JP2006260907A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電解質膜へと加えられる圧力を直接的に検知することが可能な、燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜1及び当該電解質膜1の両側に配設される電極2a、3aを備えるMEAと、MEAの外側に配設されるセパレータとを備える単セル…が積層されて形成されるセル積層体を備え、1以上の単セルの内部に、電解質膜1に加えられる圧力を検知すべき圧力検知手段10が備えられている、燃料電池とする。
【選択図】図2
【解決手段】電解質膜1及び当該電解質膜1の両側に配設される電極2a、3aを備えるMEAと、MEAの外側に配設されるセパレータとを備える単セル…が積層されて形成されるセル積層体を備え、1以上の単セルの内部に、電解質膜1に加えられる圧力を検知すべき圧力検知手段10が備えられている、燃料電池とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池に関し、特に、電解質膜に加えられる圧力を直接的に検知することが可能な燃料電池に関する。
燃料電池は、電解質と、当該電解質の両側に配置される電極(カソード及びアノード)とを備える膜電極接合体(以下において、「MEA(Membrane Electrode Assembly)」と記述する。)における電気化学反応により発生した電気エネルギーを、MEAの両側に配設されるセパレータを介して外部に取り出している。燃料電池の中でも、家庭用コージェネレーション・システムや自動車等に使用される固体高分子型燃料電池(以下において、「PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)」と記述する。)は、低温領域での運転が可能である。また、PEFCは、高いエネルギー変換効率を示し、起動時間が短く、かつシステムが小型軽量であることから、電気自動車や携帯用電源の最適な動力源として注目されている。
PEFCの単セルは、電解質膜、少なくとも触媒層を備えるカソード及びアノード、並びに、セパレータを含み、その理論起電力は1.23Vである。しかし、かかる低起電力では電気自動車等の動力源として不十分である。そのため、通常は、単セルを直列に積層した積層体の積層方向両端にエンドプレート等を配置して構成されるスタック形態のPEFCが使用されている。そして、かかる形態のPEFCにおける各構成部材間の接触抵抗を低減するため、通常のPEFCでは、締結圧力が加えられている。
ところで、PEFCの発電時には、カソード電極内の電気化学反応により水が生成される。かかる水は、電解質膜を加湿し電解質膜の湿潤状態を維持することで当該電解質膜のプロトン伝導性能発現等に寄与し得るが、例えば、カソード電極内で多量の水が生成されると、MEA内の電解質膜や電極等(以下において、単に「電解質膜等」と記述する。)が膨張する。ここで、スタック形態のPEFCには、端部から締結圧力が加えられている。そのため、このようにして電解質膜等が膨張すると、これらの構成部材へと加えられる圧力が増加するため、電解質膜等が損傷しやすい。
他方、水が生成されない非発電時におけるPEFCの電解質膜等は、乾燥し、収縮しやすい。そのため、PEFCの発電・停止が繰り返されると、膨張・収縮が繰り返される電解質膜等が損傷しやすい。ここで、電解質膜はアノード電極にて発生するプロトンをカソード電極へと伝導する役割を担っている。そのため、電解質膜が損傷すると、PEFCの発電性能及び耐久性が低下しやすい。したがって、PEFCの発電性能向上及び耐久性向上を実現するためには、PEFC内部の膨張収縮状態等を外部から把握することで、PEFCの性能低下を未然に防止可能とすることが望まれる。
PEFC内部の膨張収縮状態等を外部から把握可能とすることを目的とした技術は、これまでにいくつか開示されてきている。例えば、特許文献1には、燃料電池スタックの端部に面圧センサを複数設置し、検知した面圧に応じて締結圧力を制御可能な燃料電池に関する技術が開示されており、かかる技術によれば、接触抵抗を均一に低減した状態の燃料電池とすることが可能になるので、燃料電池の運転効率を高めることが可能になるとしている。
特開2001−93564号公報
しかし、特許文献1に開示されている技術では、PEFCスタック内部全体の面圧を検知しているため、PEFCスタックを構成する各単セル内部の圧力を直接的に検知できない。そのため、単セルに備えられる電解質膜自体に加えられている圧力を直接的に検知することが困難であるという問題があった。
そこで本発明は、電解質膜に加えられる圧力を直接的に検知することが可能な、燃料電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
請求項1に記載の発明は、電解質膜及び当該電解質膜の両側に配設される電極を備えるMEAと、MEAの外側に配設されるセパレータとを備える単セル、を備えるセル積層体を備え、1以上の単セルの内部に、電解質膜に加えられる圧力を検知すべき圧力検知手段が備えられていることを特徴とする、燃料電池により、上記課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、電解質膜及び当該電解質膜の両側に配設される電極を備えるMEAと、MEAの外側に配設されるセパレータとを備える単セル、を備えるセル積層体を備え、1以上の単セルの内部に、電解質膜に加えられる圧力を検知すべき圧力検知手段が備えられていることを特徴とする、燃料電池により、上記課題を解決する。
ここに、単セルの内部とは、一対のセパレータによって挟まれる領域を意味し、具体的には、セパレータによって挟まれる電解質膜の内部、電解質膜の表面、電極の電解質膜側の表面等を意味している。さらに、電解質膜とセパレータとが当接する場合には、電解質膜と当接すべきセパレータの表面に、圧力検知手段が備えられていても良く、単セルに拡散層が備えられる場合には、電解質膜と当接すべき拡散層の表面に、圧力検知手段が備えられていても良い。また、「電解質膜に加えられる圧力を検知」とは、電解質膜へと加えられる圧力自体を検知可能な形態のほか、電解質膜へと加えられる圧力に起因する物性値を検知し、その検知された物性値を解析することにより圧力が導出される形態をも含む概念である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池において、圧力検知手段が、前記電解質膜に備えられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の燃料電池において、圧力検知手段が、電解質膜の積層面の法線方向に加えられる圧力を検知可能であることを特徴とする。
ここに、積層面とは、単セルの積層方向を法線方向とする平面を意味している。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の燃料電池において、圧力検知手段が、電解質膜の積層面方向に加えられる圧力を検知可能であることを特徴とする
ここに、積層面方向とは、積層面と平行な方向を意味している。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池において、圧力検知手段が、ピエゾ素子であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池において、複数の圧力検知手段を備える電解質膜が備えられることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜3、5、又は6のいずれか1項に記載の燃料電池において、セル積層体の端部に配設されて当該セル積層体に締結圧力を加えるべき締結手段と、締結圧力を制御すべき制御手段とをさらに備え、電解質膜の積層面と平行に備えられる圧力検知手段を介して検知された圧力の値に基づいて、締結圧力が制御されることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、単セルの内部に、電解質膜に加えられる圧力を検知すべき圧力検知手段が備えられている。したがって、当該圧力検知手段により電解質膜へと加えられる圧力を直接的に検知することが可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
請求項2に記載の発明によれば、圧力検知手段が、電解質膜に備えられているので、電解質膜自体へと加えられる圧力を直接的に、かつ、正確に検知することが可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
請求項3に記載の発明によれば、圧力検知手段が、電解質膜の積層面の法線方向に加えられる圧力を検知可能である。そのため、電解質膜の積層方向へと加えられる圧力を検知することが可能になり、電解質膜の、積層方向への膨張・収縮状態を検知可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
請求項4に記載の発明によれば、圧力検知手段が、電解質膜の積層面方向に加えられる圧力を検知可能である。そのため、電解質膜の積層面へと加えられる引裂圧力を検知可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
請求項5に記載の発明によれば、燃料電池に備えられる圧力検知手段がピエゾ素子である。ピエゾ素子は小型化・薄型化が容易であるため、圧力検知手段が備えられることで生じる、単セル内部の圧力状態の変化を抑制しつつ当該単セル内部の圧力をより正確に検知可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
請求項6に記載の発明によれば、複数の圧力検知手段を備える電解質膜が備えられている。一枚の電解質膜に複数の圧力検知手段が備えられていれば、電解質膜の圧力状態をより正確に把握することが可能になる。したがって、かかる形態とすることで、より正確に電解質膜の圧力状態を把握し得る燃料電池を提供することが可能になる。
請求項7に記載の発明によれば、電解質膜へと加えられる圧力状態に応じて締結圧力を調整することが可能になる。電解質膜へと加えられる圧力が高い状態が長期間に亘って維持されると、電解質膜が破損されやすくなり、電解質膜及び燃料電池の寿命低下を招く。したがって、かかる形態とすることで、電解質膜の耐久性を向上させることが可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
PEFCの電解質膜は、飽和状態に含水させることにより、プロトン伝導性電解質として機能するため、燃料電池の作動中には、加湿された反応ガスが単セルへ供給されている。そして、PEFCの作動中には、電気化学反応により水が生成されるため、かかる水により電解質膜は膨張しやすい。一方で、PEFCの単セルには、電解質膜、触媒層、及び、セパレータ等の各種構成部材が含まれており、構成部材間の接触界面が複数存在することから、当該接触界面の抵抗により、PEFCの出力が低下しやすい。そのため、上記接触界面における抵抗を低減する観点から、スタック形態のPEFCはその端部から締結圧力が加えられており、電解質膜には圧力が加えられている。したがって、PEFCの作動中に水を吸収して膨張すると、当該電解質膜へと加えられる圧力が増加する。
これに対し、PEFCの停止時には、反応ガスの供給が停止されるとともに電気化学反応による水が生成されないことから、電解質膜は乾燥し、収縮しやすい。ここで、電解質膜が収縮すると、膨張時よりも、電解質膜へと加えられる圧力が低下する。そのため、PEFCの起動・停止が繰り返されると、電解質膜へと加えられる圧力が変化する。このようにして電解質膜の圧力状態が変動すると、電解質膜が破損しやすく、この破損は、圧力変動の幅が大きい箇所等で特に顕著になる。電解質膜が破損すると、電解質膜のプロトン伝導性能が低下しクロスリークの頻度が増加するため、PEFCの発電性能が低下し、さらに、耐久性も低下する。したがって、PEFCの耐久性を向上させるためには、電解質膜の破損を防止することが必要であり、電解質膜の破損防止には、当該電解質膜の圧力状態を正確に検知すること、及び、この検知結果に基づいて締結圧力を制御することが重要である。しかし、これまでの技術は、燃料電池スタックの端部に面圧センサを配置することにより、単セルに含まれる電解質膜自体の圧力を間接的に検知するものに留まっており、電解質膜自体の圧力を直接的に検知することは困難であった。なお、上記従来技術にかかる面圧センサは、単セルよりも厚いため、当該面圧センサを、接触抵抗を増加させない形態で単セル内部に配設することは、極めて困難である。
本発明は、このような観点からなされたものであり、その要旨は、電解質膜に加えられる圧力を検知すべき圧力検知手段が単セルの内部に備えられる構成とすることで、電解質膜自体に加えられる圧力を検知可能とし、耐久性を向上させることが可能な燃料電池を提供することにある。
以下に図面を参照しつつ、本発明の燃料電池ついて具体的に説明する。
図1は、第1実施形態にかかる本発明の燃料電池に備えられる単セル、及び、第1実施形態にかかる燃料電池の形態例を示す概略図である。図1(A)は、第1実施形態にかかる燃料電池に備えられる単セルの形態例を概略的に示す断面図であり、単セルの一部のみを示している。一方、図1(B)は、第1実施形態にかかる燃料電池の形態例を示す概略図である。図1において、直線矢印は、単セルの積層方向を示している。なお、以下において、単セルの積層方向を法線方向とする面を「積層面」と記述することがある。
図1(A)に示すように、第1実施形態にかかる単セル50は、圧力検知手段(図1では不図示)を備える電解質膜1と当該電解質膜1の両側に配設される電極としてのアノード触媒層2a及びカソード触媒層3aとを備えるMEA5と、当該MEA5の両側に配設されるアノード拡散層2b及びカソード拡散層3bと、当該アノード拡散層2b及びカソード拡散層3bの外側に配設されるセパレータ7a、7bとを備えている。単セル50のアノード2は、アノード触媒層2a及びアノード拡散層2bを備える一方、カソード3は、カソード触媒層3a及びカソード拡散層3bを備えている。そして、セパレータ7aのアノード2側には反応ガス流路8a、8a、…が、セパレータ7bのカソード3側には反応ガス流路8b、8b、…がそれぞれ形成されており、反応ガス流路8a、8a、…には水素含有反応ガス(以下において、「水素」と記述する。)が供給される一方、反応ガス流路8b、8b、…には酸素含有反応ガス(以下において、「空気」と記述する。)が供給され、これらの反対側の面には冷却媒体流路9、9、…が形成されている。
なお、以下において、アノード触媒層2a及びカソード触媒層3aをまとめて単に「触媒層」と、また、アノード拡散層2b及びカソード拡散層3bをまとめて単に「拡散層」と、それぞれ記述することがある。また、図示の単セル50において、触媒層には、例えば、電気化学反応の触媒として機能する白金が担持された炭素粒子が備えられる一方、拡散層は、例えば、炭素繊維からなるカーボンペーパーにより構成されている。
なお、以下において、アノード触媒層2a及びカソード触媒層3aをまとめて単に「触媒層」と、また、アノード拡散層2b及びカソード拡散層3bをまとめて単に「拡散層」と、それぞれ記述することがある。また、図示の単セル50において、触媒層には、例えば、電気化学反応の触媒として機能する白金が担持された炭素粒子が備えられる一方、拡散層は、例えば、炭素繊維からなるカーボンペーパーにより構成されている。
単セル50において、反応ガス流路8a、8a、…から供給される水素は、アノード拡散層2bを介してアノード触媒層2aへと達し、当該触媒層2a内の触媒上で起こる電気化学反応により、水素から電子と水素イオンとが生成される。そして、アノード触媒層2aにて発生した水素イオンは、電解質膜1を通ってカソード触媒層3aへと達する。これに対して、反応ガス流路8b、8b、…から供給される空気は、カソード拡散層3bを介してカソード触媒層3aへと供給され、当該触媒層3aの触媒上で起こる電気化学反応により、水素イオン、酸素、及び電子から、水(水蒸気)が生成される。このようにして水が生成されると、例えば、かかる水の一部を電解質膜1が吸収することで、電解質膜1が膨張する。
一方、図1(B)に示すように、第1実施形態にかかる本発明の燃料電池100は、外枠体95に、複数の単セル50、50、…が積層されて形成されるセル積層体60、板状部材91、92、及び、締結手段70が備えられており、セル積層体60に備えられる単セル50、50、…には、締結手段70及び板状部材91、92を介して、締結圧力が加えられている。さらに、燃料電池100には、後で詳述するように、締結手段70の動作を制御する制御手段80が備えられている。
なお、図1(B)では、セル積層体60に備えられる一の単セル50と制御手段80とが信号伝達手段87を介して接続される形態を示したが、本発明は当該形態に限定されるものではなく、複数の単セル50、50、…と制御手段80とが信号伝達手段を介して接続される形態であっても良い。また、図1(B)では、圧力検知手段を備える単セル50が複数備えられている燃料電池100を示したが、本発明の燃料電池は、圧力検知手段を備える一以上の単セルを備えていれば良く、圧力検知手段を備える当該単セルの数は、特に限定されない。
なお、図1(B)では、セル積層体60に備えられる一の単セル50と制御手段80とが信号伝達手段87を介して接続される形態を示したが、本発明は当該形態に限定されるものではなく、複数の単セル50、50、…と制御手段80とが信号伝達手段を介して接続される形態であっても良い。また、図1(B)では、圧力検知手段を備える単セル50が複数備えられている燃料電池100を示したが、本発明の燃料電池は、圧力検知手段を備える一以上の単セルを備えていれば良く、圧力検知手段を備える当該単セルの数は、特に限定されない。
このように、単セル50には、締結圧力が加えられているため、燃料電池100が作動して電解質膜1が膨張すると、当該電解質膜1へと加えられる圧力が増加する。一方、燃料電池100の停止時には、上記電気化学反応による水が生成されないため、電解質膜1は乾燥し、収縮する。すなわち、燃料電池100が起動・停止を繰り返すと、電解質膜1は膨張・収縮を繰り返し、当該電解質膜1へと加えられる圧力状態が変化する。そこで、第1実施形態にかかる燃料電池では、電解質膜1に圧力検知手段が備えられる形態とすることで、電解質膜1自体に加えられる圧力を正確に検知可能としている。
図2は、圧力検知手段の配置形態例を示す概略図であり、図2(A)は、締結圧力が加えられている、圧力検知手段を備える電解質膜、触媒層、及び拡散層のみを簡略化して示す、アノード側から見た正面図、図2(B)は、図2(A)の矢視図(断面図)である。なお、圧力検知手段及び触媒層の配置形態を容易に理解可能とするため、図2(A)では、圧力検知手段及び触媒層を透視して、これらをそれぞれ実線及び破線で示し、電解質膜のカソード側に配設されるカソード触媒層及びカソード拡散層の符号を括弧書きにて付記している。また、図2(A)において、単セルの積層方向は紙面に垂直な方向である一方、図2(B)の直線矢印は、単セルの積層方向である。以下、図1及び図2を適宜参照しつつ、圧力検知手段の配置形態について説明する。
図示のように、本発明にかかる単セル50は、例えば、電解質膜1と、その積層面が電解質膜1の積層面よりも小さいアノード触媒層2a及びカソード触媒層3aと、その積層面が電解質膜1の積層面よりも小さくアノード触媒層2a及びカソード触媒層3aの積層面よりも大きいアノード拡散層2b及びカソード拡散層3bとを備えている。そして、電解質膜1内の端部に圧力検知手段10が備えられ、圧力検知手段10には、電解質膜1へと加えられる圧力と関連する信号を外部へ伝達すべき電極12、12が備えられており、当該電極12、12は絶縁物により被覆されたワイヤ等により構成されている。かかる構造の電解質膜1は、例えば、圧力検知手段10が溶融状態の電解質膜成分中に内蔵される形態で、圧力検知手段10及び溶融状態の電解質成分を配置した後、電解質成分を乾燥させる等の方法により、作製可能である。そして、例えば、当該電解質膜1の一方の積層面にアノード触媒層2aを、他方の積層面にカソード触媒層3aを塗布し乾燥させることによりMEA5を作製した後、当該MEA5の積層面にアノード拡散層2b及びカソード拡散層3bをそれぞれ配設し、さらに、その外側からセパレータを介して圧力が加えられることにより、図2に示す電解質膜、触媒層、及び拡散層とすることが可能になる。
このように、圧力検知手段10が電解質膜1内部の端部に備えられていれば、単セル内の接触抵抗を増加させること無く当該電解質膜1自体に加えられる圧力を正確に検知することが可能になる。さらに、第1実施形態にかかる圧力検知手段10は、電解質膜1が触媒層及び拡散層と当接していない部位の内部に備えられているので、単セル50で生じる電気化学反応を阻害する虞が少ない。そして、圧力検知手段10には、電極12、12が備えられているため、後述するように、検知したデータを、例えば、制御手段80へ出力することが可能になり、圧力検知手段10による検知結果を利用して締結手段70の動作を制御することが可能になる。なお、上述のように、電解質膜1が水を吸収して膨張すると、圧力検知手段10によって検知される圧力が変化する。したがって、燃料電池100において、圧力検知手段10は、電解質膜1の膨潤検知手段として活用することも可能になる。
図3は、圧力検知手段の形態例を示す断面図であり、圧力検知手段を備える電解質膜の一部を概略的に示している。図3において、直線矢印は、単セルの積層方向を示している。なお、図3において、図2に示す構成部材と同様の構成を採る部位には図2で使用した符号と同符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態にかかる圧力検知手段10は、例えば、ピエゾ素子11を絶縁物13によって被覆することにより作製される。このような形態で、圧力検知手段10にピエゾ素子11が備えられていれば、ピエゾ素子11に圧力が加えられることにより発生した電圧を解析することで、電解質膜1の積層方向(積層面の法線方向)へと加えられる圧力を検知することが可能になる。
以下に、図1〜図3を適宜参照しつつ、第1実施形態にかかる本発明の燃料電池における、締結圧力の制御について説明する。
図1(B)に示すように、本発明の燃料電池100には、締結手段70及び当該締結手段70の動作を制御すべき制御手段80が備えられており、単セル50の圧力検知手段10に備えられるピエゾ素子11と制御手段80とは、電極12、測定手段(不図示)、及び信号伝達手段87を介して連結されている。
燃料電池100において、セル積層体60へと締結圧力を加えるべき締結手段70の動作は、制御手段80によって制御される。制御手段80には、締結圧力制御等を実行するCPU82と、そのCPU82に対する記憶装置とが設けられている。CPU82は、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU82に対する記憶装置は、例えば、締結圧力制御や圧力検知結果の解析に必要なプログラム等、及び、各種データを記憶するROM83と、CPU82の作業領域として機能するRAM84等を組み合わせて構成される。当該構成に加えて、さらに、CPU82が、ROM83に記憶されたソフトウエアと組み合わされることにより、本発明の燃料電池100における制御手段80が機能する。
燃料電池100において、締結手段70の動作制御は、以下のようにして行われる。すなわち、単セル50に備えられる圧力検知手段10のピエゾ素子11に圧力が加えられることにより発生した電圧に関する信号は、電極12、測定手段、及び信号伝達手段87、並びに、制御手段80に備えられる入力ポート81を経てCPU82へと達し、検知結果が、制御手段80に記憶されたプログラムに基づいて解析される。さらに、当該解析結果に関するデータが、制御手段80に記憶されたプログラムに基づいて解析され、その結果に関する信号が、出力ポート85を経て締結手段70へ伝達されることにより、当該締結手段70に対する動作指令が制御手段80によって制御される。
このように、圧力検知手段10の検知結果に基づく締結手段70の動作制御が可能であれば、例えば、電解質膜1へと加えられる圧力が増加した場合には、締結手段70により加えられる締結圧力を低減することで、電解質膜1へと加えられる圧力が過度に増加することを防止することが可能になる。さらに、燃料電池100の停止時等に電解質膜1が収縮して電解質膜1へと加えられる圧力が減少した場合には、締結手段70によって加えられる締結圧力を増加させることで、電解質膜1の圧力変動を抑制することも可能になる。したがって、かかる形態とすることで、耐久性を向上させ得る燃料電池100を提供することが可能になる。
上記説明では、積層方向へと加えられる圧力を検知可能な形態で配置される、圧力検知手段について記述したが、本発明にかかる燃料電池に備えられる圧力検知手段の配置形態は当該形態に限定されるものではない。ここで、本発明にかかる圧力検知手段にピエゾ素子が備えられる場合、ピエゾ素子が検知可能な応力は、その軸方向へと加えられる応力である。そのため、積層方向以外の方向へと加えられる圧力を検知させる場合には、圧力検知手段の配置形態を変更する必要がある。そこで、以下に、図を参照しつつ、圧力検知手段の他の配置形態について説明する。
図4は、第2実施形態にかかる圧力検知手段の配置形態例を示す概略図であり、図4(A)は、締結圧力が加えられている、圧力検知手段を備える電解質膜、触媒層、及び拡散層のみを簡略化して示す、アノード側から見た正面図、図4(B)は、図4(A)の矢視図(断面図)である。なお、圧力検知手段及び触媒層の配置形態を容易に理解可能とするため、図4(A)では、圧力検知手段及び触媒層を透視して、これらをそれぞれ実線及び破線で示し、電解質膜のカソード側に配設されるカソード触媒層及びカソード拡散層の符号を括弧書きにて付記している。図4(A)において、単セルの積層方向は紙面に垂直な方向である一方、図4(B)の直線矢印は、単セルの積層方向である。なお、図4において、図2に示す構成部材と同様の構成を採る部位には図2で使用した符号と同符号を付し、その説明を省略する。
図4(B)に示すように、第2実施形態にかかる電解質膜1aは、その内部に、第1実施形態にかかる圧力検知手段10(図2(B)参照)を、ピエゾ素子の軸方向が積層面と平行な方向となるように90度回転させた形態で配置された、圧力検知手段10を備えている。そのため、第2実施形態によれば、単セル内の接触抵抗を増加させること無く圧力検知手段10によって積層面と平行な方向へと加えられる圧力を検知することが可能になり、電解質膜の積層面へと加えられる引裂応力を検知することが可能になる。したがって、第1実施形態にかかる電解質膜1に代えて第2実施形態にかかる電解質膜1aを備える燃料電池とすることで、電解質膜の積層面へと加えられる引裂応力を検知可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
図5は、第3実施形態にかかる圧力検知手段の配置形態例を示す概略図であり、複数の圧力検知手段を備える電解質膜と、当該電解質膜の内部に備えられる各圧力検知手段の接続形態と、電解質膜へと加えられる圧力に起因する電圧を検知すべき測定手段とを簡略化して示す正面図である。図5では、圧力検知手段の配置形態を容易に理解可能とするため、圧力検知手段を透視して示しており、紙面に垂直な方向が、単セルの積層方向である。図5において、図2に示す構成部材と同様の構成を採る部位には図2で使用した符号と同符号を付し、その説明を省略する。
図5に示すように、第3実施形態にかかる電解質膜1bは、その端部の内部に、第1実施形態にかかる圧力検知手段10と同様に積層方向へと加えられる圧力を検知可能な形態で配置された複数の圧力検知手段10、10、…を備え、さらに、電解質膜1bの外部に、電圧を検知すべき測定手段20が備えられている。これら複数の圧力検知手段10、10、…は、それぞれ並列に接続されており、かかる並列回路には、基準電圧E1が負荷されている。図示の電解質膜1bでは、例えば、上記圧力検知手段10、10、…を経由しない場合に検知される電圧値と、上記それぞれの圧力検知手段10、10、…を経由した場合に検知される電圧値との差を、測定装置20によって計測する。そして、その計測結果が制御手段によって解析されることで、各圧力検知手段10、10、…へと加えられている圧力が算出される。そのため、第3実施形態によれば、単セル内の接触抵抗を増加させることなく、複数の圧力検知手段10、10、…により、電解質膜1bの複数の部位に加えられる圧力を検知することが可能になる。したがって、例えば、第1実施形態にかかる電解質膜1に代えて、第3実施形態にかかる電解質膜1bを備える燃料電池とすれば、複数の圧力検知手段10、10、…の検知結果に基づいて締結手段の動作を制御することが可能になる。そのため、かかる形態とすることで、より効果的に耐久性を向上させることが可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
上記説明では、電解質膜の内部に圧力検知手段が備えられる形態について記述したが、本発明において圧力検知手段が配設され得る部位は、電解質膜の内部に限定されるものではない。当該配設部位の他の具体例としては、電解質膜の表面、触媒層の電解質膜側の表面、電解質膜と当接すべきセパレータの表面、及び、電解質膜と当接すべき拡散層の表面等を挙げることができる。ただし、触媒層の積層面等に圧力検知手段が備えられると、単セルにおける電気化学反応が妨げられる虞がある。そのため、電気化学反応の反応効率低下を防止するという観点から、圧力検知手段は、電解質膜の端部表面、又は、電解質膜の端部内部等に備えられることが好ましい。
図6は、第4実施形態にかかる圧力検知手段の配置形態例を示す概略図であり、図6(A)は、締結圧力が加えられている、圧力検知手段を備える電解質膜、触媒層、及び拡散層のみを簡略化して示す、アノード側から見た正面図、図6(B)は、図6(A)の矢視図(断面図)である。なお、触媒層の配置形態を容易に理解可能とするため、図6(A)では、触媒層を透視して破線で示し、電解質膜のカソード側に配設されるカソード触媒層及びカソード拡散層の符号を括弧書きにて付記している。図6(A)において、単セルの積層方向は紙面に垂直な方向である一方、図6(B)の直線矢印は、単セルの積層方向である。なお、図6において、図2に示す構成部材と同様の構成を採る部位には図2で使用した符号と同符号を付し、その説明を省略する。
図6(B)に示すように、第4実施形態にかかる電解質膜1cは、その積層面の端部表面に圧力検知手段10が備えられており、この圧力検知手段10は、積層方向へと加えられる圧力を検知可能な形態で配設されている。このように、電解質膜1cの積層面表面に圧力検知手段10が備えられる形態とすれば、電解質膜に触媒層及び拡散層を配設した後に、当該圧力検知手段10を配設することが可能になり、圧力検知手段10を配設する際の作業性を向上させることが可能になる。また、第4実施形態にかかる圧力検知手段10は、電解質膜1cの積層面の端部表面に配設されているので、単セル内で起こる電気化学反応の反応効率を低下させることなく、当該電解質膜1cへと加えられる積層方向の圧力を検知することが可能になる。
上記説明では、圧力検知手段としてピエゾ素子が備えられる形態について記述したが、本発明に備えられ得る圧力検知手段は、例えば、電解質膜の内部に配置可能な程度の厚さ(例えば、電解質膜よりも薄い厚さ)を有するものであれば、特に限定されない。なお、電解質膜よりも薄い厚さ(例えば、1μm以下程度の厚さ)を有するピエゾ素子は、CVDやスパッタ等により形成することが可能である。
さらに、本発明において、ピエゾ素子等、圧力に関連するデータを検知する部位、及び、電極を被覆すべき絶縁物は、ノイズを低減してその測定結果をスムーズに出力可能とするものであれば、特に限定されない。当該絶縁物の具体例としては、フッ素系の樹脂(例えば、テフロン等。テフロンは、米国デュポン社の登録商標。)や、ポリエチレン等を挙げることができる。
また、本発明にかかる圧力検知手段の絶縁物の厚さは、可能な限り薄いことが好ましく、具体的には、10〜100μm以下等とすることが好ましい。
加えて、圧力検知手段の外形形状は特に限定されるものではないが、特に、圧力検知手段が電解質膜の内部に備えられる場合には、電解質膜の損傷を抑制するという観点から、その外形は円形とすることが好ましい。さらに、圧力検知手段は、配置する際の作業性や接触抵抗等を総合的に勘案して、適当な大きさとすることが可能であり、かかる大きさの具体例としては、縦3mm×横3mm程度等を挙げることができる。
また、上記説明では、MEA側に反応ガス供給路が形成されている形態のセパレータを備える燃料電池について記述したが、本発明にかかる燃料電池が備え得るセパレータは当該形態に限定されるものではなく、例えば、MEA側に反応ガス供給路が形成されていないフラットタイプのセパレータであっても良い。かかる形態の燃料電池とする場合には、セパレータと当接すべき層(燃料電池100ではアノード拡散層及びカソード拡散層)を、めっき法や発泡法等により製造されるステンレス鋼、チタン又はニッケル等の発泡金属、あるいは焼結金属等の多孔体により形成し、当該層に反応ガスが供給される形態の燃料電池とすれば良い。
加えて、これまで、アノード拡散層及びカソード拡散層が備えられる形態の燃料電池について記述したが、本発明の燃料電池は当該形態に限定されるものではない。アノード拡散層及び/又はカソード拡散層が備えられなくても良好な発電性能が得られる場合には、アノード拡散層及び/又はカソード拡散層が備えられていない形態の燃料電池とすることも可能である。
1、1a、1b、1c 電解質膜
2a アノード触媒層(電極)
3a カソード触媒層(電極)
5 MEA
7a、7b セパレータ
10 圧力検知手段
11 ピエゾ素子
50 単セル
60 セル積層体
70 締結手段
80 制御手段
100 燃料電池
2a アノード触媒層(電極)
3a カソード触媒層(電極)
5 MEA
7a、7b セパレータ
10 圧力検知手段
11 ピエゾ素子
50 単セル
60 セル積層体
70 締結手段
80 制御手段
100 燃料電池
Claims (7)
- 電解質膜及び該電解質膜の両側に配設される電極を備えるMEAと、該MEAの外側に配設されるセパレータとを備える単セル、を備えるセル積層体を備え、
1以上の前記単セルの内部に、前記電解質膜に加えられる圧力を検知すべき圧力検知手段が備えられていることを特徴とする、燃料電池。 - 前記圧力検知手段が、前記電解質膜に備えられていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
- 前記圧力検知手段が、前記電解質膜の積層面の法線方向に加えられる圧力を検知可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池。
- 前記圧力検知手段が、前記電解質膜の積層面方向に加えられる圧力を検知可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池。
- 前記圧力検知手段が、ピエゾ素子であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 複数の前記圧力検知手段を備える前記電解質膜が備えられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 前記セル積層体の端部に配設されて該セル積層体に締結圧力を加えるべき締結手段と、前記締結圧力を制御すべき制御手段とをさらに備え、
前記電解質膜の積層面と平行に備えられる前記圧力検知手段を介して検知された圧力の値に基づいて、前記締結圧力が制御されることを特徴とする、請求項1〜3、5、又は6のいずれか1項に記載の燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005075645A JP2006260907A (ja) | 2005-03-16 | 2005-03-16 | 燃料電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005075645A JP2006260907A (ja) | 2005-03-16 | 2005-03-16 | 燃料電池 |
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JP2006260907A true JP2006260907A (ja) | 2006-09-28 |
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JP2005075645A Pending JP2006260907A (ja) | 2005-03-16 | 2005-03-16 | 燃料電池 |
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JP (1) | JP2006260907A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015502644A (ja) * | 2011-12-14 | 2015-01-22 | ヘルムート シュミット ウニヴェルシテート, ウニヴェルシテート デル ブンデスヴェー ハンブルク | 内部制御可能な燃料電池 |
-
2005
- 2005-03-16 JP JP2005075645A patent/JP2006260907A/ja active Pending
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JP2015502644A (ja) * | 2011-12-14 | 2015-01-22 | ヘルムート シュミット ウニヴェルシテート, ウニヴェルシテート デル ブンデスヴェー ハンブルク | 内部制御可能な燃料電池 |
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