全体にチタンを含有したガラス基材を用いることが、チタン含有ガラス基材の製造の点から望ましい。
さらに、凸部群を有する構造における「有する」とは、凸部群を必ず有するが、他の構造については有してもよく、有さなくてもよいということである。溝を有する構造等における「有する」も同様の意味である。
本発明の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法によれば、チタン含有ガラス基材の加工対象面にレーザ光を照射することによって、レーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造であって、該照射形状の上に形成される微細構造を、該微細構造の表面形状を制御して形成することができる。また、レーザ光はレンズ等を使用して集光できるので、微小な加工対象面に対しても選択的にレーザ光を照射することができ、必要な部位のみに微細構造を、表面形状を制御して形成することができる。さらに、マスクパターンを通してレーザ光を照射すれば、1回のレーザ光照射プロセスで、複数の部位に微細構造を、表面形状を制御して形成することができる。また、複数の加工対象面に個別にレーザ光の照射条件を制御することによって、加工対象面ごとに個別に微細構造を、表面形状を制御して形成することができるので、レーザ光照射という1つのプロセスの中で、複数の加工対象面を連続して加工することができる。さらに、レーザ光を照射することによって表面形状が制御された加工対象面にエッチング処理を施すことによって、加工対象面の表面形状をさらに制御することができる。また、チタン含有ガラス基材の加工対象面にレーザ光を照射するだけで、結晶化した酸化チタンが含まれる微細な凸部を形成することができるので、従来技術のように酸化チタン膜を成膜した後に不要部分を除去するためにエッチング処理するといった煩雑な工程を経ることなく、必要な部位である加工対象面のみに結晶化した酸化チタンが含まれる微細な凸部を有する凸部群を形成することができる。
また、本発明の表面微細加工チタン含有ガラス基材によれば、表面微細加工チタン含有ガラス基材の表面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造が形成され、該微細構造として凸部群を有する構造や溝を有する構造が形成されるため、表面の凸部群を有する構造や溝を有する構造を利用した用途や、凸部群の凸部に含まれている酸化チタンの光触媒としての機能を利用した用途等に使用することができる。
さらに、本発明のマイクロチャンネルチップによれば、チャンネル部材の微小流路に形成した凸部群を有する構造または網目状の溝を有する構造を利用して、微小流路を流れる被処理流体の処理を行なうことができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法)
本実施形態においては、チタン含有ガラス基材の表面に設定された加工対象面にレーザ光を照射することにより、レーザ光の照射部分に照射形状に応じた形状が形成されるとともに、該照射形状の中に微細構造が形成される。
本実施形態に使用されるチタン含有ガラス基材は、チタンを酸化チタン(TiO)に換算(以下のチタン量はすべて酸化チタン(TiO)換算量である)して1モル%以上、好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上で、45モル%以下、好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下含有するガラスから形成された基材である。酸化チタンの含有率が前記範囲内である場合には、チタン含有ガラス基材をレーザ加工する場合の加工閾値が低くなるため好ましい。酸化チタンの含有率が高くなり過ぎると、チタン含有ガラス基材の製造において、分相が起こりやすく、また、酸化チタンの結晶化が起こりやすくなるため、高品質のチタン含有ガラス基材を製造しにくくなる。一方、酸化チタンの含有率が低くなり過ぎると、レーザ加工する場合の加工閾値が高くなり、加工しにくくなる。
TiO以外の成分としては、例えばSiO、B等のチタン含有ガラス基材を構成する主成分、Alや、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO等のチタン含有ガラス基材を構成する副成分があげられる。
前記チタン含有ガラス基材を構成する主成分のうちのSiOは、チタン含有ガラス基材を構成する成分として使用される成分であり、B等はチタン含有ガラス基材の性質を改善する必要がある場合にSiOとともに使用される成分である。
前記Alは、必要によりTiOとともに使用される成分である。
前記TiOおよびTiO以外の成分の使用割合としては、例えば
20≦(SiO+B)≦79(モル%)
1≦(Al+TiO)≦45(モル%)
5≦(LiO+NaO+KO+RbO+CsO+MgO+CaO+SrO+BaO)≦60(モル%)
但し、1≦TiO≦45(モル%)
であるのが好ましく、さらに
30≦(SiO+B)≦70(モル%)
5≦(Al+TiO)≦45(モル%)
10≦(LiO+NaO+KO+RbO+CsO+MgO+CaO+SrO+BaO)≦35(モル%)
但し、5≦TiO≦45(モル%)
であるのが好ましく、また、
30≦SiO≦55(モル%)
0≦Al≦20(モル%)
10≦TiO≦40(モル%)
0≦MgO≦35(モル%)
であるのが好ましい。なお、前記成分の使用割合はすべて酸化物に換算した割合である。また、以下の成分の使用割合もすべて酸化物に換算した割合である。
本実施形態において、表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造のために照射されるレーザ光は、1パルス当たりの照射エネルギがチタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値以上で、上限は2J/cmである。凸部群を有する構造が独立に存在する凸部からなる凸部群(以下、独立に存在する凸部群ともいう)である場合および山脈状または網目状に存在する凸部からなる凸部群(以下、山脈状または網目状に存在する凸部群ともいう)である場合には、前記上限が0.7J/cm以下であるのが、加工対象面に幅10μm以下の凸部からなる凸部群を有する構造(以下、幅10μm以下の凸部群を有する構造ともいう)を形成させることができる点から好ましい。特許文献6に記載のレーザ光照射の場合のように1パルス当たりの照射エネルギが大き過ぎる場合には、レーザ光を照射しても加工対象面に幅10μm以下の凸部群を有する構造を形成させることはできない。
前記凸部群を有する構造が独立に存在する凸部群である場合として、凸部の裾部が互いに接せず独立に存在する構造、裾部が互いに接するまたは重なり合うように存在する凸部を有する構造および前記2つの構造が混在した構造があげられる。また、前記凸部群を有する構造が山脈状または網目状に存在する凸部群である場合として、凸部群が山脈状に存在する構造、凸部群が網目状に存在する構造および前記2つの構造が混在した構造があげられる。
前記レーザ光の1パルス当たりの照射時間は、使用する装置にもよるが、通常1〜100nsec程度になるが、好ましくは5〜40nsec程度である。
また、前記レーザ光の1パルス当たりの照射時間は、使用するチタン含有ガラス基材に対するレーザ光の透過率によるが、透過率が60%以下のレーザ光の場合、1nsec/パルス以上、好ましくは10nsec/パルス以上で、100nsec/パルス以下、好ましくは50nsec/パルス以下であるのが好ましい。例えばKrFエキシマレーザ光(248nm)の場合、20〜40nsec/パルスであるのがさらに好ましく、XeClエキシマレーザ光(308nm)の場合、20〜40nsec/パルスであるのがさらに好ましい。なお、1パルス当たりの照射時間とは、パルス強度最大値を1とした場合、パルス強度が0.5以上の時間のことである。
さらに、前記レーザ光のパルス数は、形成しようとする表面構造によって異なるため一概には規定できないが、一般に1以上、10000以下の範囲から選ばれる。不活性ガス雰囲気下でレーザ光を照射する場合、レーザ光のパルス数が多くなるにしたがって凸部が高くなり、あるパルス数を超える頃になると、もはや凸部の高さはほとんど増加しなくなる。これ以上レーザ光のパルス数を多くしても、凸部はほとんど変化しなくなる。
本発明者らの実験結果からすると、加工対象面に微細構造が形成されるか否かは、1パルス当たりの照射エネルギおよび1パルス当たりの照射時間で規定されるある一定の値を超えるか否かによる。この値が小さ過ぎる場合には、加工対象面に変化が起こらず、適当な範囲の場合には、表面の分相・一部成分の蒸発が起こり凸部群が形成され、この値が大き過ぎる場合には、表面の全成分の蒸発が起こり凸部群が形成されない。そして、前記値が適当な場合、パルス数が増加するにしたがって凸部群が成長し、凸部群に含まれる凸部が独立に存在する構造→凸部群に含まれる凸部が山脈状または網目状に存在する構造へと変化し、ある一定のパルス数以上になると、凸部群の成長が止まり、微細構造はほとんど変化しなくなる。すなわち、レーザ光の照射により形成される微細構造は、チタン含有ガラス基材の組成、レーザ光1パルス当たりの照射エネルギ、1パルス当たりの照射時間およびパルス数、レーザ光を照射する雰囲気により決定されるものと考えられる。したがって、これらの条件を変更することにより、各種凸部群を有する構造を形成することができるものと考えられる。
さらに、前記レーザ光の繰り返し周波数(パルス周波数)は、0.1Hz以上、好ましくは1Hz以上で、1kHz以下、好ましくは200Hz以下であるのが好ましい。例えばレーザ光がKrFエキシマレーザ光(248nm)の場合、2〜8Hzであるのが好ましく、XeClエキシマレーザ光(308nm)の場合も、2〜8Hzであるのが好ましい。
前記レーザ光としては、例えばエキシマレーザ(XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm))、YAGレーザ(基本波(1064nm)、第2高調波(532nm)、第3高調波(355nm)、第4高調波(266nm))等からのレーザ光を使用することができる。これらのうちでは、エキシマレーザ(XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm))光が大面積の一括加工が可能な点から好ましい。
また、前記加工対象面へのレーザ光の照射は、例えば大気(空気)中や、窒素ガス雰囲気下、ヘリウムガス雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下、減圧下(例えば0.1〜100hPaの減圧下)等で行なうことができる。大気中での照射は、照射後、エッチング処理を施すことにより溝状の構造を形成するのに適し、窒素ガス雰囲気下およびヘリウムガス雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下、特にヘリウムガス雰囲気下での照射は、凸部群を有する構造(凸部が独立に存在する凸部群である構造および凸部が山脈状または網目状に存在する凸部群である構造等)の形成に適する。なお、凸部群を有する構造を形成した加工対象面にエッチング処理を施すことにより、凹凸を制御した表面構造にすることができ、さらにエッチング処理を施すことにより、溝状の表面構造にすることができる。
前記窒素ガス雰囲気下やヘリウムガス雰囲気下における雰囲気下とは、窒素ガスやヘリウムガスを加工対象面にフローさせながら、または窒素ガスやヘリウムガスの中でという意味である。窒素ガスやヘリウムガスを加工対象面にフローさせながら表面加工を行なう場合には、レーザ光照射により蒸発するガラス成分が除去されやすい、表面の化学変化が起こりにくい等の点から好ましい。
前記のごとくチタン含有基材の表面に設定された加工対象面に所定のレーザ光が照射されるが、レーザ光のスポットサイズは、例えばKrFエキシマレーザの場合、レーザ出射口から約4mの位置で、有効範囲が約10×10mm□のものがあげられ、XeClエキシマレーザの場合、レーザ出射口から約1mの位置で、有効範囲が約5×5mm□のものがあげられる。また、レーザ光のビーム強度を均一化する必要がある場合には、ビームホモジナイザを適宜使用してもよい。加工対象面に照射する場合は、これらのレーザ光をレンズ系により拡大または縮小し、また、必要に応じマスクと組み合わせることにより、任意の形状とすることができる。
このようにして行なわれる加工により、加工面積は、例えば幅10×10μmから加工装置の可動範囲内とすることができ、深さ0.01〜100μm程度の加工穴または加工溝を形成することができ、該加工穴または加工溝の表面には、例えば幅10μm以下の微細構造(例えば幅10μm以下の凸部群を有する構造)が形成される。前記幅10μm以下の微細構造は、例えばその微細構造を形成する凸部群が全加工面積の10〜90%の範囲を占めることができる。
前記凸部群を有する構造が、独立に存在する凸部群の内の凸部がそれぞれ独立に存在する場合、通常、凸部の直径は0.1〜5μm程度、高さは0.01〜1μm程度、全加工面積に占める割合は10〜50%程度、100μm□に存在する凸部の数は10〜10個程度になる。
また、前記凸部群を有する構造が、独立に存在する凸部群の内の凸部が互いに接するまたは重なり合うように存在する場合、通常、幅数μm、凸部の連結長さは1〜100μm程度、高さ(谷部の底と凸部の頂上との差)は0.1〜10μm程度、全加工面積に占める割合は50〜70%程度、100μm□に存在する凸部の数は10〜10個程度になる。
さらに、前記凸部群を有する構造が、山脈状または網目状に存在する凸部群である場合、通常、山脈状または網目状を形成する凸部の幅は数μm程度、高さ(谷部の最も低い底と凸部の頂上との差)は1〜10μm程度、全加工面積に占める割合は70〜90%程度になる。
前記チタン含有ガラス基材に微細構造が形成される加工対象面が複数個設定されている場合、レーザ光の照射条件を加工対象面ごとに個別に設定することができる。
このようにして加工対象面に形成された凸部のチタン含有率は、凸部周囲の谷部のチタン含有率よりも高くなり、該凸部の表面には結晶化酸化チタンが含有される。前記結晶化酸化チタンは、ラマン散乱のピーク位置が酸化チタンのルチル型と一致することから、ルチル型酸化チタンであることが確認されている。また、該酸化チタンの含有率が、凸部周囲の谷部の含有率よりも高いことが確認されている。
前述のエッチング処理について、詳細に説明する。
前記加工対象面にエッチング処理を施す際に加工対象面が複数ある場合、すべての加工対象面に同一のエッチング処理を施してもよく、個々の加工対象面に異なるエッチング処理を施してもよい。個々の加工対象面に異なるエッチング処理を施す場合、エッチング処理を施す加工対象面以外の基材表面をマスクし、エッチング処理を行なう等の方法によればよい。
前記エッチング処理に使用するエッチング液としては、形成された凸部群を有する構造の谷部を重点的にエッチングし、谷部をより深くすることによって凸部の高さを高くしたい場合には、谷部に多く含まれる酸化チタン以外の成分をエッチングしやすいエッチング液、例えばフッ化水素(HF)水溶液(フッ酸)、フッ酸と他の酸の混合物等を使用すればよい。
エッチングを行なう条件には特別な限定はなく、微細構造が所望の形状に形成される条件を採用すればよい。
凸部群が形成されない条件、例えば、空気中で、所定のレーザ光を照射した場合や不活性ガス雰囲気下で特定の照射エネルギのレーザ光を加工対象面に照射した場合等にも、溝を有する構造を形成することができる。このことから、加工対象面に確認困難なマイクロクラックが形成していることがわかる。
凸部群を有する構造を形成した加工対象面にエッチング処理を行なうことにより形成される溝を有する構造について述べる。凸部群が、あまり発達していない独立に存在する凸部群である場合、エッチング前後のレーザ共焦点顕微鏡写真を見比べても、凸部群の位置と溝の位置との関連性は明確とは言えない。この場合の溝を有する構造の形成は、前記マイクロクラックを基にしていると考えられる。
一方、凸部群が、発達した凸部群(凸部が互いに連結した細長い凸部群や、凸部が山脈状または網目状に存在する凸部群)である場合、それらの凸部や谷部に沿った溝やそれらに沿っていない溝が存在している。凸部や谷部に沿った溝は、前述のように、酸化チタンの含有率の差によりエッチングの度合いに差がついたためと考えられ、凸部や谷部に沿っていない溝は、凸部群の下に形成されていた前記マイクロクラックを基にしていると考えられる。
前記溝を有する構造としては、例えば、網目状等の幅10μm以下の溝を有する構造があげられる。
前記のごとく、エッチングにより表面微細加工チタン含有ガラス基材の表面の構造を、ユーザが所望する形状により近く合わせることができるので、表面微細加工チタン含有ガラス基材の汎用性が向上し、利用範囲の拡大を図ることができる。
(表面微細加工チタン含有ガラス基材)
本発明15の表面微細加工チタン含有ガラス基材は、チタン含有ガラス基材の表面に設定された加工対象面に、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から2J/cmの範囲、1パルス当たりの照射時間が1〜100nsec、パルス数が1〜10000のレーザ光を照射することにより、または該レーザ光の照射後さらにエッチング処理を施すことにより、加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造が形成された表面微細加工チタン含有ガラス基材である。
前記微細構造が、前記レーザ光を照射することにより、または該レーザ光の照射後さらにエッチング処理を施すことにより、加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造として形成されたものである限り、特に限定はない。例えば表面微細加工チタン含有ガラス基材をマイクロチャンネルチップの製造に使用する場合、マイクロチャンネルの微小流路の一部に前記微細構造が設けられていれば、チタン含有ガラス基材の表面に前記微細構造が形成されていることになる。
前記微細構造が、例えば幅10μm以下の微細構造、例えば凸部群を有する構造であり、そのうちでも独立に存在する凸部群を有する構造または山脈状または網目状に存在する凸部群を有する構造にすることができる。このようにすることにより表面積を大きくすることができる。また、該凸部のチタン含有率が、凸部周囲の谷部のチタン含有率よりも高くなり、該凸部の表面には、結晶化した酸化チタン、特にルチル型酸化チタンが多く含まれている層が形成されている。この結果、該表面の凹凸形状を利用した用途および凸部表面に多く含まれている酸化チタンの光触媒としての機能を利用した用途に好適に用いることができる。例えば、本発明の表面微細加工チタン含有ガラス基材を使用してマイクロチャンネルチップを製造した場合、被処理流体である溶液が流れる微小流路の壁面に微細な凸部群を形成することができる。この際、2つの微小流路を流れる異なる溶液を混合して1つの微小流路に流すように構成したマイクロチャンネルチップにおいて、異なる溶液が別々に流れる2つの微小流路が合流する合流部の下流側微小流路の表面に微細加工を施しておけば、微小流路の壁面に形成された微細な凸部群によって溶液に乱流が生じる。この結果、2種の溶液の混合を促進することができる。また、微小流路を流れる溶液に所定の化学反応を起こさせるように構成されたマイクロチャンネルチップの場合、微小流路の表面の適当な部位に表面微細加工を施し、さらに要すれば光(紫外線)を照射する。該光(紫外線)が照射されると、表面微細加工部分に含まれている酸化チタンが光触媒として機能するため、溶液の化学反応を促進させることができる。光触媒機能が必要な微小流路と混合による反応のみが必要な微小流路とが近接しており、光(紫外線)照射と光(紫外線)非照射との区別が困難である場合、後者を網目状の溝とすることで光照射の影響を受けないようにすることができる。
(マイクロチャンネルチップ)
本発明22のマイクロチャンネルチップは、表面に微小流路が形成されたチャンネル部材と、該チャンネル部材の蓋部材とからなるマイクロチャンネルチップであって、該チャンネル部材が発明15〜21のいずれかに記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材からなり、少なくとも前記微小流路の内表面の所定の位置に、チャンネル部材に用いた前記表面微細加工チタン含有ガラス基材に形成されている微細構造が設けられているマイクロチャンネルチップである。
また、本発明23のマイクロチャンネルチップは、発明22における前記蓋部材が、発明15〜21のいずれかに記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材からなり、前記チャンネル部材に設けられた微小流路の内表面の微細構造が設けられた位置に対応する位置に、蓋部材に用いた前記表面微細加工チタン含有ガラス基材に形成されている微細構造が設けられているマイクロチャンネルチップである。
前記チタン含有ガラス基材の表面に形成された微小流路としては、例えば幅数十μm〜百数十μm、深さ数十μm〜百数十μm程度の溝部が一般的である。
前記溝部から形成される微小流路は、マイクロチャンネルチップの用途に応じて適宜選ばれるため、特に限定されるものではないが、例えば2種の液を混合・反応させる場合、図2、図3、図4に示すごとき微小流路を使用することができる。
図2は、図3に示すマイクロチャンネルチップ1のI‐I断面説明図であり、図4(a)に示す溝部内に微細構造が形成されたチタン含有ガラス基材(チャンネル部材2)上に、図4(b)に示す蓋部材3を重ね、マイクロチャンネルチップ1にした図である。図2には、さらに、第1の供給口4、取出口6、第1の供給用微小流路10、処理用微小流路12が示されている。
また、図3はマイクロチャンネルチップ1の平面説明図であり、図3には、第2の供給口5、第2の供給用微小流路11、溝部内に形成された微細構造部13が示されている。さらに、図4(a)には、第1の供給用微小流路用溝部7、第2の供給用微小流路用溝部8、処理用微小流路用溝部9が示されている。
図3に示すマイクロチャンネルチップ1を使用する場合、第1の供給口4から供給された第1の流体および第2の供給口5から供給された第2の流体が合流した後、処理用微小流路12に設けられた微細構造部13に存在する微細構造(凸部)によって合流液に乱流が生じ、混合が促進される。また、微小流路を流れる合流液に所定の化学反応を起こさせるように構成したマイクロチャンネルチップの場合には、微小流路の表面の適当な位置に微細構造(凸部)を形成し、さらに要すれば該位置に光(紫外線)を照射する。これによって、微細構造に含まれている酸化チタンが光触媒として機能するので、合流液の化学反応を促進することができる。混合・反応後、取出口6から取り出される。
前記微小流路内を流れる被処理流体としては、例えば生物の血液、体液などや、薬品、試薬などを含む溶液や、微小な固体を含む液体や気体等があげられるが、これらに限定されるものではない。
前記マイクロチャンネルチップの説明は、液体の混合・反応に使用する場合の説明であるが、この他に、微小流路の一部に局所的に微細構造を形成し、その表面形状の違いにより流体の流れを変化させたり、抵抗を変化させたりする、表面への吸着性を制御する、微小流路壁面の撥水性あるいは親水性を制御する、光スイッチバイオセンサあるいは光ポンプの活性層とする、高い隆起(バンプ)状凸部群を形成することができる場合、微小流路中に設けるフィルタとして使用する、微小流路の殺菌を行なう部位とする等の用途への利用も期待されている。また、化学反応を微小流路中で行なうケミカルチップ、DNA、蛋白質他生体系の物質の抽出、分析を行なうバイオチップ、気相では、有害ガスの分解・分析などに使用される。その他、ラマン散乱、蛍光吸収等の光学測定を微小流路中で行なう分析用チップとして使用される。
なお、本発明22〜23は、表面微細加工したチタン含有ガラス基材をマイクロチャンネルチップの用途に使用した例であるが、マイクロチャンネルチップ以外の用途としては、チタン含有ガラス基材表面に光活性を付与する必要があるさまざまな用途、例えば反応容器等チタン含有ガラス基材表面に微細な凹凸を形成する必要があるさまざまな用途、例えば散乱板、親水性や疎水性の調整が必要な用途等があげられる。
次に本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
はじめに、使用したチタン含有ガラス基材の組成、使用したレーザの種類および照射条件、エッチング条件、得られた試料の評価方法について説明する。
1 使用したチタン含有ガラス基材の組成
なお、以下の説明においてチタン含有ガラス基材を単にガラスという。
2 使用したレーザの種類
(1)ラムダ・フィジックス社製EGM−201MSCとCOMPex201を使用し、光源としてKrFエキシマレーザおよびXeClエキシマレーザを使用した。
(2)照射条件
(i)KrFエキシマレーザ
照射エネルギ(J/cm):0.2〜1の範囲から選択
周波数 :5Hz
照射時間(FWHM):30nsec/パルス
パルス数(回) :1〜1000の範囲から選択
雰囲気 :ヘリウムガスフロー雰囲気、窒素ガスフロー雰囲気、空気中
から選択
加工面積 :800×800μm
ビームホモジナイザ :MicroLas製ValioLas
スポットサイズ :ビームホモジナイザを使用してビーム強度を均一化後、レー
ザ出射口から約4mの位置で、有効範囲が約10×10mm
(ii)XeClエキシマレーザ
照射エネルギ(J/cm):0.2〜0.8の範囲から選択
周波数 :5Hz
照射時間(FWHM):30nsec/パルス
パルス数(回) :500
雰囲気 :ヘリウムガスフロー雰囲気
加工面積 :250×250μm
ビームホモジナイザ :なし
スポットサイズ :レーザ出射口から約1mの位置で、有効範囲が約5×5mm
(iii)加工対象面に照射する場合は、これらのレーザ光をレンズ系により拡大または縮小し、また、必要に応じマスクと組み合わせることにより、任意の形状とする。
3 エッチング条件
1%HF水溶液を室温で使用し、1〜4分間の範囲から選択した時間実施。
4 得られた試料の評価方法
(1)表面の形状観察
(i)レーザ共焦点顕微鏡(キーエンス社製VK−8500)観察により行なった。
測定条件:200〜2000倍で観察した。
独立に存在する凸部群の直径および山脈状または網目状に存在する凸部群の幅および高さは、2000倍測定条件で、高さ分解能30nm、10箇所の測定部について加算平均することにより求めた。
(ii)SEM(キーエンス社製VE−7800)観察により行なった。
(2)表面の組成・構造観察
(i)顕微ラマン散乱分析
顕微ラマン散乱分析装置(日本分光(株)製NRS−1000)を使用して加工表面の相状態を調べた。
測定条件:光源cwNd:YAG2倍波(波長532nm、ビーム径約1μm)を使用。
(ii)EPMA分析
EPMA分析装置(日本電子(株)製JXA−8200)を使用して加工表面の組成割合を調べた。
測定条件:加速電圧10kV、照射電流5×10−8A、点数300×300、測定面積48×48μm。
(3)光触媒活性の評価方法
光触媒活性の評価のため、光触媒製品フォーラムで提案されている「光触媒製品における湿式分解性能試験方法」(2004.05.28改訂)に準じ、湿式メチレンブルー分解試験を行ない、その測定結果から光触媒製品の分解性能の尺度となる分解活性示数(R)の算出を行なった。
「光触媒製品における湿式分解性能試験方法」からの変更点および使用装置を以下に示す。
(i)試験片の調製
試験片数は、1個とした。60mm□のガラス(チタン含有ガラス基材)の中央に、40mm□を超える試験片を調製した。また、紫外線照射によるメチレンブルーの直接の分解の影響を確かめるため、未加工のソーダライムガラス1個を比較試験片とした。
(ii)試験片の清浄化
純水1000ml/1回を使用し、5分間の超音波洗浄を2回行なった。
(iii)メチレンブルーの吸着
吸着時間を12時間から18時間に変更した。
(iv)紫外線照射によるメチレンブルー分解
メチレンブルー試験液を注入後、120分間暗所に放置して、吸光度に変化がないことを確認後、紫外線(UV)の照射を開始した。前記試験方法に従い、20分間照射毎に、照射時間の合計が180分間になるまで、吸光度の測定を行なった。また、180分間の照射後もその後の変化を確認するために、200、220、240、450分間照射後の測定を行なった。吸光度の測定に用いた試験液を試験セルに戻した後、溶液の濃度斑を低減するために、試験液の攪拌を行なった。
(v)分解活性示数(R)の計算
分解活性示数(R)の計算に用いる吸光度Abs.(t)(tは照射時間)の基準値は、紫外線照射直前に測定し、これをAbs.(0)とした。
分解活性示数(R)を計算するためのメチレンブルー試験液濃度(MB濃度)C(t) [μmol/L]は、前記試験方法の式(2)、(3)より、
C(t)=10[μmol/L]/ Abs.(0)×Abs.(t)
とした。
分解活性示数(R)の計算に用いる吸光度は、前記試験方法に従い、20〜180分の9点から4点を選んだ。この4点の吸光度を最小二乗法により近似した傾きを求め、10倍したものが、分解活性示数(R)[nmol/L/分]となる。
(vi)使用装置
・超音波洗浄器:シープ社製UT−204、出力200W、周波数39kHz。
・ブラックライト蛍光ランプ:東芝ライテック(株)製FL20S−BLB、ピーク波長352nm、20W。
・分光光度計:Perkin Elmer社製Lambda900。
[実施例1]
T25(TiO25モル%のガラス、25mm□)の表面に、ヘリウムガスフロー雰囲気下(ヘリウムガスを、φ6mm、ガラス表面に対して45度の角度、ガラス表面から2〜3mmの位置に設けられたノズルから100ml/分の割合でフロー)において、KrFエキシマレーザを照射エネルギ0.3J/cmで、パルス数が1、5、10、20、30、50、70、100、200、500になるように変えて、ビームホモジナイザとレンズ系およびマスクを用いてレーザ光を0.8mm□の大きさにして照射し、ガラス表面の微細加工を行なった。
得られた表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡観察を行ない、写真撮影した。結果を図5(パルス数0〜10)、図6(パルス数20〜70)、図7(パルス数100〜500)に示す。なお、図5のパルス数0は、レーザ光照射前のガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡観察を行ない、写真撮影したものである。落射照明を用いているので水平に近い面が明るく、斜面が暗く観察された。凸部の高さはSEM観察により求めた。
図5には、パルス数0のとき、フラットな表面であったものが、パルス数1になると、サブミクロンオーダーの凸部(ブラック・スポット)が出現し、パルス数5では、径が約1〜2μmで高さが約0.1μmの凸部(バンプ)が形成され、パルス数10では、凸部の高さが約0.3μmに成長することが示されている。
また、図6には、パルス数の増加にともない凸部が成長し、パルス数30になると、高さ約0.5μmの凸部が連結し始め、パルス数50では、高さ約1.0μmの凸部がさらに連結して、細長い凸部となることが示されている。パルス数70では、連結がさらに進み、分岐を伴った細長い凸部となることが示されている。
さらに、図7には、パルス数100では、高さ約1.6μmの分岐を伴った峰のある山脈状の構造となり、パルス数200では、山脈状の構造がさらに連なった高さ約3μmの網目(ネットワーク)状の構造になり、パルス数500になると、網目状の構造の高さがさらに高くなることが示されている。ここで、パルス数100以上の図では、山脈状の構造の頂上部を連ねた部分と谷部を連ねた部分が明るく観察されている。
パルス数1〜20の場合、凸部の幅および長さが10μm以下であり、凸部間の間隔も10μm以下である。パルス数30〜70の場合、凸部の幅が10μm以下であり、凸部間の間隔も10μm以下である。また、パルス数100〜500の場合、前述の山脈状の構造の頂上部を連ねた部分と谷部を連ねた部分から、凸部の幅が10μm以下であることがわかる。
前記照射エネルギを0.5J/cmに変えた場合にも、同様の網目状の構造が形成されることが確認されている。
なお、照射エネルギを0.4J/cmでパルス数を500にした場合、高さが約7μm、照射エネルギを0.6J/cmでパルス数を500にした場合、高さが約9μmになることがSEM観察により確認されている。
T25についての顕微ラマン散乱分析では、凸部からTiO(ルチル相)が確認されている。また、EPMA分析からも、凸部ではTiがガラス母体よりも高濃度に分布していることが確認されている。これらの結果から、レーザ照射によりガラス中の蒸発しやすいSiO、NaO等が多く蒸発し、蒸発しにくいTiOが多く残り、TiOリッチな相からTiO結晶が析出していると考えられる。
前記パルス数と表面の状態の関係を表2にまとめて示す。
[実施例2]
前述の「光触媒活性の評価方法」に従い、分解活性示数(R)を求めた。
実施例1で使用したガラスを60mm□に代え、その中央に40mm□を超える加工表面を有する試験片(表面微細加工ガラス)を調製した。加工表面でのスポットサイズが3×10mm□のレーザ光(パルス数200)を位置をずらしながら繰り返し照射し、40mm□を超える範囲に、隙間なく表面加工を行なった。
得られた試験片の加工表面を観察したところ、実施例1のパルス数200の加工表面と同等の加工表面が連続して得られていた。
得られた試験片と比較試験片(ソーダライムガラス)を用いた場合のそれぞれの吸光度を測定し、メチレンブルー試験液濃度(MB濃度)を算出した。表3にそれらの測定結果を示す。
得られたMB濃度(60、80、100、120分の4点)から、分解活性示数(R)を算出したところ、試験片では1.9nmol/L/分であり、比較試験片では0.0nmol/L/分であった。
比較試験片の結果から、紫外線照射によるメチレンブルーの直接の分解の影響はないことがわかる。よって、前記試験片(表面微細加工ガラス)の加工表面には、光触媒製品の分解性能が有ることがわかった。
[実施例3]
実施例1で使用したヘリウムガスフロー雰囲気下を窒素ガスフロー雰囲気下に、パルス数を200および500に変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。
得られた表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡観察を行ない、写真撮影した。パルス数200の結果を図8に示す。
図8中の○で囲んだ部分に、網目状の構造が充分発達していない場所が認められる以外、実施例1と同様の構造が形成されていることがわかる。網目状の構造が充分発達していない場所は網目が詰まった構造となっている。
また、得られた微細加工表面の顕微ラマン散乱分析の結果、凸部の網目状部分からTiO結晶(ルチル型結晶)に帰属するピークが確認された。
[実施例4]
実施例1で使用したパルス数を1、2、5、10、20、50、100、200、500に変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。
得られた表面微細加工ガラスのうち、パルス数が1、2、5、50の場合について1%HF水溶液処理を行なった後、表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡観察を行ない、写真撮影した。結果を図9(パルス数1、2、5)、図10(c)(パルス数50)に示す。
パルス数が1、2、5の場合、いずれも1%HF水溶液処理前は(網目状の)溝は観察されなかったが、1%HF水溶液処理により図9に示すように(網目状の)溝が観察されるようになった。
パルス数が50の場合については、比較のために1%HF水溶液処理前のレーザ共焦点顕微鏡観察写真(図10(a))および1%HF水溶液処理時間を1分間および2分間にしたレーザ共焦点顕微鏡観察写真(図10(b)および(c))を合わせて示した。
図10(a)、(b)、(c)中の○で示した部分は同一個所である。レーザ光照射により形成されたほぼ楕円形の凸部(TiOリッチ)が、1分間のHF水溶液処理では残存しているが、2分間のHF水溶液処理では溶出し、消失していることがわかる。実際に図10(a)の前記楕円形部分の表面プロファイルを測定すると、凸部になっていた(TiOは耐HF性が大きいと予想される)。しかし、HF水溶液処理時間が長くなるにつれて、凸部の基礎のガラスが溶解するため、2分間のHF水溶液処理後は当初の凸状の網目構造は溶出してしまう。(c)では、元の凸部周囲の谷部に沿った溝と沿っていない溝が網目状に形成されていた。これらの溝からはTiOのラマンピークは検出されなかった。前述の図9についても記載したように、レーザ照射のみでは酸処理前の段階で網目状の溝が観察されないにもかかわらず、HF水溶液処理により、2パルス以上のレーザ照射の場合に網目状の溝が形成されている。このことから、前記凸部周囲の谷部に沿っていない溝は、マイクロクラックに因り、そのマイクロクラック部分が選択的に溶出することで強調され、形成されると考えられる。このマイクロクラック形成の一因に、熱膨張率に差のあるTiOおよびSiO二相への相分離があると考えられる。そのため、(a)と(c)では凸部と溝の違いはあるものの同スケールでの網目状の構造が観察されたと考えられる。
以上のように、HF水溶液処理による網目の形成は、
レーザ照射→相分離によるTiO網目(凸部)とマイクロクラックの形成→HF水溶液処理→マイクロクラック(上記相分離が一因)部の溶出による網目(溝)形成
によるものと考えられる。
[実施例5]
実施例1で使用したヘリウムガスフロー雰囲気下を空気中に、パルス数を500に、照射エネルギを1J/cm、0.8J/cm、0.6J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。
得られた表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡観察を行なったが、表面微細加工ガラス表面は図7(k)と異なり、平坦であった。その平坦部に不鮮明な網目構造が観察された。
得られた表面微細加工ガラス表面を1%HF水溶液中で2〜4分間処理したところ、網目構造が観察された。
得られたHF水溶液処理表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡観察を行ない、写真撮影した。照射エネルギを1J/cmの場合の結果を図11に示す。
図11の網目は溝であり、溝の幅が10μm以下であることがわかる。よって、前記平坦部の不鮮明な網目構造は、マイクロクラックの一部であったものと考えられる。
[実施例6]
実施例1で使用したヘリウムガスフロー雰囲気下を空気中に、パルス数を1000に、照射エネルギを0.6J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。
得られた表面微細加工ガラスを1%HF水溶液中で2分間処理した。
得られたHF水溶液処理表面微細加工ガラス表面のSEM写真撮影を行なった。結果を図12に示す。
図12の網目は溝であり、溝の幅が10μm以下であることがわかる。
[実施例7]
実施例1におけるパルス数を500に、照射エネルギを0.6J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。
得られた表面微細加工ガラス表面のSEM写真撮影を行なった。結果を図13に示す。
図13(a)は表面を真上から撮影した写真、(b)は45度の角度から撮影した写真、(c)は60度の角度から撮影した写真である。図13の3枚の写真から、凸部が網目状〜山脈状に連なっており、凸部に囲まれた谷部が存在し、網目状〜山脈状の凸部の幅が10μm以下であることが明確に理解できる。
[実施例8]
実施例1におけるパルス数を500に、照射エネルギを1J/cm、0.8J/cm、0.6J/cm、0.4J/cm、0.2J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。
得られた表面微細加工ガラス表面のSEM観察を行なった結果、0.8J/cm以上では山脈状〜網目状の凸部は得られず、また、0.2J/cm以下でも山脈状〜網目状の凸部は得られなかった。この結果から、本実施例の条件で山脈状〜網目状の凸部を得るためには、照射エネルギ0.3〜0.7J/cmが好ましいことがわかる。
[実施例9]
実施例1で使用したガラス(T25)をT40(TiO40モル%)に、パルス数を500に、照射エネルギを0.8J/cm、0.6J/cm、0.4J/cm、0.3J/cm、0.2J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。得られた表面微細加工ガラス表面のSEM観察を行なった結果、T40の場合にも、T25の場合と同様にガラス表面の微細加工を行なうことができた。
具体的には、0.8J/cmの場合には、平坦になり、0.6J/cm、0.4J/cmおよび0.3J/cmの場合には、凸部が連なった山脈状〜網目状の構造が形成された。0.2J/cmの場合には、サブミクロンオーダーの凸部を有する構造が形成された。
一方、1分間のHF水溶液処理により、0.6J/cm、0.4J/cmおよび0.3J/cmの場合には、山脈状〜網目状の構造が強調された。0.8J/cmの場合には、網目状のマイクロクラックが形成され、0.2J/cmの場合には、平坦になった。
また、2〜4分間のHF水溶液処理により、すべてについて網目状の溝を有する構造が形成された。
図14(a)は、0.4J/cmの場合に得られたHF水溶液処理なしの表面を真上から撮影したSEM写真である。
[実施例10]
実施例1で使用したガラス(T25)をT5(TiO5モル%)に、パルス数を500に、照射エネルギを0.8J/cm、0.6J/cm、0.4J/cm、0.3J/cm、0.2J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。得られた表面微細加工ガラス表面のSEM観察を行なった結果、T5の場合にも、T25の場合と同様にガラス表面の微細加工を行なうことができた。
具体的には、すべての場合について、サブミクロンオーダーの独立した凸部を有する構造が形成されていた。T5の場合には、より小さなサイズではあるが、T25の場合と同様に凸部を有する構造が形成された。
一方、2〜4分間のHF水溶液処理により、すべてについてサブミクロンオーダーの網目状の溝を有する構造が形成された。
図14(b)は、0.4J/cmの場合に得られたHF水溶液処理なしの表面を真上から撮影したSEM写真である。図14(a)との比較から、図14(b)に撮影されている凸部がサブミクロンオーダーと小さいことがわかる。
[実施例11]
実施例1で使用したKrFエキシマレーザをXeClエキシマレーザに、ガラス(T25)をT30(TiO30モル%)に、パルス数を500に、照射エネルギを0.8J/cm、0.6J/cm、0.4J/cm、0.3J/cm、0.2J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。得られた表面微細加工ガラス表面のSEM観察を行なった結果、0.8J/cmの場合には、網目状のマイクロクラックが形成された。0.6J/cmの場合には、凸部が連なった山脈状〜網目状の構造が形成された。0.4J/cm、0.3J/cmおよび0.2J/cmの場合には、網目状のマイクロクラックおよびサブミクロンオーダーの凸部が混在した。
一方、2〜4分間のHF水溶液処理により、0.8J/cmおよび0.6J/cmの場合には、網目状の溝を有する構造が形成された。また、0.4J/cm、0.3J/cmおよび0.2J/cmの場合には、サブミクロンオーダーの網目状の溝を有する構造が形成された。
レーザ光としてKrFエキシマレーザを使用する場合と比較して、低照射エネルギで形成される山脈状に存在する凸部を有する構造がより小さく約1μm以下になる点が異なっていた。また、低照射エネルギと高照射エネルギでマイクロクラックが形成されやすく、特に高照射エネルギの0.8J/cmの場合には、それが顕著であった。
[実施例12]
実施例1で使用したKrFエキシマレーザをXeClエキシマレーザに、ガラス(T25)をT40(TiO40モル%)に、パルス数を500に、照射エネルギを0.8J/cm、0.6J/cm、0.4J/cm、0.3J/cm、0.2J/cmに変えた他は実施例1と同様にしてガラス表面の微細加工を行なった。得られた表面微細加工ガラス表面のSEM観察を行なった結果、0.8J/cmの場合には、網目状のマイクロクラックが形成された。0.6J/cmの場合および0.4J/cmの場合には、凸部が連なった山脈状〜網目状の構造が形成された。0.3J/cmおよび0.2J/cmの場合には、網目状のマイクロクラックおよびサブミクロンオーダーの凸部が混在した。
一方、1分間のHF水溶液処理により、0.8J/cmの場合には、網目状の溝を有する構造が形成された。また、0.6J/cmおよび0.4J/cmの場合には、凸部が連なった山脈状〜網目状の構造が強調されていた。0.3J/cmおよび0.2J/cmの場合には、サブミクロンオーダーの網目状の溝を有する構造が形成された。
また、2〜4分間のHF水溶液処理により、0.8J/cm、0.6J/cmおよび0.4J/cmの場合には、網目状の溝を有する構造が形成された。また、0.3J/cmおよび0.2J/cmの場合、サブミクロンオーダーの網目状の溝を有する構造が形成された。
レーザ光としてKrFエキシマレーザを使用する場合と比較して、低照射エネルギで形成される山脈状に存在する凸部を有する構造がより小さく約1μm以下になる点が異なっていた。また、低照射エネルギと高照射エネルギでマイクロクラックが形成されやすく、特に高照射エネルギの0.8J/cmの場合には、それが顕著であった。
[実施例13]
図2〜図4に示したごときマイクロチャンネルチップ1を製造した。
図4(a)に示すチャンネル部材2に設けられた第1の供給用微小流路用溝部7、第2の供給用微小流路用溝部8、処理用微小流路用溝部9は、いずれも幅約10μm、深さ約50μmであり、第1の供給用微小流路用溝部7、第2の供給用微小流路用溝部8の長さは約2000μmであった。第1の供給用微小流路用溝部7、第2の供給用微小流路用溝部8の合流点から約100μmの位置に約1000μmの長さにわたって微細加工を施した。
前記微細加工部の構造は、山脈状に存在する凸部からなる凸部群を有する構造であった。
図4(a)に示すチャンネル部材2の上に、チャンネル部材2に対応する図4(b)に示す蓋部材3を設けることにより、マイクロチャンネルチップ1を製造した。
以上のような本発明のマイクロチャンネルチップを製造し、使用すると、下記の効果が得られる。
(1)処理用微小流路用溝部9の底面に形成された微細構造部13(凸部)を利用して、処理用微小流路12に供給される2種の原料流体の混合を促進させることができる。
(2)ルチル型酸化チタンが含まれている凸部に紫外線を照射することによって酸化チタンを光触媒として機能させることができるので、処理用微小流路12に供給される2種の原料流体による化学反応を促進することができる。
上記実施例13は、以下のように変更してもよい。
合流部の下流側部位の微細構造部13に、不規則な網目状の微細な溝を形成してもよい。この場合には、網目状の微細な溝を利用して処理用微小流路12を流れる2種の原料流体に対して施す所定の処理を促進することができる。
本発明の活用例としては、ガラス(チタン含有ガラス基材)の表面形状を制御する例があげられる。また、表面形状が制御されたガラス(チタン含有ガラス基材)は、その表面形状を利用して様々な用途に使用することが可能である。さらに、表面形状が制御されたガラス(チタン含有ガラス基材)を用いて構成したマイクロチャンネルチップは、微小流路を流れる被処理流体に対して施す処理(混合や化学反応など)を促進することができるので、様々な用途に使用することが可能である。
本発明における微細構造を形成する凸部の幅の求め方を説明するための図であり、図中の(a)〜(c)は、それぞれ円に近い形状を有する独立に存在する凸部の場合、細長い形状を有する独立に存在する凸部の場合、および分岐を伴った細長い形状を有する独立に存在する凸部の場合の幅の求め方の説明図である。 本発明のマイクロチャンネルチップの断面説明図である。 本発明のマイクロチャンネルチップの平面説明図である。 (a)は、本発明のマイクロチャンネルチップを構成するチャンネル部材の平面説明図、(b)は、該マイクロチャンネルチップを構成する蓋部材の平面説明図である。 実施例1で製造した表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真および微細加工前のガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、図中の(a)〜(d)は、それぞれレーザ光のパルス数が0、1、5、10の場合の写真である。 実施例1で製造した表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真および微細加工前のガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、図中の(e)〜(h)は、それぞれレーザ光のパルス数が20、30、50、70の場合の写真である。 実施例1で製造した表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真および微細加工前のガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、図中の(i)〜(k)は、それぞれレーザ光のパルス数が100、200、500の場合の写真である。 実施例3で製造した表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。 実施例4で製造した表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、図中の(a)〜(c)は、それぞれレーザ光のパルス数が1、2、5の場合の写真である。 実施例4で製造した表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、図中の(a)〜(c)は、いずれもレーザ光のパルス数が50で、それぞれHF水溶液処理0分、1分、2分の場合の写真である。 実施例5で製造した照射エネルギ1J/cmの場合の表面微細加工ガラス表面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。 実施例6で製造した表面微細加工ガラス表面のSEM写真である。 実施例7で製造した表面微細加工ガラス表面のSEM写真であり、図中の(a)は表面を真上から撮影した写真、(b)は45度の角度からの写真、(c)は60度の角度からの写真である。 実施例9および実施例10で製造した表面微細加工ガラス表面のSEM写真であり、図中の(a)は実施例9で製造した表面微細加工ガラス表面を真上から撮影した写真、(b)は実施例10で製造した表面微細加工ガラス表面を真上から撮影した写真である。
符号の説明
1…マイクロチャンネルチップ、2…チャンネル部材、3…蓋部材、4…第1の供給口、5…第2の供給口、6…取出口、7…第1の供給用微小流路用溝部、8…第2の供給用微小流路用溝部、9…処理用微小流路用溝部、10…第1の供給用微小流路、11…第2の供給用微小流路、12…処理用微小流路、13…微細構造部、100…外接する円、101…円に近い形状を有する独立に存在する凸部、102…細長い形状を有する独立に存在する凸部、103…分岐を伴った細長い形状を有する独立に存在する凸部、W…円に近い形状を有する独立に存在する凸部の幅、W…細長い形状を有する独立に存在する凸部の幅、W31、W32、W33…分岐を伴い、細長い形状の3個の枝を有する独立に存在する凸部の幅。

Claims (23)

  1. チタン含有ガラス基材の表面に設定された加工対象面に、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から2J/cmの範囲、1パルス当たりの照射時間が1〜100nsec、パルス数が1〜10000のレーザ光を照射して、加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造を形成させることを特徴とする表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  2. 前記チタン含有ガラス基材に加工対象面を複数個設定し、前記レーザ光の照射条件を加工対象面ごとに個別に設定することとした請求項1に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  3. 表面微細加工を施す前記チタン含有ガラス基材の加工対象面およびその付近のチタン含有率を、酸化チタンに換算して1≦TiO≦45(モル%)とした請求項1または2に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  4. 前記微細構造の形成を、不活性ガス雰囲気下、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から0.7J/cmの範囲のレーザ光を照射することにより行ない、形成する前記微細構造を幅10μm以下の凸部からなる凸部群を有する構造とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  5. 前記凸部群を有する構造を、独立に存在する凸部からなる凸部群を有する構造とした請求項4に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  6. 前記凸部群を有する構造を、山脈状または網目状に存在する凸部からなる凸部群を有する構造とした請求項4に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  7. 前記不活性ガス雰囲気を、不活性ガスフロー雰囲気とした請求項4〜6のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  8. 前記不活性ガスを、ヘリウムガスまたは窒素ガスとした請求項4〜7のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  9. 前記凸部群に含まれる凸部のチタン含有率を、凸部周囲の谷部のチタン含有率よりも高くした請求項4〜8のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  10. 前記凸部を、表面に結晶化酸化チタンを含有させた凸部とした請求項4〜9のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  11. 前記結晶化酸化チタンをルチル型酸化チタンとした請求項10に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法において、前記加工対象面に前記レーザ光を照射した後、さらにエッチング処理を施す表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  13. 前記エッチング処理により形成される前記微細構造を、幅10μm以下の溝を有する構造とした請求項12に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  14. 前記レーザ光を、エキシマレーザによるレーザ光とした請求項1〜13のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材の製造方法。
  15. チタン含有ガラス基材の表面に設定された加工対象面に、1パルス当たりの照射エネルギが、チタン含有ガラス基材表面がアブレーションまたは蒸発可能な値から2J/cmの範囲、1パルス当たりの照射時間が1〜100nsec、パルス数が1〜10000のレーザ光を照射することにより、または該レーザ光の照射後さらにエッチング処理を施すことにより、加工対象面にレーザ光の照射部分に形成される照射形状と異なる微細構造が形成されてなることを特徴とする表面微細加工チタン含有ガラス基材。
  16. 表面微細加工が施される前記チタン含有ガラス基材の加工対象面およびその付近のチタン含有率が、酸化チタンに換算して1≦TiO≦45(モル%)である請求項15に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材。
  17. 前記微細構造が、幅10μm以下の微細構造である請求項15または16に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材。
  18. 前記微細構造が、独立に存在する凸部からなる凸部群を有する構造、山脈状または網目状に存在する凸部からなる凸部群を有する構造、または溝を有する構造である請求項15〜17のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材。
  19. 前記凸部のチタン含有率が、凸部周囲の谷部よりも高いチタン含有率である請求項18に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材。
  20. 前記凸部が、表面に結晶化酸化チタンを含有する請求項18または19に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材。
  21. 前記結晶化酸化チタンがルチル型酸化チタンである請求項20に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材。
  22. 表面に微小流路が形成されたチャンネル部材と、該チャンネル部材の蓋部材とからなるマイクロチャンネルチップであって、該チャンネル部材が請求項15〜21のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材からなり、少なくとも前記微小流路の内表面の所定の位置に、前記表面微細加工チタン含有ガラス基材に形成された微細構造が設けられていることを特徴とするマイクロチャンネルチップ。
  23. 前記蓋部材が、請求項15〜21のいずれか1項に記載の表面微細加工チタン含有ガラス基材からなり、前記チャンネル部材に設けられた微小流路の内表面の微細構造が設けられた位置に対応する前記蓋部材の位置に、前記表面微細加工チタン含有ガラス基材に形成された微細構造が設けられている請求項22に記載のマイクロチャンネルチップ。
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