JP2006260105A - 移動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】自律走行を行う移動装置において、障害物や段差をより確実に検出して適切な回避と効率的な走行を可能とする。
【解決手段】移動装置1は、走行制御条件を記憶する記憶手段11と、障害物又は段差を検出してその位置情報を取得するとともに出力する環境情報取得手段12と、地図上における自己位置を取得する自己位置認識手段13と、自己位置認識手段13により自己位置を認識するとともに環境情報取得手段12の出力する位置情報に基づいて障害物又は段差を回避しつつ走行制御条件に基づいて走行手段15を制御する走行制御手段16、とを備えている。環境情報取得手段12は、撮像された物体までの距離を検出するための進行方向の前方下方側を視野範囲とする距離画像センサ21と、距離画像センサ21によって出力される距離画像に基づいて障害物又は段差を検出してその位置情報を出力する距離情報解析部22とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、走行面の障害物や段差を認識して自律的に走行する移動装置に関する。
従来から、省力などのため、掃除作業、メーリングや運搬作業などを行いながら走行する移動装置が開発されている。このような装置は、様々な走行環境に対応するため、センサを備えている。例えば、装置下方数箇所に赤外線レーザを搭載し、そのレーザ光のビームを走行面に向けて照射して走行面の段差を検出するようにした自律走行ロボットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−139264号公報
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような自律走行ロボットにおいては、ビーム照射方向がロボット本体に対して固定されており、点的な段差検出しかできず、移動中に段差の存在は認識できるが、段差がどのように存在するのか、その面的な分布や方向を認識できないので、段差に対する適切な回避行動をとれないという問題がある。また、前方下方の状態を検出するため超音波センサを用いるものがあるが、超音波の反射率が検出対象面の材質や凹凸形状状態に大きく依存するので、その適用範囲が限定される。また、スキャンできる検出装置としてレーザレーダがあるが、これにより1つの平面内をスキャンして2次元的な情報を得る装置を比較的安価で容易に構成できるとしても、段差のエッジの箇所や方向などを把握するため3次元的に空間を把握しようとすると高価なものとなって現実的ではない。
本発明は、上記課題を解消するものであって、適切な回避と効率的な自律走行を行うため障害物や段差をより確実に検出できる移動装置を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、走行制御条件を記憶する記憶手段と、障害物又は段差を検出してその位置情報を取得するとともに出力する環境情報取得手段と、地図上における自己位置を取得する自己位置認識手段と、走行を行うための走行手段と、前記自己位置認識手段により自己位置を認識するとともに前記環境情報取得手段の出力する位置情報に基づいて障害物又は段差を回避しつつ前記走行制御条件に基づいて前記走行手段を制御する走行制御手段とを備えて自律的に移動する移動装置において、前記環境情報取得手段は、撮像された物体までの距離を検出するための進行方向の前方下方側を視野範囲とする距離画像センサと、前記距離画像センサによって出力される距離画像に基づいて障害物又は段差を検出してその位置情報を出力する距離情報解析部と、を備えたものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の移動装置において、前記距離情報解析部は、前記距離画像から段差の勾配を検出して段差を判断するものである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の移動装置において、前記距離情報解析部は、凹部の段差を検出した場合、その段差を凸部の段差の障害物として検出結果を出力するものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動装置において、前記記憶手段は、走行領域における段差部の情報を地図情報として記憶しており、前記自己位置認識手段は、距離情報解析部が検出して出力する段差の情報と前記地図情報とを照合することにより自己位置を認識するものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動装置において、前記環境情報取得手段は、走行面と平行な進行前方を視野範囲とするレーザレーダを備えたものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動装置において、前記環境情報取得手段は、少なくとも一部が距離画像センサの視野範囲と重複する検出範囲を有する超音波センサを備えたものである。
請求項7の発明は、請求項6に記載の移動装置において、前記走行制御手段は、少なくとも前記距離画像センサ又は超音波センサを含む複数のセンサのうち一番近くに障害物があると判断しているセンサの出力する障害物検出信号に基づいて、障害物を回避するように前記走行手段を制御するものである。
請求項8の発明は、請求項5に記載の移動装置において、前記距離情報解析部は、前記レーザレーダで検出した障害物が、勾配のある走行面を検出したものかどうか判断するものである。
請求項9の発明は、請求項5に記載の移動装置において、前記自己位置認識手段は、前記レーザレーダの出力する壁面検出データを用いて自己位置認識を行う際に、当該壁面検出データが勾配を有する走行面を検出したデータではないことを前記距離情報解析部の出力に基づいて確認するものである。
請求項1の発明によれば、距離画像センサを用いて進行方向の前方下方側の視野範囲にある物体を撮像するとともに撮像画像から距離画像を求めるので、固定ビームや2次元的なレーザスキャンを用いる場合とは異なり、3次元的な距離分布を容易かつ安価に得ることができ、また、距離情報解析部によって、その距離画像に基づいて障害物又は段差を検出するので、移動装置は、これらを適切に回避して効率的に走行できる。なお、本明細書における段差は、移動装置が走行する路面とその周辺に存在する凹凸や傾斜のことであり、例えば、階段、溝、スロープ、縁石などが段差に含まれる。
請求項2の発明によれば、距離画像から段差の勾配を検出するので、通過可能な段差かどうか、また、回避するのはどの方向に行けばよいか、などを適切に判断して、効率的に走行できる。
請求項3の発明によれば、凹部の段差を障害物として回避することができ、凹部での脱輪や転落を防止できる。
請求項4の発明によれば、移動装置が自己位置をより確実に認識して、効率的に走行できる。
請求項5の発明によれば、距離画像センサを補間してより確実かつ精度良く環境情報を取得できる。距離画像センサは、1つの距離画像センサで視野を大きく広げると画像データに歪みが生じ、また、複数の距離画像センサを用いて視野を広げるとシステムが複雑となる。そこで、レーザレーダを用いることにより、2次元ではあるが広い視野範囲で、分高解能かつ高速処理可能な環境情報取得ができる。距離画像センサとレーザレーダとを組合すことにより、広域遠方はレーザレーダのみの2次元データ、近くの詳細な3次元的な情報が必要な部分は距離画像センサのデータも用いて、より安全で効率的な走行が可能となる。
請求項6の発明によれば、距離画像センサやレーザレーダによって検出が困難な、例えばガラスのような物体を検出できる。
請求項7の発明によれば、より安全な走行を実現できる。
請求項8の発明によれば、前方の上りスロープを障害物として誤認識することがなくなり、効率的な移動ができる。
請求項9の発明によれば、前方の上りスロープを壁面として誤認識することがなくなり、レーザレーダによる壁検出に基づく自己位置認識の際に、壁を誤認識して位置が狂うということを防止できる。
以下、本発明の一実施形態に係る自律的の走行する移動装置について、図面を参照して説明する。図1は、本移動装置1のブロック構成を示す。移動装置1は、走行制御条件を記憶する記憶手段11と、障害物又は段差を検出してその位置情報を取得するとともに出力する環境情報取得手段12と、地図上における自己位置を取得する自己位置認識手段13と、地図上における自己位置及び記憶手段11に記憶された走行制御条件をもとに走行するための経路を生成する経路生成手段14と、走行を行うための走行手段15と、自己位置認識手段13により自己位置を認識するとともに環境情報取得手段12の出力する位置情報に基づいて障害物又は段差を回避しつつ走行制御条件に基づいて走行手段15を制御する走行制御手段16、目的地や走行のためのパラメータなどを入力するための操作インターフェース17と、とを備えている。
環境情報取得手段12は、撮像された物体までの距離を検出するための進行方向の前方下方側を視野範囲とする距離画像センサ21と、距離画像センサ21によって出力される距離画像に基づいて障害物又は段差を検出してその位置情報を出力する距離情報解析部22とを備えている。距離画像センサ21は、例えば、強度変調光を用いた空間情報の検出装置で構成できる。このような装置は、発光源からの強度変調された光を撮像空間に照射し、その空間に存在する物体からの反射光を感光部で受光して撮像することにより、撮像された画像からその空間に存在する物体までの距離情報を検出することができる。例えば、特開2004−356594号公報に示されている検出装置を用いることができる。
上述のような検出装置で構成した距離画像センサ21は、強度変調した光を用いて変調周波数の逆数である変調周期に同期した特定の異なる位相で受光強度を複数回検出し、発光源から照射した光の位相と感光部で受光した光の位相との位相差を求めて、この位相差に基づいて、各感光部毎に物体までの距離を求める。すなわち、各感光部毎に距離を求めることにより、距離画像が求められる。距離画像は、後述するように、光を反射した物体までの距離の遠近に応じて、例えば、濃淡表示される。また、距離情報解析部22は、濃淡表示された各画素について、2値化、差分、エッジ検出などの画像演算を行うことにより、障害物や段差の検出を行うことができる。
また、自己位置認識手段13は、環境情報取得手段12が取得した壁などの環境情報と、記憶手段11に記憶された地図上の環境認識用のデータとを照合することにより、地図上における自己の位置を取得する。
走行手段15は、電池15aで駆動されるモータを備えている。このモータには、その回転数や回転速度を計測するエンコーダが設けられている。移動装置1の走行制御手段16は、このエンコーダの出力によって移動距離や移動方向を大略知ることができ、これをもとに、デッドレコニング(dead reckoning推定航法)を行う。また、操作インターフェース17は、人が直接操作できるタッチパネルやキーボード、又は、人が遠隔操作できる無線通信手段などにより構成される。
また、記憶手段11、環境情報取得手段12における距離情報解析部22等の演算部、自己位置認識手段13、経路生成手段14、及び走行制御手段16等を構成するため、CPUやメモリや外部記憶装置や表示装置や入力装置などを備えた一般的な構成を備えた電子計算機、及びその上のプロセス又は機能の集合を用いることができる。
次に、図2、図3を参照して、移動装置1の走行を説明する。移動装置1は、進行方向(座標軸X方向)の前方下方側を画像センサ視野21aとする距離画像センサ21及び距離画像を演算処理する距離情報解析部22を用いて走行面3上の測定領域21bにおける段差31や障害物32を検出しながら走行する。座標系XYZは、移動装置1とともに移動する座標系である。なお、本明細書における段差は、移動装置1が走行する路面とその周辺に存在する凹凸や傾斜のことであり、例えば、階段、溝、スロープ、縁石などが段差に含まれる。また、これらの段差は、移動装置1の走行しようとする前方方向に存在するときは、障害物となる。移動装置1の走行を妨げる障害物には、このような静止物の他に移動体も含まれる。そこで、移動装置1は、障害物を検出した場合、これとの衝突を回避するため迂回、待機等の行動をとりながら、掃除作業、メーリング、案内、さらには運搬作業などのため、所定の走行領域を自律的に走行する。
上述の距離画像センサ21及び距離情報解析部22によって得られた距離測定結果は、後述する方法により、移動装置1の現在位置における走行面3、すなわち座標系XYZのXY平面を基準としたデータに置き直される。この平面より上のデータは、凸部の障害物、段差、上り斜面などを示し、この平面よりしたのデータは、凹部の段差や下り斜面を示す。図2、図3(a)に示す状況において、段差31が前方左右の角度範囲θ1〜θ2の範囲に検出され、障害物32が角度範囲α1〜α2の範囲に検出されている。
上述のような検出結果は、例えば、図3(b)(c)に示すように、移動装置1の進行方向を0°とする極座標上で所定角度Δθステップ毎の各角度とその角度における検出点までの距離(検知できない場合は大きな距離L)のデータとされ、環境情報取得手段12から走行制御手段16に出力される。この距離データは、障害物32の一番手前の位置の距離であり、また、段差31における一番手前の位置、すなわちエッジ部分の位置の距離である。段差におけるエッジ部分の位置や方向の検出は、2次元的(距離の概念を入れて3次元的)な処理(画像処理)が可能な距離画像センサ21、及び距離情報解析部22を用いて、容易かつ位置精度良く得られる。
走行制御手段16は、これらの障害物や段差までの距離情報に基づいて、走行手段15を制御して走行速度を制御する。その走行速度制御方法は、例えば、特開2004−157829号公報に開示されている方法を用いることができる。走行制御手段16は、例えば、障害物32までの距離に対し、その障害物32の方向が進行方向から外れる度合いが大きいほど障害物32までの距離を遠くに見なす重みを付加した換算障害物距離を算出し、記憶手段11に予め記憶した所定の最高速度、加速度、減速度、及び前記換算障害物距離に基づいて進行方向の走行速度を設定して走行する。また、走行制御手段16は、環境情報取得手段12が自己の前方の所定の走行制御対象領域内部に障害物を検出した場合にのみ走行速度を修正して走行するようにしてもよい。換算障害物距離や走行制御領域を用いることにより、走行面上の障害物以外の壁などに対する反応を減らして、効率的に走行できる。
上述のような走行制御において、走行制御手段16は、まず、図3(b)に示す段差31のエッジデータに基づいて、階段などの段差31への転落等の非常に危険な場合に対して、より安全な走行速度を設定して走行する。その上で、走行制御手段16は、図3(c)に示す障害物32を含むデータに基づいてその障害物32を回避する走行制御を行う。また、段差31の深さや、段差31が下り勾配のスロープの場合のその勾配と方向などを考慮して段差を判定することにより、真に走行不可能な場所を回避でき、また、走行可能な場所を回避することなく通行して、安全かつ効率良く走行できる。
また、図3(c)に示されるようなデータを用いて、例えば、文献(Ishay Kamon,Elon Rimon,Ehud Rivlin, “Tangent Bug: A Range−Sensor−Based Navigation Algorithm”, The International Journal of Robotics Research, Vol.17, No.9, 1998, pp. 934−953)に記載の方法を用いて、段差を障害物と見做して回避することができる。
以下において、距離画像センサ21、及び距離情報解析部22を用いた、距離画像の取得と距離画像に基づいた障害物又は段差の検出を説明する。
図4乃至図7は、距離画像センサ21と距離情報解析部22により上りスロープを検出する方法を示す。まず、座標系の説明をする。図4(a)において、距離画像センサ21は、その画像センサ視野21aが臨む測定領域21bにおける物体までの距離を、センサ距離画像面S上に取得する。センサ距離画像面Sは、距離画像センサ21に対して定義された画像面であり、画像面上の点の位置は、移動装置1とともに移動するセンサ座標系UVWによって表される。座標軸Wは、距離画像センサ21からの距離を示す。座標軸Vは、移動装置1の左右方向の位置を示す。また、センサ座標系UVWの原点位置は、例えば、移動装置1の現在の位置における走行面3上にとることができる。基準面30と基準画像測定領域21cは後述する。
また、走行制御手段16が参照するデータを表す座標系は、移動装置1とともに移動する装置座標系XYZである。この座標系のX軸方向は移動体の走行方向であり、Y軸方向は移動体の左右方向であり、Z軸方向は現在の移動体の位置の走行面3の位置である。これの座標系の原点を、移動装置1の左右中央にとって、センサ座標系UVWと装置座標系XYZの原点を同じにすることができる。
上述の座標系UVWのもとで、図4(a)に示す上りスロープを含む距離画像が、図4(b)に示すように、センサ距離画像Aとして得られる。センサ距離画像Aは、各画素の濃淡値によって各画素に対応する空間位置の距離を表示する。図4(c)に示すように、距離画像センサ21から遠いほど濃い濃淡値となっている。濃淡値のグラフにおいて、上りスロープを示す曲線aは、原点からしばらくの間は、一定割合で濃度が増し、上りスロープの領域において緩やかな一定割合で濃度が増している。
図5(a)は、距離画像センサ21により、図5(b)に示す基準平面距離画像Bを取得する様子を示す。基準平面距離画像Bは、障害物検出のために用いられる基準となる距離画像である。この基準平面距離画像Bは、移動装置1が平らな走行面3に位置する状態で、予め取得され、記憶手段11に記憶される。なお、基準平面距離画像Bは、移動装置1に設置された距離画像センサ21の走行面3からの高さと座標系UVW、XYZのデータをもとにして、撮像によることなく計算によって構築することができる。この基準平面距離画像Bの濃淡値のグラフは、図5(c)の曲線bで示すように、一定の割合で単調に増加する。すなわち、U軸に沿って原点から遠ざかるにつれて、距離画像センサ21からの距離が増加するので、濃度値が増加している。
上述の距離画像センサ21によって得られたセンサ距離画像Aと基準平面距離画像Bに対して、距離情報解析部22による差分演算が行われて、図6(a)に示す障害物候補検出用距離画像Dが得られる。この画像は、図4(c)に示される曲線aと曲線bに挟まれた領域の濃淡値(濃淡値の差分)からなる画像である。この距離画像により、走行面3の延長平面から上に存在する物体が抽出される。この距離画像Dは、差分演算の他にノイズ成分除去の演算も適宜行われる。
上述の障害物候補検出用距離画像Dから、障害物(段差やスロープを含む)を検出するため、図6(b)に示すように、所定の閾値t0に基づく2値化処理が行われる。距離画像Dを2値化処理(白黒化)した結果、図6(c)(d)に示すように、上りスロープが、画像中に黒い部分として検出される。
上述のように、障害物が検出された場合、距離情報解析部22は、座標系UVWにおける障害物候補検出用距離画像Dを、図7(a)に示すように、座標系XYZにおけ基準平面投影距離画像Gへと、座標変換する。この距離画像Gは、走行面3すなわちXY平面の各点における距離測定点の走行面からの高さ、Z座標値を、濃淡表示したものである。この距離画像Gを、図7(b)に示すように、第1の閾値t1、及び第2の閾値t2で2値化処理することにより、それぞれ図7(c)(d)に示すように、第1判定画像K1、第2判定画像K2が得られる。距離情報解析部22は、この2つの判定画像K1,K2における黒い部分面積が異なることから、検出された障害物は傾斜を有するスロープであると判定し、その結果を走行制御手段16に出力する。
次に、図8乃至図10を参照して、走行面から突出した障害物の検出の例を説明する。図8(a)は、平面から成る走行面3上に存在する障害物32を距離画像センサ21が撮像している様子を示す。座標系その他の説明は上述と同じであり省略する。得られたセンサ距離画像Aは、図8(b)(c)に示すように、単調に濃度が増加する背景3aの中に、より近距離に検出されて濃度が薄い障害物32の像32aを含む画像となる。
このようなセンサ距離画像Aに対して、上述と同様に基準平面距離画像Bによる差分演算を行うと、図9(a)に示す障害物候補検出用距離画像Dが得られる。この距離画像Dには、障害物32に対応する画像32bのみが抽出されている。さらに、この障害物候補検出用距離画像Dに対して、図9(b)に示すように、所定の閾値t0に基づく2値化処理を行うと、図9(c)(d)に示すように、障害物32に対応した黒い部分32cが画像中に検出される。
上述の障害物が検出された障害物候補検出用距離画像Dは、前述のように、距離情報解析部22によって座標変換が行われて、図10(a)に示すように、座標系XYZにおけ基準平面投影距離画像Gが得られる。この距離画像Gを、図10(b)に示すように、第1の閾値t1、及び第2の閾値t2で2値化処理することにより、それぞれ図10(c)(d)に示すように、第1判定画像K1、第2判定画像K2が得られる。距離情報解析部22は、この2つの判定画像K1,K2における黒い部分面積が同じであることから、検出された障害物は傾斜のない凸状の障害物であると判定し、その結果を走行制御手段16に出力する。なお、上述の距離画像Gを得るための座標変換などの演算処理は、少なくとも障害物候補を含む画像領域に対してのみ行うことにより、演算処理の負担を軽減してより高速な処理が可能となる。
次に、図11(a)〜(c)を参照して、走行面から下るスロープ検出の例を説明する。図11(a)は、距離画像センサ21が、平面から成る走行面3の前方に存在する下りスロープを撮像している様子を示す。座標系その他の説明は上述と同じであり省略する。得られたセンサ距離画像A(不図示)に対応する濃淡値のグラフは、図11(c)に示す曲線aのように、平らな走行面に対応する一定の割合で濃度が増加する部分と、下りスロープに対応するより大きな増加率で濃度が増加する部分とからなる。曲線bは、基準平面距離画像B(不図示)に対応する。また、距離情報解析部22によって差分演算及び座標変換が行われて得られる基準平面投影距離画像G(不図示)に値する濃淡値のグラフは、図10(c)に示すように、負の濃度、すなわち、走行面より低いZ方向高さを有する検出点(下りスロープ上の点)の存在を示す。
次に、図12(a)〜(c)を参照して、走行面からステップ状に落ち込んだ段差検出の例を説明する。図12(a)は、距離画像センサ21が、平面から成る走行面3の前方に存在する段差を撮像している様子を示す。座標系その他の説明は上述と同じであり省略する。得られたセンサ距離画像A(不図示)に対応する濃淡値のグラフは、図13(c)に示す曲線aのように、平らな走行面に対応する一定の割合で濃度が増加する部分と、段差の底面に対応する、同じ増加率であるが段差に対応する値だけ平行移動した曲線の部分とからなる。曲線bは、基準平面距離画像B(不図示)に対応する。また、距離情報解析部22によって差分演算及び座標変換が行われて得られる基準平面投影距離画像G(不図示)に値する濃淡値のグラフは、図12(c)に示すように、負の一定値の濃度、すなわち、走行面より低いZ方向高さを有する落ち込んだ段差の存在を示す。そして、段差のエッジの位置が、図12(c)に示すように明確に検出することができる。また、エッジの方向も、基準平面投影距離画像Gによって、明確に検出することができる。
上述のようにして、距離画像センサ21及ぶ距離情報解析部22によって検出された障害物や段差などの環境情報は、自己位置認識手段13によって、移動装置1の自己位置を認識するのに用いることができる。このような自己位置認識のために、記憶手段11は、走行領域における段差部の情報を地図情報として記憶しておく。そして、自己位置認識手段13は、距離情報解析部22が検出して出力する段差の情報と地図情報とを照合することにより自己位置を認識することができる。距離画像センサ21及ぶ距離情報解析部22によって検出された障害物や段差などの環境情報は、2次元的な情報を容易かつ精度良く得られるので、自己位置をより確実に認識できる。
上述の記憶手段11に記憶しておく段差部の情報として、例えば、段差のエッジ部分を線分によって表現したものを用いることができる。その線分の始点と終点の位置座標の集合を記憶しておけばよい。これらの線分を表す座標系は、移動装置1の走行領域に固定された座標系xyzを用いる。従って、記憶された段差部の線分のデータは、検出されたエッジデータとの照合に際して装置座標系XYZに座標変換されて用いられる。
上述の記憶手段11に記憶された線分に対応する線分を、距離画像から抽出する方法は、例えば、距離情報解析部22によって次のようにして行われる。段差を含む基準平面投影距離画像Gに対して、一般に画像処理技術において行われる、いわゆるエッジ抽出演算(輪郭抽出演算)が行われる。これにより、段差や障害物の境界を表すエッジ部分の画素が抽出される。このような画素の集合から、線分を構成する画素を抽出して、最小二乗法などにより、最適線分を決定すればよい。また、一般に2次元的に分布する点の集合から直線を抽出する方法として、文献(例えば、Li Zhang and Bijoy K. Ghosh, “Line Segment Based Map Building and Localization Using 2D Laser Rangefinder”, IEEE Int. Conf. of Robotics & Automation, 2000, pp2538−2543など)に記載された方法を用いることもできる。
次に、図13、図14、15を参照して、移動装置1の他の例を説明する。この移動装置1の環境情報取得手段12は、距離画像センサ21の他にレーザレーダ23を備えている。レーザレーダ23による距離検出データは、距離情報解析部22によって演算処理される。レーザレーダ23は、移動装置1の前面に備えられ、走行面3と平行な進行前方の面内を視野範囲とする。レーザレーダは、一般に高い角度分解能を有しており、また、検出速度が速いので、距離画像センサ21とこのレーザレーダ23とを組合せることにより、より正確な障害物の位置確認に基づく回避動作が可能となる。
すなわち、レーザレーダ23は、距離画像センサ21を補間してより確実かつ精度良く環境情報を取得できる。距離画像センサ21は、1つの距離画像センサで視野を大きく広げると画像データに歪みが生じ、また、複数の距離画像センサを用いて視野を広げるとシステムが複雑となる。そこで、レーザレーダ23を用いることにより、2次元面内でのスキャンではあるが広い視野範囲で、分高解能かつ高速処理可能な環境情報取得ができる。距離画像センサ21とレーザレーダ23とを組合すことにより、広域遠方はレーザレーダ23のみの2次元データ(実際は点列のデータ)、近くの詳細な2次元的な広がりのある情報が必要な部分は距離画像センサ21のデータ(これは3次元データである)も用いて、より安全で効率的な走行が可能となる。
また、レーザレーダ23によって、壁面を検出することができる。例えば、所定角度ステップΔφ毎に、前方±90の範囲をスキャンすると、スキャンポイントの集合が得られる。図14に示すように、壁面4上におけるスキャンポイント41は、3次元空間における直線状に並ぶことになり、上述の、Li Zhang等の文献に示される方法などによって壁面の位置を検出することができる。自己位置認識手段13は、レーザレーダ23によって検出された壁面の位置と、予め記憶手段11に記憶しておいた壁面を表す線分と照合することにより、地図上の自己位置を認識することができる。
また、レーザレーダ23による線分の検出結果が、図15に示すように、壁面ではなく走行方向前方における上りスロープの路面上の点を検出ものである場合がある。このような場合に、路面を壁面としてご認識しないように、距離情報解析部22は、検出された段差やスロープに対して勾配を求め、レーザレーダ23で検出した結果が、勾配のある走行面を検出したものかどうか判断する。スロープの勾配は、基準平面投影距離画像Gから導出される。すなわち、距離画像Gが基準平面に対する高さ情報を有しているので、距離情報解析部22は、その距離画像Gにおけるスロープ部分において、水平距離増分に対する高さ増分から勾配を検出できる。また、その最傾斜勾配方向、及びその最傾斜勾配方向に直交する方向(エッジ方向)を検出することができる。
また、自己位置認識手段13は、レーザレーダ23の出力する壁面検出データを用いて自己位置認識を行う際に、その壁面検出データが勾配を有する走行面を検出したデータではないことを距離情報解析部22の出力に基づいて確認する。これにより、前方の上りスロープを障害物として誤認識することがなくなり、効率的な移動ができる。また、前方の上りスロープを壁面として誤認識することがなくなり、レーザレーダ23による壁検出に基づく自己位置認識の際に、壁を誤認識して自己位置が狂うということを防止できる。
次に、図16、図17を参照して、移動装置1のさらに他の例を説明する。この移動装置1の環境情報取得手段12は、距離画像センサ21、レーザレーダ23の他に、少なくとも一部が距離画像センサ21の画像センサ視野21aと重複する検出範囲24aを有する超音波センサ24を備えている。距離画像センサ21は、走行面3上では、測定領域21bにおける測距を行い、超音波センサ24は、走行面上で測定領域24bにおける障害物検出を行う。超音波センサ24による距離検出データは、距離情報解析部22によって演算処理される。
超音波センサ24として、超音波受波素子をアレイ状に複数配列して電子的スキャンにより3次元距離画像を得ることができる超音波アレイセンサなどが好適に用いられる。超音波を用いるこのようなセンサでは、距離画像センサ21やレーザレーダ23によっては検出困難な、例えば、透明なガラス戸5のようなものを障害物として検出できる。
このように複数の距離測定用のセンサを備えた移動装置1の走行制御手段16は、距離画像センサ21、レーザレーダ23、及び超音波センサ24等のうち一番近くに障害物があると判断しているセンサの出力する障害物検出信号に基づいて、走行速度の制限や障害物を回避するように走行手段15を制御してより安全な走行を実現することができる。
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、距離画像センサ21を複数備えることができる。また距離画像センサ21は、上述したような強度変調光を用いるものに限らず、視差を用いたものでもよい。
本発明の一実施形態に係る移動装置についてのブロック構成図。 同上装置の走行状態を示す斜視図。 (a)は図2に示す移動装置の走行状態の平面図、(b)は同走行状態において検出した段差のデータを説明する図、(c)は同じく障害物及び段差のデータを説明する図。 (a)は同上移動装置の距離画像センサにより上りスロープを検出する様子を示す斜視図、(b)は同センサにより得られるセンサ距離画像、(c)は同センサ距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ。 (a)は同上移動装置の距離画像センサにより基準平面距離画像を取得する様子を示す斜視図、(b)は同センサにより得られる基準平面距離画像、(c)は同距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ。 (a)は同上センサ距離画像と基準平面距離画像の差分により得られた障害物検出用距離画像、(b)は同距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ、(c)は同距離画像を2値化処理して得られた障害物検出画像、(d)は同障害物検出画像における濃淡値分布の代表的なグラフ。 (a)は同上障害物検出用距離画像を基準平面に投影して得られた基準平面投影距離画像、(b)は同距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ、(c)は同距離画像を第1の閾値で2値化処理して得られた判定画像、(d)は同距離画像を第2の閾値で2値化処理して得られた判定画像。 (a)は同上移動装置の距離画像センサにより障害物を検出する様子を示す斜視図、(b)は同センサにより得られるセンサ距離画像、(c)は同センサ距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ。 (a)は同上センサ距離画像と基準平面距離画像の差分により得られた障害物検出用距離画像、(b)は同距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ、(c)は同距離画像を2値化処理して得られた障害物検出画像、(d)は同障害物検出画像における濃淡値分布の代表的なグラフ。 (a)は同上障害物検出用距離画像を基準平面に投影して得られた基準平面投影距離画像、(b)は同距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ、(c)は同距離画像を第1の閾値で2値化処理して得られた判定画像、(d)は同距離画像を第2の閾値で2値化処理して得られた判定画像。 (a)は同上移動装置の距離画像センサにより下りスロープを検出する様子を示す斜視図、(b)は同センサにより得られるセンサ距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ、(c)は同上センサ距離画像と基準平面距離画像の差分により得られた障害物検出用距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ。 (a)は同上移動装置の距離画像センサにより凹状段差を検出する様子を示す斜視図、(b)は同センサにより得られるセンサ距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ、(c)は同上センサ距離画像と基準平面距離画像の差分により得られた障害物検出用距離画像における濃淡値分布の代表的なグラフ。 本発明の他の実施形態に係る移動装置についてのブロック構成図。 同上装置の走行状態を示す斜視図。 同上装置の上りスロープ手前における走行状態を示す側面図。 本発明のさらに他の実施形態に係る移動装置についてのブロック構成図。 同上装置の走行状態を示す斜視図。
符号の説明
1 移動装置
3 走行面
4 壁面
11 記憶手段
12 環境情報取得手段
13 自己位置認識手段
15 走行手段
16 走行制御手段
21 距離画像センサ
21a 画像センサ視野
22 距離情報解析部
23 レーザレーダ
24 超音波センサ
31 段差
32 障害物
A,B,D,G 距離画像

Claims (9)

  1. 走行制御条件を記憶する記憶手段と、障害物又は段差を検出してその位置情報を取得するとともに出力する環境情報取得手段と、地図上における自己位置を取得する自己位置認識手段と、走行を行うための走行手段と、前記自己位置認識手段により自己位置を認識するとともに前記環境情報取得手段の出力する位置情報に基づいて障害物又は段差を回避しつつ前記走行制御条件に基づいて前記走行手段を制御する走行制御手段とを備えて自律的に移動する移動装置において、
    前記環境情報取得手段は、撮像された物体までの距離を検出するための進行方向の前方下方側を視野範囲とする距離画像センサと、前記距離画像センサによって出力される距離画像に基づいて障害物又は段差を検出してその位置情報を出力する距離情報解析部と、を備えたことを特徴とする移動装置。
  2. 前記距離情報解析部は、前記距離画像から段差の勾配を検出して段差を判断することを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
  3. 前記距離情報解析部は、凹部の段差を検出した場合、その段差を凸部の段差の障害物として検出結果を出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動装置。
  4. 前記記憶手段は、走行領域における段差部の情報を地図情報として記憶しており、前記自己位置認識手段は、距離情報解析部が検出して出力する段差の情報と前記地図情報とを照合することにより自己位置を認識することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動装置。
  5. 前記環境情報取得手段は、走行面と平行な進行前方を視野範囲とするレーザレーダを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動装置。
  6. 前記環境情報取得手段は、少なくとも一部が距離画像センサの視野範囲と重複する検出範囲を有する超音波センサを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動装置。
  7. 前記走行制御手段は、少なくとも前記距離画像センサ又は超音波センサを含む複数のセンサのうち一番近くに障害物があると判断しているセンサの出力する障害物検出信号に基づいて、障害物を回避するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項6に記載の移動装置。
  8. 前記距離情報解析部は、前記レーザレーダで検出した障害物が、勾配のある走行面を検出したものかどうか判断することを特徴とする請求項5に記載の移動装置。
  9. 前記自己位置認識手段は、前記レーザレーダの出力する壁面検出データを用いて自己位置認識を行う際に、当該壁面検出データが勾配を有する走行面を検出したデータではないことを前記距離情報解析部の出力に基づいて確認することを特徴とする請求項5に記載の移動装置。
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