[光記録媒体およびその製造方法]
本発明の光記録媒体は、第1の基板上に、少なくとも、情報記録層と画像記録層とをこの順に有し、画像記録層上に第2の基板を有する。そして、第2の基板の画像記録層側の面が粗面化されている。画像記録層側の面が粗面化されていることで、形成した可視画像の視認性を向上させることができる。これは、外から照射される光が、第2の基板の画像記録層側で散乱するためと考えられる。一方、画像記録層側とは反対側を粗面化してしまうと、可視画像の記録光が散乱されることで感度が低下し可視画像の記録がほとんど不可能となってしまう。なお、本発明の光記録媒体は、情報記録層と画像記録層との間に第3の基板があってもよい。
第2の基板の粗面化されている面(以下、「粗面化面」ということがある)の最大高さ(Rz)は、0.3〜5μmであって、かつ、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、10〜500μmであることが好ましい。この範囲にあることで、視認性を特に向上させることができる。
粗面化面は、第2の基板の画像記録層と接触する側の全面に設けてもよいが、具体的には、中心より20mmから58mmまでの領域に形成することが好ましい。20mm未満の領域に粗面化面を設けたとしても、光ピックアップが20mm未満の領域には入りにくく、粗面化面を設けることの役割が十分に果たせないおそれがある。他方、58mmを超えると画像記録層のエッジ部の洗浄がしにくくなる傾向がある。なお、粗面化面の形成方法(粗面化処理の方法)については、後述する。
本発明の光記録媒体の構成としては、まず、DVD型の構成(DVD−RやHD DVD等を含む)が挙げられる。すなわち、貼りあわせ型で、情報記録層が形成された第1の基板と画像記録層が形成された第2の基板とが接着層を介して貼り合わされた構成である。
なお、本明細書にいう「第2の基板」には、情報記録層等を挟んで第1の基板とは反対側に設けられる基板の他、カバー層や透明シートをも含む。従って、本発明の光記録媒体の他の構成として、CD型の構成(CD−R等を含む)とすることもできる。当該構成としては、基板上に、情報記録層と画像記録層とカバー層とがこの順に形成されてなる構成である。さらに、本発明の光記録媒体は、ブルーレイディスク(BD)の構成とすることもできる。
また、本発明の光記録媒体の粗面化面としては、第2の基板上に隣接して形成される中間層の画像記録層側の面を粗面化してもよい。中間層の画像記録層側の面を粗面化する場合には、必ずしも第2の基板に粗面化面を設けなくてもよい。このような中間層としては保護層があり、例えば、UV硬化樹脂から構成される保護層が挙げられる。
図1に、本発明の光記録媒体の模式断面図を例示する。なお、当該図面は、理解を容易にするため、誇張して表現している。
当該光記録媒体は、情報記録層201、反射層300が形成された第1の基板101と、画像記録層601、反射層401が形成された第2の基板501とが、それぞれの反射層が内側となるように、接着層801を介して貼り合わされてなる。そして、第2の基板501の画像記録層601が形成されている面が、粗面化されている。
光記録媒体に光学的な情報を記録する場合、または、記録された情報を再生する場合は、第1の基板101側から所定の波長(DVD−Rの場合は、650〜670nm、HD DVDの場合は、400〜410nm以下)のレーザー光を基板10側から照射する。
また、画像記録層601に可視画像を記録する場合は、第2の基板側から所定のレーザー光(例えば、線速度3.5m/s、波長660nm、NA=0.6、盤面10mWのレーザー光)を照射し、照射部分を変質させコントラストを変化させて、視認可能な画像を形成することができる。このように、レーザー光により画像を形成することができるので、プリンター等を別途用意することなく、光記録媒体ドライブによって光記録媒体のレーベル面(画像記録面)に所望の画像記録を効率よく行うことができる。また、第2の基板の画像記録層側の面が粗面化されているため、可視画像の視認性を向上させることができる。
なお、図1および後述する図2の層構成は単なる例示であり、当該層構成は上述の順番のみでなく一部を入れ替えてもよく、その他の公知の層を設けてもよい。さらに、各層は1層で構成されても複数層で構成されてもよい。
また、CD型の構成の場合は、図1との対応部分に同一符号を付して示す図2のように、第1の基板101上に、情報記録層201、反射層300、保護層701、反射層401、画像記録層601がこの順で形成され、画像記録層601上に粗面化されたカバー層901が形成された構成となる。かかる構成でも、カバー層901の画像記録層601側の面が粗面化されているため、可視画像の視認性を向上させることができる。
当該光記録媒体に光学的な情報を記録する場合、または、記録された情報を再生する場合は、第1の基板101側から所定の波長(例えば、660nm程度)のレーザー光を基板101側から照射する。
また、画像記録層601に可視画像を記録する場合は、第2の基板側から既述の所定量のレーザー光を照射し、照射部分を変質させコントラストを変化させて、視認可能な画像を形成することができる。このように、レーザー光により画像を形成することができるので、プリンター等を別途用意することなく、光記録媒体ドライブによって光記録媒体のレーベル面(画像記録面)に所望の画像記録を効率よく行うことができる。また、第2の基板の画像記録層側の面が粗面化されているため、可視画像の視認性を向上させることができる。
上記のような本発明の光記録媒体で、DVD型の光記録媒体は、以下に説明するようにして製造することができる。すなわち、第2の基板で、画像記録層が形成される側の面を粗面化する粗面化工程と、第2の基板の粗面化された面側に画像記録層等を形成する画像記録層形成工程と、第1の基板上に情報記録層を形成する情報記録層形成工程と、第1の基板と第2の基板とを、情報記録層および画像記録層が内層となるように貼りあわせる貼りあわせ工程とを経て製造される。情報記録層形成工程および画像記録層形成工程においては、必要に応じて、反射層や保護層を形成する処理が施される。なお、CD型の光記録媒体の場合は、第1の基板上に、少なくとも、情報記録層と画像記録層と粗面化面を有するカバー層とを形成して製造することができる。上記製造方法で示した基板及び各層についてより詳細に説明する。
情報記録層は、記録及び再生に使用されるレーザー光により情報の記録及び再生が行われる層である。特に、デジタル情報などの符号情報(コード化情報)が記録される。記録層としては、色素記録層でも相変化型記録層でもよいが、色素記録層が好ましい。
情報記録層に含有される色素の具体例としては、シアニン色素、オキソノール色素、アゾ色素、フタロシアニン色素、トリアゾール化合物(ベンゾトリアゾール化合物を含む)、トリアジン化合物、メロシアニン化合物、アミノブタジエン化合物、桂皮酸化合物、ベンゾオキサゾール化合物、ピロメテン化合物、スクアリリウム化合物等が挙げられる。なお、これらは配位中心に金属原子を持っていてもよい。
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、及び同2000−158818号公報等に記載されている色素を用いることも可能である。
上記化合物の中では、光記録媒体が「CD−R」の場合、シアニン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素が好ましく、「DVDーR」の場合、シアニン色素、オキソノール色素、アゾ色素(Ni、Co錯体を含む)、ピロメテン化合物が好ましく、「ブルーレイディスクおよびHD DVD」の場合、シアニン色素、オキソノール色素、アゾ色素、フタロシアニン色素、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物が好ましい。
また、「CD−R」の場合、シアニン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素がさらに好ましく、「DVD−R」の場合、シアニン色素、オキソノール色素、アゾ色素(Ni、Co錯体を含む)がさらに好ましく、「ブルーレイディスクおよびHD DVD」の場合、シアニン色素、オキソノール色素、アゾ色素、フタロシアニン色素がさらに好ましい。
情報記録層は、色素等の記録物質を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を第1の基板上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成される。塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
情報記録層の形成は、蒸着、スパッタリング、CVD、又は溶剤塗布等の方法によって行うことができるが、溶剤塗布が好ましい。この場合、前記色素等の他、更に所望によりクエンチャー、結合剤などを溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより行うことができる。
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;メチルシクロヘキサンなどの炭化水素;ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
結合剤を使用する場合、該結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。
情報記録層の材料として結合剤を併用する場合、結合剤の使用量は、一般に色素の質量の0.01倍量〜50倍量の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量の範囲にある。
前記溶剤の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。情報記録層は単層でも重層でもよい。情報記録層の層厚は一般に10〜500nmの範囲にあり、好ましくは15〜300nmの範囲にあり、より好ましくは20〜150nmの範囲にある。
情報記録層には、該情報記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては、一般的に、一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特聞昭58−175693号、同59−31194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同68−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、及び同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁などに記載のものを挙げることができる。
前記一重項酸素クエンチャーなどの褪色防止剤の使用量は、通常、色素の質量の0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
また、情報記録層が相変化型の場合は、結晶状態と非晶状態の少なくとも2つの状態をとり得る少なくともAg、Al、In、Te、Sbからなる相変化型の光記録材料からなることが好ましい。かかる記録層は、公知の方法で形成することができる。なお、当該記録層上には、必要に応じて、公知の誘電体層が形成されることが好ましい。
(画像記録層)
本発明の光記録媒体は、前述のように、情報記録層よりも第2の基板もしくはカバー層側に画像記録層を有する。画像記録層には、文字、図形、絵柄など、ユーザーが所望する可視画像(可視情報)が記録される。可視画像としては、例えば、ディスクのタイトル、内容情報、内容のサムネール、関連した絵柄、デザイン的な絵柄、著作権情報、記録日時、記録方法、記録フォーマット、バーコード等が挙げられる。
画像記録層は、レーザー光の照射により、文字、画像、絵柄などの画像情報を視認可能に記録できればよく、その構成材料としては、既述の情報記録層において説明した色素から適宜選択することができる。
特に、当該画像記録層は、所定パワーのレーザー光が略同一の軌跡に複数回照射されて可視情報が記録される層、あるいは、所定パワーのレーザー光が光記録媒体の半径方向に揺動し、かつ、略同一の軌跡に複数回照射されて可視情報が記録される層であることが好ましい。
また、本発明の光記録媒体においては、既述の情報記録層の構成成分(色素又は相変化記録材料)と画像記録層の構成成分とを同じとしても異ならせてもよいが、情報記録層と画像記録層とでそれぞれ要求される特性が相違するため、構成成分は異ならせることが好ましい。具体的には、情報記録層の構成成分は記録・再生特性に優れるものとし、画像記録層の構成成分は記録画像のコントラストが高くなるものとすることが好ましい。特に、色素を用いる場合、画像記録層には、記録画像のコントラスト向上の観点から、既述の色素の中でも特に、シアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体、オキソノール色素、ロイコ系染料を用いることが好ましい。
また、ロイコ系の染料も使用することができる。具体的には、クリスタルバイオレットラクトン;3,3−ビス(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド等のフタリド化合物;3−シクロヘキシルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6(N−エチルイソペンチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ベンジルエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−メチルプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどのフルオラン化合物;等が好ましい。
画像記録層は、前述の色素を溶剤に溶解して塗布液を調製し、該塗布液を塗布することによって形成することができる。溶剤としては情報記録層の塗布液の調製に使用する溶剤と同じ溶剤を使用することができる。その他の添加剤、塗布方法など、既述の情報記録層と同様にして行うことができる。
画像記録層の層厚としては、0.01〜50μmとすることが好ましく、0.02〜20μmとすることがより好ましく、0.03〜5μmとすることがさらに好ましい。
(第1の基板)
第1の基板(情報記録層側の基板で、図1の例では、符号101に相当)は、従来の光記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。
基板材料としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィンおよびポリエステルなどを挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。なお、これらの材料はフィルム状としてまたは剛性のある基板として使うことができる。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。
第1の基板の厚さは、0.05〜1.2mmとすることが好ましく、0.1〜1.1mmとすることがより好ましい。
基板には、トラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プリグルーブ)が形成されている。
DVD−RまたはDVD−RWの場合は、プリグルーブのトラックピッチは、300〜900nmの範囲とすること好ましく、350〜850nmとすることがより好ましく、400〜800nmとすることがさらに好ましい。
また、プリグルーブの深さ(溝深さ)は、100〜160nmの範囲とすることが好ましく、120〜150nmとすることがより好ましく、130〜140nmとすることがさらに好ましい。さらに、プリグルーブの溝幅(半値幅)は、200〜400nmの範囲とすることが好ましく、230〜380nmとすることがより好ましく、250〜350nmとすることがさらに好ましい。
一方、より高い記録密度を達成するために、従来のDVD−R等に比べて、より狭いトラックピッチのグルーブが形成された基板を用いてもよい。この場合、グルーブのトラックピッチは、280〜450μmの範囲にとすることが好ましく、300〜420nmの範囲とすることがより好ましく、320〜400nmとすることがさらに好ましい。また、グルーブの深さ(溝深さ)は、15〜150nmの範囲とすることが好ましく、25〜100nmの範囲とすることがより好ましい。また、グルーブの溝幅は、50〜250nmの範囲とすることが好ましく、100〜200nmの範囲とすることがより好ましい。
CD−R等の場合、グルーブのトラックピッチは、1.2〜2.0μmの範囲とすること好ましく、1.4〜1.8μmとすることがより好ましく、1.55〜1.65μmとすることがさらに好ましい。グルーブの深さ(溝深さ)は、100〜250nmの範囲とすることが好ましく、150〜230nmとすることがより好ましく、170〜210nmとすることがさらに好ましい。プリグルーブの溝幅は、400〜650nmの範囲とすることが好ましく、480〜600nmとすることがより好ましく、500〜580nmとすることがさらに好ましい。
記録層が設けられる側の第1の基板表面側(グルーブが形成された面側)には、平面性の改善、接着力の向上および記録層の変質防止の目的で、下塗層が設けられてもよい。
下塗層の材料としては例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;およびシランカップリング剤などの表面改質剤などを挙げることができる。下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
(反射層)
情報の再生時における反射率の向上の目的で、情報記録層および/または画像記録層に隣接して反射層が設けられることが好ましい。反射層の材料としての光反射性物質は、レーザー光に対する反射率が高い物質を用いることが好ましい。その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属あるいはステンレス鋼、半導体材料等を挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。
上記材料の中で好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。特に好ましくは、Au金属、Ag金属、Al金属あるいはこれらの合金であり、最も好ましくは、Ag合金(Ag−Nd−CuおよびAg−Pd−Cu)である。
反射層は、例えば、上記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板もしくは記録層の上に形成することができる。反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。
(接着層)
接着層は、DVD等の貼り合わせ型の光記録媒体を作製する際に、積層体同士または、第1の基板を含む積層体と第2の基板とを接着して貼りあわせるために設けられる。接着層を構成する材料としては、光硬化性樹脂が好ましく、なかでもディスクの反りを防止するため、硬化収縮率の小さいものが好ましい。このような光硬化性樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のSD−640、SD−661、ソニーケミカル(株)製のSK6100、SK6300、SK6400を挙げることができる。また、接着層の厚さは、弾力性を持たせるため、1〜100μmの範囲が好ましく、5〜60μmの範囲がより好ましく、20〜55μmの範囲が特に好ましい。
(保護層)
保護層は、水分の侵入やキズの発生を防止するために設けられる任意の層である。保護層を構成する材料としては、紫外線硬化樹脂、可視光硬化樹脂、熱硬化性樹脂、二酸化ケイ素等であることが好ましく、なかでも紫外線硬化樹脂であることが好ましい。該紫外線硬化樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業社製の「SD−640」等の紫外線硬化樹脂を挙げることができる。また、SD−347(大日本インキ化学工業社製)、SD−694(大日本インキ化学工業製)、SKCD1051(SKC社製)等を使用することができる。保護層の厚さは、1〜200μmの範囲が好ましく、50〜150μmの範囲がより好ましい。
(第2の基板)
粗面化面を有する第2の基板(ダミー基板または保護基板ともいう)は、貼り合わせ型の光記録媒体の場合に、第1の基板と対向して設けられる。材質としては、前述の「第1の基板」と同じ材質のものを使用することができる。また、前述の「第1の基板」と同様、画像記録層が形成される面側には、何ら溝を設けなくてもよい。第2の基板の厚さは、0.05〜1.2mmとすることが好ましく、0.1〜1.1mmとすることがより好ましく、0.5〜0.7mmとすることがさらに好ましい。
第2の基板について、画像記録層が形成される側の面を粗面化するための工程(粗面化工程)における粗面化方法としては、種々の方法があり特に限定はされないが、下記のような第1〜第5の粗面化処理のいずれかを適用することが好ましい。
(1)第1の粗面化処理は、第2の基板が接触する一方の面に、粗面化処理が施されたスタンパを用いて、第2の基板の画像記録層が形成される側の面を粗面化するものである。具体的には、まず、第2の基板を作製する際に使用するスタンパに粗面化処理を施す。当該粗面化処理の方法としては、例えば、サンドブラストといったブラスト処理等を行い、所望の粗さとしておく。また、第5の粗面化処理で説明するような化学処理を施してもよい。そして、このスタンパを粗面化面が第2の基板の樹脂材料に接触するように金型に設置し、公知の方法により成型することで、一方の面にのみ粗面化面を有する第2の基板が作製される。なお、上記「所望の粗さ」としては、例えば、当該面の最大高さ(Rz)が0.3〜5μmであって、かつ、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が、10〜500μmとすることが好ましい。
(2)第2の粗面化処理は、成型後に第2の基板が接触する一方の面に粗面化処理が施された成型金型を用いて、第2の基板の画像記録層が形成される側の面を粗面化するものである。具体的には、第2の基板の成型用金型で、その一方の主面に粗面化処理を施す。当該粗面化処理の方法としては、上記第1の粗面化処理の場合と同様であり、当該金型を用い、公知の方法により成型することで、一方の面にのみ粗面化面を有する第2の基板が作製される。
(3)第3の粗面化処理は、第2の基板を作製した後、画像記録層が形成される側の面に微粒子を分散した樹脂を塗布し、樹脂を硬化させて、第2の基板の画像記録層が形成される側の面を粗面化するものである。上記樹脂としては、アクリレート系紫外線硬化樹脂、エポキシ系、イソシアネート系熱硬化性樹脂等を使用することができる。
また、微粒子は、SiO2、Al2O3等の無機微粒子やポリカーボネート、アクリル系の樹脂粒子等を使用することができる。微粒子の体積平均粒径は、0.3〜200μmであることが好ましく、0.6〜100μmであることがより好ましい。当該微粒子の粒径と添加量を調整することで、粗面化面を所望の粗さとすることができる。
(4)第4の粗面化処理は、第2の基板を作製した後、画像記録層が形成される側の面に機械加工処理を施して、第2の基板の画像記録層が形成される側の面を粗面化するものである。機械加工処理としては、種々の処理が適用できるが、サンドブラストといったブラスト処理を適用することが好ましい。
(5)第5の粗面化処理は、第2の基板を作製した後、画像記録層が形成される側の面に化学処理を施して、第2の基板の画像記録層が形成される側の面を粗面化するものである。化学処理としては、成型後の第2の基板の一方の面に溶剤を塗布したり、スプレーで噴霧したりしてエッチングする処理を適用することができる。当該溶剤としては、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤が好ましく、それ以外に、硝酸、塩酸、硫酸といった酸性溶剤などを挙げることができる。上記のような酸性溶剤の規定度を調整したり、塗布時間を調整することで、所望の粗さとすることができる。
第2の基板がカバー層である場合の当該カバー層は、一般的には、情報記録層、画像記録層などを物理的および化学的に保護する目的で設けられるが、本発明では、当該目的のほかに、画像記録層側のカバー層を粗面化することで、可視画像の視認性を向上させている。カバー層の層厚は、10nm〜5μmの範囲にあることが好ましい。
また、カバー層として、ポリカーボネートや三酢酸セルロースからなる透明シートを用いてもよい。この場合の透明シートの厚みは、0.01〜0.2mmとすることが好ましい。透明シートの画像記録層側の粗面化処理としては、既述の第1〜第5の粗面化処理を適用することが好ましい。
画像記録層側のカバー層を粗面化するには、第3の粗面化処理で挙げた微粒子を樹脂中に分散させ、流延によってシート状にすればよい。
以上説明した粗面化された基板(本明細書にいうところの第2の基板)は、上述したように基板の一方の面上に、少なくとも画像記録層および情報記録層がこの順で形成される光記録媒体の基板として使用される。また、このような基板は、光記録媒体以外に、上記画像記録層を有し、当該記録層に対して光により画像を形成可能な光学部材にも使用できる。このような光学部材は、基板の一方面上に少なくとも画像記録層が形成されており、上記基板の一方面が粗面化されていればよい、光学部材としては、例えば、シール等がある。
[基板およびその使用方法、スタンパーおよびその製造方法]
本発明の基板は、少なくとも一方の面に粗面化処理が施されている。本発明の基板の使用方法は、本発明の基板を光記録媒体に使用するものである。具体的には、既述の本発明の光記録媒体で言及されている第2の基板が相当する。
本発明のスタンパーは、一方の面に粗面化処理が施されている。そして、当該スタンパーは、例えば、その一方の面に粗面化処理を施す粗面化工程を含む本発明のスタンパーの製造方法により製造することができる。具体的には、既述の光記録媒体の製造方法で言及した粗面化工程に記載の第1の態様のスタンパーが挙げられる。当該スタンパーを製造するための粗面化処理方法としては、ブラスト処理等を施す、あるいは前記第5の粗面化処理方法に記載の酸性溶剤中に浸漬、もしくは当該溶液を塗布、噴霧するといった処理方法が好ましい。また、粗面化状態の調整は、ブラスト処理の場合はブラスト粒子の材質、粒径、噴出速度などの条件を適宜調整すればよい。エッチング処理の場合は酸性溶剤種やその規定度、塗布時間などの条件を適宜調整すればよい。
また、当該スタンパーは、作製する基板の粗面化されている面の最大高さ(Rz)が、0.3〜5μmであって、かつ、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が、10〜500μmであることが好ましい。ここで、スタンパーおよび基板の粗面化面の「Rz」「RSm」は、いずれも原子間力顕微鏡(AFM), 光干渉式粗さ計, 触針式粗さ計などにより測定することができる。特に、走査長が長く、かつ深さ方向のダイナミックレンジが大きいことから触針式粗さ計が好適である。
[記録方法]
本発明の光記録媒体(光ディスク)において、画像記録層への画像の記録、及び情報記録層への光情報の記録は、両層への記録機能を有する1つの光記録媒体ドライブ(記録装置)で行うことができる。このように1つの光記録媒体ドライブを使用する場合、画像記録層及び情報記録層のいずれか一方の層への記録を行った後、裏返して他方の層に記録を行うことができる。画像記録層への可視画像の記録をする機能を有する光記録媒体ドライブとしては、例えば、特開2003−203348号公報、特開2003−242750号公報等に記載されている。
また、画像記録層への可視画像の記録に際し、記録装置は、前記光記録媒体と前記レーザーピックアップとを、画像記録層に形成されたトラッキング用の溝によりトラッキングし、光記録媒体の面に沿って相対移動させ、該相対移動に同期してレーザー光を、画像形成しようとする文字、絵等の画像データに応じて変調して画像記録層に向けて照射して可視画像を記録する。このような構成は、例えば、特開2002−203321号公報等に記載されている。
本発明の光記録媒体の画像記録層への画像記録は、具体的には、本発明の光記録媒体と、少なくとも該光記録媒体の画像記録層への画像情報の記録が可能な記録装置とを用いて行う。
以下、先ず、本発明の光記録媒体への記録に用いられる記録装置について説明する。
(光記録媒体記録装置)
本発明の光記録媒体において、画像記録層への画像の記録、及び情報記録層への光情報の記録は、例えば、両層への記録機能を有する1つの光記録媒体ドライブ(記録装置)で行うことができる。このように1つの光記録媒体ドライブを使用する場合、画像記録層及び情報記録層のいずれか一方の層への記録を行った後、裏返して他方の層に記録を行うことができる。
上述した本発明の光記録媒体は、以下のような装置及び方法に対して特に好適に使用することができる。
例えば、上述した本発明の光記録媒体が好適に使用される光記録媒体記録装置は、
(1)光記録媒体の記録面(例えば、情報記録層(記録層))に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップによる前記光記録媒体に対するレーザ光の照射位置を調整する照射位置調整手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップおよび前記照射位置調整手段を制御する画像形成制御手段と、前記可視画像を形成する際に前記画像記録層に対して前記光ピックアップが照射するレーザ光のビームスポット径が、情報記録を行う際に前記記録面に対して前記光ピックアップが照射するレーザ光のビームスポット径よりも大きくなるように前記光ピックアップを制御するビームスポット制御手段とを具備することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際に、光記録媒体の画像記録層に照射するレーザ光のビームスポット径を大きくすることにより、光記録媒体が1回転させられている間により大きい領域に対してレーザ光を照射することができ、可視画像形成のために要する時間を短縮することができる。また、上述した本発明の光記録媒体はこのような方法でも良好な可視画像を記録することができる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(2)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップによる前記光記録媒体に対するレーザ光の照射位置を調整する照射位置調整手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップおよび前記照射位置調整手段を制御する手段であって、前記光ピックアップが前記画像記録層に対して照射するレーザ光の強度が、前記画像情報に基づいて前記画像記録層がほとんど変化しない第1の強度、もしくは該第1の強度よりも大きく前記画像記録層が変化する第2の強度のいずれかとなるよう制御する画像形成制御手段と、前記光記録媒体に対して前記光ピックアップによって照射されるレーザ光に関する情報を検出し、当該検出結果に基づいて、所望のレーザ光が照射されるよう前記光ピックアップを制御するサーボ手段とを具備し、前記画像形成制御手段は、前記画像情報に基づく制御にしたがって前記光ピックアップが照射するレーザ光の強度が連続して第2の強度となっている時間が一定の時間を超えた場合に当該画像情報の内容に関わらず、前記光ピックアップから照射されるレーザ光の強度が所定の時間だけ第1の強度となるよう制御し、前記サーボ手段は、前記第1の強度で照射されたレーザ光に関する情報の検出結果に基づいて前記光ピックアップを制御することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際に、画像データに応じたレーザ光の強度が画像記録層を変化させる第2の強度である時間が長く続いた場合にも、その画像データに拘わらず、レーザ光制御のために画像記録層がほとんど変化しない第1の強度のレーザ光を照射するようにしたので、その照射結果に基づいたレーザ光制御を行うことができる。また、上述した本発明の光記録媒体はこのような方法でも良好な可視画像を記録することができる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(3)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップによる前記光記録媒体に対するレーザ光の照射位置を調整する照射位置調整手段と、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記記録面に形成されるよう前記光ピックアップおよび前記照射位置調整手段を制御する手段であって、前記光ピックアップが前記記録面に対して照射するレーザ光の強度が、前記画像情報に基づいて前記記録面がほとんど変化しない第1の強度、もしくは該第1の強度よりも大きく前記記録面が変化する第2の強度のいずれかとなるよう制御する画像形成制御手段と、前記光記録媒体に対して前記光ピックアップによって照射されるレーザ光に関する情報を検出し、当該検出結果に基づいて、所望のレーザ光が照射されるよう前記光ピックアップを制御するサーボ手段とを具備し、前記画像形成制御手段は、前記画像情報に基づく制御にしたがって前記光ピックアップが照射するレーザ光の強度が連続して第2の強度となっている時間が一定の時間を超えた場合に当該画像情報の内容に関わらず、前記光ピックアップから照射されるレーザ光の強度が所定の時間だけ第1の強度となるよう制御し、前記サーボ手段は、前記第1の強度で照射されたレーザ光に関する情報の検出結果に基づいて前記光ピックアップを制御することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該記録層の反射率を画像様に変化させて画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際に、画像データに応じたレーザ光の強度が記録面を変化させる第2の強度である時間が長く続いた場合にも、その画像データに拘わらず、レーザ光制御のために記録面がほとんど変化しない第1の強度のレーザ光を照射するようにしたので、その照射結果に基づいたレーザ光制御を行うことができる。また、上述した本発明の光記録媒体はこのような方法でも良好な可視画像を記録することができる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(4)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップによる前記光記録媒体に対するレーザ光の照射位置を調整する照射位置調整手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップおよび前記照射位置調整手段を制御する画像形成制御手段と、前記光記録媒体が当該光記録媒体記録装置にセットされた際に、前記光記録媒体における前記光ピックアップと対向する面が前記画像記録層であるか前記記録面であるかに基づいて、前記光記録媒体の前記光ピックアップと対向する面と前記光ピックアップとの相対位置関係を調整する相対位置調整手段とを具備することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。そして、光記録媒体がセットされた場合、画像記録層もしくは記録面のいずれが光ピックアップと対向するようにセットされたかに応じて光ピックアップと、これに対向する面との間の位置関係を調整することができる。したがって、記録面を光ピックアップに対向するようにセットした場合と、画像記録層を光ピックアップに対向するようにセットした場合とで光ピックアップとこれに対向する面との距離が異なる場合であっても、その距離の差に起因して種々の制御、例えばフォーカス制御等ができなくなってしまうといった問題を抑制できる。また、上述した本発明の光記録媒体はこのような方法でも良好な可視画像を記録することができる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(5)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップによる前記光記録媒体に対するレーザ光の照射位置を調整する照射位置調整手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体であって、前記記録面に案内溝が螺旋状に形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、前記光ピックアップが照射したレーザ光の前記光記録媒体からの反射光に基づいて前記案内溝に沿ってレーザ光が照射されるよう前記照射位置調整手段を制御するサーボ手段と、前記サーボ手段によって前記案内溝に沿って前記レーザ光の照射位置が移動させられている間に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップから照射されるレーザ光を制御する画像形成制御手段とを具備することを特徴としている。また、上述した本発明の光記録媒体はこのような方法でも良好な可視画像を記録することができる。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。この際、記録面に形成された案内溝を検出し、該検出した案内溝に沿ってレーザ光照射位置を移動させるといった記録面に対して記録を実施するときと比して複雑なレーザ光照射位置制御を行うことなく、可視画像形成を行うことができる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(6)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光記録媒体を回転させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段による前記光記録媒体の回転速度に応じた周波数のクロック信号を出力するクロック信号出力手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップを制御する手段であって、前記信号出力手段によってクロック信号の周期毎に前記画像情報に基づいて前記光ピックアップから照射されるレーザ光を制御する画像形成制御手段と、前記回転駆動手段によって前記光記録媒体が所定の基準位置から1回転させられたことを検出する回転検出手段と、前記可視画像を前記光記録媒体の前記画像記録層に形成するために前記光ピックアップによってレーザ光が照射された状態で前記光記録媒体が前記所定の基準位置から1回転させられたことが前記回転検出手段によって検出された場合に、前記光ピックアップによるレーザ光の照射位置を当該光記録媒体記録装置にセットされた前記光記録媒体の所定の径方向に所定量移動させる照射位置調整手段とを具備することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。この可視画像形成の際に、光記録媒体の回転速度に応じた周波数のクロック信号の周期毎、つまり光記録媒体が一定角度回転する毎に可視画像形成のためのレーザ光照射制御を行っているので、光記録媒体の一定の角度毎の位置に画像データに応じた内容(例えば、濃度)の可視画像を形成することができる。また、上述した本発明の光記録媒体はこのような方法でも良好な可視画像を記録することができる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(7)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光記録媒体を回転させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段によって前記光記録媒体が所定の基準位置から1回転させられたことを検出する回転検出手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップを制御する画像形成制御手段と、前記可視画像を前記光記録媒体の前記画像記録層に形成するために前記光ピックアップによってレーザ光が照射された状態で前記光記録媒体が前記所定の基準位置から1回転させられたことが前記回転検出手段によって検出された場合に、前記光ピックアップによるレーザ光の照射位置を当該光記録媒体記録装置にセットされた前記光記録媒体の所定の径方向に所定量移動させる照射位置調整手段とを具備しており、前記画像形成制御手段は、前記回転駆動手段によって回転させられる前記光記録媒体の前記画像記録層の前記所定の基準位置から前記可視画像を形成するために前記光ピックアップにレーザ光を照射させる一方で、当該レーザ光の照射位置が前記光記録媒体の前記所定の基準位置に達するよりも所定量だけ前方の位置から前記所定の基準の位置までの領域に対して前記可視画像形成のためのレーザ光が照射されないよう前記光ピックアップを制御することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際に、光記録媒体を回転させながら、当該光記録媒体の基準位置からレーザ光を照射して可視画像を形成し、レーザ光照射位置がその基準位置に戻る直前の領域に対しては可視画像形成のためのレーザ光照射を行わないようにしている。したがって、光記録媒体の回転が不安定になる等の何らかの理由でレーザ光照射位置制御が乱れ、基準位置からレーザ光を照射し続けて光記録媒体が1回転させられ、その照射位置が再度基準位置を通過する、つまり後に既にレーザ光を照射した位置とに重なる位置にレーザ光の照射位置が移動するといったことがあった場合にも、その位置に可視画像形成のためのレーザ光が照射されることを抑制でき、この結果形成される可視画像の品位が劣化することを防止できる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(8)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップによる前記光記録媒体に対するレーザ光の照射位置を調整する照射位置調整手段と、当該光記録媒体記録装置にセットされた光記録媒体の種類を識別するためのディスク識別情報を取得するディスク識別手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップおよび前記照射位置調整手段を制御する手段であって、前記ディスク識別手段によって識別された光記録媒体の種類に応じて前記光ピックアップおよび前記照射位置調整手段を制御する画像形成制御手段とを具備することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際に、セットされたディスクの種類に応じた可視画像形成のための制御を行うことができる。
また、別態様の光記録媒体記録装置は、
(9)光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、外部から供給される情報を変調する変調手段と、前記変調手段から供給される情報に応じて前記光ピックアップから照射されるレーザ光を制御するレーザ光制御手段とを備えた光記録媒体記録装置において、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体の前記画像記録層に対して可視画像を形成する場合に、外部から供給される画像情報に対する前記変調手段による変調を禁止する禁止手段と、前記光記録媒体の前記画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、前記変調手段から供給される変調がなされていない画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記レーザ光制御手段を制御する画像形成制御手段とを具備することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際には、記録面に対して情報を記録する時に記録データに対して変調を施す変調手段による変調を禁止しているので、画像データが変調されることがない。したがって、当該画像データに応じた可視画像を形成するために特別のデータ転送構成を設けることなく、記録面に対して情報記録をする際のデータ転送構成を併用することができる。
別態様の光記録媒体記録装置は、
(10)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体に対してレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップによる前記光記録媒体に対するレーザ光の照射位置を調整する照射位置調整手段と、一方の面に前記記録面が他方の面に画像記録層が形成された光記録媒体が、当該画像記録層が前記光ピックアップと対向するようにセットされた場合に、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップおよび前記照射位置調整手段を制御する画像形成制御手段とを具備しており、前記画像形成制御手段は、前記画像情報に示される階調度合いに応じて前記光ピックアップから照射されるレーザ光を制御することを特徴としている。
この構成によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際に、画像データに示される画像記録層上の各位置(座標)の階調度に応じたレーザ光制御を行うことができ、階調表現がなされた可視画像を形成することができる。
別態様の光記録媒体記録装置は、
(11)光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光記録媒体記録装置であって、光記録媒体を回転させる回転手段と、前記回転手段により回転する光記録媒体に対し、前記一方の面からレーザ光を照射するとともに、当該光記録媒体の略半径方向に移動可能な光ピックアップと、画像記録層に可視画像を形成する際に前記光ピックアップから出射されるレーザ光のレベルを調整する手段であって、形成すべき可視画像を表す画像データに基づいて、前記光記録媒体の前記記録層および前記画像記録層をほとんど変化させない第1の強度、あるいは、前記記録層をほとんど変化させないとともに前記画像記録層の発色を変化させる第2の強度のいずれかになるように前記光ピックアップから出射されるレーザ光のレベルを調整するレーザ光レベル制御手段とを有することを特徴とする。
この装置によれば、上記本発明の光記録媒体に対して、従来と同様にして記録層に対してレーザ光を照射して情報記録をすることができるとともに、画像記録層に対して可視画像の形成をすることができる。さらに、情報記録も、可視画像の形成も、光記録媒体の同一面からレーザ光を照射することにより実行することが可能であることから、ユーザは光記録媒体を裏返して再セットするなどの煩わしい作業をする必要がない。
また、本発明の光記録媒体の画像記録層への画像形成方法は、光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報記録を行う光ピックアップを有する光記録媒体記録装置を用い、光記録媒体における前記記録面と反対側の面に形成された画像記録層に対して可視画像を形成する方法であって、前記光ピックアップによるレーザ光の照射位置を前記画像記録層に所定の螺旋状もしくは同心円周状の経路に沿って移動させながら、画像情報に対応する可視画像が前記光記録媒体の前記画像記録層に形成されるよう前記光ピックアップが照射するレーザ光を制御し、当該レーザ光の制御では、前記光記録媒体を複数に分割した扇形部分の各々に属する隣接する所定数(複数)の前記経路を含む領域を単位領域とし、前記可視画像における当該単位領域の濃淡が表現されるように当該単位領域に属する前記経路の各々に照射するレーザ光の照射タイミングを制御することを特徴としている。
この方法によれば、画像データに応じてレーザ光を光記録媒体の画像記録層に照射することによって、該画像記録層の吸光度変化に伴い、反射率が画像様に変化し、画像データに対応する可視画像を形成することができる。このような可視画像形成の際に、画像データに示される画像記録層上の各位置(座標)の階調度に応じたレーザ光照射タイミング制御を行うことができ、階調表現がなされた可視画像を形成することができる。
A.上記光記録媒体記録装置の具体的構成
前記光記録媒体記録装置は、光記録媒体の記録面に対してレーザ光を照射して情報を記録する光記録媒体記録装置であり、このような記録面に対する情報記録だけではなく、記録面と反対側の面に画像記録層が形成された光記録媒体の当該画像記録層にレーザ光を照射することにより画像データに対応する可視画像を形成する機能を有している。なお、かかる装置では、所定の色素を使用する光記録媒体に対しては、画像記録層のみならず、通常のデジタルデータを記録する記録層に対しても可視画像を記録できる。
−光記録媒体記録装置の構成−
図3は光記録媒体記録装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この光記録媒体記録装置100は、ホストパーソナルコンピュータ(PC)110に接続されており、光ピックアップ10と、スピンドルモータ11と、RF(Radio Frequency)アンプ12と、サーボ回路13と、デコーダ15と、制御部16と、エンコーダ17と、ストラテジ回路18と、レーザドライバ19と、レーザパワー制御回路(LPC)20と、周波数発生器21と、ステッピングモータ30と、モータドライバ31と、モータコントローラ32と、PLL(Phase Locked Loop)回路33と、FIFO(First In FirstOut)メモリ34と、駆動パルス生成部35と、バッファメモリ36とを備えている。
スピンドルモータ11は、データを記録する対象となる光記録媒体Dを回転駆動するモータであり、サーボ回路13によりその回転数が制御される。本実施形態における光記録媒体記録装置100では、CAV(Constant Angular Velocity)方式で記録等を実施するようになっているので、スピンドルモータ11は制御部16等からの指示で設定された一定の角速度で回転するようになっている。
光ピックアップ10は、スピンドルモータ11によって回転させられる光記録媒体Dに対してレーザ光を照射するユニットであり、その構成を図4に示す。同図に示すように、光ピックアップ10はレーザービームBを出射するレーザーダイオード53と、回折格子58と、レーザービームBを光記録媒体Dの面に集光する光学系55と、反射光を受光する受光素子56とを備えている。
光ピックアップ10において、レーザーダイオード53は、レーザドライバ19(図3参照)から駆動電流が供給されることにより該駆動電流に応じた強度のレーザービームBを出射する。光ピックアップ10は、レーザーダイオード53より出射されたレーザービームBを回折格子58により主ビームと先行ビームと後行ビームに分離し、この3つのレーザービームを偏光ビームスプリッタ59、コリメータレンズ60、1/4波長板61、対物レンズ62を経て、光記録媒体Dの面に集光させる。そして、光記録媒体Dの面で反射された3つのレーザービームを、再び対物レンズ62、1/4波長板61、コリメータレンズ60を透過させて、偏光ビームスプリッタ59で反射させ、シリンドリカルレンズ63を経て、受光素子56に入射させるようになっている。受光素子56は受光した信号をRFアンプ12(図3参照)に出力し、該受光信号がRFアンプ12を介して制御部16やサーボ回路13に供給されるようになっている。
対物レンズ62は、フォーカスアクチュエータ64およびトラッキングアクチュエータ65に保持されて、レーザービームBの光軸方向および光記録媒体Dの径方向に移動できるようになっている。フォーカスアクチュエータ64およびトラッキングアクチュエータ65の各々は、サーボ回路13(図3参照)から供給されるフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号に応じて対物レンズ62を光軸方向および径方向に移動させる。なお、サーボ回路13は、受光素子56およびRFアンプ12を介して供給される受光信号に基づいてフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成し、上記のように対物レンズ62を移動させることでフォーカス制御およびトラッキング制御を行う。
また、光ピックアップ10には、図示しないフロントモニターダイオードを有しており、レーザーダイオード53がレーザ光を出射しているときに、当該出射光を受光したフロントモニタダイオードに電流が生じ、当該電流が光ピックアップ10から図3に示すレーザパワー制御回路20に供給されるようになっている。
RFアンプ12は光ピックアップ10から供給されたEFM(Eight to Fourteen Modulation)変調されたRF信号を増幅し、増幅後のRF信号をサーボ回路13およびデコーダ15にRF信号を出力する。デコーダ15は、再生時にはRFアンプ12から供給されるEFM変調されたRF信号をEFM復調して再生データを生成する。
サーボ回路13には、制御部16からの指示信号、周波数発生器21から供給されるスピンドルモータ11の回転数に応じた周波数のFGパルス信号、およびRFアンプ12からのRF信号が供給される。サーボ回路13は、これらの供給される信号に基づいて、スピンドルモータ11の回転制御および光ピックアップ10のフォーカス制御、トラッキング制御を行う。光記録媒体Dの記録面(情報記録層)に情報を記録する時や、光記録媒体Dの画像記録層(図1参照)に可視画像を形成する場合のスピンドルモータ11の駆動方式としては、光記録媒体Dを角速度一定で駆動する方式(CAV:Constant Angular Velocity)や、一定の記録線速度となるように光記録媒体Dを回転駆動する方式(CLV:Constant Linear Velocity)のいずれを用いるようにしてもよく、図1以降において説明する光記録媒体記録装置100では、CAV方式を採用しており、サーボ回路13はスピンドルモータ11を制御部16によって指示された一定の角速度で回転駆動させる。
バッファメモリ36は、ホストPC110から供給される、光記録媒体Dの記録面に記録すべき情報(以下、記録データという)および光記録媒体Dの画像記録層に形成すべき可視画像に対応した情報(以下、画像データ)を蓄積する。そして、バッファメモリ36に蓄積された記録データをエンコーダ17に出力され、画像データは制御部16に出力される。
エンコーダ17は、バッファメモリ36から供給される記録データをEFM変調し、ストラテジ回路18に出力する。ストラテジ回路18は、エンコーダ17から供給されたEFM信号に対して時間軸補正処理等を行い、レーザドライバ19に出力する。
レーザドライバ19は、ストラテジ回路18から供給される記録データに応じて変調された信号と、レーザパワー制御回路20の制御にしたがって光ピックアップ10のレーザダイオード53(図4参照)を駆動する。
レーザパワー制御回路20は、光ピックアップ10のレーザダイオード53(図4参照)から照射されるレーザパワーを制御するものである。具体的には、レーザパワー制御回路20は、制御部16によって指示される最適なレーザパワーの目標値と一致する値のレーザ光が光ピックアップ10から照射されるようにレーザドライバ19を制御する。ここで行われるレーザパワー制御回路20によるレーザパワー制御は、光ピックアップ10のフロントモニタダイオードから供給される電流値を用い、目標となる強度のレーザ光が光ピックアップ10から照射されるように制御するフィードバック制御である。
FIFOメモリ34には、ホストPC110から供給されバッファメモリ36に蓄積された画像データが制御部16を介して供給され順次蓄積される。ここで、FIFOメモリ34に蓄積される画像データ、すなわちホストPC110から当該光記録媒体記録装置100に供給される画像データは以下のような情報を含んでいる。この画像データは、円盤状の光記録媒体Dの面上に可視画像を形成するためのデータであり、図5に示すように、光記録媒体Dの中心Oを中心とした多数の同心円上のn個の各座標(図中黒点で示す)毎にその階調度(濃淡)を示す情報が記述されている。当該画像データは、これらの各座標の階調度を示す情報が最内周側の円に属する座標点P11、P12……P1n、その1つ外周側の円に属する座標P21、P22……P2n、さらにその1つ外周側の円に属する座標といった順序で最外周の円の座標Pmnまでの各々座標点の階調度を示す情報が記述されたデータであり、FIFOメモリ34にはこのような極座標上の各座標の階調度を示す情報が上記のような順序で供給されることになる。なお、図5は各座標の位置関係を明瞭に示すために模式的に示す図であり、実際の各座標は図示したものよりも密に配置されることになる。また、ホストPC110において、一般的に使用されるビットマップ形式等で光記録媒体Dの感光面に形成する画像データを作成した場合には、当該ビットマップデータを上記のような極座標形式のデータに変換し、変換後の画像データをホストPC110から光記録媒体記録装置100に送信するようにすればよい。
上記のように供給される画像データに基づいて、光記録媒体Dの画像記録層に対して可視画像を形成する際、FIFOメモリ34には、PLL回路33から画像記録用のクロック信号が供給されるようになっている。FIFOメモリ34は、この画像記録用のクロック信号のクロックパルスが供給される毎に、最も先に蓄積された一つの座標の階調度を示す情報を駆動パルス生成部35に出力するようになっている。
駆動パルス生成部35は、光ピックアップ10から照射するレーザ光の照射タイミング等を制御する駆動パルスを生成する。ここで、駆動パルス生成部35は、FIFOメモリ34から供給される各座標毎の階調度を示す情報に応じたパルス幅の駆動パルスを生成する。例えば、ある座標の階調度が比較的大きい場合(濃度が大きい場合)には、図6上段に示すようにライトレベル(第2の強度)のパルス幅を大きくした駆動パルスを生成し、一方階調度が比較的小さい座標については図6下段に示すようにライトレベルのパルス幅を小さくした駆動パルスを生成する。ここで、ライトレベルとは、そのレベルのレーザパワーを光記録媒体Dの画像記録層に照射した際に画像記録層に変化が生じ、反射率が明らかに変化するパワーレベルであり、上記のような駆動パルスがレーザドライバ19に供給された場合、そのパルス幅に応じた時間だけライトレベルのレーザ光が光ピックアップ10から照射される。したがって、階調度が大きい場合にはより長くライトレベルのレーザ光が照射され、光記録媒体Dの画像記録層の単位領域中のより大きな領域において反射率が変化することになり、この結果ユーザ等はこの領域が濃度の濃い領域であると視覚的に認識することになる。本実施形態では、このように単位領域(単位長さ)あたりの反射率変化させる領域の長さを可変することにより、画像データに示される階調度を表現するようにしているのである。なお、サーボレベル(第1の強度)とは、そのレベルのレーザパワーを光記録媒体Dの画像記録層に照射した際に画像記録層がほとんど変化しないパワーレベルであり、反射率を変化させる必要がない領域に対してはライトレベルのレーザ光を照射せずに当該サーボレベルのレーザ光を照射すればよい。
また、駆動パルス生成部35は、上記のような各座標毎の階調度を示す情報にしたがった駆動パルスを生成するとともに、レーザパワー制御回路20によるレーザパワー制御や、サーボ回路13によるフォーカス制御およびトラッキング制御を実施するために必要がある場合には、各々上記階調度を示す情報に拘わらず、非常に短い期間のライトレベルのパルスを挿入したり、サーボレベルのパルスを挿入する。例えば、図7上段に示すように、画像データ中のある座標の階調度にしたがって可視画像を表現するために、時間T1の期間ライトレベルのレーザ光を照射する必要がある場合であって、該時間T1がレーザパワーを制御するための所定のサーボ周期STよりも長い場合には、ライトレベルのパルスを生成した時点からサーボ周期STが経過した時点で非常に短い時間tのサーボ用オフパルス(SSP1)を挿入する。一方、図7下段に示すように、画像データ中のある座標の階調度にしたがって可視画像を表現するためにサーボ周期ST以上の期間サーボレベルのレーザ光を照射する必要がある場合には、サーボレベルのパルスが生成されてからサーボ周期ST経過後にサーボ用オンパルス(SSP2)を挿入する。
上述したようにレーザパワー制御回路20によるレーザパワー制御は、光ピックアップ10のレーザーダイオード53(図4参照)から照射されるレーザ光を受光したフロントモニターダイオードから供給される電流(照射レーザ光の強度に応じた値の電流)に基づいて実施されることになる。より具体的には、図8に示すように、レーザパワー制御回路20は、上記のようなフロントモニターダイオード53aによって受光される照射レーザ光の強度に応じた値をサンプルホールドする(S201、S202)。そして、ライトレベルを目標値として照射しているとき、すなわちライトレベルの駆動パルス(図6,図7参照)が生成されているときにサンプルホールドした結果に基づいて、制御部16から供給されるライトレベル目標値のレーザ光が照射されるようレーザパワー制御を行う(S203)。また、サーボレベルを目標値として照射しているとき、すなわちサーボレベルの駆動パルス(図6,図7参照)が生成されているときにサンプルホールドした結果に基づいて、制御部16から供給される目標サーボレベル値のレーザ光が照射されるようレーザパワー制御を行う(S204)。したがって、ライトレベルもしくはサーボレベルのパルスが所定のサーボ周期ST(サンプル周期)より長い時間継続して出力されない場合には、画像データの内容に拘わらず上記のようにサーボ用オフパルスSSP1、サーボ用オンパルスSSP2を強制的に挿入し、上記のような各々のレベル毎にレーザパワー制御ができるようにしているのである。
また、上述したようにサーボ用オフパルスSSP1を挿入するのは、レーザパワーを制御するためだけではなく、サーボ回路13によるフォーカス制御やトラッキング制御を行うためにも実施されている。すなわち、トラッキング制御およびフォーカス制御は、光ピックアップ10の受光素子56(図4参照)によって受光されたRF信号、つまりレーザーダイオード53が出射したレーザ光の光記録媒体Dからの戻り光(反射光)に基づいて行われる。ここで、図9にレーザ光を照射した時に受光素子56によって受光される信号の一例を示す。同図に示すように、ライトレベルのレーザ光を照射した時の反射光は、レーザ光立ち上がり時のピーク部分K1、その後レベルが一定になる肩部分K2の要素を含んでおり、図中斜線で示す部分が画像記録層の画像形成のために用いられたエネルギーであると考えられる。そして、このような画像記録層の画像形成に用いられるエネルギーは常に安定した値となるとは限らず、種々の状況に応じて変動することが考えられる。したがって、図中斜線部分の形状はその都度変動することが考えられ、つまりライトレベルのレーザ光の反射光はノイズ等が多く安定した反射光が得られるとは限らず、この反射光を用いると、正確なフォーカス制御およびトラッキング制御の妨げとなってしまうおそれがある。したがって、上述したようにライトレベルのレーザ光が継続して長時間照射された場合には、サーボレベルのレーザ光の反射光を得ることができず、正確なフォーカス制御およびトラッキング制御が行えなくなってしまう。
そこで、上述したようにサーボ用オフパルスSSP1を挿入することにより、サーボレベルのレーザ光の反射光を周期的に取得できるようにし、該取得した反射光に基づいてフォーカス制御およびトラッキング制御を実行しているのである。光記録媒体Dの画像記録層に可視画像を形成する際には、記録面に対して記録する際と異なり、予め形成されたプリグルーブ(案内溝)等に沿ってトレースするといった必要がない。したがって、本実施形態では、トラッキング制御の目標値は固定値(一定のオフセット電圧を設定しておく)としている。なお、このような制御方法は、画像記録層に画像情報を形成する場合のみならず、記録面に画像情報を形成する場合にも適用できる。すなわち、レーザ光を照射したときに反射率だけでなく発色も変化する材質を記録面(記録層)に用いれば、画像記録層と同様、記録面にも画像を形成させることが可能である。このように記録面に可視画像を形成させると、可視画像を形成した部分には当然ながら本来のデータ記録はできなくなるので、データ記録をする領域と可視画像を形成させる領域とを予め分けておくのが好ましい。
なお、上記のようにサーボ用オフパルスSSP1やサーボ用オフパルスSSP2を挿入する時間は、レーザパワー制御、トラッキング制御およびフォーカス制御といった各種サーボの実行に支障をきたさない範囲で最小の時間とすることが好ましく、挿入時間を非常に短くすることで、形成される可視画像にほとんど影響を与えることなく、上記のような各種サーボを行うことができる。
図3に戻り、PLL回路(信号出力手段)33は、周波数発生器21から供給されるスピンドルモータ11の回転速度に応じた周波数のFGパルス信号を逓倍し、後述する可視画像形成のために用いられるクロック信号を出力する。周波数発生器21は、スピンドルモータ11のモータドライバにより得られる逆起電流を利用してスピンドル回転数に応じた周波数のFGパルス信号を出力する。例えば、図10上段に示すように、周波数発生器21がスピンドルモータ11が1回転、すなわち光記録媒体Dが1回転している間に8個のFGパルスを生成するものである場合に、図10下段に示すように、PLL回路33は当該FGパルスを逓倍したクロック信号(例えばFGパルス信号5倍の周波数、光記録媒体Dが1回転中にHレベルのパルスが40個)を出力する、つまりスピンドルモータ11によって回転させられる光記録媒体Dの回転速度に応じた周波数のクロック信号を出力する。このようにFGパルス信号を逓倍したクロック信号がPLL回路33からFIFOメモリ34に出力され、該クロック信号に1周期毎、つまりある一定角度分ディスクDが回転する毎に1つの座標の階調度を示すデータがFIFOメモリ34から駆動パルス生成部35に出力されるのである。なお、上記のようにPLL回路33を用いてFGパルスを逓倍したクロック信号を生成するようにしてもよいが、スピンドルモータ11として、回転駆動能力が十分に安定しているモータを用いた場合には、PLL回路33に代えて水晶発振器を設け、上記のようなFGパルスを逓倍したクロック信号、すなわち光記録媒体Dの回転速度に応じた周波数のクロック信号を生成するようにしてもよい。
ステッピングモータ30は、光ピックアップ10を当該光記録媒体Dにセットされた光記録媒体Dの径方向に移動させるためのモータである。モータドライバ31は、モータコントローラ32から供給されるパルス信号に応じた量だけステッピングモータ30を回転駆動する。モータコントローラ32は、制御部16から指示される光ピックアップ10の径方向への移動方向および移動量を含む移動開始指示にしたがって、移動量や移動方向に応じたパルス信号を生成し、モータドライバ31に出力する。ステッピングモータ30が光ピックアップ10を光記録媒体Dの径方向に移動させること、および光記録媒体Dをスピンドルモータ11が光記録媒体Dを回転させることにより、光ピックアップ10のレーザ光照射位置を光記録媒体Dの様々な位置に移動させることができ、これらの構成要素が照射位置調整手段を構成しているのである。
制御部16は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等から構成されており、ROMに格納されたプログラムにしたがって当該光記録媒体記録装置100の装置各部を制御し、光記録媒体Dの記録面に対する記録処理および光記録媒体Dの画像記録層に対する画像形成処理を中枢的に制御するように構成されている。以上説明したのが本実施形態に係る光記録媒体記録装置100の構成である。
B.光記録媒体記録装置の動作
次に、上記構成の光記録媒体記録装置100の動作について説明する。上述したようにこの光記録媒体記録装置100は、光記録媒体Dの記録面に対してホストPC110から供給された音楽データ等の情報を記録することが可能であるとともに、光記録媒体Dの画像記録層に対してホストPC110から供給される画像データに対応した可視画像を形成することができるように構成されている。以下、情報記録および可視画像形成といった処理を行うことが可能な光記録媒体記録装置100の動作について図11および図12を参照しながら説明する。
まず、当該光記録媒体記録装置100に光記録媒体Dがセットされると、制御部16は光ピックアップ10等を制御し、セットされた光記録媒体Dの光ピックアップ10と対向する面がどのようなフォーマットの光記録媒体であるかを検出する。例えば、DVD−Rの場合はランドプリピット信号やプリレコード信号、DVD+Rの場合はADIP(Address in Pregroove)の有無を検出する(ステップSa1)。これらの情報が記録されていない場合には、光記録媒体として認識されない。
ここで、セットされた光記録媒体Dから、例えば、DVD−Rの場合はランドプリピット信号やプリレコード信号、DVD+Rの場合はADIPが検出された場合には、記録面が光ピックアップ10と対向するように光記録媒体Dがセットされていると判断し、制御部16は記録面に対してホストPC110から供給される記録データを記録するための制御を行う(ステップSa2)。ここで行われる記録データを記録するための制御は、従来の光記録媒体記録装置(DVD−RやDVD+R)と同様であるため、その説明を省略する。
一方、セットされた光記録媒体Dから描画可能な光記録媒体であることを示すプリピット信号が検出された場合には、画像記録層が光ピックアップ10と対向するように光記録媒体Dがセットされていると判断し、制御部16はセットされた光記録媒体DのディスクIDを取得することができるか否かを判断する(ステップSa3)。なお、光記録媒体DのディスクIDは、プリピット信号の中に搭載することができる。また、例えば図13に示すように、ディスクIDをコード化した情報に対応する可視画像を光記録媒体Dの画像記録層側の最外周部分の円周に沿って記述しておく。図13では、図示のように、最外周部分の円周に沿って上記コードに応じた長さの反射領域301aと非反射領域301bとを形成することによりディスクIDを光記録媒体Dの画像記録層に記述している。制御部16は光記録媒体Dの最外周の円周に沿って光ピックアップ10のレーザ光の照射位置をトレースすることにより、その反射光からディスクIDを取得する。
したがって、画像記録層の最外周部分に上記のようなディスクIDに対応する反射領域301aおよび非反射領域301bが形成されていない場合には、当該光記録媒体Dは画像記録層を有しない一般的な光記録媒体(CD−R、DVD−R等)であると判別することができる。このようにディスクIDを取得できない場合は、制御部16は可視画像の形成が不可能な光記録媒体Dであると判断し(ステップSa4)、その旨をユーザに通知等するための処理を行う。
一方、光記録媒体DからディスクIDを取得することができた場合には、ホストPC110から画像データを含む画像形成指示があるまで待機し(ステップSa5)、画像形成指示があった場合には制御部16は光記録媒体Dの画像記録層に可視画像を形成するための初期化制御を行う(ステップSa6)。より具体的には、制御部16は、所定の角速度でスピンドルモータ11が回転させられるようサーボ回路13を制御したり、光ピックアップ10を光記録媒体Dの径方向の最内周側の初期位置に移動させるための指示をモータコントローラ32に送出し、ステッピングモータ30を駆動させたりする。
また、画像形成のための初期化制御において制御部16は、記録面に対して情報記録を行う時よりも、大きいビームスポット径のレーザ光が光記録媒体Dの画像記録層に照射されるようなフォーカス制御の目標値をサーボ回路13に対して指示することもできる。
上記のような目標値を指示した際のフォーカス制御内容をより具体的に説明すると、次の通りである。上述したようにサーボ回路13によるフォーカス制御は、光ピックアップ10の受光素子56から出力される信号に基づいて行われる。光記録媒体Dの記録面に対する情報記録時には、図14に示す受光素子56の4つのエリア56a,56b,56c,56dの中心に円形の戻り光(図のA)が受光されるようサーボ回路13がフォーカスアクチュエータ64(図4参照)を駆動する。すなわち、エリア56a,56b,56c,56dの各々の受光量をa,b,c,dとした場合に、(a+c)−(b+d)=0となるようにフォーカスアクチュエータ64を駆動するのである。
一方、光記録媒体Dの画像記録層に対して可視画像を形成する場合には、上述したように記録面に対する情報記録時よりも径の大きいレーザ光が画像記録層に照射されるようフォーカス制御が行われる。図14に示す受光素子56に受光される戻り光の形状が楕円形状(図のBやC)である場合には、そのレーザ光のスポットサイズは上記円形Aの場合よりも大きいので、サーボ回路13はこのような楕円形状の戻り光が受光素子56に受光されるようフォーカスアクチュエータ64を駆動する。すなわち、(a+c)−(b+d)=α(αは0ではない)を満たすようにフォーカスアクチュエータ64を駆動するのである。したがって、本実施形態において、制御部16、サーボ回路13はビームスポット制御手段を構成している。
以上のように上述した可視画像形成のための初期化制御において制御部16がα(0ではない)をサーボ回路13に指示設定することで、記録面に対する情報記録時よりも大きいスポット径のレーザ光を光記録媒体Dの画像記録層に照射することができる。このように光記録媒体Dの画像記録層に対する可視画像を形成するときに、記録面に対する情報記録時よりも大きいスポット径のレーザ光を照射することで以下のような効果を得ることができる。すなわち、本実施形態では、可視画像を形成する際にも、記録面に情報記録を行う際と同様、光記録媒体Dを回転させながらレーザ光を照射することとしている。したがって、レーザ光のビームスポット径を大きくすることで、より短時間で光記録媒体Dの画像記録層の全領域に対して可視画像を形成することができる。この理由について、図15を参照しながら説明する。同図に模式的に示すように、照射するレーザ光のビームスポット径BSが大きい場合と小さい場合とを比較すると、光記録媒体Dを1回転させたときに画像形成の対象となる領域の面積がビームスポット径BSが大きい時の方が大きくなる。このため、ビームスポット径BSが小さい場合には全領域を画像形成の対象とするためにより多く光記録媒体Dを回転させなければならず(図示の例では、大きい場合は4回転、小さい場合は6回転)、画像形成のために多くの時間を要してしまう。以上のような理由から、この光記録媒体記録装置100では、可視画像を形成する際に情報記録時よりも大きいスポット径のレーザ光が照射されるようにしているのである。
また、画像形成のための初期化制御において制御部16は、取得したディスクIDに応じたライトレベルおよびサーボレベルのレーザ光が光ピックアップ10から照射されるよう、各々のレベルの目標値をレーザパワー制御回路20に指示する。すなわち、制御部16のROMには、複数種類のディスクID毎に、ライトレベルおよびサーボレベルとして設定すべき目標値が記憶されており、制御部16は取得されたディスクIDに対応するライトレベルおよびサーボレベルの目標値を読み出し、これらの目標値をレーザパワー制御回路20に指示するのである。
このようにディスクIDに応じてパワーの目標値を設定するのは以下のような理由に基づくものである。すなわち、光記録媒体Dの種類によって画像記録層の色素の特性が異なることが考えられ、特性が異なる場合、どの程度のパワーのレーザ光を照射すれば反射率が変化するといった特性も当然変化することになる。このため、ある光記録媒体Dの画像記録層に対してはあるライトレベルのレーザ光を照射することにより、その照射領域の反射率を十分変化させることができた場合にも、他の光記録媒体Dの画像記録層に対して同じライトレベルのレーザ光を照射させた場合にその照射領域の反射率を変化させることができるとは限らない。したがって、本実施形態では、上記のように種々のディスクID毎に対応する光記録媒体毎に、予め正確な画像形成が行えるようなライトレベルおよびサーボレベルの目標値を実験により求めておく。そして、求めた目標値を各々のディスクIDに対応付けてROMに格納しておくことにより、上記のような種々の光記録媒体Dの画像記録層の特性に応じて最適なパワー制御を行うことができるようにしている。
以上説明したような初期化制御が制御部16によって行われると、実際に光記録媒体Dの画像記録層に可視画像を形成するための処理が行われることになる。図12に示すように、まず制御部16は、ホストPC110からバッファメモリ36を介して供給された画像データをFIFOメモリ34に転送する(ステップSa7)。そして、制御部16は、周波数発生器21から供給されるFGパルス信号から、スピンドルモータ11によって回転させられる光記録媒体Dの所定の基準位置が、光ピックアップ10のレーザ光照射位置を通過したか否かを判断する(ステップSa8)。
ここで、図16および図17を参照しながら所定の基準位置、およびレーザ光照射位置がその位置を通過したか否かの検出方法について説明する。図16に示すように、周波数発生器21は、スピンドルモータ11が1回転する間、つまり光記録媒体Dが1回転する間に所定個(図示の例では8個)のFGパルスを出力する。したがって、制御部16は、周波数発生器21から供給されるFGパルスのいずれか1つを基準パルスと立ち上がりタイミングを同期させて基準位置検出用パルスを出力し、その後は基準位置検出パルスから1回転分の個数目(図示の例では8個目)のパルスの立ち上がりタイミングと同期させて基準位置検出用パルスを出力する基準位置検出用パルス信号を生成する。このような基準位置検出用パルスを生成することで、当該パルスが生成された時が光記録媒体Dの基準位置を光ピックアップ10のレーザ光照射位置が通過したタイミングであると検出できるのである。すなわち、図17に示すように、最初の基準位置検出用パルスを生成したタイミングにおける光ピックアップ10のレーザ光照射位置が図中太線(光ピックアップ10は径方向に移動可能であるため、照射位置が取り得る位置は線で表される)で示す位置であるとすると、その1回転後に生成される基準位置検出用パルスの生成した時にも当然光ピックアップ10のレーザ光照射位置は図中太線で示す位置にある。このように最初に基準位置検出用パルスを生成したタイミングにレーザ光の照射位置が属する径方向の線を基準位置となり、制御部16は、上記のように光記録媒体Dが1回転する毎に生成される基準位置検出用パルス信号に基づいて、レーザ光の照射位置が光記録媒体Dの基準位置を通過したことを検出することができるのである。なお、図中一点鎖線は、ある基準位置検出用パルスが生成されてから、次の基準位置検出用パルスが生成されるまでにレーザ光の照射位置の移動軌跡の一例を示す。
ホストPC110から画像形成指示を受けた後、以上のような手法で光記録媒体Dの基準位置がレーザ光の照射位置を通過したことを検出すると、制御部16は、回転数を示す変数Rに1をインクリメントした後(ステップSa9)、Rが奇数であるか否かを判別する(ステップSa10)。
ここで、画像形成指示を受けた後、最初に基準位置を通過したことを検出した際には、R=0(初期値)+1=1であり、この場合、ステップSa10においてRは奇数であると判別されることになる。このようにRが奇数であると判別した場合、制御部16は、光ピックアップ10から光記録媒体Dの画像記録層にレーザ光を照射して可視画像を形成するための制御を行う(ステップSa11)。より具体的には、制御部16は、上記の基準位置検出用パルスを受け取った時点から、PLL回路33から出力されるクロック信号に同期してFIFOメモリ34から画像データを順次出力するよう各部を制御する。この制御により、図18に示すように、FIFOメモリ34は、PLL回路33からクロックパルスが供給される毎に、1つの座標の階調度を示す情報を駆動パルス生成部35に出力し、駆動パルス生成部35は当該情報に示される階調度にしたがったパルス幅の駆動パルスを生成してレーザドライバ19に出力する。この結果、光ピックアップ10は、各座標の階調度に応じた時間だけライトレベルでレーザ光を光記録媒体Dの画像記録層に照射し、その照射領域の反射率が変化することにより、図19に示すような可視画像を形成することができる。
同図に模式的に示すように、光記録媒体Dはスピンドルモータ11によって回転させられているので、光ピックアップ10のレーザ光の照射位置はクロック信号の1周期(パルスの立ち上がりタイミングから次のパルスの立ち上がりタイミングまでの期間)中に図中Cで示す領域分だけ円周に沿って移動することになる。この領域Cをレーザ光照射位置が通過する間にライトレベルでレーザ光を照射すべき時間を上記のように階調度に応じて変化させることで、図示のように領域C毎に異なる階調度に応じて異なる面積の反射率を変化させることができる。このように各座標の階調度に応じて各々の領域Cを通過するときのライトレベルのレーザ光の照射時間を制御することにより、画像データに応じた可視画像を光記録媒体Dの画像記録層に形成することができるのである。
以上のように画像データに応じて制御されるレーザ光照射によって可視画像の形成を実行するための制御を実行すると、制御部16の処理はステップSa7に戻り、バッファメモリ36から供給された画像データをFIFOメモリ34に転送する。そして、光記録媒体Dの基準位置を光ピックアップ10のレーザ光照射位置が通過したか否かを検出し、基準位置を通過したことが検出された場合、Rに1をインクリメントする。この結果、Rが偶数となった場合には、制御部16は上記のようなレーザ光照射制御による可視画像形成を停止させるよう装置各部を制御する(ステップSa12)。より具体的には、FIFOメモリ34に対して、PLL回路33から供給されるクロック信号に同期して各座標の階調度を示す情報を駆動パルス生成部35に出力しないよう制御する。つまり、制御部16は、光記録媒体Dの画像記録層に対してライトレベルのレーザ光を照射して可視画像を形成した後、次に光記録媒体Dが1回転している間は画像記録層の反射率を変化させるためのレーザ光の照射を行わないように制御しているのである。
このように可視画像形成のためのレーザ光照射を停止させると、制御部16は、モータコントローラ32に対して所定量だけ光ピックアップ10を径方向の外周側に移動させるよう指示し(ステップSa13)、該指示に応じてモータコントローラ32がモータドライバ31を介してステッピングモータ30を駆動し、これにより光ピックアップ10が所定量だけ外周側に移動させられる。
ここで、光ピックアップ10を光記録媒体Dの径方向に移動させる所定量は、上述したように光ピックアップ10から照射されるビームスポット径BS(図15参照)に応じて適宜決定すればよい。すなわち、円盤状の光記録媒体Dの画像記録層に可視画像を形成する際には、光ピックアップ10のレーザ光照射位置を光記録媒体Dの面上ほぼ隙間なく移動させることが、より高品位の画像形成を実現するために必要となる。したがって、上記のような径方向への光ピックアップ10の単位移動量を、光記録媒体Dに対する照射レーザ光のビームスポット径BSとほぼ同じ長さとすれば、光記録媒体Dの面上にほぼ隙間なくレーザ光を照射することができ、より高品位な画像形成が可能となる。なお、画像記録層の性質等の種々の要因によって照射したビームスポット径よりも大きい領域が発色するケースもあり、このようなケースでは、その発色領域の幅を考慮し、隣り合う発色領域が重ならないよう単位移動量を決めるようにすればよい。本実施形態では、ビームスポット径BSを記録面に対する記録時より大きくしているので(例えば、20μm程度)、制御部16は、このビームスポット径BSとほぼ同じ長さ分だけ光ピックアップ10を径方向に移動させるようモータコントローラ32を制御し、ステッピングモータ30を駆動させている。なお、近年のステッピングモータ30は、μステップ技術を利用することで、10μm単位でその移動量を制御することが可能であり、上記のようにステッピングモータ30を用いて光ピックアップ10を20μm単位で径方向に移動させることは十分に実現可能である。
上記のように光ピックアップ10を径方向に所定量だけ移動させる制御を行うと、制御部16は、目標となるレーザ光のライトレベル値を変更するべく、ライトレベルでレーザ光を照射する際に目標とすべき変更後のライトレベル値をレーザパワー制御回路20に対して指示する(ステップSa14)。本実施形態では、可視画像を形成する際の方式として光記録媒体Dを角速度を一定に維持して回転させながらレーザ光を照射するCAV方式を採用しており、上記のように光ピックアップ10が外周側に移動させられると、線速度が大きくなる。したがって、レーザ光をこのように光ピックアップ10を径方向(外周側)に移動させた時には、上記のようにライトレベルの目標値をその時点までよりも大きくなるように変更し、これにより線速度が変化しても光記録媒体Dの画像記録層の反射率が十分に変化できる強度のレーザパワーを照射できるようにしているのである。
以上のように光ピックアップ10の径方向への移動制御およびライトレベルの目標値を変更する制御を実行すると、制御部16は可視画像形成のために未処理の画像データ、つまり駆動パルス生成部35に供給されていない画像データがあるか否かを判別し、当該画像データがない場合には処理を終了する。
一方、モータコントローラ32に供給されていない未処理の画像データがある場合には、ステップSa7に戻り、可視画像形成のための処理を続行する。すなわち、制御部16からFIFOメモリ34に画像データを転送し(ステップSa7)、レーザ光の照射位置が光記録媒体Dの基準位置を通過したか否かを判別する(ステップSa8)。そして、基準位置を通過した際には、回転数を示す変数Rに1をインクリメントし(ステップSa9)、インクリメント後のRが奇数であるか否かを判別する(ステップSa10)。ここで、Rが奇数である場合には、制御部16は上記のような可視画像を形成するためのレーザ光照射がなされるよう装置各部を制御し、Rが偶数である場合には可視画像を形成するためのレーザ光照射を停止し(サーボレベルのレーザ光は照射する)、上記のような光ピックアップ10の径方向への移動制御や、ライトレベルの目標値変更といった制御を行う。すなわち、制御部16は、ある周回中に光記録媒体Dに対して画像形成のためのレーザ光照射(ライトレベルを含む)を行った場合、その次の周回中には画像形成のためのレーザ光照射が行われないよう制御し、その周回中に光ピックアップ10の径方向への移動制御等を実施するようにしている。このように画像形成を行わない周回中に光ピックアップ10を移動させる制御やライトレベル目標値の変更制御等を実施することで、当該制御に伴って照射位置や照射されるレーザ光のパワー値等が変動している間に画像形成されることがなく、照射位置やレーザ光の強度が安定してから画像形成のためのレーザ光照射を実行することができる。したがって、上記のような光ピックアップ10の径方向の移動制御等に起因して形成される可視画像の品位が低下してしまうことを抑制できる。
以上説明したのが、光記録媒体記録装置100の主要な動作であり、光記録媒体記録装置100によれば、新たに印刷手段等を搭載することなく、記録面に対して情報記録を行うために用いられる光ピックアップ10等の装置各部を可能な限り利用し、画像記録層が形成された光記録媒体Dの当該画像記録層に対してレーザ光を照射して画像データに対応した可視画像を形成することができる。
また、本実施形態では、スピンドルモータ11の回転に応じて生成されるFGパルスを用いて生成したクロック信号、すなわち光記録媒体Dの回転量に応じて生成されるクロック信号に基づいてレーザ光照射タイミングを制御しているので、光記録媒体D側から位置情報等を取得することなく、光記録媒体記録装置100においてレーザ光照射位置を把握することができる。したがって、光記録媒体記録装置100によれば、画像記録層にプリグルーブ(案内溝)を形成するといった特別な加工等を施した光記録媒体Dを用いなくてはならないといった制限はなく、プリグルーブや位置情報等が予め形成されていない画像記録層に対しても、画像データに対応する可視画像を形成することができる。
次いで、情報記録層への情報(デジタル情報)の記録について説明する。情報記録層が色素型の場合、まず、未記録の前述の光記録媒体を所定の記録線速度にて回転させながら、レーザーピックアップからレーザー光を照射する。この照射光により、情報記録層の色素がその光を吸収して局所的に温度上昇し、所望のピットが生成してその光学特性が変わることにより情報が記録される。
レーザー光の記録波形は、1つのピットの形成する際には、パルス列でも1パルスでもかまわない。実際に記録しようとする長さ(ピットの長さ)に対する割合が重要である。
レーザー光のパルス幅としては、実際に記録しようとする長さに対して20〜95%の範囲が好ましく、30〜90%の範囲がより好ましく、35〜85%の範囲が更に好ましい。ここで、記録波形がパルス列の場合には、その和が上記の範囲にあることを指す。
レーザー光のパワーとしては、記録線速度によって異なるが、記録線速度が3.5m/sの場合、1〜100mWの範囲が好ましく、3〜50mWの範囲がより好ましく、5〜20mWの範囲が更に好ましい。また、記録線速度が2倍になった場合には、レーザー光のパワーの好ましい範囲は、それぞれ21/2倍となる。
また、記録密度を高めるために、ピックアップに使用される対物レンズのNAは0.55以上が好ましく、0.60以上がより好ましい。
本発明においては、記録光として350〜850nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザーを用いることができる。
一方、情報記録層が相変化型の場合について説明する。相変化型の場合は、前述の材質から構成され、レーザー光の照射によって結晶相と非晶相との相変化を繰り返すことができる。情報記録時は、集中したレーザー光パルスを短時間照射し、相変化記録層を部分的に溶融する。溶融した部分は熱拡散により急冷され、固化し、非晶状態の記録マークが形成される。また、消去時には、記録マーク部分にレーザー光を照射し、情報記録層の融点以下、結晶化温度以上の温度に加熱し、かつ除冷することによって、非晶状態の記録マークを結晶化し、もとの未記録状態に戻す。