JP2006257536A - エアコン四方弁のバルブシート用鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】エアコン四方弁のバルブシート用材料として、従来の銅合金より熱伝導性が低く、バルブシートへの加工が容易で、金型寿命の低下が防止でき、かつ研磨後に樹脂との摺動性が十分確保できる材料を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:1%以下、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Fe、下記(1)式のMd30値が−10以下の組成をもち、結晶粒度番号7.5以下、表面粗さRaが0.2μm以上の酸洗肌を有し、引張強さが520N/mm2以下であるオーステナイト系ステンレス鋼板。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(1)
【選択図】図3

Description

本発明は、冷暖房兼用型ヒートポンプ方式エアコンの四方弁を構成するバルブシートに加工されて使用されるオーステナイト系ステンレス鋼板、およびその製造法に関する。
家庭用をはじめとするエアコンは冷暖房兼用型のヒートポンプ方式が主流になっている。ヒートポンプ方式のエアコンでは、冷房時には室内の熱を室外に放出し、暖房時には室外の熱を室内に取り込む仕組みになっており、冷房時と暖房時とでは室外機と室内機を通る冷媒の流れが逆方向となる。すなわち、冷房時にはコンプレッサで圧縮され高温・高圧になった冷媒ガスは室外機で熱を放出し、外気とほぼ同じ温度の液体に変わる。次に膨張弁を通り低温・低圧の気化しやすい状態となる。その後室内機に送られ熱を奪って気化し、コンプレッサに戻る。暖房時は逆に、コンプレッサで圧縮された冷媒ガスは室内機で熱を放出したのち、膨張弁を通り、その後室外機から熱を吸収し、コンプレッサに戻る。
このように、冷暖房兼用型のヒートポンプ式エアコンでは冷房時と暖房時で冷媒の流れを変えるために、四方弁と呼ばれる機構が採用されている。
図1に、四方弁を含む部材のユニットの外観写真を例示する。四方弁にはA〜Dで示す4本のパイプが取り付けられており、これらの中を冷媒が流れる。パイプAとパイプBはコンプレッサにつながっていて、冷媒の流れの方向は冷・暖房問わずA→コンプレッサ→Bと一定である。パイプCは室外機に、パイプDは室内機にそれぞれつながっており、冷房時にはC→室外機→膨張弁→室内機→Dの順、暖房時にはD→室内機→膨張弁→室外機→Cの順で冷媒が流れる。四方弁は、冷媒の流れを変えるためのいわば交通整理の役割を担う。つまり、冷房時には「B→四方弁→C」の流れと「D→四方弁→A」の流れが交わらないように流路を作り、暖房時には「B→四方弁→D」の流れと「C→四方弁→A」の流れが交わらないように流路を作る。
図2に、四方弁を構成する主な部品の外観写真を例示する。四方弁ボディーには前記パイプC、A、Dに対応する3つの穴が見える。
図3には、バルブシートの外観写真(上面方向から見たもの)を示す。バルブシートにも前記パイプC、A、Dに対応して板厚を貫通する3つの穴がある。これらの穴は、深さ方向の途中に段差を有し、段差より上面側でパイプC、A、Dの肉厚にほぼ相当する分だけ穴径が大きくなっている。バルブシートの上面は四方弁ボディーの内面形状に対応して円弧状の曲面をもつ。底面(上面の裏側)はほぼフラットな面である。バルブシートは、その3つの穴が四方弁ボディーの3つの穴に対応するように四方弁ボディーの内面に設置され、パイプC、A、Dの先端が四方弁ボディーの穴を通してバルブシートの穴の前記段差位置まで挿入される。そして、四方弁ボディー、バルブシート、パイプC、A、Dはロウ付けにより他の固定部材とともに一体化される。
四方弁ボディー内において、バルブシートの前記底面側にはピストンが配置され、ピストンの動作によって四方弁ボディー内での冷媒の流れがコントロールされるようになっている。ピストンとバルブシートの間には樹脂(例えばテフロン(登録商標))のシートが介在し、シール性を確保している。この樹脂シートはピストンに付随して動く。つまり、バルブシートの底面は樹脂シートに摺接することになる。
このバルブシートを作製するには、上面が円弧状で底面がフラットになるような断面形状にするためにプレス成形が必要であり、また、段差のある穴を形成するためには複数工程の打抜きやプレスが必要となる。すなわち、優れた加工性を有することが必須要件となることから、従来、バルブシートには銅合金が使用されていた。
特開2002−371339号公報 特開2003−113450号公報
エアコン四方弁は、低温の冷媒と高温の冷媒が最も近接する箇所であり、四方弁の構成部材を通じて両者の間に熱移動が起こることにより、エアコンの熱効率が低下する。特にバルブシートは低温冷媒が流れるパイプと高温冷媒が流れるパイプの両方に直接接する部材であるため、バルブシート中の熱移動がエアコンの熱効率に大きな影響を及ぼす。従来のバルブシートは前述のように銅合金で作られていたため、その高い熱伝導性により、エアコンの熱効率を低下させる大きな要因になっていた。
もし、バルブシートを熱伝導性の低い材料に置き換えることができれば、エアコンの熱効率改善を図ることが可能になる。そのような材料としては、表面処理せずに使用できる耐食性を考慮すると、ステンレス鋼が候補に挙がる。ただし、ステンレス鋼は一般に銅合金より硬質であり、これを採用するとプレス成形において金型寿命の低下や工程増を招くことになり、コスト増につながる。このため、容易に素材をステンレス鋼に変更することはできないのが現状である。
ステンレス鋼の中にも軟質化を図り加工性を改善したものが開発されている。例えば、上記特許文献1には、積層欠陥エネルギーを高めるよう成分調整して加工性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼が記載されている。また特許文献2には、さらに結晶粒径を微細化することにより精密打抜き性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼が記載されている。
しかし、発明者らの検討によれば、これらの開発鋼を用いても、バルブシートへの成形加工性は不十分であり、銅合金の場合と比べ金型寿命は大きく低下した。その原因として、バルブシートの場合は板状部材の一方の広面のみを円弧状に湾曲させるような厳しいプレス加工を施すことが挙げられる。このように部材の幅方向で肉厚が連続的に変化するような特異な断面形状を精度良く作るためには、単なる曲げ加工プレス等とは異なり、金型に多大な負荷をかけることになる。
また、バルブシートは底面側が樹脂シートと摺接するため、樹脂との良好な摺動性が要求される。摺動性が悪い(すなわち摩擦抵抗が大きい)とピストンの動作不良に結びつくだけでなく、樹脂の摩耗が大きくなり四方弁の性能低下を招く。バルブシートの表面は最終的に研磨仕上げされるので、研磨後の表面状態において摺動性が劣化しないような対策が必要となる。
本発明はこれらの問題に鑑み、エアコン四方弁のバルブシート用材料として、その特異な形状への加工において金型寿命の改善を図ることができ、かつ研磨後に樹脂との摺動性が十分確保できるステンレス鋼材料を開発し提供することを目的とする。
上記目的は、Cr:15〜20質量%、Ni:6〜11質量%、Cu:1〜4質量%を含み、下記(1)式で定義されるMd30値が−10以下の組成をもつオーステナイト系ステンレス鋼からなり、結晶粒度番号7.5以下の金属組織と、表面粗さRaが0.2μm以上の酸洗肌とを併せもち、引張強さが520N/mm2以下であるオーステナイト系ステンレス鋼板によって達成される。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(1)
各元素の好ましい含有量範囲を示すと、質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:1%以下、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Feおよび不可避的不純物であるものが挙げられる。Bは任意添加元素である。
化学組成において、上記(1)式に加え、さらに下記(2)式に規定するT値が520以下であるものが好適な対象となる。
T=534−8Ni+4Cr+47.5Si+4.4Mn−21.9Cu ……(2)
ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表された各元素の含有量の値が代入される。結晶粒度番号はJIS G0551に規定されており、RaはJIS B0601に規定されている。引張強さは鋼板の圧延方向に平行な方向にJIS Z2241に準拠した引張試験を行って求めることができる。酸洗肌とは、酸洗仕上の表面状態を意味する。
このようなステンレス鋼板は、上記のような組成をもつ鋼板(例えば熱延、焼鈍後の鋼板)に対して、10〜40%の冷間圧延、1050〜1100℃×均熱0〜2分の焼鈍、HNO3:5〜10%、HF:1〜3%を含む混酸中での酸洗、を経て製造することができる。均熱時間は、材料温度が当該所定の温度範囲にある時間である。
本発明によれば、従来の銅合金製バルブシートに比べ、熱伝導性を大幅に低減したステンレス鋼製バルブシートが低コストで提供可能になった。本発明のオーステナイト系ステンレス鋼板は、バルブシートの製造において、実用上十分な金型寿命を確保した大量生産に対応できる。また、得られたバルブシートは樹脂との摺動性にも優れる。したがって本発明は、ステンレス鋼製バルブシートの普及を通じて、エアコンの熱効率向上に寄与するものである。
発明者らは種々研究の結果、ステンレス鋼素材を、前述したようなバルブシートの製造に特有の厳しいプレス成形に適用した場合に問題となる金型寿命の低下を克服するには、プレス加工中の真実接触面の低減と潤滑状態を改善することが重要であることを知見した。
図4に、プレス成形中の金型とステンレス鋼材料が接触する際の接触面近傍のミクロ的な断面を模式的に示す。図において、上部がプレス金型、下部がステンレス鋼材料である。水平線で示されるのが金型の表面、折れ線で示されるのがステンレス鋼材料の表面を意味する。この図では横方向に対し縦方向の尺度を強調して描いてある。ステンレス鋼材料の表面には酸洗仕上による凹凸が形成されている。この凹凸についての表面粗さRa(算術平均粗さ)が大きいとき、金型とステンレス鋼材料との間の真実接触面が減少し、そのこと自体で金型寿命の向上効果が得られる。また、凹凸の凹部には潤滑剤が含浸したミクロプールが形成されるので、Raが大きいときにはミクロプールの容量が大きくなり、プレス加工中に真実接触面に潤滑剤が豊富に流出して潤滑効果を高める。したがって、ステンレス鋼材料の表面粗さRaを大きくすることでプレス成形金型の寿命向上効果が生じる。
しかしながら、バルブシートの製造に特有の厳しいプレス成形においては、単に表面粗さRaを大きくするだけでは、十分な改善が図れないことがわかった。詳細な調査の結果、一般的な酸洗肌の凹凸だけではミクロプールの容量が不十分であり、さらなる効果的な潤滑剤の供給手段が必要であると考えられた。そこで検討の結果、ステンレス鋼材料の結晶粒径を従来より大きくしたところ、酸洗時に結晶粒界がより深くエッチングされ、ミクロプールの容量増大がもたらされることがわかった。しかも、深くエッチングされた粒界部分はステンレス鋼材料の表面に線状に延びているので、単なる孔食状のピットと比べ、真実接触面への潤滑剤の供給源として効果的に機能するのである。図4中には結晶粒径を大きくした場合の深くエッチングされた粒界部分を模式的に示してある。
発明者らは、本発明で規定する化学組成を満たしたオーステナイト系ステンレス鋼を用いて、種々の結晶粒度番号と表面粗さを有する板厚7mmの焼鈍酸洗鋼板を作り、図3に示す形状のバルブシートをプレス成形して製造する試験を行い、そのときの金型寿命を調べた。その結果を図5に示す。図5の縦軸の表面粗さはRaである。図5から判るように、結晶粒度番号が7.5以下の大きい結晶粒径を有する材料において、表面粗さRaを0.2μm以上としたとき、10万個以上の金型寿命が安定して得られ、オーステナイト系ステンレス鋼を用いたバルブシートの大量生産が可能となる。粒度番号の下限については特に規定しないが、あまり結晶粒が粗大化すると、粒界は深くエッチングされるものの、粒界の絶対量が少なくなることでミクロプールとしての能力が低減する恐れがあるため、結晶粒度番号は5.0〜7.5の範囲とすることが好ましい。また、表面粗さRaがあまり大きくなりすぎると製品の光沢が低下し、美観を損なうため、Raは0.2〜3.0μmの範囲とすることが好ましい。
ただし、単に「結晶粒度番号7.5以下」と「表面粗さRaが0.2μm以下」の数値を満たしているだけでは不十分である。バルブシートを作る際の金型寿命を十分に改善するには、前述のように、深くエッチングされた粒界の存在が必要となるからである。そのような深い粒界は酸洗によって達成できることから、本発明の鋼板は「結晶粒度番号7.5以下の金属組織」と、「表面粗さRaが0.2μm以上の酸洗肌」とを併せもつ構造を有するものとして特徴付けられる。
なお、結晶粒度番号は、冷間圧延率と、その後に行う焼鈍温度によってコントロールすることができる。本発明では、40%以下の比較的低い冷間圧延を行った後、例えば1050〜1100℃×均熱0〜2分の比較的低温長時間の焼鈍を行うことで、上記所望の結晶粒度を実現することができる。40%を超える圧延率にすると、結晶粒度番号を7.5以下に調製することが難しくなる。冷間圧延率があまり低いと所定の板厚への調製に別途圧延工程が必要となり不経済であるので、概ね10〜40%の冷間圧延率とすることが好ましい。
表面粗さRaは酸洗条件により調製することができる。本発明で規定する組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼で、結晶粒度番号を7.5以下に調製した焼鈍鋼板の場合、HNO3:5〜10%、HF:1〜3%を含む混酸中で酸洗することによりRaが0.2μm以上の粗面化を達成できる。酸洗液中の不純物濃度は10%以下に抑えることが好ましく、液温は50〜60℃程度が好ましい。酸洗時間は1.5〜4分程度とすればよい。
以上は、化学組成が適正である焼鈍鋼板を前提とした条件であるが、金型寿命には化学組成の影響、ひいては機械的特性の影響も無視できない。すなわち、プレス成形に供する鋼板の引張強さが520N/mm2を超えると、10万個以上といった良好な金型寿命を確保できないのである。この点は後述の実施例で実証する。
各元素の含有量が本発明規定範囲にある場合、焼鈍鋼板における引張強さは、下記(2)式によって精度良く推定することができる。すなわち、下記(2)式のT値が520以下になるように各元素の含有量を調整することで、引張強さをコントロールすることができる。
T=534−8Ni+4Cr+47.5Si+4.4Mn−21.9Cu ……(2)
ただし、この式はCが0.03質量%を超える場合や、Nが0.03質量%を超える場合には適用できない。
また、オーステナイト系ステンレス鋼は、そのオーステナイト安定度によって加工誘起マルテンサイトが生成する場合があることに留意する必要がある。特にバルブシート用途では、最終研磨の工程で表面に加工誘起マルテンサイトが生成すると、樹脂との摺動性が低下し問題となることがある。種々検討の結果、本発明では下記(1)式で定義されるMd30値が−10以下になるように成分調製することで、バルブシートにおいて樹脂と摺動性を十分に確保することができる。この点は後述の実施例で実証する。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(1)
本発明に用いるオーステナイト系ステンレス鋼としては、Cr:15〜20質量%、Ni:6〜11質量%、Cu:1〜4質量%を含み、前記(1)式で定義されるMd30値が−10以下の組成をもつものであれば、結晶粒度番号7.5以下の金属組織と、表面粗さRaが0.2μm以上の酸洗肌とを併せもち、引張強さが520N/mm2以下の特性を有する限り、種々のものが適用できる。以下に、成分元素について望ましい範囲を説明する。
CおよびNは、オーステナイト安定度を確保するために有効であるが、含有量が多くなると材料が硬質化するので、C、Nともそれぞれ0.03質量%以下とすることが望ましい。
Siは、脱酸材として有効であるが、多量の含有は固溶強化による硬質化を招くので、1質量%以下とすることが望ましい。
Mnは、オーステナイト相の安定化に寄与し、打抜き性の向上にも有効であるが、多量の含有は介在物の生成による加工性低下の弊害をもたらすので、2質量%以下とすることが望ましい。
Niは、オーステナイト相を維持するために必要な元素であり、耐孔食性、加工性改善効果もある。しかし、多量のNi添加はコスト増を招くので、本発明ではNi含有量を6〜11質量%に規定する。6〜9質量%に制限しても構わない。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保するために不可欠な元素であるが、多量に含有させると材料が硬質化する。本発明では、バルブシートの用途を考慮し、Cr含有量を15〜20質量%に規定する。
Sは、耐食性や加工性に悪影響を及ぼすのでできるだけ低減することが望ましい。本発明では概ね0.007質量%まで許容される。
Cuは、オーステナイト系ステンレス鋼の加工硬化を抑制し、軟質化に寄与するが、多量に含有は熱間加工性の低下を招く。本発明ではCu含有量を1〜4質量%に規定する。1〜3質量%に制限することもできる。
Moは、耐食性向上に寄与するが、多量の添加は材料を硬質化させるので、1質量%以下とすることが望ましい。
Bは、熱間圧延時における割れ防止に有効であるが、過剰に添加すると硼化物の形成により逆に熱間加工性の低下を招く。Bを添加する場合は0.03質量%以下の範囲で行う。
表1に示す鋼を溶製し、スラブを1230℃に加熱した後抽出して、板厚9mmまで熱間圧延した。その後、1050℃×均熱1分の焼鈍、および酸洗を施した後、約22%の冷間圧延を行って板厚7mmとした。次いで、1100℃×均熱1分の焼鈍と、酸洗を行った。この最後の酸洗は、HNO3:7%+HF:2%の混酸、55℃、浸漬時間2分の条件で行った。得られた焼鈍酸洗鋼板を試料鋼板として引張試験、プレス試験、摺動性試験に供した。
なお、各試料鋼板の圧延方向と板厚方向に平行な断面(L断面)について金属組織を観察した結果、いずれも結晶粒度番号は6〜7.5の範囲であった。また、酸洗肌の表面粗さを測定した結果、いずれもRaが0.2〜0.4μmの範囲にあった。すなわち、各試料鋼板は、結晶粒径および表面状態に関する限り、本発明の規定を満たすものである。
引張試験は、各試料鋼板から切り出した圧延方向に平行方向のJIS 13B号試験片を用いてJIS Z2241に準じて行い、引張強さを求めた。
プレス試験は、各試料鋼板の鋼帯(板厚7mm)をスリットして条材を採取し、これを順送金型にてプレス成形し、図3に示した形状のバルブシートを生産した。このバルブシートは最も厚い部分の板厚が6.4mmである。1鋼種につき最大10万個まで生産を行い、途中、金型にひび割れ、クラック等の不具合が発生した時点で金型寿命に達したと判定した。
摺動性試験は、図6に模式的に示すように、直径1/4インチのテフロン(登録商標)の球を700gの荷重を加えた状態で試料鋼板上に乗せ、試料鋼板を5mm/secの速度で動かしたときにテフロン球に生じる水平方向の力をロードセルで読み取り、その絶対値(N)を静摩擦抵抗として、試料鋼板と樹脂との摺動性を評価した。この手法による静摩擦抵抗の値が150N以下である場合に、その材料は四方弁バルブシートとして良好なピストン動作を与えることが、別途多くの実験データにより予め確かめられている。なお、試料鋼板の表面は、バルブシートの仕上研磨に相当する#400乾式研磨仕上とした。
これらの結果を表1中に記載した。
表1から判るように、本発明例の鋼板は、引張強さが520N/mm2以下に抑えられ、10万個以上の良好な金型寿命を呈した。また、Md30を−10以上としたことにより仕上研磨後の表面において樹脂との良好な摺動性が確保できるものであることが確認された。
これに対し、比較例No.7〜10はC含有量またはN含有量が高いこと、あるいはCu含有量が不足することに起因して引張強さが520N/mm2を超え、金型寿命に劣った。また、No.7、10〜12は、Md30が−10を下回る組成であるために研磨にて加工誘起マルテンサイトが表面に生成し、樹脂との摺動性が悪かった。
エアコン四方弁ユニットの外観を示す図面代用写真。 エアコン四方弁の主な構成部品の外観を示す図面代用写真。 バルブシートの外観を示す図面代用写真。 プレス金型とステンレス鋼材料の接触面近傍におけるミクロ的な断面の概念を示す模式図。 金型寿命に及ぼす結晶粒度番号および表面粗さRaの影響を示すグラフ。 摺動性試験方法の概念を示す模式図。

Claims (4)

  1. Cr:15〜20質量%、Ni:6〜11質量%、Cu:1〜4質量%を含み、下記(1)式で定義されるMd30値が−10以下の組成をもつオーステナイト系ステンレス鋼からなり、結晶粒度番号7.5以下の金属組織と、表面粗さRaが0.2μm以上の酸洗肌とを併せもち、引張強さが520N/mm2以下であるエアコン四方弁のバルブシート用鋼板。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(1)
  2. 質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:1%以下、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Feおよび不可避的不純物であり、下記(1)式で定義されるMd30値が−10以下の組成をもつオーステナイト系ステンレス鋼からなり、結晶粒度番号7.5以下の金属組織と、表面粗さRaが0.2μm以上の酸洗肌とを併せもち、引張強さが520N/mm2以下であるエアコン四方弁のバルブシート用鋼板。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(1)
  3. 質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、Ni:6〜11%、Cr:15〜20%、S:0.007%以下、Cu:1〜4%、Mo:1%以下、N:0.03%以下、B:0〜0.03%、残部Feおよび不可避的不純物であり、下記(1)式で定義されるMd30値が−10以下、かつ下記(2)式で定義されるT値が520以下の組成をもつオーステナイト系ステンレス鋼からなり、結晶粒度番号7.5以下の金属組織と、表面粗さRaが0.2μm以上の酸洗肌とを併せもつエアコン四方弁のバルブシート用鋼板。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ……(1)
    T=534−8Ni+4Cr+47.5Si+4.4Mn−21.9Cu ……(2)
  4. 10〜40%の冷間圧延、1050〜1100℃×均熱0〜2分の焼鈍、HNO3:5〜10%、HF:1〜3%を含む混酸中での酸洗、を経て製造される請求項1〜3に記載のエアコン四方弁のバルブシート用鋼板。
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